2011/12/31

シャリーノの音響世界

サルヴァトーレ・シャリーノ Salvatore Sciarrinoは、イタリアの作曲家。管弦楽から室内楽、独奏曲、オペラまで多くの作品を作っているが、サクソフォンとの関わりで言えば超巨大編成のための重要な2作品「La Bocca, I Piedi, Il Suono」と「Studi per l'intonazione del mare」がすぐさま思い出されることだろう。サクソフォン"100本"というキーワードは思いつくのも難しいし、実現も難しいし…というところだが、CD出版されているし、その後再演もされているようだ。

YouTubeにリハーサル映像+通しのダイジェスト映像があったので、貼り付けておく。

「La Bocca, I Piedi, Il Suono」(サクソフォン4本、サクソフォン100本)


「Studi per l'intonazione del mare」(声、フルート4本、サクソフォン4本、打楽器、フルート100本、サクソフォン100本)


音らしい音を紡いでいくというよりは、どちらかというと多数のサクソフォンから聴いたことのない"音響"を引き出すイメージだ。ブレスノイズ、キイノイズ、スラップタンギング…と、特殊奏法の渦の中に身を委ねていると、音楽というよりは環境音を聴いているような感覚に陥ってくる。壮大な実験的な作品ではあるが、とにかくインパクトは絶大。

すでに各所で話題となっているが、1/17にオペラシティにおいて「Studi per l'intonazione del mare」の実演が行われる。詳細はこちら。行きたいけど…1月も引き続き仕事が繁忙期なので…行けるかな。

----------

本年最後の記事となりました。2010年に引き続き2011年も、ブログの目標「ひと月ごと、その月の日数と同じ数の記事を書く」が達成できました。これも、ご覧頂いている皆様方のおかげと思います。

皆様方におかれましては、良いお年をお迎えください。

2011/12/30

Quatuor Arcanes参加のヴィヴァルディ・トリビュート・アルバム

ヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏率いるサクソフォン四重奏団、Quatuor Arcanesのアルバム「Vivaldi Universal - season 5(Cristal)」。デビューアルバム「[R+D]」はラヴェルとドビュッシーの弦楽四重奏曲を取り上げたものであったが、こちらはなんとヴィヴァルディの名曲「四季」を現代の感覚で再構成してしまったアルバム。仕掛け人はChristophe Monniotなるフランスのジャズサクソフォン奏者。モニオ氏の経歴やアルバムのコンセプトの詳細な解説は他資料に譲り、ここでは聴いてみての感想に集中して書いてみたい。

アルバムの全体像から最初に受けた印象は、クラシックの四重奏団と、卓越した能力を持つ即興演奏家の共演というコンセプトということもあり、ルイ・スクラヴィス Louis Sclavisとハバネラ四重奏団の共演となるアルバム「L'Engrenage(alpha)」と似通ったものであった。ただ、こちらのヴィヴァルディのアルバムのほうがずっとジャズ寄りだ。基本的にモニオ氏はサクソフォンを含むジャズ・カルテットの中で吹いており、飛び出してくる響きはスクラヴィス×ハバネラとは大きく異なったものだ。

そんなサウンドであるから、最初から最後までクラシック・サクソフォンを楽しむという部分はあまりない。大きな流れで見れば、四重奏パートはあくまでも、ジャズトリオ、エフェクタ、SE、その他諸々とともに、モニオ氏のプレイを支える一部として使われており、ひとつの素材としてヴィヴァルディの再構成音楽の中に組み込まれてしまっているとも言える。Quatuor Arcanesのアルバム、としては考えることができない内容となっている。

曲中では、モニオ氏の他にもQuatuor Arcanesのヴァンサン・ダヴィッド氏やダミアン・ロワイヨネ氏がソロを担当しており、モニオ氏とはまた違った雰囲気のソロを聴くことができる。ただ、いずれも強烈であることには変わりなく、フランスのクラシック・サクソフォン周辺発の即興演奏家はすごいなあと感じ入った次第。どうやったらそんな音楽を着想できるのかという驚きがある。もちろん、その即興に合わせて絶妙なバック・ミュージックを展開するプレイヤーの方々もすごい。

楽曲は、至る所にヴィヴァルディ「四季」のフレーズが散りばめられているが、ほとんどもうジャズの世界に突入しており、フレーズが出てきたとしてもごく断片的なものだ。それらのフレーズを題材とした収録曲が、これがまたカッコ良いのなんの。ある曲では激烈なスピード感があって、ある曲では「四季」を面白おかしくパロった雰囲気があって、とにかく一曲一曲進むごとに新鮮な驚きがある。

クラシックの感覚からすると面食らうが、ジャズや現代作品が好きな方にはとても面白く聴けるのではないかな。おすすめ。CDは、Quatuor Arcanesの公式サイトからPayPalを使って購入できる。

2011/12/28

手放せない3つの…

あまりサクソフォンに関係する話ではないのだが。

出かけるときに手放せない3つの電子機器がある。といっても、ポータブルオーディオプレイヤー、デジカメ、携帯電話なのだが、どれも完成度が高くお気に入りなのだ。一つのものを気に入って長く使える、というというのは、実に幸いなことだと思っているのだ。

・ポータブルオーディオプレイヤー:iriver Clix2
たぶん2007年後半頃の購入。容量4Gbytes。イヤフォンは故障や破壊が続き3台目となったが、本体はピンピンしている。気に入っているポイントはいくつかあって、サイズ、見やすい画面(有機EL)、対応フォーマットの幅広さ、マイク内蔵(簡易録音ができる)…といったところなのだが、個人的にはiPodに勝るとも劣らないその操作のためのインタフェースに最大の魅力があると思っている。45mm x 78mmの小型ボディの全体がボタンとなっており、各辺に対して"カチッ"と傾くようになっているのだ。そのインタフェースを通して操作するメニュー画面構成もシンプルで、ストレス無く各種機能にアクセスできる。

音質については、これは聴き比べたわけではないのでなんとも言えないが、不都合を感じたことはない(これを出力元としてJacobTV作品の伴奏をコンサートホールで鳴らしたこともある)。iriverには、このClix2の良さを継承したプレイヤーを出して欲しいのだが、どうも単発で終わってしまったよう…もったいないことだ。さすがに最近バッテリーがへたってきたようなので、2年以内には買い替え先を見つけたいのだが、これを凌ぐものが見つけられない。

・デジタルカメラ:Canon PowerShot S90
2010年4月購入。当時、本当はRICOHのGR DIGITAL IIIが欲しかったのだが、PowerShot S90とのおよそ2万円の価格差を目にして怖気づき、結局こちらになった…という購入経緯がある。小型だし、画質も良いし(自然画の細部の描写は気になるが、全体の雰囲気はとても良く描かれる)、気軽に持ち歩いてパシャパシャやるにはもってこいのカメラだと思う。また、薄暗い環境での強さはさすがである。コンデジとしては大きな1/1.7 CCDセンサーと、F2.0の明るいレンズ、DIGIC4のノイズリダクションの組み合わせで、飲み屋のような場所でもブレずに撮れるのには感動した。

とにかく撮りまくっており、いつの間にか累計10000枚を超えていた。ズームすると画質が悪い、暗い所でホワイトバランスが時々変、メニューダイアルの操作感が悪い、気合を入れて撮ってもそれなりの画にしかならない、など弱点もあるが、それらを補うカメラだと思う。壊れた時のためにもう一台買っておきたいのだが、最新のPowerShot S100はなぜかCMOSセンサーだというし(なんでわざわざ切り替えたのだろう?)…もし買うならCCDのS95が良いかも。

・携帯電話:SHARP IS05
2011年3月購入のスマートフォン。これまで渡り歩いてきた3台の携帯電話に次ぐ4台目。購入するまでは、スマートフォンがここまで使えるものだとは正直思わなかった。IS05の完成度の高さによるところも大きいのだろう。Android 2.3.4、バッテリーは1230mAh、小型(3.4inch)、1GHz駆動のSnapdragonまで乗っている。IS01~IS04と試行錯誤を続けてきたauスマートフォンの、初期完成形と言えるだろう。

必要なアプリケーションをどんどん入れて活用している。使う頻度が高いのは、Gmail、Facebook、乗り換え案内、Google Map、Google Readerあたりかなあ。

Sonic Art SQのセカンドアルバム

現代作品を見事に演奏した、あの衝撃的なデビューアルバムから2年、ついに待望のセカンドアルバムが発売される運びとなった。現代のプロフェッショナルの四重奏団に必要不可欠ともいえる、「隙のない技術力」を持ち、さらにアンサンブル力や音色の美しさにも優れたSonic Art Saxophone Quartet。ドイツの四重奏団といえば、ちょっと前まではNew Art Saxophone Quartetが幅を利かせていたイメージがあったが、彼らをさらに洗練させたような印象を受ける。

セカンドアルバム「Philip Glass & Michael Nyman - Works for Saxophone Quartet(Genuin GEN11222)」の内容は、なんとミニマル尽くし。同じコンセプトでイギリスのDelta Saxophone QuartetがClarinet Classicsに吹き込んでいるのが思い出される(事実、曲目も2つ重なっている)が、Sonic Art SQがどのようにこれらの曲を演奏するのか、楽しみだった。

Philip Glass - Mishima
Philip Glass - Saxophone Quartet
Michael Nyman - Songs for Tony

