2011/07/15

Jérôme Laran Saxophone Recital -FANTASIA-

昨日は、おなじみジェローム・ラランさんの演奏会だった。仕事がおして、大遅刻!なんとか演奏には間に合ったものの、お目当てだったモーリス「プロヴァンスの風景」や吉松隆「ファジイバード・ソナタ」は聴けず…。大変残念だった。

【Jérôme Laran Saxophone Recital -FANTASIA-】
出演:ジェローム・ララン、ヴィーヴ!SQ(以上sax)、パトリック・ジグマノフスキー(pf)
日時:2011年7月14日(木曜)19:00開演
会場:東京オペラシティ・リサイタルホール
プログラム:
G.ガーシュウィン - ガーシュウィン・ファンタジー
P.モーリス - プロヴァンスの風景
C.ガルデル - 想いの届く日
F.ボルヌ - カルメンの主題による幻想曲
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ
C.コリア/本多俊之 - スペイン(SSATB)
A.ピアソラ/浅利真 - 孤独(SAATB,pf)
A.ピアソラ/浅利真 - アディオス・ノニーノ(S|A,SATB,pf)
~アンコール~
A.ピアソラ - オブリヴィオン
成田為三 - 浜辺の歌

大泉学園ゆめりあホールで、初めてラランさんの演奏会を聴いたのが2006年。あれから5年も経つのか…(ブログの記事はこちら)。今思えば、21世紀になってから開かれたサクソフォンのリサイタルとしては躊躇なく「伝説的」と言ってしまえるほどの内容だと思う。あれを聴けたのは、実に幸いなことだった。その後も来日のたびに、私たちに新鮮な感動を与えてくれる。特に今回は、スタンダードレパートリー揃いということもあって、聴き慣れたプログラムがラランさんの手にかかってどのように料理されるかを楽しみにしていたのだった。

そんなわけで、一番楽しみにしていたのは「ファジイバード・ソナタ」だったのだが…間に合わず(T_T)第3楽章のフリー・インプロヴィゼーションの部分はなんとなく想像がつくとしても、例えば第1楽章冒頭のキメキメの部分を、ラランさんがどのようにさばくのかが、注目していたのだ。後からみなさんに話を伺うと、まるで聴いたことのないような新鮮な感覚で演奏されたようで、うーん、やはりこの耳で聴いてみたかった!

「スペイン」開始のギリギリ30秒前に受付に駆け込んだ。5重奏で、まさか本多俊之+トルヴェールの「スペイン」を持ってくるとは意外だったが、確かにこの編成でのレパートリーは限定的。むしろ、本多俊之パートをラランさんが吹く、というところに驚きと新鮮さを感じた。即興部分は、相変わらずの超絶技巧、ララン節炸裂!かっこ良かったなあ。そういえば、ヴィーヴ!の4人が先行し、全体的に縦の音楽の組み合わせで進むかと思ったら、むしろ横の紋が重視された音楽作り。合わせの中で、ラランさんに影響されたのだろうか。どんなに熱くなろうとも、お洒落。

ピアソラの「孤独」は、まるでドビュッシーの「牧神」でも聴いているかのような不思議な感覚。終始ppの、うつろいゆく音色の中で演奏された。ピアソラ自身の、ゆっくりな曲でも感じる情熱というものは影を潜め、もっと人間の心理の深い部分にある悲しみ…Soledadという言葉をそのまま音楽に落とし込んだような、そんな演奏だった。続く「アディオス・ノニーノ」は、「孤独」のテンションがあるからこそさらに映える。ジグマノフスキー氏の見事な即興を経て繰り出される、サクソフォンパートのハイ・テンションっぷりは、まさにラランさんの面目躍如といったところか。

アンコールは両方ともラランさん&ジグマノフスキー氏のデュオだったのだが、ここで聴いたピアソラの「オブリヴィオン」からは、一生忘れることのできないほどの衝撃を受けた。なんという暗い、暗い「オブリヴィオン」だろうか。真っ暗な闇の中からすすり泣く声が聞こえるような/死の世界からの呼び声を聴くような、鮮烈な「オブリヴィオン」。この1曲聴いただけで、サクソフォンとピアノのデュオ編成に対する考え方を改めなければいけない、と思ったほどだった。いやー、びっくりした。

そういえばラランさん、来年あたりレコーディングも予定しているそうで…。またの来日を楽しみに待ちたい。

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