2012/04/30

Jean Denis Michat plays Mozart on YouTube

サクソフォン奏者・作曲家として有名なジャン=ドニ・ミシャ氏(リヨン音楽院教授)。おそらく、クラシック音楽の正統的な語法を身に付けたサクソフォン奏者として、世界でもトップクラスの演奏をする演奏家だと思っている。ミシャ氏が吹き込んだバッハの「無伴奏フルートパルティータ」やシューベルトの「アルペジョーネ・ソナタ」が収録されたアルバムをご存知だろうか。入手困難にも関らず、クラシック奏者としては必ず所持しておくべきアルバムとして名高いのである。

そのミシャ氏、オーケストラとの共演も多いようだが、氏がモーツァルトの「オーボエ協奏曲」を演奏している動画を見つけた。しかも全曲!Maxim Valkov指揮St-Petersburg Capella Chamber Orchestraとの共演である。ホールの響きがお風呂みたいでやや聴きづらいが、それでもミシャ氏の尋常ならざるプレイは良く伝わってくる。第3楽章の粒立ちのはっきりした音など、見事なことこの上ない。カデンツァはミシャ氏のオリジナルだろう。



本職のオーボエの人は、この演奏を聴いて何を思うのだろうか。気になるなあ。

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実家の庭で芝桜の素敵な写真が撮れたので、載せておく(クリックすると拡大)。NEX-5N&SEL50F18で、ISO100&F4.0&1/500。単焦点レンズは楽しい。

デュポン楽長&ギャルドの時代

本日午後から実家に帰省中。東京の暑さには驚いたが、さすがにこちらは涼しい。

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帰省時のお供は、ピエール・デュポン楽長時代のギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の演奏を納めたアルバムだ。木下直人さんが所有するSP盤を、ご自身が持つ世界最高クラスの技術・機材で復刻した盤で、発売当初大きな話題となった。グリーンドア音楽出版ということで、この手の復刻盤によくある「気がついたら廃盤」ということもなく、Amazon等でも気軽に手に入れられるのがうれしいところだ。

ピエール・デュポン氏は、1927年から1944年までギャルドの楽長を務め、同楽団の黄金期を築き上げた。ギャルドの音楽が完成期を迎えるのは後任のブラン楽長とリシャール副楽長の時代だが、その完成期への道筋を作り上げたデュポン楽長のことも忘れてはならない。編曲家としても活躍し、行進曲のみならずオーケストラの名曲を数々アレンジした。SP時代でありながらレコーディングにも積極的で、後世に見事な演奏を伝えるきっかけを作ったことについても、評価が高い。

デュポン楽長の芸術感をまとまって聴くことのできる媒体は、思い当たるところでは10年ほど前にEMIから出版されたギャルドにまつわる20枚の復刻盤くらいだろう。この時も木下直人さんは復刻に協力したが、その出来には不満があったそうだ。この新復刻盤は、それ以来木下さんが培ってきた技術を惜しみなく投入したものである。SPやモノーラルLPの盤からの復刻に関して、当時の空気感を再現できる研究家は、木下さん以外にはいないことだろう。しかもなんと2枚組!

復刻された盤を聴いてみると、いかに当時の聴衆がこのデュポン楽長指揮のギャルドに興奮したかが、伝わってくるというものだ。もちろん、解像感という点で言えば現代の最新の録音と比べるまでもないが、そのテクニック、音色、音楽性などは、ある意味現代の録音よりもリアルに捉えられている。なかなか聴き通すにも集中力を要するが、これを聴かずして吹奏楽を語ることなどできないかもしれない。20世紀前半に到達した最高レベルの演奏が、記録されている。敢えてどのトラックがおすすめ…とも書かないので、ぜひ聴いてお気に入りを探し出していただきたい。

サクソフォン的興味からしても、マルセル・ミュールの演奏が聴けることがうれしい。ギャルドの音の洪水の中でひときわ存在感を放つサクソフォンの甘美な音色・ヴィブラートは、感動的だ。

Amazonでの購入リンクは、こちら。以前入手した時に書いたレビューは下記リンクから。
ディスク1
ディスク2

2012/04/29

「宝島」「オーメンズ・オブ・ラブ」練習

大学の吹奏楽団同期(女性)で昨年末に入籍されたMさんが、5月に披露宴を開くとのこと。その2次会で参加者による「宝島」「オーメンズ・オブ・ラブ」のほぼ全員合奏を行うのだが、昨日そのための練習があった。「宝島」「オーメンズ・オブ・ラブ」といえば、言わずと知れたT-SQUAREの名曲であり、吹奏楽のためになされているアレンジもおなじみだ。これまで何度吹いたかわからないくらいで、なんとなく暗譜でも吹けてしまうくらい。こうやって改めて練習するのは逆に新鮮だ。

松戸の、森のホール21という会場のリハーサル室。広いスペースに20人以上が集まっての合奏。本番はなんと70人規模になるらしい(笑)吹奏楽の合奏というのも久々で、そんな感覚を楽しんだ。リハーサルの後は八柱駅前のまいちゃ亭にて、Mさんご夫妻を交えて飲み!とても美味しい料理にたくさんの種類の焼酎、3時間飲み放題で3800円とは、なんと素晴らしいことか。いろいろとおしゃべりでき、楽しかったなあ。そして、久々に変な飲み方をしてしまった…。電車に乗ったところまでは良かったが、気がつけば逆走していたというオチまでつけて、なんとか帰宅。

NEX-5Nのスウィング・パノラマ機能で撮影した森のホール21の写真。

在ベルギー日本国大使館でのTsukubaSQ演奏予定

2012年7月9日、ベルギー・ブリュッセル市の在ベルギー日本大使館において、Tsukuba Saxophone Quartetでの演奏が決定した。7/10-7/15にイギリスのスコットランド・セント・アンドリューズで行われる世界サクソフォーン・コングレスの会期に合わせ、ベルギーでのもう一つの演奏機会を探していたのだが、なんと大使館との共催事業として演奏会を開く運びとなった。

演奏予定については、下記ページから。
http://www.be.emb-japan.go.jp/japanese/culture_j/event.html

我々にとってもうひとつ嬉しいのは、ベルギー在住のピアニスト、大宅裕さんと共演できることである。大変な名手であり、これまで何度か演奏を聴く機会があったのだが、お願いしたところご快諾いただいた。ありがたいことである。

まだ曲目等詳細については掲載されていないが、いろいろと決まり次第、追って情報を出していく予定。

2012/04/27

Claude Delangle - Musique francaise pour Saxophones

クロード・ドゥラングル Claude Delangle教授のアルバムといえば、BISから出版されている一連のアルバムが有名だが、Vandorenから2枚出版され、しかもその両方とも素晴らしいことをご存知だろうか。特にオススメなのが、「Musique francaise pour Saxophones(Vandoren V 001)」である。もともとは、Chant du MondeからLDC 278 878という型番で出版されていたアルバムであり、再発モノなのだが、奇跡的な完成度を誇る盤として、多くの人に聴かれるべきだ。