Sonic Art SQの透明感のある音色は、これらの作品に実に良くマッチする。「Mishima」での"耽美"とも表現される雰囲気など、ゾクゾクするような魅力にあふれている。想像を絶する楽器としてのコントロールそして丹念なリハーサルの跡を感じる。あくまでもサクソフォンという楽器の範疇に留まりながら、その中での表現を突き詰めていく姿勢に好感を持った。続くグラスでも、第1楽章でソプラノサックスがあの美しいフレーズを奏で、そのようなイメージのまま進むかと思いきや、第2楽章や第4楽章ではガリガリとエッジの利いた大胆な表現までもこなしてみせる。

やはり一番驚いたのはナイマンだ。第1楽章の音色の処理とコントロールって、難しいんですよ。これまでのどの録音を聴いてみても、「この位のテンポが限界でしょう」というところを超えるものは無かったのだが…それを軽々と飛び越えている。いやはや、驚いた。楽章が進むにつれてテンポはゆっくりになっていくが、さらに濃密な音楽が展開されている。

全体的に期待通りの作りとなったアルバムだ。現代作品→ミニマルとくれば、今度はフランスのアカデミックな作品を聴いてみたいな。デザンクロやシュミットなど、なかなか良い演奏になりそうなのだが。

2011/12/27

サクソフォーン・フェスティバル2011二日目(その3)

今回のメイン企画、フェスティバルコンサート。独奏サクソフォン+サクソフォンアンサンブルという企画だが、思い返してみれば私が知る範囲では確かにこれまでに取り上げられた記憶がない。バックのアンサンブルは以下のような布陣であった。

松元宏康, cond
塩安真衣子, sn&ssax
國末貞仁、佐藤淳一, ssax
貝沼拓実、山浦雅也、石橋梓, asax
富岡祐子、木藤良朝子、細川紘希, tsax
原博巳、坂東邦宣, bsax
田村真寛, bssax
稲川美穂, hp
亀井博子, vib&glk

♪フェスティバルコンサート(JSAスペシャルソロイスツ)/長瀬敏和
H.トマジ/柏原卓之 - バラード

(前も書いたが)これまでずっと協会の楽譜を使用してきたフェスティバルで、柏原卓之さん編曲の楽譜が使われることに感慨深いものを感じる。長瀬さんは、数年前に同じくフェスティバルで聴いた田中久美子「セドナ」でのソリストとしての演奏を聴いたことがあったが、その時はどちらかと言えばバックの管楽アンサンブルパートに比重がある曲であり、ソリストとしての力量を聴ける曲ではなかったように記憶する。今回はさすが、最初から最後まで大活躍であった。なんとも味わい深い音色、深いヴィブラート…バックで吹くどの奏者とも違う、真のソリストとしての演奏であったと思う。

♪フェスティバルコンサート(JSAスペシャルソロイスツ)/新井靖志
M.ブルッフ/ミ=ベモルSE - コル・ニドライ

新井さんがご自身の十八番レパートリーとしてしばしば取り上げる「コル・ニドライ」。ピアノとの演奏、シエナWOとの演奏などこれまでにあったが、まさかvs.サックスアンサンブルでの演奏がフェスティバルで取り上げられるとは思わなかった。慣れた歌いまわしや芳醇な音色は、聴いていてさすがに説得力の高いものだと感じた。ちょっと大げさかもしれないが、テナーという楽器をこのようにクラシックのソロ楽器として扱える人は、日本にあとどれだけいるのだろう、とも思ってしまった。

♪フェスティバルコンサート(JSAスペシャルソロイスツ)/大城正司
L.ベリオ/C.ドゥラングル&V.ダヴィッド - Récit (Chemins VII)

もちろん原曲の「Chemins VII」を聴いたことがあるのだが、サクソフォン+サクソフォンアンサンブルという形態に落としてしまうと、魅力が損なわれてしまうのは致し方ないところだろうか(魅力、というか、拡張の必然性が損なわれているという表現が正しいかも)。演奏は素晴らしかったのだが…。

♪フェスティバルコンサート(JSAスペシャルソロイスツ)/ヨナタン・ラウティオラ
A.K.グラズノフ/J.M.ロンデックス - 協奏曲

一つ前の企画で現代曲を軽々と吹きこなしたかと思えば、グラズノフのようなロマン派の作品でも鉄壁の演奏を繰り広げる。ヨナタン氏の適応能力の高さを思い知ると同時に、例えばいま現在国際コンクールで入賞しようとすると、あの位吹けないとダメなのだということを見せつけられる思いだ。自分のようなアマチュアの想像の域を超えている。しかし、2010年代に突入して、国際コンクールで入賞するというのはそういうことなのだろう。名演と呼ぶにふさわしい堂々たる演奏だったが、この曲を足し算的に聴かせていく要素を明確に見つけられなかったのが残念。これは自分の耳の問題だろう。

♪フェスティバルオーケストラ
J.シベリウス/金井宏光 - 交響詩"フィンランディア"

どんな感じになるかなー、と聴き始めたが、想像以上にマッチしている!なんでサクソフォン・オーケストラってこんなになんでもできちゃうんだろうか。最後の最後まで良いものを聴かせてもらいました。実は自分たちでもちょうといま演奏しているところで…。

楽譜スキャン再始動

リュセット・デカーヴがシャンゼリゼ劇場管弦楽団と共演したジョリヴェ「ピアノ協奏曲」の録音を聴いている。サクソフォンは誰だろう?

----------

購入した楽譜は、すべてスキャンしてデータ化し、Gmailに飛ばしていつでも取り出せるようにしてある。何が便利って、あっという間に楽譜を配布できてしまうその手軽さだ。もちろんその先には、スマートフォンのネットプリントアプリを利用したどこでも印刷環境とか、タブレットPC所持前提でダウンロードしたものがそのまま見られるとか、そんなところも視野に入れている。

もちろん、楽譜のスキャンには膨大な手間がかかるのだが、大学卒業時までに入手した楽譜については全てデータ化が完了している。あとは楽譜を購入するたびにスキャンすれば良かった。知り合いから中古のスキャナを譲り受け、少しずつ作業を継続していたのだが、そのスキャナもついに先日故障してしまった。

ということで、Epson GT-S630を購入。こういったスキャナが8000円もせずに購入できるとはすごい時代だ。到着したときに初期不良でまともにスキャン出来なかったのには面食らったが、交換手続きも特に問題なく済ませることができた。速度的にもそれなりに満足の行くもので、400dpiならば慣れてくればおよそ1分に2枚のペースでスキャンできる。早速Benjamin Booneがアレンジした「My Favorite Things」をスキャン→Gmailへ。

スキャナ故障中に入手したその他の楽譜についても、引き続きデータ化を行なっていく予定。

2011/12/26

ヤマハ目黒吹奏楽団 クリスマス・コンサート2011

"ヤマメ"ことヤマハ目黒吹奏楽団の名前は今までにも聞いたことがあったのだが、関わるのは今回が初めて。前身は東京アンサンブルアカデミーというプロフェッショナルの団体であったが、1977年以来アマチュアの吹奏楽団として活動しているそうだ。"ヤマハ"の名前を冠する吹奏楽団は他にもあるが(ヤマハ浜松:職場バンド、ヤマハ横浜吹奏楽団:ヤマハ吹奏楽コースのバンド)、純粋なアマチュアの吹奏楽団はここだけだそうだ。

【ヤマハ目黒吹奏楽団 クリスマス・コンサート2011】
出演:ヤマハ目黒吹奏楽団、鳥谷部武夫(指揮)、大田昌穂(司会)
日時:2011年12月25日(日)14:00開演
会場:めぐろパーシモンホール
プログラム:
建部知弘 - ダンス・セレブレイション
S.シュワルツ/J.ボコック - セレクションズ・フロム・ウィキッド
上岡洋一 - マーチ"潮煙"
M.アーノルド/瀬尾宗利 - 第6の幸運をもたらす宿
M.ブラウン - ディズニーランド・セレブレイション
R.スミス&F.バーナード/森田一浩 - ウィンター・ワンダーランド
磯崎敦博 - ジャパニーズ・グラフィティV
J.パッヘルベル/郷間幹男 - カノン・ブラス・ロック
M.トーメ&R.ウェルズ/A.シュナイダー&J.ヒギンズ - クリスマス・ソング
オムニバス/林直樹 - ハッピー!ハッピー!!ハッピー!!!クリスマス
~アンコール~
オムニバス - AKB48メドレー
L.アンダーソン - そりすべり

演奏で参加したわけではなく、なんとステージマネージャーとしての参加。サクソフォン関連でお知り合いが何人か参加しており、その辺りのつながりで仰せつかった。こちらの楽団では、ひな壇組み上げやセッティング、リハのタイムキープ等は楽団の幹部の皆さんの指示のもとにほとんど完了してしまうため、ステマネは演奏会中の進行と照明切り替え演出の指示出し(これが初めてでだいぶ苦労したが…)に集中すれば良いことになっている。一日全体のスケジュールを見ると余裕があるが、とにかく演奏会が進行している最中は集中力が必要、という感じ。

