2012/05/31

Michael Colgrass - Urban Requiem on YouTube

アメリカのサクソフォン四重奏団、Lux Quartetが、Lawrence Universityの吹奏楽団と共演し、マイケル・コルグラスの「アーバン・レクイエム」を演奏した動画を紹介する。すでにいくつもの賞を獲得し、新世代の四重奏団として力をつけつつあるLux Quartetだが、以前グラスか何かの協奏曲を同じくYouTubeで聴いたときとは別格の印象だ。驚異的な集中力で演奏が進み、バックの吹奏楽団も的確なサポートを展開している。

2012年5月に行われたLawrence University Wind Ensembleの演奏をまるまる収録したムービー。Lux Quartetの演奏は、11分くらいから始まる。


ブリュターニュのアカデミー

ブルターニュのサクソフォンアカデミーが、定員締め切りまであとわずかであるようだ。

http://alexandresouillart.com/accueil_ac_jp.html

アレクサンドル&ヒロエ・スーヤ夫妻よって主催されているアカデミーで、今回が第1回目の開催。日本からの参加者にとっての魅力は、やはり安井寛絵さんがいることによる日本語でのサポートだろう。国外の講習会で日本語OKという話はこのアカデミー以外聞いたことがないので、国外のアカデミーに興味ある方にとって最初の選択としては良いのではないだろうか。8月かー、今年は7月に渡欧予定があるのでさすがに厳しいが、夏休みとかぶっているなら来年考えてみようかな(なんちゃって)。

2012/05/30

WSCイベント追加

WSCのページ更新が行われている。いつの間にか「スペシャルイベント」のリストが追加されていた。Open Day、サックス大合奏的なイベントや、ジャズ・オーケストラの演奏など、盛りだくさんである。

http://www.wscxvi.com/programme.php

イベント内容から考えるに、11日が吹奏楽の協奏曲、14日の夜がオーケストラとの協奏曲になりそうだな…。旅程のため、14日以降の日程は残念ながら聴くことができない。

2012/05/29

雲カルチケット売り開始

昨日の10:00より、9/30の雲井雅人サックス四重奏団のチケット売りがチケットぴあにて開始となった。座席数も限られているようなので、早めのご購入を!バッハの「ゴルトベルク変奏曲」全曲と、マスランカ氏の委嘱新作世界初演の場となる。

http://ticket.pia.jp/pia/event.do?eventCd=1223069

チケットぴあは久々に使ったが、指定席確保はなかなか厄介ですな。好きな場所を選べないというストレスが…(苦笑)。これでチケットぴあ利用料として210円上乗せされるのだから、なんともいえない気分になってしまう。

2012/05/27

この土日

オフの土曜日、午後練習のみの日曜日…かと思ったら、そうでもなかった。

土曜日は平日に荒れ放題となった部屋を午前中に片付け、そのあと楽譜のスキャン作業に精を出す。夕方からスタジオに出かけて個人練を行い、帰ってきてから再び楽譜関連の作業。日曜日は、やはり楽譜関連の打ち込み作業、午後はTsukubaSQ練習に出かけ、帰ってきてからはベルギーの宿泊場所探し。サクソフォン交流会関連の業務も積み上がっており、けっこうヤバイ。いやはや、来週末もこんな感じかしらん(笑)せめて平日に時間がもう少し取れると良いのだが、繁忙期を迎えており、難しいかも。

Fabrice Moretti plays Debussy

ファブリス・モレティ氏が、5月10日にタン・ドゥン指揮フランス国立管弦楽団の演奏会にゲスト出演し、ドビュッシーの「ラプソディ」を演奏した。この演奏会では、ドビュッシーのサクソフォンのための狂詩曲とクラリネットのための狂詩曲が取り上げられたほか、タン・ドゥンの自作「Intercourse of Fire and Water」と「Death and Fire, Dialogue de Paul Klee」が演奏された。

その模様を、録音で楽しむことができる。ラジオ・フランスが運営するfrancemusique.frというサイト中のページで、下記のリンクから聴くことができる。この録音は、公開から一ヶ月間、6月9日まで聴くことができる。

http://sites.radiofrance.fr/francemusique/em/concert-soir/emission.php?e_id=80000056&d_id=440001420

オーケストラはベストとは言えないかもしれない(特に冒頭)が、後半に向けて熱を帯びていく様は見事だ。指揮者の力量によるところが大きいのだろう。モレティ氏のサクソフォンは、もちろんソロを拡張せず、ロジェ・デュカス編そのままの音を吹いている。ずいぶんとオンマイクで捉えられており不自然な感じも受けるが、それでもその美音には惚れ惚れしてしまう。フレージングは、師匠のデファイエ氏譲りな部分が散見されるような気がする(何度か聴いたら印象が変わるかもしれない)。

ということで、ご興味ある方はぜひ聴いてみていただきたい。

2012/05/26

2012年後半の注目リサイタル2つ

まずはひとつめ:2012年9月30日、雲井雅人サックス四重奏団@銀座ヤマハホール。マスランカ氏がアレンジして雲井雅人サックス四重奏団に献呈したJ.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」全曲と、マスランカ氏の新作オリジナル作品。詳細はいずれ出てくることでしょう(チケット売りはまだ始まっていないみたい)。
この前日は、Tsukuba Saxophone Quartetとアンサンブルサクゴレンさんのジョイントコンサートである。バッティングしなくて良かったーー!!

ふたつめ:2012年10月13日、クロード・ドゥラングル教授@静岡音楽館AOI。2007年に聴いたあの伝説的リサイタル、ふたたび。先日も書いたが、もう一度書いちゃいます(笑)。最も注目すべきは、野平一郎氏のサクソフォンのための新作…しかもエレクトロニクスとサクソフォンという編成、と、聴くことができることだろう。
http://www.aoi.shizuoka-city.or.jp/detail/0_detail.html?public_uid=1613

いやー、なんだか楽しくなってきた!

演奏会案内:Saxaccord Vol.4

國末さんからご案内いただいた。一年に一回のペースで演奏会が企画されており、以前から気になっていたのだが、今年はようやく伺えそうだ。チラシもいつもどおりかっこいい(ファンがたくさん付きそうだ)。毎回、きっちりとしたコンセプトのプログラムだが、今回はさながら"クラシック名曲真剣勝負"といったところだとうか。どんな響きが飛び出すのか、楽しみなのである。オペラシティのリサイタルホールという会場の選択も、ピアニストとの共演という点でベストかもしれない。

【Saxaccord Vol.4】
出演:成田良子(ピアノ)、二宮和弘、有村純親、山田忠臣、國末貞仁(サクソフォーン)
日時:2012年5月29日(火)19:00開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール
料金:4,000円(全席自由)
プログラム:
グリンカ(金井宏光編曲) - 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ドップラー - アンダンテとロンド Op.25
バッハ - トリオ・ソナタ ト長調 BWV1039
チャイコフスキー(名倉明子編曲) - 白鳥の湖 より
チケット取り扱い:
ヤマハ銀座店管楽器売場  03-3572-3134
ヤマハアトリエ東京  03-3574-0619
東京オペラシティチケットセンター 03-5353-9999
問い合わせ先:ヤマハアトリエ東京 03-3574-0619


四重奏の選曲のこととか

ウケの良い曲ばかりをやっても団体の技術力は向上しないし、難しい曲ばかりをやっても演奏の機会が限られる。双方をバランスよく配置してゆくのが良いのかなあと考えている。技術的に挑戦しがいのある曲や、規模の大きな曲を1年に2曲~3曲ほど取り組み、その合間で簡単な曲を合わせて各演奏機会に充てる。大曲に関してはコンクールや審査用録音や自主公演等に使い、必然的に質の向上を図らざるを得ない状況を作り、団体としてのアンサンブル力向上を図っていく。そこで得た技術力をもとにウケの良い作品・わかりやすい作品の演奏をこなしていく、というのがベストなのだろう。

