2010/05/31

Robert Muczynski氏、逝去

アルトサクソフォンのための「ソナタ」で有名な、ロバート・ムチンスキー氏が逝去したそうだ。合掌…。

「ソナタ」は、けっこう好きだ。Andante MaestosoとAllegro Energicoの2つの楽章から成るコンパクトな作品で、とにかくどちらの楽章も第2主題がカッコいいんだよなあ。

Wikipedia上の経歴を、簡単に訳してみる。
ムチンスキー氏は、シカゴに1929年に生まれた。DePaul大学で、アレクサンドル・チェレプニンに作曲を、Walter Knupferにピアノを師事。ピアノの演奏で、1950年に学士号を、1952年に修士号を得ている。1958年、29歳のときに、カーネギーホールで自作のピアノ作品を演奏して、楽壇にデビューした。その後、徐々に国内外に作曲でも認知されるようになり、管弦楽作品が数多くのオーケストラで演奏された。教育者としては、DePaul大学、ルーズヴェルト大学、アリゾナ州立大学で、それぞれ教鞭をとった。

彼の音楽は、次のように評されることもあるという。「ムチンスキーの音楽は、アーロン・コープランドの音楽のように非常にメロディアスで、かつアメリカのバルトークのように非常にリズミックで打楽器的だ。この2つの(ある意味)相反する組み合わせに、ジャズのハーモニーを加えて出来上がるのが、ムチンスキーの作品スタイルだ」

ムチンスキーがサクソフォンのために書いた作品は、次の3つ。ソナタと協奏曲は、Trent Kynaston氏に捧げられている。Fuzzetteという作品は、ナレーションとフルート、アルトサックス、ピアノのために書かれており、曲の内容や、そもそもの作曲動機が気になる…。

Fuzzette - The Tarantula(1962)
Sonata, Op.29(1970)
Concerto, Op.41(1981)

2010/05/30

サクソフォニー関連の練習

週末は、サクソフォニー関連の練習。

土曜日は、サクソフォニーのアンサンブルステージで演奏するオクテットの「リバーダンス」、そして日曜日は、サクソフォニーで「スカラムーシュ」の練習だった。ソリストは、國末貞仁さん。「スカラムーシュ」のオーケストラパートは、なかなか面白いですね。

本番まで一ヶ月を切って、そろそろ本番モードな感じ。さすがに人数が多いだけあって安心感はあるが(ん?)、気を引き締めてかかりたい。

2010/05/29

カキツバタSEの演奏会ライヴCD

カキツバタ サクソフォン アンサンブルの第1回の演奏会ライヴCD、なんとゆうぽんさんに一枚頂戴した。ありがとうございます~。サクソフォン交流会で、初めて演奏を聴いてウマさに驚き、よっぽど5/2の第1回演奏会を聴きに伺おうかとも思ったのだが、実家の方の急用で叶わず、悔しい思いをしていたところだった。こうやって聴くことができて嬉しいなあ。

~第1部~
Pedro Iturralde - Suite hellenique
Johann Sebastian Bach / 北方寛丈 - Partita No.3
Pierre Lantier - Andante et Scherzetto
中尾敦 - 片足の騎士
~第2部~
NAOTO / 啼鵬 - Sanctuary
Bill Whelan / 大島忠則 - Riverdance
Ludwig van Beethoven / 大島忠則 - Joyful Joyful
高野猶幸 - Greensleeves Variations
NAOTO / 啼鵬 - Samba of the Sun
~アンコール~
伊藤康英 - Fantasy on the Theme of Jupiter
啼鵬 - 森のくまさん

プログラムを見る限り、けっこう聴きやすい感じの曲が多いんだなあと思って聴き始めたら、なんと!!ものすごく聴きごたえがあって、飛び上がるほど驚いてしまった…。嬉しい誤算。テクニックや音色のレベルが、なんだかアマチュアらしからぬというか、凄く高いレベルで醸成されているのだ。ナゴヤのサックス、恐るべし…。

第1部も良いのだが(特に「片足の騎士」のイケイケな感じが…こういう曲だったのか!)、第2部の、ピアノ+四重奏や、サクソフォン八重奏が、とにかく鮮烈。思わずホロリとしたり(サンクチュアリ)、思わず踊りだしそうになったり(リバーダンス)、思わず手拍子をし始めそうになったり(ジョイフル)、高い技術と楽しさが塊になってスピーカーから飛び出してくる。ピアノはメンバーのmaimaiさん。絶品!!

おそらくメインと思われる「グリーンスリーヴス」も隅々まで練られていて、あまりライヴCDを聴いているという感じがしなかった。ちなみに、「サンバ」のソロも、ゲスト等の演奏ではなく、メンバーが独奏を務めている。どんだけレベル高いんだよーう。

この次はどんなプログラムで攻めてくるのだろうか。そして、今度こそ聴きに行きたいなあ。

YouTubeの宣伝用音源

ティモシー・マカリスター特集第5弾。

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おそらく佐藤渉さんか誰かが、マカリスター氏の許可をとってアップロードしたのかな?YouTube上に、マカリスター氏の録音が上がっていたので、ご紹介する。

ウィリアム・ボルコム「アルトサクソフォンと吹奏楽のための"演奏会用組曲"」
第1楽章 Lively
第2楽章 Like an Old Folksong
第3楽章 Scherzando
第4楽章 Introduction and Jump

ボルコムという作曲家、パリ音楽院でオリヴィエ・メシアンに師事し、当初はなんとトータル・セリーの音楽ばかりを作っていたということだが、上記の作品を聴く限りとてもそんなことは感じられない。ポピュラーとアカデミーを融合したとても聴きやすい音楽で、サクソフォン(超高難易度)もブイブイ言わせまくり。かっこいいなー。

2010/05/27

中華的薩克斯風響

ティモシー・マカリスター特集第4弾。

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良い機会なので、プリズム四重奏団 Prism Saxophone Quartetの「Antiphony(Innova 767)」を紹介する。サブタイトルはMusic from China…そう、なんと、全曲中国産のサクソフォン作品を集めたディスク。マカリスター氏云々というよりも、単純にアルバムとしての面白さから取り上げた。

サクソフォンのことは、中国語で「薩克斯風」とか「萨克斯风」とか書いたりするそうな。中国はかなり人口も多く、サクソフォンの浸透もそれなりにあると聞くが(あのパリ音楽院のサクソフォンアンサンブルだって、中国公演をしているのだ)、中国の曲や中国作品がCDになっているという話はあまり知らない。韓国ならあるんですが。そういった意味で、面白いコンセプトのCDだと思う。

王国維 - Songs
周龍 - Antiphony
雷身 - Yuan
陳怡 - Septet
タン・ドゥン - Shuang Que(二胡と揚琴)
イェン・ミンシュウ - Chinatown