午前中から開始となるリハーサルでは、ホールの照明担当の方とコンタクトしながら、実際の演奏会での照明演出を作り出していく。照明の切り替え表は楽団の幹部の方が用意してくださっており、手元の楽譜&切り替え表とにらめっこしながらインカムで照明室に指示を出す、というイメージ。この取り仕切りが初めてでリハでは手間取ったが、慣れたホールのスタッフの方にも助けられつつ、なんとか本番では上手くいったのだった(と思う)。照明切り替え以外の本番中の仕事は、まあ普通のステマネの仕事、という感じ。

長い曲の時には、舞台袖から演奏を聴く余裕もあった。演奏もクラシックとポップスでメリハリがついており、安定感があり、お客さまの反応も暖かく、素敵な演奏会だったと思う。これまで客席で聴けなかったのが悔やまれるほどだ。"名物司会"という大田さんのMCも最高。本業はヤマハエレクトーンの講師だそうだが、あのMCを聞くだけでも演奏会に来る価値があるのではないか、というほどのもの。1200席という超巨大ホールだが、見た目7~8割の客入り。長年やっていることで、地元の固定客も多くいるのかもしれない。

打ち上げも楽しかった。なんと打ち上げの中まで席次・進行が決まっていたのはびっくり(笑)。初めて話す方も多かったが、およそ3時間にわたって楽しいひとときを過ごした。

2011/12/24

つくばでのラージ練習

つくばで、1月に行われる筑波大学吹奏楽団の団内アンサンブル・コンサートに向けての練習に参加。昨日の疲れのせいかうっかり二度寝してしまい、つくば駅では乗ろうとしたバスに目の前で出発されるという踏んだり蹴ったりな状態だったが、ちゃんと時間通りに到着できた(つくば駅から春日公民館まで、歩いてもたった20分だ)。

J.シベリウスの「フィンランディア」。バリトンサックスパートが多かったせいか、最初は妙に凶悪な「フィンランディア」だったが(笑)、指揮者に迎えた方の的確な支持により、どんどんとドラマティックな響きに変化していった。サクソフォンによる合奏の醍醐味だ。もしかしたら他の編成では、こうも簡単に響きを変えることなどできないのかもしれない。

帰り際に、つくばセンターのCREOビル前でやっていた天久保オールスターズバンドのライヴを観るなど。なぜか最後の2曲だけ飛び乗り笑)してから、東京へと戻った。一日中良い天気でよかったなー。

アンサンブルひだまり・ウィンターコンサート

というわけで、昨日は大宮のプラザノースにて本番。

【アンサンブルひだまり・ウィンターコンサート】
出演:いろいろ
日時:2011年12月23日(金・祝)19:00開演
会場:さいたま市プラザノース
プログラム:
~第1部アンサンブルステージ~
R.モリネッリ - ニューヨークからの4つの絵(小倉大志、大嶋千暁)
F.プーランク - オーボエとバソンとピアノのためのトリオ(小倉大志、中島諒、大嶋千暁)
久石譲 - 海の見える街(ひだまりクインテット)
久石譲 - はるかな地へ(ひだまりクインテット)
伊藤康英 - 琉球幻想曲(Tsukuba Saxophone Quartet)
吉松隆 - Atom Hearts Club Quartet(Tsukuba Saxophone Quartet)
~第2部管楽合奏ステージ~
M.ジアッチーノ - Mr.インクレディブル
葉加瀬太郎 - 情熱大陸
オムニバス - クリスマスメドレー
L.アンダーソン - そりすべり
菅野よう子 - Tank!
~アンコール~
L.プリマ - シング・シング・シング

午前中からプラザノース入りし、TsukubaSQの調整。現在、TsukubaSQは5人体制となっているのだが、アルトに小倉君が入る初めての本番だった。メンバーの都合がつかなくて合わせの回数が少なく、なんとたった2回の合わせでステージまで持っていくことになった。「琉球幻想曲」の不安定さにはちょっと…という感じだったので、この点についてはリベンジの機会までに、なんとかしたい。「Atom Hearts Club Quartet」はさすがに慣れているのだが、早めに着地点を見つけて落ちつかせてしまうことが必要だ。

最初のソロと、トリオはさすがだった。テナーは中島諒君だったが、あれだけ響き渡るテナーっていったい…(軽く凹みました笑)。そのあとの久石譲の2曲だって、このプログラムの中ではすごく効果的に聴こえる。2部の管楽合奏のステージは、一気に駆け抜けてしまったが、特に「情熱大陸」は吹いていて楽しかったなあ。1月には四重奏版でも再演予定であるため、継続的にさらっていきたい。アンコールは、予想外の(!?)事態により1曲のみ。聴いていた方にはまったく気付かれなかったので良しとしよう(笑)。

終演後は、打ち上げ。遅かったのでほとんど参加できなかったが、楽しいひとときを過ごすことができた。

2011/12/23

フィリップ・ガイス氏のMySpaceページ

TsukubaSQ出演のアンサンブル&管楽合奏の演奏会、明日です!詳細はこちらから。

----------

フェスティバル依頼、ネット上に転がっているガイス氏の録音・映像を観ている。その音楽性たるや、とにかく一筋縄では捉え切れないものであり、完全なるクラシックからコンテンポラリー、民族音楽、電子音楽…クロスオーヴァーという言葉がここまで当てはまるサックス奏者もなかなかいないだろう。

手っ取り早くその音楽性の幅広さを知るために、ガイス氏のMySpaceページが適切だと思った。いくつかの録音が公開されているのだが、ついひとつひとつに聴き入ってしまう。個人的な興味としては、やはりクリスチャン・ロバ「バラフォン」のアレンジ作品。これも、Karlaxを利用しているのだろうか。

http://www.myspace.com/geissphilippe/

2011/12/21

第3回サクソフォン交流会に向けて

TsukubaSQ出演のアンサンブル&管楽合奏の演奏会、明後日に迫っている!詳細はこちらから。

----------

すでに書いたような気もするが、第3回サクソフォン交流会に向けて動き出している。すでにアドバイザーの先生も決まり、年明けくらいにはアナウンス可能な状態となっている。続報をお待ちいただきたい。

2011/12/20

演奏会のご案内:アンサンブルひだまりウィンターコンサート@プラザノース

今週金曜日の本番のご案内。Tsukuba Saxophone Quartetとしては、前半のアンサンブルステージで、吉松隆「Atom Hearts Club Quartet」と伊藤康英「琉球幻想曲」を演奏する。後半は、管楽アンサンブルのステージのサクソフォン・セクションを担当…なのだが、なんとサックスには中島諒さんがいたりと、なんだか妙にハイレベルなメンバーに囲まれている。

前半には、小倉大志くんと中島くんのプーランクも聴ける(実はこれがけっこう楽しみだったり)。

【アンサンブルひだまり・ウィンターコンサート】
日時:2011年12月23日(金)19:00開演
会場:さいたま市プラザノース
料金:入場無料
プログラム:
~アンサンブルステージ~
F.プーランク - ソナタ
吉松隆 - アトム・ハーツ・クラブ・カルテット
伊藤康英 - 琉球幻想曲
~管楽アンサンブルステージ~
M.ジアッチーノ - Mr.インクレディブル
葉加瀬太郎 - 情熱大陸
オムニバス - Xmasメドレー
L.アンダーソン - そり滑り
菅野よう子 - Tank!

皆様のお越しをお待ちしています。

2011/12/19

サクソフォーン・フェスティバル2011二日目(その2)

サクソフォーン・フェスティバルの感想、2回に分けて書くつもりだったのだが、まとめて書いている時間が取れないので3回に分けようと思う。

----------

フェスティバルにおけるサクソフォンとエレクトロニクスの企画というと、私にとってはやはり2007年だ。JacobTVの「Garden of Love」「Pitch Black」、P.ジョドロフスキ「混合(Mixtion)」、C.ロバ「Stan」、酒井健治「波と記憶の間に SideA」が演奏され、特に井上麻子さんによる「Mixtion」は記憶に残る名演だったことを思い出す。そして2011年、言葉に落とし込んだときのコンセプト「サックスとエレクトロニクス」は共通だが、中身としては全く違ったものであった。

曲目リストはプログラム冊子に挟まっていたようなのだが、挟まれていることをまったく気づかず、先が見えない状態で聴き続けることになった。これは、ある意味良い経験だったかもしれない。

ステージ上には2本のマイク、MacBookとミキサー(?)、そして得体の知れない"Karlax"なる黒い物体が。最初の曲は、ガイス氏の独奏で「Electro kit」。無伴奏のサクソフォンから生み出される音や効果音にリアルタイム加工やループ処理を行い、美しい音世界を展開していた。MacBook上で動いていたのは、Max/MSPだったのか?

そのままシュトックハウゼン「誘拐」へと突入。演奏が終わるまで曲目などまったくわからず聴いていたのだが、よもやシュトックハウゼン作品の中から「誘拐」が演奏されるとは思わず、ついつい興奮してしまった。2008年には、同じくフェスティバルの場で白井奈緒美さんが大変見事な演奏を披露し、感銘を受けた覚えがある。ヨナタン氏の演奏はもちろん暗譜で、あきれるほどに難しいフレーズをステージ上を飛び回りながら吹きこなしたかと思えば、後半では客席をゆったりと練り歩きながらやはりここでも音をばらまいていた。せっかくなので、狼の遠吠えとともに月を昇らせてほしかったですな(白井さんのパフォーマンスを観た方は覚えていることだろう)。

お次はなんと、ガイス氏バリトンに持ち替えて超ファンキーでクールな曲!JacobTVの曲っぽいなー、と思ったら、やはりJacobTVの曲だった(^^;これは…バリトンサックス持っていたら、ぜひやってみたい!これまでJacobTVのバリトンサックス作品というと「Believer」というゆったりな曲しかしらなかったのだが、まさに対極にある作品だ。「Grab It!」のようなパワーを持つコンサート・ピースだと思う。気になる方は、こちらから一部を聴くことができる。

ここからは、ヨナタン氏とガイス氏のデュエット。ヨナタン氏はアルト・サクソフォンを奏で、ガイス氏はKarlaxを持ち出してきた。「Kosso Kosso」という作品で、ヨナタン氏が奏でるエスニックなフレーズに乗せて、ガイス氏がKarlaxを振り回す。打楽器のような音が出たり、動物の鳴き声のような音が出たり、またサックスの音にエフェクトがかかったり。出てくる音自体は真新しいものはあまりないと思うのだが、そのパフォーマンスからは、確かに新世代の楽器…という印象を受ける。これは観た人にしかわからないだろう。

お次は、なんとクリスチャン・ロバの「ジャングル」に、やはりKarlaxでリアルタイム・エフェクトをかけてしまうという「Jungle morphing」なるパフォーマンス。これがまた驚くほど効果的で、「ジャングル」の原曲の素晴らしさを残しつつ、エフェクトも効果的に仕上がっていて、ここでしか聴けない一期一会の「ジャングル」を堪能した。ヨナタン氏自身の演奏もなかなかにぶっ飛んだもので、それにKarlaxを操るガイス氏の姿が妙な投影となって、、、なんだかステージ上だけ異次元。

実質的なアンコールとして演奏されたのは、「Remembering B.Franklin」というアルトサックス二重奏とエフェクトのための作品。スラップ・タンギングを存分に含むヨナタン氏の超絶リフの上で、あなた実はジャズが本職でしょう!というような強烈なアドリブを繰り広げるガイス氏。いやあ、びっくりした。クロスオーヴァーも、このレベルまで行くときっと文句言える人などいないでしょう、という感じ。

いやー、楽しかったなあ。またぜひライヴで聴いてみたい!

♪21世紀のサクソフォーンとエレクトロニクス/フィリップ・ガイス&ヨナタン・ラウティオラ
P.ガイス - Electro kit (P.ガイス, asax&electro)
K.シュトックハウゼン - Abduction (J.ラウティオラ, ssax)
JacobTV - Pimpin (P.ガイス, bsax)
P.ガイス - Kosso Kosso (J.ラウティオラ, asax; P.ガイス, karlax)
C.ロバ/P.ガイス - Jungle Morphing (J.ラウティオラ, asax; P.ガイス, karlax)
P.ガイス - Remember B.Franklin (J.ラウティオラ, asax; P.ガイス, asax&karlax)

2011/12/18

埼玉大学吹奏楽部第47回定期演奏会

【埼玉大学吹奏楽部第47回定期演奏会】
出演:埼玉大学吹奏楽部、山本敬明、船越孝太(以上cond.)
日時:2011年12月18日(日曜) 14:00開演
会場:埼玉会館
プログラム:
J.ヴァン=デル=ロースト - フラッシング・ウィンズ
R.W.スミス - 海の男達の歌
渡口公康 - 南風のマーチ
S.プロコフィエフ - 「ロメオとジュリエット」より
A.リード - エル・カミーノ・レアル
伊藤康英 - 琉球幻想曲
M.アーノルド/小峰章裕 - 「スウィーニー・トッド」セレクション
B.ピクール - 交響曲第0番
~アンコール~
J.スウェアリンジェン - ロマネスク
A.リード - 第1組曲より"ギャロップ"

某お知り合いが所属しているということで聴きに伺った。そういえば去年も来たのだが、同じ会場・同じ時間帯で、何となくいろいろ思い出すことがある。ある団体を毎年聴くというようなことは、最近ほとんどやらなくなってしまったが、定期的に伺うことで分かってくることや期待することなど、単発とはまた違った楽しみがあるというものだ。1000人規模の巨大なホールだが、見た目9割5分超えの大盛況。二階席のできるだけ前のほうに席を構えた。

「フラッシング・ウィンズ」から、小気味よいリズムと見事な響きに聴き入ってしまった。私自身も何度も演奏した/聴いた曲であるが、こういうスタンダード作品をきっちりまとめられるあたりが、ベースとなる力の高さを示しているのだろう。指揮者によるところも大きそうだ。とても明解な棒さばきで、大編成のバンドをリードしていた。「海の男たちの歌」でもその傾向は同じであり、良い意味での"予定調和的な"音楽は、非常に好感が持てるものだ。中間部のゆったりとした部分でのソロの掛け合いなど、なかなか感動的ですらあった。

続いて演奏されたのは、今年のコンクールで取り上げたという2曲。…そういえば夏に県大会だか支部大会だかを聴きに行ったぞ(笑)。今日の演奏は、やはりコンクールメンバーでの演奏だったのだろうか。常任指揮者の小峰氏の指揮で、安定感に加えてダイナミックな要素もプラスされた音楽を楽しんだ。コンクールの曲を定期演奏会に乗せるとき、いろいろなシチュエーションがあるとは思うのだが、どのくらい追加練習を重ねるのだろうか。

「エル・カミーノ・レアル」「琉球幻想曲」「スウィーニー・トッド」の3曲は、小峰章裕氏の埼玉大学吹奏楽部常任指揮者就任10周年を記念してのステージという扱いであった。昨年も聴いてびっくりした「アルメニアン・ダンス」の演奏を思い起こさせる、聴衆を興奮のるつぼへと誘う魅せ方や全体構成などは小峰氏の面目躍如といった感じ。「琉球幻想曲」は、実質ピアノ協奏曲的なスタイルの作品だった(ピアノは部員の方が担当)。ちょうどいまサクソフォン四重奏版に取り組んでいるところだったので、その響きや構成の違いなど、興味深く聴くことができた。

「スウィーニー・トッド」の前に小峰氏のあいさつ。なんとここで、10周年を期に同部の常任指揮を離れることが伝えられた。埼玉大学吹奏楽部といえば小峰氏、というイメージがあったので、唐突な発表にかなり意外だったし、何があったのかといろいろ考えを巡らせてしまった。続いて演奏された「スウィーニー・トッド」は、小峰氏のまさに十八番。アーノルド氏に絶賛されたという自身のアレンジで、隅々までを知り尽くしたタクトは、さすがに説得力のあるものだった。

メインとなるピクールの「交響曲第0番」。この不思議なタイトルは、不死鳥伝説を題材にしたことに由来するもので、死→蘇生を繰り返す不死鳥のライフサイクルの環(○)を連想させる0(ZERO)が与えられたことによるものだそうだ。とにかく演奏者にとっては至難な作品で、現代的なリズム処理など大変そうな場所も散見されたが、長大な楽曲をきちんと作品として聴かせられていたことに感心。楽曲中の各ソロも、名演揃いだったと思う。

アンコールでは(これがホントの最後ということで)小峰氏が再びタクトを取り、スウェアリンジェン「ロマネスク」とリード「第1組曲」の「"たぶん世界最高速の"ギャロップ」。大盛り上がりの中、幕となった。

サクソフォーン・フェスティバル2011二日目(その1)

やっぱり年末はフェスティバルですね!仕事の都合で一日目は伺えず、二日目のみ。一日目も、なかなか充実した催しだったようで、聴けなかったのが残念だ。二日目は、小田急線を使おうとしたところダイヤが乱れるという出鼻のくじかれっぷり(?)に驚きつつ、なんとかほとんどの部分を聴くことができた。

自分たちの演奏はとりあえず置いておいて、聴いた催しの感想をば。

----------

♪音大生によるサクソフォーン・アンサンブル/東京音楽大学
D.ヴィレーン/中村ちひろ - 弦楽のためのセレナーデ

以前国立音楽大学の演奏会で聴いたことがある。第4楽章が「ポケットの中にはビスケットがひとつ♪」のメロディが現れるということもあって、良く覚えていた。だれの選曲かはわからないが、なかなか面白いアプローチかと思う。ちなみに、この演奏の時にホールに到着して聴き始めたのだが、演奏者が出てきたとき「若っ!」と思ってしまった…(苦笑)。楽曲のせいもあるが、立体感のある音づくりで、面白く聴けた。テナー、バリトンパートともなると、やはり常日頃から吹いているというわけでもないのだろうか、弱音部分でコントロールの難しさが散見された。

♪音大生によるサクソフォーン・アンサンブル/尚美ミュージックカレッジ専門学校
L.E.ラーション/新実信夫 - 小セレナード

スウェーデンの作品が続く。有名な「サクソフォン協奏曲」よりも、さらにさかのぼる時期に作曲された作品だそうだ。冒頭の部分を聴くだけで、モーツァルトなどの古典的音楽に大きな影響を受けていることがわかる…のだが、曲が進むにつれて思ったよりも多面的な要素が含まれている作品だということに気づいた。原博巳さんの指揮は初めて見たが、オーケストラからダイナミックな響きを引き出しているあたり、なんとなく佐々木雄二氏の指揮を思い出した。オーケストラは、奏法がかなり洗練されている印象を受けた。

