2010/07/05

木下直人さんから(ロンデックスのSNE盤)

Société nouvelle d'enregistrement(SNE)というカナダのレーベルをご存知だろうか。カナダの演奏家や作曲家を紹介する目的で、1978年にモントリオールで立ち上がったレーベルである。いくつかの財団から援助を受けながら活動を継続したが、残念ながら現在では消え去っている。Quatuor Alexandreという、ダニエル・ゴーティエが代表を務めていた伝説的サクソフォン四重奏団があるのだが、その団体の唯一のアルバムがこのSNEから出版されており、名前だけは良く知っていた。

ジャン=マリー・ロンデックス氏がSNEレーベルに吹き込んでいることは、公式ページを読んで知っていたが、そのLPを聴けることになるとは思っていなかった。EMI盤などにくらべてもそれほど数が出ておらず、私の中ではいわゆる「幻の…」扱いであったところに、木下直人さんからCD-Rが到着した。飛び上がるほど驚いたのは言うまでもない。いつも、本当にありがとうございます。

Jean Marie Londeix, saxophone alto
Carmen Picard, pf

Ida Gotkovsky - Brillance
Paul Hindemith - Sonata
Edison Denisov - Sonata
Daniel Pilon - Trois Méditations

ピアノのカルメン・ピカールは、ケベック出身の女流ピアニスト。また、作品に名を連ねているダニエル・パイロンは、カナダのモントリオールで活躍していた作曲家である。この人選にSNEの意地を感じる。

まず興味深いのは、やはりEMI盤からの再録音となったヒンデミットとデニゾフではないだろうか。聴いてみると、ヒンデミットはEMI盤と解釈に共通するものが見られる。ただし、こちらのSNE盤は録音も含めて非常に見通しがよく、清潔感あふれる演奏だ。デニゾフは、個人的には間違いなくこちらのSNE盤の演奏に好感が持てる。第3楽章の引き締まった響きやリズムを聴くと、演奏者本人たちにしてみても、会心の演奏だったのではないかなと思えてくる。

だが、個人的に一番はっとさせられたのはゴトコフスキーかも。ピアノの序奏に続いて斬り込んでくるサックスの音は、おそらく復刻の素晴らしさもあるのだろうが、それと相俟って非常にセンセーショナルな音だった。スピーカーの前で正座して聴いていると、飛び上がりそうになる。ゴトコフスキー節にやられちゃってますねえ。日本の伝統音楽的な間合いの取り方に共通するものがあるのかな、などと、無責任なことを思ってみたり。

ダニエル・パイロンの作品は、もとは無伴奏アルトサクソフォンのための「7つのメディテーション」というタイトルなのだそうだ。1978年から1984年にかけて作曲され、全て演奏すると20分間。このLPには、1,2,4が収録されている。パイロンというと、今でも自分の中では「Transparences」なのだが、響きとしては近いものを感じた。

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