2012/02/29

Jeffrey Loeffert performs the Karel Husa on YouTube

サクソフォン協奏曲のなかでも、カレル・フサ Karel Husaの作品「サクソフォン協奏曲」は有名だが、そういえば決定盤はどれになるのだろう。個人的には、Steven Maukがイサカ大学ウィンドアンサンブルとともに演奏した録音が良いかなと思っているのだが、それほど数を聴いたことがあるわけではないので、断言しかねるのだ。

YouTubeをふらふらしていたら、なかなか面白い録音を見つけた。オクラホマ州立大学のアシスタント・プロフェッサー、Jeffrey Loeffert氏が、自身が教鞭をとるオクラホマ州立大学の吹奏楽団とともに、フサの協奏曲を共演している動画を見つけた。独奏パートだけではなく、もちろん吹奏楽パートも非常に難しいはずだが、なかなか健闘していると思う。この曲の重心は、やはり第2楽章に置かれていると思うのだが、その第2楽章を聴けば、入念にリハーサルされていることがよく分かるというものだ。

第1楽章


第2楽章


第3楽章

塙美里さんのリサイタル録音

先日行われたリサイタル、私は仕事の都合で伺えなかったのだが、ライヴ録音のCDとDVDを頂戴した。お気遣いいただき、塙さんにはこの場を借りて感謝申し上げる次第。

【塙美里サクソフォンリサイタル2】
出演:塙美里(sax)、酒井有彩(pf)、人見遼(vc)
2012年1月13日 19:00開演
会場:仙川アヴェニューホール
プログラム:
I.ストラヴィンスキー - イタリア組曲
D.トリフォノフ - 舟歌、タンゴ
M.スコリック - スペイン舞曲
A.リャードフ - プレリュード第1番
D.カバレフスキー - 即興曲
A.ドヴォルザーク - ソナチネ
M.グリンカ - 悲愴的三重奏曲
L.グリェーミ - 薔薇色の人生
J.S.バッハ - ガヴォット

第一回のリサイタルについても、飛行機遅延のせいで到着が大幅に遅れ、DVD・CDを送って頂いたことを思い出した。あの時は、すべてアルトサクソフォンで、フランク、ドビュッシー、シューマンなど大曲揃いだったが、3年を経てさらにパワーアップした塙さんの演奏姿が聴ける/観られることとなった。選曲のコンセプトも良く見え、リサイタルというものはこうあるべきだ、という思いを強くする。

ソプラノの音色を聴いたのは初めてかもしれない。ジュリアン・プティ氏に2年間?に渡って師事した経験は、塙さんにとっては大変貴重なものであったようだが、そのプティ氏が得意とするソプラノの語法を、見事に吸収し自らのものとしている。ブラインドで聴けば、フランス人の演奏と言われても信じてしまうかもしれない。楽曲ごとに柔軟に音色をフィットさせつつも、一貫して音楽の流れを引っ張るパワーが共存している。よく練られた他楽器とのアンサンブルも魅力的だ。ピアノやチェロなど、単純な縦線だけではない、ニュアンスや音色のアンサンブル、という部分に踏み込もうとしていく意識の高さがある。

各作品における演奏の変化も聴きどころである。「イタリア組曲」は、冒頭のAuftaktの引っ掛かりがあるメロディから、最終部の怒涛の音のバラマキまで、表情をころころと変えていくし、塙さん自身が大好きだというトリフォノフ(第14回チャイコフスキー国際コンクール優勝のピアニスト)では、こだわりというか慈しみが聴かれる…3年前の演奏に比べて、思い入れはそのままに、楽曲を客観的に捉える部分がさらに強化されているように感じた。

トリオも面白い。これもおそらくプティ氏と奥様(チェリスト)に影響を受けたものだろうが、三者がブレンドした時のえも言われぬ響きは…これはぜひライヴで体感したかった。

2012/02/28

協会誌編集委員会

サクソフォーン協会機関誌"SAXOPHONIST"の、Vol.23反省会兼Vol.24アイデア出し会だった(Vol.23では編集企画委員として携わっていた)。近年充実の一途をたどる"SAXOPHONIST"だが、次の会誌も面白くなりそうだ。私も"アマチュアなりにできること"を見つけ、協力していきたいと考えている。WSCのレポートは、参加日程分は書くことになりそうだ(笑)。

それにしても、服部先生、栃尾先生を中心とする編集委員の気合い・使命感は、凄まじい物がある。最近の協会誌の充実ぶり、まさになるべくしてなった、という感じさえ受ける。

モーリス・アンドレ逝去

エルピーダの一件にも驚いたが…。

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週末も終わりかけの真夜中に飛び込んできたのは、トランペット奏者、モーリス・アンドレ氏逝去のニュースであった。

高校の頃には、CDでモーリス・アンドレの演奏に触れていた。部室の棚に「ジョリベ、トマジ&アルチュニアン~アンドレ、20世紀を吹きまくる!」という協奏曲集が収められており、そのポップなジャケットに惹かれてなんとなく聴き始めたのだ。"なかりゃこふ"くらいしか知らなかった私にとっては、衝撃的な演奏であった。

さらに輪をかけて、収録されていたアンドレ・ジョリヴェ「トランペット協奏曲第2番」の作品としての面白さが、どツボにはまった。なんとなくサックスっぽい音もするし(実はダニエル・デファイエとジャック・テリーが参加していたと知るのはずっとあとこと)、曲自体もジャズふうでカッコイイしで、何度も聴いた。というわけで、私にとってはモーリス・アンドレ⇔アンドレ・ジョリヴェという直接のリンクがあるのだが、他のプレイヤーのジョリヴェ「協奏曲第2番」を耳にして、まるで別の曲のように感じることに驚いた。この曲は、アンドレしか吹くことができなかった、とさえ思えてしまった。

いくら現役の第一線を退いていたとはいえ、やはり残念なものは残念。管楽器の未来に、希望と不安を半分ずつ感じながら、合掌…。

2012/02/27

Delangle plays Glazounov on YouTube

他の物書きで忙しいので、簡素に。

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たぶんもう広く知られていることだろうが、ドゥラングル教授がメキシコで演奏したグラズノフ「協奏曲」とドビュッシー「ラプソディ」の演奏がYouTubeにアップロードされている。画質も音質も悪く、観て・聴いて楽しむ、というレベルほどではないのだが、貴重な映像であることに変わりはないだろう。

・グラズノフ「協奏曲」


・ドビュッシー「ラプソディ」


・おそらくアンコールに演奏されたと思われる、ドビュッシー「シランクス」

2012/02/25

CNSMDPに日本人が

なんとか体調は回復に向かっている。現在37.2度。風邪のようなもので医者にかかったのは、社会人になってからは初めてだった。インフルエンザ検査は陰性。

おかげで、保谷こもれびホールのコンサートにも行けず、CSPの練習にも行けず…なんてこった。

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大阪出身の外山舞さんがCNSMDP(パリ国立高等音楽院)に合格したとの情報を聞いた。ここ最近をたどると、伊藤あさぎさん、安井寛絵さん、井上ハルカさんと、合格した課程は違うものの次々に日本人がCNSMに入学しており、喜ばしい限りだ。

今も昔も、世界のクラシック・サクソフォンの歴史はパリ国立高等音楽院が創り続ける。日本人がそこに入学するとの情報を聞くたびに、なんだか誇らしい気持ちになるのだ。

2012/02/24

ご案内:YNO SO第5回記念コンサート

どうやら体調を崩したようだ…早めに寝ます。体温が上がるのは3年ぶりなんだが…。明日のコンサートと練習、行けるかな?