二胡を担当する王国維の自作である「Songs」は、これはサクソフォン四重奏が参加しているとはいっても、ほぼ完全に中国の伝統音楽の様相を呈している。まあさすがにこの曲はアレだが、続く「Antiphony」も、明らかに中国音楽の延長線上にあるものだ。現代にあって、ここまで愚直に自国の音楽を作品へと取り込むのは、さすが中国クラシック音楽界の特徴だろう。日本も、そういう曲があって良いと思うのだが。

タン・ドゥンの作品が目を引くが、残念ながらサクソフォンは参加しておらず、二胡と揚琴のための作品。他の曲はほとんどが二胡とサクソフォン四重奏、そしてパーカッションを加えたものとなっている。プリズム四重奏団は、ある時は表に出て音楽を主導し、またある時は後手に回り、独奏を引き立たせる役割を神妙に担っている。面白いな。

2010/05/26

Prism Saxophone Quartet "Pitch Black"

ティモシー・マカリスター特集第3弾。

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ティモシー・マカリスター氏は、現在プリズム・サクソフォン四重奏団 Prism Saxophone Quartet のソプラノサクソフォン奏者を務めている。そのプリズム四重奏団の演奏による、JacobTV(Jacob ter Veldhuis ヤコブ=テル・フェルドハウス)の作品集「Pitch Black(Innova 693)」をご紹介。

テナーサクソフォンとゲットブラスターのための「Grab It!」を知って以来、JacobTVの作品には注目してきた。個人的にも、四重奏で「Heartbreakers Part1」を、テナーソロで「Grab It!」を演奏してしまうくらい好きなのだが、このアルバムが発売されるまでは、サクソフォン作品のまとまった作品集があまりなかった。そんなわけで、このアルバムのリリース時にはたいそう嬉しかったものだ。

(すべてJacobTVの作品)
Pitch Black
Billie
Postnuclear Winterscenario No.10
Grab It!
The Garden of Love
Jesus is Coming

四重奏とゲットブラスターのための傑作「Pitch Black」「Jesus is Coming」は、とても音場が近く、"生々しく肉感的な"演奏だと感じた。もともと声をサンプリングした素材を使用したJacobTVの作品であるから、コンサートホールのような響きはむしろ適さず、やや録音にクセがある(InnovaのCDは、みんなこうだ)ことが、かえってプラスになっているのかな、とも感じる。

ティモシー・マカリスターは、「The Garden of Love」で独奏を務めているのだが、これがまた良い演奏なのだ!ティエス・メレマといい勝負なのではないかな?技術的な部分はとうにクリアしているのはもちろんこと、なんだかとても色気のある演奏だ。おそらく、ヴィブラートの使い方によるものなのだと思うが…。

JacobTVの入門編として、大いに薦めたいディスク。日本でも、もっと流通すればよいなあ。Amazonへのリンクは、こちら(→Jacob TV: Pitch Black

2010/05/25

マカリスター氏とドゥダメル氏の共演

ティモシー・マカリスター特集第2弾。

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若き俊英、グスターボ・ドゥダメル氏は、2009年シーズンより、ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任した。就任記念コンサートの曲目は、ジョン・アダムスの「シティ・ノワール City Noir」とマーラーの「交響曲第一番」。マーラーの演奏もさることながら、委嘱・世界初演となったアダムスの新作が、非常に高い評価を得た。

「シティ・ノワール」は、長大なサクソフォンソロを含む。初演時に、サクソフォン奏者として参加していたのが、他ならぬティモシー・マカリスター氏。超高難易度のソロを見事に吹ききり、喝采を浴びた。その見事な演奏の一部を、YouTubeで観ることができる。「シティ・ノワール」第3楽章"The Boulevard Night"だが、トランペットのエレジックなソロを経て、曲の調子が一転、続いて、強烈なオーケストラのリズムに乗ってサクソフォンが咆哮する。目立つのは6:10付近からだが、トンでもない演奏だ。後半も、サクソフォンソロは、オブリガートとして常に目立ち続ける。

第3楽章の前半


第3楽章の後半


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追記。こちらのURLから辿れる映像のほうが、画質・音質ともに良好です。

http://video.pbs.org/video/1304120932/

2010/05/24

ティモシー・マカリスターの経歴

今日からしばらく、ティモシー・マカリスター Timothy McAllister特集やります。

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ティモシー・マカリスターは、ミシガン州立大学において、ドナルド・シンタ Donald Sintaにサクソフォンを、ロバート・レイノルズ Robert Reynoldsに指揮を師事した。同大学で博士号を取得し、音楽教育、指揮、演奏でも学士を取得している。在学中、優れた演奏家に贈られるAlbert A.Stanleyメダルを、サクソフォン奏者として史上初めて獲得した。また、ミシガン州立大学よりPaul C. Boylan賞を受けている。そのほか、国内外のコンクールで数々の賞を獲得した。

現在は、サクソフォンの独奏者、またプリズム・サクソフォン四重奏団のソプラノサクソフォン奏者として活躍中。16歳の時、ヒューストンの市民オーケストラとともに独奏曲を演奏して以来、アメリカはもとより、カナダ、メキシコ、フランス、スイス、イギリス他で演奏を行っている。2009年シーズンには、ロサンゼルス・フィルハーモニックに客演として招かれ、グスターボ・ドゥダメル指揮のもと、ジョン・アダムスの「シティ・ノワール」を演奏し、高い評価を得た。

録音にも積極的で、これまでにNAXOS、Arizon University Recording、Albany、Innova等から独奏・四重奏のレコーディングをリリースした。そのほとんどは国際的なレーベルであり、多くのCDが世界中で聴かれている。

教育者としては、アリゾナ州立大学のサクソフォン科教授として後進の育成にあたっている。

2010/05/23

今日は練習日

午前中は、しらこばと音楽団、午後はTsukuba Saxophone Quartet

しらこばと音楽団、初参加!東京のアマチュアサックス吹きにとって、しらこばと音楽団への参加はある意味ステータスであるような(笑)。6月13日の本番に向けて合わせをおこなった。今回は、ねえ。さん@ソプラノとアルト、ニジマスさん@アルト、mckenさん@バリトン、そして私kuri@テナー。なんかおなじみの方ばかりだ。パーカッションには、やまーさん(初めてお会いした)。初見ばかりだったが、面白かった。

Tsukuba SQは、午後から浦和コミュニティセンターで練習。練習場所のリーズナブルさはとんでもないな。こういった練習施設がいろいろなところにあると良いのだが。「ルパン三世のテーマ」「Night Club 1960」「グリーンスリーヴス」など。「ナイトクラブ」がどういった出来になるのが、ということが、一番興味がある。これはきちんとさらわないと…一筋縄ではいかない。

2010/05/22

日下部さんリサイタルの録音

エスポワールのアンサンブルコンサートは、別件の用事のため伺えませんでした。無念↓

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知人を通じて、日下部任良さんのリサイタル録音を聴かせていただいた。日下部さんは、マスランカ氏のマスタークラス&コンサートの際に初めてお会いしたサクソフォン奏者。愛知県立芸術大学を卒業したのち、関東へと進出し、ご活躍中である。その日下部さんが、京都でファースト・リサイタルを開いた時の録音だ。このリサイタルは、青山財団特別助成公演の一環として行われたそうだ。