♪音大生によるサクソフォーン・アンサンブル/上野学園大学
E.H.グリーグ/島田和音 - 組曲「ホルベアの時代から」

上野学園大学にサクソフォン科が新設されたのが4年前、そこから一回りして、4つの学年が埋まったのが今年とのこと。来年早くには、サクソフォン科での演奏会も開くということで、めでたいことだ。指揮はなんと松原さん…あまり松原さんがサクソフォンオーケストラの指揮を振っているところを想像することができない(笑)。人数が17人とかなり少ない割には、各個人の美しい音色とMAX音量方向へのダイナミクスレンジの広さに驚いた。弱音は、やはり少し厳しい部分があるかなー、などとも思った。サクソフォンオーケストラの一般的な弱点ではあるが。

♪音大生によるサクソフォーン・アンサンブル/東京芸術大学
E.H.グリーグ/山下祐加 - 「ペールギュント」第一組曲より

近年の東京芸大サクソフォン科のレベルの上がりっぷりには驚かされるばかりだが、今日も名前のリストを見れば知った名前があちこちに。サクソフォンの基本的な奏法の弱点に関しては完全にクリアされており、有名な「朝」のメロディと和音の中からはノルウェーのまさに夜明けの情景が思い浮かび(行ったことないけど)、「魔王の城」からはおどろおどろしい城の情景が思い浮かび(行ったことないけど)と、音楽的な部分が見事に聴こえてきた。

♪管打楽器コンクール入賞者披露演奏/第3位:角口圭都
T.エスケシュ - テネブレの歌

フランスのサクソフォン奏者、ニコラ・プロスト氏のためにかかれたヴィルトゥオーゾ的作品で、ソプラノのために書かれた現代作品としては再演回数も多い。ネオ・ロマンティック的な美的感覚と、宗教的なテーマに彩られたあたり、ともすればバッハの作品でも聴いているような気分になる。至難な作品だが、角口さんは構成感を保ちながら、かつピアノとの緻密なアンサンブルでもってこの曲を吹きこなしてしまう。多くのアルティシモ音域を含む、まるでインプロヴィゼイションのようなフレーズをスラスラと吹きこなしており驚いた。エスケシュ⇔バロックというつながりで、角口さんの古典的作品の演奏も聴いてみたくなった。モーツァルトの器楽のためのソナタとか、けっこう似合うんじゃないかなー。

♪管打楽器コンクール入賞者披露演奏/第2位:小澤瑠衣
長生淳 - 天国の月

恥ずかしながら小澤さんの名前は管打コンの入賞まで存じ上げなかったのだが、倍音をたっぷりと含んだ輝かしい音色と、各難所へクサビを打ち込みながらぶったぎる感性は、あまり女性の奏者では聴いたことがない(男性だから、女性だから、という分け方はあまり普段考えないのだが)。ちょっと方向性は違うが、安井寛絵さんの演奏を思い出した。しかし、若い方々はなんとリズム処理が巧いことか。ポップな要素も含む長生作品を、ひとつの作品としてきっちりまとめていた。

♪管打楽器コンクール入賞者披露演奏/第1位:上野耕平
E.グレグソン - サクソフォン協奏曲

管打コン・サクソフォン部門での一位、そして特別演奏会での大賞受賞が記憶に新しい上野氏だが、ようやくライヴで聴くことができた。音色とか、テクニックとか、フレージングとか、ステージマナーとか、そういった言葉に表すことのできる要素を超越したところにある演奏だった。やっぱり、須川さんのベクトルに似通っていますね。技巧的と呼ぶにはややはばかられるグレグソンを、あのような説得力でもってさばいてしまうのかという驚きがある。特にアルトを繰る姿には、感動すら覚えた。

続きはまた今度。

2011/12/16

今日・明日はフェス

仕事が長引いてしまい、一日目となる今日は伺えなかった。

明日は頑張って朝から伺うつもり。後から全てレポートするのは大変なので、LifeTouch Note持ち込もうかな。

2011/12/15

サキソフォックス楽譜ダウンロード販売

某O氏に教えてもらって知ったのだが、サキソフォックスの楽譜のラインナップのうち、いくつかはダウンロード購入できるようだ。アット・エリーゼという楽譜ダウンロード配信の大手から購入可能で、もちろん、版元のスーパーキッズレコード公認である。

ここのリンクからどうぞ。
http://www.at-elise.com/elise/Services.SvSession?method=GakufuSearch&F_TEMPLATE=search_ret.htx&F_ARTIST=%A5%B5%A5%AD%A5%BD%A5%D5%A5%A9%A5%C3%A5%AF%A5%B9&F_TITLE=&F_ORDER=0&F_OFFSET=1&F_LIMIT=20

売り譜との違いで目につくのは、やはり価格の安さであろう。420円という価格は、売り譜の1/3~1/5くらいである。まとめて買うということで言えば、かなりお得な感じがある。ラインナップは限られているが、お試しで購入して、次のステップで他の楽譜に手を伸ばしていく、という流れを狙っているのだろう。提供側にとっても消費側にとっても、良いことであると思う。

ハードコピーの楽譜にはあの可愛らしいクリアケースがついてくるし、常に手元に置いて練習の時にさっと出せる便利さは何物にも変えられない。ダウンロード販売によって、ハードコピーの価値が下がるということは全くないと思う。

2011/12/14

演奏会ご案内:塙美里さんリサイタル

今日のヨナタン・ラウティオラ&フィリップ・ガイスのリサイタル、伺えなかった…(泣)。まあ、フェスを楽しみにしておきましょう。

----------

【塙美里サクソフォンリサイタル vol.2】
出演:塙美里(sax)、酒井有彩(pf)
日時:2012年1月13日 19:00開演
会場:仙川アヴェニューホール
料金:全席自由前売り2500円(当日500円増)
プログラム:
I.ストラヴィンスキー - イタリア組曲より
D.トリフォノフ - 舟歌、タンゴ
M.グリンカ - 悲愴的三重奏曲
M.スコリック - スペイン舞曲 他
問い合わせ:
misatosax@hotmail.co.jp
http://miimiisax.jimdo.com/

塙美里さんからリサイタルのご案内を頂いた。以前のリサイタルが2009年、当時はまだ演奏スタイルやプログラミングなどジャン=イヴ・フルモー氏の影響の只中にあったが、さらに2年の留学生活を経て獲得したまさに"塙さん自身の"音楽を聴けそうだ。これは、ジュリアン・プティ氏との師弟関係によるところも大きいとのこと。いち個人のリサイタルにおいて、プログラムを眺めるのはひとつの楽しみだ。そのプログラムを組むに至るバックグラウンドに考えを巡らせるのである。特に、2010年のショパン国際ピアノコンクール以来塙さんが傾倒しているピアニスト、ダニイル・トリフォノフの自作を含むなど、かなりこだわりの強いプログラミングとなっているあたりが面白い。

チラシ表(クリックして拡大)












チラシ裏(クリックして拡大)

2011/12/13

サクソフォーン・フェスティバル2011:個人的見所

スキャナを購入したのだが、初期不良…泣。全面真っ青になるとは。さて、ここからの販売店とメーカーの対応に注目である。

----------

年末恒例、サクソフォーン・フェスティバルが近づいてきたが、いくつか見所を挙げておきたい。

詳細:http://homepage2.nifty.com/jsajsa/festival2011/festival2011.html

1日目:
●JSAスペシャル・ソロイスツ with 若き青春の吹奏楽!
こういう企画はなかなかいいですね!いかにも"フェスティバル"という趣だ。曲もわかりやすいものばかりだし、演奏者も豪華。客入りも見込める。やはり、フェスティバルの運営には良いバランス感覚が必要である。

2日目:
●音楽大学アンサンブルステージ
今回は朝から入って、ぜんぶ聴こうかなと思っている。選曲が気になるよなー。

●愛好家の祭典
見所…っていうか、出ます。いつものEnsemble PHI。

●野平一郎の世界
これ聴講したい!のだが、愛好家の祭典との出番次第かなあ。ある音楽について語ろうとした時、作曲家本人の口から語られる言葉ほど、説得力に満ちたものはない。

●第28回日本管打楽器コンクール上位入賞者ガラコンサート
管打コンの覇者の演奏を一気に聴ける機会。上野耕平さんのグレグソンも楽しみだが、個人的には角口圭都さんのティエリー・エスケシュ「テネブレの歌」が楽しみだ(大変評価が高かったと伺っている)。

●フィリップ・ガイス&ヨナタン・ラウティオラ
問答無用。「サクソフォンの音をその場で直接加工し、様々な効果を持った音に変換するLive Morphing、またサクソフォンと新しいマルチメディア楽器(コントローラー)《Karlax》との交叉から、エレクトロニクスの世界とサクソフォンの出会う場所をテーマにしたコンサートを展開」ということで、なんかすごそう。Live Morphingくらいであれば、今はMax/MSPランタイムとマイクとMacとスピーカーさえあれば誰でもお手軽にできてしまうが、"Karlax"というのは初耳…楽しみにしておこう。

●JSAスペシャル・ソロイスツ with フェスティバル・サックス・アンサンブル
なんとなく、フェスティバルでも柏原さんのアレンジが演奏されるようになった辺りに感慨深いものがある。ヨナタン氏が演奏するグラズノフ…なかなか聴きものであろう。

