2010/09/05

HDR?

ハイダイナミックレンジ画像(HDR画像)という言葉とその意味を知って、なんとなく現代のクラシック音楽の録音に通じるものがあるのかなあ、などと思った。HDR画像とは、画像に写っているオブジェクトごとに最適な露出を選択して、画像全体の美しさを演出するものである。ここに貼った写真のように、暗い部分は黒ツブレせず、明るい部分は白飛びせず、という見事な写真が出来上がる。ハイダイナミックレンジ画像は、パッと見たところでは美しく見えるのだが、細部を眺めた後にぐっと視点を引いてみると、妙な違和感に気づく。本来は脳で補正されているものが、最初から眼前に提示されてしまっているのである。

これって、オーケストラの回りに何十本ものマイクを立てて、大きなミキシングコンソールを使いながら各楽器のバランスを最適に調整して、さらにミスは徹底的に切り貼りをして…というようにマスタ音源を作っていく作業と同じだ。この作業は、現代の録音では当たり前のことだろう。

均整の取れたもの、美しいもの、綺麗なもの、売れるものを求めていけば、ポストプロダクションの部分にお金と時間と手間をかける、という方向へ向かっていくのは致し方ないのだろうが、そんな世の中の流れにおいても、見かけに騙されず、元のまま、ありのままを捉えようと努力することも、消費者にとっては大切なことなのかもしれない。

0 件のコメント: