2010/03/31

Gavin Bryars - Alaric I or II

有名なサクソフォン四重奏曲のひとつである、ギャビン・ブライヤーズの「アラリック I or II」について、作曲者自身の曲目解説を日本語訳してみた。意外と面白い経緯で作曲されているのだなあ…きちんと調べることは重要ですね。

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このサクソフォン四重奏曲は、2本のソプラノサクソフォンと、アルトサクソフォン、バリトンサクソフォンのために書かれている。一般的なSATBの編成を想起させるが、だが、楽器編成と音域という点では、むしろ弦楽四重奏に近い。

私は、コンサートホールにおける楽器としてのサクソフォンに、様々な機会で注目してきた。また、もちろんジャズの楽器としてのサクソフォンにも…(1960年代から、私はジャズ・ミュージシャンとして活動している)。

実際に、私の初めてのオペラ作品である「Medea I」のオーケストラの中には、2人のサクソフォン奏者(ソプラノ&アルト持ち替え、アルト&テナー持ち替え)が座っている。このオーケストラの中で、サクソフォンは時にオーボエの代替楽器として使用され、また時に合唱パートの増強として使用される。また、1980年代の始めに、この「Medea I」のパラフレーズ曲である「Allegrasco」を、ソプラノサクソフォンとピアノのために書いた。また私は、パーシー・グレインジャーの管弦楽法、そしてサクソフォンに対する考え(際立って啓発的である)に、興味を持って接している。彼は、サクソフォンのために古楽のトランスクリプションやアレンジを数多く手がけたが、サクソフォンの音色、特にサクソフォンアンサンブルの音色の中に、古楽器と同等の響きを発見しているのだ。

「Alaric I or II」は、1989年の夏に書かれた。この作曲期間中、私は楽器や録音・再生機材などに触れることがなかったため、この作品に反映された音楽素材は、純粋に当時私の頭の中にあった記憶のみからアウトプットされたものである。音楽素材として、私の2つ目のオペラ「Doctor Ox's Experiment(当時はまだスケッチ段階であった)」や、アルゼンチンのバンドネオン奏者であるDino Saluzziの音楽などが、含まれている。また、サクソフォンの拡張奏法として、循環呼吸、重音、アルティシモ音域を含めた。この作品は、技術的に非常に高難易度であり、おもしろいことに、最低音域を受け持つバリトンサックスのパートが最も難しい。アルティシモ音域のパッセージが多く割り当てられているし、曲の最終部には、ピブロック風のバグパイプのような、哀歌とも言うべきソロが置かれている。この作品は、抒情詩のようであり、声で歌われるような特徴も持っている。これは、グレインジャーのサクソフォンファミリー(SATB)に対する捉え方を、そのまま人間の声に当てはめたようなものである。

タイトルは、フランス南西部にあるAlaricという山の名前から採られている。私は、この曲を作曲した夏を、その山のふもとにあるシャトーで過ごした。おそらくだれも知らないだろうが…(以下略。最後の文が、どうも翻訳できませんでした:No one seemed to know which of the two "King Alarics" the name referred to.)

2010/03/30

Scelsi - Canto No.7 from Canti del capricorno

ジャチント・シェルシ Giacinto Scelsiの20曲から成る「Canti del capricorno 山羊座の歌」シリーズは、日本人の歌い手である平山美智子氏との共同作業により生まれた作品。平山美智子氏が歌う民族音楽に感銘を受けたシェルシが、声楽上の様々な技巧を使って作り出した作品。聴くところによると、未完であるそうなのだが、

この作品のうち、第7曲は声とサクソフォンのための作品である。なぜこの奇っ怪な作品のなかに、突如としてサクソフォンが使われたのかが解せなかったのだが、聴いてみて納得。民族的な歌とも叫びともとれないような平山美智子氏の声にマッチするのは、サクソフォンという楽器をおいて他にない。

聴いているアルバムは、Wergoレーベルから出ているディスク「Scelsi: Canti Del Capricorno」。冒頭から強烈な印象を残したまま、最後までテンションは維持される。このとき平山美智子氏、82歳。対するサクソフォニストは、ジョン・ケージ作品集等でも有名な、あのUlrich Kriegerである。2人のテンションのぶつかり合いは、まさに互角といったところか。たった2分半ほどの中に、これだけのものを詰め込めるんだなあ、と、唖然。

2010/03/29

日本サクソフォーン協会第7回アンサンブルコンクール

一般の部の、2/3くらいを聴くことができた。短い感想を書いていこうと思う。

・葛飾吹奏楽団 - D.マスランカ「マウンテン・ロード」より第1楽章
「マウンテン・ロード」の、今まで聴いたアマチュアの演奏の中では、一番芳醇な響きだと思った。相当和音を合わせてきているのか、それとも音感がものすごいのか…。

・ウィーズサキソフォーンクァルテット - 八木沢教司「アリオンの琴歌」
おお。この曲は初めて聴いたぞ!なにやらかっこいい曲だった。クラリネットのように、蒸留したような純度の高い響きが印象的だ。

・サックス倶楽部アクシェ - G.ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」
アクシェさん、頻繁にこのコンクールに出てきていますね。細かいアンサンブルがすっと合っていくあたり、気心知れたアンサンブルという感じ。

・ブレーメン・サクソフォン・アンサンブル - J.リュエフ「四重奏のコンセール」より第1,2,3,6楽章
リュエフだ!特にロンドが凄くて、第1楽章のテーマが戻ってきたところで鳥肌がたった、とは言い過ぎかもしれないけれど、いやはや見事な演奏でした。

・IBCサクソフォンアンサンブル - A.デザンクロ「四重奏曲」
さすが貫禄の演奏だった。バランスやテクニックなど申し分なく、ちょっと一線踏み越えて高いレベルで聞いてしまいますなあ。第3楽章の圧倒的な構成感!

・江戸橋サクソフォーンアンサンブル - M.ラヴェル「スペイン狂詩曲」より第4楽章
三重県のアンサンブルで、SSAATBという面白い編成。アンコンにも出場したのかな?難しい楽譜だったが、とても完成度が高くて驚いた。

・レリッシュサクソフォントリオ - J.S.バッハ「パルティータ第4番」より第1楽章
トリオというと、ベルカントさんのイメージが強いが、レリッシュさんという名前は初めて聞いた。あのパルティータ第4番を、トリオでやっちゃうのですよ!各パートは休むヒマがないだろうが、充実した響き。

・Saxofono Rosso - C.ドビュッシー「ベルガマスク組曲」より第1,4楽章
こちらも貫禄の演奏ですね。奏者それぞれ、技巧や音楽性が安定の領域に達していて、耳が向くところが違う。パスピエの演奏がけっこう好きだった。

・Noir Saxophone Ensemble - C.パスカル「四重奏曲」より第1,4楽章
第4楽章がとても楽しそうで、聴いているこちらもウキウキ。たしか、自主公演も開催しているはず…聴きに行ってみたい!