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横浜国立大学吹奏楽団サックスパートの現役・OBによるアンサンブル。初回演奏会は2008年とのことで(TsukubaSQと同じ)、なんとなく気になっていた団体だが、このたび第5回目の演奏会を迎えるそうだ。これまでも強力なプログラムでいくども演奏会を開いているようだが、5年目の総決算といったところだろうか。

メンバーの方と直接の面識はない(はず)。うろ覚えだが、マスランカ氏のマスタークラスのとき来場されていて、YNUのみなさんとマスランカ氏の写真を撮るときに、シャッター押しをお願いされたような覚えがある(違っていたらごめんなさい)。それにしても、大学の吹奏楽団を母体としたサックスアンサンブルの活動は近年ますます盛んになってきており、とても面白いな。東京大学にもそういった団体があるし、早稲田にも非常に上手いカルテットがあると聞いているし、横浜国立大学もこのとおりだし、私も母校でもそういった動きがあるようだし…。

と、話がずれたが、今回のYNU SOのプログラムは超重量級(トルヴェールの地球なんて、どこで楽譜手に入れるんだろ)。協会コンクールの前日だが、伺えたらいいな。村田淳一さんの新作も、とても気になっている。

【YNU SAXOPHONE ORCHESTRA 第5回記念コンサート】
日時:2012年3月17日(土)開場 17:00 開演 17:30
会場:神奈川公会堂(JR線東神奈川駅より徒歩4分、東急東横線東白楽駅より徒歩5分)
料金:入場無料(全席自由)
プログラム:
第1部‐アンサンブルステージ‐
・トルヴェールの惑星より 地球/長生淳
・パガニーニ・ロスト/長生淳
・→Pia-no-jaC← Time Limit
/→Pia-no-jaC←/Arr.山岡裕之
・マウンテンロードより序曲/ D.マスランカ


第2部‐ラージステージ‐
・Nam Druk ~Dragon Dancing in Heaven~/村田淳一 世界初演
・Jack in The Box/葉加瀬太郎
Arr.山岡裕之
問い合わせ:
email:ynusax@gmail.com
URL:http://www.ynusax.info

2012/02/23

大石将紀さんのリサイタルをご紹介

物書きの仕事&WSC調査が忙しいので、なかなかブログを書いている時間が取れない。2月いっぱいは、この傾向が続きそう。幸い、仕事の方は先月より落ち着いている。

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大石将紀さんのリサイタル情報を紹介する。常々、サクソフォンの現代音楽をどのように深く浸透させていくか(つまり、あの曲いいよね、という風に何度もリピートして聴いたり、自分が演奏したり、ということ)ということについて考えているのだが、それを実践に移す大石将紀さんの行動力には恐れ入るばかりだ。そしてこの価格設定!万人にお勧めしたい。

まずは聴く。
”現代音楽”はまさにマジック・ミュージック!
「ガーデン・オブ・ラブ」をはじめとした
現代音楽のスペシャルメニューをご用意しました。
「知りたい!」を導く、大石将紀の世界にようこそ。

【大石将紀サクソフォンリサイタル】
出演:大石将紀(sax)、沢木良子(pf)、有馬寿純(electronics)
日時:2012年3月2日(金)19:00開演
会場:成城ホール
料金:一般1,500円 小中高生 500円
プログラム:
藤倉大 - SAKANA
B.ヴィヴァンコス - 現代奏法の為の練習曲より『蚊』
JacobTV - ガーデン・オブ・ラブ
JacobTV - Grab it !  
佐藤聡明 - ランサローテ
P.V.オンナ - クリスタル・ドリームズ
S.ライヒ - ニューヨーク・カウンターポイント

2012/02/22

Adolphesax.comのマイナスワンCD(続きの続き)

先月、こんな記事を書いた。

Adolphesax.comのマイナスワンCD
Adolphesax.comのマイナスワンCD(続き)

おなじみAdolphesax.comが制作・販売している、サクソフォン・ソロ曲のマイナスワンCDについて、サンプルを3つ入手した。

D.マスランカ - 協奏曲
W.オルブライト - ソナタ
J.フェルド - ソナタ

…あ、吹きませんよ(^^;あくまでサンプル入手目的。さてさて、とてもよく考えられて制作されているCDだということがわかる。たとえば、オルブライトのソナタの第4楽章について、トラックリストは次のようになっている。

Sonata IV (P)
Sonata IV (P.M) (8T)
Sonata IV (A a D)
Sonata IV (D a G)
Sonata IV (G a K)
Sonata IV (G a K)
Sonata IV (K a M)
Sonata IV (M a O)

このうち、(P)と印字された最初のトラックがピアノオンリーのカラオケ・トラック。(P.M)は、メトロノームとピアノの音が入ったトラックで、指定テンポよりは遅めである。(8T)が何を意味するかは良くわからない。さらに続いて、Sonata IV (A a D)というトラックは、練習番号AからDまでの繰り返し練習用ピアノトラック。テンポをすこしずつ速くしながら、数回に分けてトラックが収録されている。最も遅いテンポの録音には、サックスパートが薄くかぶさっている。

MIDI音源であるが、たしかにテンポ純増変更やメトロノーム併用音を入れようとしたら、生音では厳しいし、ベストな選択なのかもしれない。以前にも書いたが、ピアノパートの勉強、という点においては非常に役立つものだと考えている。Adolphesax.comより購入可能。

2012/02/20

The SAX誌打ち合わせ@目白

今週末です、ユカリッシモコンサート。

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仕事を終えたあと、目白駅近くのThe SAX編集部にて次号特集の打ち合わせ。到着して驚いたことに、なんと恐れ多くもThunderさんと共著になるとのこと。内容についてのディスカッション、というかブレインストーミングのような機会であったが、Thunderさんと一緒のタイミングでできて良かった。原稿を準備する時間はかなり時間が限られているが、ベストを尽くしたい。

で、その内容とはまったく関係ないのだけれど、「タンゴ・ヴィルトゥオーゾ」の完コピ?動画をYouTubeで見つけた。いつか誰かやるだろうと思っていたが(^^;さすがに演奏・振り付けともどもハバネラQの完成度の高さには及ばないが…というか、ハバネラQがどれだけすごいかを改めて思い知った感じ。

