2010/07/10

サヴィヨキ氏演奏のクレストン

ペッカ・サヴィヨキ氏は、フィンランド生まれのサクソフォン奏者。ヘルシンキの音楽アカデミーを卒業し、在学中に一時期フランスへと渡ってダニエル・デファイエ氏にも師事している。北欧を代表するサクソフォン奏者の一人で、特にBISレーベルへ多くの録音を吹き込んでいる。現在では、指揮者としても活躍しているそうだ。

サヴィヨキ氏のソロ録音というと、グラズノフやラーションが入った協奏曲集とか、ブートリーやプロヴァンスの風景などを取り上げたフランス作品集あたりを思い出すのだが、BISにクレストンを取り上げたCDがあるとは知らなかった。"C"で名前が始まるアメリカ作曲家の作品を集めたアルバムで、その名も「The Contemporary American "C"(BIS CD-52)」。ここで、サヴィヨキ氏はクレストンの「ソナタ」を吹いている。BISのオムニバス的CDでは、サクソフォンにサヴィヨキ氏が起用されることが多いということだろうか。

笑っちゃうくらい凄い録音で、冒頭のドシソソド~というフレーズ(滝の音のようにセンセーショナルな印象を聴き手に与える)から、並々ならぬ気合いを感じる。そういえば、フランス作品集も似たような傾向であった。とても快調に飛ばし、第1楽章をおよそ4分ちょっとで吹ききっている。これで音色が違っていたら、イギリスあたりの奏者の演奏だと言われても納得してしまうかもしれない。

なんとなく聴くだけでは単なる笑いの対象になってしまうかもしれないのだが、donaxさんのツイートを見た直後であったので、そういったものとは少し違うものを感じた。フィンランドサクソフォン界の草分け的存在であったサヴィヨキ氏は、おそらく、サクソフォンのことをを管楽器のひとつとして定義していたのではないか。サヴィヨキ氏が演奏した時、サクソフォンは楽器として圧倒的に"鳴り"、作品の意図を聴き手に対して直接伝達するためのひとつの手段として昇華させることに成功している。この間にあるのは極限までシンプルな管楽器である。

楽器の名手は、いつの時代も先を見据えているものだ。

2 件のコメント:

Thunder さんのコメント...

BISへのサヴィヨキのソロ録音は、かつてLPレコード2枚分出ておりました。スカラムーシュ/ブートリー/フランセ/イベールの物語、という組み合わせと、プロヴァンスの風景/ジョリヴェ/クレストン/ヒンデミット、というものです。
CD化される際に、The French Saxophoneというタイトルでフランス産の作品のみ1枚に再編集され、あぶれた2曲がオムニバス・アルバムに転用された、ということですね。
ヒンデミットのソナタはBIS-CD-159というヒンデミット室内楽作品集のCDに収録されています。これもなかなか楽しいCDですよ。

kuri さんのコメント...

> Thunderさん

貴重な情報ありがとうございます。アナログ録音があったということは知っていましたが、そういった組み合わせだったのですね。

BISのカタログは、若い番号にオムニバス的なタイトルが多いのですが、中に収録されたトラックに、そのような事情を経て構成されているものがあるとは知りませんでした。

ヒンデミットのCDも、ぜひ聴いてみようと思います。