ボーンカンプ&野田燎 on YouTube

オランダを代表するサクソフォン奏者の一人、アルノ・ボーンカンプ Arno Bornkamp氏と、サクソフォン奏者にして医学博士の野田燎氏が、オランダのテレビ番組で合同インタビューを受けている動画を発見した。インタビューに続いて野田燎氏のサクソフォン・デュオ作品「紫の淵 Murasaki no Fuchi」の演奏も収められている。

ボーンカンプ氏が若い!なんと、20年前(1991年)のテレビ番組におけるインタビュー映像なのだそうだ。ボーンカンプ氏、意外と控えめ。野田燎氏、よくしゃべる。デュオ演奏の様子は高い集中力にソリッドな音色と、一見の価値アリだ。途中で切れてしまっているのが残念。

インタビュー前半:


インタビュー後半:


「紫の淵」解説と演奏:

2011/12/12

ルディ・ヴィードーフ入門

ルディ・ヴィードーフ Rudy Wiedoeft(ウィードフト)は、マルセル・ミュール以前では間違いなくもっとも偉大なサクソフォン奏者のひとりである。初めて彼の録音を聴いたのは、スティーブン・コットレルの論文つきCD「History of the Saxophone(Clarinet Classics)」に収録された「SAX-O-PHUN」よってであったが、1920年代に録音されたとは到底信じがたい技巧、自作曲の完成度の高さ、密度の高い音色、特殊奏法の数々に驚いたものだ。

メディアへの露出も多く、いくつもの録音が残されていることも幸いであった。CDとして復刻されているものも含め、私たちは今でもたくさんの録音を耳にすることができる。

当時の大衆芸術(ヴォードヴィル)の流れにのって、後にはレコード、ラジオにもその活躍の場を広げるなかで空前絶後の成功を収めたとされる。当時のアメリカでは、本当か嘘か知らないが、皆がヴィードーフに憧れてサクソフォンを手に取ったという。本流のクラシック・サクソフォンとは違うものの、純粋なサクソフォンの技術や音楽性という面で捉えれば間違いなく当時のナンバーワンであろう。そもそもマルセル・ミュールの演奏にしたってポップス界がルーツなのだし、クラシック・サクソフォンとも関わりが深いと思う。実際に、ヴィブラートの捉え方や音色に対する考え方など、共通点も多いと感じる。

ご存じない方は、ぜひその世界を覗いてみよう。当時のアメリカを震わせ、ただひたすらにエンターテイメントに徹した(しかし完成度は異常なほどに高い)サクソフォンの世界が、いやヴィードーフの世界感が、良く現れていると思う。

Saxo-O-Phun


ショート・ムービー。Cメロサックスを吹くルディ。


ディズニー映画「Music Island」。主人公のサックスは、ルディではないかと言われている。アニメーションとしても超一級品!

2011/12/11

CRONACA DI UN AMORE on YouTube

Androidマーケットの10日間日替わりアプリ10円セール、まんまと引っ掛かっている。初めて有料アプリに手を出してしまった…(苦笑)。

----------

マルセル・ミュールは、独奏者や室内楽奏者としてのコンサートホールでの活動、教育者としての活動のみならず、放送用録音や映画音楽の録音にも積極的であった。特に映画音楽に関しては、ジャン・フランセやダリウス・ミヨーとの共同作業により、数多くのフィルムを残したとされている。その多くは情報として埋もれてしまっており、今となってはどこにミュールの演奏があるのかはほとんど判らない…とされているが、ひとつだけ記録されているものがある。

イタリア映画"CRONACA DI UN AMORE"(Michelangelo Antonioni監督)がそれである。1950年制作のモノクロフィルムで、Giovanni Fusco作曲のサウンドトラックに、マルセル・ミュールのサクソフォン、アルマンド・レンツィのピアノで演奏されている。オープニングから強烈だ。ミュール録音のイベールを聴いた時のような、センセーショナルな衝撃を受けることだろう。サクソフォンを知らない人が聴いたら、何の楽器だと思うのかな。

すでに制作から50年たっており、YouTubeからも鑑賞可能。オープニングも凄いが、ぜひ中間部の(いかにも恋愛映画という感じの)甘いフレーズを歌うサクソフォンにも耳を傾けて頂きたい。

2011/12/10

サキソフォン物語(読み始めてみて…)

金曜の夜から、急遽実家に戻ってきている。火曜日には東京に戻る予定…

----------

巷で話題のマイケル・シーゲル著「サキソフォン物語」を読み始めた。まだ1/4ほどしか読んでいないのだが、感じたことについて少しだけ書き出しておきたい。

この本は2010年に青土社より翻訳本として出版され、日本のサクソフォン界で広まったが、原本は2005年出版の「Devil's Horn」と呼ばれる著作である。実は私自身は2007年にカナダのビクトリア大学(学会のために伺った)の書店でこの書籍を購入し、たびたびリファレンスとして利用していた。売値20カナダドル。クラシック・サクソフォンにまつわる面白いエピソードも満載で、内容としては良いのだが、英語は難しいしエッセイ的な書き方になかなか抵抗はあるしで、原本を一気貫通して読むことは結局しなかった。

翻訳本が出たことを知ったときは驚いたものだ。およそ内容としては利益にはならなさそうな、また、図書館に置くにしてはやや雑多な…とにかくカネからは遠い位置にある存在で、出版にどんな経緯があったか、ぜひ知りたいところ。だが、おかけでようやく頭から最後まで、順に読み進めることができるようになった。

サクソフォンの発明者、アドルフ・サックスのエピソードから、軍楽隊での採用、ボードヴィルでのダンスバンド隆盛、1929年の大恐慌とともに崩壊した様子など、1930年以前にサクソフォンがたどった道を(体系的でないにしろ)日本語で述べた文章など、これまでにはなかった。サクソフォン史研究において、これはひとつの事件であり、サクソフォンを学ぶものにとっては知らねばならない内容だ。

エッセイ風の文体は、やはり日本語になっても変わらず、読み進めることは簡単だが情報を頭のなかで並び替えて整理していくのが難しくもある。個人的な嗜好は体系的書籍なのだが、これはこれでありかと。読み終えたとき、どれだけの情報が入手できるかと、いまから楽しみだ。

2011/12/08

ヘムケ氏のCD購入サイト

ヘムケ氏のCDが、公式サイトからPayPalを利用して購入可能になった。

フレデリック・ヘムケ Frederick Hemke氏のCDは、これまで氏の公式サイトから購入しようと思ったら、EnF RecordsにBank Checkを送るしかなく、購入が難しかった。しかし、この度PayPalに対応したことで、クレジットカードさえあればとても簡単に購入できるようになった。歓迎すべき変化である。

現在のラインナップは、「Fascinating Rhythm」「Simple Gifts」「The American Saxophonist」の3つ。ガーシュウィンの作品集で新譜の「Fascinating Rhythm」や、オルガンとの共演盤となる「Simple Gifts」も良いのだが、何と言ってもこれまで手に入れづらかった「The American Saxophonist」をオススメする。このCDは、ヘムケ氏がBrewster Recordsに吹き込んだ名盤との呼び声高き2枚のLP「The American Saxophone」「Music for Tenor Saxophone」の復刻盤なのだ!その内容は、(4年前にヘムケ氏にメール送って確認したのだが)以下のようなもの。

Frederick Hemke, Saxophone
Milton Granger, Piano
Ingolf Dahl: Concerto for Alto Saxophone 18:19
Warren Benson: Aeolian Song 4:50
M. William Karlins: Music for Tenor Saxophone and Piano 10:59
Walter Hartley: Poem for Tenor Saxophone and Piano 3:44
Karel Husa: Concerto for Alto Saxophone 16:30
William Duckworth: A Ballad in Time and Space 3:30
James DiPasquale: Sonata for Tenor Saxophone and Piano 8:43
Warren Benson: Farewell 1:46

私はLPで2枚とも所有しているのだが、まあとにかく強烈な演奏である。この輝かしい音色をいつも安易に「セルマー・サウンド」と形容してしまうのだが、この表現が便利なのだから仕方がない。雲井さんが米国留学を決めたダールの「協奏曲」の見事な録音や、"耽美"という言葉がこれほど似合うものはないであろうベンソンの「エオリアン・ソング」、そしてDiPasqualeを始めとしたネオ・ロマンティック風のテナーサクソフォン作品など、聴きどころを挙げていけばキリがない。3枚ともオススメだが、まずは「The American Saxophonist」以外に考えられないだろう。

2011/12/07

Daniel Kientzy "L'Art du Saxophone"

雲井雅人さんがpercussions-de-tamponのことについて書いてらっしゃったので、久々に引っ張り出して聴いている。(ある意味)世界最強のサクソフォン奏者、ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏によるCD「L'Art du Saxophone(Nova Musica NMCD 5101)」。サクソフォンの見本市、とでも言えるようなCDで、録音当時開発されていなかったソプリロサックスやチューバックスを除く、ソプラニーノからコントラバスサックスまでのサクソフォン7種のデモンストレーションと、譜例付き(厚さ5mmのブックレット!)100の特殊奏法が、ケンジー氏自身の演奏で収録されている。

ケンジー氏はサクソフォンの特殊奏法に関する600ページ近くに及ぶ論文「SAXOLOGIE」を執筆しており、このCDはその論文を音として参照できるようにしたもの。現代奏法を一気に俯瞰するには大変良い内容であり、まず持っていて損はないだろう(ネタにもなりますよ笑)。このCDを入り口として、さらに深い演奏法を学ぶために「SAXOLOGIE」を購入して掘り下げる…という過程を容易に想像することができる。また、サクソフォン奏者のみならず、作曲家にとってもサクソフォンによる音響の可能性を知る、という意味でおすすめできる。

