2012/12/31

Vincent Abatoアーカイヴページ

アメリカサクソフォン界の黎明期を支えたサクソフォン奏者のひとり、ヴィンセント・(ジミー)・アバト Vincent Jimmy Abato氏のアーカイヴページを見つけた。Adam Michlinという作曲家/指揮者が作成したページである。
内容は、Adam Michlin氏、Victor Morosco氏(!)、Albert Hunt氏による献呈文と、写真(晩年のショットも)、そして録音。特筆すべきは録音で、アバト氏の見事な演奏を楽しむことができる。イベールの「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」ほか、サクソフォンのみならずクラリネットの演奏、そしてクラシックからポピュラー音楽までと、その守備範囲の幅広さには舌を巻くほかない。

http://michlinmusic.com/abato/

NY Philharmonicとサクソフォン

New York Philharmonic(NYP)Digital Archivesに所収されている、サクソフォンがNYPに登場した演奏会のプログラム冊子ファクシミリへのリンク集。さすがにサクソフォン協奏曲はそれほど多くないのだな…。また、アーカイブされていない期間の演奏会の内容も気になっている。

1944年1月27,28日
William Steinberg, conductor
Vincent Abato, saxophone
Paul Creston - Concerto
http://archives.nyphil.org/index.php/artifact/6c8be0dc-49f0-4aee-89c9-68d4df404142?search-type=singleFilter&search-text=saxophone&doctype=program

1944年2月13日
Artur Rodzinski, conductor
Vincent Abato, saxophone
Paul Creston - Concerto
http://archives.nyphil.org/index.php/artifact/8908ce0d-3f72-410a-985c-e95d53053e43?search-type=singleFilter&search-text=saxophone&doctype=program

1946年1月8日
Milton Katims, conductor
Al Gallodor, saxophone
Jacques Ibert - Concertino da camera
http://archives.nyphil.org/index.php/artifact/8d173777-1c62-40ee-9856-56b6117b292e?search-type=singleFilter&search-text=saxophone&doctype=program

1958年1月11,12日
Leonard Bernstein, conductor
John La Porta, saxophone
Teo Macero - Fusion
http://archives.nyphil.org/index.php/artifact/545c3d15-95fc-46a1-84fe-17fbda06055a?search-type=singleFilter&search-text=saxophone&doctype=program

1959年12月10,11,12,13日
Leonard Bernstein, conductor
Paul Desmond, saxophone
H.Brubeck - Dialogues for Jazz Combo and Orchestra
http://archives.nyphil.org/index.php/artifact/9110275b-ff56-4e8d-a227-0fd005422d0b?search-type=singleFilter&search-text=saxophone&doctype=program

1961年10月14日
小澤征爾, conductor
Sigurd Rascher, saxophone
Claude Debussy - Rapsodie
http://archives.nyphil.org/index.php/artifact/998cc563-e2ea-4766-84cb-c2327007d7e6?search-type=singleFilter&search-text=saxophone&doctype=program&sort-order=asc&sort-column=npp:SortDate&page=2

1964年2月8日
Leonard Bernstein, conductor
Benny Golson, saxophone
Schuller - Journey into Jazz
http://archives.nyphil.org/index.php/artifact/c82d7b7c-07b5-4ad5-9e49-d282b66d3084?search-type=singleFilter&search-text=saxophone&doctype=program&sort-order=asc&sort-column=npp:SortDate&page=2

2012/12/30

木下直人さんから(放浪の騎士)

先日、島根県のF様よりご提供いただいた…ということで紹介したジョルジュ・ツィピーヌ指揮フランス国立放送局管弦楽団の演奏によるジャック・イベール「放浪の騎士」の録音だが、原盤となる仏COLUMBIA FCX 607(当たり前だがジャケットも違う)の復刻を木下直人さんより頂戴した。イベールの諸作品のなかでも格段に好きな作品であるので、嬉しい限りである。木下さん、いつもありがとうございます。

朗読を経た、冒頭のトランペットの音から高解像の音楽に驚いてしまった。確かに、もともと非常に優秀な録音であるということはわかってたのだが、それにしても凄い。木下さんによれば、原盤であることと、さらにカートリッジがPierre Clementであること、イコライザが原盤と同一であること(Old Columbiaのセッティング)により、この復刻音質が実現できているとのこと。

改めて、マルセル・ミュール氏のサクソフォンが見事である。オーケストラの中のサクソフォンとしては、ダニエル・デファイエ氏参加のダリウス・ミヨー「世界の創造」(レナード・バーンスタイン指揮フランス国立管弦楽団)や、ティモシー・マカリスター氏参加のジョン・アダムス「シティ・ノワール」(グスターボ・ドゥダメル指揮ロサンゼルス・フィル)とともに、サクソフォン奏者必聴の録音であると思う。

2012/12/28

つくば市で練習

仕事は木曜日でなんとか納め、今日は休暇を取得した。

個人練習とラージの合わせのため、午前からつくば市へ。自宅からは1時間45分ほどかかる。

練習しなければならない楽譜が積み上がってきており、しかもどれも難易度的に厄介であるため、時間を見つけてどんどんとさらっていく必要があるのだ。お昼休憩を挟んで15:00まで「Alley Dance」を中心に個人練習。「クープランの墓」も少し練習することができた。どちらも、急がば回れ…と、着実にさらっていかなければならない。15:00からは、ラージアンサンブルの合わせだった。チャイコフスキー/ミ・ベモル編の「弦楽セレナーデ」の第2楽章と第4楽章。初見状態ではまったく歯が立たず(汗)。改めて、ミ・ベモルの技術力の高さを思い知らされた。こちらも個人練習しておかなければ!

明日は、午前中に個人練習、夜は四重奏の合わせ。年末年始も実家に楽器を持って帰って練習する予定(さもなくば、いろいろと間に合わない…遅ければ指は動くがテンポを上げることが容易ではない)。この積み上がり具合と切羽詰まった感は、久々かもしれない。

2012/12/27

Amuser Saxophone Quartette 1st Recital

【Amuser Saxophone Quartette 1st Recital】
出演:Amuser Saxophone Quartette(河原翌真、菊地麻利絵、中村ちひろ、大野香菜)
日時:2012年12月27日(木)開演18:30
会場:ティアラこうとう 小ホール(都営新宿線・東京メトロ半蔵門線 住吉駅より徒歩5分)
料金:500円(全席自由)
プログラム:
J.フランセ - 小四重奏曲
P.I.チャイコフスキー - 弦楽四重奏曲第1番
J.S.バッハ - 目覚めよと呼ぶ声あり
D.マスランカ - マウンテン・ロード

菊地さんよりご案内いただいていた演奏会。先日のドビュッシーのレクチャーコンサートが今年最後に聴きに行く演奏会かなと思っていたら、埼玉大学吹奏楽部とAmuserSQが残っていたのだった。11月から12月までの間に、20回近く何かしらの演奏機会に伺っていることになる。前半は仕事が忙しく行きたい演奏会にも行けなかったので、ここにきてリバウンドしているような。

職場から会場まで遠く、また18:30開演ということでさすがに間に合わず、後半のバッハから聴いた。なんとか後半には間に合って良かった…。

AmuserSQは、東京音楽大学の学生により2011年の12月に結成されたアンサンブルである。ソプラノの河原氏は、名古屋音楽大学出身で現在東京音楽大学の大学院2年生、そのほかのメンバーは学部の4年生である。リサイタルは今回が初となるが、これまで複数回の演奏機会をこなしているとのこと。一昔前までは、アンサンブルといえば東京芸大か昭和音大か洗足音大かというイメージがあったのだが、最近では基本的な技術力の上昇ほか様々な要因からか、魅力的な演奏をするグループが増えてきていると思う。

休憩後、最初聴いたのはバッハ。音色・バランスといったところで若干ソプラノが分離する格好となっており、ときどき予期する響きから転回しているように聴こえる部分もあった。このバランスならば、前半のチャイコフスキーの弦楽四重奏のアレンジなんてかなり良い演奏だったと思うのだが。ただし、"地"の技術がしっかりしており、きちんと聴衆に聴かせるようなベクトルを持つ演奏だったと思う。それにしても、菊地さんの立ち回りや確固たる音楽づくりは凄いですね(ますますソロでの演奏を聴いてみたくなった)。

マスランカはさらに和声の難易度が上がるが、テクニカルな面では安定している。第2楽章や第3楽章が特に興味深い。また、第6楽章後半のコラール変奏では各プレイヤーの独奏となるが、それぞれの奏者の個性が出ていて面白く聴くことができた。楽章が進んでもとくに疲れた様子も見せない。前半にはフランセと、さらに30分に及ぶ大曲チャイコフスキーをこなしているわけで、たしかにプロフェッショナルの演奏家にとっては当たり前なのだが、実は凄いことなんだよなあ…驚いてしまった。

アンコール1曲目はフォーレ「ドリー」の"子守唄"。2曲目はヴィードーフの「サキソフォビア」の四重奏アレンジ版(菊地さんアレンジとのこと)。ヴィードーフの演奏が、不思議と心地よく余韻として帰り道もずっと残っていたのだった。

2012/12/26

木下直人さんから(ロンデックス&ブロディ)

ジャン=マリー・ロンデックス Jean Marie Londeix氏とポール・ブロディ Paul Brodie氏の二重奏曲集。ロンデックス氏については、いまさら説明の必要も無いだろう。ポール・ブロディ氏は、ユージン・ルソー氏とともに世界サクソフォン・コングレスの立ち上げ者のひとりとして知られている。1934年生まれ、カナダを代表するサクソフォン奏者の一人で、「アンバサダー・オブ・サクソフォン=サクソフォン大使」というニックネームを持っている。

以前、ブロディ氏からLPの盤起こしをしたCD-Rを購入したのだが(ブロディ氏が亡くなる2007年より前のことで、eBayに出品されていた)、最近木下直人さんに木下さんの復刻環境によるCD-Rをお送りいただいた。先日のTsukuba Saxophone Quartetの長野公演の際、木下さんにお越しいただいたのだが、メンバーがルクレールのデュオ・ソナタを吹いているのを聴いて、メンバーぶん復刻して送って下さったのだ。たいへん嬉しいことだ(ありがとうございました)。

1975年、原盤はCrest。おそらく擬似残響と思われる独特のサウンドを伴った演奏である。テクニックを聴いているとどちらがどちら、ということは容易にわかるのだが、実はあまり気にならず、純粋にデュエットの愉しみが前面に押し出されている。収録曲は以下のとおり。テレマンのカノン風ソナタからの4曲と、ルクレールのソナタから3曲。いずれもロンデックスが編曲したもので、Alphonse Leducより出版されているとのこと。

G.F.Handel - 12 canons melodieux, ou 6 sonates en duo: Sonata in G major, TWV 40:118
G.F.Handel - 12 Canons melodieux, ou 6 sonates en duo: Sonata in D major, TWV 40:120
G.F.Handel - 12 Canons melodieux, ou 6 sonates en duo: Sonata in A minor, TWV 40:123
G.F.Handel - 12 Canons melodieux, ou 6 sonates en duo: Sonata in G minor, TWV 40:119
J.M.Leclair - Sonata for 2 Violins in C major
J.M.Leclair - Sonata for 2 Violins in F major
J.M.Leclair - Sonata for 2 Violins in A flat major

テレマンは、曲によってアルト+テナー、ソプラノ+テナー、ソプラノ+アルトなどと持ち替えられており、なかなか楽しい。音色や美妙なニュアンスのコントロール、そして何より発音の美しさは、さすがにロンデックスに軍配が上がるが、ブロディもなかなか健闘していると思う。あと個人的には、ルクレールの緩叙楽章のゆったりとした雰囲気が好きだ。寄せては返す波に揺られているような心地になる。

表面・裏面ジャケットのスキャンデータもお送りいただいた。裏面ジャケットには、ロンデックス氏とブロディ氏の対談が掲載されており、時間があったら訳してみるつもり。

2012/12/25

復刻記事:小林秀雄(作曲家)のことば

4年ほど前に書いた記事より。






以下は、とある合唱曲集の冒頭に置かれた文章である。作曲家である小林秀雄が「最近の」合唱作品に対して思うことを、つづったもの。

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…私は、歌詞や内容のすべてが聴衆に完全に伝わる、明るい音楽を創作の中心に据えます。そして、粗雑で軽薄な音楽を廃します。
 ところでわが国では、歌詞の内容やそれを歌う表現目的などが全く伝わってこず、ただひたすらコンクールやコンサートなどで大見得が切れるような、いうならば〈難しさのための難しさ〉を目的とした曲が量産され、また、なぜか暗い、深刻ぶった作品を〈明るく軽快でダイナミックな作品などよりも〉高く評価したがる、陰湿な精神主義がいまだに存在します。そうかと思うと「技巧よりも心」などといい、技術の拙劣さを心や情緒の話にすりかえてしまいます。
 
「明るい、わかりやすい音楽を、正格(※)な技術で演奏する。内容や心は、それに乗って滲みでてくる」。

これが音楽です。…(後略)

1984年7月 小林秀雄

※正格:規則の正しいこと。また規則にあてはまっていること。

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何という素晴らしい言葉であろうか。もっともシンプルでありここまで重要なことだけあって、逆にこうも断言できることが凄い。こんな言葉が活字になって出てくることなど、なかなかないとは思うのだが…。我々は、この言葉の前には無力であり、ただひれ伏すのみである。

アマチュア合唱界への言葉として留めておくのがもったいない。プロアマ問わず、"音楽"に携わるすべての作曲家と演奏家が、心に刻むべき言葉ではないだろうか。この当たり前のことを解って音楽に携わっている人が、いったい何人いるのだろうか。

2012/12/24

演奏会ご案内:Amuser Saxophone Quartetteの演奏会

菊地麻利絵さんよりご案内いただいたサクソフォン四重奏の演奏会。今週木曜日、ティアラこうとうでのリサイタルである。平日、しかも自分の職場からは遠隔地ということだが、非常に挑戦的なプログラムでもあり、さらに入場料もかなりお安く設定されていて、なんとか伺いたいところ。ただ、仕事次第ではあるかなあ(開演時刻に間に合うのはちょっと厳しいかも)。

東京音楽大学の同窓生によるカルテットということだが、東京芸大、昭和音大、洗足音大以外からも、おもしろい演奏をするカルテットのグループが出現しており、なんとなく時代の移り変わりを感じる。

【Amuser Saxophone Quartette 1st Recital】
出演:Amuser Saxophone Quartette(河原翌真、菊地麻利絵、中村ちひろ、大野香菜)
日時:2012年12月27日(木)開演18:30
会場:ティアラこうとう 小ホール(都営新宿線・東京メトロ半蔵門線 住吉駅より徒歩5分)
料金:500円(全席自由)
プログラム:
J.フランセ - 小四重奏曲
P.I.チャイコフスキー - 弦楽四重奏曲第1番
J.S.バッハ - 目覚めよと呼ぶ声あり
D.マスランカ - マウンテン・ロード

そういえば、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲をサクソフォンで演奏するのって、あまり聞いたことがないアイディアだ。第2楽章に言わずと知れた「アンダンテ・カンタービレ」を持つ名曲・かつ大曲(全部演奏すると30分くらいかかる)だが、サクソフォンでどのような響きを聴かせてくれるのだろうか。楽しみである。

※業務連絡:どなたかチラシの画像データ持ってらっしゃったら、この記事に貼り付けるのでぜひくださいませm(_ _)m

2012/12/23

埼玉大学吹奏楽部第48回定期演奏会

【埼玉大学吹奏楽部第48回定期演奏会】
出演:埼玉大学吹奏楽部、近藤久敦(客演指揮)、舩越孝太、池上龍一(以上指揮)
日時:2012年12月23日(日曜)14:00開演
会場:さいたま市文化会館おおみや
プログラム:
福島弘和 - 祝典のためのファンファーレ(委嘱作品・初演)
酒井格 - 森の贈り物
天野正道 - 交響組曲「GR」よりシンフォニックセレクション
G.ビゼー/G.イアシッリ - 「アルルの女」第2組曲よりファランドール
近藤久敦 - ファンファーレ&マーチ「イン・メモリアル」
A.グラズノフ/仲田守 - サクソフォン協奏曲(客演独奏:大津立史)
P.スパーク - 交響曲第一番"大地・水・太陽・風"
J.ヴァン=デル=ロースト - カンタベリー・コラール(アンコール)
A.リード - 交響組曲第一番よりギャロップ(アンコール)

創部50周年の記念演奏会とのこと。開場直後位の時刻に文化会館に到着したのだが、驚くほどの長蛇の列。会場内も、見た目9割5分の座席が埋まる大盛況。この盛り具合は毎度のことだが、どんな宣伝をしているのだろう。すごいなあ。

福島弘和氏への委嘱作品から演奏会がスタート。現代日本の吹奏楽界におけるスタンダードな響きで、50周年に相応しい佳曲。学生指揮者として出てきた舩越さんという方は、ソツなく…というレベルを超えてバンドからダイナミックな響きを引き出していた。プログラム冊子の紹介文を読んでみると、教育学部の作曲専攻に在籍しているとのことで、そういった裏付けがある指揮なのだなと感心した。なんだか、このまま常任指揮者にでもなってしまいそうな勢いだ。

酒井格「森の贈り物」という描写音楽のような作品を経て、第一部最後はおなじみ「GR」。数年前に吹奏楽界で爆発的にヒットしたことは記憶に新しく、最近ではさすがに演奏機会は減っているはずだが、天野正道氏の泣かせるメロディや見事なオーケストレーションはやはり魅力満載。15分近くに及ぶ大曲を集中して聴き通してしまった。この曲を知らないかたでも楽しめるような演奏に仕上がっていたと思う。

第二部は、まずビゼーの賑やかな「ファランドール」を。その昔、埼玉大学吹奏楽部が、音楽専攻の発表会から独立して演奏会を開催し始めた時のメイン曲が「アルルの女」組曲だったとのこと。冒頭、ちょっと弦楽入りのオーケストラっぽいサウンドすら聴こえて驚き。続いて近藤久敦氏が登場。30周年記念演奏会の折に作曲したという自作「イン・メモリアル」を。すこし斜めに構えたファンファーレ(グラスハープまで入っている)と、まるでアンコール曲のようなマーチの対比が面白い。しかしあの指揮で有名な近藤氏が作曲をなさるとは思わなかった。解説によると、公式作はこの作品だけだそうだが(笑)。

二部の最後はグラズノフの「サクソフォン協奏曲」をシエナWOのメンバーとしても有名な大津立史氏の独奏で。もちろん、仲田守氏のアレンジである。毎年、定期演奏会の折に高確率で協奏曲を取り上げるというのはなかなかバンドにとってハードだが、今年も良い演奏を堪能した。大津氏の独奏はとても高いテクニックを伴ったもので、清潔感あふれるスマートな、サクソフォン奏者のお手本となるべき内容である。ただ、この曲に独奏としてのオリジナリティを付与するというとなかなか難しいところなのかなとも思ってしまったのだった(バックが管楽アンサンブルだっただけに、余計にそう思ったのかもしれない)。アンコールは、福田洋介「さくらのうた」のサクソフォン+ピアノ版。会場が沸いた。