Tsukuba Saxophone Quartetは、今のところバランスがとれているかなあ。日本サクソフォーン協会のコンクールはやはり貴重だ。15分程度の緊張感ある舞台など、なかなか得られるものではない。また、自主公演の場ではできるだけ困難な作品に挑戦していきたい。いくつかネタもあるので、今後どのように進めていくか思案しているところ。

2012/05/24

ニキータ・ツィミン氏YouTubeアカウントと最新動画

セルゲイ・コレゾフ Sergey Kolesov氏と並ぶロシアの俊英といえば、ニキータ・ツィミン Nikita Zimin氏の名前が上がるだろう。第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールでセミファイナリスト。第5回のアドルフ・サックス国際コンクールでは第2位を受賞し、現在はパリ国立高等音楽院在籍中。

そのツィミン氏のYouTubeアカウントをご存知だろうか。オリジナル曲からアレンジまで、高クオリティかつ熱い演奏が楽しめるため、私も時々チェックしている。→http://www.youtube.com/user/sprizh

その最新のアップロード動画に、なんと須川展也氏の姿が!何かと思ったら、最近須川氏が行ったロシアツアーの際に行われたマスタークラスを取材したニュースの映像であるようだ。ツィミン氏は、「ファジイバード・ソナタ」で受講したようだ。



小柳美奈子さんが動画中で発するロシア語にも注目。たぶん、пирожкиって言っているのだが…なぜこの一瞬のカットを狙ったんだ(笑)>テレビ局

松下洋さんリサイタルの曲目解説

松下洋さんのリサイタルに提供した曲目解説を公開する。執筆にあたってのリクエストは「kuriさん節全開で」というもの。ひと月かけて、じっくり書いてみた。

プログラム冊子には、下記の曲目解説とともに松下さんの日記風文章が並列して掲載され、読み手が対比を楽しめるように工夫されていた。実はその手法、けっこう良いのではないかな?単に情報を書き並べるだけではつまらないし、あまりに主観的すぎても実体が見えないし…思い切って2つ並べた時に、あのような効果が出るとは思わなかった。それにしても、その松下さんの文章がすごく面白かったんだよなあ…やられた!という感じ(笑)

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ディヴィッド・マスランカ「サクソフォン協奏曲」第1楽章
 キリスト教的世界観や高度な精神性を躊躇することなくサクソフォン音楽の世界に持ち込み、本来サクソフォンという楽器が持つやや低俗的なエッセンスとはかけ離れた音楽を紡ぎ出すディヴィッド・マスランカ(1943 - )。発表されるいずれの作品も、ひとところに捉えきれないスケール感を持ち、演奏者・聴衆双方から大きな驚きを持って迎えられている。
マスランカ氏の名前は、日本国内においては、雲井雅人サックス四重奏団が取り上げた「マウンテン・ロード」の初演・録音以降、幅広く認知された感がある。氏の作品をレパートリーとして取り込んでいる国内サクソフォン奏者・団体も、ここ数年で急増した。特に、1980年代から90年代にかけて制作された独奏作品群に、再評価の大きな動きがあることは、実に喜ばしいことだ。
 1999年に書かれた「サクソフォン協奏曲」は、マスランカがサクソフォンのために書いた作品の中で、最も大きな規模を持つ作品である。アルト・サクソフォンと吹奏楽のために書かれ、なんと全5楽章42分に及ぶという。本日は、情緒あふれる美しいメロディが印象的な第1楽章「地上の火」が取り上げられる。この不思議なタイトルは、マスランカが秋深まるモンタナの山中を歩いている時に目に飛び込んできた3つのイメージ…朝日を受けて輝く木、山々が冠する雪、足下の緑色の草から着想した、次の詩から取られたものである。

 地上の火/天国の雪/11月半ば、緑なすところ

ジョージ・ガーシュウィン「3つの前奏曲」
 ジョージ・ガーシュウィン(1898 - 1937)は、20世紀初期に活躍したアメリカの作曲家。主にポピュラーソングの方面で頭角を現したが、クラシック音楽にも取り組み、「古き良き」時代のアメリカ音楽シーンを一手に担った偉大な音楽家である。ニューヨークに生まれ、貧しい中独学でピアノを学び、まだ10代の頃から小さな出版社で専属ピアニストとして生計を立てていた。作曲を始めたのもこの頃だが、1919年に発表した「スワニー」の大ヒットにより、人気ソングライターの仲間入りを果たした。
 「3つの前奏曲」は、1926年の作品。およそクラシック音楽のような名前からは想像できないほど、ジャズ&ブルースの影響を大きく受けた作品。いずれの曲も2~3分程度とコンパクトな中に、聴き手を楽しませる仕掛けが満載の、とても楽しい作品だ。ピアノ独奏作品として書かれたが、この曲に魅せられた様々な演奏家達が自身の演奏する楽器のためにアレンジを行っている。サクソフォン版は、現代ロシアを代表するサクソフォン奏者、マルガリータ・シャポシュニコワによって手がけられた。

スティーヴ・ライヒ「ニューヨーク・カウンターポイント」
 ミニマル・ミュージックの先駆者として、フィリップ・グラス、テリー・ライリーらとともに「ミニマル三羽烏」とも称された鬼才スティーヴ・ライヒ(1936 - )。「カム・アウト」に代表される音素材のモアレを狙った作品や、「18人のミュジシャンのための音楽」に聴かれるような多重パルスを効果的に使用した作品等が有名である。小難しい"ゲンダイオンガク"と比較したときに耳あたりの良い響きが功を奏したのか、ジャズやロックの世界にもライヒのファンは多いと聞く。70歳を超えてなおその作曲・演奏意欲は衰えるところを知らず、2010年にはオペラシティ文化財団の招聘により国際作曲コンクール審査のために来日、それに併せて行われた東京オペラシティでのリサイタルが聴衆の大喝采を浴びたことは記憶に新しい。
 「ニューヨーク・カウンターポイント」は、エレキギターのための「エレクトリック・カウンターポイント」や、フルートのための「バーモント・カウンターポイント」とともにシリーズ化されており、いずれの作品も同一のコンセプト…演奏者が複数の自分自身と"共演"を試みる…の下に制作されている。すなわち、楽譜には12段のパートが書かれており、そのうちの11段をあらかじめ録音し、トラックを編集して重ねておく。演奏会場にはスピーカーとマイクが配置され、スピーカーからはあらかじめ録音された11パートを流し、その場で最後の1パートをマイクを使って重ねるのだ。ここから生み出されるのは、ライヒが夢見た未知の響きである。

ジョン・マッキー・スペシャルステージ
 フィラデルフィアに生まれ、ジュリアード音楽院、クリーヴランド音楽学校を卒業したのち、めきめきと頭角を現したジョン・マッキー(1973 - )。すでに人気作曲家の仲間入りを果たし、オーケストラ作品から吹奏楽、室内楽作品にいたるまで、世界中の演奏家のために作品を提供している。時にジャズやロックの要素を取り込みながら、いずれも非常に技巧的かつ演奏効果の高い作品を発表し続けており、その人気の高さも頷けるというものだ。
 今回は、松下洋が作曲家とのコラボレーションのもと準備を進めたスペシャル・ステージが披露される。果たして、どんな曲、どんな編成、どんな演奏が飛び出すのか!?