2012/02/19

情報:栃尾克樹氏&草山ゆかり氏のサロンコンサート

昨年、サクソフォニー関東第2回コンサート@保谷こもれびホールに、栃尾克樹先生が客演したのがきっかけとなって実現した催し。なんとなく、かつてThe SAX特別号に吹きこまれた付録CDを思い出してしまいますね。私も伺う予定!この日は夕方から千葉で練習予定があるため、最後までは聴けないかもしれないが…。

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【サックスデュオ&ギター "カフェ・ド・シネマ"】
出演:ユカリッシモ(サクソフォンとギターの室内楽)…草山ゆかり(S.sax)、栃尾克樹(B.sax)、竹内永和(Guitar)、飯田俊明(ピアノ)
日時:2012年2月25日(土)14:00開演
会場:西東京市保谷こもれびホール・小ホール
料金:一般2,500円、こもれび友の会会員2,200円(※3歳未満入場不可)
プログラム:
E.モリコーネ - ニューシネマパラダイス
H.マンシーニ - ひまわり
H.マンシーニ - ムーン・リヴァー
M.ルグラン - シェルブールの雨傘
P.I.チャイコフスキー - くるみ割り人形より「花のワルツ」  他
※曲目は変更になる場合がございます
詳細&問い合わせ:
http://www.komorebi-hall.jp/event/event.cgi?mode=view&no=184

サクソフォン…そう、「サックス」という呼び名で親しまれているこの楽器、みなさんは普段どんなところで接していますか?ポップスやジャズ、はたまた演歌のバックバンドと、音楽に応じて表情を変えるサクソフォンですが、実はクラシックの楽器としても超一流なのです。注目すべきは、その甘く美しい音色!ある時にはヴァイオリンのように繊細に、またある時にはトランペットのように輝かしく、オーケストラの他のどんな楽器よりも魅力的に響きます。
栃尾克樹は、東京佼成ウインドオーケストラを始めとする団体で活躍中の、クラシック・サクソフォン界の第一人者。特にバリトン・サクソフォンという低音楽器の演奏においては彼の右に出る者はいません。また、ソプラノ・サクソフォンの草山ゆかりは、ギターとのデュオコンサートを通じて室内楽におけるサクソフォンの可能性を追求し続けています。2本のサクソフォン、そして竹内永和、飯田俊明という魅力的な共演陣とともにお送りする名曲揃いのコンサート、面白くならないはずがありません。休日の昼下がり、魅力的なクラシック・サクソフォンの世界を堪能してみませんか?

直近の平野さんの演奏会をご案内

本日夕方!ちなみに私は別件で行けません…。おなじみ、佐藤淳一"博士"からご案内いただいた、平野公崇氏のリサイタル。

以下、佐藤さんの紹介文。

私のサクソフォンの師匠である平野公崇先生が2月19日に成城ホールでリサイタルをされるので、そのご案内を送らせて頂きます。東京都内でのリサイタルは稀れですし、中でも久々に演奏する平野先生の十八番であるヒンデミットのヴィオラ・ソナタはいつ聴いても素晴らしいです!サクソフォンの常識を根底から覆すような新鮮な響きをベルリン在住、モンテカルロ国際ピアノコンクール優勝の実績のある山口研生さんのピアノと共にご堪能下さい。

【平野公崇・山口研生 サクソフォンとピアノコンサート】
出演:平野公崇(sax)、山口研生(pf)
日時:2012年2月19日 18:30開場 19:00開演
会場:成城ホール (小田急線「成城学園前」北口駅下車 徒歩5分)
料金:一般5000円、学生3000円
プログラム:
M.ラヴェル - ハバネラ
C.ドビュッシー - アラベスク(ピアノソロ)
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
H.ヴィラ=ロボス - 奥地の祭り(ピアノソロ)
L.ベートーベン - 悲愴ソナタ(ピアノソロ)
P.ヒンデミット - ヴィオラ・ソナタOp 11-4
主催:育の会
詳細:http://ikunokai.jp/news/news.html

TsukubaSQ@アーニーズ・スタジオ

Tsukuba Saxophone Quartetは、これまできちんとしたプロフィール写真を持っていなかった。幸いなことに今年はすでにいくつも演奏予定が入ってきているし、WSC用のプロフィール写真も作らなければだし…ということで、最近サクソフォン界を席巻しつつあるアーニーズ・スタジオへプロフィール写真の撮影をお願いした。

アーニーズ・スタジオは、写真家井村重人氏のプライヴェート・スタジオである。クラシック・サクソフォン界との関わりは意外と最近であるが、田村哲氏が同スタジオで初めて撮影して以来、サクソフォン界で急速に認知されている。ざっと知っているだけでも、伊藤あさぎさん、田中拓也さん、塙美里さん、大西智氏さん、加藤里志さん、カルテット・アテナ(塩安麻衣子さん、江川良子さん、冨岡祐子さん、平賀美紀さん)、木村有沙さん etc.と、ユーザーは多い。

11時にスタジオ入りし、服装を整え、いままでの撮影写真を参照し、さらに井村氏とお話ししながら全体的なイメージを決める。圧倒的に多いのはソロでの写真で、グループ(TsukubaSQは現在5人体制)となると、並び方が重要になってくるようだ。前列は女性3人、後列男性2人という基本配置を決め、バック紙の前に立つ。カメラはNikon D3x、レンズはNIKKOR 20-35mm F2.8を20mmの広角で使用していた。

ここからが、まさに"写真家・井村重人"の本領発揮であった。身体の角度、目線、表情、楽器の構えなど、やはり我々シロウトでは決めかねるもの。井村氏の言われるがままにしていくと、めちゃくちゃカッコイイ基本構図があっという間に決まってしまった。その状態で2、3枚テスト撮影。メンバー全員大納得の、素敵な構図だ。

あとは、その基本構図をもとに、休憩も入れながらおよそ2時間にわたって100枚以上はシャッターをきってもらっただろうか。その間にも、表情や目線について、井村氏からどんどんと的確なアドヴァイスが飛ぶ。その前後の写真を見ると、目線ひとつ変えるだけで大きく違った印象になるのだから、面白い。それにしても、井村氏はサクソフォン奏者が、どうやったら映えるのか、ということを実によく知りつくしている。普通の写真スタジオだったら、こうはいかないだろう、という大胆なアドヴァイスがいくつもあったが、ひとつひとつがドハマリで、メンバー一同驚いてしまった。

撮影後は、MACの前でベストカットを選定。結果的に、とても素晴らしい一枚を選ぶことができた。およそ3時間に渡ってお世話になった井村氏には、感謝、感謝である。とにかく、写真を撮られる、ということに対する概念が変わってしまうスタジオだ。アマチュア音楽家の顧客はまだほとんどおらず、もちろんサクソフォンとしては初めてだったそうだが、こんな素敵なスタジオ、知られずにいるなんて勿体ない!強烈にオススメする。