【日下部任良サクソフォンリサイタル】
出演:日下部任良(sax)、常川沙希(pf)
日時:2009年12月10日 19:00開演
会場:青山音楽記念館・バロックザール
プログラム:
F.クープラン - 演奏会のための5つの小品
C.サン=サーンス - オーボエ・ソナタ
P.ヒンデミット - アルトホルン・ソナタ
常川沙希 - Fade blue
J.S.バッハ - 3つのコラール前奏曲
F.マルタン - バラード

ヒンデミット、バッハ、マルタンといったプログラミングは、師匠である雲井さんの影響を感じさせる。ほとんどが編曲ものだが、アルトサクソフォン一辺倒になりがちなサクソフォン関連の演奏会の中にあって、ソプラノからテナーまでが取り上げられていることも興味深い。

全般を通して、なにより音色の美しさには惚れ惚れとしてしまう。特に、アルトサクソフォンはコントロール含め、実にニュートラルな音が飛び出す。きっとライヴで聴いたらもっと美しいんだろうなあ。技術的な部分はほとんど完璧にクリアしており、世に出回っているCDなどと比べても遜色ない。今の方って、こんなに上手いのか。ヒンデミットの印象は、ピアノ共々強いなあ。

常川沙希氏の「Fade blue」は、委嘱作品だろうか。おそらく誰が聴いても自然と聴けてしまう、なかなか面白い作品。短い小品(4分ちょっと)であることが残念で、これが例えば9分とか10分とかの作品だったら、もっと受ける印象が違ったかもしれない。

うーん。今までは一緒にお酒を飲んだことしかなかったのでアレだったが、きちんと演奏を聴きたくなってきたぞ。東京でリサイタル開いてくれないかなー。

2010/05/21

雲井雅人氏のコンチェルト・リサイタル

【雲井雅人サクソフォーンリサイタル2010】
出演:雲井雅人(sax)、藤井亜紀(pf)、クァルテット・グラーツィア(qt cord)、菅原潤(fl)、庄司知史(ob)
日時:2010年5月20日 19:00開演
会場:津田ホール(JR千駄ヶ谷駅前)
入場料:全席自由4500円(学生4000円)
プログラム:
J.S.バッハ/大野理津 - イタリア協奏曲
A.K.グラズノフ/伊藤康英 - サクソフォン協奏曲
L.E.ラーション/成本理香 - サクソフォン協奏曲
J.S.バッハ - ブランデンブルク協奏曲第2番

仕事を切り上げて伺った。渋谷で東横線から乗り換え→代々木で乗り換え→千駄ヶ谷というルートだったのだが、乗り換えを頑張ったところ、なんとか開演10分前に千駄ヶ谷に着いた。到着すると、お客さんは9割5部の入り、という印象。

最初、ピアノの独奏により、J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲より"アリア"」が演奏された。会場の空気が、一気に外界と断絶されて、いかにもリサイタル!という雰囲気に変化する。最初、このゴルトベルクが演奏されたとき、アンコールはサクソフォンを交えた「ゴルトベルク」かな?とも思ったのだが、違った…(苦笑)。

「イタリア協奏曲」は、ソプラノサクソフォン。最初の音が出た瞬間から、ステージ上に華が咲いた。丸くて、ホール中を満たす極上の音。第2楽章の、通奏低音の上に乗りながら、どこまでも広がってゆく旋律線には、おもわずホロリ。こういうフレーズを吹かせたら、右に出る演奏家はほとんどいないのではないかなあ。ピアニストの音色変化がかなり面白い。相当にソリスティックに弾くこともあれば、すっと役割を交代して後ろに回ることもある。かなりアンサンブル慣れしているピアニストなのだなあ、と感じた。この曲は特に、弦パートの音程が散り気味だったのが残念。

グラズノフは、トンでもない演奏だった。もしかしたら、ご本人も会心だったのではないかなあ。15分近くのなかに、曲の大構造から、極小部分のフレージングまで、一貫した方向性のようなものが感じられ、実に興味深く聴いた。果たしてそうやって作りこんでいったのか、それとも自然にこんな構造が生まれたのか…どちらにしてもすごいことだ。ぜひ、アドルフ・サックスの楽器での演奏や、ラッシャー版(原典版)での演奏も聴いてみたくなった。伊藤康英先生のアレンジは初めて聴いたが、さすがの格を感じさせるものだった。

20分の休憩を挟んで、ラーション。これも楽しみにしていた。第1楽章と第3楽章に置かれているカデンツァが、味わい深かったなあ。楽譜を見てみると、相当テクニカルな譜面なのに、そういう面をことさらに強調せず、「うた」を聴かせていた。そして、第2楽章の天上の音楽のような美しさについても、述べておかなければならないだろう。この演奏を聴けて良かった!

最後の「ブランデンブルク協奏曲」は、なんだかとてもフシギな演奏。雲井さんの演奏姿は、ソプラニーノを神妙に、禁欲的にコントロールしているようにも見えたのだが、出てくる音ははちきれんばかりの楽しさに充ち満ちていたのだ。第3楽章を聴きながら、この時間がずっと続いて欲しいと思った。

アンコールは、フルートとサクソフォンのパートをひっくり返した、ビゼー「アルルの女より"メヌエット"」。

雲井さんの近年の積極的な演奏活動には目をみはるものがある。ひとつひとつが新鮮で、機会ごとに驚きをもっている。次は何をやってくれるのだろうか…楽しみに待ちたい(mckenさんと同じ〆になってしまった笑)。

2010/05/19

同日開催

いろいろな情報をたぐり寄せ、過去に遡れるぶんをリストアップしてみた。なんだか、ときどきありますね。しかも、大抵両方ともが重要な演奏会だという…(苦笑)。私は、明日は津田ホールに伺う予定。チケットが届かないのだが、当日券で頑張って入ろう。

・2010/5/20
雲井雅人サクソフォーン・リサイタル@津田ホール
Saxaccord@東京オペラシティリサイタルホール

サクサコールは、なんだかプログラムが面白そうなのだよなー。なんと、テリー・ライリーの「トレッド・オン・ザ・トレイル」をやるのだとか!!いいな!!