・横浜ブラスオルケスター - 長生淳「トルヴェールの"彗星"」
たぶんアンコンに持っていった演奏かな?この曲に仕掛けられた細かな技巧を、隅々まできちっと再現していた。身軽な演奏で、かなりトルヴェールのスタイルに近いかも。

・オーガスサクソフォーンClub - H.ヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ第1番」より第1,3楽章
個人的に、この日聴けたなかでは白眉だった。8重奏だったのだが、強烈な安定感とビートと迫力。テナーサックスのトップを吹いていた方に、恐れおののきました…いやはや。大学生っぽかったのだが、うーむ、正体が気になるぞ。

・仙台サクソフォンアンサンブルクラブ - J.S.バッハ「無伴奏パルティータ第3番」より第1,3,4,5,6楽章
昔グラズノフを聴いたが、おそらくその時と同じメンバーだったはず。一人ひとりの音色を取り出してみると、それほど同じにも思えないのに、見事な音楽の流れが出来上っていた。

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以上。

一番強く思ったのが、テナーサックスを吹いているみなさんの音色、本当にどれも美しいなあ、ということ。最近、なかなか良い音で吹くことができていないので、ちょっと気持ちを改めなければな、と。良い刺激になった。

あちらこちら

昨日は東京中を駆け回った…というと大げさだが、豊島四号さん(サクソフォン交流会のボス)とともにあちらこちらへ伺った。まず、朝9時から溝の口のサクソフォーン協会のアンサンブルコンクール会場へ伺い、チラシを挟み込み。その後、銀座へ移動して、ヤマハの新店舗を見学&チラシ置き。なんとここで、何年間も探していたストラップ(とおそらく同型のもの)を見つけ、買ってしまった。

手前が、今使っているもので、奥が今回買ったもの。いつからか気に入って使っていたのだが、同じものを見つけられずにいて、もし壊れたらどうしようと思っていたところ、まさかこんなところにあるとは。しかもお値段お手頃(2100円)。ブランド名はYupon…あれ、どこかで聞いたことがある名前だなあ…一本いかがですか?ゆうぽんさん。楽器の小物をいろいろ試す趣味は無いのだけれど、ストラップとリガチャーとマウスピースは、やはり同じものがないと落ち着かないですよね。

ついでにサキソフォックスのCDも買った。今聴いているけど、最高!「長崎は今日も雨だった」に、爆笑してます。しかも、楽譜が手に入りやすいのが良いですね。今度買ってみよう。

次に同じく銀座の山野楽器へ移動して、チラシ置き。ここで、とても久しぶりとなるNさんにお会いした。実は下の名前を存じなかったのだが、なんかいろいろ勘違いしていたみたいで…すみません(笑)。でも、やはり狭いサックス界、いろいろなところで繋がるものですね。

そして、再び溝の口に戻り、サクソフォーン協会コンクールの一般の部を鑑賞&応援。前半1/3くらいは聴けなかったのだが、後半はなんとか聴けた。これについては、また別記事にするつもりだが、みなさん上手かったなー!

今度は中目黒に移動して、中目黒GTプラザホールへ。サクソフォン交流会の下見である。付帯設備の料金がいろいろとコミコミなのがわかって良かった。やや狭いし、音響も特段に良いというわけではないけれど、なかなか良いホールかもしれない。

そのまま和民へ移動して、打ち上げの下見(笑)。勢いと空腹だけで飲んでいたので、何を話したか覚えてません(笑)17:30から飲んで、1時間30分で焼酎1.5Lと日本酒750mlを2人で空けてしまうとかなあ。それにしても、豊島四号さんの飲みっぷりには、恐れ入りましたm(_ _)m

2010/03/27

新しい季節

つくばから離れてちょうど一年経ったようだ。当時は不安でいっぱいだったけれど、社会人になってほぼ一年、いろいろな新しい楽しみを見つけつつ、サクソフォンも続けつつ、充実した日々を送っている。

新しい生活スタイルの中で、新しい世界が開け、新しい交友関係を築き。当時の不安はどこへやら、「心配することなど何もないよ」と、去年つくばを去るときに不安で涙した自分に言い聞かせたいくらいだ。「転機を迎えたときに、それまでの生活よりもさらに充実した生活になることを目指す」というのは、私の座右の銘みたいなもんだが、何とか達成出来ているのではないだろうか。

ああそうか、一年経ったから、知り合いの後輩たちもつくばを去るのだな。早いものですね。

本日は、押上の"SPICE CAFE"と"長屋茶房 天眞庵"に伺った。写真は、SPICE CAFEの窓から見たサクラ(カメラはEXEMODE SQ28m)。ここ数日の雨続きのせいだろうか、風は少し冷たいけれど、目に飛び込んでくる景色は、もはや春一色である。

2010/03/26

ジェフスキー作品集に…

昨日紹介したフレデリック・ジェフスキーという作曲家に関するアルバム。代表作、「カミング・トゥギャザー」「アッティカ」「パニュルジュの羊」が収録されている。ジェフスキーを知るための代表盤の一つと言われており、演奏の質が高いことが魅力的なのだが、面白いことに「カミング・トゥギャザー」と「アッティカ」からサクソフォンの音が聴こえてくる。

このサクソフォンを吹いているのが、アメリカを代表するリード楽器奏者の一人、Jon Gibson ジョン・ギブソン。キャリア初期のころに、ライリー、ライヒ、ラ=モンテ=ヤング、グラスらの作品を積極的に演奏し、一躍名を広めたプレイヤーである。私なんかは、ピーター・グリーナウェイ監督の「Four American Composers」で観られるフィリップ・グラス・アンサンブルの映像でおなじみである(この映像には、ジョン・ギブソンとともにジャック・クリプル(!)やリチャード・ペックらも映っている)。

が、まさかジェフスキー作品集でも名前を見ることになろうとは。ギブソン氏のサクソフォンは、大きな編成の中でも存在感があり、ついつい耳が引き寄せられてしまう。

2010/03/25

フレデリック・ジェフスキー

佐藤淳一氏から教えてもらったフレデリック・ジェフスキーという作曲家について、少し書いておきたい。アメリカ合衆国の作曲家・ピアニストで、最も特徴的なのが、音楽によって社会参加(政治参加)するということ。日本人で言えば、例えば黛敏郎とか、さらに推し進めて高橋悠治あたりを想像してもらえれば、その姿勢が判るだろう。個人的に、なんとなく音楽家ってノンポリ派が多いような気がしているのだが、そういった向きからすると、やや異色な位置を保っているのだと思う。

代表作に、ピアノ独奏のための「"不屈の民"変奏曲」、ミニマル・ミュージックの傑作「パニュルジュの羊」、テープと器楽のための「カミング・トゥギャザー」といったものが挙げられるだろう。その他、「政治闘争歌 "El pueblo unido jamas sera vencido"による36の変奏曲」、「石油価格」、「ウィンズボロ綿工場のブルース」など…彼の作品は、曲のタイトルからして、政治に一石を投じようとする意志が垣間見える。

曲の内容としてもかなり過激なもので、例えば「カミング・トゥギャザー」などは、アッティカ刑務所暴動事件当時の、服役囚からの手紙のテキストに対して音楽をつけたというもの。表面上はJacobTV「Grab It!」などに通じるものもあるが、根底に流れているものは明らかな政治批判、人種差別批判といったものである。

高橋悠治と同じく(というか、むしろ高橋悠治がジェフスキーと同じくと言うべきなのかもしれないが)、すべての楽譜が無料で公開されている。サクソフォンを含む作品もいくつか散見され、さらに驚くことに「Histories」というサクソフォン四重奏曲もあるようだ。これは音を出してみたいな…。Werner Icking Music Archive: Frederic Rzewski