下記は、最後に頂いたRAWデータをもとにこねくり回してCDジャケット風に加工したもの(by ソプラノのN)。これはFacebookページ専用とし、実際のプロフィール写真はもう少し違う感じの加工品を使う予定。小さなサイズで掲載しておく(クリックすると、ちょっとだけ拡大)。

2012/02/16

田村哲コンサートの曲目解説

先日開かれた田村哲のサクソフォン・コンサート・シリーズに対し、曲目解説を提供した。下記分量で、およそ3日(平日2日+休日1日)かかった。

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J.ドゥメルスマン「オリジナルの主題による幻想曲」
 ユレ・ドゥメルスマン(1833 - 1866)は、19世紀に活躍したフランスのフルート奏者です。パリ音楽院にて学び、12歳の時にフルートのコンクールで優勝するなど、早熟の天才であったと言われています。順風満帆な演奏活動のさなか、結核のため33歳という若さで夭折しました。
 作曲家としての活動も展開し、自身が得意とするフルートのための作品を数多く残しています。サクソフォンのために作品を作りはじめた経緯については謎が多いですが、現存しているだけでも20近くの作品があり、最も有名な作品が本日演奏される「オリジナルの主題による幻想曲」です。古今東西様々な奏者によって取り上げられており、この曲が書かれた当時のピリオド楽器を使用したアプローチもなされているほどです。
 まずは、なだれ込むようなピアノの序奏にご注目あれ。まるでピアノ独奏のために書かれた作品かと錯覚してしまうほどです。もちろんサクソフォンにも見せ場がたっぷりと与えられており、無伴奏のカデンツァから、技巧的で輝かしいフィナーレまで、奏者にとっても聴衆にとっても楽しめる作品です。

C.サン=サーンス「オーボエ・ソナタ」
 19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家カミーユ・サン=サーンス(1835 - 1921)は、幼い頃から音楽に対してずば抜けた才能を発揮したと伝えられています。その神童ぶりたるや、2歳でピアノを弾き始め、3歳で作曲を開始、16歳のときには交響曲を作曲…というもので、しばしば、天才モーツァルトと並び称されることさえあるほど。オルガニスト兼作曲家として活躍し、歌劇、交響曲、協奏曲、室内楽といった分野に数多くの作品を残しました。さらにフォーレ、フランクらとともに音楽協会を設立し、19世紀後期のフランス音楽の発展を支えました。
 1921年、最晩年に書かれた「オーボエ・ソナタ」は、「クラリネット・ソナタ」「バソン・ソナタ」との連作であり、サン=サーンスが亡くなる直前に完成しました。若いころに書かれた作品と比べると、勢いや主張といったものは感じられず、酸いも甘いも知り尽くした人生の積み重ねを感じさせる控えめな曲想です。無駄な部分を極限まで削ぎ落としたこのシンプルな音楽は、20世紀初頭のフランス音楽の最良の形として、現在も広く愛奏されています。

B.コッククロフト「Rock Me!」
 無伴奏のサクソフォンでロックを表現したらどうなるのか!?オーストラリアの作曲家、コッククロフト(1972 - )の超絶技巧作品に、たった1本のアルトサックスを手にして田村哲が立ち向かいます。

E.モリコーネ「ニュー・シネマ・パラダイス」
 イタリアの作曲家エンニオ・モリコーネ(1928 - )は、クラシックの作曲家としてキャリアをスタートさせながら、現在では特に映画音楽の分野で地位を確立しています。「ニュー・シネマ・パラダイス」も、同名の映画に対してモリコーネが提供したサウンドトラックであり、氏の傑作のひとつとして数えられています。
 テレビ番組やCMなどでもおなじみの作品であり、この美しいメロディを耳にされたことがある方も多いでしょう。その表現の幅広さから"歌う管楽器"とも呼ばれるサクソフォン。このモリコーネのメロディにぴったりではないでしょうか。
 
伊藤康英「ラモーの主題による変奏曲」
 数々の吹奏楽曲や器楽曲でおなじみの作曲家・伊藤康英(1960 - )と、日本のクラシック・サクソフォン界との繋がりは深いものです。独奏、ピアノとのデュオ、サクソフォン四重奏、他の楽器とのアンサンブル…メロディアスな作品から、無調性の現代音楽まで、いずれも人気の高いものばかりです。
 伊藤康英がサクソフォンに興味を抱いたのは、日本におけるサクソフォンの立役者、須川展也とのコラボレーションによるところが大きいと言われています。まだ日本にサクソフォンが広く認知される前、須川展也の活動の黎明期を支えたのが伊藤康英の作品群でした。実はこの2人、同郷の高校で先輩・後輩の間柄。当時より音楽の世界を夢見ながら作曲・演奏活動を展開していたというから驚きです。
 「ラモーの主題による変奏曲」は、須川氏のデビューアルバムに収録されたシンプルな作品。サクソフォンの機動性に乗せて、伊藤康氏らしい閃きが散りばめられた筆致を楽しみましょう。

F.ボルヌ「カルメン・ファンタジー」
 ジョルジュ・ビゼー(1838 - 1875)は現在でこそ歌劇作品の歴史において重要視される作曲者として名を連ねていますが、存命時にはほとんど注目されずにその生涯を終えました。彼の代表作「カルメン」は、ビゼー最後の作品として作曲されましたが、血なまぐさい物語に、当初はそれほどの人気得たというわけではありませんでした。ビゼー自身は、初演からわずか3ヵ月後に38歳の若さで亡くなってしまいますが、スペイン情緒豊かな同作品は、まもなく歌劇界を席巻します。現在においては、フランス歌劇の最高傑作として、世界中で頻繁に取り上げられていることを、みなさんもご存知でしょう。
 「カルメン・ファンタジー」は、フルート奏者・作曲家のフランソワ・ボルヌ(1840 - 1920)が、歌劇「カルメン」の名旋律を、12分ほどの中にたっぷりと織り込んだ珠玉のコンサート・ピース。最初はフルートのために書かれましたが、のちに様々な楽器のために編曲され、近年ではサクソフォンでの演奏機会も増えているようです。名人芸的な見せ場が次から次へと現れては消え、息つく暇もありません。

ノースウェスタン大学次期准教授が決定

Northwestern University Henry and Leigh Bienen School of Musicの、次期サクソフォン科准教授が決定した。なんと、ティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏である!

http://www.music.northwestern.edu/about/news/2012/saxophonist-timothy-mcallister-appointed-to-bienen-faculty.html

昨年8月にサクソフォン科の准教授を公募していたが、ついに決まったのだなあ。1962年から50年にわたって教授職にあったヘムケ氏がついに退任するということだろうか?もしそうだとしたら、ノースウェスタン大学のサクソフォン科はマカリスター氏の指導のもと新たな歴史を刻み始めるということだ。デファイエ氏→ドゥラングル氏のバトンタッチのようなもので、サクソフォン史における重要な場所に立ち会っているような…胸が熱くなる。

