2011/06/30

ご案内:サックスキャンプつま恋

昨日は、第2回サクソフォン交流会の事務局 with 西尾先生打ち上げ。mckenさんとてらださんがいらっしゃることができなくなってしまったのは残念だったが、楽しかった。場所は、原宿のひっそりした場所にある、まさに隠れ家的飲み屋(ビールが一杯180円からと、衝撃的)。また行ってみたい。

毎年恒例?の"ヤマハサクソフォーンキャンプ2011 in つま恋"が開かれるそうだ。そういえば今までサクソフォンキャンプ、と名のついた催しに参加したことがないな。社会人になってからこのようなサックスキャンプに参加することももちろん大きな楽しみがあると思うのだが、例えば高校生の頃とか、もっと多感な時期にこういった催しに飛び込んでみることは、その人の楽器人生を大きく変えるキッカケになることがあるかもしれない。

地方の中高生が、こういった催しに参加する…という考えも、そもそもあまり浮かばないと思うのだが(自分はそうだった)、実際どうなのだろうか?自分が高校生だった頃とは、情報の拡がり方もずいぶん違うのだから、少しは状況も変わっているのかもしれない。

詳細はこちらから
http://jp.yamaha.com/products/musical-instruments/winds/events/scamp/

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全然関係ないが、Facebookやっている方(特に、写真をたくさんアップロードしている方)へオススメ。感動します→
http://museumofme.intel.com/

2011/06/28

2011年ララン氏リサイタル情報(チラシ掲載)

ジェローム・ララン氏からチラシを送っていただいたので、情報を再掲。

【ジェローム・ララン サクソフォンリサイタル"FANTASIA"】
出演:ジェローム・ララン(sax)、パトリック・ジグマノフスキ(pf)、ヴィーヴSQ
日時:2011年7月14日(木曜) 19:00開演
会場:東京オペラシティ・リサイタルホール
料金:一般4000円、学生3000円(いずれも前売り料金)
プログラム:
G.ガーシュウィン - ガーシュウィン・ファンタジー
P.モーリス - プロヴァンスの風景
C.ガルデル - 思いの届く日
G.ビゼー - カルメンの主題による幻想曲
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ
C.コリア - スペイン
A.ピアソラ - Soledad
A.ピアソラ/浅利真 - アディオス・ノニーノ
問い合わせ:
3key73@gmail.com(CONTINUO JAPAN)

ピアニストはミカエル・エルシェイドから、パトリック・ジグマノフスキに変更となったようだ。FNAPEC国際コンクール、アンリ・ソーゲ国際音楽コンクール等で優勝している実力派で、現在はエコール・ノルマル音楽院教授。

プログラムが出揃ったが、個人的にはとにかく「ファジイ・バード」が楽しみだ!そして、敢えて取り上げる「プロヴァンスの風景」…今では音大生やアマチュアでも吹いてしまう超スタンダード作品だが、ララン氏はどのようにこの曲を料理するのだろうか。というわけで、7月14日はオペラシティへ!おすすめです。

チラシオモテ面:












チラシウラ面:

2011/06/27

Quatuor Morphingの演奏

先日の第8回大阪国際室内楽コンクールの第2部門で優勝したQuatuor Morphingだが、その演奏の一部を彼らのMySpaceページから聴ける。

確かもうちょっと前には、ゴトコフスキーなど全楽章掲載されていたような覚えがあるのだが、現在はグラズノフ、棚田文則、ハイドン、ゴトコフスキーが、それぞれ一楽章ずつアップロードされている(もしやコンクールのライヴ録音か!?)。大阪国際室内楽コンクールは、まさに"世界へ羽ばたく室内楽団"を決めるためのコンクール。Quatuor Morphingは今後ハバネラ四重奏団のような凄い軌跡を歩んでいくだろうし、そうあってほしい。その軌跡のスタート地点の一端を形づくっている演奏となれば、じっくりと腰をすえて堪能したいものだ。

来年あたり?、おそらく全国ツアーがあるだろう。楽しみだなー。CDもリリースされないだろうか。

松下洋さんがアップした動画から…

松下洋さんのブログには、時々ご自身の演奏が紹介されることがあり、楽しみにしている。自分の演奏をアップしているサクソフォン奏者は多いが、松下さんの特徴は何といってもレパートリーがとんでもないこと。先日の演奏会でも、小川卓郎さんとともに"ブラックな"作品を数多く演奏しており、感銘を受けた。

そのなかの演奏から、いくつか。

クリスチャン・ロバ「XYL(Balafon2)」
http://www.youtube.com/watch?v=2bOi_b2fZhY
先日のドルチェ新人演奏会の演奏から。実は「XYL」を聴いたのは初めてだったのだが(お恥ずかしい)、中間部の畳みかけるようなフレーズに驚いた。「Balafon2」の名は、伊達ではない…。

ジャン・ピエール・ブーニョ「四重奏のための小品」
http://www.youtube.com/watch?v=quF9TCeYS5I
松下さんと、洗足学園音楽大学のみなさんの演奏。サクソフォン研究科の定期演奏会で演奏したときのライヴ録音だそうだ。スーパーハイテンションな演奏。ブーニョ(Jean Pierre Beugniot)という名前もほとんど初めて聴いたのだが、デファイエ四重奏団がレパートリーにしていたことで有名なのだそうだ。1978年にデファイエSQが来日した際、ブーニョ、パスカル、ルジェ、ダマーズ、ベルノーという超弩級プログラムを披露したとのこと。

その他、マリリン・シュルード「リニューイング・ザ・ミス」やピート・スウェルツ「クロノス」などもアップロードされている。松下さんのブログや、YouTube等から辿っていただきたい。

2011/06/26

Paris Saxophone Quartetのバッハ作品集

これも、島根県のF様よりお送りいただいたLPの復刻「J.S.Bach Paris Saxophone Quartet(CBS M39514)」。Paris Saxophone Quartetという団体のLPで、バッハ作品のサクソフォンアレンジ作品集である。前回紹介した「Back to Bach」は、ジャズ風のアレンジ…ということだったが、こちらは至極まっとうなクラシックのスタイルで演奏されている。そういえばこのジャケット、eBayかどこかで見たことがあるなあ…。

ちなみにParis Saxophone Quartetといっても、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団由来となるマルセル・ミュール率いるLe quatuor de saxophones de Parisとは無関係の団体(タイトルだけ読んで期待された方はゴメンナサイ)。下記のようなクレジットとなっている。

Daniel Liger, soprano saxophone
Francis Caumont, alto saxophone
Alain Jousset, tenor saxophone
Phillippe Duchesne, baritone saxophone

この団体について、自分のブログを検索しなおしたところ、連載ダニエル・デファイエの生徒たちで取り上げていた(書いた本人もすっかり忘れていたのだった)。ちなみに、1970年の結成である、とのこと。

収録曲目は、下記の通り。

Badinerie BWV1067
Aria BWV1068 (M.Mule)
Sinfonia No.3 BWV789
Prelude & Fugue in G Minor BWV885 (G.Lacour)
Courante BWV1066 (J.M.Londeix)
Fugue in A Minor BWV947
Chorale "Herr gott, nun schleuss den himmel auf" BWV617
Invention No.8 BWV779
Chorale "Wohl mir dass ich jesum habe"
Sinfonia No.11 in G Minor BWV797
Fugue in C Minor
Vivace in C Minor BWV526
Bourree I&II BWV1066 (J.M.Londeix)
"Aus tiefer not schret ich zudir" BWV686 (G.Lacour)
Contrapunctus No.9