・2007/7/20
ジェローム・ララン「息の横断」@大田区アプリコ・小ホール
カルテット・スピリタス@津田ホール

このときは、ほぼ迷わずラランさんのリサイタルに伺った。野平一郎の「舵手の書」を初めて聴いたのも、ここだった。ラランさんの国内初リサイタルとなった「サクソフォーン旋風」とともに、強い演奏が残っている。よく覚えているのは、その年の11月のドゥラングル教授のリサイタルチラシが挟まっていたこと。

・2005/12/15
東京シンフォニエッタ定期公演 独奏:ダニエル・ケンジー@東京文化会館小ホール
小串俊寿 Happy Sax 2005@銀座ブロッサム中央会館

両方とも聴きに行けなかった。ダニエル・ケンジー氏は、入野音楽賞を受賞したディアナ・ロタル「シャクティ」の独奏者に作曲者自身の指名により抜擢、初来日となった。同曲はその次の年のサクソフォーン・フェスティバルで聴けたが(演奏は平野公崇氏)、かなりの名曲であった。CDが出ているらしいのだが、ディアナさんとメールして送ってくれるという話をもらったっきり、音沙汰がなくなってしまっている。

・2003/6/27
雲井雅人サックス四重奏団@東京オペラシティ・リサイタルホール
ヴァンサン・ダヴィッド リサイタル@浜離宮朝日ホール

これも両方とも聴きに行けなかった。大学入学したてで、あまり余裕がなかったからなあ。

サクソフォン交流会ウェブページ移転

サクソフォン交流会の反省会で課されたアクション・アイテムをひとつ処理。サクソフォン交流会のウェブページを移転した。以前のサーバは、挿入されるコードのためか、Internet Explorerで閲覧したときにCSSが読み込まれないという不具合があった。

ninjaの無料スペースをレンタルしてページを移動、さらに掲示板を新設した。下記リンクからどうぞ。

http://enjoysax.michikusa.jp/

2010/05/18

サクソフォン交流会の反省会

本日、急な予定で実家に帰ることとなって、慌ただしく日帰り。ゆっくりと空を眺める時間くらいはあったのだが、それにしても長野はのどかだなあ。普段仕事をしていると忘れてしまうが、時間の進み方が違う。

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日帰りの帰路で新宿に寄り、サクソフォン交流会事務局の反省会を行った(もちろんお酒はナシで)。いろいろと課題は出てきたのだが、難しいのはそれを活かしていく部分。良い方向に持っていければいいな。

次回開催についての話も出た。次の一回分は、この初速を維持したまま一年以内の開催を目指したいという案も出ている。これについては、やはり会場確保の問題が大きいだろう。公式にアナウンスできるのは、ハコの問題がクリアされたあとになるだろうと思う。

2010/05/17

デファイエの演奏映像「世界の創造」

ダニエル・デファイエ氏が参加したダリウス・ミヨー「世界の創造」の映像があることが判明した。Twitter上でのちょっとした経緯があったのち、DONAXさんに教えていただいた。

件のDVDは、バーンスタイン御大のDVDボックスセットの一枚。Orchestre National de Franceとの演奏で、1976年11月の録画なのだそうだ。シャンゼリゼ劇場。Amazonの購入リンクは、以下。
Bernstein DVD Box

抜粋映像をDonaxさんにアップロードしていただいた。紛れもなくデファイエだ…。演奏が始まる前に、バーンスタインは、コンミスと、その隣の女性と、そしてデファイエに握手を求める。バーンスタインの、デファイエに対する信頼の大きさを目の当たりにしているようだ。続いてさり気なく始まる冒頭のフレーズは、EMIに吹き込まれている録音よりも、さらに物悲しく美しい。

ああ、メタルのマウスピースだ…。この編成の中で、他の楽器がいくらテュッティ吹こうとも抜けてくる音。あまりの存在感の大きさに驚いた。

2010/05/16

この土日

デファイエが映っているのミヨー「世界の創造」の映像の話題とか、ティモシー・マカリスター来日の話題とか、いろいろ書きたい&書かねばならないことがたまってきた。いくらニッチな市場向けのブログとはいえ、話題が付きないのはありがたい事だ(笑)。

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土曜日はサクソフォニー、日曜日はTsukuba Saxophone Quartetに、それぞれどっぷりだった。両日とも、朝10時から夕方の5時くらいまで、じっくりとさらったり合わせたりして、クタクタ。でも、面白かった。

TSQのほうは、サキソフォックスの楽譜を大量に持ち込んで、初見大会。次の演奏機会に向けて、何曲かさらうことにした。サキソフォックスの楽譜からピックアップした曲は、グリーンスリーヴス、長崎は今日も雨だった、雪國、チェッカーズ・メドレー、天空の城ラピュタメドレー。その他、Boirpy編曲のピアソラ「タンゴの歴史」から"Night Club 1960"、大島忠則氏編曲の「キャラバンの到着」、おなじみ、ブノワ・メニュ Benoît Menutさんのアレンジで「トリップ・トゥ・スカイ」と並んでかっこいい「An Awen」…といったところ。7月くらいに、つくば市の某居酒屋で演奏する予定(具体的な日取りはまだ決まっていない)。

それにしても、演歌は楽しいですねー。個人的に「長崎は今日も雨だった」のサキソフォックス編曲版は強烈にオススメ。サキソフォックスのなかで、一番好きかも。

2010/05/15

再掲、雲井雅人氏リサイタル情報

日付が近づいてきたので、再掲する。雲井雅人氏のリサイタルが、来週木曜日に迫ってきた。私も、やや仕事のほうが忙しいが、なんとか都合をつけて伺おうと思っている。

「ドリーム・ネット」に収録されているものと、ムジクケラー音楽事務所解散ライブの、それぞれの「ブランデンブルク協奏曲第2番」を聴いてみた。バッハが作った「世界でいちばん愉しい音楽」に、サクソフォンという楽器が最高の演奏で参加している。嬉しさのような誇りのような、フシギな感情が沸き上がってきた。

【雲井雅人サクソフォーンリサイタル2010】
出演:雲井雅人(sax)、藤井亜紀(pf)、クァルテット・グラーツィア(qt cord)、菅原潤(fl)、庄司知史(ob)
日時:2010年5月20日 19:00開演
会場:津田ホール(JR千駄ヶ谷駅前)
入場料:全席自由4500円(学生4000円)
プログラム:
J.S.バッハ/大野理津 - イタリア協奏曲
A.K.グラズノフ/伊藤康英 - サクソフォン協奏曲
L.E.ラーション/成本理香 - サクソフォン協奏曲
J.S.バッハ - ブランデンブルク協奏曲第2番
問い合わせ:レックス→http://www.concertrex.jp/

2010/05/14

サクスケルツェット2010

昨日、原博巳さんのブログを観ていて、本日サクスケルツェットの演奏会があることを知り、慌てて行ってきた。洗足学園音楽大学は、アクセスは大変良く、職場から電車で数駅乗り換えなしの場所にあり、足を延ばしやすい。聴きに行ったのは第1回の演奏会以来だったが(その話は後ろに置くとして)聴きに行けて良かった!たまにはこうやってサックス漬けになるのも悪くないなあ。