2012/02/14

3月の演奏予定をまとめ

田村哲のリサイタル、仕事の打ち合わせが入ってしまったため伺えず…誠に残念だ。

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Tsukuba Saxophone Quartetで申し込みしていた日本サクソフォーン協会のアンサンブルコンクール、無事に録音審査を通過。3/18、洗足学園音楽大学で開かれる本選出場が決定した。演奏曲目は、上野耕路「サクソフォン四重奏曲」から第2楽章である。昔のように演奏時間が「20分」という規定であれば第1楽章も演奏できたかもしれないが、「約15分」かつ楽章途中カット不可、という制限を考慮し、第2楽章のみとなった。すでにIBCさんや須賀川吹さんも出場との情報があり、みなさんとご一緒できるのが楽しみだ。

昨年は、予選を通っていながら震災の影響で本選が中止になったからなあ。長い期間かけて大好きな曲を準備しただけに、なおのこと残念であった。今年は曲も違うし練習期間も違うが、なんとか頑張って仕上げたい。まずは講評用紙の到着を待とう。

3/11には、千葉大学サクソフォンプロジェクト:東日本大震災復興支援チャリティコンサートに出演させていただく。tfmさんの声かけで集まった豪華メンバーでのラージ、そしてなんと前半のステージでは、TsukubaSQとしても演奏させてもらう予定。ちょうどコンクールも近いので、同じ作品を演奏する。この催しについては、いずれ改めてブログ上で取り上げたい。

3/24、こんどはTsukubaSQではなく、臨時編成のメンバーでの演奏機会がある。ソプラノ小倉君、アルトtfmさん、テナー私、バリトンゆうぽんさんという、なんとも濃ゆいメンバーでの演奏である。ジャンジャンの第1楽章をやるというだけで、すでに燃えまくっているんですが(笑)。どんな音がするのかなー。今から楽しみだ。

演奏機会が充実しているのは良いことだが、ブログがそちらのネタばっかりになるのは避けないと!あくまでレビュー&レアネタ中心で…。

第19回東京芸術大学サクソフォーン専攻生による演奏会

仕事がおしたため、到着は20:30をまわってしまった。ヴィヴァルディから聴くことができた。

【第19回東京芸術大学サクソフォーン専攻生による演奏会】
出演:東京芸術大学サクソフォーン科、須川展也(指揮)
日時:2012年2月13日(月曜)19:00開演
会場:東京文化会館・小ホール
プログラム:
J.リュエフ - 四重奏のためのコンセール
J.フランセ - トリオ
I.クセナキス - XAS
本堂誠 - サクソフォン六重奏のための冬物語
P.ブーレーズ - 二重の影の対話
A.ヴィヴァルディ - 調和の霊感作品3-11
E.グリーグ - ペールギュント第一組曲

強烈な演奏会である。いくら"東京芸大"とはいえ、10代後半から20代前半にかけての学生のみなさんが、これだけディープなプログラムを揃え、見事に聴かせてしまうのだから驚きである。ベースに存在する基本的なコントロールや音楽的センス、室内楽的な深い分析など、サクソフォン奏者が持つべき要素を皆が兼ね備えている。まさに最高学府と呼ぶに相応しい、堂々たるものであった。ひとりひとりが、一つのグループとラージにのみ集中することで生まれるメリットというのもあるのだろう。いろいろ書いたが、ぶっちゃけていうと、参りましたー!m(_ _)mということ。

かと思えば、エンターテイメント的な=大道芸的な要素も持ち合わせ、さらに若さゆえの勢い(怖い物がないということは、すばらしいことだ)もあるとすれば、聴いていてこんなにおもしろいことはない。中途半端にプロフェッショナルの演奏を聴くよりも、聴く人が聴けば大きな感銘を得るのではないか。私もそうだった。ちなみに、今日のレベルに達するのに、どのくらいリハーサルを行っているのだろう。興味あるところだ。

ヴィヴァルディは、かっこよかった。バロック好きの血が騒ぐ。ヴィヴァルディに聴かせたらさぞかし驚くことだろう。中世からの呼び声とサクソフォンのエッジのきいた音色は、実に良くマッチすることだ。循環呼吸も使いながら、息の長いフレーズを見事に縦走していく様は、ジャズのシーツ・オブ・サウンドという言葉と対応させたくなる。独奏の3名は、さすが。角口さんがソプラノで一気に即興的に音を並べてしまうところ、惚れるわあ。中島さんのテナーは昨年の12月以来だが、このホールを満たす響きがすごい。

最後は須川展也氏のタクトのもと、全員合奏でグリーグ。この全員合奏においても、ppのプロフェッショナルな表現に肉薄していたのだから、恐れ入る。もちろん部分部分だけではなく、全体的な構成感についても良く作り込んであって、mpあたりを基調としながらじらしていくのが小憎い演出だ。

2012/02/12

J.Williams conducts J.Williams "Escapades" on YouTube

ジョン・ウィリアムズが作曲したアルトサクソフォンとオーケストラのための「エスカペイズ Escapades~キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンより~」。サクソフォンとピアノのためにもアレンジされており、最近国内でも演奏機会が増えてきている。録音でもブランフォード・マルサリスが独奏を務めた「American Spectrum(BIS)」が最近発売されたばかりである。

そもそもジョン・ウィリアムズがどういったサウンドを想定しているのか、というとことが疑問だった。まさか最初からクラシックのアルトサクソフォンを想定していた、ということはないだろう…などと思っていたのだが、YouTubeでジョン・ウィリアムズ自身が指揮を振った、同曲の動画を見つけた。これを観ると、一目(聴)瞭然!コテコテのジャズサウンドが聴ける。たしかに、曲中のほとんどのフレーズは、バップ風だものなあ。第3楽章のフレーズは、なんとサクソフォンとヴィブラフォンとのユニゾンだ。

サクソフォン独奏者は誰だろう。ご存じの方がおりましたら、ぜひ教えてください。

第1楽章:


第2楽章:


第3楽章:

演奏会情報:田村哲サクソフォンコンサート

すでにチケットは売り切れてしまったということだが、紹介のために書いておきたい。

【田村哲サクソフォンコンサート 神奈川公演】
出演:田村哲(sax)、榮萌果(pf)
日時:2012年2月14日(月)19:00開演
会場:横浜市旭区民文化センター「サンハート」音楽ホール
料金:一般2000円/高校生以下1500円(当日券各500円増)
プログラム:
J.ドゥメルスマン「オリジナルの主題による幻想曲」
C.サン=サーンス「オーボエ・ソナタ」
B.コッククロフト「Rock Me!」
E.モリコーネ「ニュー・シネマ・パラダイス」
伊藤康英「ラモーの主題による変奏曲」
F.ボルヌ「カルメン・ファンタジー」
問い合わせ:
09053100595(山縣)
ayk.flute65914@gmail.com