1. G.クルターグ「ブカレストの叔父を訪ねて(snsax, synthesizer)」
2. D.テルッギ「Xatys(ssax, mix)」
3. A.ヴィエルゥ「メタクサクス(asax, electronics)」
4. S.ニクレスク「カントス(tsax, orch)」
5. M.マルベ「ダニエル・ケンジー協奏曲(bsax, orch)」
6. C.ミエロヌ「Aksax(bssax)」
7. L.d.パブロ「Une couleur...(cbssax, orch)」
8. サクソフォンによる100の特殊奏法~譜例を交えながら

演奏のクオリティも尋常ならざるもので、ケンジー氏の気合の入った演奏を堪能することができる。一発目から、ソプラニーノ・サックスとシンセサイザーののオリエンタルな響きが聴こえてきてびっくりするのだが、じつは全て即興でした、とか。オーケストラに乗って吠えるコントラバス・サックスとか(こちらの作品は有名なので、聴いたことがある方も多いだろう)。とにかく息つく暇のない内容だ。

やはり圧巻は特殊奏法のトラックであり、ブックレットの譜例を見ながら追っていけば面白さ倍増。サクソフォンからこんな響きが!という新たな境地にも出会えることだろう。vandorenscores等から購入できる。

2011/12/06

演奏会情報:一気に紹介

ご案内いただいている演奏会を一気に紹介。いつもは整形して紹介文まで書くのだが、今日は余裕が無いのでコピペで(すみません)。

----------

催し物名:「シベリウスから現代まで」P.Geiss と J.Rautiolaの世界
日時:2011年12月14日
会場:洗足学園音楽大学前田ホール
開演時間:19:00
入場料:無料
出演者:
フィリップ・ガイス(ストラスブール音楽院教授)
ヨナタン・ラウティオラ(A・サックスコンクール4位)
内容:
F・ガイス、J・ラウティオラが伝統と開放を結びつけたプログラムで、クラシカルなレパートリーから即興音楽に渡る作品を演奏。若きスーパーソリストの妙技が期待できる。
第1部:J・ラウティオラがJ・シベリウス、B・ブリテン、L・フランチェスコーニ、W・オルブライトなどの作曲家を取り上げ、クラシカルな作品から現代曲までを演奏。
第2部:F・ガイスが彼の作品を中心に、記譜音楽と即興音楽との交叉をテーマとした音楽を紹介する。稀有な柔軟性を持つ音楽家として、ソプラニーノからバスサックスまでを操るパフォーマンスが繰り広げられる。
問い合わせ:
洗足学園音楽大学 冨岡和男(090-3686-5123)

----------

この度、活動しているSaxアンサンブルの演奏会を開催しますので、下記の通りご案内させていただきます。
年末のお忙しい中と思いますがお立ち寄りいただければ幸いです。

♪♪♪ビジネスクラスサキソフォンアンサンブル 2011コンサート♪♪♪
日時:2011年12月17日(土) 開場17:30/開演18:00
会場:かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
交通:京成線「青砥駅」より立石方面へ徒歩5分全席自由・入場無料
交響詩「わが祖国」より「モルダウ」サキソフォン8重奏のための「月夜の祈り」 他
公式HP http://www7b.biglobe.ne.jp/~bcse/

----------

12月23日(金・祝)に渋谷にあるトーキョーワンダーサイトで「TOKYO EXPERIMENTAL FESTIVAL― SOUND,ART & PERFORMANCE vol.6」の一貫としてソロ・リサイタルを開催します。
今回は「アラウンド・ザ・ルチアーノ・ベリオ」というテーマに沿って選曲いたしました。ベリオの「セクエンツァVII」を中心としながら、「アラウンド」というテーマ通りに共演する編成が、電子音、サクソフォン・カルテット、11人の弦楽器と多様に変化します。またその編成は全て会場の「周辺」に配置されます。同じ曲に対する共演者の変遷と音場の変化を楽しんで頂けたらと思います。またベリオの「周辺」の作曲家として師弟関係にあった田中カレンとスティーブ・ライヒの作品も取り上げ、これもオリジナルに対して映像を足したり、6つの多面体スピーカーを用いるなどしております。
師走のお忙しい時期だとは思いますが、ご来場頂けるととても嬉しいです!

チケットは直接佐藤までご連絡頂くか、トーキョーワンダーサイト(performingart11@tokyo-ws.org)の方にご連絡下さい。

以下詳細です。

TOKYO EXPERIMENTAL FESTIVAL― SOUND,ART & PERFORMANCE vol.6
佐藤淳一サクソフォン・リサイタル
「Around the Luciano Berio -ルチアーノ・ベリオの周辺」
12月23日(金・祝) 18時30分 開場 19時開演
チケット2500円
於:トーキョーワンダーサイト渋谷

曲目
・L.ベリオ/セクエンツァVIIb
・田中カレン/ナイト・バード
・L.ベリオ+C.ドゥラングル/アラウンド/セクエンツァVII
・S.ライヒ/ニューヨーク・カウンターポイント
・L.ベリオ/シュマンIV(onセクエンツァVII)

共演
・サクソフォン
加藤里志 鈴木崇弘 大石俊太郎 細川絋希
・音響
田野倉弘向
・映像
衣袋向弘輝
・11人の弦楽アンサンブル

主 催:
公益財団法人東京都歴史文化財団 トーキョーワンダーサイト

http://www.tokyo-ws.org/archive/2011/11/tokyo-experimental-festival-sound-art-performancevol6.shtml

2011/12/05

演奏会情報:清水靖晃&サキソフォネッツ@三鷹

【清水靖晃&サキソフォネッツ~zig-BACH-zag-PENTA~】
出演:清水靖晃、サクソフォン四重奏団STRIKE
日時:2011年12月10日(土)18:00開演
会場:三鷹市芸術文化センター・風のホール
料金:会員3,600円 一般4,000円 学生2,000円(全席指定)
プログラム:
J.S.バッハ - 「無伴奏チェロ組曲」、「フーガの技法」より
清水靖晃 - アルバム「ペンタトニカ」と5音音階作品より
詳細:http://www.yasuaki-shimizu.com/

私と同世代かちょっと上の世代の方の中には、清水靖晃氏の演奏によって「無伴奏チェロ組曲」を初めて知ったという方も多いだろう。あの衝撃的なテナーサックスによるバッハは、大ヒットともに賛否両論を巻き起こしたが、それだけ注目度は高かったと言えよう。CMなどにも使われていたっけな。元々は筋金入りのファンク分野の演奏家とのことだが、やはり有名なのはバッハだったり、ペンタトニカだったり、かな。

今回の演奏会は江川良子さんよりご案内いただいたのだ。清水氏の演奏の魅力は、表面上は単純に捉えることのできる音楽を一旦取り込んで、強烈なオリジナリティの上にマッピングしてしまうというものだろう。そんな清水氏の音世界を存分に楽しむことができる機会となりそうだ。私も伺う予定…やはりステレオスピーカーでは捉え切れない、臨場感("スペース"とも表現される)にこだわる清水氏の真骨頂を聴いてみたい。

今回の演奏会について、清水靖晃氏自身が語ったインタビュー記事を、下記サイトから読むことができる。なんと動画も!
http://mitaka.jpn.org/ticket/1112100/

2011/12/04

Susan Fancher plays Torke(音だけ) on YouTube

マイケル・トーク Michael Torkeのサクソフォン作品といえば、まっさきに「July」が思い浮かぶが、「サクソフォン協奏曲」も名曲として名高い。ミニマル風な曲作りの中に隠された様々な仕掛けが楽しい作品だ。ブログをお読みの皆様は誰の演奏で聴いたことがあるだろうか…おそらく、ジョン・ハールかジェラルド・マクリスタルのCDによって、ではないだろうか。

アメリカの女流サクソフォン奏者、Susan Fancherが同曲をSusquehanna University Wind Ensembleと共演した録音をYouTubeで発見した。さすがにジョン・ハールのハイ・テンションな録音などと比べるとやや分が悪いかもしれないが、曲の構造を丁寧に浮き彫りにしており、これはこれで面白い。

週末練習とTSQ演奏案内

土曜日:
12/17用の、サクソフォーン・フェスティバルでの愛好家ステージ出演のための、EnsembleΦ練習。サクソフォン8重奏に加え、ピアノに高橋宏樹さん、ドラムスに佐々木佳奈さん(本番は齋藤たかしさん)を迎えて、NAOTO/啼鵬「Si-So Dance」と啼鵬「along with you...」のリハーサルを行った。練習はつつがなく(?)進行し、その後は飲み会へ。自分もそこそこ飲んだが、まーみなさんもよく飲むこと(^^;なんかつくばの飲み会みたいな激しさを久々に楽しんだ。

日曜日:
12/23のアンサンブル&管楽アンサンブルのコンサート@大宮のプラザノースのための練習。晴れ渡った空のもと、なんとなく気分良く練習に向かうことができた。ちょっと練習回数も少ないが、なんとか良い演奏になるように精一杯努力していきたい。

…ということでとりあえず速報を。Tsukuba Saxophone Quartetとしては、今年最後の本番になる。吉松隆「アトム・ハーツ・クラブ・カルテット」と、伊藤康英「琉球幻想曲」を演奏する他、管楽アンサンブルのサックスセクションとしても演奏する予定。