ピアニストとしても有名で、シュトックハウゼンの「クラヴィエールシュトゥックX」を初演したのが、なんとジェフスキーなんだとか。驚いた。

2010/03/24

冬の旅 ~Saxophone meets Schubert~

先日(の飲み会の席上で)、なぜかこのCDのことをふと思い出した。買ったのは、大学2年生のときに聴きに行ったサクソフォンフェスティバルの会場だったかな。良く覚えているのは、フェスティバルの会場で伊藤康英先生と雲井雅人氏にサインをもらったこと。その数週間前に、大学の吹奏楽団にトレーナーとして訪れた伊藤康英先生に、「ベーゼンドルファーで出しているピアニシモの音が凄いから聴いてみて!」と言われて、しばらく探していたっけ。

「Saxophone meets Franz Schubert(Alquimista Records ALQ-0008)」
雲井雅人, Alto Saxophone
伊藤康英, Piano (Bosendorfer)
布施雅也, Narration
林望, translation
松本重孝, director

Franz Schubert - Arpeggione Sonata
Franz Schubert - Winterreise

初めて手にとったとき、「贅沢なアルバムだなあ」とふと声を漏らした。しかし、この豪華な布陣が"シューベルト"という、ある意味すでに固定された音素材をどのように調理するのかは、まったく想像がつかなかったものだ。「冬の旅」の冒頭を聴いて驚いた!原曲の歌のメロディはサクソフォンへと置き換えられ、代わりにナレーターによってテキストが読まれるという、実にセンセーショナルなアレンジであった。時には、歌とサクソフォンが役割を交代して、サクソフォンがオブリガード的に配される場所も見られるが、全く新しい「冬の旅」に驚いた。

この「冬の旅」作品、冗長だと評されることもあるけれど(フラれた男がこんなに恨みつらみをダラダラと長く述べるものか、という)、そんなことはないです。私もわかりながら聴いているつもりだが、フラれた男というのはこういうものだと思う。その言葉ひとつひとつが、現代の感性で再構築され、さらに若い方の声で読まれるもんだから、リアルでリアルで…。変な話、現代の「失恋ソング」と言い切ってしまっても良いのかなあと思うほどだ(別に私が最近失恋したとかではありません笑)。

このCD、今はどこで入手できるのだろうか。

2010/03/23

ダッパーサクセーバーズさん演奏会ライヴCD2009

わー!届いたー!おなじみ、ダッパーサクセーバーズさんのライヴCD。当選の通知を頂戴してからずっと心待ちにしていたもので、ようやく聴くことができて嬉しい限り。

ダッパーサクセーバーズさんについては今更説明するまでもないが、香川県を代表するサクソフォンアンサンブル団体。日本国内を見渡しても、もっとも初期からサクソフォンアンサンブルの定期演奏会に取り組んでいる団体の一つである。ブログ「ダッパーサクセーバーズな毎日」は、日に500 visits以上を誇る、サクソフォン界の著名サイト。そのうち演奏会も聴きに行きたいなあと思いつつ、なかなか予定が合わず、悔しい思いをしている。

本盤は、そのダッパーサクセーバーズさんの、2009年10月11日に行われたアンサンブルコンサートの模様を収録したCDである。前半が小編成、後半は、総勢40名のサクソフォニストによる、サクソフォンオーケストラの演奏となっている。

Traditional/高橋宏樹 - こぎつね
中尾敦 - あした会えるあなたに
本多俊之 - 陽だまり
A.ピアソラ - Chin-Chin
野口茜/内山大輔 - Gun's & Roses
P.ランティエ - アンダンテとスケルツェット
C.コリア/本多俊之 - スペイン
P.I.チャイコフスキー/柏原卓之 - 弦楽セレナーデ
J.バーンズ/高橋幸子 - アルヴァマー序曲
M.ジャクソン&L.リッチー/横田直之 - We Are The World
K.バデルト/直井富士春 - パイレーツ・オブ・カリビアン
J.シュトラウスII世/直井富士春 - 喜歌劇"こうもり"序曲
~アンコール~
H.ショア - すべてをあなたに
E.モリコーネ - ガブリエルズ・オーボエ

小編成の作品は、個人的にツボな曲目が多い!サキソフォックスでおなじみの高橋宏樹氏編曲の「こぎつね」に始まり、GGさんのバリトン5重奏、本多俊之とトルヴェールQによる「High Five」からテクニカルな2曲「陽だまり」「スペイン」。バッカーノ!のオープニングである「Gun's & Roses」と、ピアソラの「Chin-Chin(乾杯!)」さらには、クラシックでおなじみのランティエに、チャイコフスキーの名曲…。

これだけ多様なスタイルの作品が続くのは、プログラムを目にした瞬間ちょっと驚いたが、聴いてみるととても楽しいのだ!不思議なことにプログラムに一貫性がないなんてことは微塵も感じない。それぞれの曲・演奏が、それぞれの聴き所を持っていて、どの演奏にもキラリと光る瞬間があって…演奏レベルの高さにも驚いた。そういえば、5重奏という編成が多く取り上げられているのだが、4重奏と違った重厚なサウンドが素敵だ。「Gun's & Roses」、これはオリジナルのアレンジなのかな?かっこいいなあ。

そして、やはり聴きものは、後半のサックスオーケストラ!とにかくものすごい演奏だ。いくら指揮者がいるとはいえ、40人いるというのが信じられないほどの精緻な演奏。サックスがたくさん集まるときって、一歩間違うととんでもないサウンドになってしまうのだが、この一体感は、今まで他のどんなサックスオーケストラでも聴けなかったものだ。

吹奏楽ファンにおなじみのアルヴァマー、参加メンバーのみなさんが共感しながら吹いているのが判る。ソロをつないでいく「We Are The World」は原曲に負けないほどにこの上なく感動的であるし、おそらくこのCD中の白眉「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、ドラマティックかつ大迫力!この曲、私も吹奏楽か何かで吹いたことがあるが、メロディ・リズム・和音が不思議と"腑に落ちる"んですよね。曲と演奏の幸福な出会いを感じる。最後のシュトラウスも、お洒落で良いなあ(最後にあまりメインの重さを持たない曲が配置されているのは、意外にもプログラミングの妙かも?)。

それにしても、アンコールの「すべてをあなたに」のサックスソロにはびっくりした。指揮の古庄孝行氏がソロを吹いているそうなのだが、上手いのなんのって(国立音楽大学で大室勇一氏に師事していたそうだ)。すべてを飲み込んでしまいそうな、"音"そのものが持つ圧倒的な存在感に震えた。

東京→茨城→埼玉

昨日は、9:00~13:00でサクソフォン四重奏の練習、その後移動して、17:00までサクソフォニーの練習、練習後に軽く一杯。朝7時に東京を出発して、茨城県→埼玉県→東京に帰還、となったわけだが、数年前までは県外へ練習へ赴くことなど、考えもしなかったものだ。

いろいろと、本番が近づいてきているが、いったいどうなることやら、今からわくわく。

2010/03/21

サクスケルツェット on YouTube

洗足学園音楽大学のサクソフォン科教授陣によるサクスケルツェットの演奏が、YouTubeにアップロードされていた。しかも、アップロードしたのは洗足学園の公式アカウントのようだ。

まずは、超豪華な「ディスコ・キッド(柏原卓之編曲)」からどうぞ。なんだこの布陣は、凄すぎて笑うしかない(笑)。ソプラニーノで素晴らしい仕事をしている原博巳さんにもご注目あれ。


大即興大会のバッハ。平野公崇氏、さすがです…。これは会場で聴いたらさぞかしすごかっただろう!