最後は、部員全員揃ってのフィリップ・スパーク「交響曲第一番"大地・水・太陽・風"」を、近藤氏の指揮で。埼玉大学吹奏楽部の演奏は三回目の観覧になるが、毎年ステージに120人前後の奏者が所狭しと並び集結する様子は圧巻である。この編成で、グレインジャー「ローマの権力とキリスト教徒の心」なんて演奏してくれたら凄いだろうなあ…まあ、ありえないだろうけど。

スパークの第一番は、学生だった当時所属していた大学の吹奏楽団で、8年前くらい前にテナーサックスのパートを演奏したことがあり、懐かしく聴いた。曲のとらえどころの無さ…妙にテクニカルな木管パート、新主題出現しまくり、交響曲なのにソナタ形式楽章皆無、30分近くに及ぶ演奏時間…といったところはなかなか演奏者にとって大変なはず。さすがに細かい場所ではいろいろあったようだが、120人がひとつの目指すベクトルを共有して、この曲の再現に成功していた。もちろん近藤氏の手腕によるところも大きかっただろうが、それのみならずバンド全体にしっかりとした地力がある証拠だ。あるひとつのパートでも技量的に劣れば、たちまちそこから崩壊してしまう作品だと思うが、まったくそんなことはなかった。作品としては、第三楽章でシンセサイザーが導入されていることの高い効果に感じ入ったのだった。冒頭なんて、まるでリゲティの「レクイエム」のようにも聴こえたぞ(さすがにそれは言い過ぎかしらん)。

アンコールは、ヤン・ヴァン=デル=ロースト「カンタベリーコラール」。好きな曲なのでこれは嬉しい!そして最後の最後に、埼玉大学吹奏楽部の演奏会ではおなじみのアルフレッド・リード「第一組曲」から「ギャロップ」を。

50周年記念ということもバイアスとしてあるのだろうが、単純なひとつの演奏会としては捉えられない、過去から未来に続く歴史の重み…いや、歴史そのもののような演奏会であったと感じた。部外者の私ですらこんな調子なのだから、会場にいたであろう埼玉大学吹奏楽部のOB/OGの皆様は、今回の演奏会をどう捉えたのだろうか。気になるところだ。

終演後は、ラーメン二郎大宮店(会場に向かう最中に見つけた)に寄ってから帰還。実は二郎デビューだった。

"「風の谷のナウシカ」より組曲5つのメロディー"の楽譜

長らく絶版となっていたチェロとピアノのデュオ楽譜、久石譲/藤原真理編の"「風の谷のナウシカ」より組曲5つのメロディー"、待望の重版。ご興味ある方は下記リンクからどうぞ。

http://shop.zen-on.co.jp/p/932001

普段からテナー or バリトンサクソフォンに取り組んでいる方で、この曲をサクソフォンで吹きたいと思っていた人は多いことだろう。よく知られているところでは、宗貞啓二先生が「ベル・カント(Brain Music)」というアルバムでこの作品をテナーで取り上げている。

アレンジや演奏に際してどのような手続きが必要であるかは詳しく調べていないが、楽譜が絶版であればそもそもの第一歩も踏み出せなかったわけで、まずはめでたい。

2012/12/22

クロード・ドビュッシー生誕150周年企画コンサート(佐藤淳一博士による)

2012年のうちに聴きに伺うコンサートはこれが最後のはず。本当に素晴らしい催しで、この年を締めくくるに相応しいコンサートだったと思う。いや、この企画を単純に「コンサート」と分類しようとしている自分も、何だか変だな…。

【クロード・ドビュッシー生誕150周年企画コンサート】
出演:佐藤淳一(sax, 解説)、大城正司、貝沼拓実、伊藤あさぎ(以上sax)、佐野隆哉(pf)
日時:2012年12月21日(金曜)18:00開演
会場:アクタス ノナカ・アンナホール
プログラム:
~オープニングイベント~
佐藤淳一 - 映像と音で巡るドビュッシー《ラプソディ》の世界
~コンサート~
C.ドビュッシー - ラプソディ(Durand版)貝沼拓実
C.ドビュッシー - ラプソディ(Ries&Erler版:日本初演)伊藤あさぎ
C.ドビュッシー - ラプソディ(Henle版)大城正司
C.ドビュッシー - ベルガマスク組曲よりプレリュード&パスピエ
C.ドビュッシー - 弦楽四重奏曲第一番
C.ドビュッシー - 小組曲よりバレエ(アンコール)

会社を定時退社してアクタスへ。5分ほど遅刻してしまったが、オープニングイベントの大半を聴講することができた。佐藤淳一さんによるプレゼンテーションは、オープニングイベントのみならず、ドビュッシー「ラプソディ」の曲間にも及び、ドビュッシーの生い立ち、ラプソディの成立、エリザ・ホールの人物像、ラプソディの録音、ラプソディの編曲について、これまで知られていなかった/誤解されていた内容を覆す研究結果が数多く話された。また、いくつかの貴重な録音…Viardによる世界初録音、ラッシャーとニューヨークフィル、故S氏と芸大オケなど、どれもあまり一般には知られていないものであるため、とても良い機会であったと思う。全体のプレゼンテーション構成も素晴らしく、面白い出来事に絞ってポイントを押さえながら話していくあたり、聞き手としてもとても話を追いやすかったのであった。さすが佐藤さんである。

プレゼンテーション内容のメモ書き羅列は後日ブログにも掲載するつもりだが…ひとつ例を書いておく:
ラプソディの世界初録音は一般的にMaurice Viardの演奏によるもの、とされているが(Pearlから出版されている復刻CDにもそのように掲載されている)実は間違いで、 本当はJules Viardという名前のサクソフォン奏者であるということ。プレスされたグラモフォンのSPのラベルに、
Direction: M. Piero COPPOLA
Saxophone: M. Viard
と書かれていたため、Monsieurを表すM.がファーストネームと誤解され、他の奏者であるMaurice Viardと間違われたのではないかという推測がなされていた…この他のどの話題についても、目からウロコが落ちる思いだった。

プレゼンテーションの中で話された資料のデジタルアーカイブは、下記リンクからどうぞ。
ドビュッシーの自筆譜→こちら
ジェイムズ・ノイズ氏による「ラプソディ」黄金分割に関する考察を行った論文→こちら
ニュヨーク・フィルハーモニー管弦楽団所蔵のスコア。小澤征爾氏によるものと思われる筆跡も見られる→こちら
ヤング・ピープルズ・コンサートのプログラム冊子→こちら
ニュヨーク・フィルハーモニー管弦楽団とElkan-Vogel社による「ラプソディ」のアレンジをめぐっての往復書簡についてはここから参照できる→こちら

今回のプレゼンテーションは、佐藤淳一さんが執筆した論文「クロード・ドビュッシー《ラプソディ》を巡る諸問題に対する考察」が基となっている。この論文は、来年1月発行予定の、日本サクソフォーン協会発行の機関誌「サクソフォニスト」に掲載予定である。すでに校正段階に入っており、私も一読したのだが、ドビュッシー「ラプソディ」に関わりある方々は、ぜひ入会の上(笑)ご一読を。年会費3600円というのは破格だと思うのだが、あまり私の周りで入っている人はいないなあ。

19:00からはコンサート。3つの版をひとつのコンサートで聴けるなど、こんな企画でなければ絶対実現しない。1つ目のDurand版は、オーケストラのリダクションであり、サクソフォンのパートはそのまま。貝沼拓実さんの演奏は、音が少ないぶんその一発一発にかける気迫を感じ、ものすごい集中力のまま最後まで聴き通してしまった。「一音の重みが違う」とはご本人のことば。対してピアノパートは非常に高難易度であったが、やはり佐野氏のピアノはさすがである。薄明かりのような冒頭の和声から、遠くから聴こえてくるハバネラのリズム、そしてオーケストラの協奏のような部分など、多種多様な音色を確実に引き出していく。

2つ目はRies&Erler版(Detlef Bensmannのアレンジ)を伊藤あさぎさんの演奏で。これはまずアレンジの突拍子無さに驚かされた。随所でのソプラノとアルトの持ち替え、無伴奏カデンツァ(重音まで交えるなど…)、クライマックスでのフラジオ音域の多用など、強烈なものだ。伊藤あさぎさんの演奏をソロできちんと聴くのは久々。フランス留学を経て、音色に対する捉え方が変わっているような印象を受けた。テクニックはもともと素晴らしいものを持っていたが、その方面もさらに洗練されたようだ。来年3月にはリサイタルも予定しているとのことで、楽しみだ。

3つ目は2010年に出版されたHenleのUrtext版。ドビュッシーの自筆譜をもとにいちから作りなおした版であり、現存するアレンジ譜の中で最もドビュッシーの意図に近いものになっていると言えるだろう。実演では初めて聴いたがこれはとても面白い!もし仮に(ないだろうけど)私がラプソディを演奏するとしたら、この版を使うことだろう。大城正司さんの演奏を聴くのも久々で、音色・テクニック・音楽性等、その魅力を挙げていけばキリがないのだが、いちばん驚いたのがアンナホールの音響の悪さを感じさせない…といか、演奏でその音響の悪さをカヴァーしてしまうようなところである。アンナホールではこれまでも様々な演奏を聴いているが、あの音響の悪さをカヴァーできる演奏家は稀である。驚嘆してしまった。

後半は、ソプラノ:大城正司氏、アルト:伊藤あさぎ氏、テナー:貝沼拓実氏、バリトン:佐藤淳一氏という布陣でドビュッシーの2曲「ベルガマスク組曲よりプレリュード&パスピエ」「弦楽四重奏曲第一番」を。この企画のための即席のカルテットだということを感じさせない、素晴らしい演奏だった。この4人が集まるとどうなってしまうのかと思っていたのだが、ベルガマスクの冒頭を聴いた瞬間から音色のブレンド感に驚き、そのまま最後まで行ってしまった。弦楽四重奏曲の第3楽章の、グレゴリオ賛歌のような美しさに気づけたのも収穫。アンコールは、小組曲より「バレエ」。

佐藤さん曰く「自分は演奏者であり、物書きでもあるが、書いて終わりではなく、このような機会を企画することで多くの人に「ラプソディ」のことについて知ってほしい」「インターネットで沢山の情報が手に入る時代だからこそ、現地へ赴くことが重要。ニューイングランド音楽院でドビュッシーの手稿を手にし、参照して得られることがたくさんあった」という力強い言葉の数々に大いに共感した。目標にするのもおこがましいほどだが、私も佐藤さんのことを見習わなければ。

恐縮なことに打ち上げにも参加させてもらい、出演の方々といろいろお話することができた。楽しかったなーーー。また、現在マンハッタン音楽院でPaul Cohen氏のもとサクソフォンを学ぶWonki Leeさんに初めてお会いし、ご挨拶することができた。打ち上げにもいらっしゃったため、その席でもラッシャーやイベールについていろいろと情報を提供いただくことができた。やはりマンハッタン音楽院をそのうち訪問しなければ(笑)。

2012/12/20

ソプラノ2題 on YouTube

明日は渋谷アクタスでコレです。楽しみ~。

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現代のサクソフォンの技術の上昇は…ちょっと想像を絶するほどであまり耳がついていかないくらいなのだが、留まることを知らない。数年前、Vincent Davidが取り上げたハチャトゥリアン「ヴァイオリン協奏曲」の第1楽章を、次の世代のプレイヤーが演奏するような時代である。今朝、松下洋さんのFacebookタイムラインから流れてきた動画である。

独奏のジョシュア=マルコム・ハイドは、前回のJML国際優勝でも有名だろう。この曲、数年前に小川卓朗さんが国内でも取り上げたが、あと何年かしたら国内の音大生がレパートリーとして組み入れられるほどになってしまうのだろうか。バックはパリ音楽院のアンサンブル。本堂誠さん、外山舞さんの演奏姿を観ることができる。



もうひとつ、Adolphesax.comのタイムラインから。おなじみ、スペインのアントニオ=フェリペ・ベリヤル氏の演奏動画。カールハインツ・シュトックハウゼンの「少年のデュエット」である。シュトックハウゼンのサクソフォン作品集で、ジュリアン・プティ氏とフェリペ氏がデュオを組んで吹いていたのを思い出した。



こちらの二重奏もいいですね。ヘンデル/J.halvorsen編の「パッサカリア」。本来はヴァイオリンとチェロで演奏される。

2012/12/19

Branford Marsalis with NY Philharmonic

おなじみ、佐藤淳一さんに、ブランフォード・マルサリス Branford Marsalis氏とニューヨーク・フィルハーモニックが共演した録音を聴かせてもらった。ブランフォード・マルサリス氏と言えば、言わずと知れたアメリカの著名なジャズ・サクソフォン奏者であるが、クラシック・サクソフォンにも造詣が深く、「Creation(Sony)」などの全編クラシックのアルバムを制作するなどしている。さらに面白いのは、ジャズサクソフォン奏者ならではのエッセンスをクラシックの録音に持ち込むことであり、例えば「Creation」に収録されているイベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」の第3楽章では、楽譜を無視して長時間にわたりオリジナルのジャズ風カデンツを吹きまくる、という具合である。

そのマルサリス氏がグラズノフの「サクソフォン協奏曲」と、シュルホフ「ホット・ソナタ」(しかもベネットのアレンジ!YouTubeにはジョン・ハール氏の演奏もアップされている)を吹いた録音ということで、面白くないはずがない。

Cond: Andrey Boreyko
Orch: New York Philharmonic
Joseph Haydn - Symphony No.60
Alexandre Glazounov - Concerto (saxophone: B.Marsalis)
Erwin Schulhoff/Richard Rodney Bennett - Hot Sonata
Richard Strauss - Suite from the comédie-ballet "Le Bourgeois Gentilhomme"

全編を俯瞰すれば非常にまっとうな解釈だ。音色も、想像していたものよりもずっとクラシックに近い。グラズノフの細かいアゴーギクやヴィブラートの掛け方では「おっ? or おぉっ!!」という2パターンの驚きが時折聴かれるが、どちらかと言えばよりプラスの傾向に働いている箇所が多いと思う。シュルホフは、もともとがあのスタイルなので、さらに自然に聴こえる。

やはり特筆すべきはグラズノフでのカデンツァだろう。およそ2分にわたるネオ・クラシック風のカデンツァだが、これは即興なのだろうか?「Creation」でのイベール並に音をばらまきながら進行する。時折、主題の回帰なども見られ、とてもセンス溢れる内容だ。このカデンツァだったら、楽譜として売りだせば売れるんじゃないかなとも思ってしまう。サックス吹きならば一度聴いてみるべき。

YouTubeには、公式のプロモーション動画(おそらく演奏会前に撮られたものだろう)がアップされていた。

2012/12/18

ISSAC慰労会

昨日は西新宿の白銀屋にて、日下部任良さん、吉田優さん、木村佳さんたちと一緒に、10月に開かれたISSAC(The International Saxophone Symposium And Competition)の慰労会。慰労会というわりにはISSACの話がこれっぽっちも出なかったので、まあいわゆる普通の飲み会ですね(笑)仕事がおして到着がだいぶ遅くなってしまったが、なんとか伺えて良かった。最終的に10人くらい集まったかな?楽しかった!

シメは、ラーメン…ではなくて東京麺通団のうどん。これまた美味しかったー。身体には悪そうだが(^^;。

2012/12/17

ご案内:佐藤淳一「映像と音で巡るドビュッシー《ラプソディ》の世界」

今年も残り僅かとなってきたが、今週末にまた魅力的なコンサートが控えている。佐藤淳一さんがドビュッシー・イヤーの最後に企画するとびきりの演奏会。今年の研究内容(アメリカまで行っていろいろ調べてきたそうだ)であるドビュッシー「ラプソディ」について、その成果を聞/聴くことができるコンサート。アンナホールという小さな会場であることがちょっと残念ではあるが、ぜひ時間の空いている方は伺ってみては。

レクチャーからぜひ聞ければと思うが、間に合うかな。それから個人的興味は、伊藤あさぎさんが演奏を担当する「Ries&Erler版のラプソディ」…これは聴いたことの無い方にはぜひ聴いてほしいところ。けっこう衝撃的かも。

以下、佐藤淳一さんからのメールを引用。

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 一つ目はクロード・ドビュッシー生誕150周年を記念してドビュッシーの《ラプソディ》を中心としたコンサートを企画致しました。開演前の18時からは「映像と音で巡るドビュッシー《ラプソディ》の世界」と題して、私が今年の9月に渡米して持ち帰った《ラプソディ》の資料を元にした曲の説明や、ホール夫人の再評価、珍しい音源などを交えたプレトークとしまして皆さんにお話ししたいと思います。もし当日お時間がある方はこちらからご参加頂けると後半のコンサートがより楽しめるかと思います。
 19時からは素晴らしいサクソフォニスト3人を交えたコンサートです。
 前半は《ラプソディ》の3つの版を伊藤あさぎさん、貝沼拓実さん、大城正司さんの3人が吹き、間に《ラプソディ》に関する解説を私が致します。ピアノは佐野隆哉さんが演奏して下さいます。こういった機会でないと《ラプソディ》を違った奏者で3回も聴くことが出来ないかと思いますし、3人の奏者それぞれに違った素晴らしい魅力があり、また演奏する版もバラエティに富んでいるので楽しんで頂けるかと思います。あさぎさんが演奏するRies&Erler版は日本初演となり、アルトとソプラノを持ち替えるなど趣向を凝らした版となっています。解説では《ラプソディ》についての論文を書いてる中で知ったこの曲に秘められた謎もお話しする予定です。
 後半は私も演奏に加わり4人でのカルテットになります。曲は《ベルガマスク組曲より》と《弦楽四重奏曲》を演奏する予定です。このコンサートのためだけのカルテットがどの様なサウンドと表現を創り出すかお楽しみ下さい。


2012年12月21日(金)
オープン 17:30
イベント 18:00開始
コンサート 19:00開始

会場 アクタス ノナカ・アンナホール
料金 一般2500円 学生2000円

オープニングイベント
「映像と音で巡るドビュッシー《ラプソディ》の世界」

コンサート第一部
サクソフォンとピアノのための《ラプソディ》
・貝沼拓実(Dunrand版)
・伊藤あさぎ(Ries&Erler版 日本初演)
・大城正司(Henle版)

コンサート第二部
《ベルガマスク組曲》より
《弦楽四重奏曲 第一番 ト短調 作品10》

S.SAX 大城正司
A.SAX 伊藤あさぎ
T.SAX 貝沼拓実
B.SAX 佐藤淳一

2012/12/15

ビジネスクラスSEの演奏会2012

【Business Class Saxophone Ensemble 2012 Concert】
出演:Business Class Saxophone Ensemble、中村愛(harp)
日時:2012年12月15日(土曜)18:30開演
会場:かなっくホール(東神奈川)
プログラム:
F.プーランク/喜多形寛丈 - ミサ曲ト長調より"Kyrie"
G.ピエルネ/M.ミュール - 昔の歌、鉛の小さな兵隊の行進
P.ヴェローヌ - アンダルシアの騎士
D.ミヨー/啼鵬 - フランス組曲より
J.タイユフェール/島藤寛 - ドビュッシーへのオマージュ
C.ドビュッシー/中村均一 - ベルガマスク組曲より"前奏曲"
C.ドビュッシー/宇田川不二夫 - 神聖な舞曲と世俗的な舞曲(ハープ独奏:中村愛)
C.ドビュッシー/栃尾克樹 - 小組曲(ハープ独奏:中村愛)
C.ドビュッシー - ベルガマスク組曲より"月の光"(アンコール・ハープ独奏:中村愛)
宇田川不二夫 - 月夜の祈り(アンコール)

新横浜と東神奈川があんなに近いとは思わなかった。おかげで、ぎりぎりとなったがメインの「小組曲」から聴くことができたのだった。なんと、ちょうど「小組曲」が始まる瞬間に会場に飛び込めた。さすがに「小舟にて」こそ、複雑な和声進行と音の立ち上がりとテンポのせめぎ合いに苦労しているようにも聴こえたが(この楽章は超難しいっす)、続く「行列」や「メヌエット」での感の短い部分を使ったえもいわれぬ音色やフレージングなど、かなっくホールのような会場で聴くとゾクゾクする。中村愛氏のハープを加えたことによる効果は想像以上で、発音媒体の違う楽器がひとつ入るだけでこうも印象が変わるのかと驚いてしまった。個人的な感覚だが、見た目的な華やかさも、ある意味ドビュッシーの作品にマッチしていると思った。

「月の光」も良かった。ハープ奏者と親交があるサクソフォン団体はあまりないとは思うが、もし実現可能性があるならば演奏したい!と思ってしまう。このアレンジはアンドレ・カプレ編のアレンジベース…ではないように思えるが、実際どうだったのだろう?