Darius Milhaud - Scaramouche
André Jolivet - Fantaisie-impromptu
Florent Schmitt - Légende, op.66
Charles Koechlin - Etudes 1,2,3,8,10,13
Charles Koechlin - Epitaphe de Jean Harlow
Gabriel Pierne - Introduction et Variations sur une ronde populaire
Florent Schmitt - Quatuor, op.102

ピアノは奥様のオディール・ドゥラングル Odile Delangle女史、2曲だけ収録されている四重奏曲は、ドゥラングル教授がかつて結成していたカルテット、Quatuor Adolphe Sax(Claude Delangle, Jean Paul Fouchecourt, Bruno Totaro, Jacques Baguet)の演奏である。あの著名なオペラ歌手、フーシェクールがサクソフォンを吹いたアルバムとして、オペラファンかつ好事家も、手に入れておいて損はないことだろう。

一言で表すならば「耳を洗い直される」アルバムである。冒頭のダリウス・ミヨー「スカラムーシュ」を聴いてみよう。我々、いちクラシック・サクソフォン・ファンが「スカラムーシュ」と聴いた時に無意識に持つ「このくらいの速度、このくらいのテンション、このくらいの音色、このくらいの…」という一連の想定を、全て外してくる演奏なのである。そして、その外れた先が何物でもない、これこそが本当のスタンダードなのかもしれないと思わせてしまうのだから、すごい。パリ国立高等音楽院の教授に就任する2年前、1986年の録音である。21世紀に入ってからの録音と言われても、納得してしまうかもしれない。

すべての演奏曲目で、このクオリティを維持する。ケックランの「エチュード」など、間違いなく世界最高の演奏である。これ以上の演奏を、CDなり実演なりで聴いたことがない。ピアノパートも含めて、この解像感の高さは驚異的である。続いて演奏される「ジーン・ハーロウの墓碑銘」の甘いフルートの音色は、妙に甘ったるく、CDのなかではちょうど良い休憩ポイントとなる。

ピエルネとシュミット、サクソフォン四重奏の傑作2作品の演奏も、面白い。隅々までリハーサルを重ねた燻銀的な演奏。ヴィブラートのひとつひとつまでコントロールされている。まさかデファイエ四重奏団が現役の時代に、このような録音が世に出ていたとは…。ハバネラ四重奏団への直接的なリンクを感じる。

おそらく当時は異質だったと思われるこのスタイルの演奏だが、現代にあってはトレンドとなっている。世界中の多くの奏者が、ドゥラングル教授が創り上げ醸成したこの演奏スタイルに倣って、日々演奏しているのだ。そう考えると、何かとてつもないスケール感の大きさを感じないだろうか。この一枚のCDが、世界を(10年後に)席巻した原点となっているのだ。ドゥラングル教授は、もしかしたらそこまでも見据えて録音を作ったのかもしれない。原盤のレーベル名"Chant du Monde"というのもすごい名前だ(笑)。

国内での入手は難しいが、フランスのVandorenから安価に購入可能。

2012/04/25

Franco Donatoni - HOT

サクソフォンと室内オーケストラのための傑作というと、大抵の人はイベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」を挙げることだろう。私もその意見には大いに賛成するところで、さて、それに次ぐ傑作は?というと、アンドレ・カプレの「伝説」や、ダリウス・ミヨーの怪作「世界の創造」といったところは当然として、その先はなかなか声があがらないのではないだろうか。

私が考えるサクソフォンと室内オーケストラのために書かれた優れた作品の一つとして、イタリアの作曲家、フランコ・ドナトーニ(1927 - 2000)の「Hot」を挙げたい。テナーサクソフォン&ソプラニーノサクソフォン持ち替え。バックの室内オーケストラは、クラリネット、トランペット、トロンボーン、ピアノ、パーカッション、ダブルベースという編成で、この並びだけ見れば、まるでジャズのコンボバンドのような印象を受けることだろう。…そして、楽想もまさにその通り、なのである。

数年前のサクソフォーン・フェスティバルで、板倉康明指揮東京シンフォニエッタがこの作品を日本初演したが(独奏は林田祐和)、その初演後に指揮の板倉氏が、「管理された即興」という言葉を使ってこの作品の有り様を表現している。すべての音は完全に楽譜上に書き付けられながら、まるで各奏者が即興演奏を披露しているかのような、音運びである。指揮者の存在が求められ、ライヴで演奏に接した際は、さらに強く「管理された」という印象を受けることだろう。終始一貫して固定されたパルスの上で、各楽器の旋律はシンコペーションや連符を多用して構築されており、その擦れが面白くもある。

フランスのサクソフォン奏者、ダニエル・ケンジー Daniel Kientzyが、Ensemble 2e2mとともに非常に優れた録音を残している。指揮はなんと、ポール・メファノ Paul Mefanoである。驚き。「管理された即興」というキーワードのうち、"管理"の要素を強く出すか"即興"の要素を強く出すかは、指揮者の手に委ねられていると思う。この録音は、私が今まで聴いた録音のなかで"即興"の要素が最も強いと感じる一枚だ。おそらく、ライヴ盤であること、が大きく関係していると思うのだが。楽曲の詳細な構造なんてなんのその、音楽全体の構造をざっくり捉えた後は、瞬間瞬間のスナップショット的興奮(まるでクリュイタンス指揮のラヴェル作品を聴いているみたいだ)と、テンションでもって、15分に及ぶ楽曲を一気に駆け抜ける。お見事。

最近Stradivariusレーベルが最近発売したドナトーニ作品集に、この「Hot」が収録されている。独奏はなんとマリオ・マルツィ!さっそく注文し、届くのが楽しみなのである。

2012/04/24

サキソフォックスの楽譜半額セール

Facebookのアルバムに、E 50mm/F1.8の練習用アルバムを作った。換算50mmをすっ飛ばして75mmとは冒険も甚だしいが、ハマった時の美しい画といったら!じっくり勉強していきたい。

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すっかり忘れてた…あと一時間しかないが、サキソフォックスを始めとする「音楽の絵本」の楽譜が、本日限定で半額セール中である。CDと楽譜の合わせ技、しかもこれだけ質の高いアレンジで、ここまでまとまったサクソフォンのためのポップス曲集は他に存在しないだろう。私自身(というか、Tsukuba Saxophone Quartet)も、どれだけこの楽譜に助けられていることか。

http://www.ongakunoehon.jp/

2012/04/23

小学生がデュボワ… on YouTube

最近では、小学生がデュボワの難曲、「性格的小品」を吹いてしまうらしい…。驚きの上手さと美しい音色。誰に師事されているのか、気になるところだ。いやはや。あと50年後には、小学生がラーションやデニゾフをばんばん吹く時代になっているのかな(笑)

2012/04/22

パイパーズにグラズノフの記事を書いた

管楽器専門誌としておなじみのパイパーズに、グラズノフ「サクソフォン協奏曲」に関する記事を6ページぶん載せてもらった。以前書いたラッシャーの記事に続いて、パイパーズの方からオファーがあったのである。以前サクソフォーン協会誌に投稿した記事を全面的に見直し、全体の一割ほどを書き換えてある。詳細はこちらから。2012年5月発売の369号、4月20日より発売中。

