2010/06/17

マカリスター氏のリサイタル聴いた!

いやー、トンでもないものを聴いてしまった。先に今夜のリサイタルについて書こう。マスタークラスの話も早く書きたいが、ちょっと前後する。

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【Timothy McAllister Saxophone Concert】
出演:Timothy McAllister (sax), Kathryn Goodson (pf), Jonathan Wintringham(guest sax)
日時:2010/6/17 開演19:00
会場:ルーテル市ヶ谷ホール
プログラム:
Roshanne Etezady - Streetlegal
Heitor Villa-Lobos - Fantasia
Cesar Franck - Sonata
平義久 - Pénombres VI
Charles Ives - The Alcotts
Caleb Burhans - Escape Wisconsin
Wolfgang Jacob - Barcarolle (guest: Jonathan Wintringham)
William Albright - Sonata

ブライアン・サカワ Brian Sacawaと並ぶ、ドナルド・シンタ Donald Sintaの高弟のひとりであり、レコーディングなどでは特に現代作品に力を発揮しているマカリスター氏。本日のプログラムは、フランクのようなロマン派から、日本人作曲家、「エスケイプ・ウィスコンシン」といった最新の作品、そして十八番のオルブライトまでと、非常に多彩なプログラムで、ずっと楽しみにしていたが、期待以上・想像以上だった!

「Streetlegal」は、ソプラノサクソフォンとピアノのための作品。サクソフォンの運動性能&フラジオ音域を、限界まで引き出した作品で、一曲目だというのに飛ばす飛ばす。終わった瞬間に、一気に客席が会場が沸いた。

ヴィラ=ロボスとフランクは、これは今までマカリスター氏の演奏で聴いたことのないタイプの作品で、昨日マスタークラスを聴くまではどんな演奏になるのか想像がつかなかった。だが、これがまた良いのですよ。ロマンティックな歌い上げ、非常に濃厚なルバートなど、時に「やりすぎではないか?」と思えるほどの表現も、全体の大河のような音楽の流れの中に位置するものなのだ。「ファンタジア」は、昨日も聴いたが、スピードが3段階くらいレベルアップしていたぞ。なんだあれは。

ピアノのキャスリン・グッドソンさんの演奏は、実にユニークなフレーズをピアノから引き出していた。左手の使い方が面白いのですよ。多彩な音色と、完璧なテクニック。そしてなにより、マカリスター氏との緻密かつ有機的なアンサンブル。

さらにパワーアップしての後半は、平義久作品から。「Pénombres」とは、"薄明かり"というような意味で、たぶん多くの方がドゥラングル教授の「The Japanese Saxophone」で聴いたことがあると思う。だが、実演されるのは稀。演奏は、非常に彫りを深くしたようなゴツゴツした演奏で、興味深い発見がいくつもあった。演奏家によって、これだけ変わるんだなあ。

アイヴスはピアノ独奏(これはベートーヴェンの「運命」へのオマージュか笑)。そして、「エスケイプ・ウィスコンシン」はサックス独奏だったが、非常に面白かった!ミニマル風のタンギングを伴うフレーズがひたすらに続く作品だが、特殊奏法一切なくして、最初から最後まで張り詰めたテンション。ブラヴォーだったなあ。

「舟歌」は、お弟子さんのジョナサン・ウィントリンハム氏との共演。ラッシャー父娘とヤコビ氏のトリオ演奏を想定して書かれた作品なのだそうだ。海面に映る、ゆらめく月の光の反射光のような、そんな音世界だった(献呈先がラッシャーだということで、当たり前のようにフラジオが…)。

そして、全てを飲み込んでしまったオルブライト!これはもう十八番なのだろう。第1楽章「2-part Inventions」から客席を緊張の糸で縛り付け、第2楽章は宗教的な美しさを湛えた感動的な楽章。思わずルーテル市ヶ谷ホールの十字架を見上げてしまったよ…。ごくごく短いスケルツォと、第4楽章冒頭のカデンツを経て、「マッド・ダンス」のテンションで、サックスの限界を突破!いやー、ぶっ飛びました。正直な話、日本人がやってもああいう演奏にはならないのだと思う。

日本のサックス界に衝撃を与えたといって過言ではないかも。初めてジェローム・ラランを聴いたとき、ミーハ・ロギーナと李早恵さんのデュオを聴いたとき、ヴァンサン・ダヴィッドを聴いたとき…のようなショックを受けた。

アンコールは、ピアソラの「ブエノスアイレスの春」とガーシュウィン「3つの前奏曲」から第1曲。終演後は、CDを買ってサインまでもらっちゃいました~。またライヴで聴きたいなあ。

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