本日のプログラム冊子と、そこに挟まっていた中村愛氏の…えっと、ブロマイドっていうのかな?違うか。なんだかモデルのポストカードみたいでかっこいいな。

Audrey Saxophone Quartetのライヴ♪

【藤岡交流館交流カフェ オードリー・サクソフォン・カルテット ミニコンサート】
出演:オードリー・サクソフォン・カルテット
日時:2012年12月15日(土曜)10:00~&11:15~
会場:愛知県豊田市藤岡交流館
プログラム:
1st stage(10:10~):
?(数曲)
シング・シング・シング
津軽海峡冬景色(アンコール)
プログラム
2nd stage(11:15~):
こぎつね
夢路より
情熱大陸
ホワイト・クリスマス
シング・シング・シング
オー・シャンゼリゼ(アンコール)

愛知県を中心に活躍するアマチュアのサクソフォンアンサンブル、オードリー・サクソフォン・カルテット(カキツバタ・サクソフォン・アンサンブルは同アンサンブルの"上位互換"とのこと)のライヴに急遽伺うことになり、豊田市まで行ってきた。朝6:00に家を出発し、新横浜から新幹線ひかりで豊橋まで。飯田線の終点が見られて感激。豊橋からは名鉄に乗って揺られること一時間で豊田市駅に到着し、そこからバスでさらに30分ほどの場所。

到着したのは、ちょうど1st stageの最終曲「シング・シング・シング」の演奏が始まるころだった。第3回のサクソフォン交流会に参加された方はわかるだろう…あのアドリブを含むスペシャルアレンジをガンガン吹きこなしていた。客席も巻き込んで大盛り上がりし、アンコールのリクエストも飛び出して急遽「津軽海峡冬景色」を演奏していた。休憩時間には、控え室に入れていただき、雑談。急な訪問だったにも関わらず、あたたかく迎え入れてくださり、感激である。

2nd stageは「こぎつね」「情熱大陸」といった、個人的にもなじみ深い作品のほか、「夢路より」といったあまり知らないアレンジ(渡部哲哉氏アレンジとのこと)も聴くことができた。純粋な音色の美しさ、テクニックの高さ、構成感と各箇所でのメリハリ、クラシックからポップスまで幅広いジャンルに対応できる引き出しの多さ(ふつうに演奏したらふつうにしか聴こえないアレンジ作品群を、特殊奏法を駆使しながら見事に変貌させる)、さらに時にはアドリブも飛び出すなど、オードリーSQさんの魅力を挙げていけばキリがない。「オー・シャンゼリゼ」を聴いているときの、純粋な楽しい!&幸せ!という感覚を、サクソフォンの演奏で味わったのは久しぶりだった。ライヴで聴くことができて本当に良かった!

終演後は、お昼ご飯&お茶をご一緒させていただいて、とあるプロジェクトの説明&打ち合わせ。いろいろと有益な情報・意見を伺うことができて、濃密な時間となった。お昼ご飯もごちそうになり恐縮である。最後はおかだぁさんに名古屋駅まで車で送っていただき(車中の会話も濃くてまた楽しいのである)、新幹線で新横浜へと戻った。

2012/12/13

第3回サクソフォン交流会事務局打ち上げ(6ヶ月越し)

昨日、第3回サクソフォン交流会事務局メンバーと服部先生を交えた打ち上げを行った。諸事情によりマネージャーのOさんは不参加だったが、合計7名が集まり4時間に渡っておしゃべり。いろいろと話せて楽しかったなー。

第4回の話もちょっとだけだが出た。ひとつ大きなチャレンジとなる…か?委細後日。

2012/12/11

次回のサクソフォーン・フェスティバル速報

昨日、日本サクソフォーン協会のニュースが届いたのだが、次回サクソフォーン・フェスティバルのコンテンツに関する速報が掲載されていた。それによると、企画内容としてはざっと以下のような感じ。

【大ホール】
オープニングコンサート
音大生によるアンサンブル
フェスティバル・コンサート~サクソフォンと弦楽四重奏~
 マルチェロ「協奏曲」(伊藤あさぎ)
 スタイン「クインテット」(ジェローム・ララン)
 石毛里佳「Fragile」(井上麻子)
 ガーシュウィン/ブラム「"ポギーとベス"からの情景」(上野耕平)
 ラーション「協奏曲」(林田和之)
フェスティバルオーケストラ:ドヴォルザーク「新世界より」第4楽章
【小ホール】
A会員によるプレミアム・コンサート
カルテット名曲館
ディスカヴァリー・コンサート(デュクリュック「ソナタ」、ダンディ「コラール変奏曲」、ドビュッシー「ラプソディ」を他楽器で)
雲井雅人プレゼンツ企画~アドルフ・サックス工房からの枝分かれ~
【市民ギャラリー】
サクソフォン・クリニック
アレクサンダー・テクニーク講座(バジル・クリッツァー)

毎年、あの大ホール・小ホールという巨大な会場をどのように扱うか、という点でかなり苦心されているはずだが、様々に企画を起こしており、頭が上がらない。我々としても盛り立てていきたいところだ。そういえばB会員参加の催しが無くなっているが、近年位置付けが難しくなっているように見受けられることから、とても妥当な判断だと思った。

2012/12/10

Joan Martí Frasquier plays Pimpin on Vimeo

JacobTVのバリトンサクソフォン作品「Pimpin」の高画質・高音質動画。演奏はスペインのJoan Martí Frasquier氏。日本ではフィリップ・ガイス氏が来日時に演奏したのが初めてのはずで、その後大石将紀氏によって再演されている。「Grab It!」ばりにカッコ良く、バリトンサックスのための「Believer」よりもこちらのほうが好きだなあ。

http://vimeo.com/32502518

Just Composed 2012 in Yokohama インタラクティブサクソフォン

いやはやトンデモなかった。これまでも大石将紀さんの演奏や他メディアとの融合によるパフォーマンスは何度も聴いた/体感したことがあって聴くたびに新鮮な感動を覚えたものだが、今日のはさらにひとつ上の次元へと進んでしまったというか…。いまだに、コンサートの余韻を引きずって夢見心地である。

サクソフォン吹きならば、アマチュア・プロフェッショナル問わず聴くべき演奏会だった。そういえばブログでも紹介しようと思っていたところ、忘れてしまっていたのだった。ううう、私としたことが。

【Just Composed 2012 in Yokohama インタラクティブサクソフォン】
出演:大石将紀(sax)、清水靖晃(composition/sax)、神田佳子(perc)、カール・ストーン(computer)、有馬純寿(electronics/sound design)、小阪淳(projection)、渡辺愛(composition)、宮木朝子(composition/electronics)、佐野太平(lighting)
日時:2012年12月9日(日曜)18:00開演
会場:横浜みなとみらいホール・小ホール
プログラム:
酒井健治 - Initial S(サクソフォン+映像)
佐藤允彦 - 遊行より(サクソフォン+打楽器)
P.ジョドロフスキ - Mixtion(サクソフォン+エレクトロニクス)
宮木朝子 - Evangelium(サクソフォン+エレクトロニクス+映像)
渡辺愛 - Unimaginary Landscape~サクソフォンとオーディオのための~(委嘱初演:サクソフォン+エレクトロニクス+照明)
清水靖晃 - Carl's Wild Garden(委嘱初演:サクソフォンx2+コンピュータ)
即興演奏(アンコール:サクソフォンx2+コンピュータ+打楽器+照明)

梅沢さんの演奏会終了後、電車に飛び乗って池袋からみなとみらいへ移動。余裕だろうと思っていたところ、東横線の安全確認のための一時停止によりギリギリになってしまった。会場に到着すると、サクソフォン関係者は少なめだったが、濃い方々ばかりにお会いした(笑)。佐藤淳一さんにもお会いしていろいろお話したり…。

酒井健治「Initial S」は、無伴奏アルトサクソフォンのための作品。もう、のっけから驚いてしまった。これまでも大石氏の強烈なテクニックは分かっていたつもりだったのだが、なんか今日はさらに磨きがかっていたというか…細やかな部分から全体の構成感までをコントロールしながら、美しいサクソフォンの音色で吹きまくる。木目調の反響板に映された映像は、3Dグラフィックの木片?の回転と、画面全体を歪ませるようなエフェクト。演奏とシンクロしていたのだが、どのように同期を取っていたのだろう?(映像も誰かがリアルタイムで動かしていたのかな?)

佐藤允彦作品は、始まった瞬間に暗闇から雷のようなエレクトロニクスのような音が聞こえてきてなんだなんだと思っていたところ、いつの間にかスプリングドラムを持った神田氏がステージ上に。即興演奏のような「駒返し」、サクソフォンとマリンバの演奏となった「としたけて」「殺生石」、そして、サクソフォンとハイハット&タムタムによる炎のような速度の「はやぶさ」(まるでビバップ)。和の要素と西洋楽器を見事に融合させたパフォーマンスに感動してしまった。

楽しみにしていたジョドロフスキ。そういえば、11列目11番という素晴らしい座席(なんと有馬氏のコンソールの目の前の座席)だったのだが、この位置で聴く「Mixtion」は定位感が完璧で最高である。サウンドデザインの点で言えば、2007年のAOIで聴いたものに匹敵するか、それをも上回っていたかもしれない。羽のように軽い大石さんのテナーサクソフォンの演奏は、ジェローム・ララン氏や井上麻子さんの演奏とはやや趣が異なるものの、それでも唖然とするほどのテクニックに打ちのめされてしまった。

後半は「エヴァンジェリウム」から。実はこの曲を聴くのは二回目。一回目は、2009年に前田ホールのロビーで聴いたんだっけなあ。懐かしい。幻想的なサウンドと、ホールの壁面に映し出される幻燈(プロジェクションではなく、まさに幻燈という雰囲気)に、まるで浮遊するような心地よさを感じる。サクソフォンによって繰り返されるアルペジオは、まるで「Jackdaw」の中間部のようだ。YouTubeに本日の映像を提供した小阪淳氏の映像とともにアップロードされているので、興味ある方はぜひ。本日のライブでの印象とはかなり異なるが…。

委嘱新作、渡辺愛氏の「Unimaginary Landscape」…ジョン・ケージのタイトルに影響を受けていることは明らかだが、サウンドはまったく違うもの。ここでは、言葉で言い表すことができない体験をしてしまった。端的に言ってしまえば、サクソフォンの生音とミュージック・コンクレート、照明(レーザーとフラッシュ)の融合、ということなのだが、それらが有機的に絡み合い、まるで別世界を旅するような不思議な15分間を創り出していた。あの時間をあの場所にいた他の聴衆の方々共有できたことを嬉しく思う。ため息が漏れてしまうほどだ。

そして清水靖晃氏とカール・ストーン氏登場。「Seeds」「Rain」「Work」「Be Flat」という4部構成の大曲(おそらく30分弱くらい演奏していたのではないかな)。点描的なテナーサクソフォンの掛け合いにさりげなくエレクトロニクスが絡む「Seeds」、通路まで出てきての即興対決となった「Rain」、ステージに戻っての「Work」(時折挟み込まれる協和音は実に甘い味がする)、最終部、張り裂けそうな生命の鼓動のようなビートが印象的だった「Be Flat」。清水靖晃氏は、いまでこそバッハやペンタトニカでよく知られているが、そういえばもともとは1970年代から実験音楽を積極的に手がけた作曲家/プロデューサー/プレイヤーなのであった。本性を垣間見た思いがする。清水氏も大石氏もすばらしく、相乗効果により1+1が3にも4にもなるような瞬間を目の当たりにした。

アンコールは、全員参加の即興で、。最後の最後までトンデモ系。いやはや、参りました…凄かったなあ。

先の火曜日には、銀座でユージン・ルソー氏の演奏会を聴いたばかりだというのに。一週間のうちに、生ける伝説と呼ばれる巨匠の音楽に触れ、そして現代日本の最先端のサクソフォン音楽に触れ…というなんとも濃い体験が連続している。幸せなことだ。

2012/12/09

梅沢洋&中村真紀デュオ・リサイタル2012winter

サクソフォン交流会の事務局等でもお世話になっているアマチュアのサクソフォン奏者、梅沢洋さんの演奏会。最初にお知り合いになったのはたしか波多江さん関連のイベントだったのだが、演奏を拝聴するのは初めてだった。会場は、JR池袋西口から7分ほどのbar Apple Jumpという25席ほどのスペース。ちょうど来ていたtfmさん、マリエさんと一緒に聴いた。Rosso関連で、久々にお会いする方も。

【梅沢洋&中村真紀デュオ・リサイタル2012winter】
出演:梅沢洋(sax)、中村真紀(pf)
日時:2012年12月9日(日曜)15:30開演
会場:bar Apple Jump
プログラム:
A.ピアソラ - タンゴ・エチュード第3番(サクソフォンソロ)
C.ドビュッシー - シランクス(サクソフォンソロ)
C.ドビュッシー - 亜麻色の髪の乙女(ピアノソロ)
C.ドビュッシー - グラドゥス・アド・パルナッスム博士(ピアノソロ)
C.ドビュッシー - 金色の魚(ピアノソロ)
A.リード - バラッド(デュオ)
A.ララ - グラナダ(デュオ)
C.ドビュッシー - 小さな黒人(デュオ・アンコール)

最初はサクソフォンの無伴奏。アマチュアが取り組むようなプログラムでは到底ない、高難易度の作品が並ぶが、たしか梅沢さんはこれまでもデザンクロの「PCF」等に取り組まれたことがあるはずで(うろ覚え、間違っていたらごめんなさい)、お手の物なのだろうか。芯のある輝かしい音色で着実に吹きこなしていく。曲中に出現するフラジオもばっちり決めて、一曲吹き終えた。続く「シランクス」は良い選曲!これ、サクソフォンの無伴奏として普通に聴けてしまう作品だが、あまり取り上げる方がいないのが不思議。今日はアルトだったが、今度はソプラノで聴いてみたい。

続く3曲は、中村さんのピアノ独奏。妙な脱力系MC(しかも面白い)を挟みながら、3つのドビュッシーの小品を演奏した。「映像第2集」からの「金色の魚」は、日本の漆器の土台の上に金粉で描かれた鯉のことを指す…とのことだが、いままで意識して聴いたことがなく、非常にテクニカルで面白い作品だと思った。

デュオではアルフレッド・リードの「バラッド」とララ「グラナダ」を。デュオともなると、さすがに(音量や響きの融合的に)大きいハコで聴きたいかなと思ったが、それでもきちんと作りこんであり、特に「グラナダ」は技巧的なカデンツも含めてかなり盛り上がった。気がつけば作曲化のファースト・ネームはAかCだけだったな(笑)アンコールに、「小さな黒人」をデュオで。

ヤマハ目黒吹奏楽団 特別演奏会

【ヤマハ目黒吹奏楽団 特別演奏会(めぐろパーシモンホール開館10周年記念公演 めぐろパーシモン芸術文化ネットワーク シリーズ4)】
出演:ヤマハ目黒吹奏楽団、鳥谷部武夫(指揮)、大田昌穂(司会)
日時:2012年6月17日(日)14:00開演
会場:めぐろパーシモンホール・大ホール
プログラム:
E.エルガー - 威風堂々
F.エリクソン - 序曲「祝典」
P.A.グレインジャー - デリー地方のアイルランド民謡
J.シベリウス - 交響詩「フィンランディア」
J.ガーランド - イン・ザ・ムード
I.バーリン - ホワイト・クリスマス
R.ロジャース - サウンド・オブ・ミュージック・メドレー
M.ハムリッシュ - 追憶のテーマ
久石譲 - 交響組曲「風の谷のナウシカ」三章
アンパンマンマーチ(アンコール)
上を向いて歩こう(アンコール)

年間2回、夏と冬のヤマハ目黒吹奏楽団のステージマネージャーのお仕事。昨年冬季の演奏会がステマネで、3回目だった。9時頃に会場入りし、ゲネを経て本番。進行のほか照明のQ出し…これがかなり緊張する…もあって大変だが、なんとか無事終演。毎回、まわりのスタッフやホールの方にも助けられている(ありがたいことだ)。

すばらしい演奏をする団体であり、名物司会の太田さんのMCも楽しく、毎回たくさんのお客様が来場するのだが、今回はめぐろパーシモンホールとの共催ということでさらに客席が盛況となった。最終的に、1200席のホールに1000人弱来場があったそうだ。個人的には、シガード・ラッシャー氏に「サクソフォン協奏曲」を献呈したエリクソンの曲を聴けたのが嬉しかったなあ。後半のプリミティブな"楽しさ"を感じられるステージも、さすがである。サックスのO氏の、追憶のテーマでのイケイケっぷりも鮮烈!そしてナウシカは、やはり演奏者側・聴衆側ともに共感度が高い。

ステージマネージャーを引き受け続けている以上は客席で聴くことはできないが、吹奏楽が好きな方にはぜひいらしていただきたいなあと思う次第。次回以降、こちらでも余裕を持って告知できれば良いなと思う。

ユージン・ルソー氏トーク内容メモ書き(後半)

先日行われたユージン・ルソー トーク&ミニコンサートでのトーク内容のメモ書き、後半部分をアップ。聞きながら書いたため、間違っている可能性もありますのでご承知おき下さい。

Thunderさんもご自身のメモ内容をアップされています

【世界の偉大な音楽家との出会い】
* マルセル・ミュール氏
- first & most
- always very gentle with plite
- レッスンの様子
o 28歳の時に渡仏したため、パリ音楽院の卒業試験を受けることはできなかった
o 月2回、3時間ずつのプライヴェート・レッスンを受けることができた
o ミュール氏の自宅でのレッスン
o レッスンをすべて録音した
o ある日のこと、レッスン中に窓の外からパトカーのサイレンが聞こえてきた。ケネディ大統領の乗った車が外を通過していたのだった
o 生徒に対して常に明確な説明を行った(例:手の位置など)
o 生徒の考え方を尊重し、他の方法がある場合に示唆を行った(例:ゴトコフスキー「ブリヤンス」の指使い)
- 帰国後
o 沢山の手紙をやり取りした
o ミュール氏が高齢のため字が書けなくなってからは、ミュール氏の息子が口述筆記を行なっていた

* ポール・クレストン氏
- 1965年のミッドウエスト・クリニック写真
o Frederick Fennell, Frederick L. Hemke, Cecil Leeson, Donald Sinta, Eugene Rousseau, Warren Benson and Sigurd Raschèr
o セシル・リースン氏に関連して…
- 出会い
o シアトルで開かれたコンヴェンションで「ソナタ」を演奏
o 客席にクレストン氏がいた(ルソー氏はそのことを知らなかった)
o 演奏の後にルソー氏のところに来てくれた
o 2楽章を指定テンポ66より遅く演奏したので、そのことについて謝ったところ、逆に66は速すぎると言われてしまった
- WSC@ノースウェスタン
o ユーモアあふれる人。演奏の後に来て「とてもいい演奏だった!だからこの調子で練習を続けなさい」という具合
o このときもらったサックスカルテットの楽語がイタリア語でとても驚いた(ご存知のように「ソナタ」での楽語は英語表記)
o 理由を尋ねたところ「僕も成長しているんだよ」とのこと
o クレストンはイタリア系の移民家系であり、幼い頃は両親から英語を使うよう言われていたのだろう

* バーナード・ヘイデン氏
- ルソー氏との関わり
o インディアナ大学で教授職として同僚
o 36年間にわたる友人
o 「ディヴァージョン」を含むいくつものサクソフォン作品を書いている
- 簡単な経歴
o ドイツ出身、1930年にはドイツを離れてアメリカに渡った(ユダヤ人だったため)
o デトロイトに居を構え、そこでラリー・ティールに会った
o 料理上手
- 「ソナタ」について
o 1943年に「ソナタ」を作曲、ティールに献呈
o 師匠はヒンデミットで、ヘイデンはヒンデミットのことを震えるほど恐れていた
o ヒンデミットがデトロイトを訪れた時、ヘイデンは「ソナタ」のスコアをヒンデミットに見せた。ヒンデミットの評は、「It is good.」だった
o 2冊の自筆譜が制作され、1冊目はティールが、2冊目はルソー氏が所有(ブルーミントンでのティール氏の演奏のあと、パーティでヘイデン氏に会ってもらった)

* カレル・フサ氏
- 簡単な経歴
o チェコ・プラハ出身→フランス・パリへ移住→アメリカへ移住
- ルソー氏との関わり
o ルソー氏の奥様がチェコ語を話せるため、交流があった
o いまでも仲が良い
o 協奏曲を一緒に演奏する機会があったが、指揮台に立ったフサはただ一言「Just follow me」と…。
- エレジーとロンド
o エレジーは、もともとピアノ独奏作品だった

* イィンドジフ・フェルド氏(kuriからの質問)
- きっかけ
o プラハに留学していたルソー氏の奥様が送ってくれたLPの中に面白いものがあり、それがフェルドの作品だった
- フェルドはサクソフォン作品を書いたことがなかったので、ルソー氏は自分の録音を送った
- こうして作曲されたサクソフォン協奏曲はソプラノ、アルト、テナー3本のサクソフォンのための作品
- ニュルンベルクのWSCで初演
- フェルドはフルート作品が有名で、ランパルやゴールウェイにも作品献呈している

* グラモフォン盤の協奏曲集制作経緯(Thunderさんからの質問)
- 録音決定まで
o 1967年~68年でヨーロッパ・ツアーを行った
o コンサートのエージェントに、録音をしたいとの旨を話したところ、エージェントが各レーベルに交渉の手紙を送ってくれた
o グラモフォンから返事があり、2秒で即決
- 録音時のエピソード
o パリの協会でレコーディング、とても寒く、チューニングが難しかった
o 指揮者のポール・ケンツ氏はコントラバス奏者に不満があったらしく、突然「10分やるから練習しろ」と言い、腕を組んで後ろを向いてしまった。コントラバス奏者も、何もせずソッポを向いてしまった。
o 大変ショックを受けた。また、録音ブースにいた録音技師もルソー氏の妻も、いった何が起こっているのかと混乱した
o 録音が終わると仲直りして、一緒にビールを飲んでいた

【若きサクソフォン演奏家へのメッセージ】
* あなたが本当に音楽を好きであるならば、情熱を持って取り組みなさい
* お金を稼ごうとするならば、人生はそれほどシンプルではない
* Be the best you can be!!

2012/12/08

明日は…

時間がないので取り急ぎ。

明日は1年に2回のステマネのお仕事。お時間ある方はぜひいらしてくださいませ。

http://www.yamame-winds.net/main/index.html

2012/12/06

ユージン・ルソー氏トーク内容メモ書き(前半)

先日行われたユージン・ルソー トーク&ミニコンサートでのトーク内容のメモ書きを(長くなりそうなので前半・後半にわけて)アップ。聞きながら書いたため、間違っている可能性もありますのでご承知おき下さい。

Thunderさんもご自身のメモ内容をアップされています

【サクソフォン人生のこと】
* 幼少時代~キャリア初期の写真
- 幼少時代の家
o イリノイ州ブルーアイランド
- 初めてサクソフォンを手にした数年後(1942年)
- 高校時代(1949年)
- EU Trio(1951年)
o 大学時代に組んでいたダンス・ミュージックを演奏するためのバンド。そこそこ稼いだ
- マルセル・ミュールと(1961年)
o ルソー氏の後ろにはベートーヴェンの肖像が掛かっている
* サクソフォンとの出会い~パリ留学
- 7~8才のころ、近所の男の子がサクソフォンを練習しているのを聴いて、その音に魅せられた
- 両親にねだったところサクソフォンを買い与えてくれたのだが、近所の男の子は金色の楽器、買ってもらったのは銀色の楽器だったので、泣いてしまった
- 中学までは音楽orサクソフォンを専門的に学ぶことはなかった
- 高校から、トロンボーン奏者の先生について音楽を習った
o あるときコンクールで取り上げるために先生が曲名を書いてくれた
o シカゴの大型楽器店まで行って、店員に曲名を見せてこの楽譜が欲しいといったところ、本当かと驚かれた
o そこに書いてあったのがイベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」
o 店員がミュール演奏のイベール演奏が収録された78回転のSPを薦めてくれたため、購入。演奏に魅了された。
- 28歳の時フルブライト給費生としてフランスへ。"Change My Life"

ルソー氏が幼少時代を過ごしたという家の写真。スライドに住所が映されていたのだが、Google Mapに住所を打ち込んだらストリートビューで探すことができた。住んでいる人はもちろん変わっているのだろうが、家自体はいまでも変わらずその場所にあるらしい。



【新しいサクソフォンを目指して・ヤマハとの出会い】
* ヤマハとの出会い
- パリ留学時代、アパートで練習できなかったため、近くのLeblancの工場で練習させてもらっていた
- Leblanc工場の近くにはウヴナゲール?という名前の音響学者が住んでおり、練習しに行くといつも話しかけてきた。「何々を知ってる?」と聞かれ、知らないというと「それはね、云々~」という具合。
- YAMAHAは、当時新型サクソフォンを開発するためのテスターを探していた
- ルブランUSAの社長Vito Pascucci氏が、ルソー氏を、YAMAHA社長の川上源一氏へと紹介
* YAS-62の開発
- 当時の最上位機種YAS-61の印象として書かれたメモ:Good feature, Good quality...will it be improved
- YAMAHAと協業できたことは幸運だった
o 設備も素晴らしく、働く人のやる気も高い
- 写真
o 手書きのサクソフォン設計書
o 目隠しをしてサクソフォンをテストするルソー氏
o 音ごとの音程グラフ
o 黒板に書き付けられたメモ
- ルソー氏が考えるサクソフォン設計において重要な3つの要素
o Intonation(音程)
o Air(エアー)
o Embouchure(アンブシュア)
- Pitchを補正する→Tuningを行う→Make intonation by using good air and embouchure
* 雲井氏コメント
- 音程チェックのテストはとても大変だった
- ルソー氏とのコラボレーションも、非常に刺激的だった
- 自分の意見が新製品の開発に生かされていることが、非常に良い経験だった
* 石渡氏コメント
- ピアノの永井氏?が行ったコンクリートで作れば一番良く響く、という言葉が忘れられない
- ルソー氏の演奏は銀座中央会館でのリサイタルで初めて聴いた
- インディアナ大学へは研究員として6ヶ月間留学
- 後年、ルソー氏が有給休暇(アメリカの大学教員は6年ごとに1年間の有給休暇を取得できる)を取るときに、半分の6ヶ月間だけ特別講師として赴任。破格の2万ドルをもらった
- 62の開発には5年間を費やした

【世界の偉大な音楽家との出会い】【若きサクソフォン演奏家へのメッセージ】については、後日、別の記事として書く予定。

2012/12/05

ユージン・ルソー トーク&ミニコンサート

まるで夢のような、幸せな時間を過ごした。こういった聴後感というか、演奏会後の気分は初めてだ。

【ユージン・ルソー トーク&ミニコンサート】
出演:ユージン・ルソー(sax)、松浦真沙(pf)、佐藤渉(通訳)
日時:2012年12月4日(火)19:00開演
会場:ヤマハ銀座コンサートサロン
プログラム:
B.ヘイデン - ディヴァージョン
トーク(サクソフォン人生のこと、新しいサクソフォンを目指して・ヤマハとの出会い)
H.カーマイケル - スターダスト
トーク(世界の偉大な音楽家との出会い、若きサクソフォン演奏家へのメッセージ)
G.ガーシュウィン - ポギーとベスより
E.ヘイゲン - ハーレム・ノクターン(アンコール)

アメリカを、いや、世界を代表するクラシック・サクソフォンの巨匠、ユージン・ルソー Eugene Rousseau氏。1932年アメリカ生まれ。フルブライト留学生としてパリに渡り、マルセル・ミュール氏に師事。アメリカ帰国後は演奏活動・教育活動に携わり、世界各地の有名オーケストラとの共演、ドイツ・グラモフォンを含む複数レーベルへの録音、数々の新作の初演を行った。インディアナ大学、ミネソタ州立大学特別教授として後進の指導にあたり、著名な演奏家を輩出した。

私にとってルソー氏は、リアルタイムで接したことのない「CDの中の人」。よく聴いたのは、クラシック・サクソフォンに興味を持ったちょうどそのころにリリースされ、手に入れやすかったRIAXの4枚である。ソナタ集、アレンジ・コンチェルト集、弦楽器とのトリオ、フェルド作品集と、多岐にわたるジャンルが面白いことに加え、演奏のクオリティが非常に高いこともあり、愛聴盤だ。他にも、Delos盤、グラモフォン盤ほか、10枚ほど持っているはずだ。

そんなこんなで、まさかお会いできることになるとは思わなかったのだが、今年7月のWSCで、初めてルソー氏にお会いして(ごく短い時間ながら)お話できた。この時(石渡悠史先生にシャッターを押してもらって)ルソー氏とケネス・チェ氏と写真を撮ってもらい、とても嬉しかったのだった。ちなみにWSCではマスタークラスのために渡英したとのことで、演奏を聴く機会はなかった。

そして昨日!まさか2012年のうちに、再びルソー氏に接する機会を得ることができるとは、夢にも思わなかった。貴重な機会を準備して下さったYAMAHAのスタッフの皆様に感謝、である。…前置きが長くなった。

会場に着くと、客席がいつにも増して濃い。客席にギャラ発生しそうだよね、とはtfmさんの言葉。久々にお会いする方もたくさんおり、ご挨拶できて嬉しかった。

冒頭から難曲「ディヴァージョン」。ルソー氏が独奏をつとめるDelosの録音でも親しんだあの曲を、まさかライヴで聴くことができるとは!あのCDで聴くことのできた丸くニュートラル、そして暖色系の音色が眼前で発せられる。やや控えめで上品なヴィブラートが、華を添える。驚いたことに80歳にしていまだテクニックにはほとんど衰えがみられない。指回しも驚異的、そしてカデンツァでの輝かしい(しかし決して押し付けがましくない)フラジオ音域と、あと10年は余裕で吹き続けることができるのではないかと思わせる圧倒的な演奏で冒頭を飾った。松浦真沙氏のピアノも、もちろん素晴らしい。

トークでは、YAMAHAのH氏が司会をつとめ、佐藤渉氏が通訳を行った(通訳はさすが!であった)。プロジェクターで写真やその他資料を映しながら、ルソー氏が音楽家としてのキャリアの初期についてトークを行う。その言葉の隅々から巨匠としての風格を漂わせるが、しかし客席に語りかけるように、時にユーモアを交えながら親しみやすい口調で様々なエピソードが語られた。続いて、YAMAHAのサクソフォン開発において共同作業を開始したキッカケや、その開発時のエピソードについて話が進んだ。司会のH氏ご指名で、客席の石渡悠史氏と雲井雅人氏からもYAMAHAサクソフォンの開発に関する話がなされ、充実したセッションとなった。

そして、再びルソー氏の演奏。マイナスワンのCDを使った、カーマイケル「スターダスト」である。トークから感じられる人柄が、そのまま音楽となって溢れ出してきたような、素晴らしい演奏を堪能。思わず涙してしまうほどであった…。

休憩時間には、ホワイエに並べられた各時代のYAMAHAのアルト・サクソフォンのトップモデルを鑑賞。ミシェル・ヌオー氏が開発に携わった最初期のYAS-61、そしてルソー氏が開発に携わったYAS-62、最新のYAS-875EXまで。これはとてもおもしろかったので、後日写真をまとめてアップしたいと思う。

後半のトークは、ルソー氏と音楽家たち…マルセル・ミュール氏、ポール・クレストン氏、バーナード・ヘイデン氏、カレル・フサ氏について、エピソードが語られた。その後、客席からも質問OKということだったので、イィンドジフ・フェルド氏との関わりについてエピソードを質問させてもらった。Thunderさんは、グラモフォンの協奏曲集を吹きこむことになった経緯について質問されていた。最後に、日本の若いサクソフォン奏者へ、ということでメッセージ。本当に好きで、専門家として生きていくならば、人生はお金を稼ごうと思えばシンプルではないけれど、情熱を持って取り組みなさい…「Be the best you can be!」という力強い言葉が、いまでも頭の中をぐるぐる回っている。

最後に、ガーシュウィン。「世界のどこでバッハを吹いてもこれはバッハの音楽だとわかってもらえる。ガーシュウィンの音楽も、同じようなものであると考えている」という短い前置きのあとに、ソプラノとアルトを持ち替えての演奏。ここまでプリミティブな"音楽"として演奏されてしまうと、いま聴こえてきている音楽が、クラシック音楽なのか、ポピュラー音楽なのか、という境界がぼやけて、よく分からなくなってきてしまう。得難い経験だった。アンコールに「ハーレム・ノクターン」。最後まで幸せな時間だった。

終演後、サインを頂戴し、写真を一緒に撮ってもらい(ミーハーモード)、さらに木下直人さんから送ってもらったミュール氏参加のデュリュフレSPの世界初復刻を渡すことができた。なんだかほっこりしたまま会場を後にしたのだった。

トークの内容は、後日メモ書きをアップしたいと思う。

2012/12/03

たかの舞俐作品集(「リガリアン」所収)

サクソフォン関係者でたかの舞俐(まり)氏の名前をご存知の方は少ないと思うが、非常に面白い作品「リガリアンI」「リガリアンIV」をサクソフォン・デュオ+ピアノの編成に提供している。この曲を私が初めて聴いたのは、2010年2月にノースショア・サクソフォン・トリオ(ネイサン・ナブ氏、杉原真人氏、ウィストン・チョイ氏)が来日したときのことである。

「リガリアン=LigAlien」とは、たかの舞俐氏の作曲の師匠であるジェルジュ・リゲティの名前とエイリアン(異星人)を掛けあわせた造語である。以前この作品をライヴで聴いた時に、演奏の前に氏自身の口から作曲コンセプトが語られた。それによれば、リゲティのDNAにエイリアンのDNAを掛けあわせ、発展(進化?)させていったらどのような作品が生まれるか、ということを氏なりに解釈して作曲した…という、何だか理解できないようなできないような、そんなコンセプトに基づいて作曲されたとのこと。わかるようなわからないような。

とにかく聴いてみなければその面白さはわからない…というような作品なのだが、これまで商用録音が存在しなかった。YouTubeに、上記来日時の映像がアップロードされているが、録音状態など鑑みると観賞用としてはやはり完全とはいえない。…ということで、前置きが長くなったが、BISレーベルより同曲のセッション録音が含まれるたかの舞俐作品集「LigAlien || works by Mari Takano(BIS CD-1453)」がリリースされていたのでご紹介。

LigAlien I(サクソフォン・デュオ+ピアノ)
Jungibility(ピアノ)
LigAlien III(ヴァイオリン+ハープ)
LigAlien II(オーボエ+ヴァイオリン+琴)
Full Moon(ヴァイオリン+エレクトロニクス)
LigAlien IV(サクソフォン・デュオ+ピアノ)
Flute Concerto(フルート+オーケストラ)

「リガリアンI」「リガリアンIV」の演奏は、ノースショア・サクソフォン・トリオである!まさかここでまた彼らの演奏を聴くことができるとは思わなかった。嬉しいサプライズだ。安定した技術に基づきつつも"吹っ切れた"演奏は、この曲の面白さを存分に引き出すものだと思う。

また、フルート協奏曲の独奏はシャロン・ベザリーがつとめており(おそらくBIS CD-1649と同一セッション。BISだと良くあることだが)、こちらもクオリティの高い演奏を楽しめた。ヴァイオリンとエレクトロニクスのための「Full Moon」は初めて聴いたが、多彩な響きが面白いなあと思って聴いていたら…最終部の音作りがとんでもない。エレクトロニクス作品で、「恐怖」を覚えたのは、テリー・ライリーの「暗殺者の幻想」以来か。Amazonでの購入リンクはこちら→たかの舞俐作品集

ちなみに、現在たかの舞俐氏は、オペラ「雪の女王」を作曲中とのこと。クラリネット持ち替えでアルト・サクソフォンが編成に含まれており、オーケストラ編成のなかでどのような使われ方をするのか楽しみである。

2012/12/02

木下直人さんから(Marcel Mule plays Durufle)

木下直人さんから、非常に希少な音盤の復刻を頂戴した。マルセル・ミュール氏がオーケストラに参加した盤で、モーリス・デュリュフレの「3つの舞曲」の第3楽章"Tambourin"が収録されたSPである。Assosication francaise d'action artisqique AA.11という型番が付与されている、超レア盤。木下さんのお話では、一般販売されなかった盤のではないか、とのこと。Eugène Bigot指揮コンセール・ラムルー管弦楽団の演奏で、1943年2月22日の録音。この録音が吹きこまれた経緯などいろいろと想像を巡らせてしまう。写真はクリックすると拡大できる。

第3楽章"Tambourin"の中間部で、サクソフォンが活躍する。息の長いソロ、そして続くスタッカート部分で他楽器との掛け合いが聴かれる。良くあるSP時代のサクソフォン独奏SPのように、オンマイクでサクソフォンが吹きこまれているということはなく、あくまでオーケストラの一員としてサクソフォンが聴こえる。しかし、その中でも抜群の存在感を放つ…これは、ミュールの演奏そのものである。70年近くの時を経て、この録音がCDプレーヤー上で再生されているなんて、天国のミュール氏が知ったらどう思うだろうか。