【洗足マスターズコンサート Vol.1 管楽器の名手たち "Saxcherzet"】
出演:冨岡和男、服部吉之、宗貞啓二、池上政人、岩本伸一、大城正司、平野公崇、原博巳、林田祐和、貝沼拓実、田村正寛、大貫比佐志(以上サクソフォン講師陣)、大川千都、野村亮太、鳥井綾子、東秀樹、津田征吾、橋本恭佑(以上賛助)、稲川美穂(hrp)、洗足学園音楽大学打楽器コース生
日時:2010年5月14日(金曜)18:30開演
会場:洗足学園前田ホール
プログラム:
ビル・ウィーラン - リバー・ダンス
ジャン・アブシル - ルーマニア民謡の主題による組曲(大城正司、池上政人、貝沼拓実、原博巳)
福田洋介 - サクソフォン・シャンソネット(田村正寛、池上政人、林田祐和、岩本伸一、大貫比佐志、原博巳)
パウル・ヒンデミット - コンチェルトシュトック(林田祐和、貝沼拓実)
ヨハン=ゼバスティアン・バッハ - 主イエス・キリスト、汝われを呼ぶ
ヨハン=ゼバスティアン・バッハ - 平均律クラーヴィア曲集第一巻より、第二番"プレリュード"(平野公崇、池上政人、林田祐和、貝沼拓実、原博巳、田村正寛)
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー - バレエ「くるみ割り人形」組曲

アブシルはこの演奏会のためだけのメンバーの四重奏だったが、このくらいの名手が集まってしまうと、もう面白くて面白くて。第5楽章の、目が回るようなミニマル風民族音楽(笑)も、細かい部分は合っていないのに、自発的な音楽がホール中に満ちてくる。とんでもない演奏だった。

「サクソフォン・シャンソネット」は、SAX EXPOの協奏曲版で有名な福田洋介氏の作品。始めて聴いたが、おお、いい曲!!第1楽章から第4楽章まで、順にソプラノ~バリトンがフィーチャーされている。第1楽章は、なんとソプラノ6本のフーガから始まる。第3楽章はテナーが大見得を切り(岩本氏のソロの、味わい深いこと!)、「グルダのチェロ協奏曲の、第5楽章の雰囲気」の第4楽章では、バリトンが動く動く。大変に難しそうだが、これは…ちょっとやってみたいかも。

休憩を挟んだ後の「コンチェルトシュトック」、林田氏と貝沼氏の演奏は、上手いのは当然のことながら、少人数ながら、客席の空気を縛り上げて高い緊張感の中で演奏を提供することに成功していた。空気の緩急って、面白いですね。

バッハは、もうこれは「平野公崇の世界」。すごすぎる…と思ったら、平均律クラーヴィアでは、池上政人氏がジャズバリバリのアドリブを披露!(途中でイベールのフレーズまで飛び出す始末…明らかにジャズを学んだことがある風の貫禄)。最終的には、CD「l'air」の1.5倍速くらいのスピードで、炎のように駆け抜けてしまいました。大喝采。

メインのチャイコフスキーは、なんと20名近くが一列に並んでの演奏だったが、4重奏だろうと20重奏だろうと、やはり立ち上ってくる音楽のオーラはものすごかった。たぶん、我々がやる"ラージ"などとは、根本的に感覚が違うのかなあなどとも思ってしまった。

アンコールに、冨岡氏、貝沼氏、ハープの稲川氏によるトリオと、林田氏と田村氏をソロに迎えた「チャルダーシュ」。およそ2時間半に及ぶコンサートだったが、楽しい思い出ばかりとなった。

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ちなみに、第1回のプログラムはこんな感じだった。ブログにも、当時の記事が残っていた!それにしても、衝撃度とか、新鮮さとか、自分の聴き方とか、いろいろ変わるものはあるけれど、さすがに第1回の演奏を聴いてしまうと、それだけでお腹いっぱいです(笑)いまでも演奏を思い出せるほど、第1回目の印象は強かった。

H.ヴィラ=ロボス - ブラジル風バッハ第1番
S.バーバー - 想い出
D.ミヨー - スカラムーシュ
A.ピアソラ - ブエノスアイレスの春
山田武彦 - ウェストサイド'96
M.ラヴェル - マ・メール・ロワ

さらにアンコールに、池上政人氏のカーペンターズを4曲、ラージバックの服部吉之先生のモンティ「チャルダーシュ」、全員でのスカラムーシュ・ショートバージョン。うわ、懐かしっ。

2010/05/13

Ponder Nothing

一作日に引き続いて、スーザン・ファンチャー Susan Fancher氏のアルバムを紹介する。先に、ファンチャー氏の経歴について簡単に書いておきたい。女流サクソフォン奏者で、ボルドー音楽院でジャン=マリー・ロンデックス氏に、ノースウェスタン大学でフレデリック・ヘムケ氏に、それぞれサクソフォンを学んだ。ノースウェスタン大学では、ジャチント・シェルシ Giacinto Scelsiのサクソフォン音楽について論文を書き、博士号を取得している。現在は、デューク大学で後進の指導にあたりつつ、演奏家としてのキャリアも広げているそうだ。

作曲家とのコラボレーションも多く、テリー・ライリーや、フィリップ・グラスなどとも一緒に仕事をしたことがあるそうだ。へええ。例えば、Boosey & Hawkesから出版されているスティーヴ・ライヒ「ニューヨーク・カウンターポイント」のサクソフォン版は、彼女が編曲を行ったものである。

「Ponder Nothing(Innova 564)」は、彼女の実質的なデビューアルバム。テープとのデュエット、多重録音、ピアノとのデュエット、独奏曲など、様々な領域へ踏み込んでおり、守備範囲の広さを伺わせる。

Steve Reich - New York Counterpoint
Giacinto Scelsi - Tre pezzi
Mark Engebretson - She Sings, She Screams
Ben Johnston - Ponder Nothing
Wolfram Wagner - Sonata
Alexander Wagendristel - Saxoscope

まず、選曲についてだが、最初の3曲は個人的にどの曲も大好きな作品であり、取り上げられていることが嬉しい。後半の三曲は、どれも初めて聴く作品で、興味深く聴いた。「Ponder Nothing」は、アルトサクソフォンのために書かれた変奏曲形式の無伴奏作品だが、とても自然に身体に染み入ってくるメロディで、10分以上の長い作品にも関わらず、楽に聴き通せてしまった。ワグナーの「ソナタ」は、第1楽章から順に、変奏曲、スケルツォ、ノットゥルノ、プレストというスタイルで書かれたもの。「Saxoscope」は、特殊奏法も交えた無伴奏作品。

そんなわけで、最初の4曲を繰り返し聴いている。「New York Counterpoint」と「Tre Pezzi」は、他にもかなり良い演奏があるためやや分が悪いかもしれないが、なかなか健闘していると思う。「New York Counterpoint」は、第3楽章のリズムがやや滑って、グルーヴ感が失われてしまっているのがやや残念だった。やはりこの曲は、指定テンポ&リズム通りに、クールかつ精緻に演奏されるのが好きだな。

「She Sings, She Screams」は、紛れも無い名演!後半の"叫び"のパートが素晴らしい。リチャード・ディーラム氏の演奏盤では、キレずに終わってしまった感があったが、この演奏はその不足部分を補うものだ。前半のしなやかな音色も、ぞくぞくしてしまう。「Ponder Nothing」も、特別なことをやっているわけではないのに、魅力があるなあ。