ロンデックス、ラクールのアレンジが目を引くだろう。よく知られているとおり、ロンデックスとラクールはl'Ensemble de Saxophones Françaisという四重奏団を結成し活動していた時期がある(→Thunderさんのブログ記事)。F様の推測によれば、これらのアレンジはその四重奏団のために用意されたものではないか、ということ。そして、そのバッハ作品を集めたLPがかつて出版されていたというのだ!ちょっと調べてみたところ、Billaudotのラクールのページにその情報の一端が掲載されている(→こちら)。それによると、 LPL 4041なる型番にてl'Ensemble de Saxophones FrançaisのLPが出ていたようだ。おそらくこのバッハ作品集を聴いて、Paris Saxophone Quartetが同じコンセプトによるLPを作ろうと考えた…ということなのだろう。

と、話が逸れたが、こちらのParis Saxophone Quartetの演奏もなかなかいいです。禁欲的で淡々と進むかと思えば、ときどき、信じられないほど輝かしい響きになるところがあり、驚かされる。サクソフォンでバッハ、というと小品ばかりになってしまうのだが、できれば大きな作品も聴いてみたかったなあ。驚いたのは、「フーガの技法」の第9番が収録されていること。個人的にずっと昔から好きだった曲なので…(ただし、このトラックだけちょいとアンサンブルが甘い、苦笑)。

みずのもりコンサート本番

というわけで、東久留米市にてEnsembleΦでの本番だった。初めて久留米と聞いたときは、「えっ!九州!?」と本気で思ってしまったのだが、Wikipediaを参照するとちゃんと市の名前の由来が書いてあって、納得。昔から久留米、という名前だったのでだな。"…市制施行時、既に福岡県久留米市が存在したため、久留米市に対して東の久留米の意から「東久留米市」とした。"

その東久留米市役所のイベントスペースでの演奏。じぶんたちの演奏中の写真は撮ることができなかったのだが、こんな感じ。ガラス張りの高天井、赤いピアノ(KAWAI)が鎮座し、とてもよく響く。お客さんの入りも上々。

曲目は、NAOTO/啼鵬「for you...(8sax+perc)」と、啼鵬「Sister MARU(8sax+pf+perc)」の2曲。普段のEnsembleΦのメンバーに加え、ピアノに藤光さん、パーカッションにやまーさん(しらこばと音楽団でもおなじみ)をフィーチャーして、とても楽しく演奏することができた。「Sister MARU」の演奏は初めてだったが、かっこいい曲だなあ。

そういえば、自分たちの打ち上げの最中にやっていた、他の団体を聴くことが出来なかったのがちょいと心残り。クレーマ・サクソフォン・カルテットという、国立音楽大学出身のサクソフォン四重奏団が演奏していたようである…。

みずのもりコンサートリハーサル・宣伝

昨日は、福島県のモアレ・サクソフォン・アンサンブル関連の団体、EnsembleΦ(アンサンブル・ファイ)が出演するチャリティ・コンサートのためのリハーサルだった。啼鵬さんの「Sister MARU」と、NAOTO/啼鵬「for you...」の2曲。上中里のスタジオスカウトで、まったりとおしゃべりなど交えつつ13:00から19:00まで行った。昨年の暮れのフェスも諸事情で参加できなかったし、その後も震災などもあって福島方面のメンバーにお会いするのは久々だったが、相変わらずのにぎやかで楽しい感じであった。

今回は、8重奏+ピアノ(藤光直美さん)+パーカッション(やまーさん)という編成。曲はどれも素敵だし、藤光さんのピアノの即興はかっこいいし、やまーさんは相変わらず素晴らしいリズムを刻んでくれるしで(いままで出会ったパーカッション奏者のなかで一番完璧なリズムを持っていると思う…)、楽しい合わせだった。

リハーサル後は、上中里に新しく出来たばかりの飲み屋(おでん屋さん)にて宴会。店内の構造が面白くて…(この面白さは入った人にしかわからないと思う)…店に入った瞬間から、テンション上がりっぱなし。ここはぜひまた行きたいなあ。お酒も料理も美味。

ということで、本日の詳細。ちょっと遠いが、お時間ある方はぜひ。EnsembleΦの出演は、確か13時くらいだったような…?

【みずのもりコンサートVol.51 東日本大震災復興支援チャリティイベント】
日時:2011年6月26日 10:30-16:00
会場:東久留米市役所プラザ 屋内ひろば
料金:500円(東日本大震災復興支援のための義援金として、日本赤十字社へ)
参加団体一覧:こちらから→http://www.sui-sei.com/wplog/?cat=4

2011/06/23

フィル・ウッズ関連楽譜の版の違い

フィル・ウッズ Phil Woodsが手がけたサクソフォン作品はヴィクター・モロスコに献呈された「アルトサクソフォンとピアノのためのソナタ」とニューヨーク・サクソフォン四重奏団に献呈された「3つの即興曲」である。いずれの2作品も非常に完成度が高く、また人気が高いことは周知のとおり。

かつて、Kendor Musicから出版されていた楽譜が、様々なCDなどで聴くことのできる版。Kendor Musicの楽譜については現在絶版となり、Advance Musicへと移籍しているのだが、いずれも改訂されているのだ。いずれも元の楽譜にプラスしてフレーズが付け加えられており、改訂前のイメージでで聴き始めると、驚きだろう。個人的には、改訂前の版のほうがコンパクトにまとまっていて、より良いと思っているのだが…?

ということで、今買うことのできる版は、CD等々で多く聴くことのできる版とは違う、という話だった。楽譜を購入される方はご注意のほど。私は、幸いなことに、両作品ともKendor Musicの版を手元に持っている。改訂前の楽譜、復刻されないかなあ。

Giacinto Scelsi - Yamaon

イタリアの作曲家、ジャチント・シェルシのサクソフォン作品というと、まっさきに思い浮かぶのは「3つの小品」だろう。ソプラノサクソフォン独奏のために書かれた作品で、ドゥラングル教授の盤を始めとして録音も多い。また、最近話題になったのは 平山美智子のために書かれた「山羊座の歌」だろうか。6月3日に杉並公会堂で全曲演奏会が行われたが、この中の一曲にサクソフォンが使用されているのだ(この時のサクソフォンは、大石将紀氏が担当)。さらに、ドゥラングル教授の盤に入っている独奏曲、「Maknongan」「Ixor」辺りまでは普通に思い浮かぶだろうが、それ以上となると、多くの方が???となってしまうと思う。

ロンデックスの目録を開いてみると、その他にも4作品ほど、サクソフォンを含む編成の作品を書いているようだ。その中で(サクソフォン的に)注目すべき作品が、「Yamaon」。Bass Voice、Alto Sax、Baritone Sax、Contra Basson、Bass、Percという低音偏愛的編成のために書かれたのだが、サクソフォンが大活躍するのだ。

曲は、3つの楽章に分かれており、おもにバス(声)が主導して曲が進んでいく。サクソフォンは急速楽章で目立ちまくっており、楽譜を見ないと確証は持てないが、非常に難しいフレーズを伴った難しいパートを受け持っている。シェルシというと「単音の美学」なんて呼ばれてしまうこともあるが、「Yamaon」の作風は例えば「3つの小品」あたりを想像して聴き始めると、その鮮烈さに驚いてしまうかもしれない。まるで同じ作曲家の作品とは思えない(シェルシの作曲に関しては、いろいろなウワサがあるようだが…)。サクソフォンの音色と相まって、実にかっこいい作品だ。