ラッシャーの記事の時と同じく、とても綺麗なレイアウトにしてもらい、感激である。協会誌と同じ情報とはいえ、一般の管楽器系の商業誌に掲載されたということで、サクソフォーン協会以外の方、そして、サックス以外の管楽器の方に読んでもらえるのが嬉しい。

私の記事なんてオマケみたいなもので、他に素晴らしい記事がたくさん。作曲家の西村朗氏とクラリネットの亀井良信氏の対談など、非常に読み応えがあるし、サクソフォン的興味であれば栃尾克樹さんが4枚目のアルバムとして吹き込んだバリトンサクソフォンの無伴奏アルバム「エヴォカシオン(Meister Music MM-2115)」のインタビュー記事付き紹介なども、バリトンサクソフォン奏者垂涎であろう。また、東京佼成ウインドオーケストラの首席フルート奏者として名高い前田綾子氏のインタビューは、吹奏楽でフルートを取り組む向きは必ず読むべき記事である。

ぜひお近くの書店等でお求めください。

ザッツ・サクソフォン・フィルハーモニー第9回定期演奏会

びっくりした。大学だったり、サクソフォニーだったり、まがいなりにも何度かサクソフォン・オーケストラという編成に関わったことのある自分にとって、大きな衝撃であった。

昨年も伺いレベルの高さに驚いたものだったが、本日の演奏はレベルが高い…という部分に収まりきらないものだった。演奏会後にお知り合いと話したが、ストレートに感動を覚えたステージだった。近藤久敦氏を客演指揮に呼んでいるから、とかそういった単純な理由ではないとは思うのだが…。いやはや、驚き。

【ザッツ・サクソフォン・フィルハーモニー第9回定期演奏会】
出演:ザッツ・サクソフォン・フィルハーモニー、近藤久敦(指揮)
日時:2012年4月21日(土曜)18:00開演
会場:国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟・大ホール
プログラム:
E.エルガー - 威風堂々第一番
E.エルガー/近藤久敦 - "エニグマ変奏曲"よりニムロッド
G.ホルスト/大須賀吉江 - 組曲"惑星"より火星、金星、木星
H.ジマー/新実信夫 - パイレーツ・オブ・カリビアン
A.W.ウェバー/新実信夫 - オペラ座の怪人
C.チャップリン/内田祥子 - ライムライト(スペシャル・ミュージック・ストーリー)
タイム・トゥ・セイ・グッバイ(アンコール)

一曲目、エルガーの「威風堂々」がとにかくすごかった。この一曲で演奏会のメインを張ることすらできるのでは…というほどの完璧な演奏。立体感あふれる各声部の絡み合い、トリオの美しい(開放すらケアされた)音色、難儀な16分音符も粒立って聴こえる。客席からも、大きな拍手が送られた。箸休めのエニグマ変奏曲に続いて、ホルストの「惑星」抜粋。パーカッションも交え、相当の意気込みを感じる演奏で、ここまででひとつの演奏会として成り立ってしまっていると思ったほどだ。特に、火星でのオケが一体となった推進力や、木星でのキラキラとした楽しさ(まさに快楽の星!)といったところなど、印象深い。ちなみに「惑星」のなかでは土星がいちばん好きなので、本当は土星も聴きたかったなー、なんて。

後半は、吹奏楽アレンジを思わせる「パイレーツ・オブ・カリビアン」にて幕開け。後半になっても、高いクオリティは維持されたまま、聴衆をぐっとひきつける。「オペラ座の怪人」については、さすがに柏原さんの編曲を知っていると?な部分があったのだが、最後の「ライムライト」は圧巻であった。ザッツさんお得意の、スペシャル・ミュージック・ストーリー…ナレーションとサックスオケを絡める音楽絵巻である。脚本もオリジナルなのが驚き。

「ライムライト」は有名な喜劇王チャップリンの映画で、父の影響で私も「モダン・タイムス」「独裁者」「黄金狂時代」あたりは観たことがあるのだが(「独裁者」の最後の演説シーンなど、小学生なりに感動を覚えたものだ)、そういえば「ライムライト」のストーリーを知るのは初めてだったかもしれない。ナレーションの上手さ、そして演奏の上手さもあって、感動的なステージとなっていた。そして、そのまま「Time to Say Goodbye」である…うーむ、やられた。完璧なプログラミングだ。サクソフォン交流会でご一緒するのも楽しみ。

終演後は、来場していた柏原さんとともに代々木で軽く一杯。美味しかった。

2012/04/21

サクソフォンとピアノのCD/LP

明日はThat's Saxophone Philharmonyさんの演奏会!楽しみ~

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クラシック・サクソフォンとピアノのCD/LPなど、ピンからキリまで星の数ほどもあるが、吹奏楽やアンサンブルなどである程度サクソフォン演奏の経験があって、何かサクソフォンのソロの演奏を聴きたい、と言われた時には、次の2枚を勧めるようにしている。LP時代、CD時代で「最高の一枚」。「最高の一枚」とは、ジェネラルな意味ではなく、人に勧めるための最高の一枚、という意味である。

ダニエル・デファイエのCrest盤。これまで何度も紹介してきたが、このLP以上のものはない、 と断言できるほどの演奏だ。聴くたびに新鮮な発見があり、感動を誘う。

最初のレイモン・ガロワ=モンブラン「6つの音楽的練習曲」の、ほんの最初の一音の伸ばしから空気が変わる。これを聴くまでいまいち良く分からない作品だったブートリーの「ディヴェルティメント」に、震えるほど感動してしまったのもこの演奏がきっかけだった。さらに、呆れるほど華やかなパスカル「ソナチネ」を経て、圧巻のリュエフ「ソナタ」。完璧なプログラミング、完璧な演奏である。少なくとも、サクソフォンを専門的に学んだり、アマチュアであってもサクソフォン独奏に取り組んだりする方は、好き嫌いはどうであれ聴くべきであると思う。

門馬美智子さん、大西智氏さん、塙美里さんの師匠として、最近良く名前を聴くジュリアン・プティ氏。原博巳さんがディナンの国際コンクールで優勝した時、第2位を獲得したプレイヤーだが、演奏についてはそれほど日本国内で知られていないのが残念なところ。プティ氏は、何枚かCDを出しており、いずれも素晴らしいのだが、「La escapada(Lyrinx LYR 230)」と題されたサクソフォンとピアノのアルバムが、恐ろしく完成度が高いのである。

収録されているのは、ファリャ、ヴィラ=ロボス、アルベニスといったごくごく聴きやすいアレンジものなのだが、その抜群の音色、音楽性、唖然とするほどのテクニック、ピアニストの上手さ、録音の良さ etc.良さを挙げていけばきりがない。類まれな録音である。

2012/04/19

ピアソラ/啼鵬「ブエノスアイレスの春・夏・秋・冬」

我々の世代では常識だった日本のサクソフォンのあれこれが、若い世代に対してはすこしずつ通用しなくなっているのではないかな…と思う。世代交代は進んでいくのだから当たり前で、私の世代だって少し上の世代からはそう思われているのであろう。とにかく、我々の世代の常識の一つとして、「サクソフォン四重奏とピアノのために編まれた作品として人気が高い作品の一つ」という認識がある。