個人的にコレがいちばんツボにはまりました。すごい演奏だ!!冨岡和男氏と貝沼氏のデュオ!冨岡氏の演奏がもう、、、YouTubeで泣いたのなんて、初めてかも…。


他にもいろいろあるので、興味ある方は探してみて下さい。

Naxos Music Library

Naxos Music Library (NML)

3月頭から登録して楽しんでいるのだが、ものすごいサービスだなあと感じている。私は、基本的にCDはクラシック・サクソフォンのものしか買わないというポリシーを貫いている。しかし、例えばちょっと話題になるようなクラシックのスタンダードを聴きたいとき…例えば、今日、3/21はバッハの誕生日だが「マタイ受難曲」を聴きたいとふと思ったときに、検索をかけて一気に10種類以上の音源を引き出すことができる…は、その名の通り"図書館"のような便利さで音楽を楽しむことができるのだ。

"Naxos"の名前からすると、まるでナクソスレーベルのCDしか扱っていないような印象を受けてしまうが、実はクラシックのインディーズレーベルが多数参加しており、むしろ取り扱いCDはそちらのほうが幅を利かせている雰囲気がある。インディーズ、とはいっても、例えばBISやAlbany、Challenge Classics、Chandos、Caprice、Innova等錚々たるレーベルが名を連ねている。

これで月額1890円か…。月に1枚CD買うつもりで登録したのだが、それ以上に活用出来ている感じ。音質は、WMA128Kbpsということで、割り切っている。

なんだかNMLの宣伝みたいになってしまった。それにしても、これ、作り手のほうにはどうやってお金が支払われているのだろうか。例えば、再生数に応じていくら、とか?それとも、一括でお金を払って権利をまるごと買い取ってしまうような感じなのだろうか。こんなことを繰り返していくと、インディーズのクラシックCDはますます売れなくなってしまうかもしれないが。

…というか、CDが売れないからこういったサービスが成り立つのだろうな。売れないCDを放っておくよりも、ナクソスに買い取ってもらった方が利益にはなるだろうし、聴いてもらえるしで、結果的にはB<->BとB<->Cのどちらでも利益関係が出来上がって、お互いが得をするという図式になっているのだろう。

だれも損はしていない(であろう)はずなのに、なんか寂しいな。レコードの時代は、「一枚作る」ということはそんなに簡単な話ではなかったはずだ。こんなところで、"音楽のデフレ"を実感することになろうとは。

(登録して活用しておいて、そんなこと言っているんじゃないですよ、という批判も受け付けます)

2010/03/20

Twitter

最近とみに流行っているらしいが、実は2008年5月からやっている。最初始めた頃は、外国の方と交流を持ちたくて全部英語で書いていたのだが、結局フォロワーが知人だけになってしまった。その後、日本語での書き込みにシフトしたのだが、当時の「mixiエコー」との差異が見つけられずアカウントを一旦削除した。

昨年から再びアカウントを復活させたのだが、私が始めた頃とは劇的に状況が変わっているようだ。システムは頻繁にサーバが落ちていた初期と比べてぐっと改善されているし、サクソフォンという共通の話題を持つTwitter利用者も増え、昔よりもずっとこのサービスを楽しんでいる。

アカウント名は、「kuri_saxo」。フォローはお気軽にどうぞ。ミクシと違ってお互いの承認云々というのがないから、気楽で良いですね。

Live at Buddy

昨日は、会社が終わった後に楽器を担いで江古田Buddyへ。BlastbeatというNPO法人傘下の団体である、CocoroOdoruというチームが主催したライヴイベントに、天久保オールスターズバンドのメンバーとして演奏に参加してきた。イベント自体のコンセプト等は、こちらのCocoroOdoruのブログをご覧になっていただくとして、自分たちの出演時間以外は客席側で聴いていたのだが、楽しかったな。たまにはポップスも良いですね。

天久保オールスターズのセットリストは、以下。Flying Frogは、大学の吹奏楽団の後輩が作った新曲なんだと!すごいなあ。
Can't Turn You Loose
The Chicken
Flying Frog
手紙~拝啓、十五の君へ~
栄光の架橋

2010/03/18

ダールの初演録音を改めて聴く

Andy Jacksonからメールが来ていた。何気ない内容(ご無沙汰しているけど元気?的な)で、こちらも元気ですと返信。ふと彼から送ってもらったシガード・ラッシャー Sigurd Rascherの録音を聴き返した。インゴルフ・ダールの協奏曲で、初演時の録音である。1949年5月17日、マーク・ハインズレー指揮イリノイ州立大学ウィンドアンサンブルと、ラッシャーとの共演。

現行のバージョンと、オリジナルのバージョンに大きな差異があることについては、このブログでも度々触れてきた。現行バージョンに慣れすぎてしまったせいか、初めてこの初演録音を聴いたときは、あまりしっくりこなかったのだが、今、改めて聴いてみると自然に聴ける。

現行バージョンは、3つの楽章に分かれた急-緩-急(Recitative, Adagio(Passacaglia) - Allegretto - Adagio, Rondo)のいかにも典型的な構成を取る。それぞれの楽章間は、独立した作品としても考えられるほどに分離されており、それぞれの間に有機的な繋がりはあまり感じられない。オリジナルのバージョンは、大きく2つの楽章に分かれてはいるものの、まるで一本の大河の流れのような中に、数々のドラマが織り込まれているような、そんな感覚で聴くことができる。

超絶技巧の部分もさることながら、美しい部分が本当に美しいのですよ!これは、決して改訂版では味わえない感覚だろうなあ。ダールは、むしろこういった部分に力を入れて作曲したのではないか、と思えるほど。

アメリカのほうでは蘇演も行われたようだし、そろそろライヴでこのオリジナルのバージョンを聴いてみたい。自分から動こう(吹くわけではなく)かとも思っているのだが、必要なリソースが多く、ちょっと踏みとどまっている。とはいえ、まずはオリジナルスコアの入手からかな…。

ラッシャーの録音について、購入等の詳細はこちらからどうぞ。

2010/03/17

Sonic Art!!

Sonic(音速に等しい)Art(芸術)とは、良く名付けたものだ。ドイツのサクソフォン四重奏団、Sonic Art Saxophonquartettのアルバム「Works by Ligeti, Tuur, Katzer, Levy, Neuwirth, Xenakis(GENUIN GEN 10164)」を聴いたので、ご紹介したい。昨日、mckenさんのブログでも紹介されていたばかりだが、私も聴いてみてたまげた。

Gyorgy Ligeti - 6 Bagatelles
Erkki Sven Tuur - Lamentatio
Keorg Ktzer - Wie Ein Hauch, Dach Manchmal
Fabien Levy - Durch
Olga Nuewirth - Ondate
Iannis Xenakis - XAS

名は体を表すというか、超速でぶっ飛ばしながらどんな難フレーズも涼しい顔をしてスマートに切り抜ける様が、まさに"Sonic Art"である。リゲティは、ハバネラサクソフォン四重奏団が取り上げている編曲と同じ、ギョーム・ブルゴーニュ Guillaume Bourgogneの版だが(これって、たしかハバネラQにしか演奏許可が与えられていなかったんじゃなかったっけ?)、例えば第6楽章のスピードなど、ブッチギリでSonicArtQの演奏のほうが速い!しかも、それでいてまったく破綻なく、変化に富んだ表情をつけているのだから、たまげてしまう。

トゥールの「ラメント」は、中間部で細かなフレーズが絡み合う箇所があるのだが、あまりにすっきりと聴かせるために曲の構造が見えすぎて、逆にこの曲に込められた「ラメント」の風情が感じられないくらいだ(笑)。アムステル四重奏団のCDもリリースされているが、ちょっと比べ物にならない。