幸いなことに、CDが出版されている「GIACINTO SCELSI(KAIROS 0012032kai)」。同じくサクソフォンが取り入れられた「I presagi」という作品や、「3つの小品」までをもカヴァーし、サクソフォン的興味からしても、入手しておいて損はないだろう。サクソフォンを担当しているのは、Pierre=Stéphane Meugé。XASAXのメンバーとして名高いく、このような同時代の作品についてはお手のもの、なのだろう。見事な演奏である。サクソフォン以外も、まるでライヴ音楽のような興奮に包まれており、曲が内包するパワーを存分に提示していると思う。

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そういえば、「3つの小品」にはリコーダー・アレンジ版の録音、なんていうものが存在する:「Temenos(Edition Zeitklang ez-18020)」。なんというか、ちょっと滑稽なのだが、面白いといえば面白い。そもそも、サクソフォンのために書かれた作品が、他の楽器で演奏されることなんてめったにないのだから、そういった意味でも貴重かもしれない。小ネタ。

2011/06/21

ドゥラングル教授出演のVandorenプロモ動画(日本語版) on YouTube

以前こちらの記事で紹介したヴァンドレンのプロモーション動画だが、なんといつの間にか日本語吹き替え版が作成されていた。言っている内容がよく判り、オススメである。そうかー、やっぱりドゥラングル教授はソプラノサクソフォンが好きなんだなー、とか。

アルトサクソフォン


ソプラノサクソフォン

2011年第3回ドルチェ楽器デビューコンサート(6/19午後)

この春洗足学園音楽大学を卒業されたばかりの、小川卓朗さんと松下洋さんにご案内いただき、伺った。ドルチェ楽器主催の、いわゆる"新人演奏会"といった感じの催しなのだが、ドルチェ楽器も力を入れてかなり大々的にやっているようだ。なんと、3週間にわたってドルチェ・アーティストサロンを独占してしまうというのだから、その気合いの入れ方には恐れ入る。

この日は午前中と夕方に用事があったため、残念ながら4人ぶんしか聴くことができなかったのだが、それでもこの催しの面白さをしっかりと感じ取ることができ、またそれぞれの奏者の個性も堪能できた。

小川卓朗:
B.マントヴァーニ - 霧雨の狂
C.ロバ - ジャングル
P.ヒンデミット - アルトサクソフォン・ソナタ
アンコール(曲名失念)

ギリギリで到着、最前列に座って音を浴びることとなった。なんとMCを挟みながらの演奏。ソプラノサクソフォンのマントヴァーニは、至極難しいピアノとのアンサンブルを見事に吹きこなしており、驚き。会場全体にドカンと音が落ちてくるのは、小川さんのアイデンティティの一つだと思っている。もうちょっとこの会場の大きさの広さにふさわしいサイズの響きを聴きたいとも思ったが(たしか同じくドルチェ楽器で聴いたマーフィ氏のマスタークラスでそんなことを言っていたような)、それは贅沢な望みというものだろう。ともかく、よく難しい曲をここまで吹くなあという感じ。
ジャングルは、響きが少ない中でも聴き応えがある、隅々まで丁寧に作りこまれた演奏。そして、再びピアノとの演奏となったヒンデミット「ソナタ」は、アルトサクソフォンの輝かしい音色が眼前に迫ってきて、鳥肌モノだった。第2楽章は凄かったなあ…この曲を、音色とリズムでもって聴かせられる現代の奏者が、どれだけいるのだろうか…。第4楽章は、ロンデックスのSNE盤と同じく、冒頭のパッセージをサクソフォンで吹いてしまうアプローチ。驚いた。
アンコールの曲名を失念してしまったのだが、もしご存じの方がいたら教えてください(>_<)

柳澤祐美子:
P.モーリス - プロヴァンスの風景
C.フランク - ヴァイオリン・ソナタより3,4楽章

なんだかモーリスは緊張していたようで、いくつかミスがあったのが残念。ただし、全体的に俯瞰すると、曲の構成として芯がしっかり通っているぶん、変にちぐはぐになってしまっているようには感じない。コンパクトでまとまった音色・コントロールなど、サクソフォンを上手く使いこなしている感じが見受けられた。フランクのほうは吹っ切れたのか、気合の入った演奏。全体的な構成感も感じられるなか、要所要所でキラリと光るものを感じ取ることが出来た。
ちょっと驚いたのが、ピアノが山崎早登美さんだったこと!なんと、先週のサクソフォニー関東の演奏会でお世話になったばかりではないか。モーリスでの丁寧な音運びと、奏者への見守るような眼差しが印象的だ。そしてなによりヴィンテージ・ピアノのような"木の音色"は、サクソフォンとのデュオとしてあまり聴いたことないものだった。

椎木健太郎:
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
J.ブラームス - ソナタ第2番

聴いた4人の中では、いちばん精神的な成熟を感じた。演奏中の立ち振る舞いや、曲に対する眼差しなど、単に場数や自信から来るだけではないほどのものがある。"オーラ"と言ってしまっても良いかもしれない。自分の枠をきちんと決め、その中にピタリと合う形でまんべんなく音楽を敷き詰めて、丁寧に聴衆へ提示してみせる姿勢は、非常に好感が持てる。
「ファンタジア」のソプラノは、やや鋭い音色ながら、ラテン的なビート感と優しい旋律を上手くミックスした演奏。ブラームスは、ちょっとアルティシモ音域の時々の不発が気になったが、それでもそれを補うほどの端正な演奏で、最初から最後までとても楽しんだ。

松下洋:
C.ロバ - XYL(バラフォン2)
M.シュルーデ - リニューイング・ザ・ミス
F.シュミット - レジェンド
P.スウェルツ - クロノス

小川さんと同じく、MC(脱力系。笑)を挟みながらの演奏。ロバの「XYL」は、実は初めて聴いたのだが、重音パートに唸り、中間部の高速パッセージにもやはり唸ってしまった。録音で聴いてもよく解らないが、これはライヴで聴くと凄いパワーを持つ曲だ。続いてシュルーデで、松下さんの本領発揮。高難易度の高速パッセージを、驚くべき速度で畳み掛けてゆく。以前ウェニアンの演奏を聴かせてもらったときにも思ったのだが、この曲の作り方は聴衆を大変興奮させるものだ。あの細身の身体のどこから、こんなパワーが出てくるんだろうと思いながら、あっという間の8分間。
シュミットもやはり高速パッセージの畳み掛けが印象的だが、どちらかというともう少しお洒落に吹いてほしい感じがあったかなあ(笑)以前ライヴで聴いたクラウス・オレセンの「伝説」が、やはり自分の中ではベストなのかも。スウェルツは「申請したつもりはなかったが、プログラムに載っていたので吹いた」とのこと。たぶん今まで聴いた中で最速だった(笑)。いやあ、本当に良く吹くなあと、驚きと感心が入り交じった30分だった。"リサイタル"として、2時間フルセットでぜひ聴いてみたい。

2011/06/19

この週末

楽譜の切り貼り(PC上で)したり、ふらっと東京の西のほうを散策したり、Tsukuba Saxophone Quartetの練習をしたり、ドルチェの新人演奏会聴きに行ったりと、相変わらずあちこち動きまわっていた(^^;

ドルチェの話は、明日きちんとレポートを書こうと思う。なかなかにインスピレーションを受ける演奏が目白押し。聴きに行って良かった!こういうタイプの独奏の演奏会は初めてだったが、本当に面白いですね。その後予定がおしていなければ、最後まで聴きたかったくらいなのだが…(>_<)