ピアソラの音楽は、私なんかはキンテートで演奏される、暑苦しく刺々しく胸をかきむしるようなテンションの演奏が好きで、いつぞやに発生したピアソラ・ブームに乗ったクラシック楽器用の編曲は、あまり好みでないものが多いのだが、ふしぎとこの啼鵬さんの編曲は好きなのだ。単純にピアソラの音楽をクラシックのフォーマットに移し替えるだけでは、薄めたスープのような音楽になってしまうところだが、啼鵬さん自身の語法でその穴を埋め、編曲ではなく再創造、といった趣である。かなりのボリュームだが、ひとつの楽章を取り出しても演奏会中で映え、使い所も多い。

本作品が収録されているCDは、トルヴェール・クヮルテットの「トルヴェールの四季(EMI TOCE-9955)」。小柳美奈子氏とともに長生淳「トルヴェールの四季」とピアソラ/啼鵬「ブエノスアイレスの春・夏・秋・冬」を演奏している。Amazonでも購入可能。実は自分が2枚目に買ったCDなのだが、CDを買った当初から、「トルヴェールの四季」はどうしても好きになれなくて、ピアソラばかり聴いていた。

ちなみに、以前は楽譜のレンタルが行われていたが、レンタル業務の停止により、少し前から楽譜の入手が難しくなっている。

サクソフォン・コングレス出演者一覧

第16回世界サクソフォン・コングレスのウェブページが更新され、出演者一覧のリストがアップされていた。出演者リストのみであり、まだ曲目もタイムテーブルも公開されていない。

http://www.wscxvi.com/programme.php

とにかく、出演団体の数が多くてびっくり!そして、思ったよりもアンサンブル団体の比率が高い。聞いたこともない団体から超有名団体まで、リストを眺めるだけで面白くてにやけてしまう。日本人参加者は…原博巳さん、上野耕平さん(協奏曲)、宗貞啓二氏(International Saxophone Quartet)、Vive! Saxophone Quartet、伊藤あさぎさん(Amigo Saxophone Quartet)、安井寛絵さんと井上ハルカさん(パリ音サックスアンサンブルのメンバーとして)、Yukiko Iwataさん(Mobilis Saxophone Quartet)、Tsukuba Saxophone Quartet(ウチ)といったところの名前が見つけられる。他にいたら教えて下さい。

演奏のみならず講演も行われるのだが、ある講演に目が釘付けになった。カリーナ・ラッシャーがWSCに参加し、グラズノフ「協奏曲」のルーツについてプレゼンテーションを行うようだ。これはぜひ聞いてみたい。

2012/04/17

VSOのコンサート動画 on YouTube



Vienna Saxophonic Orchestraは、以前から注目している団体である。かつて隆盛を誇った、ロンデックス指導下のボルドー・サクソフォン・オーケストラや、セルジュ・ビション指導下のリヨン・サクソフォン・アンサンブルといった、大人数のための現代作品を得意とするサクソフォンのラージアンサンブルである。仕掛け人のLars Mlekusch(ウィーン音楽院のサクソフォン科教授)が、何をキッカケとしてこのアンサンブルを立ち上げるに至ったか、その詳しいところは分からないものの、方向性としてはボルドーやリヨンに良く似ている気がする。

30分に及ぶ演奏動画。サクソフォンの合奏でオリジナル作品といったらまずこの曲、というティエリー・アラ Thierry Alla「Polychrome」に、Francisco Guerrero「Rhea」というまるで海のうねりのような作品、最後にルチアーノ・ベリオ Luciano Berioの「Sequenza VIIb」をLars Mulekusch氏の8重奏アレンジで。技術的に完成され、統制がここまでとれたサクソフォン・オーケストラは、世界広しと言えども数えるほどしか無いだろう。

驚いたのは、Miha Rogina氏のクレジットが書かれていたこと。いったいどういう経緯だろうか!?

デュオ・ベティーズの演奏会CD&DVD

3/18に水戸芸術館コンサートホールATMで開かれた、デュオ・ベティーズ(サクソフォン:塙美里&大西智氏)の演奏会の模様を記録したDVDを、塙美里さんから送っていただいた。ご案内いただいていたにも関わらず、この日はサクソフォーン協会のコンクール本選だったため、伺えなかったのであった。

【Misato Hanawa Saxophone Recital Musique de Chambre ~Duo Betises~】
出演:塙美里、大西智氏(以上sax)、木米真理恵(pf)
日時:2012年3月18日(日曜)14:00開演
会場:水戸芸術館コンサートホールATM
プログラム:
F.プーランク - エディット・ピアフ賛
A.グラズノフ - 吟遊詩人の詩
F.ナルボーニ - ミンク(日本初演)
F.クライスラー/S.ラフマニノフ - 愛の喜び
D.メンデルスゾーン - ピアノ三重奏曲
F.プーランク - 三重奏曲
M.グリンカ - 悲愴的三重奏曲
G.ヴェルディ - どんな海、どんな地が
L.グリェーミ - 薔薇色の人生

まず最初の2曲は、塙さんのソプラノサクソフォン・ソロ。カンブレ音楽院におけるジュリアン・プティ氏への師事以降、おそらく最も得意としているであろう楽器。まだまだ曲をこなすことに集中されていた前回リサイタル(2009年)の印象はどこへやら、すでに音楽を手中に収め、聴衆へと向いたベクトルが印象的である。端的に言ってしまえば、ものすごく余裕がある演奏、ということ!隅々から感じられる"うた"と、キラキラとした美しい音色…これは師匠譲りか?…が耳に残る。ナルボーニの現代作品は、音響効果と即興(大西智氏さん)まで加えた作品で、解説からはどんな響きか想像することもできないが、集中力の高い響き。この作品で第1部を閉めてしまうというアイデアも、なかなか。

第2部は、ラフマニノフのヴィルトゥオーゾ的ピアノソロから始まる。続いて、デュオ・ベティーズで、メンデルスゾーンの傑作「ピアノ三重奏曲」の演奏。ジュリアン・プティ氏の奥様がチェリストだということもあり、その影響下にある演奏、なのだそうだ。ここでは、なんと塙さんがバリトンサクソフォンを演奏。大西さんがソプラノサクソフォン。ちょっと意外だったが、このメンデルスゾーンの楽曲が持つ求心力を生かした演奏だ。長大な作品だが、構成を見透かす演奏に感服。デュオ・ベティーズで演奏される続く2曲も、同じ傾向だ。プーランクは、単なる軽きに流れずちゃんとツボを押さえているし、グリンカはお得意のレパートリーなのだろう、見事の一言。

メインのグリンカ「悲愴的三重奏曲」のあとは、演奏者へのインタビュー。司会を務めるのは、前回リサイタルでも舞台に登っていた薄井しお里さんではないか!当時は高校生だったはずだが、現在大学生とのこと。3年という月日は長いものだなあ。このインタビューは、とても面白く聞いた。普段の演奏会では、こうやってゆっくり演奏者がしゃべる機会などないものだから、ある意味"裏第3部"というところか。いろいろな話が続き、最後になんとお客様の前で重大発表!なんと結婚の報告が!大西さんの、なんだかたどたどしくも、初々しいコメント、いいなあ。