Amazonへのリンクは、こちら

2010/05/12

うた

どちらもちょっと前にYouTubeで見つけた映像で、すごいなあと思って聴いている。いくらサクソフォンの名手を聴いても、これに匹敵する「うた」を歌える人は、なかなかにいないだろう、と思う。ちょっと感動してしまった。

美空ひばりが歌う「リンゴ追分」。おそらく、彼女が15歳くらいの頃かと思う。最初、ひとこと、ふたことしゃべってから歌い始めるのだが、その時の目つき・オーラの変化に「!?」と引き込まれ、次の瞬間には見事な大人の歌い手に変貌を遂げる。これはすごい。


KLANG Weblogでも紹介されていたため、知っている方も多いのではないだろうか。エドゥアルド・ヒルというロシア…じゃなかった、ソヴィエトの歌謡曲界の大物が歌う、「I am very glad, because I'm finally returning back home」というヴォカリーズ。踊りとか表情とか、なぜヴォカリーズなのかとか、ツッコミどころは満載なのだけれど、トンでもなく上手い。


声の表現力の高さを思いさらされた気分だ。オペラ等は食わず嫌いでほとんど聴かないのだけれど、こういうのもたまには聴かないと。

2010/05/11

In Two Worlds

Innovaから出ている、Susan Fancherの最新の(というほど新しくないか)アルバムを聴いた。「In Two Worlds(Innova 736)」という、全編サクソフォンとエレクトロニクスのために書かれた作品を収めたアルバムだ。

同じコンセプトのものであると、Stephen Cottrellの「The Electric Saxophone(Clarinet Classics)」、John Sampenの「The Electric Saxophone(Capstone)」、Fabien Chourakiの「Paysaginaire」、Daniel Kientzyの各種アルバム、国内でも齋藤貴志氏の「絶望の天使(コジマ録音)」等々があるが、まだまだ少ないなあという状況。もっと増えてほしい。

James Paul Sain - Slammed
John Anthony Lennon - Aeterna
Morton Subotnick - In Two Worlds
Reginald Bain - Jovian Images
Mark Engebretson - SaxMax
Edmund Campion - Corail
Judith Shatin - Penelope's Song

サクソフォンとエレクトロニクスのCDを聴くときは、基本的に「良い曲探し」となる。同じ作品が何度も録音されることは稀だし(本当はそれじゃいけないのだが)、やっぱりツボにはまる作品を見つけた時の嬉しさを求めてこそだ。そういった観点からすると、「私的大ヒット!」という作品は残念ながら含まれていなかったなあ。いちばん面白かったのが、マーク・エンゲブレツォンの「SaxMax」だが、タイトルからもうちょっと派手なサウンドを想像していたところ、やや拍子抜け。Maxって、MAX/MSPのMax?

多彩なサウンドで、各作品のエレクトロニクスパートの個性を感じることができたのは良かった。サクソフォンと濃密に絡んだり、バックに徹したり、エフェクトがかかったり…。また、サクソフォンソロパートも、様々な工夫が施してあって、聴いていて飽きない。

スーザン・ファンチャー Susan Fancher氏の演奏は、かなり技術レベルが高い。作品をダイレクトに聴き手に届けてくれている印象を受けた。ファンチャー氏の「Ponder Nothing」、まだレビューしていなかったなあ。今度記事を書こう。

2010/05/10

最期の拍

日曜日に、柏原卓之さんがサクソフォニー内のアンサンブルのために編曲した「リバーダンス」の練習があった。ずいぶんと急ピッチで仕上げられた楽譜のようなのだが、それにしても素晴らしいアレンジで、吹いていて楽しいなあ。

八重奏の練習に参加していて思ったのだが、小節の最後の拍の処理ってとてつもなく難しいなあ。どう吹くか、ということの前に、単純にテンポやビートがぶれてしまうのだ。これは、土曜日に(遊びで)WX5を使ってライヒの「NewYork Counterpoint」を独りで多重録音していたときにも思ったことで、とにかくフレーズの終わり、刻みの終わりに、テンポがぶれたり音程が狂ってしまうのだ。

飛行機と同じで、テイクオフとランディングが重要。「Critical 11 minutes」という言葉は、テイクオフ後の3分間とランディング直前の8分間に飛行機事故が集中しているということを表す言葉だが、楽器の演奏に例えれば「Critical 11 beats」とでも名付ければ良いのですかね。とにかく、神経を尖らせなければいけない部分であるなあ、と思った。良い演奏がしたいですね。

2010/05/09

She Sings, She Screams

一番最初に聴いたサクソフォンとエレクトロニクスのための作品は、Wayne Siegelの「Jackdaw」だった。バリトンサクソフォンと、鳥の鳴き声とシンセサイザー音がミックスされたようなテープパートを組み合わせた音楽で、調性があってとても聴きやすい曲だ(ここから試聴できる)。もともとバスクラリネット作品であったのを、作曲者のシーゲル氏がバリトンサクソフォン用に置き換えて作った作品なのだそうだ。

そして、たしか次に聴いたサクソフォンとエレクトロニクスの作品が、Mark Engebretson氏の「She Sings, She Screams」であった。これは、アメリカのサクソフォン奏者、リチャード・ディーラム Richard Dirlam氏のアルバム、その名も「She Sings, She Screams(Innova 543)」を高校生の頃に買って、知った音楽だった。凄いジャケットでしょ。一曲目「The Bear」の強烈なバリトンサクソフォン四重奏にもやられたのだが、一番印象深いのが、この「She Sings, She Screams」。

初めて聴いたときは、ジョン・ケージの「She is Asleep」を想起させる音楽だな、という印象を受けた。冒頭、柔らかなサクソフォンの一声、さらにそこに絡むYAMAHAのシンセサイザーの硬質な音は、まさに女声とトイピアノという「She is Asleep」の編成・響きと近いものがある。

全般を通して調性感に溢れており、聴きづらい部分はまったくなく、各所に散らされた微分音もとても音楽的だ。サクソフォンの音色がシンセサイザーと対比をなし、際立って美しい。後半は、「Screams」のパート。サクソフォン、エレクトロニクスの両者が徐々に熱を帯び、やがて絶叫を迎える。この構成感も、単純だけれど聴き手は興奮するというものだ。最期は、波が引いいたようにおさまってしまう。

この作品が収録されているCDで、確認できているのは以下の二枚。現代のアメリカサクソフォンの多様性を知ることができ、どちらもオススメです。
Richard Dirlam「She Sings, She Screams
Susan Faucher「Ponder Nothing

ハバネラSQの動画

おなじみ、ハバネラ・サクソフォン四重奏団のサイトが、知らないうちにリニューアルされていた。

http://www.quatuorhabanera.com/

以前までのウェブサイトは、いかにも1990年代に作られました、といった趣の、HTMLとCSSくらいしか使用されていない外観だった。リニューアルされて、最近のフランス系ウェブサイトのご多分に漏れず(?)Flashを駆使したリッチなページへと変貌を遂げたようだ。

ふんふんと様々なコンテンツを眺めていると、びっくり!なんと演奏動画が大量に紹介されているではないか!これは嬉しい。上段メニューの「media」をクリックすると、大阪国際室内楽コンクール後の入賞記念ツアーの映像、スクラヴィスとの共演映像、ボルドー潜水艦基地での映像(DVDにもなっている)、タンゴ・ミュジシャンとの共演映像、清水靖晃氏との共演映像(!)等々、興味深いものが満載である。スクラヴィスとの共演映像が、もうとにかくカッコ良すぎる!!