2011/06/18

Back to Bach

島根県のF様より、フランスのサクソフォンに関するLPの復刻を2枚送っていただいたのでご紹介したい。どちらも初めて見聞きするものだった。いつも貴重な音盤をお送りいただき、ありがたいことだ。

まずは「Back to Bach(TELEFUNKEN BLE 14429-P)」なるLP。なんとなくタイトルを読むと「バック・トゥ・バッハ」だが、英語読みすると「バック・トゥ・バック」になるわけか…。パリ・コンセルヴァトワールにおけるマルセル・ミュールの弟子、Guy Romby率いる、Le Quintette de Saxophones Francaisという団体の演奏。

フランスの五重奏団というと、真っ先にパリ五重奏団が思い出されるが、こんな団体が存在していたとは知らなかったが、もしかして臨時編成の団体だろうか。演奏は、なんとドラムスとベースを加えたジャズ風のアレンジ。ただ、サクソフォンパートだけ聴けば至極まっとうなクラシックのスタイルで演奏されており、どういった経緯でこの録音が実現したのかが気になる(ジャック・ルーシェあたりに影響されたか?)。クレジットは次のとおり。

Guy Romby, ssax
Jean Jacques Leger, asax
Jacques Bernard, tsax
Henri Bernard, tsax
Michel Gamay, bsax
Michel Gaudry, double-bass
Andy Arpino, drums

サクソフォンでは、Guy Romby以外の名前はあまり聞いたことがないが、良く良く思い出してみると、Jacques Bernardの名前は作曲家として知っていた!(→ここ)また、Thunderさんのブログを探索したところ、ミュールの生徒だったとのこと。Jean Jacques Legerについても、同じくミュールの生徒だったようだ。テナーのもう一人と、バリトンの方の名前は見つけられなかった。

OrfelKonzert Nr.4 C-dur BWV595
Orgelfantasie h-moll BWV563
Kleines Orgelpraludium und Fuge Nr.6 g-moll BWV558
Orgelfuge e-moll BWV533
Lorlane aus der Suite Nr.1 C-dur BWV1066
Orgelfuge c-moll BWV549
Air aus der Suite Nr.3 D-dur BWV1068
Orgelsonate Nr.1 BWV525
Bourrees aus der Suite Nr.2 h-moll BWV1067
Orgelfuge h-moll BWV579
Orgelpraiudium c-moll BWV549
Polonaise aus der Suite Nr.2 h-moll BWV1067

フランスの往年のサクソフォン…暖かい音色、美しいヴィブラートが心地良い。バッハ独特の指まわりや跳躍なども技術的に難なくクリアしており、ベースとなる技術の高さを感じさせる。ここまでやるなら、ぜひ完全なクラシックのスタイルで一枚作ってほしいと思ったくらいだが、気軽に聴く目的には良くマッチしている。ジャック・ルーシェなどと比べるとアレンジとしての完成度は及ばない気がするが、サクソフォンが「バッハでジャズ」スタイルの演奏を行った最初期の録音として、貴重なものであろう。

2011/06/17

五人囃子

【五人囃子】
出演:西田紀子(fl)、波田生(va)、坂口大介(sax)、岩附智之(perc)、津花幸嗣(accord)
日時:2011年6月17日(金)19:00開演
会場:ルーテル市ヶ谷・コンサートホール
プログラム:
Mark O'Connor - Appalachia Waltz
Johann Sebastian Bach - Italienisches Konzert BWV971
Dmitri Shostakovitch - from "24 Preludes and Fugues"
星谷丈生 - Harmonic Design 2
Astor Piazzolla - Tango Ballet
~アンコール~
Francis Poulenc - from "3 Novelettes"

「すべて発音体が違う楽器でユニットを組んでみた」とのことだが、実際にライヴで様々なアレンジやオリジナルを聴くにつれ、その面白さ&収まりの悪さを様々な側面から感じることとなった。緩徐楽章では、なんとなく集中して聴かせることの難しさがあるなあなどと思ったり、かと思えば、高速なソロの掛け合いのような楽章では、こんな面白い演奏は聴いたことがないぞ…!と思ったり。

ということで、特殊な編成では、演奏の巧さだけでなくやはりレパートリーが聴き手の充実度に繋がる割合が大きそうだ。そういう意味で、今日は特に後半の演奏に感銘を受けた。星谷丈生氏の委嘱作品「和声のデザイン2」は、バッハ「イタリア協奏曲」をコラージュしてさらに現代的な要素をふんだんに加えた作品。バロック作品のコラージュというと、なんとなくブルーノ・マントヴァーニの傑作「タイム・ストレッチ」を思い出したが、こちらの作品はもっと明確に原曲の姿が見える。すでにベテラン作曲家の域に達している星谷氏だが、貫禄のある濃密なスコア、そして演奏者たちの集中力の高い演奏は、本日の演奏会の白眉であった。

前半の「イタリア協奏曲」も同じく星谷氏のアレンジだったが、アレンジの気合いの割にはちょっと演奏のほうが追い付いていない気がしたかな。バッハは、いかに優しく美しい表情を持っていたとしても、現代的な作品よりずっと難しいと常々考えている。バッハに影響を受けたショスタコーヴィチの「プレリュードとフーガ」の緩徐楽章も然り。速い楽章は凄く良かったのだけど…。

ピアソラは期待通りのカッコ良さだった。ピアソラ自身のクインテットだって、よく考えてみるとごちゃ混ぜなイメージだよなあ。誰がアレンジを施したのかは分からなかったが、各楽器の特性をとても良く生かしてあり、ピアソラらしい音が飛び出したのにはびっくり。坂口さんはバリトンサックスでメインでベースを受け持っていたが、時に叙情的な旋律を吹くと、これがまた美しくて。

演奏者はみんな名手揃いだったが、フルートの方がとても良い仕事をしていると感じた。管楽器のなかで最も技術的に&音楽的に成熟されているのはフルートだと良く言われるが、このくらいの上手さが普通なのだろうか…。いや、それにしてもピッコロからアルトフルートまでをこの安定度で演奏してしまうのは魅力的だ。サクソフォン以外の方に、坂口さんの音色を聴いてもらえたのは良かった。楽器としても(やはり"サクソフォン"の存在感は圧倒的だ!)、坂口さんという奏者としても(坂口さんのテナーサックスは初めて聴いたが、キラキラとした音色がそのままテナーにも表出している)。

ということで、なかなか面白い演奏会でした。一回きりに終わらせず、ぜひ二回、三回と続けていくなかで、魅力ある演奏やアレンジ、オリジナル作品をどんどんと産み出していってほしいな。

2011/06/16

FacebookのTsukubaSQページURL

Facebookにダダはまりな毎日。

Tsukuba Saxophone QuartetのFacebookページだが、何でも25人以上の「Like!」をもらうとURLが変更できるらしく、下記のようなシンプルなURLへと変更を行った。Facebookをお使いの方も、そうでない方も、ぜひ訪れてみてください。

http://www.facebook.com/TsukubaSQ

2011/06/15

ライヒ中継

佐藤淳一さんのツイートより。「明日(2011年6月16日)の13時から東京芸術大学の情報芸術センターでSteve ReichのNew york Counterpointを演奏します」とのこと。ライヒのマネジメントサイドの許可を得て、なんとその模様をUstreamで中継するそうな。私は仕事のため観られないが、お時間ある方はぜひ。