そういえば、プログラム冊子の解説がとても面白かったことを付け加えておく。エッセイ風なのだけれど、同時になんだか妙にジェネラルな感触もある。不思議な、そして魅力的な文体だ。

2012/04/15

Saxophone Quartet Athena 1st Recital

よく晴れた休日の昼下がり、トッパンホールにて開催されたSaxophone Quartet Athenaのリサイタルに伺った。休日の午後開催かあ…最近、平日になかなか演奏会へと伺えない私にとってはありがたいことである。演奏者にとっては会場を取るのが難しいだろうし、来場者にとってはプライベートの予定との兼ね合いが難しいだろうが、会場は大変な盛況だった!!何というか、関係者全員集合という感じで、おなじみの方がたくさん、初めてお会いする方もいたり。プログラムノートは佐藤淳一さんの手によるものだったのだが、情報量が多く、興味深く読んだことを記しておく。

【Saxophone Quartet Athena 1st Recital】
出演:Saxophone Quartet Athena
日時:2012年4月15日(日)14:00開演
会場:トッパンホール
プログラム:
D.スカルラッティ - ソナタよりK.427, K.474, K.519
E.ボザ - アンダンテとスケルツォ
G.リゲティ - 6つのバガテル
J.イベール - 物語より金の亀の番人、小さな白いロバ、机の下で
I.ゴトコフスキー - サクソフォン四重奏曲

塩安麻衣子、江川良子、冨岡祐子、平賀美樹(敬称略)というメンバー。女性だけのカルテットというと、海外ではFairer SaxやRollin' Phones、日本でもNoyer Saxophone Quartetを筆頭に、最近でもSaxophone Quartet 桜やGreen Ray Saxophone Quartetといった名前がが思い浮かぶ。海外のカルテットが、方向性を「女性ならではの云々」というところに向けて打ち出すのに対し、日本ではもっとストイックな方向性を持つ団体が多い…のかもしれない。AthenaSQも同じ傾向である。

白を基調とした衣装で現れたAthenaの面々。スカルラッティは、ピエルネの編曲をベースに、原曲のキイを使ったAthenaSQのオリジナル・アレンジ。確かヘムケ博士のアレンジも原曲キイだったような。オープニングにふさわしく、一段と華やかに聴こえる。トッパンホールの響きを味方につけ、サクソフォンの巡航速度でもって爽やかに演奏された。音色は、それぞれのソロや別のアンサンブルでも聴いたことがあるおなじみの美しさ。ボザでは、アンダンテ冒頭の冨岡さんと塩安さんの絶妙な彩りが印象深い。

第一部メインとなったリゲティは、予想通りの爆発的&スタイリッシュな演奏。実際演奏に取り組もうとすると、聴いているよりも30倍くらい難しいこの作品であるが、技術的にはなんのその、さらに内面までもかなり大きく掘り下げた演奏で、感銘を受けた。本日のアレンジは、ショット版とギョーム・ブルゴーニュの私家版を出発点として、AthenaSQがさらにオリジナルの要素を加えたスコア。聴いているだけではさすがにわからなかったが、きちんとAthenaSQの血肉として作品を取り込んでいるように思えた。

後半は、イベールから。このイベールが、重量級のプログラムのなかでオアシス的な重要な役割を果たしており、上手い配置だなと思った。塩安さんのキラキラとした音色は、このような作品ではますます存在感を増すのである。オアシスで一休みした後は、全6楽章、30分以上に及ぶ長い旅の始まり。ゴトコフスキーの「サクソフォン四重奏曲」は、その途方もないボリューム感から、リサイタルに組み入れるのは躊躇されるほどの作品である。演奏者も大変だが、聴衆を非現実の部分に繋ぎ留めておくのが難しいのだ。ともすればただの「長い曲」としてしか認知されないこの作品、AthenaSQがそれを敢えて組み込んだ所に、この演奏会にかける気合の入れようが伝わってくるのである。会場内のほとんどを巻き込んだままの、6つの違う風景を見せてくれた。やはり第6楽章は圧巻である(超速だった)。

アンコールにイベールの「物語」から「ガラスの籠」。終始見事な演奏に、会場からも大きな拍手が贈られていた。1st Recitalにてこの密度である。さて、次はいったい何を見せてくれるのか。

2012/04/14

個人練習

某スタジオを借りて2時間ほど個人練習。さらう曲が多くてなかなか追いつかないのだが、そうは言っても少しずつ進めなければあとが大変なことになるのは解っているので…。また時期を見極めて一人合宿でもしようかな(^^;練習したのは長生淳「八重奏曲」、バッハ/伊藤康英「シャコンヌ」、上野耕路「N.R.の肖像」だが、長生淳は初めてだからたくさん吹いたとして、ついついバッハをたくさんさらってしまうのであった。

これまで、何度か伊藤康英先生が編曲したバッハ「シャコンヌ」のアレンジの素晴らしさについて書いてきたが、それを再認識した思いだ。素晴らしい原曲に、素晴らしいアレンジ。ああ、いいなあ。練習が楽しい曲って、最高だ。

練習の後は、注文していたカメラとレンズを引き取りに。およそ2年にわたってずっと使っていたCanon PowerShot S90に続き、レンズ交換式カメラを検討していたのだが、迷った末に結局Sony NEX-5Nに決めた。単焦点のE50mm/F1.8まで購入し、望遠は興味が無いためあとはせいぜいワイドコンバータくらいだろう。このシステムが10万円とかからず揃うとは、すごい時代だ。早速何枚か試し撮りしたが、実に綺麗であること。昼間のショットも楽しみだ。

2012/04/13

サックスオケ×フラメンコ on YouTube

フラメンコのリズム、けっこう好きなのである。きっかけとして、一番最初に興味を持ったのはやはりサクソフォンの作品で、ミケーレ・タディニが作曲したソプラノサクソフォンとMAX/MSPのための「ブレリア」なのだが…ちょっとマニアックすぎるか。

フラメンコは言わずと知れたスペインの伝統的文化のひとつであるが、YouTubeをフラフラとさまよっていたところ、Manuel Urena指揮、Cordoba音楽院の学生で結成されたサクソフォン・オーケストラと、フラメンコ、ギター、パーカッション等の共演動画を見つけた。タイトルを含め、どのような作品か、というところまではわからないのだが、クラシックやらジャズやらが融合し、さらにギターソロ、フラメンコ、タップダンスなどの見せ場などもふんだんに盛り込まれたショウ・ピースといった趣である。全編通して40分以上と長いが、とても聴きやすく面白い。

2012/04/12

Paquito d'Rivera plays Villa-Lobos

正真正銘、あのパキート・デリヴェラである。今更説明するまでもない、ラテン・ジャズ界の大御所だ。デリヴェラというと、私なんかはミシェル・カミロとともに「Caribe」を一緒に演奏している姿が思い浮かんでしまう(どこかで、デリヴェラ最高のソロの一つだとの評を見たことがある)。また、サクソフォンのみならずクラリネット奏者としても有名で、その演奏もおなじみだ。