ジョン・ウィリアムズ「エスカペイズ」
 誰もが知る映画音楽の大家として、ポップス・オーケストラの指揮者として、八面六臂の活躍を続けるジョン・ウィリアムズ(1932 - )。キャリア初期にはアメリカ空軍の音楽隊で指揮者・編曲家として活動、除隊後にTV・映画へのサウンドトラック提供の分野へと活躍の場を移し、才能を開花させた。多才な音楽家の一人として活動を続け、今なお多忙な日々を送りながら、世界の音楽界に貢献し続けている。厳格なクラシック音楽の形式を保ちながらも、提供先の映画やアトラクションにフィットした派手な音響効果を編み出す手腕は「スター・ウォーズ」「E.T.」などのフィルムスコアや、「ロサンゼルスオリンピック・テーマ」などの超有名ファンファーレでもおなじみ。アカデミー賞5回、グラミー賞18回という受賞歴にも、納得である。
 スティーブン・スピルバーグ監督の映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002)」は、逃亡する天才詐欺師とそれを追うFBI捜査官の姿をコミカルに描いた作品。レオナルド・ディカプリオとトム・ハンクスが共演し、映画としても高い評価を得ている。同作品のフィルムスコアのほとんどは、実質的なサクソフォン協奏曲として書かれている。その中から組曲として3曲を取り出し、編み直したのがこの「エスカペイズ」である。

ロベルト・モリネッリ「ニューヨークからの4つの印象」
 ロベルト・モリネッリ(1963 -)はイタリアで活躍する音楽家。ボローニャ室内管弦楽団の芸術監督や、ペスカーラ音楽院のヴィオラ科講師を務める傍ら、作曲家・アレンジャーとしても活動し、世界的に知られている。サクソフォンのための作品は、2001年に発表した「ニューヨークからの4つの絵」のみであるが、サクソフォン界における同曲の人気の高さは相当なもの。オーケストラ版のほか、ピアノ版、弦楽合奏+ピアノ版などがあるが、本日演奏されるのはサクソフォン12重奏の版。強力なバックアップを得て、20分に及ぶこの大曲を松下洋が華麗に歌い上げる。
 第1楽章「夜明け」は、大西洋から昇る朝日を想起させるような暖かい音楽…どこか日本的な旋律も垣間見える。第2楽章「タンゴ・クラブ」は、タンゴの情熱的なリズムに乗せてサクソフォンが砲哮する。第3楽章「センチメンタル・イヴニング」は、テナーサックスの甘いメロディが、夕日に沈むマンハッタン島を想起させる。第4楽章「ブロードウェイ・ナイト」は、リサイタルの最後に相応しく、華やかに疾走する音楽。全編と通して楽しさに満ちた音楽の裏に、世界中の人々がアメリカに対して抱く複雑な感情…ひとことでは言い表すことのできない、アメリカに対する情熱・憧憬・嫉妬・畏怖が混ざった感情が体現されていると感じるのは、私だけだろうか。

2012/05/23

松下洋サクソフォンリサイタル:Lucky to be me☆

いや~、楽しい演奏会だった!クラシック・サクソフォンのリサイタルを聴いたあとの、こういった聴後感は初めてだな。演奏会情報の記事でも書いたが、リサイタルというよりフェスティバル。出し惜しみせず、聴衆全員を満足させるまでの妥協ないスタイルに感銘を受けた。

【松下洋サクソフォンリサイタル Lucky to be me☆All Americans】
出演:松下洋(sax)、岩本健吾(pf)、田村哲(cond)、加藤里志、丸場慶人、小澤るい、山下真実、海老原恭平、上野耕平、藤本唯、竹内理恵、塩塚純、高桑啓、小川卓朗、野田薫、中島諒、関聡、石川勇人(以上sax)、白井愛子、穴井豪(以上dance)
日時:2012年5月21日(月)19:00開演
会場:横浜みなとみらいホール・小ホール
プログラム:
D.マスランカ - サクソフォン協奏曲より第1楽章
G.ガーシュウィン - 3つのプレリュード
S.ライヒ - ニューヨーク・カウンターポイント
J.ウィリアムズ - エスカペイズ
J.マッキー - Sultana, Damn, Strange Humor, Rush Hour
R.モリネッリ - ニューヨークの4つの絵
~アンコール~
L.バーンスタイン - Lucky to be me

「こだわり」と一言で済ませられるレベルをゆうに超えた、終始一貫した見事な演奏会。夢見たり、実現可能性を考えたりはするけれど、このようなプログラムや編成を実現できてしまうのは、もしかしたら日本では松下洋さんだけかもしれない。まったく凄いことだ。「All Americans」というサブタイトルが付いているが、マスランカとガーシュウィンとライヒとウィリアムズ、そして後半にマッキーとモリネッリ並べても、ここまで違和感がないのかと驚いた。聴く前から期待してしまうというものだ。仕事がおしたが、みなとみらい駅からダッシュしたおかげで何とか一曲目には間に合った。みなとみらいの小ホールは大混雑。松下さんや共演者のお友達と思われる音大生っぽい方々に加え、一般のお客様も3割ほど。

一曲目のマスランカから、美しい響きに心奪われた。松下さんの演奏の魅力は何よりその求心力にあると思っているのだが、冒頭のピアノの連打から始まる部分にコラールのメロディが乗ってきたところからゾクゾクした。音をばらまく中間部分も、すらすらと実に見事に吹きこなしてゆく。そして、驚いたことにほぼ全ての曲において暗譜だ!ピアノとの密なアンサンブルも魅力的であった。ガーシュウィンは、これは冒頭から松下さんの独壇場だ。ボーンカンプ氏に送ってもらったというシャポシュニコワ編の仕掛け・飛び道具満載の楽譜を、松下さんなりに料理して吹いていたのが印象的だった。

ライヒは、この会場では初めて聴いた方も多かったことだろうが、演奏終了後のざわ付き具合は一番だったかも(笑)。確かに、あのパルス風の音楽が、静かな中間部を経てスウィング風に変化するなど、先の読めない展開は新鮮に映るのであろう。この耳あたりの良さ→かっこ良さという変化は、やはり憎い。松下さんの今回の演奏は、ソフィスティケイトされた響きよりもむしろ生っぽいデッドな響きを全面に押し出した演奏で、ちょっと意外だった。第3楽章へのハマリ具合はなかなか(バリトンの音場はもう少し近いほうが好みだったか)。「エスカペイズ」では、全体の構成感を捉えつつ、最後に向けて爆発させる手腕が素晴らしい。

さらにパワーアップしての後半は、まずジョン・マッキーの作品を4連続!リズムを効果的に使った名曲を楽しむ。マッキー氏の公式サイトから、元の編成での演奏を聴くことができるのだが、事前予習していったはずが逆にやられた!という感じだった。4曲を、サックス+ピアノ→サックス+パーカッション×2→サックス4本+パーカッション+ダンス→サックス5本+パーカッション+ダンス…徐々に最高のテンションへと繋げ、これが面白くないはずがない。常にイケイケ系だった小川さんのバリサクすげー。ダンサーも、白井愛子さん、穴井豪さんという豪華な布陣、しかもインプロヴィゼイションを交えながらのプレイに、大いに盛り上がった。

続くモリネッリも、マッキーでの賑やかなあとにどうなることかと思ったが、こちらも素晴らしい演奏だった。豪華な布陣となった指揮者+12本のサクソフォン、それぞれがきちんと役割を担いながら、見事に松下さんをバックアップしていた。このメンバーを集められるのは、やはり松下さんの人柄だろうか。最後の曲ももちろん暗譜。第1楽章:やや日本風の美しいメロディを歌い上げるところなどとても感動したし、第2楽章のオーヴァーブロウ、第3楽章のジャ・サクソフォンそのままの音色(松下さんがこのようなスタイルもこなせることに驚いた)、第4楽章の、松下さんのウェニアンの「ラプソディ」を思い出させる集中力は、締めくくりに相応しい演奏だった。アンコールは「Lucky to be me」。美しい音色で演奏され、まるでブラームスかマーラーの歌曲のように聴こえたのだが、バーンスタインの作品だったのか。