Online video chat by Ustream

演奏会のご案内:五人囃子

おなじみ、サクソフォンの坂口大介さんからご案内いただいた。フルート、ヴィオラ、サクソフォン、パーカッション、アコーディオンという組み合わせによる異色編成ユニットの、デビューリサイタルだそうだ。チラシがかっこいい。

単発的な団体はこれまでも見聞きしたことがあるが、継続的な活動を続けている団体というのは、あまり聞いたことがないなあ。どのような音楽を奏でるのかはもちろん、そして将来的な活動の可能性が見える団体なのか、なんていうところも楽しみにしつつ、伺う予定。雰囲気的には、なんとなくピアソラのクインテットを思い出しますね(と思っていたら、プログラムにもピアソラが含まれていた)。

【五人囃子!! デビューリサイタル】
出演:西田紀子(fl)、波田生(va)、坂口大介(sax)、岩附智之(perc)、津花幸嗣(accord)
日時:2011年6月17日(金)19:00開演
会場:ルーテル市ヶ谷・コンサートホール 
料金:全席自由 一般3000円、学生2000円(当日各500円増)
プログラム:
M.オコナー - アパラチア・ワルツ
星谷丈生 - 委嘱作品
J.S.バッハ/星谷丈生 - イタリア協奏曲
A.ピアソラ - タンゴ・バレエ
D.ショスタコーヴィチ - 24の前奏曲とフーガより
問い合わせ:
goninbayashi.617@gmail.com(五人囃子)

2011/06/14

サクソフォニー関東第2回演奏会

日曜日は、保谷こもれびホールにてサクソフォニー関東の演奏会だった。

【Saxophony Project KANTO 第2回演奏会】
出演:Saxophony Projekt KANTO、柏原卓之、島藤寛(cond)、栃尾克樹(bsax)
日時:2011年6月12日(日)15:30開場 16:00開演 
場所:西東京市保谷こもれびホール・メインホールにて
入場料:無料(要整理券・当日券も出ます)
プログラム:
第1部:アンサンブルステージ
フォスター・ラプソディ(5重奏)
スペイン(5重奏)
ギリシャ組曲(4重奏)
木星のファンタジー、琉球幻想曲(4重奏)
"猫組曲"よりクラーケン(バリトン&バス10重奏)
第2部:サクソフォンオーケストラステージ(すべて柏原卓之氏の編曲)
吉俣良 - 大河ドラマ「江」メインテーマ
村松崇継 - 彼方の光
G.フォーレ - エレジー(客演:栃尾克樹)
L.アンダーソン - バリトンサックス吹きの休日!?(客演:栃尾克樹)
E.モリコーネ - ガブリエルズ・オーボエ
L.バーンスタイン - ソングス・オブ・ウェストサイド
R.ワグナー - エルザの大聖堂への行列
C.T.スミス - 華麗なる舞曲
~アンコール~
岡野貞一 - ふるさと
L.バーンスタイン - マンボ(ウェストサイド・ストーリーより)

9:00からホール入りし、いろいろとドタバタしつつ、あっという間に本番。直前の怒涛の宣伝が効いたのか、多くのお客さまにお越しいただいた。ご来場いただいた皆様、ありがとうございました!

運営の方は、個人的にどうも上手く出来なかった部分・抜けがあった部分が多くあって、おまけにいろんな方に迷惑をかけ、反省しきりなのだが、これは次回へつなげていくしかないだろう。第2回サクソフォン交流会の運営体制のような、WBSを基にした完全なトップダウン方式…は、あまりマッチしない気がするし、何か良いアイデアがあれば…。

前半に伊藤康英「木星のファンタジー」「琉球幻想曲」を演奏した。他のメンバーの演奏にも触発されながら気持よく演奏できたのだが、これはまず録音を聴かないとなんとも。サックスオケのほうは、「華麗なる舞曲」で自分の技術の限界点を超えてしまったほかは、なんとか落ち着いて演奏できた。大人数のときの緊張しなさといったら…昔はあんなに心臓バクバクだったのに。栃尾先生の演奏は、まさに圧巻であった。あの広大なホールの空気を震わせるバリトンサクソフォンの重厚な音色。間近で共演できたことを、心から嬉しく思う。

Stellar Saxes~ケネス・チェ&須川展也 デュオコンサート~

サクソフォニー関東第2回演奏会、ご来場いただきありがとうございました。サクソフォニーのことは、明日書く予定。

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3月の地震が起こった頃から仕事が増え、平日に開催される演奏会を聴きに伺えないことが良くあった。原博巳さんのリサイタルや、Keiさん&@君のデュオコンサートなど…。最近はようやく落ち着いてきたものの、やっぱりまだまだ仕事のほうが忙しいことは変わりないが、今日はなんとか伺うことができた。

ケネス・チェ Kenneth Tseさんと須川展也さんのデュオコンサート。ピアノはもちろん、小柳美奈子さん。須川さんと小柳さんの国内での知名度は言うまでもないが、ケネス・チェさんはどうだろう?もしかしたら、「Stellar Saxes(Crystal Records)」が吹き込まれるまでは、ごく一部のサクソフォン・マニアの間でしか知られていない存在だったかもしれない。私はmckenさんのサイトを通じてチェ氏のことを知り、昔から注目していたが、まさか2011年にもなってライヴを聴けるとは思わなかった。しかも須川展也さんとの共演ときたもんだ!

【Stellar Saxes~ケネス・チェ&須川展也 デュオコンサート~】
出演:ケネス・チェ、須川展也、小柳美奈子
日時:2011年6月13日(月曜)19:00開演
会場:銀座ヤマハホール
プログラム:
~第1部(ソロステージ)~
P.スウェルツ - ラヴェルの墓(チェsop、小柳美奈子)
B.コッククロフト - Rock Me!(チェalt)
E.グレッグソン - サクソフォン協奏曲(須川展也alt&sop、小柳美奈子)
~第2部(トリオステージ)~
J.B.サンジュレ - デュオ・コンチェルタント(須川展也sop、チェalt、小柳美奈子)
加藤昌則 - オリエンタル(須川展也sop、チェalt、小柳美奈子)
長生淳 - パガニーニ・ロスト(須川展也alt、チェalt、小柳美奈子)
~アンコール~
J.ラフ - カヴァティーナ(須川展也alt、チェalt、小柳美奈子)

銀座ヤマハホールは、確か初めて入る場所。ビルの中ということでアクタスのアンナホールやドルチェ楽器東京のような会場を想像していたのだが、全くそんなことはなく、7階から9階までをぶち抜いた立派なコンサートホール(333席)だった。室内楽を聴くには、とても良い規模だと思う。会場に着いて辺りを見渡せば、あっちにあの人が!こっちにあの人が!状態。知り合いも多し。なんだかこの感覚も久しぶりだなあ。

演奏は、スウェルツの作品から始まった。ラヴェルの「ピアノ協奏曲」をモチーフにした、もともとはピッコロとピアノのために書かれたというが、作品名も、もちろん作品自体も初めて聴くものだった。特に第2楽章の"耽美"というキーワードがすぐに思い浮かぶ曲想など、「ピアノ協奏曲」の第2楽章との共通点を強く感じる。チェ氏のソプラノサクソフォンは…これがまた美しいのだ!音量は控えめながら、響きがあり得ないほどに充実しており、サクソフォンの美しい音色の究極形のひとつと言えると思う。テクニックも驚くべきもので、さすがにフラジオのコントロールやタンギングの見事さでは最近は驚かなくなってきたが、それにしてもこの美しい音色で超高速のフレーズを駆けずり回られると、興奮してしまう。