そのデリヴェラが、なんとエイトル・ヴィラ=ロボスの「ファンタジア」を吹いているCDがあるとは!驚いた。「MUSICA DE DOS MUNDOS(Acqua Records aq012)」という名前のアルバムで、ピアノのAldo Antognazziとともにしっかり全三楽章を演奏している。ジャズ奏者がクラシック作品に取り組んだCDと言えば、真っ先にブランフォード・マルサリスの「クリエイション」を思い出す方がいることだろう。あれはあれで、一つの完成された世界を持っていた所に驚かされたものだ。彼のイベールを聴いたことがない人がいたら、すぐに聴いて欲しいところ。

デリヴェラが「ファンタジア」を吹いても、やはりひとつの"完成された世界"が組み上がっているのだと感じる。ここでいう"完成された世界"とは、テクニック的に優れているということではない。あるベクトルに対するブレない芯を持っていること、そして誰が演奏しているのかということがわかることである。とてもクセのある音色に、ブロウ気味の音圧、楽譜もところどころ変えてしまっているし、技術的にもそれほどスマートというわけではない。…が、ちょっとテクニックがある無個性な演奏よりも、よほど魅力的に聴こえるのだ。

ちなみに、他のトラックではなんとブラームスの「クラリネットソナタ第2番」を(もちろんクラリネットで)吹いてしまっている。こちらは敢えて感想を書かないので、興味ある方はぜひ買って聴いてみていただきたい。

ラッシャー関連の様々な写真

シガード・ラッシャーの功績をまとめるべく、ラッシャー派の聖地とも言えるニューヨーク州立大学フレドニア校のプロジェクトチームが、ラッシャーの音盤の復刻や写真の整理を進めている。商用リリースされたもの以外にも、プライベートな資料についても編纂しているようで、これまで見たこともないような資料が出てくるのが面白い。

Facebook上にもそのプロジェクトのページが存在し、時おりその復刻資料を公開しているのだが、ここ最近、ラッシャーに関わる非常に興味深い写真がいくつもアップロードされている。

http://www.facebook.com/SigurdMRascherCollection

特に、若き日のラッシャーの写真は、これまでごく限定的な幾枚しか残っていないと考えられていたが、さすが、プライベートコレクションにはきちんと残っているものである。Facebookのアカウントを持っていなくとも参照可能なので、ぜひ目を通していただきたい。

2012/04/10

シャポシュニコワ教授のマスタークラス動画

ロシア語なので、話の内容が全くわからないのが残念なのだが…雰囲気はなんとなく感じ取る事ができるような。およそ1時間半におよぶ、シャポシュニコワ教授のマスタークラス動画である。グイグイと引っ張っていく強烈なレッスン。ちょっと強引かと思われるほどの様子のなかに、シャポシュニコワ教授が展開するロシアのサクソフォン教育システムの一片を垣間見るのである。

2012/04/09

リヴィエール「変奏曲」

はやぶさ四重奏団、伺えず…うーむ。やはり平日は難しい。残念。

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ということで、ジャン=ピエール・リヴィエール Jean Pierre Rivièreの「変奏曲 Variations」を聴いている。本日のはやぶさ四重奏団の演奏会で演奏されたはずの作品で、サクソフォン四重奏の世界ではあまり有名な作品ではないが、隠れた名曲の1つとして数えられるに足りる作品であろう。演奏はキャトル・ロゾー。

作曲者のリヴィエールは、1929年生まれのフランスの作曲家。パリ音楽院にて和声学をジャン・ガロンとアンリ・シャランに、対位法とフーガをノエル・ガロンに、伴奏楽を名教師ナディア・ブーランジェに、作曲をトニー・オーバンに、音楽分析をオリヴィエ・メシアンに、音楽教育学をアレクシ・ローラン・マニュエルに、音楽史をノルベール・デュフォーに、指揮法をルイ・フレスティエに、それぞれ師事した。和声学、フーガ、作曲では、一等賞を得て卒業している。1957年には、ローマ大賞を受賞。1956年から57年までは、マドリッドのCasa de Velazquezに遊学し、「Sorcières du Pré au Bouc」を完成させた。フランスに戻り、1959年から60年まではボルドー音楽院で教えた。1967年から68年には、フランソワ・ベルニエに招かれ、ケベック音楽院で教鞭を執っている。1980年にはナンシー音楽院の教授となり、1992年までその地で教育活動に専念した。1983年から84年まではMacon音楽院で、1989年から90年まではHaute-Saone音楽院で教えている。1992年、心臓病を患ってからは作曲活動から手を引き、1995年にはモンペリエにて心臓発作のため亡くなった。

サクソフォンへの興味は、ナディア・ブーランジェに師事していた、ということから説明がつく。1956年に作曲したこの「変奏曲」のほかに、1978年に作曲されたアルトサクソフォンのための「コンチェルティーノ」、そして1982年にダニエル・デファイエ四重奏団に捧げられた「Paralleles」の3つの作品がある。「Paralleles」が完成した1982年という時期は、上に書いたとおりナンシー音楽院にいた、ということで、これはジャン・ルデューとの交流によるものだろう。

「変奏曲」は全部で5つの楽章からなり、一見するとかなりテクニカルに書き付けられた譜面。先の読めない展開は、通常の変奏曲とは一線を画している。サクソフォン的な見せ場も随所に存在し、特に第5楽章の、まるでジェットコースターのような強烈な変奏は、主題の形すらふと忘れてしまいそうになるほどの破天荒ぶりである。

2012/04/08

末広亭にて

この土日、母と祖母が長野より上京したので、東京の各所を案内した。まずは押上にて、スカイツリー→スパイスカフェ→長屋茶房天眞庵(これを文花的はしご、という)、そのあと西へと移動し、長谷川町子美術館→日本海上野毛本店という流れで一日目は終了。二日目は、多摩川沿いを歩きながら桜を観た後、午後は新宿三丁目の寄席、末廣亭にて落語鑑賞。お弁当を食べながら、帰りのバスの時間まで楽しんだ。

さて、今回落語は初めてだったのだが…

(観た部分は、こんなところ)
落語:桂文雀
落語:柳家喬之助
漫才:ホンキートンク
落語:入船邸扇治
落語:林家錦平
粋曲:柳家小菊
落語:古今邸志ん[弓爾]

おもしろいですね!予約というものは無く、当日券(2800円とリーズナブル!)を買って、途中退場市内限り昼の部・夜の部と4時間ずつたっぷり楽しめる。昼の部・夜の部入れ替えナシの場合は夜の部まで通して観られるそうだ。ひとりあたりおおよそ15分から20分、分かりやすく面白い噺が、入れ替わり立ち替わりどんどんと続く。小川のような、淀みない流れの噺に舌を巻き、スイスイと進む噺の中、「ここだ!」という肝要な部分でオチが入り、会場が沸く。

普段サクソフォンのコンサートなど聴きに行くせいか、それに重ねて観てしまう。淀みない音楽の流れ、ここぞというところでの名人芸的なフレーズや情熱的な歌い込み、など。大前提をクリアした上で、最初から最後まで安売りするのではなく、焦点を絞った感動こそ、人の心を動かすものなのかもしれない。