今回はある意味全国ツアー的なコンサートだろうか。すでに福岡と広島で2度の同じ内容でのコンサートを行っており、横浜での演奏が最終公演となる。以前、みなとみらいホールで開かれたリサイタルへ聴きに伺ったが、テクニカル的な部分での若干の詰めの甘さも散見されつつ、しかしそれを気にさせないほどにカバーしてしまうハートフルな演奏が印象的であった。選曲についても、サクソフォンの良さを伝えるベーシックなレパートリーを中心に組み上げており、そもそものリサイタルを開く目的からして、他のサクソフォン奏者とは一線を画するのである(誰に向けて発信したいか、ということが良くわかる)。コッククロフト作品などのスパイシーな曲もプログラミングされており、そういったバランス感覚もさすがだ。

ちなみに今回、デビューリサイタルに引き続いて曲目解説で協力している。依頼から3日間で書き上げたので、ベーシックな情報構成と、できる限りの再利用というポリシーに基づいている。

Dr.Paradi Night

Dr.Paradi Nightというライヴに参加してきた。Fくんという、近年のつくばバンド界におけるベースの立役者的な存在がいるのだが、私も天久保オールスターズバンドほか、様々なバンドでお世話になっていた。そのFくん、このたびの博士課程修了にともないつくばを離れるとのことで、Fくんの卒業ライヴ的な…いままでベースを弾いてきた全てのバンドが一堂に会する、というような催しだった。

今回は、昨年の学園祭で演奏した「K-SQUARE」というT-SQUARE系フュージョンのコピーバンドとして参加してきた。ベースはもちろんFくん、ギター、キーボード、ドラムスは古巣の大学の吹奏楽団の仲間、私はウィンド・コントローラー&シンセサイザー(WX-5とVL70-m)という編成である。学園祭のときにはアルトサックスも使ったのだが、今回は終演後に大移動があったため、荷物を減らすためにオールWX-5となった。

会場は土浦市のミュージックプラント。11時にスタジオ入りし2時間ほどリハーサル。近くのすし朗で簡単に昼食をとり、マクドナルドでグダグダし(プレミアムローストコーヒー!)、16時頃から演奏開始。催しへの参加団体は10団体ほどだったはずだが、K-SQUAREはトップバッターだった。

Run for Cover
Omens of Love
Truth
Japanese Soul Brothers
Fightman

さすがに消耗した…が、楽しかったー。充実したPAはもちろん、なんと照明・スモークまで!ちなみにアドリブは、練習しないとダメっすね(^^;Fくんはさすが、という感じ。

後のバンドの演奏も聴きたかったし、打ち上げにも参加したかったのだが、今日はそのまま実家に帰らなければならなかったので、後ろ髪引かれつつ退散。土浦から東京に移動、19:30新宿発のバスに乗って長野に戻った。バスの中では松下さんのリサイタル用の曲目解説など書いていた。こういうときにはLifeTouch Noteが便利だなあ(ほぼテキスト編集・動画再生専用マシンとなっているが)。

2012/02/09

サクソフォーン協会誌2011

発刊からかなり時間が経っているが、ブログで紹介していなかったことを思い出したので、書いておく。年に一回発行される、日本サクソフォーン協会の協会誌「Saxophonist」の23号。今回の協会誌には、編集長の服部吉之先生、副編集長の栃尾克樹先生、そして実働リーダーの冨岡祐子さんの下、編集企画委員としても携った。打ち合わせや校正作業などは、なかなか新鮮だったなあ。

校正作業のため、発刊前にほとんど全てを読みきってしまったのだが、やはり発刊されて実際に手に取ると嬉しいものだ。おそらく協会誌史上最多の167ページ。第30回サクソフォーンフェスティバルのライヴ録音ハイライトCD付き。本当に、この協会誌のためだけにサクソフォーン協会へ入会する価値はあると思う。以下、目次を記しておく。

第五回アドルフ・サックス国際コンクール日記:原博巳 7
第3回 ジャン=マリ・ロンデックス国際サクソフォンコンクール:参加報告/野村亮太 15
第28 回日本管打楽器コンクールサクソフォーン部門 18
日本管打楽器コンクール歴代受賞者による サクソフォーン フェスティバル コンサート 30
サクソフォーンにおけるヴィブラート奏法:佐々田 剛 33
デニーソフ作曲≪アルトサクソフォンとピアノの為のソナタ≫曲目分析 87
帝政ロシア~旧ソ連時代のロシア・サクソフォン界 112
演奏会場に於いてサクソフォーン 四重奏の演奏位置についての経験的考察 121
私とSAXOPHONE 126
フランスの小品は宝である:雲井雅人 134
サキソフォン物語 ~悪魔の角笛からジャズの花形へ~マイケル・シーゲル著/諸岡敏行訳(青土社):書評/北山 敦康 137
ストラスブール音楽院とフィリップ・ガイス教授 140
第30回サクソフォーンフェスティバル報告:貝沼拓実 144
フェスティバルコンサート協奏曲の夕べ を振り返って:指揮者 海老原 光 148
金木博幸氏によるバッハ・マスタークラス~「J.S. バッハ/無伴奏チェロ組曲 第一番」~ 153
留学生リレーレポート 159
第30 回 サクソフォーンフェスティバルCD 制作 167

さて、どの記事がオススメかと言われれば、全てオススメである。数年前の協会誌のような、いかにもフェスのプログラムをそのまま載せました、というような記事はひとつもない。全てが良く練られ、情報として貴重なものばかりだ。

佐々田氏のヴィブラート研究、そして須々木氏のデニゾフ研究は、質・量ともに圧巻である。佐々田氏の論文は、私もいつか手がけたいと思っていた、ミュール、デファイエ、ドゥラングルのイベール分析など、定量的なデータを元に実に良く考察してある。以前ブログでも取り上げた須々木由子氏のデニゾフ論文も、余すところなく収録。デニゾフを演奏される向きは、ぜひ読まれたし。

ひとつのブログ記事では全ての内容について紹介しきれないので、また機会をとりたい。

私は、「帝政ロシア~旧ソ連時代のロシア・サクソフォン界」という記事を寄稿した。本当はシャポシュニコワ教授を中心とした現代ロシア・サクソフォン界についても取り上げる予定だったのだが、準備もろもろで力及ばず、旧ソ連時代までで止めることとなった。

2012/02/08

やりたい曲…(2012/2/8アップデート)

2010年の6月に書いた、やりたい曲リストなんてものがあるのだが、いくつかは消化したためアップデートをかけておく。

ソロ:
JacobTV - Grab It!(再演)
Pierre Jodlowski - Mixtion
Jacques Becker - Western Ghats

四重奏:
Erkki Sven Tuur - Lamentatio
Louis Sclavis - Attente et Danse
Alexandros Makeas - Engrenage
JacobTV - Heartbreakers
Roland Becker - Le marchand de chaussures électriques
John Zornのアレンジ作品
Perry Goldstein - Blow!
Perry Goldstein - Fault Lines
Jerome Naulais - Toquades