終演後、みなさんがロビーで口々に「楽しかった」と言っているのが印象的だった。演奏終了後は、打ち上げに一次会→二次会と参加(笑)。さすがに寄る年波には勝てないということを思い知った…(笑)でも、初めてお会いする方を含め、いろいろな方とお話できて楽しかった。

本リサイタルにあたって提供した曲目解説は、後日ブログで公開する予定。

2012/05/20

彦坂氏と新井氏のデュオアルバム

ずっと入手していなかったのだが、ようやく聴いた。彦坂眞一郎氏と新井靖志氏のデュオアルバム。デュオといえば、古くはジャン=マリー・ロンデックス氏とポール・ブロディ氏のルクレール&テレマン作品集あたりに始まり、最近では須川展也氏とケネス・チェ氏の委嘱作品群を集めたCDあたりまでが思い浮かぶ。ソロやカルテットといった華やかな編成の裏で、ごく小さな規模で、しかし着実に醸成が進んだのがサクソフォン・デュオだ。魅力的で取り組んでみたいと思える作品も多い。

私なんかは比較的最近の作品に惹かれるのだが、古典的なレパートリー(昔から演奏されている編曲もの)もまた粒揃い。このアルバム「6 Caprices(Meister Music MM-2024)」での選曲は見ての通り古典中心なのだが、あえてこの曲目でアルバム作成を決断したのが面白い。メインの選曲を行ったのは誰なのだろう。

J.M.ルクレール - 2本のサクソフォンのためのソナタ
J.Sバッハ - インヴェンション
C.P.Eバッハ - デュオ
W.F.バッハ - デュエット第4番
W.A.モーツァルト - デュエット第3番
P.M.デュボワ - 2本のサクソフォンのための6つのカプリス
C.ケクラン - 2本のサクソフォンのための24のデュオ 作品186より
P.ヒンデミット - 2本のアルトサクソフォンのためのコンチェルトシュトゥック

日本を代表する奏者のデュオということで、基本的な部分を全てクリアして上手なのは当たり前。注目すべきは鼻歌でも歌うような自由さである。ガチガチに固められた予定調和な音楽ではなく、もっとのびのびと即興的に筆を走らせている。テンポも自由なもので、ルクレールやバッハの作品をこのように作った録音(セッション録音というようり、ライヴでも聴いているようだ)は初めてだ。

レパートリー的にも、なかなか演奏されないデュボワの「6つのカプリス」が入っているのが気に入った。デュボワの他の作品と同様に、妙にテクニカルながら聴き手を楽しませることに徹した作品で、このお二人の演奏で聴けるとは贅沢なことだ。カプリス…奇想曲の雰囲気に、アルバム全体が支配されている。

友人の披露宴二次会~三次会

昨日は、大学時代の吹奏楽団の同期(女性)の、披露宴2次会~3次会に参加した。新郎新婦ともに楽器を吹くこともあってか、お互いの所属していた吹奏楽団でのお知り合いのメンバーがたくさん集まり、なんと100人超の出席者(!)。とても楽しい会だった。

会の最初には、「宝島」「オーメンズ・オブ・ラブ」、そして新婦にナイショで集まって合奏練習した、いきものがかり「ありがとう」(ご夫妻の思い出の曲だとのこと)を演奏。私もテナーサックスで参加。70人の合奏はすごかった(笑)。その後もフォトアルバム上映やクイズ大会など、終止和やか&楽しい雰囲気で進行した。

最後に撮った集合写真。まさか換算24mmがここで役に立つとは思わなかった(スペースの都合上、これ以上後ろに下がれなかったので…)。高解像度の写真は、Facebookにアップロードしてある。

2012/05/19

松下洋さんのリサイタル"Lucky to be Me"ご案内

洗足学園大学を主席で卒業したのち、現在東京芸術大学に在籍しているサクソフォン奏者、松下洋さんのファーストリサイタルをご案内。

なんだかとんでもないことになっている。プログラムは聴きやすくかつ技術的にも音楽的にも内容が濃い曲目ばかりで、非常に楽しみだ。松下さんの演奏の魅力は、聴き手を一度捉えたら離さないその求心力にあると思っている。このプログラムはそんな松下さんにぴったりなのでは。

そしてこの豪華絢爛さ。リサイタルというより、これはもうフェスティバルに近いな…。また、共演者は名前を聞いたことのあるプレイヤーばかりだが、この布陣をバックにモリネッリのサクソフォンアンサンブルバージョンを吹くとのこと。いったいどんな演奏になってしまうのだろうか(笑)。

私もこのお祭りにちょっとだけ加担。全曲の曲目解説を書いている。書き方リクエストが「kuriさん節全開で」とのことで、よし来たと何度も推敲しながら書き下ろした。松下さんのコメントと並列掲載されるとのことで、その試みも面白そう。朝の金環日食を楽しんだ後、昼はそれぞれの仕事に勤しみ、皆さん、夜はみなとみらいホールに集合しましょう!

【松下洋サクソフォンリサイタル Lucky to be me☆All Americans】
出演:松下洋(sax)、岩本健吾(pf)、田村哲(cond)、加藤里志、丸場慶人、小澤るい、山下真実、海老原恭平、上野耕平、藤本唯、竹内理恵、塩塚純、高桑啓、小川卓朗、野田薫、中島諒、関聡、石川勇人(以上sax)、白井愛子(dance)
日時:2012年5月21日(月)19:00開演
会場:横浜みなとみらいホール・小ホール
料金:学生1500円、一般2000円(当日各500円増)
プログラム:
D.マスランカ - サクソフォン協奏曲より第1楽章
G.ガーシュウィン - 3つのプレリュード
S.ライヒ - NYCP
J.ウィリアムズ - エスカペイズ
J.マッキー - ???
R.モリネッリ - ニューヨークの4つの絵
問い合わせ:
yo_14th@yahoo.co.jp

※チラシ画像はクリックして拡大



2012/05/17

たまにはフルートの話題… on YouTube

東京フィルハーモニー交響楽団、主席フルート奏者の斉藤和志氏の演奏動画。サクソフォン以外の楽器の演奏にも、たまに「これは楽器を問わず聴いて欲しい!」というものがあるのだが、この動画はここ最近で一番のヒットだ。ローランド社のループサンプラー"RC-50"を活用したジョン・コルトレーン「ジャイアント・ステップス」なのだが、まあ聴いてみてくださいな。

"Giant Steps" for Flutes and Loopsampler (RC-50)


それにしても、フルートでここまでぶっ飛んだ演奏をする人がいるとは思わなかった。門外漢なりに、例えばラテンジャズのディヴ・ヴァレンティノとか、マリオ・カローリ氏とか、木ノ脇道元氏あたりの名前&演奏は聴いたことがあったのだが、斉藤和志氏の名前は初めて知った。東京フィルハーモニー交響楽団は、ヴァイオリンのトップに荒井英治氏がいて、フルートのトップに斎藤和志氏がいるのですね(笑)すごいなあ。これでクラリネットに十亀正司がいたら完璧だな。

2012/05/16

NML上のオススメ録音

NML上のオススメ録音について、以前ツイッター上で投稿した内容をこちらに書き写しておく。こうして見てみるとやはりツイッターって文字数が少ないのだな。かなりたくさん書いたと思ったのだが、せいぜい1日分の記事の分量だ。

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クラシック・サクソフォンに関連したNML上のアルバムに関するツイートをいくつか。最近、登録CDの総数が60000枚を超えたというが、さすがにこれだけあればサクソフォンのCDも充実しているようだ。