あ、でもホンキートンクの漫才のような、息つく暇もなく、畳み掛けるようなエンターテイメント性溢れるものも、これはこれで良いな、と(^^;それから、粋曲(三味線片手に歌うネタ曲、とでも表現すれば良いのかな)の途中に出てきたこんな都々逸(7,7,7,5のフレーズ)が妙に頭に残っている。

花は口実、お酒は道具、酔ってしまえば出来心…

なんか分かる気がする(ん?)とにかく、落語、一度は観に行かれることをオススメします。昼の部・夜の部のそれぞれ最後には、真打?主任?という有名どころの噺があり、それを目的にするもよし、あまり名前も聞かないような若手の噺を楽しむもよし、いろいろな楽しみ方ができることだろう。音楽以外の表現芸術を楽しむのも、たまには良いですね。また行こうっと。

2012/04/07

リハーサル風景に興味あり

当たり前だが、自分が所属する以外の四重奏団について、そのリハーサル風景を私達が目にすることは少ない。プロフェッショナル/アマチュアの四重奏団についても、同じことが言える。私達が観られる/聴けるのは、何度かのリハーサルを経た後の、多くの場合「完成された」演奏である。

プロフェッショナル団体にしろ、他のアマチュアの団体にしろ、リハーサル風景に興味がある。例えば、誰が発言して、どんな指摘があって、どのように演奏が完成形へと導かれていくのか…。特に、いわゆるプロフェッショナルのサクソフォン四重奏の有名団体は、いったいどんなリハーサルを行なっているのだろう?トルヴェールQは?ハバネラSQは?プリズムSQは?

デファイエQやキャトル・ロゾーは、いくつかの資料にリハーサル風景についてほんの少しだけ述べられている。デファイエQは、ジャック・テリーが「まず最初から最後まで一旦通す。デファイエが、細かく指摘していく」と、デファイエの記憶力の良さにテリーが感嘆している様子が述べられている。キャトル・ロゾーについては、冨岡氏が「稽古の時にほとんどディスカッションしない、誰かが"お願い、もう一度!"とやる」と、その特徴的な雰囲気を述べている。

「公開リハーサル」というような企画があったら、面白いんだけどなあ。オーケストラや吹奏楽ではあるような気がするが、あまり室内楽では聞いたことがない。むしろ、室内楽のほうがもっと面白いのではないかとさえ思っている。マスタークラスともちょっと違うもので、著名な四重奏団体が2つくらい、1時間ずつ公開リハーサルを行う…そんな催しがあったらなあ、と、最近妄想しているのだ。

2012/04/06

ダッパーさん2011年演奏会のライヴCD/DVD

不在連絡票…差出人不明の封筒…なんだなんだと思っていたのだが、本日到着して思い出した。ダ、ダッパーさんの演奏会ライヴDVD!お願いしたのはかなり前だったため、すっかり忘れてしまっていたのであった。CD/DVDの豪華2本立て。オフセット印刷のジャケットまで付属した、丁寧で美しいな装丁に驚いた。ビニルのキャラメル形式包装までかかってしまっているし…。どこかの業者さんにお願いしたのかなあ。

DVDは、曲名のみならず解説までキャプションとして入っており、情報量が多くて面白い。以下、DVDを観ながら書いた感想である。

幕前演奏は、オリジナルがATTBの「L-O-V-E」をバリトン四本で。これ、けっこうリズムも和声も難しくて大変なはずなのだが、バリトン四本での演奏は元のアレンジの魅力を別の方面から引き出すものだと感じた。演奏後の拍手がそれを物語っていると思う。誰のアイディアだったのだろうか?続いて白水徹氏の作品をふたつ。「音の刻-ねのこく-」と「soRa」。ミニマル・ミュージック風、さらにパフォーマンスまで付いた「音の刻」と、美しくバラードふうにまとめ上げられた「soRa」の対比が面白い。「soRa」は、香川大学の皆さんの演奏ということで、香川大学でもサックスが盛んなのかな、と勘ぐってしまった。

鈴木英史氏がアレンジしたサクソフォン四重奏のための「メリー・ウィドウ」は、これはあの有名な吹奏楽のアレンジに近い(ほぼ同じ?)ものだが、おなじみのメロディが次々と出現し、実に聴きやすい!爆速でキリッと演奏されると、かなり演奏効果は高そうだ。おなじみの「バラード・フォー・トルヴェール」も、相当にかっこ良く演奏されている。さらに印象深い「ミニアチュア・シンフォニー」は、ダッパーさんのブログではおなじみの"コラーゲン・カルテット"によるえんそうで、古庄氏を中心とした揺るぎない音楽作り、輝かしい響きが第一部を締めくくるにふさわしいものだと感じた。

第2部は、ダッパーさんの演奏を中心に。チャイコフスキアーナ(伊藤康英先生の、閃きに溢れた筆致!)で華々しくオープニングを飾り、ドラムスを加えて強烈な響きの「Some Skunk Funk」につながる。各プレイヤーも、かなり弾けたソロを展開している。第1回のサクソフォン交流会の時に受けたあの"遠慮しない"感じがひしひしと伝わってくる。そのテンションは次の浅利真編曲「情熱大陸」まで継続し、最後になんとデザンクロ「四重奏曲」全曲!昨シーズンのアンサンブル・コンテストで第3楽章を演奏したとのことだが、第1楽章・第2楽章も技術的に作りこまれており、貫禄の演奏だった。

第3部は、古庄氏の指揮で「イン・ザ・ムード」から。サクソフォン・オーケストラというレベルの大編成は、日本国内ではダッパーさんほど昔から取り組んでいた団体は数えるほどしか存在しないが、さすが、長年続けているだけの素晴らしさが隅々に聴かれる。予定調和的な部分と、思い切りの部分がバランス良く引き出されているのは、古庄氏の力によるところも大きいのだろうか。柏原氏の編曲による「アルメニアン・ダンス パート1」や、メインの大曲ホルストの「木星」、そしてアンコールに至るまで、その傾向は同じだ。

しかし、このサクソフォン・コンサート、いいなあ。やはりライヴで聴きに言ってみたいなあ、と思うのであった。

2012/04/05

演奏会情報:雲井雅人サックス四重奏団@DAC

もう明日となってしまったが、これは書いておかなければ。

同時に「雲カル meets レジェール」などというイベントが企画されているが、まさか「レシテーション・ブック」全曲をレジェールで吹くのか(そんなわけないか)。どのような催しになるか、要注目。とても行きたいところだが、明日は伺うのは難しいかなー。

【雲井雅人サックス四重奏団によるDAC管楽器FAIR2012オープニングコンサート】
出演:雲井雅人サックス四重奏団
日時:2012年4月6日(金)19:00開演
会場:スペースDo(新大久保DAC内)
料金:当日3500円、前売り3000円
プログラム:
D.マスランカ - レシテーション・ブック
W.A.モーツァルト - 教会ソナタ
伊藤康英 - 木星のファンタジー 他

2012/04/04

演奏会情報:はやぶさ四重奏団

国立音楽大学出身の岩渕みずきさんよりご案内いただいた。滝上さんを中心として、国立音楽大学の出身者で結成されたカルテット「はやぶさ四重奏団」である。同じ大学の出身者で固められたカルテットはいくつもあるが、世代を越えて集結したという団体は、ほとんど聞かない。このコンセプトからどのような音楽が生み出されるのか、実に興味深い。

