2012/09/28

オルガン伴奏で聴くマルタン「バラード」

スイスの作曲家、フランク・マルタン Frank Martinの「バラード Ballade」は、サクソフォン奏者が取り組むべきレパートリーのひとつとして有名である。名手シガード・ラッシャーに献呈されたためか、楽曲中にはフラジオ音域がふんだんに使われており、容易には登攀し難い作品としても知られている。あまりライヴで聴く機会はないが、全般を通して「渋い」響きが大半を占めるためか、難しさの割に演奏効果が上がらないためだろうか?

通常、ピアノ伴奏やオーケストラ伴奏で演奏されるが、最近、このマルタン「バラード」のオルガン伴奏版があることを知った。「Spectrum Saxofonis Vol.2(Musicaphon m56843)」Jakoba Marten-Busingというオルガン奏者の編曲によるもの。どんな経緯で編曲されたかは良く分からないが、CDとして出版されているということは何かしらの許可等は取っているのだろう。独奏は、ラッシャー派の高弟の一人として有名なHarry K. White氏。

ピアノ版やオーケストラ版では「間が持たない」印象のあったおどろおどろしい冒頭部分が、オルガンだとこのように違和感なく聴ける、ということに驚いた。ラッシャー派独特の音色は、オルガンの音色と実によく融け合い、おどろおどろしいだけではない、その奥に見える美しさをも表現する事に成功している。速い部分は、オーケストラ版に比べればやはり少々色彩感に乏しいが、それでも実に健闘している。オルガンがこのような多彩な表現が可能だ、ということに驚かされた。

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