先日の長野での演奏の際には、私の分のみならず、TsukubaSQ出演者全員分の復刻までしていただいて、プレゼントしてくださった。しかも一枚足りないとわかるや、追加で郵送して下さったのだ!いやはや、頭が上がらない。この場を借りて改めて御礼申し上げる。

興味ある方は、kuri_saxo@yahoo.co.jpまで連絡をください。

Wisuwat Pruksavanich "Hard Fairy"

有村氏のリサイタルは伺えず…残念。

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タイのサクソフォン奏者で、Siam Saxophone Quartetのメンバー、そしてお友達であるWisuwat "George" Pruksavanich氏(私は彼のことをGeorgeと呼んでいる)のCDを先週初めに入手した。このアルバムはGeorgeのファーストアルバムであり、企画が立ち上がったあたりから完成までGeorgeのFacebookアカウントで経緯を追うこともできたため、内容を知るのも早く楽しみにしていた。収録曲は次の通り。

JacobTV - Grab It!
Barry Cockcroft - Rock Me
Graham Fitkin - Hard Fairy
Christian Lauba - Hard too Hard
Russell Peterson - Quintet
Claude T. Smith - Fantasia
Prince Phichai Mahintorodom - Lao Duang Duan

タイトルだけ眺めても「おっ」と感じる方がいることだろう。ヤコブTV、コッククロフト、フィトキン、ロバといった現代作曲家の高難易度の作品、アメリカのラッセル・ピーターソンとC.T.スミスの作品エンターテインメント性あふれる作品が一挙に収録されている。

だがこのアルバムの特徴はそれに留まらない。フィトキン、ピーターソン、スミス作品で、Georgeによるスペシャル・アレンジが施されているのだ!そのアレンジたるや、サクソフォンと、ドラム、ベース、ギター、シンセサイザーというもの。完全にロック編成のヘヴィな音作りは、実にクール!特に、もともとソプラノサックス+2台ピアノ編成のフィトキン「ハードな妖精」のアレンジなど、まるでプログレッシブ・ロックのようにも聴こえ、個人的には超感涙ものである。また、もともと吹奏楽のために書かれたスミス「ファンタジア」がどのように料理されているのかも、気になる方は多いのではないだろうか。

全体的にヴィブラート控えめで、サクソフォンパートにはさらなるニュアンスの変化が欲しい部分も少しあるが、それでもこの全体のクールさを前にしては何も言えなくなってしまう。現代作品が好きな方、そしてロックが好きな方であれば、一発でノックアウトされてしまうのではないだろうか。

また、無伴奏曲も注意深く聴いてみると面白い味付けがされている。「ロック・ミー」をこのように料理するのかあと、ニヤニヤしてしまう。無伴奏曲でのテクニックは実に冴え渡っており、「ハード・トゥ・ハード」でも安定した技巧と大胆な表現も聴くことができる。おすすめ。

購入は、Georgeへのメールで。私が購入したときは、1枚10ドルちょっとだった。日本への発送なら、送料込みでも20USドルいかないはず。

2012/12/01

ジェローム・ララン氏参加の「世界の創造」動画

おなじみ、ジェローム・ララン氏の参加したダリウス・ミヨー「世界の創造」の動画。Facebookのジェローム氏のアカウントから流れてきた。最近Facebookから有益な情報を得ることが多いなあ。今年10月14日に、サル・プレイエルにおいて開かれた演奏会の録画で、イル・ド・フランス国立管弦楽団 Orchestre National d'Île-de-Franceの演奏。

「世界の創造」をライヴで作りこむのは非常に困難だと思うのだが、指揮者のせいかオケのせいか、大変素晴らしい仕上がり。さらに高画質・高音質。ジェローム氏の演奏も冴え渡っている…。他に視聴可能なのは、Jean Wiener「Concerto franco-americain」(知らない作品だ…)、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」、ミヨー「屋根の上の牛」。2013年4月14日まで視聴可能とのこと。

http://www.citedelamusiquelive.fr/Concert/0993419/1.html

2012/11/30

山下友教 plays Worksong on YouTube(音のみ)

YouTubeでクリスチャン・ロバChristian Lauba作品について調べていたら、最近なにかとお会いする機会の多い山下友教さんの演奏録音を見つけた。山下さんは昭和音楽大学大学院に在籍されているサクソフォン奏者。武藤賢一郎氏に師事し、学内外の各種コンクール・オーディションで入賞しまくっているとのこと。昭和音楽大学のなかでも、かなり急先鋒的な?位置を占めているということだろうか。

その山下さんの「Worksong」の演奏録音である。Doug O'Connor氏に献呈された、ロバのエチュードの中でも「Tadj」と並んで好きな曲の一つ。先日の角口圭都さんのコンサートでも聴いたばかり。特に中間部からの音のバラマキ具合が強烈で、委嘱者であるオコナー氏のスピードに勝るとも劣らぬほど。徹頭徹尾の強い集中力も素晴らしい。一緒にアップロードされたと思われる「Jungle」もかなりのもの。



最近の若い演奏家の中にはとても尖った演奏をされる方が多く、とても面白い。「尖った」というのは、演奏のテクニックやキレ、音楽性だけではなく、取り上げるレパートリー、活動の方向性や演奏会の企画内容など、総合力で強烈なベクトルを持っている方のことである。この「Worksong」を聴いていると、山下さんもきっとそういったカテゴリーに属するプレイヤーなのだろうな、と感じる。

2012/11/29

Mobilis Saxophone Quartetファーストアルバム

ウィーンで学ぶサクソフォン奏者によって結成されたMobilis Saxophone Quartetのファーストアルバム「Ligeti - Desenclos - Bozza - Nagao(Gramola Records 98937)」をご紹介。最初は、なんだか日本人ぽい風貌の女性が写っている海外のサクソフォン四重奏団のジャケットをAmazonで偶然見つけ、なんとなく購入したのだった。メンバー4人の出身国は、オーストリア、スロヴェニア、日本、クロアチアと、バラバラである。ソプラノのKrenn氏と、岩田さんはご夫婦。

Michael Krenn
Janez Ursej
Yukiko Iwata(岩田享子)
Goran Jurkovic

公式ページに掲載されている岩田さんのプロフィールを読むと、2003年から2005年までミュージック&メディアアーツ尚美で岩本伸一氏にサクソフォンを学び、その後ウィーン国立大学でOto VRHOVNIK氏に師事したとのこと。その後ウィーンに留まり、演奏活動を続けていらっしゃるそうだ。んー、同い年ということでなんとなく親近感がわくな。

サクソフォン四重奏の古典と新曲をバランスよく収めたアルバム。デザンクロやボザなど、なかなか現代のカルテットは取り上げるのは勇気がいるものだろうが…。録音の解像度は少々低いが、それでも演奏の素晴らしさは良く伝わってくる。冒頭のリゲティ(ギョーム・ブルゴーニュ編ではなくおそらくF.Oehrliの編曲)からスピード感あふれる快演だ。個人的に気に入っているSonic Art Saxophone Quartetの演奏と渡り合うほどの録音だと思った。

フレンチ・アカデミーの2曲は、デザンクロは特に第1楽章などさらに高精度の演奏が期待できると思ったが、それでもレベルの高いことに間違いはない。デザンクロの第2楽章しかり、ボザのアンダンテしかり、とてもリラックスしているように聴こえるが、これはぜひ実演で聴いてみたいところだ。

長生淳「四重奏曲」はかなり気合いのはいった演奏。冒頭の不協和音から一気に聴き手を引き込み、複雑なリズムを一気に聴かせてしまう。もっとも印象深かったのは第3楽章である。アンダンテ楽章ほどさらにテンションは高く、濃密に聴こえてくる。その高い集中力が、第4楽章で一気に開放され、ファナーレへと向かう様子が圧巻だった。トルヴェール・クヮルテットの演奏を聴いたことは無いのだが、アプローチの違いなど気になるところだ。

CDのAmazonでの購入リンクはこちら→Mobilis Saxophone Quartet。比較的安価なので、興味ある方はぜひ。岩田さんがメンバーにいらっしゃるということで、これはぜひ来日&リサイタルを期待してしまいますなあ。なんとか実現させてもらえないものだろうか。

山浦雅也 サクソフォーンサロンコンサート

「サロンコンサート」という軽ーい気分で聴きに伺ったら、とんでもなく重量級のプログラム。お腹いっぱいになって帰ってきた。

【山浦雅也 サクソフォーンサロンコンサート】
出演:山浦雅也(sax)、大堀晴津子(pf)
日時:2012年11月28日(水)19:00開演
会場:アーティストサロンDolce(管楽器アヴェニュー東京内)
プログラム:
P.M.デュボワ - りす
P.M.デュボワ - うさぎとかめ
C.ドビュッシー - ラプソディ
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
石川亮太 - 日本民謡による狂詩曲
高橋宏樹 - ガーネット・ゼロ
長生淳 - 天国の月
本多俊之 - マルサの女(アンコール)
P.モーリス - 愛する人への歌("プロヴァンスの風景"より)(アンコール)

山浦さんの演奏は、Quatuor Bのアルト奏者としては聴いたことがあったものの、独奏はこれまで聴いたことがなかった。今回のコンサート、情報を知った頃には売り切れてしまっていて諦めていたところ、ご本人から連絡を頂戴し、聴けることになったのだった(ありがとうございました)。そういえば、ドルチェに伺うのも久々。客層が、なんかいつもと違う。女性ファンの方も多かったかな?

プログラム冊子には載っていない、デュボワの小品「りす」から始まった。丸く輝かしい音色(ゴールドプレート?)や安定したテクニックといったところは最近のトレンドでさすがに驚くことはないが、感銘を受けたのは強固なテンポ感・リズム感である。聴いていて安心して身を委ねることのできるグルーヴを強く感じた。想像だが、きっとピアニストも合わせやすいのではないかなあ。だからと言ってガッチガチの演奏というわけではなく、そのテンポ内で歌ったり飛んだり跳ねたりの味付けが実に楽しい!

MCを挟みながらの演奏。そういえばドビュッシー「ラプソディ」の前には、「天候の移り変わりをイメージして…」との示唆があったのだが、なんだか妙にしっくり&共感を覚える解釈で、ここは五月雨だとか、ここは雷とか、そんなイメージを持ちながら聴いたら、やや掴みどころがなかったドビュッシーが突然リアルさを持って眼前に迫ってきたのだった。強固なスタイルの上に構築された、音色・テンポ・和声感の自由自在な変化…個人的には、本日の演奏の白眉であった。

ヴィラ=ロボスで、ソプラノサックスの演奏を聴けたのも幸いだった。ソプラノサックスはぜひホールで聴いてみたいな。第2楽章での曲が持つ陰鬱さは身を潜め、どちらかと言うとキラキラ系(?)の演奏だったが、もともと持つ音色の明るさもあるのだろう。

後半は、日本人作曲家選。須川展也氏に献呈された「日本民謡による狂詩曲(カデンツァを会津若松の民謡に切り替えたスペシャル・バージョン)」と「天国の月」。そして小山弦太郎氏に献呈された「ガーネット・ゼロ(MCでアナグラムに関する話があったが、Garnet0 = Gentat0ということ)」。特に、メインとなった「天国の月」での冴えたテクニックには、会場一同沸いたのだった。「ガーネット・ゼロ」は初めて聴いたが、ロマンティックな部分やケルト風の部分もあって、とても楽しかった。

アンコールに、「マルサの女」。客席に本多俊之氏臨席…このハッスルコピーから出版されたソプラノサックスとピアノのバージョンは、なんと山浦雅也氏の初演だそうだ。奏法を崩しつつ、アドリブ風の部分もバッチリ決めて、大いに盛り上がった。最後はしっとりとモーリス「愛する人への歌」。

仕事もドタバタな時期だったが、なんとか聴けて良かった。すでに山浦氏は演奏のスタイルとして確立されたものを持っているんだなあ…今後ますます活躍していただきたい!そして、今度はぜひ大きいホールで聴いてみたいな。

2012/11/26

Special Hand'ling

Lawrence Gwozdz氏がヘンデル作品を取り上げたCDをご紹介。Lawrence Gwozdz氏は、ニューヨーク生まれ。ラッシャー派の高弟のひとりで、のちに南ミシシッピ大学においてサクソフォン科の教授となった。CD録音が多く、ラッシャーに関連した作品をいくつも吹き込んでいる。ご存知のかたはご存知であろう、グラズノフとフォン=コックのオーケストラ版マイナス・ワンCD付き楽譜は、Gwozdz氏によるお手本演奏が付属している。

「Special Hand'ling - The Music of George Frideric Handel(Romeo 7216)」というタイトルで、サクソフォンとハープシコード、チェロという編成。無造作なジャケットに期待も高まる(?)が、CDを再生してみれば聴こえてくるのはまぎれもなくバロックの響きである。控えめなヴィブラートとややこもり気味にも聴こえる純度の高い音色は、まさにラッシャー派のスタイルそのものであり、嬉しくなってしまった。

ヴァイオリン・ソナタ ホ長調 Op. 1, No. 15, HWV 373(ミュール編)
リコーダー・ソナタ ハ長調 Op. 1, No. 7, HWV 365(ミュール編)
ヴァイオリン・ソナタ第5番 ト短調 Op. 1, No. 10, HWV 368(ミュール編)
組曲第5番 ホ長調 HWV 430 - 第4楽章(ラッシャー編)
フルート・ソナタ ホ短調 Op. 1 No. 1b, HWV 359b(ミュール編)
ヴァイオリン・ソナタ第7番 ニ長調 Op. 1, No. 13, HWV 371(ラッシャー編)
ヴァイオリン・ソナタ第6番 ヘ長調 Op. 1, No. 12, HWV 370(ラッシャー編)

淡々と演奏されるが、音色や音量が現代サクソフォンのそれとはかけ離れているため、弦楽器やハープシコードともかなり良いバランスである(それでももちろんサクソフォンの存在感が一番だが)。ミュール氏やデファイエ氏のスタイルだと、こうはいかないだろう。トリルがかかる部分なんて、とても魅力的な音がする。編曲は、ミュール氏、ラッシャー氏、それぞれを使っているというのも面白い。

2012/11/25

三連休おわり

ということで、三連休おわり。一日目は諏訪市で演奏会。二日目は実家で動画のカット編集に四苦八苦し、その後伊那市民吹奏楽団の演奏会を聴きに行っていた。今日は法事と、その後親戚との会食。来週こそは楽譜書きの時間を取らなければ。

東京に戻るときは13:45の中央道上りの高速バスに乗車したのだが、事故があった影響で凄い渋滞!甲府を過ぎたあたりの最初の渋滞を抜けるまで1時間30分ほどかかり、さらに八王子からまたまた渋滞。これはたまらんと日野で途中下車し、モノレールとJRと私鉄を乗り継いで帰ってきた。到着時刻は19:50。うーん、6時間もかかってしまった…鈍行列車で帰ってきたほうが早いくらい(苦笑)。まいった。

伊那市民吹奏楽団第35回定期演奏会

自分用メモ:自分たちの演奏会の様子を収めたDVD(オーソライズ済み)のカット編集を行う場合は、Avidemuxを使う。昨日、どのようなフローでやれば良いのかわからず、半日まるまる四苦八苦してしまった。本当は元のファイルがあればいちばん良いのだが(^^;

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【伊那市民吹奏楽団第35回定期演奏会】
出演:伊那市民吹奏楽団、上伊那農業高校吹奏楽部(共演)、金沢茂(指揮)
日時:2012年11月24日(土曜)18:00開演
会場:長野県伊那文化会館・大ホール
プログラム:
J.ウィリアムズ - オリンピックファンファーレ&テーマ
福田洋介 - 風之舞
W.テーリヒェン - ティンパニ協奏曲(客演:奥田昌史)
吉松隆/福田洋介 - 「平清盛」テーマ
L.プリマ - シング・シング・シング
RM&RB.シェアマン - 小さな世界
L.ハーライン - 星に願いを
E.ジョン&H.ジマー&T.ライス - 「ライオン・キング」メドレー
R.ヘルナンデス - エル・クンバンチェロ

帰省中に、地元の吹奏楽団の演奏を聴きに行ってきた(妹とその友達が乗っているのだ)。そういえば地元にいたころは一度も聴いたことがなかったのだが、なぜだろうな。

設立が1976年というとても歴史ある団体。しかし、意外なことに20~30代までの団員が75%以上を占めており、そのためか選曲もなんとなく若い感じ。指揮の金沢茂氏は東京交響楽団出身のトロンボーン奏者で、この春からホクト文化ホール(=長野県県民文化会館)の館長に就任している。前半が金沢氏の指揮、後半が団員の指揮。

最初のウィリアムズから聴こえてくるストレスフリーな音色。いわゆる一般バンドの、理想形である。さすがにオリンピックファンファーレはさらにエッジの効いた音が聴きたいとも思ったが、「風之舞」には、とてもマッチする。演奏者の曲に対する共感度も高い。テーリヒェン「ティンパニ協奏曲」は、曲名も初めて聴いたのだが、聴いても演奏しても難しそうな作品だった。特に急速楽章ではバンドも高い集中力で演奏しており、楽しめた。ティンパニ単独で演奏されたアンコールは、何という曲だったのだろう?