さらにパワーアップしてのファビアン・レヴィの「ドルシュ」、クセナキスはもちろんのこと、あまり聴いたことのないカツァー、ノイヴィルトの作品も、作品としては難解であるはずなのに、聴こえてくるのは煌めく音と緻密な構造のみである。ノイヴィルトの作品、最初何かの電子音が聴こえると思ったら、リードを噛んだ音なのね…(ある意味フラジオ)。

これまでに数々の国際コンクールに入賞し、このファーストアルバムも素晴らしい出来となった同団体、これからの活躍にますます期待したいところだ。

2010/03/16

グラズノフ「協奏曲」カリーナ・ラッシャー監修版

アレクサンドル・グラズノフの「サクソフォン協奏曲」のカリーナ・ラッシャー監修版が、ついに発売に向けてカウントダウン。噂通り、Baerenreiter-Verlagからの出版である。探してみたところ、amazon.co.jpでも予約できるようになった。グラズノフの「協奏曲」に関しては、これまでこのブログで何度も取り上げてきたが、今回の楽譜のリリースが、今まで浮かび上がってきた数々の疑問に、何らかの決着を与えてくれるものだと確信している。

以下に、別の通販サイトに掲載されていた説明を引用しておく。カデンツァに関しては、フルバージョンのカデンツァ、省略バージョンのカデンツァ、そしてラッシャーのカデンツァが収録されるとのこと。

This first scholarly and critical edition of a work by Glazunov contains an informative introduction with comments on the origin and a facsimile and a critical report. Be presented in the solo part, both the full and the abbreviated version of the cadenza, also a cadence of Raschèr which has authorized the composer.
- With the original and new solo cadenza cadenzas
- With Commentary on performance practice
- Preface in German and English

2010/03/15

Tangled Loops

以前伺ったノースショア・サクソフォン・トリオの演奏会でゲットしたCD。サクソフォンのネイサン・ナブ Nathan Nabb氏と、ピアノのウィンストン・チョイ Winston Choiのアルバムで、無伴奏とデュオを取り上げたもの。ライブで聴いた時も素晴らしかったが、CDのほうも良い演奏なので、ご紹介したいと思う。無伴奏作品が多く取り上げられているが、そういえばコンサートで聴いたクリスチャン・ロバも物凄かった。

Tangled Loops(Amp Recordings AMPREC12)
Jason Eckardt - Tangled Loops
Luciano Berio - Seuqunza IXb
Philippe Hurel - Opcit
Luciano Berio - Sequenza VIIb
Milton Babbitt - Whirled Series

最初と最後がピアノとのデュオ、真ん中の三曲が無伴奏作品である。作品についてだが、まず無伴奏はどれもが言わずと知れた名曲。ユーレルの作品だけがちょっとマイナーかもしれないが、テナーサクソフォン・ソロのために書かれた作品である。ドゥラングル教授に捧げられている。

Jason Eckardt「Tangled Loops」とMilton Babbitt「Whirled Series」は、名前を聞いたことすらなかったが、どちらも超高難易度、特にアルバムタイトルにもなっている「Tangled Loops」は、名曲!最初から最後まで緩むことのないスリリングな空気が、個人的にとても好きだ。

ソプラノサクソフォンとピアノのデュオ「Tangled Loops」から、superbな演奏が繰り広げられる。作曲家も、よもやここまでの演奏は想定していなかったのではないか、というくらいの見事なものだ。次々に襲いかかる跳躍を、真正面から受け止めて音に変換していってしまうのだ。無伴奏の作品は、録音のせいだろうか、とても生々しく迫ってくる。技術的な不安はまったく感じることなく、その生々しさがそのまま聴き手の中に飛び込んでくる。肉感的というか、あまり聴いたことのないタイプの演奏かもしれない。

2010/03/14

四重奏の練習

こんどは、サクソフォン交流会に向けての練習。

初めて取り組んでいる「トリップ・トゥ・スカイ」については、少しずつ少しずつできるようになっている、という感じ。そろそろ録音もしていこう。「レシテーション・ブック」については、今度は第5楽章のみとなる。テンポ設定と、ゆっくりなところの"間"を大切にする演奏、イメージ、フォルテの質、等々、先日のマスタークラスで指摘されたことを直していく。

限られた時間の中で、どういったポイントに絞ってやっていくか、というのは、今までにない間隔だが、できるだけレベルを上げていきたいところ。

押上にて

昨日は、久々の一日オフ。帰国中だったピアニスト大宅裕さん、おなじみ、フルートの渡瀬英彦先生、ほかつくば関係者に誘われて、墨田区のカフェ「長屋茶房 天真庵」へ伺った。

ひとりだけ早く着いてしまったので、オリジナルブレンド("ほぼブラジル"とのこと)のコーヒーとチーズケーキをいただく。実は、コーヒーはとても苦手で、今までブラックのコーヒーをまともに一杯飲めたことはなかったのだが、びっくりするほど美味しかった。お店の雰囲気もとても良くて、これはまた行ってみたい。日本酒も出しているとのことで、頂いたのだが「男山」という聴き慣れない銘柄、だがとても美味しかった。

大宅裕さんは、普段はベルギー在住なのだが、とある演奏活動のため帰国中とのこと。これまでも、テッセラ音楽祭で聴いたり、インターネット上で情報を交換したりすることはあったのだが、お話させていただくのは初めてだった。アンリ・プッスールの息子、ルネ・プッスールの音楽が店内に流れている中、音楽の話・何気ない話をしながらの、1時間ちょっとの贅沢な時間。

その後は、17:00ころから居酒屋に移動。〆のころまでにちょっと日本酒を飲みすぎてしまった…。なんとか帰りついたが、ちょっと大変だったなあ。

楽しい一日でした。

2010/03/12

D.Maslanka x Saxophone

昨日の記事の続き。マスランカ氏の書いた「交響曲第7番」をNMLで聴きながら、このブログ記事を書いている。これもまた、長大で一筋縄ではいかない曲だ。

【D.Maslanka x Saxophone レクチャーリサイタル】
出演:雲井雅人、雲井雅人サックス四重奏団、大澤知代、渡辺賢吾
日時:2010年3月10日 19:00開演
会場:ルーテル市ヶ谷
プログラム:
(全てディヴィッド・マスランカ氏の作品)
「サクソフォン協奏曲」より第1楽章(雲井雅人)
「ソプラノサクソフォン・ソナタ」(大澤知代)
「アルトサクソフォン・ソナタ」より第3楽章(渡辺賢吾)
「レシテーション・ブック」(雲井雅人サックス四重奏団)

それにしても、こういった催しが国内で実現したということに、改めて驚きを覚える。10年前には、「マウンテン・ロード?なにそれ?」という状況だったのが、今や「マウンテン・ロード」や「レシテーション・ブック」といった四重奏曲については、アマチュアでも取り組む団体が増え、超難曲とされた「アルトサクソフォン・ソナタ」も、音大生くらいであれば試験で取り上げることも珍しくないという。ある意味、ちょうど良い時期だったのかもしれないなあ。

到着の遅延により、マスタークラスには間に合わなかったマスランカ氏だが、このレクチャーリサイタルには間に合った。舞台裏から現れたマスランカ氏に、大きな拍手が沸き起こる。その姿を拝見した瞬間に、鳥肌が立ってしまった。見た目は小顔で長身のおじさん、といった趣なのに、ものすごいオーラを感じる。奥様とともに客席前方から2列目に座り、一曲一曲の前に解説を喋りながら(通訳は佐藤氏)演奏会が進行した。