プログラムもかなり面白そうだ。あまり「ふつうの」ラインナップという感じがしない。滝上さんのアイディアなのだろうか。

【はやぶさ四重奏団 デビューリサイタル】
出演:はやぶさ四重奏団(滝上典彦、竹内沙耶香、岩渕みずき、佐藤広理)
日時:2012年04月09日(月)19:00開演
会場:ルーテル市ヶ谷
プログラム:
D.ショスタコーヴィチ/野村秀樹 - 祝典序曲
R.プラネル - バーレスク
J.P.リヴィエール - 変奏曲
J.S.バッハ/栃尾克樹 - イタリア協奏曲
S.プロコフィエフ - 弦楽四重奏曲第2番

チラシのオモテ面は、すばる、ことプレイアデス星団。なかなか素敵ですね(^^)

リニューアルいろいろ

Thunderさんのウェブページ、いつの間にかデザインがリニューアル。3月24日に新しいデザインが適用され、私はたまたまその2日後に見に行って知ったのだった。ブログでもリニューアルについて取り上げられている
http://homepage1.nifty.com/thunder-sax/

Kさんのブログは、Bloggerに移行。この春から音楽大学に進学されるとのこと。
http://saxofocus.blogspot.jp/

Facebookの「ページ」も、いつの間にかデザインが新しくなっていますね。ということで、Tsukuba Saxophone Quartetのページへのリンクを。もうちょっとで「100いいね!」になりそう。
http://www.facebook.com/TsukubaSQ

2012/04/02

Laughter & Tears - A Jewish Saga

なんとも不思議なサクソフォンのCDである。ヘンテコなジャケットに、聞いたこともないような作品。よくよく解説を読んでみれば、ユダヤ系民族にまつわる作品を集めたアルバムということだ。古典的なクレツマー・ミュージックのアレンジ、ホロコーストの描写、イスラエルの音楽など、全編を通してコンセプチュアルにまとめられている。サクソフォン奏者のDale Wolfordは、アメリカ生まれで、モロスコ・サクソフォン四重奏団、サンフランシスコ・サクソフォン四重奏団、ニュークリア・ホエールズ・サクソフォン・オーケストラ等でキャリアを積んだプレイヤー。現在、サンノゼ大学、カリフォルニア州立大学バークレー校で教鞭をとる。ヤマハのアーティストでもあるそうだ。

Traditional/Simon Bellison - Four Hebraic Pictures
Ivan Rosenblum - Shtetl Voices
Boris Levenson - Hebrew Dance
Carl Anton Wirth - Jepthah
Elwood Derr - I Never Saw Another Butterfly
Paul Ben Haim - Three Songs Without Words
Jacob Weinberg - Maypole
Irving Berlin/Ivan Rosenblum - Sadie Salome
Irving Berlin/Ivan Rosenblum - Yiddle on Your Fiddle, Play Some Ragtime

Dale Wolford, saxophone
Ivan Rosenblum, pf
William Trimble, saxophone
Kathleen Nitz, soprano
Sylvie Braitman, mezzo-soprano
Stephanie Friedman, mezzo-soprano
Erica Lann Clark, actress

最初の曲から、民族音楽を奏でるドライなサクソフォンの響きが耳を突く。これってどこかで聴いたことがあるなあ、と思ったら、John Harleの「habanera」に近い音作りだな、と気付いた。そういえば、かのアルバムの一曲目も、ベラ・バルトークの作品だったのだった。至極真っ当な奏法で、純粋に民族音楽の響きを楽しむことができる。圧巻はラッシャー父娘に捧げられたというソプラノサクソフォンとアルトサクソフォンのための「イェフタ」で、強烈なフラジオ音域を伴うソプラノサクソフォンが、作品の特徴をよく表している。

このアルバムの中心に置かれているのが「I Never Saw Another Butterfly」である。テレージンシュタット強制収容所に投獄されていた子供たちの書いた詩を基にした、サクソフォン、ピアノ、ナレーション(歌)のための作品。強烈なメッセージ性を持ち、夢幻的な響きとどうしようもない現実が交錯する。ライナーノートに書かれたテキストを読みながら聴いていると、なんともやりきれないのである。これをキッカケとして、ホロコーストや強制収容所のことなどWikipediaで調べ始めてしまったのだから、ますます気分が落ち込んでしまうのだった。

続けてその魂を慰めるかのような「Eli Eli」に、やや新世代の響きも垣間見える「無言歌」。最後に置かれた2曲は、ボードヴィルふうのなんとも楽しげな作品だった。最初から最後まで聴くと、まるでユダヤ系民族の歴史をたどってしまったかのような感覚に陥る。単に聴き流すことのできない、不思議な魅力を湛えたCDだ。

2012/04/01

芥川也寸志「音楽を愛する人に~私の名曲案内」

芥川也寸志「音楽を愛する人に~私の名曲案内(ちくま文庫)」読了。時折Thunderさんがご自身のブログで話題に出す書籍で、その本について触れられるたび気になっていたところ、Amazonで中古本が安く(送料込み251円)手に入るということもあり買ってみたのだ。作曲家の芥川也寸志(作家、芥川龍之介の三男)が、古今東西のクラシック音楽名曲100曲について、各曲見開き2ページで楽曲紹介のエッセイを書いた、という内容。小さな文庫本サイズということで、あちこち出かけるときには鞄の中に入れ、時々開いていた。普段印字された活字をほとんど読まないので、なかなか新鮮な感覚で読み進めたのだが、あっという間に読了してしまった。これがまた実に面白かった!

これを、100曲の名曲についての単純な楽曲解説書と思ってはいけない。内容は自由形式のエッセイ、である。とある楽曲など、2ページに渡ってきちんと曲の内容が書いてあるかと思えば、その他の楽曲では、楽曲の内容についてはほんの2行、そして他の部分は楽曲に関する芥川也寸志氏の体験談などで埋め尽くされてい場所もあるなど、実に自由奔放。しかし、なぜかこの2ページを読んだだけで、ついその曲を聴きたくなってしまうから不思議だ。

サクソフォンが含まれている作品も数多く取り上げられているが、サクソフォンが含まれていることについて触れられているものは見当たらない。なにせ、楽曲についてまともに解説していないのだから仕方が無い(笑)。ところで、イベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」について見開きで掲載されているのだが、そこで書かれた文章を読んで、芥川也寸志氏がサクソフォンを吹いていた、ということを初めて知ったのだった。Wikipediaにも、次のような一文がさりげなく書いてあった。

1944年10月、学徒動員で陸軍戸山学校軍楽隊に入隊しテナーサックスを担当。このとき軍楽隊の仲間に、東京音楽学校で1級上だった團伊玖磨がいた。

クラシック音楽に関わっている身には、必携の著だ。もちろん、Naxos Music Libraryとの親和性も高く、読んだ次の瞬間には音として確かめられるというあたり、芥川氏が本作を著したその頃には想像も付かなかったのだろうなと、ふと時代の移り変わりに思いを馳せるのである。