後半はポップス。風之舞の作曲者である福田洋介氏が「平清盛」をアレンジしているとは知らなかった…。演奏者も聴衆もよく知っている曲は、やはり盛り上がる。「シング・シング・シング」「ライオンキング」や「エル・クンバンチェロ」はさすが、圧巻であった。

2012/11/24

TSQコンサート@音ギャラリー風我

昨日11/23、Tsukuba Saxophone Quartetでのプライヴェートコンサート@長野県諏訪市「音ギャラリー風我」。メンバーCのおばあ様の米寿と、私の祖母の傘寿をお祝いコンサートだった。

7:20新宿発の高速バスに乗って、諏訪インターまで。およそ3時間で到着。早めの昼食を近くのファミレスでとり、歩いて会場まで移動した。諏訪インターから徒歩わずか10分、静かな住宅街のなかという立地。12:00に会場入り。もともと古民家だった建物の内装を改造し、3年前からホール・ギャラリーとして貸し出しているそうだ。ざっと40人ほどは入れそうなスペース、ザイラーのピアノと薪ストーブ、キッチン、控室と、とても綺麗で落ち着いた場所だった。

会場準備とリハーサルを行い、15:00に開演。セットリストは、下記の通り。バッハは、スペシャルゲスト、日下部任良さんによる演奏。

小六禮次朗 - 四季のさくら
P.ボノー - ワルツ形式によるカプリス
J.S.バッハ - フルート・パルティータBWV1013
J.M.ルクレール - デュオ・ソナタ
福井健太 - 超演歌宅急便
オムニバス - 四季の童謡
岡野貞一 - ふるさと(アンコール)

親族を始めお知り合いばかり、ほぼ満員のお客様の前でMCもはさみながら。休憩なしで、前半が独奏、後半がアンサンブル。あたたかい雰囲気のなか、演奏を終えることができた。アンコールの前に祖母に花束を渡したのだが、とても喜んでもらえてうれしかった。終演後は、持ち寄ったお菓子でお茶会。

また、個人的にうれしかったのは、木下直人さんと奥様がいらしてくださったこと。事前にも聞いてなかったので、驚いてしまった。おみやげ(後日紹介します)までいただいて、恐縮である。運営に関しては、ソプラノCのご家族の皆様に大変お世話になった。この場を借りて御礼申し上げる。

長野での演奏は、2008年以来となった。今回は急な企画だったので本格的な宣伝は控えたのだが、またいつか長野県でのコンサートを企画したい。

2012/11/23

おそらくマルセル・ミュール参加!バレエ「放浪の騎士」

島根県のF様からお送りいただいた録音は、これで最後。ジャック・イベールのバレエ音楽「放浪の騎士」、ジョルジュ・ツィピーヌ Georges Tzipine指揮フランス国立放送局管弦楽団の演奏である。録音は1955年、Bourg BG3003という型番。ジャケットには、Grand Prix 1956 de L'academie du disque francaisとの但し書きが。

恥ずかしいことにこの作品を聴くのは初めてだったのだが、豪華絢爛な響きに一発でノックアウトされてしまった。派手でカッコイイ部分と、叙情的な部分がうまくミックスされており、イベールの真髄ここに極まれり、という感じである。サクソフォンが各所で大活躍するのだが、おそらくこれはマルセル・ミュール氏の演奏だろう。全盛期からは時代的にややずれているものの、深みのあるヴィブラート、透明感ある音色など、ミュール氏の特徴がよく出ている。緩徐楽章のみならず、急速部で縦横無尽に駆け回るサクソフォンパートは、この時代のオーケストラにおけるサクソフォンの用例としても珍しいものではないだろうか。

ちなみに、なんと無伴奏のカデンツァまで!イベール「室内小協奏曲」のカデンツァを思い起こさせる圧倒的な存在感だ(なんとなく音形も似ているような)。

すっかり忘れていたのだが、2008年にマルセル・ミュール氏のヴィブラートに関連してこんな記事を書いていた。ミュール氏が、「放浪の騎士」の騎士について短いながらも語っている。

2012/11/21

11/23長野県でのミニコンサート

今週金曜日(11/23)に、Tsukuba Saxophone Quartetで長野県での小さな本番がある。音ギャラリー風我という素敵なスペースで、お知り合いを中心に呼んで開催するコンサート。比較的軽いプログラムなのだが、お近くの方はぜひお越しくださいませ。詳細はこのイラストをクリックしてご確認を…。

お越しいただける方は、事前にkuri_saxo@yahoo.co.jpにご連絡いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

2012/11/20

VSOファーストアルバムのプロモ動画

ウィーン音楽院教授、Lars Mlekusch氏率いるVienna Saxophonic Orchestraが、このたびファーストアルバムをリリースしたのだが、昨日そのプロモ動画がYouTubeにアップされた。



冒頭に奏でられるDuncan Youngermanの「Solastalgia」というミニマル作品の演奏が面白い。このYoungermanという作曲家は、「Stan the Man」というサクソフォン・デュオ曲を作曲していることで名前を知っている方も多いと思うが、まさかこのようなサクソフォン・オーケストラのための作品を手がけたとは知らなかった(委嘱作品のようだが)。そのほか、古典から現代曲、果てはフュージョンまでと幅広い。

入手方法について唯一の日本人参加者である岩田享子さん(享子・クレンさん)に伺ったところ、レーベルはGramolaで、そのうちAmazon.co.jpでも取り扱い開始するだろうとのこと。入手次第、ブログでも紹介していきたい。

2012/11/19

菊地麻利絵さんリサイタルの録音

菊地麻利絵さんにお願いして、このリサイタルの録音を頂戴した。とても興味深い(そしてヘヴィな!)プログラムだったのだが、さすがに平日昼間ということで伺えず悔しい思いをしたのだった。

菊地麻利絵(sax)、大嶋千暁(pf)
J.ドゥメルスマン - オリジナルの主題による幻想曲
F.デクリュック - ソナタ嬰ハ調
J.リュエフ - ソナタ
R.ロジャース - レッスンズ・オブ・ザ・スカイ
I.ダール - コンチェルト

やや音場は遠く細部は聴き取りづらいものの、全体的な雰囲気はよく分かる。実は菊地さんの演奏を聴くのは初めてで、どのような演奏をするのかとても興味があった。なんとなくお会いして話した時の印象から、こんな感じかなあと思っていた想像を(良い意味で)根本から覆されてしまった!

まず印象的なのは、強烈なダイナミクス。あのスラリとした雰囲気のどこからこの豊かな音が出てくるのだろうか。そして、特に急速楽章でのテンポ設定はどうだろう。「えっ、ここまで!?」という、崩れるか崩れないかギリギリのところで勝負をかけるその姿勢は、ライヴだから、という理由ではすまされないだろう。しかし、緩徐楽章では深いロマンティックさも存分に感じられる。ひとつひとつの曲の中での、その激流から大河までのような幅のある変化が、結果的に聴いていてとても演奏を魅力的なものにしていると思う。

いやー、びっくりした。まあこれだけの演奏をするからこそ、最優秀の成績を得てこのリサイタルの機会を勝ち得た、ということなのだろうが…。音大生にもいろいろな方がいると思うのだが、トップの位置を張っている方たちは凄い。一曲一曲終わったあとの客席からの熱心な拍手が、その時のホールの中の空気を表しているようだ。

テクニック的にも安定しており、ドゥメルスマンはとても気に入った。大嶋千暁さんのピアノも相変わらずの好サポート。デクリュックはちょっと元気が良すぎるような気がしなくもないが、第4楽章での自身の内面を掘り下げていくような疾走感には興奮した。リュエフも安定のテクニック。ここまでで相当お腹いっぱいだが、さらに難曲ロジャーズ&ダールも吹きこなしていく。ソプラノのやや金属的で輝かしい音色を聴いて、ジョン・ハールに献呈された作品の演奏をばりばりのグロウ付きで聴いてみたいとも思った(ウェストブルックの「ビーン・ロウズ・アンド・ブルース・ショッツ」とか)。また、ダールも鬼気迫るもので、珍しく「怖い」という感想を持ってしまった…いやはや。

ご本人は「ところどころとっ散らかってしまった」とおっしゃっており、確かに小さなミスは所々にあるものの、それを補って魅力的な部分が多い演奏をされるのだなあと思った。簡単な曲を無個性で予定調和的に吹くだけの演奏家よりも、ずっと好きだ。楽章をまたいだ時の、一曲全体の構成感をどう作り上げていくかといったところを、さらに聴いてみたい(偉そうなこと書いてすみません)。

菊地さんは現在東京音楽大学の4年生。今年度いっぱいで大学を卒業するが、さらに来年度もひき続いてサクソフォンの勉強に取り組み続けると伺っている。いつになるかはわからないが、ライヴで聴ける機会を楽しみに待ちたい。

2012/11/18

モーフィン・カルテット マスタークラス

【モーフィン・カルテット マスタークラス・レッスン】
出演:モーフィン・カルテット、大石将紀(通訳)、昭和音楽大学のカルテット、国立音楽大学のカルテット
日時:2012年11月18日 14:00開演
会場:セルマージャパン6Fアンナホール
プログラム:
A.デザンクロ「四重奏曲」 (昭和音楽大学)
J.リヴィエ「グラーヴェとプレスト」(国立音楽大学)
A.グラズノフ「四重奏曲」より第3楽章(モーフィン・カルテットミニコンサート)
F.メンデルスゾーン「カプリツィオ」(モーフィン・カルテットミニコンサート)

昨日津田ホールで聴いたばかりのモーフィン・カルテットの公開マスタークラス。ちょうど時間があったので聴いてきた。渋谷は自宅から比較的アクセスしやすいのもありがたい。最初はマスタークラスだけかと思ったのだが、なんとミニコンサートまで開かれるという、充実の2時間半を過ごした。

最初は昭和音楽大学のカルテット。どこかで「ハバネロサックス」という名前で活動しているという情報を目にしたことがある。マスタークラスが始まり最初の素の演奏から、すでにかなりレベルが高い。楽譜通りに吹けているのはもちろんのこと、アンサンブルとしても技術的な部分を軽くクリアしている。なんとなく昭和音楽大学のアンサンブルって伝統的に上手いイメージがあるのだが、そのイメージ通りだった。すでに結成して4年経っているということで、年月を経ただけの部分もあるのだろう。特にソプラノ、アルトの方の音楽づくりが素晴らしいと思った。
神保佳祐, sop
細川慎二, alt
牧野遼介, ten
奥野祐樹, bar

指導は、ソプラノのグレズ氏が主導しながら、メンバーがさらに付け加えていく感じ。通訳の大石将紀さんは4人分を一手に引き受けなければならず大変そうだったが、それでもスイスイ進めていくあたり、さすがである。聞きながらメモを取った内容で、主たるトピックは以下のような感じ(自分用のメモで、間違っている可能性もあります)。

・フレーズごとの色の変化を、自分たちが思っている以上につけること
・バリトンのFの前のソロはdimが書いてあるが、4人分くらいのイメージで吹く
・F近辺のソプラノソロはアクセントを使って自由に
・楽譜に書いてあることも重要だが、それができたらカルテット独自の表現を行なっていく(テンポ、フレーズジング等)
・第2楽章冒頭を受け渡すのに必要なセッティングを考える(モーフィン・カルテットのセッティングは、ソプラノ170 V12-3.5、アルトAL3 Trad-3.5、テナーT20 Trad-3.5、バリトンBL3 Trad 3.5とのこと)
・作曲家は、まず音を書いたのではなく、何かイメージがあってそれを表現するために音を書いたはず。そのイメージについて、カルテット内での意識合わせを行なっていくこと

技術的には完成されていたということで、表現に関する言及が多かった。途中、なんとモーフィン・カルテットの面々が第2楽章の一部を吹いたのだが、その流れるような自由さに会場は唖然となったのだった。

二団体目は、国立音楽大学のカルテット。比較的若く見えたのだが、活動履歴はどんなもんなのだろうか。ちなみに、全員雲井雅人氏の門下だとのこと(確かに最初の演奏の時にもそれを感じた)。昭和音楽大学のハバネロカルテットに比べればさすがにややアンサンブルとしての完成度には若さを感じるが、それでも、こちらもとても良く吹くカルテットで、時には大胆な表現も飛び出しつつ、隙無く演奏しているのが印象的だった。バリトンの方の大胆さ、聴いていて面白かったなあ。
浜田由美, sop
岡田恵実, alt
西田剛, ten
鈴木響子, bar

・プレスト部分でのより楽しそうな表現(曲が楽しいなら演奏者も楽しく演奏しないと!)、トムとジェリーのように
・ヴィブラートの使い方、なぜここでヴィブラートを使うのか、ということを常に問いながら使っていく。良いヴィブラートなので、場所によってかける・かけないという打ち合わせをしたほうが良い
・ひとりのピアニストが右手と左手でフレーズを弾いているような、アンサンブルとしての一体感が出るように
・喉を開く演奏方法の場合、アタックした時の音程に注意
・最後のコーダ、いままでよりもさらに明るく、花火のように演奏する

こちらのカルテットも、ぜひ次に聴く機会があれば良いなと思う。

モーフィン・カルテットによるミニコンサートは、昨日も演奏したグラズノフとメンデルスゾーン。リラックスしているためか、昨日よりもアグレッシヴな表現が随所に飛び出し、特にグラズノフはまるで昨日よりもさらにパワーアップした演奏だったのではないかな。昨日大喝采だったメンデルスゾーンを再び聴けたのも嬉しかった!

角口圭都:My Favorites Saxophone Solo Concert

【My Favorites Saxophone Solo Concert】
出演:角口圭都(sax)、弘中佑子(pf)
日時:2012年11月17日(土)19:00開演
会場:名曲喫茶カデンツァ
プログラム:
C.ドビュッシー - ラプソディ
C.ロバ - ワークソング
H.トマジ - バラード
M.ラヴェル - 亡き王女のためのパヴァーヌ
A.ヴィバルディ - 四季より
A.ピアソラ - アディオス・ノニーノ
ペンタトニック・スケールに基づいた即興?(アンコール)

津田ホールでモーフィン・カルテットを聴いたあと、神保町へ移動して自衛隊音楽まつりを聴いてきたご一行と合流。私よりも世代としては上になるアマチュアの音楽仲間の皆様で、木下直人さんにお世話になったことのあるという点が共通項。2年ぶりくらいとなる再会を楽しみつつ、ビールをいただきながら1時間半ほどおしゃべり。初めましての方もいらっしゃったが、とても楽しかった。

その後、19:00の開演に間に合うよう本郷三丁目の名曲喫茶カデンツァへと移動。会場に着くと、Thunderさん、けこっつさん、Shunさん、tfmさんなど、お馴染みの方もたくさんいらっしゃっていた。ほぼ満席。新しくて綺麗で、とてもお洒落なスペース。角口さん自身のトークを挟みながら進行。プログラムはリサイタル級だが、会場や進行に、面白いギャップを感じる。

ドビュッシーが始まった途端に、モーフィン・カルテットを聴いてきた印象が抜け落ち、頭がリセットされてしまった。こういった小さい会場では奏者の生の音色が聴こえてくるものだが、とても輝かしい芯のある響きが素敵。抑制されつつも管理されたヴィブラートが心地よく、また瞬間瞬間を聴かせるに留まらない、全体の構成感も見事だ。ピアノの弘中佑子さんもさすがのサポート…エスケシュでの見事なアンサンブルを思い出す。

ワークソングは、これは無伴奏の高難易度の作品で、角口さんが取り上げるという話を聞いてやや意外ではあったものの、きちんと自分のものにしており、圧巻。客席も大いに沸いた。トマジは、これは(トークでも話されていたが)角口さんが4年生のときに、川口リリアで柏原卓之さんのアレンジしたサクソフォン・オーケストラ版をバックに独奏を吹いていたのだった。当時の感想がブログ記事に残っている。そのときもとても感銘を受けたのだが、思い出してなんだか冷静な気持ちでは聴けなかったのだった。

休憩は、アルコールが少々入った身体にパンチを入れるためにコーヒーをいただく。これがかなり効く。

後半は「好きな曲ベスト5に入る」という「亡き王女のためのパヴァーヌ」のサクソフォン・アレンジ版、そしてランパルの演奏を聴いてサクソフォンでの演奏を決意したとのヴィヴァルディ「四季」からの抜粋。「四季」は春1,夏1&3,秋3,冬1だったっけかな。例えば、春や冬の第3楽章なんてどんなふうに聴こえるのだろう。いつかぜひ取り上げてもらいたいものだ。最後の「アディオス・ノニーノ」は、吹っ切れて、楽しそうに演奏していたのが印象的だ。とてもビビビときたアンコール(ペンタトニックの即興風)は何の曲だったのだろう?

安定した技術、美しい音色、プログラミングと、総じてとてもレベルが高い。若くしてこういったレベルの演奏をしてしまうのは、角口さんだからなのか、それとも音楽大学全体のレベルの向上という部分もあるのか。しかし、これでもまだ角口さんは東京芸術大学の大学院を卒業して一年目、そして初リサイタルの時期ということで「角口圭都」という演奏家のポジションを定めつつある、まさにその時期なのだろう。1年後、2年後にどのような演奏をされているのか、ますます楽しみである。

今週末のリサイタル@富山県も、お近くの方はぜひ。詳細はこちらから。

終演後、聴きに来ていた人と出演者で、一緒に写真を撮らせてもらった。

グランプリコンサート2012 モーフィン・クァルテット東京公演

公益財団法人:日本室内楽振興財団主催の、2011年第7回大阪国際室内楽コンクール第2部門(管楽アンサンブル)第1位を受賞したモーフィン・クァルテットの、グランプリコンサート2012・東京公演を聴いてきた。

【グランプリコンサート2012 モーフィン・クァルテット東京公演】
出演:モーフィン・クァルテット
日時:2012年11月17日(土曜)14:00開演
会場:津田ホール
プログラム:
E.グラナドス - スペイン舞曲より
J.ハイドン - 弦楽四重奏曲作品20-5
A.グラズノフ - 四重奏曲より第3楽章
棚田文則 - ミステリアス・モーニングIIより第1楽章
K.ワイル - 三文オペラよりタンゴ
G.リゲティ/G.ブルゴーニュ - 6つのバガテル
C.ドビュッシー - 亜麻色の髪の乙女
F.メンデルスゾーン - カプリツィオ作品81
P.ガイス - パッチワーク
~アンコール~
P.ポルテジョワ - ?
M.マウアー - ?