Etcetraレーベルから出版されていたアウレリア四重奏団のアルバム。1枚は、ラヴェル、ドビュッシー等の弦楽四重奏曲をアレンジしたもの。もう1枚はフランス産のオリジナル作品集。大胆さにおいて、これらのCDの右に出るものなし。
http://ml.naxos.jp/album/cc72331

アンドリュー・スティラーの「チェンバー・シンフォニー」といえば、日本国内では雲井雅人サックス四重奏団のアルバムが有名だが、おそらく世界初録音となったのはこちらの盤。聴き比べてみると、アプローチの違いに驚く。
http://ml.naxos.jp/album/innova516

ドイツの若手四重奏団だが、テクニックは相当なもの。演奏困難な現代作品を見通しよく演奏している。特にエルッキ=スヴェン・トゥールの「哀歌」は、サクソフォン四重奏の中で例外的なほど強いメッセージ性を持つ作品。心動かされる。
http://ml.naxos.jp/album/gen10164

聴いて楽しい!イタリアのフェデリコ・モンデルチが、オーケストラとともにDelosに吹き込んだ映画音楽集。さらに「ニューヨークからの4つの絵」も入っているが、この流れのなかで実に違和感なく収まっている。
http://ml.naxos.jp/album/de3337

クラシック・サクソフォンの限界を聴きたいならこのアルバムを。ノルウェーのヨリエン・ペッテションによる現代ソロ作品集。初めて聴いたときはあまりの強烈さに腰を抜かした。
http://ml.naxos.jp/album/ps-cd81

ラーションの「サクソフォン協奏曲」で目下気に入っているのがこのアルバム。テクニック・音色・芸術性ともすばらしい。独奏はクリステル・ヨンソン。…オクターブ下げているんですけどね(^^;
http://ml.naxos.jp/album/cap21492

ドイツのアルテ・カルテットによる、民族音楽ともジャズともロックとも区別がつかないような、面白いアルバム。この楽しさは、聴いてみなければ始まらない。
http://ml.naxos.jp/album/mar-1804

2012/05/15

WSCの曲目公開

WSCの、各団体の演奏プログラムが公開されている。下記リンク先に飛び、団体名をクリックすると、バイオグラフィ、プロフィール写真とともに、演奏曲目の情報が掲載されているのが見られると思う。演奏曲目に(☆)マークが付けられているのは、おそらく世界初演の作品を示しているのだろう。

http://www.wscxvi.com/programme.php

各演奏者、実に面白そうなプログラムを用意してきている。超スタンダード曲あり、無伴奏あり、エレクトロニクスの新作あり、即興あり…多士済々とはこのことか。どこまで観ることができるかは分からないが、楽しみだ。

ミュージック・フォー・シネマ

昨日の女川町出島での演奏のことを思い出しては噛み締め…まだまだ消化しきれていないのかもしれない。

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トルヴェール・クヮルテットが本多俊之氏と共演したアルバム「High Five(TOCT-9948)」。収録されている楽曲の中で一番好きなのが「ミュージック・フォー・シネマ」である。伊丹十三監督作品のBGMを、マルサの女2~あげまん~ミンボーの女~スーパーの女~マルタイの女~マルサの女という順番でサックス5本で表現してしまったアレンジだ。シンプルで耳に残るメロディが印象的な本多氏の作品と、サクソフォン5本の合奏はとてもマッチするように思える。アレンジが作曲者本人、吹いているのも本人なのだから、上手くいかないはずがないのだが、それにしたってこの効果は稀なものである。人気の「スペイン」よりも、最終的なアレンジの完成度は高いかもしれない。

実はいまTsukuba Saxophone Quartetで練習を進めている。本当はJ.C.Naudeの某作品が演奏したかったのだが、まあそれはまた今度。たまにはこのような聴きやすい曲をやるのもアリだろう。6/16の第3回サクソフォン交流会でお披露目予定。

2012/05/13

出島(いずしま)でのTsukubaSQ演奏

Tsukuba Saxophone Quartetのメンバーで、宮城県の女川町出島(いずしま)にて演奏してきた。

12日に仙台入りして前泊。2006年に三週間ほどインターンのため滞在したことのだが、東口も西口も、以前と変わらない駅前の様子を懐かしんだ。

日があけて本日13日、雲ひとつない晴れ空の下、まずは女川町へ。今回のお話を頂戴したKさんと、Kさんの仕事仲間のOさんに、車を出していただいた。震災前までは、仙石線で仙台→石巻、石巻線で石巻→女川というルートで電車移動できたのだが、現在は女川町へは車でしか移動することができない。およそ2時間の車中、さまざまな震災の爪痕を見ることとなった。到着目前になって、女川港が近づくと言葉を失った。津波のため、ある標高までの家は基礎を残して全て無くなっていた。

女川港からは、汽船"しまなみ"にて出島まで移動。今日はたまたま出島の寺間地区のお祭りで、女川港から乗る人も多くにぎやかな船内だった。船内からは、遠くに女川原子力発電所も見える。出島の出島地区桟橋に到着し、出島のYさんに車で送ってもらい、まず仮設住宅へ。出島は海の幸も山の幸も採れるとても豊かな地域だと話してくださったのだが、その言葉通りの大変美味しいお昼ごはんを頂戴した。当初の予定では、お昼ごはんを頂いたこの談話スペースで演奏する予定だったのだが、諸事情により演奏場所を寺間地区へと変更。女川町の女川第二中学校(現在は休校となっている)の屋外玄関先で音を出した後、お祭りが終わった寺間地区の番屋に向かった。

13:00から、番屋で演奏。今日の寺間地区のお祭りでの利用に合わせて建てられた、広い集会場のようなスペース。出島に住んでいる方も、"しまなみ"でいらっしゃった方も、たくさんの方が聴いて下さった。最終的に番屋の中で&番屋の外から、40~50人くらいの方が聴いてくれたのではないかな。福井健太さんアレンジの「超演歌宅急便」、サキソフォックスの「浪花節だよ人生は」「津軽海峡冬景色」「長崎は今日も雨だった」、そして協会アンサンブル譜の「浜辺の歌」、最後に「日本の四季メドレー」と、およそ50分にわたって演奏した。手拍子はもちろんのこと、リクエストも飛び出したり(楽譜上、応えられなかったのが残念!)、一緒に前に出てサックスカルテットをバックに歌ってくださったり、とても楽しんでいただけたのが幸いだった。やはり演歌系のレパートリーはとても良い!

たくさんの拍手をいただき、慌ただしく片付けて談話スペースに戻り、また少し食事をいただいたあとに14:55の"しまなみ"(本日の最終便)で出島を後にした。帰り道、Kさんが津波の大きな被害のあった石巻市の海岸線沿いを見せてくれるために、車で回ってくれたのだが、何10kmにもわたって津波に飲まれてしまった風景が続いていたのだった。テレビや写真で見ても、所詮四角く切り取られたほんの数100mの範囲が見えるだけなのだが、実際の様子は全く違うものなのだ…。そのまま仙台駅へ戻って18:30頃の新幹線に乗り、21:40には自宅最寄り駅へ到着した。

実際に行ってみるまでは、わからないことがいろいろあるものだと強く思った。津波のことや、我々のような一介のアマチュアの演奏で何ができるか、とか様々なことについて、である(具体的な内容は文字に起こさないので、直接会った時にでも聞いてください)。また、人とのつながりの大切さを痛感したのだった。今回のTsukubaSQの出島での演奏をサポートしてくださった、Kさん、Oさん、Yさん他、皆様に感謝したい。

2012/05/12

明日は女川町出島でTSQ演奏

本日仙台入りし、2時間半ほどの直前チェック。その後、今回お世話になるKさんとともに懇親会。宮城県の美味しいお酒と料理をいただき、散会した。
明日は出島寺間地区にて昼頃にTsukubaSQ演奏。楽しみであると同時に、とても緊張している。しっかりと気合いを入れて演奏したい。