そして、小柳美奈子さんのピアノの素晴らしいこと!EMIのCDを聴いているだけでは絶対にわからない、絶妙なニュアンスのコントロールと、美しいタッチに惚れた。ピアノや、ホールのせいもあったのかもしれないけれど、改めてそのウマさに惚れた。

簡単なMC(通訳は小柳美奈子さんでした)を挟んで、2曲目の「Rock Me」。バリー・コッククロフトは、無伴奏でいくつもの面白い作品を発表しており、「Beat Me」という作品もあり、こちらもなかなかかっこ良いが、これは杉原真人氏が昨年杉並公会堂で演奏していた。なんとサングラスをかけて暗譜で登場したチェ氏、照明も効果的に使いながら、客席の集中力を巻き込んで恐ろしいほどのテンションで吹ききってしまった。これは実に盛り上がったなあ…。今後、日本で流行ってもおかしくないかもしれない。ちなみに、YouTubeにはチェ氏の演奏がアップロードされているので、気になる方はチェックを(→http://www.youtube.com/watch?v=eSoOSmWaco8)。ただ、ライヴで聴いたときの、迫ってくるような印象とはだいぶ違うかも。

続いて須川展也さんが登場。今年の管打楽器コンクールの本選課題曲にもなっているエドワード・グレッグソンの「サクソフォン協奏曲」である。ケネス・チェ氏であれだけ盛り上がっていて、さてグレッグソンがどう来るか、と思いきや、やっぱり須川さんは須川さんだった。その前になにが演奏されていようとも、演奏開始わずか20秒で一気に聴衆を"スガワ・ワールド"へと一気に引きずり込んでしまうカリスマ性。照明も効果的に使いながら、最後の爆発までテンションをコントロールし、盛り上げていった。ちなみにグレッグソンの「サクソフォン協奏曲」は、作品としては、数あるサクソフォン協奏曲の名曲と呼ばれるものと比べると曲としての充実度は劣る気がするが、やはり須川さんの演奏で聴けば、どういう響きと構成が想定されて書かれた作品であるのかがよく判る。楽譜だけなぞれば、管打楽器コンクールの本選課題曲としては役不足だろうが、これをどうやって聴かせるか、というところにミソがあるとするならば、実はすごく考えられたセレクトなのではないか…と、そんなことを思った。

後半は、お待ちかねのデュエット・ステージ。まずはサンジュレだが、これがまた最初から飛ばす飛ばす。室内楽的な部分は、なんだかその場で合わせている感じ…と思っていたら、演奏のあとに「さっきの合わせはなんだったんだろう、っていうくらい、楽しんで演奏してしまいました」という須川さんのMCが(笑)。やっぱり:-) 古典的な端正さ、ピアノも交えての室内楽としてのトリオ、とはかけ離れたところにある演奏だったが、これはこれで楽しい!サクソフォンの音楽、として聴くならば、これ以上の演奏は決して聴くことができないだろう!聴いていて、幸福感を噛み締める感じ。

「オリエンタル」は、「Stellar Saxes」の中でも一番好きな作品だ。加藤昌則さんという作曲家の名前は最近よく聞くようになったが、作品を聴くと人気の理由もよく判る。キャッチーでクール、そしてとんでもなく難しい!5音音階的なフレーズを元に、ジャズのテイストを織り込みながら8分間駆け抜ける作品だが、実にカッコ良く、爽快そのもの。緊張と解放がうまい具合に配置されており、そのたびにゾクゾクしてしまった。そういえば、チェ氏のアドリブ部分に、グレッグソンの「協奏曲」のパロディ?と思われる部分があったのだが…?もし意図していたのなら面白いな。

最後は「パガニーニ・ロスト」。これは以前國末貞仁さんと山田忠臣さん、小柳美奈子さんのトリオYaS-375で聴いたのだが"本家"はさらにアツイ演奏。ここまでやりますか、というくらい、あの超絶難しいフレーズをフルパワーで(そう、須川さんとチェ氏のフルパワーで)聴かせるのだ。聴いているだけなのに、音を聴くことの脳内処理を求められる感じ。見事というほかない演奏だった。ちなみにこの曲「オリエンタル」とともに全音楽譜出版社から最近出版されたようである。ロビーで先行発売していたので「オリエンタル」だけを買ってしまったのだが、うーん、どこかで演奏できないかなあ。アンコールは、しっとりとJ.ラフの名曲「カヴァティーナ」。

ということで、予想通りのショッキングで素晴らしく、幸せな演奏会。この度の公演を実現するために尽力された関係者の皆様には、この場を借りて御礼申し上げる次第。またぜひ聴きたい!

2011/06/11

しつこくも、最後にもう一度宣伝

明日です。来てね。

そういえば、アンサンブルステージでは伊藤康英先生の「木星のファンタジー」「琉球幻想曲」を吹きます。

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【Saxophony Project KANTO 第2回演奏会】
出演:Saxophony Projekt KANTO、柏原卓之、島藤寛(cond)、栃尾克樹(bsax)
日時:2011年6月12日(日)15:30開場 16:00開演 
場所:西東京市保谷こもれびホール・メインホールにて
入場料:無料(要整理券・当日券も出ます)
プログラム:
第1部:アンサンブルステージ
フォスター・ラプソディ(5重奏)
スペイン(5重奏)
ギリシャ組曲(4重奏)
木星のファンタジー、琉球幻想曲(4重奏)
"猫組曲"よりクラーケン(バリトン&バス10重奏)
第2部:サクソフォンオーケストラステージ
吉俣良 - 大河ドラマ「江」メインテーマ
村松崇継 - 彼方の光
G.フォーレ - エレジー(客演:栃尾克樹)
L.アンダーソン - バリトンサックス吹きの休日!?(客演:栃尾克樹)
L.バーンスタイン - ソングス・オブ・ウェストサイド
R.ワグナー - エルザの大聖堂への行列
C.T.スミス - 華麗なる舞曲
問い合わせ:
http://www.saxophony.net/archives/1508066.html(サクソフォニー関東主宰:柏原卓之)

2011/06/10

「タルカス」の演奏映像が…

Tsukuba Saxophone Quartetの演奏会で取り上げたのは、Adrian Music Collegeでピアノと作曲を教えているピート・フォード Pete Ford氏のアレンジだった。もともとは1998年頃にアメリカの四重奏団Sax 4th Avenueのために書かれた(Sax 4th Avenueのアルト奏者、シャノン・フォード Shannon Fordさんは、ピート・フォード氏の奥様)アレンジだったのだが、CDに録音されたきり演奏されなくなっていたのを、フォード氏に頼んで楽譜提供してもらったのだ。

楽譜のやりとりがあったのは2008年の5月ころ。3年も経ってしまってからの演奏となったが、演奏報告のためにメールしたところすぐに返信があって、なんとフォード氏個人のページからリンクを張ってくれた。Facebookを通じてもコンタクトがあり、インターネット時代、ソーシャルメディア時代ならではの繋がりに、改めて驚いているところ。Facebookつかって、チャットまでしちゃったよ。

http://web.me.com/petertford/Site/YouTube_Videos.html

いやあ、嬉しいなあ!YouTubeでの公開許可ももらったので、ブログ上でも貼りつけておく。

2011/06/09

「シャコンヌ」の演奏映像が…

J.S.バッハ/伊藤康英「シャコンヌ」のTsukuba Saxophone Quarteによる演奏映像が、なんとイトーミュージックにて紹介された。大変光栄なことである。前の記事にも書いたとおり、出版をお願いしたのは私だったのだが、演奏報告のメールを送ったところ、担当者の方が覚えていてくださったのだ。素晴らしいアレンジであるにも関わらず、未だ録音が存在しないということもあり、参考演奏としてご紹介いただけることになった。

http://www.itomusic.com/%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%97/%E6%A5%BD%E8%AD%9C-%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%B3/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%8C-%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F/

