2011/09/09

Trouvère Quartet "My Favorite Things"

本日のトルヴェール・クヮルテット、伺えなかった…(´・ω・)

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まだ東芝EMIがクラシック音楽事業に力を入れていた頃のアルバムより。トルヴェールのCDと言えば、衝撃的なデビューアルバム「The Trouvère Quartet」であるが、演奏内容以上に衝撃だったのは、あれほど素晴らしいアルバムが2度、レーベル都合の廃盤という憂き目に合っていることである。

その点、東芝EMIのアルバムは比較的良く流通したため、所持している方も多いことだろう。一番好きなのは「A Homage to Marcel Mule(TOCE-55284)」なのだが、それと同じくらい好きなのがこの「My Favorite Things(TOCT-8606)」である。この2枚があれば、トルヴェール・クヮルテットがカヴァーする範囲のほとんどを張ることができるのでは?コテコテのクラシック⇔プログレッシブロック系、秩父ミューズパーク音楽堂⇔スタジオ録音、オトナの演奏⇔ノリノリ、という感じで、同じアーティストでここまで相反するアルバムができるというのも、トルヴェールならではだろう。

まず、楽曲を提供したアーティストがものすごい。プロデューサーだった磯田健一郎氏パワーなのだろうが、それにしても一筋縄ではいかない布陣である。

R.ロジャース/真島俊夫 - My Favorite Things
菅野よう子 - Strange Grass Hopper(この頃はまだ"菅野洋子"とクレジットされている)
S.ロリンズ/真島俊夫 - St.Thomas
A.ピアソラ/啼鵬 - 勝利
A.ピアソラ/啼鵬 - ブエノスアイレスの夏
A.L.ウェバー/宮川彬良 - 私が愛したロイド・ウェバー
J.アンダーソン/佐橋俊彦 - Roundabout
本多俊之 - The 7th Wonder
佐橋俊彦 - Bigmuff
長生淳 - Ultra Violet
King Crimson/磯田健一郎 - 21st Century Schizoid Man

真島俊夫、菅野よう子、啼鵬、宮川彬良、佐橋俊彦、本多俊之、長生淳…てなもんで。1994年当時はどのアーティストもまだ売り出しのスタート時期だったのだろうが、今からは考えられないほど豪華なメンツである。プロデューサー氏の先見性というか、大きなパワーを感じる。

そして名前だけでなく、実際の作品・アレンジも秀逸なものばかり。「My Favorite Things」は、サクソフォン用となるとこれ以上のアレンジを聴いたことがない。ピアソラは相変わらずサクソフォンとピアノを上手に絡めてくるし、宮川彬良氏の手にかかったロイド・ウェバー・メドレーなんて、想像するだけでワクワクしてしまうではないか?イエスやキング・クリムゾンの名曲をサクソフォン用にアレンジしていしまうという発想も、夢にみることはあるかもしれないのだが、こうして高次元で結実してしまった。

オリジナル作品もアツイ。菅野洋子名義で書かれた「Strange Grass Hopper」も、こんなにヘンテコな8ビートの曲があっただろうか。本多俊之の「The 7th Wonder」…7という数字はやや特殊な位置を占める。7thはもちろん、コードを構成する7thノートのことを指すはずだが、それ以外にも、神秘的な数字である6(Sixth Sense & Happiness)を超越した7という数字が、"Wonder"だと言っているのだ(?)。佐橋俊彦の「Bigmuff」は、これは解説にも書いてあるとおり、ブリティッシュ・プログレッシヴ・ロックからの濃い影響を受けていることがわかるし(冒頭のリフ…!)、長生淳も本領発揮。

この強烈な楽曲たちを難なくこなせてしまう面々こそ、トルヴェール・クヮルテットなのである。時に熱く、時に鼻歌交じりに、時に大人っぽく…しかし根底に流れているのは、楽曲に対する深い共感と遊び心ではないかな、と思うのだ。聴いていて先の展開が読めないアルバムは、他になかなかないだろう。

ちなみに私がこのアルバムを購入したのは、高校生の頃だった。このアルバムを入手した後に、興味の対象となる音楽ジャンルの裾野を広げようとしなかった(原曲を聴くためにCD集めに走ることがなかった)のは、今思うと不思議だ。当時はまだインターネットもそれほど発達しておらず、手に入れられる情報が少なかったからだろうか。あとは、やはりこの演奏で満足しきってしまったというところが大きいだろう。プログレッシブ・ロックの方面に興味が出てくるのは、Sax 4th Avenueの「Delusions de Grandeur」を聴いたあとのことである。

このCD、いまどこで手に入るのだろうか。

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