2012/05/11

WSC協奏曲情報更新

WSCの情報が次から次へと更新されている。コンチェルト・コンサートが何度か開かれるようだが、なんとその中にジョン・ハール John Harleの名前が!大興奮。イギリスの作曲家、サリー・ビーミッシュ Sally Beamishの「The Imagined Sound of Sun on Stone」を演奏するそうだ。私がWSCに参加するのは実質3日間だけなので、果たして聴けるかどうかはわからないが、それでも期待してしまう…。

http://www.wscxvi.com/programme.php

CDにもなっている。「Sally Beamish(BIS CD-1161)」という、ビーミッシュの作品集で、ソプラノサクソフォンの独奏はもちろんジョン・ハール。Ola Rudner指揮のスウェーデン室内管弦楽団とともに吹きまくっている。ハールのソプラノサクソフォンは、出だしの音を一発聴くだけでそれとわかるのが凄い。類稀な演奏家である。

2012/05/09

演奏予定:TsukubaSQ@女川町出島

飛行機に楽器を乗せるための交渉に、こんなに苦労するとは思わなかった…(泣)

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今週末、宮城県女川町出島(いずしま)で、Tsukuba Saxophone Quartetとして演奏を行う。ソプラノ吹きのNのお知り合いである、女川町出島の元中学校の校長先生という方が呼んで下さったのだ。12日に出発して仙台に前泊、13日の朝から移動して船で出島に渡り、演奏を行う。少し前から取り組み、イギリスでも演奏する予定のある「琉球幻想曲」や、おなじみのメロディがふんだんに取り入れられた「四季メドレー」、そしておなじみ「長崎は今日も雨だった」などを取り上げる予定。

こちらの「出島 ~いずしま~ 復興支援・応援ブログ」でもご紹介いただいた。大変ありがたいことである。良い演奏ができるよう、しっかりと詰めていきたい。

こちらがチラシである。デザインはソプラノのNによる。

Dave Liebmanのための協奏曲 on YouTube

ジャズサクソフォン奏者として著名なデイヴ・リーブマン。そのリーブマンのために書かれたクラシックスタイルの協奏曲が存在するとは知らなかった。同様の協奏曲として有名な所では、エリック・マリエンサルのために書かれたネイサン・タノウエ「3 Steps Forward」や、スタン・ゲッツのために書かれたリチャード=ロドニー・ベネット「スタン・ゲッツのための協奏曲」などがあり、楽曲の完成度の高さから、いずれも素晴らしい成功を収めている。

このリーブマンのために書かれた協奏曲は、Lewis Porterというジャズピアニスト・作曲家の手によるもの。彼はリーブマンと共演を行うなど、親しい間柄にあり、そんなところから作曲が実現したようだ。ジャズの要素はもちろん含まれているのだが、あくまでベースにあるのはクラシック。第1楽章など聴いてみると、このようなクラシックの協奏曲があってもおかしくないな、と思えてしまう(逆に、私にはあまり面白みがなかった)。やはり聴きモノはほぼバラード・スタイルの第2楽章と、バス・オスティナートに乗ってリーブマンのスーパー・アドリブが炸裂し、さらにカデンツァでやりたい放題の第3楽章である。特に第3楽章では、第1楽章で感じた収まりの悪さを全く感じず、実に爽快である。

第1楽章


第2楽章


第3楽章

2012/05/07

サクソフォン×ピアソラといえば!

1990年代のクラシック音楽界でのピアソラ・ブームをきっかけとして、サクソフォンの世界でも数多くのアレンジが出てきた。見渡せば、あのアルバムにも、このアルバムにも、アレンジ物といえばまずピアソラ!という状況で、若干食傷気味にすらなってしまった向きも多いことだろう。良い演奏であれば問題ないのだが…時には何も考えないままアレンジし、そのままクラシックのスタイルで吹いてしまいました、というアルバムもあり、逆にピアソラを冒涜しているんじゃないかと思えたほどだ。そんなアルバムをいくつも聴いたせいか、いつしか自分で演奏することも避けるようになってしまった。

とは言え、ごく一部のアルバムに限って言えば素晴らしい演奏を聴くことができる。その中でも、飛び抜けて良いと感じるのは、Henk van Twillertの「Tango(Movieplay Classics SMP 850453)」というアルバムだ。ザルツブルグ・チェンバー・ソロイスト・クインテット、そしてヴァイオリンのSonja van Beekをゲストに迎え、バリトンサクソフォンで共演してしまったというから驚きだ。このアルバムは、私がこれまで入手したサクソフォンのアルバムのなかでも10本の指に入るもので、強烈なテンションとテクニック、ヴァイオリン・ソロとバリトンサクソフォン・ソロの良さを引き出したアレンジ、録音の良さなど、良い点を挙げていけばキリがない。

1. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Libertango リベルタンゴ
2. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Solitude 孤独
3. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Verano Porteno ブエノスアイレスの夏
4. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Novitango ノヴィタンゴ
5. Huizinga, Henk ヘンク・ホイジンガー - Desierto 砂漠
6. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Reminiscence 想い出
7. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Close Your Eyes & Listen 目を閉じて、聞いて
8. Huizinga, Henk ヘンク・ホイジンガー - Chubasco にわか雨
9. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Years of Solitude 孤独の歳月
10. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Violintango ヴァイオリン・タンゴ
11. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Deus Xango ジャンゴの神
12. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Whisky ウイスキー
13. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Undertango アンデルタンゴ

冒頭の「リベルタンゴ」でのはじけっぷりにも驚くが、ゆっくりな曲ではさらに濃密な時間が流れる。美しい曲、激しい曲を交えながら、曲は進み、最後の「孤独の歳月」からの5曲の流れは、凄すぎる。最初聴いたときは「アンデルタンゴ」の後にブラヴォーを叫びそうになったものだ。

YouTubeに「リベルタンゴ」の演奏がアップされていたので、貼り付けておく。良さがイマイチ伝わらないかもしれないが、この緊張感がアルバム全編を通して続く。セッションレコーディングということで、完成度はCDのほうがずっと高い。

2012/05/06

ウッチ国際サクソフォンコンクールと本選課題曲

小川卓朗さんが参加される、という話を聞くまでは完全にノーマークだったのだが、かなり大きい規模の国際コンクールだったようだ。4月27日から5月4日まで開催された、Lodz SaxFest 2012という催しのなかで、最も大きなイベントとして扱われていた。コンクール以外にもマリオ・マルツィ氏、ジェローム・ララン氏、マイケル・クレン氏(前回コンクール優勝)らの演奏会が開かれていたようだ。

コンクールはジュニア部門とシニア部門が同時開催され、メインとなるシニア部門:GRUPA IIは、優勝がスペインのシャビア・ラーション=ペス Xavier Larsson-Paez氏(小川さんの友人でもある)であり、小川さんは第4位であった。日本人の国際コンクール上位入賞は久々のことで、嬉しくなってしまった。

多くの情報は、すでにtfmさんのブログにてまとめられている:
要項:http://saxastfm.blog.fc2.com/blog-entry-228.html
本選出場者について:http://saxastfm.blog.fc2.com/blog-entry-233.html
本選結果:http://saxastfm.blog.fc2.com/blog-entry-236.html