いつか雲井雅人サックス四重奏団がきっと録音してくれるだろうと、数年前から首を長くして待っているのだが…。

2011/06/08

栃尾克樹先生との共演

運営側から宣伝強化指令が出ているので(笑)またまた取り上げる。

そういえば、大学に入ってから初めて聴きに行ったプロのサクソフォン奏者のコンサートが、栃尾先生のリサイタル@東京文化会館小ホール、なのであった。大学1年生の10月、忘れもしないのは、学園祭の真っ最中だったこと。友人と模擬店を出店したり(焼いたパンとカレーを併せて食べる、パン de カレーなる商品を売り出していた)、スカバンドでいろんなステージに出演したり(東京スカパラダイスオーケストラを知ったのがこの頃)しているさなか、大学を抜けだして聴きに行ったのを覚えている。

最初から最後まで圧倒的・感動的な演奏会だった。会場の盛り上がりもとんでもなくて、「アルペジョーネ・ソナタ」の第3楽章で楽譜が落下しながら、最後まで完璧に吹ききったあとには、確か7回くらいカーテンコールで呼び出されていたような。ああ、世の中にはこんな凄いサクソフォンがあるんだなあと感じ入り、涙を流したものだ。

あれから8年。こういった形で共演することになるとは、感慨ひとしおである。

というわけで、共演曲は栃尾先生お得意のガブリエル・フォーレ「エレジー」と、トランペット吹きの休日、のような、バリトンサックス吹きの休日、のようなテクニカルな作品。きっとお楽しみいただけることと思う。入場には整理券が必要だが、当日券も出る予定。もしくは、kuri_saxo@yahoo.co.jpまでメールをお送りいただければ、取り置きも可能です。

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【Saxophony Project KANTO 第2回演奏会】
出演:Saxophony Projekt KANTO、柏原卓之、島藤寛(cond)、栃尾克樹(bsax)
日時:2011年6月12日(日)15:30開場 16:00開演 
場所:西東京市保谷こもれびホール・メインホールにて
入場料:無料(要整理券・当日券も出ます)
プログラム:
第1部:アンサンブルステージ
フォスター・ラプソディ(5重奏)
スペイン(5重奏)
ギリシャ組曲(4重奏)
木星のファンタジー、琉球幻想曲(4重奏)
"猫組曲"よりクラーケン(バリトン&バス10重奏)
第2部:サクソフォンオーケストラステージ
吉俣良 - 大河ドラマ「江」メインテーマ
村松崇継 - 彼方の光
G.フォーレ - エレジー(客演:栃尾克樹)
L.アンダーソン - バリトンサックス吹きの休日!?(客演:栃尾克樹)
L.バーンスタイン - ソングス・オブ・ウェストサイド
R.ワグナー - エルザの大聖堂への行列
C.T.スミス - 華麗なる舞曲
問い合わせ:
http://www.saxophony.net/archives/1508066.html(サクソフォニー関東主宰:柏原卓之)

2011/06/07

J.S.バッハ/伊藤康英「シャコンヌ」サクソフォン四重奏版

先日のTsukuba Saxophone Quartetの演奏会で吹いたJ.S.バッハ/伊藤康英「シャコンヌ」について簡単に書いておきたい。

ご存知のとおり、ヨハン・ゼバスチャン・バッハ「無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番」の終曲"シャコンヌ"を康英先生(伊藤康英氏のこと、大学時代に所属していた吹奏楽団は伊藤康英氏と縁が深かったため、こんな呼び方をしていたのだ)がサクソフォン四重奏のために再構成したアレンジである。雲井雅人サックス四重奏団の第4階定期演奏会に合わせて書かれ、2005年9月29日に津田ホールで初演。私も聴きに行っていた。

康英先生は、かつてバッハ「シャコンヌ」のフェルッチョ・ブゾーニによるピアノ版を吹奏楽用にアレンジしている。トロンボーンの和音から始まる、非常に実験的なアプローチが印象的なアレンジである。サクソフォン四重奏版も、特に明記されてはいないもののブゾーニ版をベースに再構築したのは明らかであり、おそらく吹奏楽版のアイデアもかなり含まれているのではないだろうか。さすが康英先生、"作曲"とほぼ同レベルの創造作業を経たスコアは、オリジナルとしてサクソフォン四重奏のために書かれた、と言ってしまいたいほどの魅力に溢れている。

雲井雅人サックス四重奏団の実演は、それはそれは素晴らしいもので、今でもそのときの音を僅かながら思い出すことができるほどだ。もちろん、アレンジの素晴らしさにも感激してしまい、さらにちょうど四重奏のレパートリーを探していた時期にぶつかったりで、10月3日には康英先生に宛てて最初の出版依頼メールを送っている。結局楽譜の準備が整ったのは2006年の4月。その後すぐに楽譜を購入したのだが、あまりの難しさに、ずっと(5年間も!)取り上げられないでいた。

ようやく練習を開始できたのが2010年、その後、2010年9月のカット版(Major Keyの変奏をまるっとカット)の演奏、2011年2月協会コンクール提出用の録音(Major Key開始の直前まで)を経、2011年3月21日の日本サクソフォーン協会第8回アンサンブルコンクールの演奏に向けて全曲の練習を続けていたが、コンクールは中止となった。結局、先日の演奏会で初めて全部演奏できた、ということになったのだが、実に5年以上を経ているわけで、感慨深い。


今では、Amazonからもこのアレンジを購入できるようになっている。(→バッハ作曲・伊藤康英編曲/シャコンヌ ~サクソフォーン四重奏のための

2011/06/06

演奏会ご案内:サクソフォニー関東第2回演奏会

週末に迫った演奏会をご案内。昨年から出演している、サクソフォニー関東の演奏会である。サクソフォンを吹いている中で、いろいろな出会いはこれまでも多かったが、この団体への参加は、自分のサクソフォンへの関わり方を大きく変えたものの一つだ。Tsukuba Saxophone Quartetと同じく、これからも大切に関わっていきたい団体。

ということで、ぜひお越しくださいませ。入場無料・要整理券、とのことなのですが、いちおう当日券も出る予定。もしくは、kuri_saxo@yahoo.co.jp宛に必要枚数と名前を書いてメールをお送り頂ければ、取り置きにも対応します。

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【Saxophony Project KANTO 第2回演奏会】
出演:Saxophony Projekt KANTO、柏原卓之、島藤寛(cond)、栃尾克樹(bsax)
日時:2011年6月12日(日)15:30開場 16:00開演 
場所:西東京市保谷こもれびホール・メインホールにて
入場料:無料(要整理券・当日券も出ます)
プログラム:
第1部:アンサンブルステージ
フォスター・ラプソディ(5重奏)
スペイン(5重奏)
ギリシャ組曲(4重奏)
木星のファンタジー、琉球幻想曲(4重奏)
"猫組曲"よりクラーケン(バリトン&バス10重奏)
第2部:サクソフォンオーケストラステージ
吉俣良 - 大河ドラマ「江」メインテーマ
村松崇継 - 彼方の光
G.フォーレ - エレジー(客演:栃尾克樹)
L.アンダーソン - バリトンサックス吹きの休日!?(客演:栃尾克樹)
L.バーンスタイン - ソングス・オブ・ウェストサイド
R.ワグナー - エルザの大聖堂への行列
C.T.スミス - 華麗なる舞曲
問い合わせ:
http://www.saxophony.net/archives/1508066.html(サクソフォニー関東主宰:柏原卓之)