下記メンバーでの来日。コンクール入賞時には、ロペズ氏がテナーだったが、アルトだったマーテ・トリヨ氏が怪我のため来日できなくなり、テナーのマルクン=アンリオン氏が新規加入し、ロペズ氏がアルトに移ったとのこと。

Christophe Grezes (クリストフ・グレズ), soprano saxophone
Eddy Lopez (エディ・ロペズ), alto saxophone
Anthony Malkoun-Henrion (アントニー・マルクン=アンリオン), tenor saxophone
Matthieu Delage (マティオ・ドラズ), baritone saxophone

バリトンのマティオ・ドラズ氏は、フランスの大御所サクソフォン奏者、Jean-Louis Delage氏の息子さんだそうだ!驚き…。

ヴィブラート控えめ、最低音からフラジオ音域までよくコントロールされた音色、倍音レベルまで和声をコントロールする響きの構築…といった、現代フランスの最先端とも言えるサウンドは、元をたどればおそらくディアステマQや、アドルフQあたりから始まるのだろうが、ハバネラQがそれを拡張・洗練させて、ひとつの完成系をすでに提示している。そこでモーフィンQはどのようなアプローチを取っているのか、ということが一番の興味・関心だった。その答えのようなものは、なんとなく今回の演奏会を聴いて得られたような…ただし、ここでは敢えて書かないこととした。

冒頭から、サクソフォンという枠組みでこれ以上やることはない、というほどのコントロールに舌を巻く。そして、やり尽くされた感のあるワルター編のハイドンに、あのような新鮮さ(まるでその場で即興で作曲しているような)を与えるその音楽性は、世界的に見ても稀有なものであろう。グラズノフ作品・棚田作品は、ぜひ全楽章聴いてみたかったのだが、この客層では仕方ないかな(苦笑)。

さらに面白かったのは後半。リゲティにおける強烈なダイナミクスやリズムは、一朝一夕に獲得できるものではないだろう。やはり日本人がやるのとは違った楽曲の捉え方(あるポイントでどこに重きが置かれるか)の感覚は、新鮮さに満ちている。ドビュッシーの入り組んだ激烈なフーガを瑞々しく聴かせてしまう手腕は見事!(客席も沸いていた)最後の、フィリップ・ガイス氏のワールド・ミュージック的作品まで隙なく料理。大喝采。

アンコールに、まさかマウアー氏の作品が演奏されるとは。これが今日一番の私的サプライズだったかも。

終演後、mixiフルート吹きの方々の飲み会に参加@神保町→角口さんのコンサート@名曲喫茶カデンツァ(これについてはまた記事にします)→モーフィン打ち上げ参加@新宿という、充実のフルセットx2。モーフィン打ち上げ参加も面白かったのだが、とりあえずフランス語の壁は高い(苦笑)。英語がギリギリ使えたのは、不幸中の幸いだった。そのほかにも、久しぶりの方や初めましての方にご挨拶できて、うれしかった。

2012/11/16

演奏会案内:小澤瑠衣さん plays グレグソン

現在フランスのセルジー・ポントワーズ音楽院に留学中の小澤瑠衣さん。前回の管打楽器コンクールで2位入賞、洗足学園音楽大学のサクソフォン科を主席卒業と、国内での活躍に引き続いて、渡欧し、充実した日々を送られているそうだ。

ということでその小澤瑠衣さんからご案内いただいたのだが、2013年1月に一時帰国し、神奈川フィルハーモニー管弦楽団とともにエドワード・グレグソンの「サクソフォン協奏曲」を演奏するとのこと。神奈川フィルハーモニー管弦楽団のサイトでもすでに告知されているので、こちらでもご案内。ちなみにこの共演の話、渡欧のまさに直前に飛び込んできたそうだ(笑)。松下洋さんのリサイタルや、WSC@スコットランドでお会いしたことはあるのだが、まだソロの演奏をきちんと聴いたことはないので、楽しみである。

【第7回ニューイヤー・フレッシュ・コンサート ~光り輝く若き才能たちの競演~】
出演:大山平一郎指揮神奈川フィルハーモニー管弦楽団、小澤瑠衣(sax)、毛利文香(vn)
日時:2013年1月13日(日曜日) 15:00開演
会場:洗足学園前田ホール
料金:一般3000円、学生1000円
プログラム:
J.ブラームス - ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
E.グレグソン - サクソフォン協奏曲
M.ムソルグスキー/M.ラヴェル - 組曲「展覧会の絵」
詳細:
http://www.kanaphil.or.jp/Concert/concert_detail.php?id=100

協奏曲二本仕立てかあ。こういったスペシャル・コンサートならではの特殊な、しかし充実したプログラムを楽しみたい。ムソルグスキーでの独奏も、おそらく小澤瑠衣さんが担当されるのであろう。


2012/11/15

マルセル・ミュール参加?マスネ「ウェルテル」

最近島根県のF様よりお送りいただいた録音4つのうち、3つ目のご紹介。

1つ目:デファイエ参加のマスネ「ウェルテル」
2つ目:ヴォルフ指揮の戯曲「アルルの女」

コーエン指揮パリ・オペラ・コミーク座管弦楽団の演奏で、マスネ作曲の歌劇「ウェルテル」。1931年の録音で、EMI C061-12130という型番が付いている。オペラ・コミークということで、マルセル・ミュール氏がサクソフォンパートを吹いている可能性が高いということで、お送りいただいた。残念ながら、この録音のサクソフォンパートはヴィブラートがかかっておらず、判断は難しい(ミュール氏だったら、ヴィブラートがかかればすぐ判別できるのだが…)。しかし、声楽パートとよく溶けあう音色は、オーケストラの中のサクソフォンとしての理想的な形であろう。

私がそれよりも驚いたのは、Ninon Vallinの歌声にかかるヴィブラートである。現代のオペラ歌手とはかけ離れたヴィブラートの質…この速度、振幅は、まさにミュール氏が実践していたヴィブラートそのものではないか!?ミュール氏がどのようにしてあのヴィブラートを手に入れたのかの、謎を解くひとつの鍵となりそうだ。

1929年、同じくパリ・オペラ・コミーク座管弦楽団との共演の際、エドゥアール・ランファンの「エヴォリューション」初演時に、ミュール氏は初めてクラシックの世界にヴィブラートを取り入れている。その時代からわずか2年後ということか。このようなサクソフォンの音が響いていたのかと考えると、感慨深いものがある。

2012/11/14

カルチャーシンセシス

少し前になるが、Thunderさんからお借りしたCD「カルチャー シンセシス(Andersen ACD-0086)」。ジャン=マリー・ロンデックス Jean Marie Londeix氏率いるL'Ensemble International de Saxophonesの演奏で、1988年に川崎で開かれた第9回世界サクソフォーン・コングレスに乗じてセッション録音・出版されたものである。録音時のメンバー(コングレスと同一)は、次の通り。今や国際レベルで影響力を持つ著名な演奏家ばかりである。

Federico Monderci, sopranino
Jean-Michel Goury, soprano
下地啓二, soprano
Daniel Gauthier, alto
James Umble, alto
William Street, alto
市川豊, tenor
Jorgen Pettersson, tenor
上田啓二, tenor
Massimo Mazzoni, baritone
Johannes Ernst, baritone
佐々木雄二, bass

日本でのサクソフォンの隆盛期と、当時最新(まさにクリスチャン・ロバがボルドーで注目され始めた頃だ)のフランス・ボルドーのサクソフォン界が交差する場所から生まれた貴重な記録として、日本のサクソフォン史にとっては重要なアルバム。こういった企画が通ってプレスCDとして世に出るというのは、まあバブル期ならではというところもあるのだろうが、幸いなことであった。当然のように現在は廃盤となっているのだが。

Christian Lauba - Les 7 Iles
George Gershwin - Suite American Stories
Darius Milhaud - Le boeuf sur le toit
Giobanni Gabrieli - Canzona XV

異常なほどにレベルの高い演奏は、はっきり言って現在でもなかなか聴けないほどのものであろう。特に、コングレスに際して初演された「Les 7 Iles」は非常に集中力の高い演奏でアルバムの中核を占める。Quantumレーベルの「SUNTHESIS」に収録されたライヴ録音と聴き比べてみると、面白いかもしれない。

残りの3作品は、おなじみのメロディをサクソフォン・アンサンブルで解釈したもの。ガーシュウィンのメドレーはロンデックス氏の編曲によるものだが、もし楽譜があったら現代で取り組まれていてもおかしくない。ロンデックス氏は、来るべきラージアンサンブルのあるべき形態を20年以上前から予見していたのではないか…と勘ぐってしまうほどだ。

ミヨー作品「屋根の上の牛」をサクソフォンで聴くというのも面白いし、ガブリエリの中世の響きがサクソフォンにベスト・マッチするのは、これはご想像どおり。録音はやや音場が遠く若干繊細な響きを感じ取りづらいが、それでもどの曲においてもレベルが高いことには間違いがない。いやはや、貴重な記録を聴けて感激だ。Thunderさん、ありがとうございました。

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余談。このライナーの写真は手持ちのNEX-5を使って撮影した。最初、標準ズームレンズのSEL1855を使って撮影したのだが、中心と外周の半分あたりから収差が気になり始め、字がマトモに読めなかった。それならとSEL50F18を使ったところ、隅々までくっきり解像。ここまで違うのかと驚いてしまった。

2012/11/13

モルゴーア・クァルテット「21世紀の精神正常者たち」

日曜日に、モーフィン・カルテットの公開マスタークラス(しかも聴講無料)があるそうだ。詳細はこちらから。もちろん土曜日の演奏会@津田ホールは伺うのだが、公開マスタークラスもまたちょっと違う趣でとても面白そう。

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久々に、サクソフォン以外の話題。買って堪能して、ブログに書かずに放ったらかしになっていたのだが、ふと思い出して引っ張りだしてきた。ジャケットのインパクトの強烈さ…個人的にはちょっとした嫌悪感すらおぼえる程なのだが(苦笑)いかがだろうか。言わずもがな、キング・クリムゾンの名盤「21st Century Schizoid Man」を模したもの。日本を代表するベテラン弦楽四重奏団のひとつ、モルゴーア・クァルテットの最新アルバム「21世紀の精神正常者たち 21st Century Non-Schizoid Men(DENON COCQ-84964)」である。

問題作にして名盤の誉れ高き「Destruction(東芝EMI TOCE-9650・廃盤)」と同一のコンセプトを現代に蘇らせたアルバムとして、発表直後から大きな話題となった。実際出てきた盤も、前評判通りの素晴らしいものとなった。

キング・クリムゾン - 21世紀のスキッツォイド・マン
ジェネシス - 月影の騎士
ELP - 悪の教典#9 第一印象・パート1
ピンク・フロイド - 太陽賛歌
ピンク・フロイド - マネー
メタリカ - メタル・マスター
ジェネシス - アフターグロウ
キング・クリムゾン - クリムゾン・キングの宮殿
イエス - 同士~人生の絆、失墜
キング・クリムゾン - スターレス

プログレの超名盤からの選曲、だがしかしその中でもコダワリを感じさせる選曲だ。個人的には、ELPが入っていたり、最後が「スターレス」というあたりに感涙。ちょっとジャンルを外したメタリカが入っているなど(これはプログレというよりメタルでしょう)随所から愛を感じる。

最初のトラック「21世紀のスキッツォイド・マン」から飛ばすが、テクニカルな作品でも穏やかな作品でもその濃密なテンションは変わらない。さすがに「Destruction」にあるような組曲中での曲間のゆるやかな繋がりは無く、ややアルバム全体としては掴みどころがなく感じるのだが、それでも一曲一曲が持つ魅力を弦楽四重奏に最良の形でアダプトすることに成功している。

あまり冷静に聴けなくてまともなレビューが書けないのだが、下のPVで少しでも興味を持たれた方はぜひ。ジャケットをみて敬遠してしまうのは、実にもったいないことだと思う。

「21st Century Schizoid Man」の一部が聴ける。CDは、Amazonで購入可能

2012/11/12

小倉大志サクソフォンリサイタル:曲目解説

小倉大志サクソフォンリサイタルのプログラム冊子に掲載した曲目解説の執筆を担当した。下記に公開する。少しずつではあるが、これまで他の奏者のプログラム冊子に提供した言い回しを再利用するエコシステムが構築できているという印象。

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クロード・ドビュッシー「星の夜」
本年生誕150周年を迎えたクロード・ドビュッシー(1862 - 1918)。歌曲「星の夜」は、ドビュッシーがそのキャリアの初期に手がけ、公式に出版された最初の作品と言われています。以下に、原曲に使われたテオドール・ド・バンヴィルによる詩の一部を引用します。
 星の夜/あなたのヴェールの下で/あなたのそよ風と心地良い香りの下で
 悲しきライアーよ/ため息をつく/私は過ぎ去った恋を想う
サクソフォンは、その表現の幅広さから「歌う管楽器」とも呼ばれます。ジャズで使われる激しいブロウから美しい歌曲まで、旋律に込められた感情を自由自在に表現することができるのです。

クロード・ドビュッシー「ラプソディ」
 ドビュッシーほど著名な作曲家が、サクソフォンのための作品を手がけた例は多くありません。しかし、当時それほど知られていなかったサクソフォンという楽器はドビュッシーの興味を惹くことはありませんでした。結局、ドビュッシーは未完成のスケッチを委嘱者に送りつけ、この仕事から逃げてしまったのです。現在では、そのスケッチを補筆した版が広く演奏されています。
 淡い霧の中から浮かび上がるようなピアノのフレーズに続いて、サクソフォンが異国風のフレーズを奏で、やがて導かれるスペイン風のリズムに乗って音楽は徐々に高揚します。ドビュッシーは、この曲が持つ斬新な和声感や旋律線によって、サクソフォンに近代音楽への扉を開けるきっかけを与えました。

エディソン・デニゾフ「ソナタ」
 サクソフォンがドビュッシー「ラプソディ」によって近代音楽の世界を扉を開いたと例えるならば、ロシアの作曲家、エディソン・デニゾフ(1929 - 1996)の「ソナタ」により、サクソフォンは現代音楽の世界に飛び込んだ、と言えるでしょう。1970年に作曲されたこの作品は、重音、微分音、スラップタンギングなど、サクソフォンの奏法における多面性を数多く引き出しました。
 まるで精密機器を想起させるような第1楽章(ピアノとの緻密なアンサンブルにご注目)、続く第2楽章は、ほぼサクソフォンのみによって奏でられる極小音の世界。第3楽章は、デニゾフ自身が大好きだったというモダン・ジャズの影響を受けており、ピアノのバス・オスティナートに導かれてサクソフォンがビバップ風の旋律を奏でます。

エンニオ・モリコーネ/真島俊夫「モリコーネ・パラダイス」
 エンニオ・モリコーネ(1928 - )はイタリアに生まれた20世紀を代表する映画音楽の巨匠の一人。そのモリコーネが関わった映画の挿入歌より、日本を代表する作曲家/アレンジャーの一人である真島俊夫が5曲を選び再構成したのが、この「モリコーネ・パラダイス」です。さわやかな印象を残す「ベリンダ・メイ」(L'ALIBIより)が冒頭を華々しく飾り、さらに美しいメロディを持つ「トトとアルフレード」「成長」「メインテーマ」「愛のテーマ」(ニュー・シネマ・パラダイスより)が続けて演奏されます。

ロベルト・モリネッリ「ニューヨークからの4つの印象」
 イタリアの作曲家、ロベルト・モリネッリ(1963 -)が2001年に発表した「ニューヨークからの4つの絵」は、その親しみやすい曲調から、作曲されるやいなや瞬く間にサクソフォン界で人気を獲得しました。聴き手を楽しませるエンターテイメント性に徹した、20分・4楽章形式の大曲です。
 第1楽章「夜明け」は、ニューヨークの街並みを照らす朝日を思わせる暖かい音楽。第2楽章「タンゴ・クラブ」は情熱的なリズムと鋭いエッジが効いたフレーズが印象的。第3楽章「センチメンタル・イヴニング」は、夕日に沈むマンハッタン島をバックに奏でられるバラード。第4楽章「ブロードウェイ・ナイト」は、"アメリカン・ドリーム"という言葉をそのまま音楽にしたような、華やかに疾走する楽章です。

伊藤康英「琉球幻想曲」
 沖縄民謡「安里屋ユンタ」を元に、5本のサクソフォンとピアノのために書かれたごく短いコンサート・ピース。ピアノに導かれる神秘的かつ壮大な冒頭から一転、中間部の小気味良さが聴きものです。作曲家の伊藤康英(1960 - )は、主に吹奏楽や歌曲の分野での活躍が有名ですが、サクソフォンのためにも多くの傑作を提供しています。いずれの作品もサクソフォン奏者のための重要なレパートリーとされ、事あるごとに広く演奏されています。

小倉大志サクソフォンリサイタル

【小倉大志サクソフォンリサイタル】
出演:小倉大志(sax)、大嶋千暁(pf)、長谷部恵美、広川優香(vn)、石川加奈子(va)、布施公崇(vc)、中村杏葉(cb)、Tsukuba Saxophone Quartet
日時:2012年11月11日 19:00開演
会場:さいたま市プラザノース(加茂宮駅から徒歩5分、大宮駅からバス15分)
料金:1500円全席自由(当日500円増)
プログラム:
C.ドビュッシー - 星の夜
C.ドビュッシー - ラプソディ
E.デニゾフ - ソナタ
真島俊夫 - モリコーネパラダイス
R.モリネッリ - ニューヨークからの4つの絵
伊藤康英 - 琉球幻想曲
B.ウィーラン - リバーダンスより(アンコール)

サクソフォン奏者、ピアノ調律師、そしてTsukuba Saxophone Quartetのメンバーでもある小倉大志氏のリサイタル。TsukubaSQも、プログラム最後の「琉球幻想曲」と、アンコールに出演させてもらった。

9時にプラザノース入り。ホールは夜間のみ取得できていたため、午前中にリハーサル室で簡単に合わせを実施。このとき、ピアノ+弦楽五重奏の編成となる「モリコーネ・パラダイス」と「ニューヨークからの4つの絵」のリハーサルを聴いたのだが、弦、ピアノ、パーカッションとも素晴らしい仕事をしており感銘を受けた。お昼ごはんを食べた後は午後は控え室で待ちぼうけ。16時30分くらいにはスタッフが集合し、17時にはホール前へ移動し、18時からホールの中へ。

ホールが開いてからは超ドタバタだったが(なぜか私まであちこち走り回ることになった)あっという間に開場・開演。第一部は客席で聴いた。

まず、ドビュッシー、そしてデニゾフという選曲がツボである。当初構想として聞かされていた選曲からはかけ離れているのだが、サクソフォンの誕生からの2段階のステップアップ(近代音楽→現代音楽)を見事に体現したプログラム。位置合わせの時間が取れなかったためか、ドビュッシーなどやや音量的には控えめに聴こえたが、それでもデニゾフの第3楽章などとても聴衆を引き込む演奏であった。ピアノの大嶋千暁さんも好サポート。次世代のサクソフォン界をピアノ伴奏という切り口から支えてくれるであろう存在の大きさを感じる。

第二部は「ニューヨークからの4つの絵」だけ舞台袖で聴いた。第二部の編成は、ピアノ+パーカッション+弦楽四重奏+コントラバスという豪華編成。弦を入れることには勇気が伴う…ある一定以上の技量を持つ人達でなければ、音程すらままならない(実際そういう演奏をいくつも見たことがある)のだが、この日の弦楽パートは素晴らしかった!いずれもポピュラー音楽風の2作品だが、とても高い技術・テンションで弾いており、サクソフォンパートともども曲の楽しさを存分に引き出している。編成は違えど、松下洋さんのリサイタルでこの曲を聴いた時のあの楽しさを思い出してしまった。

モリネッリで客席も妙に盛り上がってしまい、このあと入って大丈夫かなあなんて心配しながら(苦笑)入場、サクソフォン5本とピアノのための「琉球幻想曲」を演奏する。7月にベルギーで大宅裕さんと演奏して以来だが、この曲が持つパワーやホールの響きに助けられ、良い雰囲気・テンションの中で演奏を終えることができた。アンコールの「リバーダンス」も、パーカッション(こちらも良いテンションでサポートいただいた)が入った豪華な響きで楽しく演奏できた。ソロリサイタルなのに、アンコールでTsukubaSQとして一緒にやってくれるなんて、嬉しいことだ。

終演後も時間が無く超ドタバタだったが(やっぱり荷物を抱えてあちこち走り回ることになった)なんとか撤退完了。1時間ちょっとしかなかったが、大宮駅前のわたみん家で超おなじみの方々と打ち上げ。日曜夜ということもあって出演者の参加は少なかったのだが、これはこれでまた楽しい時間を過ごしたのであった。ギリギリの終電で帰宅。

2012/11/10

ヴィオラでフィル・ウッズ「ソナタ」 on YouTube

明日は、19:00からコレ!ぜひお越しください。

ちなみに、本日エスポワールの演奏会には伺えなかった…残念。

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サクソフォンで別楽器の作品をアレンジとして取り上げることは多いが、逆にサクソフォンのオリジナル曲を他の楽器が取り上げることは少ない。私が唯一知っている例は、クラリネットの名手、アレッサンドロ・カルボナーレ氏がファジイ・バードやフィル・ウッズのソナタを取り上げ演奏したCD。

今日、ヒンデミットのヴィオラ・ソナタのサクソフォンアレンジをYouTubeで探していたところ、偶然発見したのがこの動画だ。なんと、フィル・ウッズの「アルト・サクソフォンのためのソナタ」を、ヴィオラで演奏してしまったというもの。ちょっと驚いてしまったが、上記のCDでもカルボナーレ氏が取り上げていたし、音楽に取り組んでいる方の琴線に触れるほど魅力的な作品だということなのだろう。何がきっかけでこの作品を知ったのか気になる。

ヴィオラはKarolis Rudokas、ピアノはSvajūnas Urnikis。リトアニアの奏者だそうだ。演奏を聴く限り(特にピアノは)譜面を即興的に変えまくっているような…ジャズを専門的に勉強したことがあるのだろう。即興部分も、ハジけており相当かっこいい!