また、ウッチ音楽院の公式ページサクソフォンフェスタのFacebookページから公式情報を参照することができる。

さて、本選の課題曲は、Roman Palesterという作曲家の小協奏曲(Concertino)である。パレスター(という読みで良いのかな?)は、ウッチ国際サクソフォンコンクールが開かれたポーランドの作曲家である。1907年に生まれ、ポーランドのクラクフ音楽院で勉強を始め、後にワルシャワ大学を卒業している。その後、パリ、ミュンヒェンなどにも移り住んだ。サクソフォン小協奏曲を書いたきっかけには、やはりシガード・ラッシャーが深く関係していたようだ。

1936年の春、スペインのバルセロナで開かれた第14回International Society for Contemporary Music (ISCM) Festivalで、パレスターとラッシャーが会ったのではないかという説が濃厚であるようだ。パレスターは自作のバレエ音楽の初演に立ちあうためにこのフェスティバルに参加し、またラッシャーはイベールのコンチェルティーノ・ダ・カメラと、アルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲の初演に参加していたという。この時パレスターとラッシャーが会ったことを示す資料は現存していないが、その可能性は高いと考えられる。

1938年の夏、パレスターはフランスのコルシカ島に滞在し、この小協奏曲を完成させた。1938年の11月、パレスターはラッシャーに宛てて次のような内容の手紙を送っている。

ずっと前、私があなたのために協奏曲を書きたいと申し上げたことを、覚えていらっしゃいますか。幾つもの作曲プロジェクトをこなさなければならず、ずっと取り掛かることができないでいましたが、幸運なことに、今年の夏から数ヶ月かけ、ついに作品が完成しました。"Concertino for Saxophone and Small Orchestra"という名前の作品です。あなたにこの作品を捧げることができることは、望外の喜びです。作品は2つのパートから成り、前半は速いカプリツィオ、後半は序奏とアレグロです。サクソフォンパートはやや難しくなりました(もちろんあなたにとっては簡単なことでしょう)が、演奏はとても楽しいと思います。室内オーケストラは、ピアノ、ハープ、1つのパーカッション、弦楽五重奏という編成です。

この手紙に対し、ラッシャーは次のように返信している。

あなたの作曲したポーランドのサクソフォン協奏曲が出来上がったとは、なんと素晴らしいニュースでしょう!
私は数日前に世界ツアーから返ってきたばかりですが、あなたからの手紙を受け取ってとても嬉しくなりました。ピアノリダクション版の完成を楽しみにしています。現在、あなたの協奏曲の他に3つの協奏曲を勉強しています。オーケストラの編成は、これまでに見たことのないもので、とても興味深いです!

残念ながらこの特徴的なオーケストレーションを施したスコアはワルシャワ蜂起の際に失われ、現存するのは、1947年に作曲者自身がピアノリダクション版から再オーケストレーションを行った弦楽オーケストラ版なのである。

実はこの作品については、他にもいろいろと興味深いエピソードがあるのだが、それはまたの機会にご紹介したい。

TsukubaSQ強化練習日

5/4のことだが、つくば市に一日こもってTsukuba Saxophone Quartetの練習を行った。来週末5/13には女川町出島、そして6月のサクソフォン交流会、7月のベルギー&イギリス、9月のサクゴレンさんとのジョイントコンサートと、様々な演奏予定を控えており、練習を進めなければならない曲がたくさんあるのだ。

朝からあいにくの雨だったのだが、百香亭までお昼ごはんを食べた後は気持ちのよい晴れ。夕方にはまたまた雨。この日は降ったり止んだりであった。9:30から18:00まで、休憩を挟みながらがっつりと。口は痛いし疲れたけれど、精神的にはリフレッシュ。技術的な部分はともかく、決まりごと(曲数)が多く、とにかく時間がかかる。ピアソラ以外、予定していた曲はなんとか練習しきることができた。

練習の後は灯禾軒で飲み。なんと5時間以上に渡って美味しい料理とお酒を楽しんだ。その日はそのままつくばに泊まり、次の日に東京へ戻ったのだった。

演奏会情報:ドゥラングル教授ライヴ"Next"

2007年、静岡音楽館AOIでの衝撃的なライヴから5年。再びクロード・ドゥラングル教授がAOIにやって来る!

前回来日した2007年当時は、サクソフォンとエレクトロニクスのコンサートなど日本国内ではほとんど聴く機会がなかったが、あれから5年、もはやエレクトロニクスの演奏は珍しくなくなったとも言えるだろう。しかし、それでもこの演奏会が興味深いのは、IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)とともに来日するという点。おそらく、作曲家・演奏家が想定する響きを、世界でも最も忠実に聴衆へと届ける技術を持っているチームが来日するのだ。前回ライヴ時にも感じたが、サクソフォンとの完璧なバランスが聴けたり、CDなどでは聴こえなかった音が聴こえたりと、とても新鮮な体験だったことが印象深い。

また、野平一郎氏のサクソフォン作品として、「アラベスクIII」「四重奏曲」「舵手の書」に次ぐ4作目となる、サクソフォンとエレクトロニクスのための作品が発表される機会としても注目すべきだ。いくつかのインタビューで、野平氏がサクソフォンとエレクトロニクスの作品を手がけている最中だということは知っていたが、その日本初演の場所として選んだのは静岡音楽館AOIであったのだ。これまでの3作品、いずれも傑作であるが、素晴しい作品の誕生に立ち会うことができそうだ。

ということで、サックス吹きであれば問答無用で伺うべき演奏会だ。幸いなことに休日で、行きだけゆるゆると電車の旅を楽しんでも良いと思うし、もし新幹線を使えば東京駅から1時間かからない程度である。前回ライヴの感想は、こちらに残してあるが、いくつかプログラムが被っているのも面白い。

【クロード・ドラングル サクソフォン・ライブ2 "Next"】
出演:クロード・ドゥラングル(sax)、ホセ=ミゲル・フェルナンデス(electronics)
日時:2012年10月13日(土曜)18:00開演
会場:静岡音楽館AOI
料金:全席指定4000円、22歳以下1000円
プログラム:
P.ブーレーズ - 二重の影の対話
L.ベリオ - セクエンツァIXb
M.ストロッパ - ...of Silence(第3版)
G.グリゼイ - アニュビスとヌト
野平一郎 - 静岡音楽館AOI委嘱作品(日本初演)
問い合わせ:
054-251-2200 (静岡音楽館AOI)
http://www.aoi.shizuoka-city.or.jp/detail/0_detail.html?public_uid=1612

チラシは入手したらアップする予定。チケット売り出しは6月23日から。

2012/05/03

10 anni dopo

昨晩遅く東京に戻り、今日は個人練習と家事・雑務などこなした。個人練習をしながら、難しい曲が徐々に出来るようになっていく感覚が好きだ。ゴールドスタインの某四重奏曲、なかなか面白い。

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以前、フランコ・ドナトーニの「Hot」についてブログ記事を書いたが、そこで話題に出したマリオ・マルツィが「Hot」の独奏を担当したディスクが届いた。「10 anni dopo(Stradivarius STR 33838)」という、ドナトーニの没後10周年に合わせて作成されたディスク。演奏陣はイタリアの音楽家で固められている。指揮がSandro Gorli、メインの室内アンサンブルがDivertimento Ensemble、サクソフォン独奏がMario Marzi、フルート独奏がLorenzo Missaglia、さらに、Italian Saxophone Quartetも参加している。収録されているのはもちろん全てドナトーニ作品で、下記が作品+作曲年のリストである。

・Hot per saxofono e sei strumenti(1989)
・Flag per 13 strumenti (1987)
・Tema per 12 strumenti (1981)
・Luci per flauto in sol (1995)
・Rasch II per quartetto di saxofoni, vibrafono, marimba, percussioni e pianoforte (1995)