たった一人の存在によって、演奏者と客席の集中力がここまで高まるものなのか、というほどの時間だった。そういえば、ソプラノサクソフォンのソナタは初めて聴いたのだが(オーボエ・ソナタからの編曲だそうな)、とても美しい旋律線が印象に残った。吹いている大澤さんという方も、素晴らしく良い音色とテクニックの持ち主で、素晴らしかった。まだ大学4年生なのだそうだ…唖然。

そしてやはり、「レシテーション・ブック」だろう。会場を満たす響きは、我々の貧弱なものとは比べ物にならなくて、マスランカ氏を触媒に、各楽器の間で響きあう音がお互いを呼び合うように会場に広がっていって、ちょっと信じられないくらいの音空間が形成されていた。2007年5月に東京文化会館で聴いて以来だっただろうか。複雑な精神状態の中、じっと音に身を委ねていた。

終演後、少しだけではあったが、マスランカ氏と話すことができた。一年前、演奏会で全曲を取り上げたときにYouTubeにアップロードしたTsukuba Saxophone Quartetの演奏を、URLだけ送って聴いてもらったのだが、そのことも覚えてくれていた。

打ち上げでは、ちょっと酔っ払ってしまって、、、あああ。

2010/03/11

昨日のマスタークラス

昨日の催しは、マスランカ氏の到着が遅れるということで、16:00~18:00に予定されていた、マスランカ氏のマスタークラスの内容が次のように変更になった。

D.マスランカ - サクソフォン協奏曲より第2楽章~第5楽章(雲井雅人)
雲井雅人サックス四重奏団によるマスタークラス:D.マスランカ - レシテーション・ブックより第1楽章、第5楽章(Tsukuba Saxophone Quartet)

雲井さんの演奏で、マスランカ氏の「協奏曲」がぜんぶ聴けることになったのは幸いであった。それにしても、本当に雄大な曲だ。日本のような狭い場所にいては、こんな広々た音楽は書けないのだろうなあ(もちろん、それだけではないと思うけれど)。祈りのような精緻な音楽から、凶暴で追い切れないような超速フレーズまで、長大なスパンのなかで、時間軸に沿って様々な表情を楽しんだ。これは吹奏楽バックの演奏も聴いてみたいなあ。

雲井さんの音は本当に不思議だ。確かに鳴っているのはサックスなんだろうけど、何か別の遠い場所から鳴っているかのようにも聴こえた。何気ないロングトーン一つが会場の空気を支配して、遠い世界に連れ去られるような感覚にも陥った。

後半は、雲井雅人サックス四重奏団の方々によるマスタークラス。私たちの演奏は、事故多発しつつもなんとか最後までたどり着いた、という感じ(苦笑)。いろいろなコメントを頂いて、でもやっぱり技術的に追いつかなくて、それでもなんとかキャッチアップしたいという気持ちはあって…というなんとも言い難い感覚に陥りながら、充実した一時間を終えた。このような機会を提供してくださった、佐藤さん他関係者の皆様に、心より感謝申し上げたい。

(19:00からのコンサートの模様については、明日書きます)

2010/03/09

明日のルーテル市ヶ谷

明日ですが、

16:00~マスタークラス
19:00~レクチャーコンサート

この流れは変わりませんが、マスタークラスにマスランカ氏の到着が間に合わない、とのことです(本日来日予定だったが、諸事情により遅れたそうだ)。レクチャーコンサートには間に合いそうだ、ということですが。

というわけで、マスランカ氏に直接教えていただく、ということはかなわなくなりました。残念…。

2010/03/08

木下直人さんから(Jazz Paris Sax)

木下直人さんより送っていただいたCD。演奏しているパリ・サクソフォン五重奏団 Quintette Sax of Parisについて簡単に解説する:吹奏楽界の名門ギャルド・レピュブルケーヌ吹奏楽団のメンバーにより構成された団体で、何度かメンバーを入れ替えつつ、1980年代から1990年代初頭にかけて活躍した。多くの新作を委嘱し、その中には現在のスタンダードな五重奏レパートリーとして定着しているものも多い。

「Jazz Paris Sax(Quantum)」
Stan Kenton - Opus in Pastels
Jérôme Naulais - Mise a sax
Claude Bolling - Main de fer et gant de velours
Jean Claude Naude - Un petit homme timide
Chich Corea/Claude Terranova - Spain
Lennie Niehaus - A Ballad for Five
Michel Legrand - Porcelaine de sax
Vladimir Cosma - Sax Brothers
Lennie Niehaus - Waltz of the Sax
Martial Solal - Balade pour quitette de saxophones

Andre Beun アンドレ・ブーン
Georges Porte ジョルジュ・ポルト
Bernaud Beaufreton ベルナール・ボーフルトン
Michel Trousselet ミシェル・トゥルーセル
Maurice Delabre モーリス・ドゥラブル

ジェローム・ノレ、クロード・ボリング、ミシェル・ルグラン、レニー・ニーハウス、ウラジミール・コスマ…という、著名な作曲家たちの作品ばかりを集めてあるのだが、これ、どうやらチック・コリアの作品以外はオリジナル作品なのではないか!?もしや、これもすべてパリ五重奏団が委嘱した作品なのだろうか…気になる。

"JAZZ"というほどジャズではない(1920年代のダンス・ミュージックみたいな曲もある)のだが、この豪華絢爛さの前には何も言うまい。暮れに聴いた石渡氏の演奏を思い出した。今では失われつつある何かを、そして本当に美しいものとは何なのかを、音で教えてくれる。聴いていると、とても幸せな気分になるなあ。曲によって編成がかなり変わっていて、ソロをフィーチャーしていたり、ドラムスやベースが入っていたり、サウンド的に見みが飽きないというのも良いですね。

興味ある方はkuri_saxo@yahoo.co.jpまでご連絡を。

これはまた別の記事にするつもりだが、このQuantumのパリ五重奏団のシリーズ、今では入手至難なのだそうだ。クラシックというシリーズについては、そちらは以前紹介した。そして、なんと映画音楽のディスクがあるようで…(情報をお持ちの方はぜひお知らせ下さい)。

2010/03/07

レシテーション練習

3/10に向けた最後の練習でした。曲が重く、あまり長時間のリハーサルはキツイっす(笑)。「レシテーション・ブック」の第5楽章の構成って、何かストーリーを感じさせるものだが、ホントの所はどうなのだろうか。そのあたりのことも、マスランカ氏ご本人に伺ってみたいな、と思っている。

演奏の情報は、以下。

【ディヴィッド・マスランカ マスタークラス&レクチャーリサイタル】
出演:ディヴィッド・マスランカ
日程:2010年3月10日(水曜)
時間:16:00開演(マスタークラス)19:00開演(レクチャー・リサイタル)
会場:ルーテル市ヶ谷
料金:4000円
プログラム:
~マスタークラス~
「アルト・サクソフォン・ソナタ」 - 渡部賢吾
「ソプラノ・サクソフォン・ソナタ」 - 大澤知代
「レシテーション・ブックより第1楽章、第5楽章」 - Tsukuba Saxophone Quartet
~レクチャー・リサイタル~
「アルト・サクソフォン協奏曲」 - 雲井雅人
「ソプラノ・サクソフォン・ソナタ」 - 大澤知代
「アルト・サクソフォン・ソナタ」 - 渡部賢吾
「レシテーション・ブック」 - 雲井雅人サックス四重奏団
問い合わせ:
03-5909-1771(ドルチェ楽器)