スタジオ録音されたバージョンもSoundCloudで聴ける。録音もしっかりしているだけでなく、第1楽章以外も取り上げられているので、ぜひ聴いていただきたい。
http://soundcloud.com/karolis-rudokas

ご案内:田中拓也氏、埼玉県立近代美術館での演奏予定

毎度おなじみ、音楽評論家の恩地元子様(東京芸術大学講師)より、恩地様がコーディネートする埼玉県立近代美術館でのサクソフォンを含む演奏の予定をいただいた。

これまでクローバーSQや田村真寛氏が取り上げられているが、今回は田中拓也さん。言わずと知れた新進気鋭のサクソフォン奏者である。Blue Aurora Saxophone Quartetのアルト奏者、洗足学園音楽大学非常勤講師。「ジャズの閃光」というタイトルで、井上陽介氏、椎名豊氏とともに共演するそうだ。ふだんとは違った(?)切り口で田中拓也氏の演奏を堪能できることだろう。しかも入場無料!

ちょうどこの日は小倉大志氏のリサイタルであるため、私は伺うことができない。しかし、演奏時間はかぶっていないようなので、もし聴きに来られる方がいれば両方を"はしご"してみてはいかがだろうか。埼玉県立近代美術館のウェブページはこちら

チラシを貼り付けておく(クリックして拡大)。

2012/11/08

ファブリス・モレティ リサイタル2012東京公演

年に一度はこれを聴かなければ!モレティ氏の演奏会に伺うと、暮れに向かって加速していく世間の空気を実感するのだ。昨年に引き続きとなる鈴木研吾さんのマネジメントのもと、今年は日本の五都市で公演が行われる。クラシックでサクソフォンを学んでいる人にとっては、必修科目のようなものだと思っている。

今回、チケットに関してはマネジメントの鈴木さんにお世話になった。改めて、この場を借りて感謝申し上げる。

【ファブリス・モレティ サクソフォンリサイタルツアー(東京公演)】
出演:ファブリス・モレティ(sax)、服部真理子(pf)
日時:2012年11月8日(木曜)19:00開演
会場:ルーテル市ヶ谷センター
プログラム:
P.クレストン - ソナタ
P.サンカン - ラメントとロンド
A.デザンクロ - PCF
C.パスカル - ソナチネ
P.モーリス - プロヴァンスの風景
P.M.デュボワ - ディヴェルティスマン
アンコール:
林光 - 暗い晩
A.シャイユー - アンダンテとアレグロ
E.ボザ - アリア

まあ、年に一度は…と書いておきながら、昨年は伺えず悔しい思いをしたのだった。一曲目は遅刻で聴けなかったものの、なんとか2曲目には間に合った。プログラム冊子の曲目解説は、上田卓さん。今回も素晴らしい解説を堪能した。木幡一誠氏の書く文章とともに、私の昔からの理想となっている。

今では録音でしか聴くことのできない、師匠のダニエル・デファイエ氏からの直接のリンクを感じる。フォルテにおける響きは眼前に大きな壁となってそびえ立ち、ピアノにおける繊細な響きはまるで上質なシルク生地のようだ。

サンカンの「ラメントとロンド」は、そのシリアスな響きもなんのその、クランポンのサクソフォンを鳴らし切る圧倒的なパワーで、完全に曲を我が物としていた。服部真理子さんのピアノのやや硬質、しかし場面場面で目まぐるしく表情を変える響きも、モレティ氏とのアンサンブルに相応しい。美しい響きからグロテスクな響きまでを見事に弾き分けている。デザンクロの「PCF」も、怪しげなプレリュード、カデンツァでの音符のばら撒きから、終曲のピアノとの見事なアンサンブルまで、一気に聴き通してしまった。サクソフォンとピアノのブレンド感、距離感に耳を向けると、さらにその凄さがわかる。

さらにパワーアップしての後半は、服部真理子さんお得意のパスカルから。サクソフォンパートは、凡庸に聴こえて実は非常に難しいことをやっているのだが、この曲をここまでエレガントに聴かせてしまうのかという驚きがあった。リサイタルで「プロヴァンスの風景」を取り上げ(られ)る演奏家もなかなかいないだろう。氷の上を滑るような第一楽章や、慈しみが感じられる第四楽章、そして聴いたことのないほどぶっ速い第五楽章(大喝采)など、その魅力を挙げていけばキリがない。そして最後になんとデュボワの「ディヴェルティスマン」が演奏された!マルセル・ミュールの演奏でこの曲に親しんだ私にとって、とても嬉しい選曲だった。あのコミカルなフレーズを、輝かしく吹きこなしていく。感動的だった。

ところで、曲間にはモレティ氏のトーク(通訳は服部真理子さん)があったのだが、今日のトークはなんとモレティ氏の師ダニエル・デファイエ氏に関するエピソードを中心に取り上げていた!自身のリサイタルで師匠のことをたくさん話すって、凄いことだな。話された内容も面白かったし(モレティ氏は18歳でデファイエ氏とテリー氏の間に座ってオケの仕事をしていたそうだ!)言葉の隅々から師匠への敬愛が感じられる。ある意味こちらも演奏以外の隠しメインイベント、という感じで、貴重な機会に臨席できたことを嬉しく思う。

そういえば、モレティ氏オススメのデファイエ氏の演奏が聴けるCDとして、ビゼー「アルルの女」とミヨー「世界の創造」が挙がっていた。「世界の創造」については、これは語り尽くせないほどで、すべてのサクソフォン奏者が聴くべき録音だ。「アルルの女」は、新録音なのか旧録音なのかわからないのだが、どちらにもデファイエ氏が参加している。旧録音のほうがサクソフォンがオンマイクで捉えられておりわかりやすいのだが、新録音でのオーケストラから立ち上がってくるようなサクソフォンの音色も聴きごたえがある。フルートは断然旧録音ですね(ジェームズ・ゴールウェイが吹いている)。
カラヤン指揮ベルリン・フィル「アルルの女(旧録音)」
カラヤン指揮ベルリン・フィル「アルルの女(新録音)」
バーンスタイン指揮フランス国立管「世界の創造」

アンコールに、まず、ピアノソロで林光「暗い晩」。左手の分散和音に、オペラのアリアのような美しくシンプルな旋律が乗る。この曲の成立を知らなかったのだが、ちょっと調べてみたところこんなサイトが。今という時代に、まさにピッタリな音楽ではないか。林光氏の追悼の意味もあったのだろう。モレティ氏のアンコールは、アンドレ・シャイユー「アンダンテとアレグロ」、ウジェーヌ・ボザ「アリア」。最後の最後にボザ作品を持ってくるとは、もしやモレティ氏なりのエスプリだったりして…そんなはずないか(笑)。

岐阜公演が11/11、福岡公演が11/16、福山公演が11/19。近くの方はお聴き逃しなきよう!

2012/11/07

ヴォルフ指揮の戯曲「アルルの女」

アルフォンス・ドーデ Alphonse Daudetの小説「風車小屋便り」に基づく3幕の戯曲「アルルの女」。ジョルジュ・ビゼーが付けたことは有名だが、その戯曲版の「アルルの女」の録音を島根県のF様よりお送りいただいた。アルベール・ヴォルフ Albert Wolff指揮のスタジオ・オーケストラによる録音で、録音年は1955年。イギリスDecca LXT5229, 5230という型番がついている。

F様には、さらに日本語の台本のフルバージョンまで送っていただいた。前奏曲のサクソフォンソロは、有名なグラモフォン盤の解説にもある通り「フレデリの弟(白痴)の動機」とのことで、いったい何を意味するのかサッパリだったのだが、台本を読んでみるとその意見がよく分かる。サクソフォンにとってはこれほど有名、かつ重要な曲であるのに、不勉強でちょっと恥ずかしい。

さて、この録音だが、サクソフォンが随所で魅力的な音を出しているのだ。特にパストラルでの木管合奏とともに奏でられるオブリガードは、これまでに聴いたことのないほど蠱惑的(こわくてき)なもので、まるで上質なワインを味わい、酔わされているような気分になってしまう。すると、誰が演奏しているのだろうということになるのだが、「聴いたことのない音」というのがポイントであり、どうにも判定しかねているところ。最初は、デファイエ氏かなあと思ったのだが、前奏曲の独奏におけるフレージングは、やや凡庸である気もする。

ちょっと探したところ、NMLにもあったので、アカウントをお持ちで気になる方はぜひ聴いてみていただきたい。

※この録音に参加しているサクソフォン奏者が誰なのかご存知の方がいたら、ぜひ教えてください!

2012/11/06

SiamSQ plays 琉球幻想曲@タイ

とても嬉しい知らせをいただいた。

WSC@スコットランドでお会いしたSiam Saxophone Quartetというタイを代表するサクソフォン四重奏団がいる。現地でメンバーの方にお会いした時に「琉球幻想曲」のサクソフォン四重奏版の楽譜をプレゼントしたところ、なんと次のライヴで同曲を取り上げてくれるのだそうだ。実は、外国の団体に渡すために楽譜を何冊か準備して持っていったのであった。

https://www.facebook.com/events/503140313043322/

あの曲が外国でも演奏されるのは嬉しいし、また、些細なことではあるが、これでこそWSC参加の冥利に尽きるというものだ。

2012/11/04

ルソー氏、来日情報

本日夜は、来週の小倉くんのリサイタルに向けて練習。なんとか仕上がってきた。彼もかなり頑張っているようなので、ぜひお越しください。

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ヤマハのYさんから耳寄り情報を頂戴した。なんと、あの伝説のサクソフォン奏者ユージン・ルソー氏が来日し、トークとミニコンサートを行うそうだ。「伝説の」などと書いてしまったが、いや本当に私達の世代にとってはまさにその言葉通りである。まさかライヴでその演奏を聴けることになるとは夢にも思わなかったことだ。

WSCの時にもちょっとだけ話し写真まで一緒に撮ってもらったのだが、演奏ではエントリーしていなかったのであった。その時は演奏を聴けずちょっと残念であったのだが、まさか日本でこのような機会が巡ってくるとは。平日ということでかなり伺うのが難しそうだが、なんとか行きたいところ。

【Eugene Rousseau Talk & Mini Concert】
出演:ユージン・ルソー(sax)、松浦真沙(pf)
日時:2012年12月4日(火)19:00開演
会場:ヤマハ銀座コンサートサロン(ヤマハ銀座ビル6F)
料金:一般2000円、学生1500円
プログラム:
トーク『ルソー氏とヤマハとの絆。その歴史を本人が語る』
ミニコンサート
G.ガーシュウィン - "ポーギーとベス"メドレー
B.ヘイデン - ディヴァーションズ
E.ハーゲン - ハーレム・ノクターン
♪『ポギーとベス』メドレー:G.ガーシュイン
♪ディヴァージョン:B.ヘイデン
♪ハーレム・ノクターン:E.ハーゲン 他
問い合わせ:
http://www.yamahamusic.jp/shop/ginza/event/detail/3279

2012/11/03

ワセカル「サックス吹きます-7-」

"ワセカル"こと、早稲田大学のメンバーを中心に組まれたカルテットのコンサートを聴きに、早稲田祭に伺ってきた。tfmさんが組んだ"たけのこカルテット"のデビュー戦を聴いてみたかったし、また、昨シーズンの全日本吹奏楽連盟主催のアンサンブルコンテスト一般の部で全国大会金賞を勝ち得たという早稲田大学吹奏楽団のカルテットも気になっていたのだ。

【ワセカル"サックス吹きます-7-"】
出演:早稲田吹奏楽団、たけのこカルテット他
日時:2012年11月3日(土曜)15:30開演
会場:早稲田キャンパス 10-101教室
プログラム:
魔女の宅急便メドレー
リュエフ「四重奏のためのコンセール」より第1,6楽章
スウィングしなけりゃ意味がない
ホルベルク組曲よりプレリュード
グリーンスリーブス
デザンクロ「四重奏曲」第1,3楽章
ザッツ!家電激戦区
?(失念)
スペイン
?(失念)
A列車で行こう
彼方の光
ラテンメドレー

出身大学以外の学園祭って初めて伺ったのだが、いやあ、さすが都内の大学は雰囲気が違いますなあ(´∀`)全身で浮つきっぷりを感じ取ってきた。なんと、きゃりーぱみゅぱみゅが来てたらしい。どこかで読んだのだが、きゃりーぱみゅぱみゅを発音しづらいときは、ドラえもんが道具を取り出すときのように発音すれば、噛まないで言えるらしい。

…まあそれはそれとして。会場は、10号棟の1階のおよそ40人用の教室で、到着するころには座席は埋まってしまっていた。仕方なく教室の後ろで立ち見と決め込んだのだが、曲が進むに連れてさらにお客さんが増え、最終的には60~70人くらい来ていたようだ。特に後半は、早稲田大学吹奏楽団のメンバーの演奏ということで、吹奏楽団の関係者らしき学生がたくさん来ていた。

メンバーも入れ替わり立ち代り、なんと2時間近くも続いた!どの演奏も非常にレベルが高く、地力の高さを思い知らされる。

本日デビューのたけのこカルテットは、なんとたった2回の合わせでホルベルク組曲、グリーンスリーブス、デザンクロ1&3を作り上げてしまったそうだ。驚異的。特に緩徐楽章でカルテットとしての方向性を垣間見た気がする。tfm氏の高い実力はすでによく知っているが、バリトンの方の巧さ・安定度にも驚かされた。

最後の3つは早稲田大学吹奏楽団の2年生3人+1年生1人によるカルテット。驚くほど安定した技術と、曲の方向性に対して強力に一致した演奏のベクトル(これでも昨年からメンバーがひとり入れ替わっているらしい)は、アマチュアとは思えないほどのものだ。いやはやびっくり。ラテン・メドレーは、まさにブラヴォー、であった。ヤナギサワのユーザーが多い、というのもちょっと面白い共通点だ。

上野耕平 plays サイバーバード(東京ニューシティ管弦楽団第84回定期演奏会)

【東京ニューシティ管弦楽団第84回定期演奏会】
出演:東京ニューシティ管弦楽団、内藤彰(cond)、上野耕平(sax)、石若駿(perc)、永井基慎(pf)
日時:2012年11月2日(金曜)19:00
会場:東京芸術劇場コンサートホール
プログラム:
吉松隆「サイバーバード協奏曲」
A.ブルックナー「交響曲第7番」

ファーストインプレッションは、昨日書いた通り。素晴らしかった。

普段ほとんどオーケストラの演奏会なんて聴きに行かないので、このような大きなホール(到着して気づいたが東京芸術劇場に入るのは初めてだった)、大人数の演奏者たちを見ると、否応なしにワクワクしてしまう。チケットは上野耕平さんに頼んで取り置いてもらったのだが、前から6列目のほぼ中央という絶好の位置だった。3つ左の席にはBCSEのSフジさんが。

拍手を受けて登場した上野耕平氏を始めとする3人のソリスト、プロフィールを見たが、全員同期の大学2年生だという。上野氏は、一音目から一気に聴衆を引き込んだ!2000席のホールを無理なく鳴らしきる美音と響き(とても軽やかな響き…どんなセッティングなのだろう)は、オーケストラととても良く調和している。

短い序奏を経たあとはソリスト3人で突っ走るアレグロ。このアレグロがとてもスピード感あふれるもので、崩れてしまうギリギリのところでせめぎあいながら進んでいく様子にとても興奮した。ここで触発されたのか、オーケストラも、コンサートマスターを始めとする各プレイヤーのサポートが手厚い。聴いていた位置のせいか、管楽器群とソリスト陣のアンサンブルにはいくぶん噛み合わない箇所も散見されたが、それでも管楽器の人たちはシンコペーションで血が騒ぐのだろうか、とても楽しそうに演奏しているのが印象的だった。

上野耕平氏の演奏の魅力を書いていけばキリがないが、この日気付かされたのは、超高速のフレーズにあっても常にすべての音をコントロール下に置くというその特徴である。どんなフレーズでも、一音一音まで方向性がハッキリと見えてくるような演奏家は、あまりいないだろう。

第2楽章については、その制作背景を知って聴くことで共感の度合いが増すのだが、プログラム冊子の解説を読んだのだろうか、客席もとても高い集中力を持って聴いていたのが印象的だった。その集中力に応えるように美しい演奏を繰り広げる上野耕平氏。うーん、あのときの空気を言葉で語り尽くすのは、一筋縄ではいかない…。ぜひ次の機会に聴いてみてください。

アタッカで突入した第3楽章は、あの第1楽章、第2楽章のあとだからこそさらにクールに聴こえる。そのあたりの考えについては以前ブログにも書いたが、何もかも捨てて、最終部のアドリブ(このアドリブの最初の甲高い鳥の鳴き声のようなサクソフォンの演奏には、鳥肌が立った)を経た大爆発まで疾走する。

こういう演奏をする人が、日本に現れてきたことを嬉しく、また誇りに思う。

休憩後はブルックナーの7番。実はブルックナー自体聴くのが初めてで(勉強不足だなあ…と痛感)、何か書くとニワカっぷりがバレるのであまり詳しくは書けないが…。サイバーバードのようなめまぐるしい曲を聴いた後だからこそわかる、シンプルな美しさ…特に第2楽章には感動してしまった。曲の構造を追っていけるのは、オーケストラの魅力だろう。

終演後はサイン会。また、打ち上げにもちゃっかり参加させてもらってしまった。打ち上げでは少し上野さんとお話しすることもでき、選曲時の苦労や今後のことについていろいろと話しを聞けた。次、聴ける機会を楽しみに待ちたい。

いやー、すごかった。

今宵、サクソフォンという枠を超えまだ誰も到達しえぬ世界へと見事に飛翔した上野耕平さんに、喝采を送りたい。「見果てぬ夢」を体現した「サイバーバード」の演奏を、自身の(中学校時代からの)夢として実現してしまったという…そんなアンチテーゼ的な部分に感慨深さを感じる。

感想は明日辺りじっくり書きます。ブラヴォー!

ちゃっかり打ち上げまで参加し、とても良い気分で池袋を後にした。終電…?なにそれ(´・ω・`)?いちおう無事に帰り着いていますが(苦笑)

2012/11/01

デファイエ参加のマスネ「ウェルテル」

島根県のF様より、デファイエとミュールに関するいくつかの録音を送っていただいたので、何度かに分けて紹介していきたい。貴重な録音をお送りいただき、感謝申し上げる次第。

まずは、Jesus Etcheverry指揮フランス国立放送局管弦楽団の演奏によるマスネの歌劇「ウェルテル」である(ADES)。ジャケットの写真をカラーコピーで送っていただいたのだが、録音風景にデファイエ氏の姿が写っており、また音を聴いても明らかにデファイエ氏の音が聴こえる。これまで全く知らなかった録音で、F様はいったいこの録音の存在をどこで知ったのかと思ってしまう(笑)。

第3幕第2場のアリアについては、後半にとても美しいサクソフォンのオブリガードを聴くことができる。かなり控えめ・抑制された響きではあるが、この低音域のソロをこうも美しく聴かせる手腕には舌を巻く。一緒に「ウェルテル」の抜粋台本まで送っていただき、その内容を吟味しながら何度も聴き返していると、デファイエ氏の仕事の素晴らしさを実感する。