2011/06/05

サクソフォニー関東合宿でした

来週末に迫ったサクソフォニー関東演奏会の、直前練習のための合宿@川崎だった。今日のゲネプロに向けて、少しずつ仕上がっていく様子が楽しかった。演奏会については、またこちらのブログでもお知らせしたい。

それにしても「華麗なる舞曲」、周りの方は良くあれだけ吹けるなー。自分はもっと練習しなければ。

2011/06/04

東京ガス吹奏楽団第33回定期演奏会

【東京ガス吹奏楽団第33回定期演奏会】
出演:東京ガス吹奏楽団、田中旭(cond)、家中勉(tuba)
日時:2011年6月3日(金曜)開演19:00
会場:東京オペラシティコンサートホール
プログラム:
J.ボコック - 友愛と賛歌のファンファーレ
A.メンケン/真島俊夫 - 美女と野獣
E.グレグソン - チューバ協奏曲より第1楽章(家中勉, tuba)
G.ハル - チューバ吹きの休日(家中勉, tuba)
V.モンティ/後藤洋 - チャルダーシュ(家中勉, tuba)
L.バーンスタイン/C.グランドマン - 「キャンディード」序曲
S.ラフマニノフ/石川學 - ヴォカリーズ
A.I.ハチャトゥリアン/林紀人 - バレエ音楽「ガイーヌ」より
~アンコール~
吉俣良/渡辺哲也 - 大河ドラマ「江」

知り合いのご紹介で伺った。なんと、あの広大なオペラシティのコンサートホールがほぼ満席…驚き。そういえば、このホールに入るのも久々だなあ。リサイタルホールのほうはちょくちょく伺っているのだが。プログラム冊子を見ると、団員の本業の所属が書いてあるのが面白い。取締役と一般社員が並んで楽器を演奏しているとか、なかなか想像できないが、ステージ上に立てば誰しもが演奏者なのだ。でも、やっぱりやりづらそうな…そんなことないのかな?

演奏は、ボコックの技巧的なファンファーレから始まった。"ウィンド・オーケストラ"を具現化したような三角形の理想的なバランス。聴いていた位置によるのかもしれないが、やや金管系は抑えめなサウンド。指揮者の音楽性も手伝い、また、バンダの演出も交えて華やかに冒頭曲を飾った。「美女と野獣」は、さすが演奏者の共感度も高く、手慣れたもの。

そして、チューバの家中勉氏を迎えての3曲。家中氏の演奏は、オペラシティコンサートホールという場所でも余裕の響き。上面の反響板にぶつかって、会場全体に音が拡散しているのだろうか。演奏は、エンターテイメント性あふれるもので、大変楽しめた。バックのオーケストラは、グレグソンの現代的なリズム・和声処理にやや不満が残った(確かに、グレグソンは難しい…)が、さすが「チューバ吹きの休日」などは、良い協奏感、が出ていたような。

休憩を挟んで、バーンスタイン。難しい曲だが、全体的な構成も練り上げられており、最初おとなしく始まったと思ったら、最終部に向けて煽る煽る。各ソロも奮闘し、聴き応えがあった。ラフマニノフは「あれ?」という感じだったのだが(この和声とメロディは難しいっす)、最後のハチャトゥリアンはさすがだった。アンサンブルもしっかりと合わせられており、高レベルな演奏だった。もうちょっとガツンと来てほしいところもあったが、おそらくこの団体の音色のスタンスなのだろう。こちらのソロも、いずれも見事だった。

アンコールは「江」。タイムリーで、客席もずいぶんと湧いていた。

2011/06/02

ん!?

ケネス・チェ氏と須川展也氏のデュオ・リサイタル売り切れなの!?仕事が読めず、まだチケット買ってなかったのに…(>_<)ありえーん!!

とりあえず、明日ホールに電話してみよう…。

2011年ララン氏来日

国内サクソフォン界ではすっかりおなじみとなったジェローム・ララン Jérôme LARAN氏が、今年も来日する。

http://www.jeromelaran.fr/

【ジェローム・ララン サクソフォンリサイタル"FANTASIA"】
出演:ジェローム・ララン(sax)、ミカエル・エルシェイド(pf)、ヴィーヴSQ
日時:2011年7月14日(木曜) 19:00開演
会場:東京オペラシティ・リサイタルホール
料金:一般4000円、学生3000円(いずれも前売り料金)
プログラム:
P.モーリス - プロヴァンスの風景
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ
A.ピアソラ/浅利真 - アディオス・ノニーノ
問い合わせ:
3key73@gmail.com(CONTINUO JAPAN)

ララン氏は、来日のたびに、現代フランス・サクソフォン界のありのままの姿を、新鮮な驚きと感動をもって味わわせてくれる。昨年はフェスに来日したが、クラリネットのために書かれたナントカという超絶技巧作品を、多くの聴衆の前で見事に料理してみせた。この人に、サクソフォンを操る限界なんて無いのではないか…などとも思ってしまったほどだ。

実質的な初来日だった「サクソフォン旋風」(ほぼ全編サクソフォンとエレクトロニクスの演奏会)、「舵手の書」の日本初演となった声、サクソフォン、ピアノの演奏会@アプリコ、コンティニュオを引き連れての来日など、思えばいろいろと聴いてきたが、こんどはモーリス&吉松という超スタンダード。吉松隆作品は、これは本当に楽しみだなあ。

公式ページにも掲載されていたが、今回の来日ではCafuaへのCDレコーディングも行う予定とのこと。どんな作品を収録するのか、こちらも楽しみに待ちたい。

フェリペ氏のグラズノフ「協奏曲」の録音

アントニオ・フェリペ Antonio Felipe Belijar氏は、スペインにおける最高のサクソフォン奏者の一人である。アドルフ・サックス国際コンクール(ディナン)に3回連続入賞というトンデモない経歴を持つ奏者であり、わたしも録音や映像で演奏に触れたことがあるが、隙のないテクニック、超絶技巧、軽やかな音色、といったところが印象深い。

そのフェリペ氏のグラズノフ「協奏曲」の録音を紹介したい。グラズノフの「協奏曲」は、プロフェッショナルからすれば技術的には困難がない作品だとされている(らしい)。技術的な部分が蒸発したあとに残るのは音楽性だが、その部分に関しても高いレベルに達している録音は多いと思う。というわけで、個人的に考える"名演奏"は多いのだが、そこにフェリペ氏の録音をぜひ付け加えたいと思う。

下記ページの123番をお聴きいただきたい。
http://www.adolphesax.com/index.php?option=com_weblinks&view=category&id=61&Itemid=618&lang=en&limitstart=100

この録音は、かつてフェリペ氏の公式ウェブサイトで公開されていたのだが、現在では聴けなくなっているもの。何かのコンクールの本選のライヴ録音のようなのだが、実にクオリティの高い演奏なのである。奇跡の名演…などと言うと大げさかもしれないが、確かにここでは様々な要因がプラスに働いて、聴き応えのある演奏となっている。もちろん、奇跡というのは起こるべくして起こるものであり、フェリペ氏の演奏技術や音楽性、指揮者の深い理解、オーケストラのテンションなど、全てが良い方向だったことが想像できるが。

…と、いろいと書いてしまったが、とにかく現代サクソフォン界におけるグラズノフ「協奏曲」の理想型のひとつだと考えている。