2012/09/20

筑波大学サックスコンサート:プログラム冊子の曲目解説

先日の演奏会のプログラム冊子に提供した曲目解説を公開。「トカデ」の文体が少々ユルいのだが、意図的。イベールともなると盛り込みたい情報が多いのだが、それを選定する作業が大変だった。

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アトムハーツ第1楽章:
2009年に手がけた映画「ヴィヨンの妻」で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞、2012年には大河ドラマ「平清盛」の音楽を手がけるなど、今や日本を代表する作曲家の一人となった吉松隆(1953-)。交響曲を始めとする大規模作品ばかりが注目されがちですが、その真髄は「やりたい放題」の室内楽に凝縮されているといっても過言ではありません。中でも人気が高いのが、プログレッシブ・ロックを愛してやまない吉松が、そのエッセンスを散りばめた「アトムハーツ・クラブ・カルテット」。本日演奏する第1楽章がELP「タルカス」の影響下にあることは説明の必要もないでしょう。変拍子を駆使しながら走り抜けるように一気に聴かせてしまいます。

トカデ:
ジェローム・ノレ(1951-)は、フランスの作曲家。世界最強の現代音楽アンサンブル「Ensemble Intercontemporain」にトロンボーン奏者として籍を置く一方、作曲家として聴衆に親しみやすい作品を世に送り出し続けています。その不思議なギャップは、サクソフォン界の語り草となっているほどです。
「トカデ」は5楽章からなる組曲で、クラリネットもしくはサクソフォンの四重奏で演奏されるコンサート・ピース。本日は、決然とした印象を残す「タンゴ」と、16分音符が延々と続く「常動曲」の2曲を演奏します。

コンチェルティーノ:
150年以上に及ぶサクソフォンの歴史の中で、最も優れた作品の一つとされるジャック・イベール(1890-1962)の「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」。楽器の機動性を活かした軽妙な作品で、めまぐるしく変わる曲想がサクソフォンを聴く楽しさを教えてくれます。イベールは20世紀前半を代表するフランスの作曲家で「寄港地(1922年)」や「祝典序曲(1940年)」といった魅力的なクラシック作品を次々と世に送り出す一方、劇伴音楽や映画音楽も手がけていました。サクソフォンのコミカルな側面をよく知っていたからこそ、このような楽しい協奏曲が完成したと言えるでしょう。1935年に完成し、当代随一の名手、シガード・ラッシャーに献呈されています。
タイトルの「カメラ」とは「(室内楽に適した)コンパクトな空間」を表す語で、原曲は小規模のオーケストラとともに演奏されます。本日演奏されるのは、サクソフォン研究家ジャン=マリー・ロンデックスがオーケストラ・パートをサクソフォン合奏に編み直した版で、6種類11本のサクソフォンが独奏パートに華を添えます。

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