八重奏:
長生淳 - 八重奏曲

長生淳「八重奏曲」については、アンサンブルサクゴレンさんとともに、9/29に演奏予定。ほかは未定だが、トゥール作品は優先的にどこかで演奏したい。ソロについては、どこかで機会をとって「Grab It!」をさらいなおして再演したいなと考えている。「Tsukuba Saxophone Quartet - Solo Project」なんて機会を作ったら、それぞれのメンバーが面白い曲を持ち寄りそうだ…。

2012/02/07

アンコンのことなど

博士学位審査会は行けず…仕事してました。。。

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ふと高校時代のアンサンブル・コンテストのことなど思い出した。長野県は、藤森章先生のおかげもあって中高の吹奏楽やアンサンブルが盛んな地域である。周囲を山に囲まれた地域で、特に南信地域などプロフェッショナルの奏者の演奏会も殆ど無いなかで、あれだけ多くの中高に吹奏楽部が存在し活動を続けていること、今思い出しても驚くべきことだ。

ただ、やはりアンコンを考えると、レパートリーは限定的。サクソフォンを見れば最高難易度がデザンクロの第3楽章、ほか、サンジュレ、ショルティーノ、リヴィエ、ジャンジャンといったところで、デザンクロでもやろうものなら話題になる、という状況であった。たぶん今でも「最高難易度作品がデザンクロの第3楽章」という状況はあまり変わっていないのではないだろうか。長生淳の「トルヴェールの彗星」あたりが増えたくらいかな?

こういった状況のなかで、レパートリーのブレイクスルーはどうしたら発生するのだろう、ということを考えていた。例えば、すでに全国的にはおなじみになっているマスランカ氏の「レシテーション・ブック」を皆がこぞって取り上げるようになるには、何が起これば良いのか?結局、やはりその曲で支部大会に進む団体が増えてこなければだめなのかなあ。

2012/02/06

Prof. Delangle & Villafruela on YouTube

明日は佐藤淳一さんの学位審査会!詳細はこちらから。仕事が詰まっており、伺うのはかなり厳しそうだが…。

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YouTubeにクロード・ドゥラングル教授関連の動画がいろいろと上がっているのは有名だが、またまた新しい動画が上がっていた。驚いたことに、ミゲル・ヴィジャフルエラ Miguel Villafruela氏との共演である。ヴィジャフルエラ氏といえば、南米を代表するサクソフォン奏者のひとり。キューバ出身で、留学してダニエル・デファイエ氏に師事し、以降はチリに定住してサクソフォン発展に努めている重鎮的存在だ。

そのヴィジャフルエラ氏とドゥラングル教授が共演しているとは?どうやら、昨年メキシコで開かれた"X International Meeting of Saxophone 2011"なる催しに、ドゥラングル教授が招聘されたようで、その時に共演したようだ。このあたりの詳細は、こちらのサイトに詳しく書いてあった。確かに、チラシにドゥラングル教授の名前がいくつか見られる。

ヴィジャフルエラ氏とともに共演しているJavier Valerio氏も、コスタリカ出身でインディアナ大学でユージン・ルソーに師事した、こちらもやはり南米を代表するプレイヤーのようである。公式サイトの情報によると、ジャズも吹きこなしてしまうようだ。

2012/02/05

HARMONIE-TV

Tsukuba Saxophone Quartet、本年の演奏予定が次々に決まっており嬉しい。先日のWSC参加決定に引き続き、9/29にはアンサンブルサクゴレンさんと保谷こもれびホールにおいてジョイントコンサートを開催することが決定した。いやー、楽しみだなー!

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「アルモニーTV」とでも読めば良いのかな。尚美ミュージックカレッジの学生を中心とした演奏のの以前もこのブログで紹介した気がするが、久々に覗いてみたらますますコンテンツが充実していた。

http://www.harmonie-tv.jp/

吹奏楽、室内楽、ポップスと、様々なジャンルに渡って興味深い動画が並ぶ。これだけ高画質かつ高品質の動画を、著作権をもちろんクリアした上で配信するサイトなど、ちょっと他には見当たらない。そういえば、洗足学園音楽大学もYouTubeに専用チャンネルを持っており、このHARMONIE-TVと同じような位置づけにあるが、提供する側は学校の良さをアピールできるし、観る方にとっても楽曲をフルバージョンで無料視聴できるしで、上手くwin-winの関係が成り立っているのが良いところ。

サクソフォン的にも興味深い演奏がたくさんある。中村均一氏独奏のシューマン「アダージォとアレグロ」とか、中村均一氏、波多江史朗氏、有村純親氏、原博巳氏のカルテットとか、学生の演奏で長生淳「八重奏曲」とか。ぜひいろいろ探して聴いていただきたい。

2012/02/04

NHK-FMにブルーオーロラSQが登場

本日719:20より、NHK-FMの番組「名曲リサイタル」にブルーオーロラ・サクソフォン・カルテットが出演している。と書いているうちに、ああ、もうバッハが始まってしまった…

PCやスマートフォンからはらじるで高音質の演奏を聴くことができる。

曲目等詳細はこちらのページから。
http://www3.nhk.or.jp/netradio/hensei/detail.html?fm.04027.2012-02-04

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聴いた。凄く良かった。ライヴで聴いたときに、これをそのまま録音で聴いたらちょっと違う印象を受けるかなあ(ライヴで聞いたときに気にならないバランスや細かいアンサンブルの解釈の違いなどが気になるのかなあ)…などと思っていたのだが、後編集ほとんどナシの名曲リサイタルでも、まさかブルーオーロラSQの演奏がこれほど魅力的に聴こえるとは思わなかった。

グラズノフの最中にPCがトラブって、音が出なくなってしまったのが残念(>_<)何が原因だったのだろう。エアチェック(死語)も失敗。。。

Donald Sinta plays Dahl's Concerto

SaxofanのKさんから、ドナルド・シンタ氏が演奏するインゴルフ・ダール「サクソフォン協奏曲」の演奏を聴かせていただいた。mckenさんのページに書かれていた文言を読んで以来、数年に渡ってずっと気になっていた録音だった。

シンタ氏といえば、アメリカのクラシック・サクソフォン界を、黎明期より支えてきた重要な人物だ。世界サクソフォンコングレスの創始者のひとりでもある。LP時代を含めてもそれほど録音は多くなくて、現在シンタ氏の演奏を楽しもうと思ったら、Mark Recordsから出版されている「American Music」くらいである。これも素晴らしいのだが、やはり「ダールの協奏曲の録音がある!」などと知ってしまえば、やはり気になるものだ。

ダールの録音は、もちろん管楽アンサンブルバックによるもので、ロバート・レイノルズ Robert Reynolds指揮、ミシガン州立大学ウィンドアンサンブルとの共演によるものである。この録音を聴いてまず感じるのは、そこらへんのダールの録音が聴けなくなってしまうほどの、ありえないほどの緻密なウィンドアンサンブルの演奏である(あまりに緻密すぎて、気持ち悪いくらい)。第3楽章の独奏パートとバンドの細かい音符のリレーなど、実に見事だ。どれだけリハーサルを重ねてこの境地へと達したのだろうか。逆に、プロフェッショナルの吹奏楽団よりも、大学バンドのほうが、一曲にかけられる時間が長い、ということはあるかもしれないが…。