ドナトーニのサクソフォン作品は3つあって、ソプラニーノ&テナーサクソフォンと室内アンサンブルのための「Hot」、サクソフォン四重奏のための「Rasch」、そしてサクソフォン四重奏とパーカッションのための「Rasch II」である。そもそもドナトーニがサクソフォンの世界に興味を持ったきっかけだが、どうやら「Hot」をAssociation des Saxophonistes de Franceから委嘱されたことがきっかけだったようだ。知らなかった。

さて、楽しみにしていたマルツィ氏独奏の「Hot」の演奏である。きっとガンガン吹いちゃう系(なんだそりゃ)なんだろうなあと思って聴き始めたのだが…。驚いたことに、大変精緻に組み立てられた演奏であった。拍が見える、リズムが見える、楽譜が見える!おそらく指揮者の方針によるところも大きいのだろうが、全体の構造も見据えながら、最後は大爆発。お気に入りのダニエル・ケンジー盤と比べると全く別の曲のように聴こえる。マルツィ氏も、なんだかずいぶん遠慮しているように聴こえる(笑)。イタリア・サクソフォン四重奏団が参加した「Rasch II」は、こちらはハバネラ四重奏団の名録音を思い起こす方も多いだろう。録音の違いなどもあって、こちらは聴き比べてみると面白い。

サクソフォンを含む作品以外のトラックも高いクオリティで、ドナトーニの魅力を存分に伝えるものだと思う。ドナトーニ入門編のCDとして適切だろう。Amazon等から、かなり安く購入できるので、興味ある方はぜひ。

2012/05/02

エリック・コーツ「組曲"4つの世紀"」

イギリスの作曲家、エリック・コーツ Eric Coatesをご存じだろうか。1886年生まれ1957年没、"ライト・ミュージック"という、ポピュラー音楽ほど大衆的ではないけれどクラシック音楽ほど厳格でもない、その中間を埋めるようなジャンルに、数多くの作品を提供した。王立音楽院を卒業したのち、クイーンズホール管弦楽団の主席ヴィオラ奏者として活躍したが、キャリアの後半にはその職を退き、専ら作曲活動に精を出した。

そんなバックグラウンドがあるものだから、サクソフォンを含むいくつかの作品を書いている。最も有名なのは、シガード・ラッシャーに捧げられたアルト・サクソフォンとオーケストラのための「Saxo-Rhapsody」。冒頭の、まるでロマンス映画のオープニングで流れるかのような甘い主題が大好き!という向きも多いだろう。ラッシャー自身による録音があるほか、最近ではNaxosレーベルもケネス・エッジ Kenneth Edge氏を独奏に迎えて吹き込みを行っている。そういえばエッジ氏、実はリバーダンス好きにはおなじみのプレイヤーだ。究極の完成度を誇るDVD「ライヴ・イン・ジュネーヴ」の、サクソフォンを務めているのがエッジ氏なのである。ここでエッジ氏は、クラシック、ジャズ、ケルトと、様々なキャラクターを使い分けながら、すばらしい舞台に華を添えている。初めて知ったときは驚いたものだ。閑話休題。

さて、管弦楽のために書かれた「4つの世紀」である。こちらはサクソフォン協奏曲ではない。タイトル通り、4つの世紀にまたがる音楽を題材にとった傑作で、各楽章には次のような名前が付けられている。

Prelude and Hornpipe (17th Century)
Pavane and Tambourin (18th Century)
Valse (19th Century)
Rhythm (20th Century)

楽章タイトルを見るだけでワクワクしてしまうではないか!ふとピアソラの「タンゴの歴史」や、モリネッリの「ニューヨークからの4つの絵」を思い出したが、編成を固定したまま、4つの異なった音楽世界を描き出すという意味で、コンセプト的には近いのではないか。ライト・ミュージックの分野だけあって、難解さは皆無…理屈抜きに楽しめる音楽となっている。例えば、第1楽章は、中世からの呼び声のようなフルートのソロ(全体を通し、フルートに重要な役割が多く与えられている)に導かれ、オーケストラが複雑に入り組んだフーガを奏でる。ホルストかヴォ-ン・ウィリアムズかと言われてもおかしくないような、快活な音楽だ。第2楽章や第3楽章も、タイトルから連想される響きそのままで、聴きながらポンと手を打ちたくなってしまう。個人的には第3楽章が好きだなあ。

サクソフォンは、ご想像の通り第4楽章で活躍する。20世紀初頭、ジャズが登場する以前のダンス・ミュ-ジックのスウィングのリズムに乗せて、奏でられるご機嫌な楽章だ。ミュートしたトランペットとともに主題を提示するのがサクソフォンのソロ。後半ではセクションワークも出てきて、にぎやかに終わる。これ、サクソフォンは全部で何本入っているのかなあ。すっきりとした聴後感、シリアスな音楽だけではなくて、たまにはこういうのも良いですよね。

Naxosから、コーツ自身が指揮をした演奏が復刻され、コーツの作品集としてリリースされている(9.80191)。1953年、おそらくスタジオ・オーケストラによる演奏だが、往年のサクソフォンの音色が実に味わい深くこの曲の魅力を伝えるに相応しい。おすすめ。

ということで、サクソフォンを含むオーケストラ作品としてこんなものがあるよ、という一例のご紹介だった。サクソフォンを学んですぐ、「ボレロ」「アルルの女」「展覧会の絵(ラヴェル編)」「ラプソディ・イン・ブルー」あたりを耳にすることだろう。探せば探すだけ、魅力的な作品は溢れているのだ。

話題が醸成される場所

昨年から今年にかけての、日本のクラシック・サクソフォン界におけるFacebookの拡がりっぷりは、驚くべきものである。私自身は2010年頃からFacebookを本格的に利用し始めたが、そもそもは天久保オールスターズバンド絡みで使い始めたのであって、クラシック・サクソフォン界でTwitter全盛だった当時の状況から考えると、ここまでFacebookが使われるようになる状況は想像できなかった。ほぼ即時のタイムライン更新、写真共有、そしてそれを読んだ/見た、"友達"からのコメントやイイネ!は、ありきたりだが「縮小する世界」というキーワードを実感させるのに十分すぎるのだ。

単なる日常のアップデートにとどまらず、それなりに価値ある情報すら、時折アナウンスされるのだからたまったものではない。Googleで検索することができない場所に、貴重な情報がゴロゴロと転がっているのだ。そのうち、調べ物にGoogleを使うことが、徐々に意味を成さなくなるかもしれない。少しずつではあるが、Facebookを利用しているとその傾向を感じる。

最初はパソコン通信だった(らしい)。そのころは、ある会議室を観測対象としておけば事足りた(ようだ)。Windows95の登場による、インターネットの普及。ウェブページによる情報発信、掲示板の盛り上がり、そして登録型の検索エンジンからロボットサーチ型の検索エンジンへの移行(このあたりからは、私もリアルタイムで触れている)。ネットワーク上の情報が増え、容易に目的の情報を探し出すのは難しくなった。しかし、Googleの登場によって、その問題は解決されている。ウェブページがブログにその座を明け渡したときも、変わらなかった。そして現れたSNS…これは衝撃的だったなあ。インターネット上にクローズドなサブネットワークが生まれるなんて、ARPAの開発者は想像していただろうか。mixiは数年にわたって濃密な情報の居場所のより所となったが、その後現れたTwitterへと多くのユーザーは流出した。Twitterのリアルタイム性も、衝撃的であった。まるで常にチャットに繋いでいるような場で、様々な話題が醸成されていた。そして、再び舞台はSNS(Facebook)へ…。

ブログに載せる話題を、どうやって探していけばよいのか迷っているのだ。数年前までは、「何かキッカケを見つける→Googleで検索」という流れで十分だったのになあ。検索できない場所にある話題がこれだけ多く、その流れを見直さなければならないなと最近考え始めているのだ。もちろん、学生の時に比べて調べ物をできる時間が少ない、というのはあるけれど(^^;