日にち:2011年12月23日(金曜・祝)
開演:18:45(仮)
会場:プラザノース・ホール(アクセス

ぜひお越しください。

2011/12/03

【復刻記事】ハバネラSQライヴ盤

ブルーオーロラ・サクソフォン・カルテット(BASQ)の演奏を聴いてこのCDのことを思い出した。2006年の4月の出版であり、ずいぶん前のことなのでブログ記事としても埋もれてしまっていたのだ。ブログというやつは日々の更新には便利だけれど、アーカイヴとしての機能は弱い…。5年以上前ということは、例えばいまの音大生の中にはこのCDの存在を知らない方もいるわけで、紹介の意味で再度記事を掲載する。

私がこれまで手に入れたサクソフォン四重奏のCDのなかでも、まちがいなく3本の指に入るものである。これを聴かずしてサクソフォン四重奏を聴いた気になってはいけない…というのは誇張表現だろうか。例えばクセナキス「XAS」やグラズノフの「四重奏曲」など、alphaレーベルからセッション録音がCDリリースされているが、こちらの録音を聴いてしまうと全然別物だ…もちろんセッション録音のほうが安定度や質といった面では上回るのだが、ダイナミクスやテンションなどはライヴ盤のほうがずっと上である。

理屈抜きにしたサクソフォン四重奏の興奮を味わうことができる。これって、高校生の頃、デザンクロの四重奏曲の第3楽章を初めて聴いた時の興奮に似ているな(笑)。超オススメ盤…だが、現在入手は難しいかもしれない。

----------

ハバネラ・サクソフォン四重奏団のCD「The 5th Osaka International Chamber Music Competition & Festa 2005(Yomiuri Telecast Corporation YC-0515)」。タイトルどおり、昨年5月に行われた第5回大阪国際室内楽コンクールの実況録音盤で、読売放送が限定盤として作成したディスク。一次予選からデザンクロ「四重奏曲」、ドナトーニ「ラッシュ」、二次予選から野平一郎「四重奏曲」、そして本選からグラズノフ「四重奏曲」、クセナキス「XAS」を収録。

何回か聴いてみたが、うーん圧倒的。ハバネラは今までセッションレコーディングのCDでしか音を聴いたことがなくて、丁寧な解釈をして丹念に音楽を運ぶような印象が強かったのだが、この録音では異常なテンションの高さのせいかまるで別の団体のように聴こえる。しかし実際に聴き終えると、これぞハバネラサウンドであるという強いアイデンティティを感じ取ることができた。現代にあって演奏にアイデンティティを感じさせる奏者ってほとんどいないのだから、やっぱりすごい四重奏団なのだなあ。

一次予選のデザンクロからまったく手抜きなしの全力勝負。しかし気負いを感じることはなく、純粋に良い音楽を奏でようとする意思が秘められているようにも感じる。音程が良いとかバランスが良いとかは当たり前で、決められた枠の中で各々が主張をしながらアンサンブルが動的に組み上がっていく。三楽章なんか音を間違えてるしタテだってあまり合ってないのに、ものすごくうまく聴こえる…なんだこりゃ。しかもめちゃくちゃ速い(笑)。

ドナトーニや野平はいわゆる「現代作品」。ドナトーニの冒頭、四本のサックスが極小音量でそれぞれのモチーフを奏でるところなんかも、ありえないほどの安定性。対して野平作品ではCDの音が割れるほど鳴らす、異常なまでのダイナミクス。一本一本の音色はぜんぜん違うのに、ユニゾンではオルガンでも聴いているようなパワーだ、うーむ…。

最後に向かって華麗なaccel.を魅せるグラズノフの終楽章、今まで聴いたどんな演奏よりもカッコイイし、加えて品格を湛えている。爆速のエンディングを聴き終えたあとに残る高揚感が心地よい。ロマン派にありがちなトリルや装飾音を多用したフレーズも、ここまで自然に…まるで四人の他愛のないおしゃべりを聞いているようだ。グラズノフに続いて最後を飾るクセナキス「XAS」はもう凄すぎて何がなにやら。現代作品ではあるものの、音楽は常に淀みなく流れていく。

----------

2011/12/02

ブルーオーロラSQリサイタル@浜離宮朝日ホール

仕事を切り上げて、浜離宮朝日ホールへ。かなり走って大変だったが職場から45分で到着することができた。

【ブルーオーロラサクソフォンカルテット CDリリース記念コンサート東京公演】
出演:ブルーオーロラサクソフォンカルテット(平野公崇、田中拓也、西本淳、大石将紀)
日時:2011年12月1日(木)19:00開演
会場:浜離宮朝日ホール
プログラム:
J.S.バッハ/平野公崇 - コラール・プレリュードBMW659「来たれ、異教徒の救い主よ」
W.A.モーツァルト/平野公崇 - オーボエ四重奏曲へ長調K.370より第1楽章
P.I.チャイコフスキー/平野公崇「四季」作品37bisより10月
M.ラヴェル/久保田麻里 - 「クープランの墓」よりプレリュード
A.K.グラズノフ - サクソフォン四重奏曲変ロ長調作品109
武満徹 - 一柳慧のためのブルー・オーロラ
B.バルトーク/平野公崇 - 「ミクロコスモス」第6巻「ブルガリアのリズムによる6つの舞曲」から
平野公崇 - ララバイ(新作初演)
~アンコール~
J.S.バッハ/平野公崇 - 「心と口と行いと生活で」BWV147よりイエスこそわが喜び(主よ人の望みの喜びよ)
J.S.バッハ/平野公崇 - 「平均律クラヴィーア曲集第1巻第2曲」よりプレリュード

やはり、という感じの充実した催しだった。ブルーオーロラSQは、というか平野さんは、いったん音楽を自分のなかに取り込み、常に「平野公崇の音楽」として聴衆に提示するスタイルであると思う。平野さんの演奏を聴いたのは久々であったが、無伴奏にしろピアノデュオにしろサクソフォン四重奏にしろ、その方向性は変わらないのだなと思った。

冒頭のバッハは、彩/綾の絡みが印象的であったが、想像よりも落ち着いた解釈。モーツァルトは、これはまたよい意味で裏切られた。弦楽四重奏を意識したSSABという編成に、繊細な(実に良くコントロールされた)音色、そして丁々発止のテンション。mpでのスーパーライヴ、という感じであった。チャイコフスキーも、モーツァルトと同様のスタイルであったが、古典的なモーツァルト作品と比べてさらにサクソフォンならではの特徴を生かした感覚で演奏されていた。

ラヴェルの「クープランの墓」を四重奏で演奏する、というアイデアはかの昔からスタンダードであるが、さすがこのグループならではの演奏に仕上がっていた。アレンジャーが、なんとあの久保田麻里氏ではないですか!とか。この人の四重奏のアレンジは、私がこれまで吹いたアレンジの中でも最高クラスのものであると思う。いまいち経歴がわからないのだが、どういう方なのだろうか。グラズノフは、ぜひライヴで聴いてみたかった演奏だ。ある意味想定通りのテンションだが、やはり目の当たりにしてしまうと引きこまれてしまう。第1楽章終わりで思わず拍手が起こってしまうのも、納得だろう。第3楽章など、ハバネラ四重奏団のライヴ盤を思い出した。CDで聴いても、決してわからない部分だ…。

休憩時間。ちょっといつものサックスの演奏会とは少しだけ客層が違うような気もする。坂田明氏を見つけて、一人悦に入ってしまった(笑)。

さらにパワーアップしての後半は、一柳慧作曲の…じゃなかった、武満徹が作曲した「一柳慧」の名前を冠した作品から。いやほんと、一柳慧の作品だと言われても信じてしまうかもしれない。「室内楽の歩み」というCDシリーズに平野氏が参加して一柳作品を演奏していたのを思い出した。

バルトークでは、複雑な変拍子をまるでポップスのようなテンションで駆け抜けてみせ、新作「ララバイ」は即興のオンパレード。アンコールだって「主よ人の望みの喜びよ」のExtended Version(?)に、バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第2曲「プレリュード」の四重奏版と、最後に向けて、まさに「平野公崇サクソフォンリサイタル」とでも表したくなるような感じだったな。しかし、それを支えきる他の3人もすごかった。大石将紀氏は、その卓越した技術・音楽性に加えて、保坂一平氏らとともにimprovisationとactを組み合わせたようなステージをいくつもこなしているし、内声2人だって一筋縄ではいかないほどのものだ。たぶん、他のメンバーではこういった演奏にはならないのだと思う。

日頃からどっぷりとサクソフォンに浸かっていると、どんな演奏を聴いたとしても99%の興奮する部分と1%の醒めて観測する部分が同居するのだが、これが例えばサクソフォンについて「アンコン」くらいしか知らないような人が聴いたら、もの凄いショックを受けるのではないか。そういった意味でも、ぜひ今後ともさらに活動の幅を広げて欲しいものだ、とも思った。

CDも買ったので、そのうちレビューします。

----------

終演後は、チケットを世話になった大学時代の友人(というか盟友)たちとともに、東銀座駅近くの山形田にて一杯。東京で蕎麦といったらこの店なのだが…今日も変わらず美味しかった。熱燗とともに味わう板そばが絶品である。