チケットご用命の方は、kuri_saxo@yahoo.co.jpまで。少し割り引きできます。

クラリネット・アンサンブルコンサート@つくば

【クラリネット・アンサンブルコンサート】
出演:筑波大学吹奏楽団クラリネットパート
日時:2010年3月6日 18:30開演
会場:つくば市立中央図書館内 アルスホール
プログラム:
L.アンダーソン - クラリネット・キャンディ
J.F.フンメル - トリオ
三浦真理 - クローバー・ファンタジー
L.Bonfa/磯崎敦博 - 黒いオルフェ
F.Lehar/鈴木英史 - 喜歌劇「メリー・ウィドウ」セレクション
C.ドビュッシー - 弦楽四重奏曲より第1楽章
A.ピアソラ/加藤雅之 - リベルタンゴ
樽屋雅徳 - 絵のない絵本~第12夜~
B.バルトーク/森田一浩 - ルーマニア民族舞曲
G.ホルスト/M.ジョンストン - 吹奏楽のための第一組曲

かつて同じ団体の仲間だった先輩・同期・後輩(9つの代が集まったとか)の、クラリネットのアンサンブル演奏会。サクソフォニーの打ち上げにも出たかったのだが、先に予定が決まっていたこちらを優先させていただいた。サクソフォニーに参加されていたF-Windsさんの車に便乗して、つくばへ。差し入れやら何やら買っていたら、開演ギリギリになってしまった。

クラリネット・キャンディ(10重奏くらいだったかなあ)を演奏会の幕開けに、トリオ編成から最終的に30人以上の編成まで、徐々に人数が増えるような構成。その流れの中で、クラリネット・アンサンブルの"王道"ともいうべきスタンダード・レパートリーの数々を楽しんだ。それにしても、これがまた上手いのですよ。先日の打楽器コンサートの時も感じたけれど、一定以上のパワーを伴って「えいっ」とやっちゃうときのアマチュア音楽家の集団って、時々ものすごいレベルに到達することがあると思うのだ。そういった境地を垣間見た気がする。

特に感銘を受けたのが、第2部の編成。7~8重奏で演奏された「リベルタンゴ」「絵のない絵本」「ルーマニア民族舞曲」は、どれも大変レベルが高く、また多重奏の音色の厚みを楽しむことができた。そして、極めつけは30数名によるホルスト「第一組曲」!何かの演奏会を聴きに行って「すごい!」と感じると、その瞬間になみだがこぼれそうになったりとか、ぶわっと鳥肌が立ったりとかするのだが、第1楽章"シャコンヌ"のクライマックスの瞬間に、たしかにその瞬間があった!これを聴けただけで、この演奏会に伺った甲斐があったというものだ。

こういう演奏会を開くことって、ものすごいパワーが必要だ。総責任者のさまあさんに、まずは拍手を送りたい。彼女は今4年生で、年度いっぱいでつくばを離れてしまうそうなのだが、今後誰かが跡を引き継いで続けていくようになったら、素敵ですね。

東京に戻ってサクソフォニーの打ち上げに途中参加しようかとも思ったのだが、到着が23時くらいになりそうだったので断念。代わりに、クラリネットの打ち上げに混ぜて頂きました。クラリネットの飲み会は、筑波大学吹奏楽団の中でも、やっぱり屈指の激しさを誇るのだなあ(案の定、つぶれて帰れなくなった方が数名いた笑)。

サクソフォニー関東初本番終了

【さいわい区音楽祭(川崎市幸区)】
日時:2010年3月6日(土) 13:30開演
会場:幸区民館ホール(幸区文化センター内)
料金:入場無料
演奏曲目:
柿崎希夢「スカイブルーファンファーレ」
A.ロイド=ウェバー「オペラ座の怪人」
詳細:
http://www.city.kawasaki.jp/event/info5189/
http://www.city.kawasaki.jp/88/88saisi/home/

とても楽しい本番だった。いろいろな方のご尽力あってのもの、ということで、企画・監修の柏原さん、指揮のSさん、ほか事務局のみなさんと、そしてメンバーの皆様のおかげですね。感謝、感謝です。あと、たくさんのお客様(地域の音楽祭ということで、固定客がたくさんいたみたいだ)の前で、バンドのテンションが上がったのも上手くいった理由の一つかなあ。

ちょっと前までは、30人超の、いわゆるサクソフォン・オーケストラといわれる大編成のサクソフォンについては(聴くのも演奏するのも)かなり食傷気味だったのだけれど、サクソフォニーを経験したことで考えが変わった。もしかしたらまだ新しい団体であるから、ということもあるかもしれないが、今後も良い形が続いていくといいな、と思う。

仲間と一緒に音楽をやって、いっしょに打ち上がって、という当たり前のことが、実はとても得難いことだなあと、ふと思った。大切にしたいですね。

2010/03/05

バリトンサックスでデュボワの「協奏曲」 on YouTube

ポルトガルのバリトンサックス専門プレイヤー、ヘンク=ファン・トゥイラールト Henk van Twillert氏が、オーケストラとともにピエール=マックス・デュボワの「サクソフォン協奏曲」を吹いている動画を見つけた。

まあ観てみてくださいな。圧倒的な印象。特に、緩徐楽章での濃厚な"歌"が見事。他の誰にも真似できない、トゥイラールトの世界そのものである。この人が演奏したピアソラやヴィラ=ロボス(今日が誕生日)が面白いわけだ。そういえば、デュボワの協奏曲って、ホントにこんな音域だっけ?笑。けっこう楽譜が変わっているような気がするのだが。

・第1楽章


・第2楽章


・第3楽章

2010/03/04

ご案内いただいた演奏会情報2つ

うわー、昨日のオペラシティ、せっかくご案内いただいていたのに、ブログに掲載するの忘れてた!すごく面白そうな演奏会だったのに…。フレデリック・ジェフスキーの「Coming Together」やってたらしいのですよ!むむむ…。

他にご案内いただいたものについて、忘れないうちにまとめてご紹介する(汗)。

【サクソフォーンと春の“おとづれ”コンサート】
日程:2010年3月21日(日)
開場:18:00
開演:18:30
会場:柏市民文化会館 小ホール
料金:入場無料(全席自由)
プログラム:
A.ヴィヴァルディ - 四季より夏[saxq]
E.グリーグ - ホルベルク組曲[saxoct]
J.S.バッハ - 主よ人の望みの喜びを[sst]
長生淳 - トルヴェールの"彗星"[saxq]
J.リヴィエ - グラーヴェとプレスト[saxq]
F.メンデルスゾーン - 真夏の夜の夢より夜想曲[saxoct]
G.ビゼー - カルメンより[saxoct]

洗足学園音楽大学の、鈴木研吾様よりご案内いただいた。鈴木さんは、服部吉之先生についてサクソフォンを勉強しながら、編曲活動等にも精力的に取り組まれているそうだ。今回演奏されるアレンジものは、すべて鈴木さんの編曲になるのだろうか?ヴィヴァルディは書き下ろしらしく、珍しや、四重奏の編成なのだそうだ。

