2010/09/18

ギャルド復刻CDレビュー(ディスク2)

昨日の記事の続き。

Disque No.2
Lavagne - Fuite et Mort de Neros (D-11046)
Alfred Bruneau - Messidor (D-19204)
Andre Messager - D'Isoline, ballet suite (D-11083/4)
Nikolai Andreyevich Rimsky-Korsakov - Capriccio espagnol (日本コロムビア J-3286/7)
Andre Messager - Les deux pigeons balet suite (D-11020/1)
Wilhelm Richard Wagner - Prelude du 3e acte de Lohengrin (DFX-148)
Wilhelm Richard Wagner - Marche de tannhauser (DFX-148)
Giacomo Meyerbeer - Marche du couronnement (DF-147)
Hector Berlioz - Marche hongroise (DF-147)
Wolfgang Amadeus Mozart - Marche turque (日本コロムビア J-3210)

ディスク1でこのデュポン楽長とギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の組み合わせの良さを分かったつもりになってはいけない。ディスク2では、それがさらにパワーアップしているのだ。木管セクションの唖然とするほどのアンサンブル能力、サクソルン属を加えることによる魅力的な中音域の輝き、独奏者が奏でる魅力的なソロ、どんなに吹こうとも上品な金管セクション、デュポン楽長の見事な統率力、といったところはそのままに、このユニットがさらに威力を発揮できるプログラムが目白押しとなっている。

ラヴァーニュ「暴君ネロの逃走と死」は、タイトル通りの描写音楽だが、冒頭の滝が落ちるようにせき込んだフレーズから一気に7分間を聴かせてしまう。さりげなく織り込まれるソロ部分に、奏者のセンスを垣間見ることができる。続くブリュノーの「メシドール」は、19世紀に作曲された同名のオペラ音楽からの抜粋。どの部分(何幕何場とか)にあたるのかはよく判らないのだが、まるでコラールのような美しくゆったりした5分ほどの曲で、音色の美しさと変化に惚れ惚れしてしまう。ちなみにこの「メシドール」と、メサジェの「イゾリーヌ」の一部、「ディオニソス」の一部については、今回の復刻が初となるそうだ。

アンドレ・メサジェは19世紀から20世紀前半にかけて活躍したオペラ作曲家。ブリュノー作品といい、メサジェ作品といい、この時代の吹奏楽のレパートリーには、オペラ音楽からの抜粋形式の組曲がたくさん含まれていたのだなあ。舞踏組曲「イゾリーヌ」あまり知らない曲だったのだが、Pavane, Entree d'Isoline, Entree de la 1re danseuse, Seduction, Valseと名付けられた5つの組曲になっており、様々な見せ場も登場して、聴きごたえも十分。

ニコライ・リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」。日本コロムビアの盤なんだなあ。オーケストラで演奏した時のような、ちょっと上品な感じは身を潜めて、ギャルドが吹奏楽で演奏すると、このようにまさに"カプリツィオ=気まぐれ"な雰囲気が全面に押し出される。楽しい!緻密なアンサンブルの中でオーボエの妙技を披露するプレイヤーは誰だろう。そして、その後に聴かれる、ヴィブラートもかかったようなホルン(コル)の美しいテーマ…。相変わらず鉄壁のフルート~クラリネット~サクソフォンセクション。ハープが加えられたサウンドも美しい。最終部に向けては、各パートが存分に活躍しながら高みへと登っていく。最後の最後など、現代の吹奏楽に聴かれる"超絶技巧"などを鼻の先で吹き飛ばしてしまうほどのスーパー・アンサンブルに恐れ入る。これ、ライヴで聴いたら興奮しただろうなあ。

再びメサジェの「舞踏組曲"二羽の鳩"」。これも、現代の吹奏楽界では、作品としては「知られざる」に分類されるところだと(個人的には)思うが、良い曲なのですよ。Entrée des Tziganes, Scène et pas des deux Pigeons, Danse Hongroise, Theme & Variationsの4曲。どれも親しみやすく粒ぞろいのメロディに溢れていて、気に入ってしまった。。最終曲の主題と変奏では、飛び上がること間違いなし!始めはゆったり…なのだが、徐々に速くなってきて、スネアによって導きだされる13分過ぎの部分からは容赦無きまでの煽り、煽り、煽り!統率するデュポン楽長と、それに応えて完璧に吹ききるギャルドの面々…。一筋縄ではいかない。

最後に置かれた5曲のマーチ、ああ、このトラックの構成はニクイですね。メサジェを大興奮で聴いたあとの、アンコールというわけだ。ちなみに、ワーグナーの「タンホイザー」では、ファンファーレのあとのクラリネットソロは、マルセル・ミュールが代わって担当している(栃木のO様に教えていただいた)。このころのミュールは、すでにヴィブラートのスタイルが確立している。ほんの一瞬だが、実に上品なフレージングを聴かせてくれる。

以上。古いものは、それがただ古いから良いのではなく、その時代に最も輝かしいものを築き上げたものだけが、時代を超えてなお存在感を放つのだと思う。このディスクには、それが確かにあると感じた。全ての管楽器奏者、吹奏楽愛好家、クラシック愛好家におすすめする。

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