2009/02/07

雲井雅人SaxQ「むかしの歌」

これ、いいなあ。まさに"愛奏曲集"という趣の、雲井雅人サックス四重奏団の最新アルバムである。「最新」とはいっても、発売からもうずいぶんと経ってしまった。昨年12月の演奏会にも伺えず、ご紹介のタイミングを少々逃していたところだった。年末年始に実家に持って帰って、かなり聴いていたのだが、なんでブログに書かなかったのだろう。不思議…。

むかしの歌~Chanson d'AutreFois~(Cafua CACG-0127)
雲井雅人、佐藤渉、林田和之、西尾貴浩
プログラム:
G.ピエルネ/M.ミュール - 昔の歌
富山県民謡/秋透 - 三つの富山県民謡(おわら節、こきりこ節、麦屋節)
櫛田[月失]之扶 - 万葉
伊藤康英 - 琉球幻想曲
イギリス民謡/織田英子 - グリーンスリーヴス
P.イトゥラルデ - ギリシャ組曲
I.アルベニス/M.ミュール - コルドバ
G.ピエルネ - 民謡風ロンドの主題による序奏と変奏
村松崇継/浅利真 - 彼方の光

こういう時代にあって、ミュール編の小品や、グリーンスリーヴスといった曲をCDとしてリリースし、さらにこういった聴きごたえのするアルバムになるのって、雲井Qくらいなのではないかな。昔からどうもサックスで取り上げる「メロディ集」「小品集」というやつが苦手であった。密度という点で、なんだか薄いイメージをもってしまうのだ。サクソフォンって、4本持ってきて音を重ねればそれっぽい響きにあっさり溺れてしまうものだから、深い音楽を感じられるものがなかなか少ないのだよなあ。

ここで聴ける演奏は、そういった軽薄さとは無縁のものだった。一見すると聴きやすいものだが、集中して聴けば聴くほどに、味わいが増す。かといって、コッテリした演奏・聴いて疲れる演奏であるということではないのが、驚くべきところ。この絶妙なバランス感覚の実現には、とんでもない演奏レベルが要求されるのだと思う。

前半は、日本のメロディに題材をとったもの。後半は、西洋のメロディに題材をとったものという構造。そして、プレリュードとエンディングにそれぞれをひっくり返した小品を配置するというアイデアが面白いな。接続箇所におかれたのが、これまた東と西を横断する梯となる「琉球幻想曲」と「グリーンスリーヴス」、というのも(笑)。

録音として聴きたかった「三つの富山県民謡」が収録されているのが嬉しかった。かなり技巧的に工夫の凝らされた編曲で、オリジナルのしみじみさ…とは少し離れているのだが、実に面白いのだ!このCDを実家の居間で聴いていた時、母がこのCDの「三つの富山県民謡」に合わせてメロディを口ずさみ始めたのだが、そのことが妙に印象に残っている。あとは、「万葉」「琉球幻想曲」が好き。素材となっているのは、日本の音だが、どちらもその素材を存分に生かし、高度なパロディを構築しているのは周知の通り。その楽譜に、心から共感して演奏している雲井雅人サックス四重奏団の様子が、スピーカーを通して伝わってくるようだ。

ふと思ったのだが、そういえばこれってサックスのアルバムなんですよね。面白いなあ。まさか、おわら節やこきりこ節を唄い始めた人は、サックスという楽器が、このような音を奏でるとか、思いもしなかったのだろうなあ。

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今度はどんなアルバムを作ってくれるのだろうか。ずっと心待ちにしているのが、J.S.バッハ/伊藤康英編「シャコンヌ」なのだが、いつCDになるのかなー。スティラーの「Two Fixed Forms Unfixed」はどうなったのかな。次の演奏会も、いつになるのだろうか。はてさて…。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

次の雲カルは、4月11日(土)、14時から浜離宮だそうですよ!たのしみですねー◎

以上プチ情報でした(笑)

kuri さんのコメント...

> anzuさん

そうなんすか笑。2009年?

ううん、行けるかなあ。たぶん全体研修の真っ最中だから、東京にはいるかなあ。