いくつかの演奏映像は、途中で途切れている。ルイ・スクラヴィスの「Attente et Danse」は全部観たかったよー(;_;)

2010/05/07

平野公崇氏のエッセイ

昨日ネットを探索していたら、いつの間にか平野公崇氏のエッセイ「多事奏音(Pipersで連載中)」の、オンライン公開版が追加されていることに気付いた。今までNo.31までしかなかったはずなのに、いつの間にかさらに30タイトルほど追加されていたのだ。これは嬉しい!

いくつか、オモシロイと思ったものについてリンクを張っておく。まだ私もほとんど読んでいないのだが、どれも一見の価値あり、と思う。ページ下部にあるリンクから、好きなNo.のエッセイに飛ぶことができる。

ダニエル・デファイエ
→平野氏が管打で優勝したときに、審査員をしていたのだそうだ。知らなかった!

ヴァンソン・ダヴィッド
→日本でも共演してましたね。

ジャン=マリー・ロンデックス
→平野氏は、第1回ロンデックスコンクールの優勝者である。

アラン・サブレー
→おなじみ、「ボザ山中腹」の作曲者。

他にも、平野さんと共演した国内、海外のミュジシャンが出てきたり、アナリーゼの話題にはあのルーシー・ロベールが出てきたり、有元利夫「七つの絵」に関する作曲経緯、さらに何気ない日常の出来事を面白く描写してみたり、「エッセイ」としての面白さも最高。ぜひ隅々まで読んでいただきたい。

2010/05/06

ジーン・ハーロウの墓標 on YouTube

シャルル・ケックラン Charles Koechlinが作曲した、サクソフォン、フルート、ピアノのために書かれた傑作「ジーン・ハーロウの墓標 Epitaphe de Jean Harlow, op164」。その動画が、YouTubeにアップロードされていた。サクソフォンは、プリズム四重奏団のTaimur Sullivan氏。いやあ、本当に美しいですね。



この曲が市民権を得ているのって、おそらくロンデックス氏が吹き込んだLPのおかげではないかなと思う。「Musique de Chambre avec saxophone(EMI C 063-10734)」という1970年のLPに、ロンデックス氏はサクソフォンを含む室内楽作品を一挙に録音しているのだ。ロンデックス氏、なんとこれがセカンドアルバム。サクソフォンのレパートリーを開拓せんとする気合を感じる。

LPの原盤は、以前木下直人さんに譲っていただいたものがあり、所持している。また、EMIから復刻盤も発売されており入手しやすいはず…と、思っていたら、いつの間にかAmazonからカタログ落ちしている。店頭の在庫を狙ってみるのが良いかもしれない。

Heitor Villa Lobos - Sextuor mystique
Paul Hindemith - Sonate
Joaquin Nin - Le Chant du Veilleur
Andé Jolivet - Fantaisie-Impromptu
Jacques Chapentier - Gavambodi2
Charles Koechlin - Epitaphe de Jean Harlow op.164
Henri Tomasi - Printemps
Conrad Beck - Nocturne

2010/05/05

コンティニュオ

いやー、面白かった!

【オルネイスボワ音楽院&洗足学園音楽大学 サクソフォン交流演奏会】
日時:2010年5月5日(水曜)14:00開演
会場:洗足学園音楽大学講堂(2400)
オルネイスボワ音楽院プログラム:
C.ドビュッシー/栃尾克樹 - 小組曲
鈴木純明 - アンチエンヌ
A.マルケアス - Engrenages
B.バルトーク - ルーマニア民族舞曲
D.ミヨー - スカラムーシュ
G.フェイドマン - Itamar Freilach(アンコール)
洗足学園音楽大学サクソフォンオーケストラプログラム:
S.ラフマニノフ/森田一浩 - パガニーニの主題による狂詩曲
D.ショスタコーヴィチ - バレエ組曲「ボルト」より
G.フォーレ - パヴァーヌ(アンコール)
J.マティシア - 悪魔のラグ

おなじみジェローム・ララン Jérôme Laranさんが、自身が教鞭をとるオルネイ=ス=ボワ Aulnay-sous-Bois音楽院の教え子たちとともに、サクソフォンアンサンブル"Continuo"として来日した。弟子の中には、野村亮太氏を始めとして日本人が多く、洗足学園音楽大学のサクソフォンオーケストラとの共演は、どのような経緯で決まったのだろうか。原博巳さんつながりだけ、というわけではなさそうだが。

ラランさんがソプラノサクソフォンのトップを勤め、以下、
辻友香里(ssax)
リー・ジャイン、マリアンヌ・ドゥモンショー、アレクシア・ヴィヴォン(asax)
喜古旬美、野村亮太(tsax)
鈴木陽平、ティボー・カナヴァル(bsax)
という布陣。ティボー・カナヴァルさんは、ラランさん、原博巳さん、大石将紀さんとともに、サクソフォン四重奏団"ランドスケープ"のテナーサクソフォン奏者としても名前を知っている。

ドビュッシーの小組曲から始まったが、良い意味で期待を裏切る熱い演奏。第2楽章で、曲が終わってしまったかと思った(笑)。音色のヴァリエーションの多さと、ぼやけたピアニシモからホールを震わせるようなフォルテまで、"表現"の二文字に大きく重心が置かれている。全体的な構成感よりも、瞬間瞬間のスナプショット的興奮を存分に堪能した。しかし、改めてラランさんはとんでもないですね(^^;丸くふくよかな音色、フラジオ音域まで駆け登っても、音が潰れるどころかますます輝きを増していくのだ。ちなみに、ソプラノサクソフォンのときは、ずっとストラップを付けていなかった(流行っているのかな?)。

「アンチエンヌ」は、アルトサクソフォンのトップを務めていたリー・ジャイン氏がラランさんとともに演奏。楽しみにしていた「歯車のように Engrenages」は、ヴィヴォンさん、辻さん、喜古旬美さん、ジャリンさんがそれぞれSTABを演奏し、ラランさんがバリトンで即興をとる。かなり複雑な、まさに「歯車のように」各楽器が噛み合う楽譜の上を、ラランさんが自在に音を並べてゆく。微妙に、即興パートと四重奏パートの間に齟齬があったような印象を受けたのが残念。最後は即興パートが〆るのだが、なんとラランさん、ここでペンタトニックのスケールを持ち出して、エコーを繰り返しながら終わらせた。すごい…。

そして、次のバルトークが本日の(個人的)白眉。ドビュッシーの時とは比べ物にならないザラザラしたサウンド、炎のような超高速の煽りと、かなり会場の興奮を誘っていたなあ。民族音楽って、こうでなくちゃ!コンティニュオ最後のミヨーは、大城正司氏が独奏を担当していた。大城さんて、本当にカヴァーする音楽の幅が広いよなあ。アンコールは、クレツマー音楽の「Itamar Freilach」。うおお、すげええ。

ここまででかなり満足してしまったのだが、さらに洗足学園のサクオケも良かった。ラフマニノフは先日の演奏会でも聴いたのだが、曲自体も初めて聴いたショスタコーヴィチの「ボルト」が、楽曲・編曲・演奏ともども印象深い。指揮の岩本伸一氏が編曲、指揮を担当したそうだが、楽曲・演奏陣ともども完全に手中に収めた様子が見てとれた。

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記事執筆に際し、野村亮太さん、小川卓郎さんに情報を頂きました。多謝!