ヴィヴァルディというと、圧倒的に音の数が足りない気もするのだが、どのようなサウンドであるのか興味深い。ちょっと遠いが、予定が合えば聴きに行ってみようかな。

【坂口大介&安井寛絵 デュオコンサート】
出演:坂口大介、安井寛絵(以上sax)、羽石道代(pf.)
日程:2010年3月28日(日)
会場:15:00
開演:15:30
会場:アクタス・ノナカ アンナホール
料金:一般/2500円 学生/2000円
L.ロベール - トリノーム
B.バルトーク - 44の二重奏曲より
F.メンデルスゾーン - コンチェルシュトゥック
A.コッチ - Reduce,Reuse,Recycle
H.ヴィラ=ロボス - ジェットホイッスル
問い合わせ:
03-5458-1521(セルマージャパン)

まずは、この大変に意欲的なプログラムに拍手を送りたい。サックス2本とピアノのデュオ、というと、一昔前まではプーランクのトリオをアレンジしたものに限られていたが、最近は面白いレパートリーを持つ団体が増えてきて嬉しい限りだ。聴く方としては、昔よりもずっと面白い状況になってきていると思う。

安井寛絵さんの、帰国後初めての大きな演奏と言うことになるのかな。6月にも大きなリサイタルを予定されているそうで、こちらも楽しみだ。

2010/03/02

出演する演奏会のご案内2つ

【さいわい区音楽祭(川崎市幸区)】
日時:2010年3月6日(土) 13:30開演
会場:幸区民館ホール(幸区文化センター内)
料金:入場無料
演奏曲目:
柿崎希夢「スカイブルーファンファーレ」
A.ロイド=ウェバー「オペラ座の怪人」
詳細:
http://www.city.kawasaki.jp/event/info5189/
http://www.city.kawasaki.jp/88/88saisi/home/

昨年より参加している「サクソフォニー関東」の演奏。大きな演奏会は6月に控えているのだが、事務局のとある方のご尽力により、サクソフォニー関東としての初めての本番を迎えることとなった。

自分で参加していて言うのもなんだが、面白い団体だ。あまりサクソフォンオーケストラっぽくないというか…演奏していると、これまでにない何かとてもクリエイティブなことに挑戦しているような、不思議な気分になる。会場のアクセスがやや悪いようだが、お近くの方はぜひお運びいただければと思う。

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【ディヴィッド・マスランカ マスタークラス&レクチャーリサイタル】
出演:ディヴィッド・マスランカ
日程:2010年3月10日(水曜)
時間:16:00開演(マスタークラス)19:00開演(レクチャー・リサイタル)
会場:ルーテル市ヶ谷
料金:4000円
プログラム:
~マスタークラス~
「アルト・サクソフォン・ソナタ」 - 渡部賢吾
「ソプラノ・サクソフォン・ソナタ」 - 大澤知代
「レシテーション・ブックより第1楽章、第5楽章」 - Tsukuba Saxophone Quartet
~レクチャー・リサイタル~
「アルト・サクソフォン協奏曲」 - 雲井雅人
「ソプラノ・サクソフォン・ソナタ」 - 大澤知代
「アルト・サクソフォン・ソナタ」 - 渡部賢吾
「レシテーション・ブック」 - 雲井雅人サックス四重奏団
問い合わせ:
03-5909-1771(ドルチェ楽器)

こちらのほうも近づいてきたので、再度ご案内したい。3月のディヴィッド・マスランカ David Maslanka氏の来日に合わせ、東京でマスタークラスとレクチャーリサイタルが催される。そのマスランカ氏のマスタークラスを、Tsukuba SQで受講することとなった。声を掛けて下さった佐藤さん他、関係者の皆様に感謝申し上げたい。平日なので、仕事はお休みする予定。

チケット希望される方は、kuri_saxo@yahoo.co.jpまで連絡を。少し割り引きできます。

2010/03/01

津田征吾&小川卓朗 サクソフォーンリサイタル

【津田征吾&小川卓朗サクソフォーンリサイタル 東京公演】
出演:津田征吾、小川卓朗(以上sax.)、松浦真沙(pf.)
日時:2010年2月26日(金曜)18:30開演
会場:仙川アヴェニューホール
プログラム:
~第1部~
J.イベール - 2つの間奏曲(津田氏)
D.キャンフィールド - 協奏曲"after Gliere"より第3楽章(小川氏)
R.シューマン - アダージョとアレグロ(津田氏)
J.フェルドハウス - Grab It!(小川氏)
P.ヒンデミット - ヴィオラ・ソナタ(津田氏)
~第2部~
小林浩三 - プレリュード(委嘱作品)
F.メンデルスゾーン - ピアノ三重奏曲第1番
~アンコール~
V.モンティ - チャルダーシュ

会場へ向かう最中に東横線が止まり、慌てて経路変更(Googleトランジットは便利だ)したものの開演時間には間に合わず、二曲目から聴いた。仙川アヴェニューホール、初めて入ったのだが、音響的な意味も含めてなかなか素敵な空間だ。京王線があまり停まらないようで、駅へのアクセスが大変だった。

津田氏と小川氏、出身地を同じくする奏者のデュオリサイタル。前半はそれぞれのプレイヤーがソロを披露し、後半はサックス二本とピアノのトリオ。デュオリサイタルといえど、共通点は出身地くらいで、それぞれの方が持つテクニック、音楽性、レパートリーの差異を見るのが面白い。

最初に聴いたキャンフィールドは、タイで開かれたサクソフォン・コングレスで、ケネス・チェ氏によって初演された作品なのだそうだ。最近の作品とはいえ、ゲンダイオンガク的な感じはしない。今回聴いた第3楽章は、奏者のテクニックによって一気に聴かせるような雰囲気だったが、面白い作品だ。他の楽章も聴いてみたいな。

シューマンは、ソプラノサクソフォンでの演奏。この音域で演奏されると、なんだか別の曲のように聴こえる。それにしてもキラキラした素敵な音色だ。「Grab It!」は、多様な音色を使い分けており、驚嘆。この曲の楽譜って、ここはソニー・ロリンズ風に、とか、エリック・ドルフィー風に、とか書いてあるのだが、その指示を小川さんなりに解釈した結果だったのだろうか。なんとなくティエス・メレマの演奏を思い起こした。周りのお客さんは驚いていたようだったが(当たり前か)、どう受け止められたかは興味あるところだ。

ヒンデミットは、先日の洗足学園音楽大学のサクソフォン研究会定期演奏会で、同じ奏者(ピアニストも)、同じ曲目で聴いたばかり。いやあ、まったくブレないですね。洗足の講堂での演奏と、ほとんど同じ演奏だったように感じた。ということで感想は同じなのだが、リサイタルなのだし、もっと別の表現を聴いてみたかったかもしれない。

後半は、メンデルスゾーンの素晴らしさに尽きた。正直言うと、最初は30分も聴きとおせるかどうか自信がなく、さらに前半が良い演奏尽くしで十分すぎるほど満足していたため集中して聴くことは適わない、とも思っていた。だが、予想に反して、第1楽章の終わり頃には前半の演奏が頭からすっかりクリアされてしまい、メンデルスゾーンの印象のみが頭の中を支配していた。間違いなく本日の白眉であったと思う。

確かに良い曲なのだが、曲の良さだけでは済まされない何かがあったはずだ。また、飛び出してくる響きは、室内楽として果たして伝統的な「クラシック音楽」に勝るものであったかと問われても、それもちょっと違うと思う。だが、曲の主題を覚えて、ソプラノサックス、バリトンサックス、ピアノの音をそれぞれ辿ってくうちに、ぐいぐいと演奏に引き込まれてしまった。不思議な魅力を持った演奏だった。

アンコールは、ヴィットリオ・モンティの「チャルダーシュ」。ここでメンデルスゾーンの云々…とならないのが、サックスの醍醐味ですよね!(笑)