そして、そのウィンドアンサンブルを見事に乗りこなすシンタ氏のサクソフォンである。大見得を切る冒頭の輝かしいフレーズは、ヘムケ氏のあの録音をなぜか思い出した。第2楽章の広大なフレーズも、実に見事なのである。この録音が一般的に知られていないのは、実にもったいないことだ、と思った。

2012/02/02

デニゾフ「ソナタ」のジャズアレンジ

TsukubaSQとしてエントリーしていたWSCの参加申し込みが受理されたので、今年の7月はスコットランドへ。

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平野公崇氏が演奏したデニゾフ「ソナタ」第3楽章を聴いている。サックス+ピアノトリオ用に編曲されていて、初めて聴いたときは大きな衝撃を受けた。長らく廃盤となっていたせいか、意外と若い世代には知られていなようだ。平野公崇(sax.)、クリヤマコト(pf.)、納浩一(bs.)、松山修(dr.)というジャズ・カルテットによるデニゾフ「ソナタ」の第3楽章。アルバム「ジュラシック」に収録されている。

冒頭から、イメージ通り。最初の6/4のバス・オスティナートはベース、その上で鳴るブロックコード、即興的フレーズは、ジャズピアノそのものだ。デニゾフは、ロシア近現代音楽界の中で、西洋音楽の技法を最も積極的に取り入れた作曲家の一人である。そして、西洋のジャズが大好きだったのだそうだ(カプースチンのように、あからさまにジャズの語法を取り入れた作品ばかりを作っていたというわけではないが)。J.M.ロンデックスからサクソフォン作品を委嘱されたとき、サックス=ジャズというリンクが、デニゾフの頭の中で繋がったことは、想像に難くない。

ご存じないかたはぜひ聴いてみることをオススメ。デニゾフのソナタに対する印象が変わること請け合いだ→ジュラシック

2012/02/01

芸大関連の演奏会案内

まずは、佐藤淳一さんの博士後期課程学位審査会(公開)のご案内。ついに佐藤淳一さんも博士課程を修了するのか…と考えると、なんだかとても感慨深いものがある。

佐藤淳一 博士後期課程学位審査会「ルチアーノ・ベリオの肖像 III」
2012年2月7日 19時開演(予定) 入場無料
於:東京藝術大学 奏楽堂
・《シュマンIV》
Chemins IV per sassofono soprano e 11archi
・《コントラプントゥクスXIX(フーガの技法)》
Contrapuncutus XIX (Die Kunst der Fuge) for 23players
・《カンティクム・ノヴィッシミ・テスタメンティ》(日本初演)
Cunticum Novissimi Testamenti per quattro clarinetti, quartetto di saxofoni e otto voci (Japan premie)
・《レシ(シュマンVII)》
R?cit(Chemins VII) per sassofono alto e orchestra
・独奏:佐藤淳一
・指揮 : 安良岡章夫
・声楽アンサンブル:東京混声合唱団
・博士学位審査会特別編成オーケストラ
・サクソフォン・アンサンブル:加藤里志、田中麻樹子、大石将紀
・クラリネット・アンサンブル: 前田優紀、 中舘壮志、須東裕基、 福島広之

詳細な解説は佐藤さんのメールに譲るが、個人的な興味は、秘曲「カンティクム・ノヴィッシミ・テスタメンティ」の日本初演である。テキスト&クラリネット四重奏&サクソフォン四重奏の曲で、これまでロンデックスの目録で名前を見たことがある程度だった。まさかそれを日本で聴ける機会が巡ってくるとは思わなかった。

今回は東京藝術大学大学院の博士後期課程の学位審査会のご案内をさせて頂きました。今まで5年間東京藝術大学でルチアーノ・ベリオの演奏と研究してきたことの集大成を発表します。
当日は東京混声合唱団と演奏する日本初演の作品やオーケストラとのコンチェルトなど多彩なプログラムを演奏します。
 一曲目は昨年のリサイタルの最後にも演奏しました弦楽11人とソプラノ・サクソフォンのための《シュマンIV》です。《セクエンツァVIIb》をもとに弦楽アンサンブルの伴奏を足した緊迫感溢れる曲になっています。
 二曲目は23人のプレイヤーのための《コントラプントゥクスXIX》です。ベリオは「編曲」を新たな作曲として生み出す手法をよく用いており、この曲もその内の一曲です。この曲はバッハの《フーガの技法》を23人のプレイヤーのために編曲しており、ベリオらしい仕上がりになっています。
 三曲目は声楽アンサンブルとサクソフォン・カルテット、クラリネット・カルテットのための《カンティクム・ノヴィッシミ・テスタメンティ》(日本初演)です。似た響きをもつ共鳴帯である声楽とサクソフォン、クラリネットが使われているこの曲はサンギネッティの詩とベリオの作る音響が素晴らしく調和しています。声楽アンサンブルは東京混声合唱団にご依頼し、サクソフォン・カルテットは加藤里志くん、田中麻樹子さん、大石将紀さんと共演いたします。
 4曲目はアルト・サクソフォンとオーケストラのための《レシ(シュマンVII)》です。この曲のオーケストラはこの日のために編成した特別オーケストラです。最近《レシ(シュマンVII)》のサクソフォンアンサンブルによる伴奏版を日本でも聴く機会が増えてきましたが、こちらがオリジナルになり、オーケストラが演奏する多種多様な色彩感は、この曲のまた違った一面を聴かせてくれると思います。
 素晴らしい共演者に恵まれてとても素敵なプログラムを組むことが出来ました。皆様ご来場の上、僕がの演奏が博士に相応しいかどうかご拝聴頂けると嬉しいです。

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もう一つは、毎年恒例、芸大サックス科の演奏会。今年も東京文化だ。ずっと川口リリアで演奏していたはずだが、昨年あたりから継続的に東京文化会館の小ホールになった、ということなのだろうか?こちらは、単純にプログラムだけ見れば、クセナキスとブーレーズに注目だろう。さりげに含まれている本堂さんの自作も気になる…。

第19回 東京藝術大学 サクソフォーン専攻生による演奏会
2012年2月13日(月) 18:30開場 19:00開演
於:東京文化会館小ホール
前売り1200円 当日1500円 全席自由
J.リュエフ/演奏会のための四重奏曲
J.フランセ/オーボエ、ファゴットとピアノのための三重奏曲
I.クセナキス/XAS
本堂誠/サクソフォン六重奏のための冬物語り
P.ブーレーズ/二重の影の対話
A.ヴィヴァルディ/「調和の霊感」 作品3 第11番
E.H.グリーグ/ペールギュント第一組曲 作品46