2010/05/04

帰省

5/2から、5/4まで実家に帰省していた。諸事情により、先週くらいに急に決まった帰省だった。高校卒業以来、実は今までゴールデンウィーク期間に帰省したことはなくてて、高速バスを使うのは渋滞に引っかかるだろうし、特急は微妙に運賃が高いしで、どの交通手段を使っても、あまりよろしくない。

(-x-;)…考えあぐねた挙句、なんと鈍行で帰った。とういか、一度やってみたかったのだ。別に鉄道好きというわけでもないのだが、ローカル線でトコトコと長距離を乗っていくのは面白いものだ。朝の5時半に東京を出発し、実家最寄り駅への到着が11:00。車窓を眺めて移りゆく景色を楽しんでいたら、あっという間だった。毎回これで帰省するのはさすがに御免被りたいが、時々だったらアリかも…(笑)。

実家のほうでは、ちょこちょこと用事があったのだが、今日の午前中は空いたため、自宅近くの山を歩いてきた。暑くて大変だったが、途中見事な山桜があって、疲れも吹き飛んでしまった。

2010/05/03

サキソフォックスの楽譜

たくさん買って、先週の水曜に到着。いつものように全ての楽譜をスキャンして、自分のGmailアカウントに飛ばす作業が、5/1に終わった。3時間半もかかったが、まあ、後々の取り回しを考えると、ここで時間を食いつぶしておくことは重要だ。

なんだか、演歌系の楽譜をたくさんやりたくなりますねえ(爆)。

そもそも、一番最初にサキソフォックスの楽譜の演奏を聴いたのが、アマリリス合奏団が吹いていた「長崎は今日も雨だった」なのであった。実に、いや実に見事な演奏で「いつかこれを演奏するんだ!」とか思ったっけなあ。楽譜は手にいれたことだし、あとは吹くだけだ!

美空ひばりが15歳で見事に歌い上げた「リンゴ追分」は、なんだかファンキーなアレンジで面白い。「浪花節だよ人生は」とか、「時の流れに身をまかせ」とか(演歌ではないか?)、やっぱ日本人の心は、こういうところに引き寄せられるのだろうか。演歌番組の後ろでサックスを吹いている人になりたい、などと思ってしまった(笑)。

もちろん、ほかのジャンルの曲も楽しそうですよ!音を出してみるのが楽しみだ。

2010/05/02

フランソワ・ダニール氏の録音

先日亡くなったフランソワ・ダニール François Daneels「Kaleidosax」というディスクがあるのは知られているが(しかも持っていないや…)、LPの録音があるという話は聴いたことがなかった。国内ではミュール、デファイエ、ロンデックスといった、フランス派の演奏が知られているが、その他の国のクラシック・サクソフォン音楽に目を向けてみると、研究が進んでいるとは言い難い状況であり、録音を収集している方も少ないように思える。

このCD-Rは、以前から何度かLPのトランスファーをしていただいている島根県のFさんから頂戴した。ダニールの独奏と、ダニールがソプラノサクソフォン奏者として参加しているベルギー四重奏団 Quatuor belge de Saxophonesの録音である。いずれもモノラルで、おそらくダニール氏全盛期の姿が刻印されたディスクの一つなのではないだろうか。貴重なLPをお送りいただいたF様に、改めて感謝申し上げたい。

* Gaston Brenta - Saxiana
François Daneels, solo
L'Orchestre de chambre de la R.T.B.
D'Egard Doneux, cond

* Victor Legley - Cinq miniatures
* Raymond Moulaert - Andante, Fugue et Final
* Gerard Bertouille - Prelude et Fugue
Quatuor Belge de saxophones

詳細な録音時期がジャケットの情報からは読み取れなかったのだが、モノラルということで、おそらく1960年代だろうか。さすがに、マルセル・ミュールの数ある名録音などと比べてしまえば音程感やフレージングの持続力に差を感じてしまうが、それにしても技術的な安定度は、当時としては世界でも指折りであったのではないだろうか。柔らかく暖かい音色は、まさに往年の音そのもの。楽器はビュッフェ・クランポンなのだそうだ。

ちょっと面白かったのは、レイモンド・ムラエールトの「アンダンテ、フーガ、フィナーレ」が収録されていること。ご存じの方も多いと思うが、サンジュレ、サヴァリ、フロリオらの作品とともに、サクソフォン四重奏の黎明期に書かれたものの一つ。個人的にはかなりの傑作と考えており、実は楽譜も持っているくらい。ベルギー四重奏団が、まさかこの作品を録音に取り上げているとは、嬉しいな。冒頭のミステリアスな雰囲気は、現代の楽器ではなかなか再現しづらいものなのかもしれない。この録音ですら、作曲当時とは時期がかけ離れているが、それでもオリジナルの響きに迫るような気負いを感じる。

2010/05/01

コンティニュオSEの公演情報追記

以前も掲載したのだが、日にちが近づいてきたので再掲。

最近、京青さんのブログ記事を見ていて気付いたのだが、アレクサンドロス・マルケアスの「歯車のように L'engrenage」が演奏されるではないか!うおお、これはこの一曲のためだけでも出掛けてしまうぞ!(←いまさら)。

ハバネラ・サクソフォン四重奏団と、即興の名手ルイ・スクラヴィス Louis Sclavisが共演したCDの一曲目に入っていて、その妙なタイトルとは裏腹に、初めて聴いたときはものすごい衝撃を受けた。おおお、この曲をライヴで聴けるのか…楽しみ!ハバネラの録音では、スクラヴィスがバスクラリネットで即興をとっていたが、今回はなんとラランさんがバリトン・サクソフォンによって即興を行うそうだ!

【オルネイスボワ音楽院&洗足学園音楽大学 サクソフォーン交流演奏会】
出演:Saxophone Ensemble 、洗足学園音楽大学サクソフォーンオーケストラ
日時:2010年5月5日(水曜)14:00開演
会場:洗足学園音楽大学講堂(2400)
オルネイスボワ音楽院プログラム:
C.ドビュッシー - 小組曲
A.マルケアス - Engrenage
D.ミヨー - スカラムーシュ(ソリスト:大城正司)
洗足学園音楽大学プログラム:
S.ラフマニノフ - パガニーニの主題による狂詩曲