2011/12/30

Quatuor Arcanes参加のヴィヴァルディ・トリビュート・アルバム

ヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏率いるサクソフォン四重奏団、Quatuor Arcanesのアルバム「Vivaldi Universal - season 5(Cristal)」。デビューアルバム「[R+D]」はラヴェルとドビュッシーの弦楽四重奏曲を取り上げたものであったが、こちらはなんとヴィヴァルディの名曲「四季」を現代の感覚で再構成してしまったアルバム。仕掛け人はChristophe Monniotなるフランスのジャズサクソフォン奏者。モニオ氏の経歴やアルバムのコンセプトの詳細な解説は他資料に譲り、ここでは聴いてみての感想に集中して書いてみたい。

アルバムの全体像から最初に受けた印象は、クラシックの四重奏団と、卓越した能力を持つ即興演奏家の共演というコンセプトということもあり、ルイ・スクラヴィス Louis Sclavisとハバネラ四重奏団の共演となるアルバム「L'Engrenage(alpha)」と似通ったものであった。ただ、こちらのヴィヴァルディのアルバムのほうがずっとジャズ寄りだ。基本的にモニオ氏はサクソフォンを含むジャズ・カルテットの中で吹いており、飛び出してくる響きはスクラヴィス×ハバネラとは大きく異なったものだ。

そんなサウンドであるから、最初から最後までクラシック・サクソフォンを楽しむという部分はあまりない。大きな流れで見れば、四重奏パートはあくまでも、ジャズトリオ、エフェクタ、SE、その他諸々とともに、モニオ氏のプレイを支える一部として使われており、ひとつの素材としてヴィヴァルディの再構成音楽の中に組み込まれてしまっているとも言える。Quatuor Arcanesのアルバム、としては考えることができない内容となっている。

曲中では、モニオ氏の他にもQuatuor Arcanesのヴァンサン・ダヴィッド氏やダミアン・ロワイヨネ氏がソロを担当しており、モニオ氏とはまた違った雰囲気のソロを聴くことができる。ただ、いずれも強烈であることには変わりなく、フランスのクラシック・サクソフォン周辺発の即興演奏家はすごいなあと感じ入った次第。どうやったらそんな音楽を着想できるのかという驚きがある。もちろん、その即興に合わせて絶妙なバック・ミュージックを展開するプレイヤーの方々もすごい。

楽曲は、至る所にヴィヴァルディ「四季」のフレーズが散りばめられているが、ほとんどもうジャズの世界に突入しており、フレーズが出てきたとしてもごく断片的なものだ。それらのフレーズを題材とした収録曲が、これがまたカッコ良いのなんの。ある曲では激烈なスピード感があって、ある曲では「四季」を面白おかしくパロった雰囲気があって、とにかく一曲一曲進むごとに新鮮な驚きがある。

クラシックの感覚からすると面食らうが、ジャズや現代作品が好きな方にはとても面白く聴けるのではないかな。おすすめ。CDは、Quatuor Arcanesの公式サイトからPayPalを使って購入できる。

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