2010/07/10

ラーションの「協奏曲」CD聴き比べ

明日辺り、PCのOS再インストールを敢行する予定。

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おなじみラーシュ・エリク・ラーション Lars-Erik Larssonの「サクソフォン協奏曲」を聴き比べてみた。一番最初にラーションの協奏曲を聴いたのは、ジョン=エドワルド・ケリー John Edward KellyのCD上である(Arte Nova Classics 74321 27786 2)。最初この曲を耳にしたときは、まだあまり"ラーションの「協奏曲」"が日本で流行っていない頃であり、高音域を駆使した雄大なサクソフォン協奏曲に、感銘を受けた。おそらくラッシャー派のサクソフォン奏者を聴いたのも初めてで、特徴的な音色に驚いたものだ。録音がいまいちなのだが、サクソフォンもオケも非常に完成されていて、私の中ではラーションの最初のスタンダード録音となった。

ケネス・チェ氏の演奏が含まれているのは、Arizona University Recordingsの、"America's Millenium Tribute to Adolphe Sax"シリーズ(Arizona University Recording CD 3122)。ケネス・チェ氏、ということで、とても期待して購入したのだが、結果は(>_<)だった。というのも、オーケストラがあまりに酷すぎるのだ…大学のオケなのだろうか、特に第1楽章の音程の外しっぷりが盛大で、正直曲を楽しむというレベルまで到達しなかったのが残念。ライヴ盤なので、致し方ない部分もあるとは思うのだが…。

デファイエの弟子でもあった、ペッカ・サヴィヨキ Pekka Savijoki氏の演奏(BIS CD-218)。クランポンの赤ベルを使い、所々雑な場所もあるものの(特にフラジオ音域)、全体的に師匠デファイエのような美しい音色を堪能した。サヴィヨキ氏はフィンランド生まれ、ラーションはスウェーデンという違いはあるものの、同じ北欧の出身ということで、曲への深い共感が感じられる。Thunder氏のレビュー(管打コンでラーションが本選課題曲になったときに書かれたものだ…)も、ぜひご覧ください。

Chandosからリリースされた須川展也氏のサクソフォン協奏曲集(Chandos CHAN10466)でもラーションが取り上げられている。おそらく、現在のラーションの標準盤ではないだろうか。世界的な名手である須川展也氏が、佐渡裕&BBCフィルという最強のバックを得て吉松隆からイベール、さらにはラーションまでをも吹きまくる。技術的な安定性や、音色の美しさ、音楽性など、筆舌に尽くし難い。

個人的にひとつ残念なのが、テンポ設定。全体的にやや遅めで、曲想を聴き手に重く感じさせてしまうのだ。例えば、第3楽章はAllegro Scherzando…そう、"Scherzando"なはずなのだが、オーケストラからそういった愉悦感のようなものがあまり感じられなくて…。

現在のところ、これが最も素晴らしいと感じる盤だ(Caprice CAP21492)。スウェーデンの名手、クリステル・ヨンソン Christer Johnsson氏が、セーゲルスタム指揮スウェーデン放送交響楽団と組んだ録音で、もともとはアナログ録音なのだとか。オーケストラの上手さ、サクソフォンの上手さ、そして録音(実はけっこう重要)、ともに全CD中トップで、この曲が持つ"新古典主義"という性格を、非常に良く表している録音だと思う。

唯一残念なのが、第1楽章と第2楽章で、サクソフォンがフラジオ音域へ登っていかないこと。「ええ!それってこの曲の意味がないじゃん!」と思われるかもしれないが、それを差っ引いても、この盤には素晴らしい音楽が満ち溢れている。

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