2009/08/02

Styliani "Remembering Sigurd Rascher"

スティリアニ Styliani氏はギリシャに生まれ、アメリカでサクソフォンを学んだラッシャー派に属する女性奏者。必要があって一年ほど前に「Remembering Sigurd Rascher(Wisteria Records WP-77957)」というCDを買い、その名前を知った。ラッシャー派のなかではかなり高名なプレイヤーのはずで、プレイヤーとしての活躍のみならず、教育者としても活躍しているようだ。

2001年にレコーディングされた「Remembering Sigurd Rascher」のプログラムは、以下。そう、笹森建英先生の、「"荒城の月"変奏曲」がレコーディングされたアルバムなのだ!去年、サクソフォーン協会誌に投稿した記事「サクソフォン奏者:シガード・ラッシャーとその周辺の作品」を書くに先立って、どうしても聴いておきたくて買ったというわけ。

Darius Milhaud - Scaramouche
Warren Benson - Aeolian Song
Alois Haba - Suite, op.99
Henry Cowell - Air and Scherzo
Erwin Dressel - Partita
笹森建英 - 「"荒城の月"の主題による変奏曲」
William Grant Still - Romance
Francois Schubert - L'abeille
arr. Glaser&Rascher - Carnival of Venice

ラッシャー派にとって重要なレパートリーが演奏されており、たとえばベンソン、ハーバー、カウエルなどは、シガード・ラッシャー自身による録音も残されている。ミヨー(フランス風の解釈とは一線を画すスタイルで、面白い)から始まり、無伴奏の後に響くカウエル作品の響き、そして驚異的なアルティシモに驚かされる。マルタンの冒頭部分を聴いた時にも思うのだが、まるで暗闇に射す一筋の光のようだ。続くスケルツォも、遊び心があって楽しい。

全体的な演奏の傾向として、ラッシャーの演奏に比べてフラジオ音域のコントロールを始めとしてテクニック的には劣る部分があるものの表現のアグレッシヴさが目立つ。音色の変化も大きく、演奏を聴いただけではものすごくガタイの良い男性がバリバリ吹いているイメージ(なんじゃそりゃ)が想起されるのだが、ちょっと意外という感じか。

「"荒城の月"変奏曲」については、笹森先生はLawrence Gwozdzという奏者のCDを聴いたことがあるそうで、このCDを送ったところ「スティリアニ氏の演奏のほうが、Gwozdz氏の演奏よりも表情が豊かについており、良いと感じた」と感想をおっしゃっていた。

それから、やはりシューベルトにおけるブレスコントロールはものすごいですな。そもそも息を使う量が、「普通の」サクソフォン吹きとはまったく違うのだ。

0 件のコメント: