2009/01/30

現代の音楽展2009:サクソフォーン・フェスタ

最近になって詳細が出たようなのだが、今年の「現代の音楽展」は、サクソフォンに焦点を当てる企画がある。新作を広く募集し、コンクール的な意味合いも含んでいるようだが、邦人作曲家の作品が、ここまで大量に同時に初演されるのは、かなり珍しいことなのではないだろうか。

演奏側は、斎藤貴志、平野公崇、原博巳、大石将紀各氏らを筆頭に、協会の中堅どころ~若手の総力を結集したという感じで、実に聴き応えがありそうだ。あとは、いったいどんな作品が飛び出すのか、というところ…。怖いもの見たさ(聴きたさ)で、上手く予定を調整して伺えないかなあと思っているところだ。あ、アンサンブル・コンクールも同じ日にあるのですね(TsukubaSQはエントリーすらしてません…)。

面白い作品があったら、ぜひ拾い上げてきたい。服部吉之先生が言っていたけど、結局、美味しいラーメンって、自分の足でラーメン屋さんに出かけていって食べてみるしかないのだよな。今までも、いくつかそういう機会があったが、この機会は貴重だ。エレクトロニクス作品を取り上げるということでも、個人的に興味が増している。

【現代の音楽点2009:サクソフォーン・フェスタ】
出演:大石将紀、大沢広一郎、大塚遥、江川良子、包国充、斎藤貴志、塩安真衣子、鈴木広志、津田征吾、冨岡祐子、橋本恭佑、原博巳、東秀樹、平賀美希、平野公崇、福井健太、クローバーSQ、カルテット・スピリタス
日時:2009年3月1日(日)17:00開演
会場:洗足学園前田ホール
料金:2000円(全席自由)
プログラム:
>第1部~サクソフォーン作品の多彩な世界vol.1~
古屋雄人 - ツイスター~ソプラノサックスとバリトンサックスのために~(新作)
松岡大祐 - トリツカレ男
伊藤高明 - 3本のテナーサクソフォーンのための山女魚(新作)
平野義久 - 恋のうた
松尾祐孝 - DISTRACTION Ⅸ for Saxophone and Piano(新作)

>第2部~サクソフォーン作品の多彩な世界 vol.2~
生野裕久 - 四つの葦のための四つの章
大政直人 - ダンス・ミュージック(新作)
南 聡 - 2つの余禄の心得 op.50-5(新作)
可知奈尾子 - サルルンカム(新作)

>第3部~サクソフォーン・オーケストラの饗宴~
山内雅弘 - 3 Movements for Saxophone Orchestra
荒尾岳児 - 多重振り子のあるカプリス(新作)
二宮玲子 - 影像―娘道成寺による サクソフォン・オーケストラと和太鼓アンサンブルのための(新作)

>エレクトロニクス・ステージ
寺内大輔 - 王の主題~サクソフォンのために~
蒲池 愛 - Moment to moment for Saxophone Solo and Electronics Live(新作)
平野公崇&松尾祐孝 - サクソフォーンとエレクトロニクスによる即興
宮木朝子 - Evangelium - for Saxophone Solo and electronics(新作)

明日は本番

内輪向けの演奏会とは言え、こういう機会って実はすごく貴重なのだ。ずっと同じ環境が続いていると、ありがたみを忘れてしまうけれど…人間とは、罪な生き物であることよのぉ(←謎)。

…外は、すごい雨。会場まで行けるのか?明日の朝には止んでいてほしいけど。

2009/01/29

即興についてのブレインストーミング

けっこう昔から、即興に興味がある。ここで言う「即興」というのは、ジャズの即興とは違う、いわゆる「フリーの即興」というやつ。無音の空間や、限られた背景の中に音を並べて、音世界を構築する例のアレである。サクソフォンを媒体とした即興演奏は、国内のサクソフォン界では平野公崇氏が積極的に取り上げ始め、現在では大石将紀さんなどもそれをさらに推し進めた形で披露している。

自分が即興演奏というものを意識して初めて(実演・録音問わず)聴いたのは、いつが最初だったかなあ。平野さんの「Jurassic」かな。実演で初めて聴いたときのことは良く覚えているのだが。Saxcherzetの第1回の演奏会で、ラージアンサンブル版のミヨー「スカラムーシュ」を取り上げていたのだが、2楽章の終わりから3楽章の始まりまでを、平野さんが即興で繋いだのだ!CDとは比較にならない、大きな衝撃を受けた。

ここ数年くらいで実演で聴く機会は増えてきて、2007年のサクソフォンフェスティバルにおける平野公崇さんと坂田明さんの即興対談と演奏、2008年では姜泰煥×高橋悠治×田中泯×斉藤徹の「ブレス・パッセージ」、大石将紀さんと保坂一平氏の舞台「蛹化の女」、平野公崇さん×ヴァンサン・ダヴィッド氏のコンサートでのアンコール等々…。一つ一つの舞台が、自分に対して大きな衝撃と感動を与えたものばかりだ。



そうなってくると、「よし、自分でもやってみよう!」とか思って、楽器を構えてプーとかペーとか音を出してみるのだが、やってみては「???」の繰り返し。独奏でやる即興って、なんだか良く分からんのですよ。ううむ。じっと音を並べていると、12音的ではなく、やはりなにか旋律っぽいものが形作られたりするのだが、これで良いのかなあと思いながら、やっぱり頭の中は「???」が並ぶ。

わからないながらに、自分ともう一人、2人で一緒に音を出してみる。不思議とストレスを感じないこともあるし、水の掛け合いになってしまうこともある。時には、驚くような音が出る瞬間があるけど、聴いてるほうにとってはそうでないのかもしれない。耳をオープンにして、かなり慎重にやりつつも、熱くなってくるとそれだけではなくなったり。2人の次は3人で、とやろうとすると、どうしても耳が片方にしか追従しないとか。

それから、即興では何をやるにしても、自分をさらけ出してしまう。おかげで、終わった後はゼエゼエです。これは、楽譜をなぞるだけでは、なかなか味わえない感覚かもしれない。あと、楽器のことだが、テナーとアルトを比べると、アルトを使用したほうが楽のような…気がする。使用する息の量に関係することだろうとは思うが。あと、循環呼吸ができると便利なのかも(自分はできない)。

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そんなこんなでいろいろやってみるのだが、まあ結局良く分からないのがもどかしい。きっと何が正しくて何が正しくない、という線引きは存在せず、出てくる音楽が良ければ/つまらなければ、良い即興/悪い即興だということなのだと思う。演奏の中間層を構築する、常套手段がないということにもなるのだろう。

パリ国立高等音楽院には即興のクラスがあるというが、どんな講義が行われているというのか。洗足学園音楽大学でも、平野さんが即興の授業の講師を務めているということだが、どのようなアプローチで即興を行っているのだろうか。

…どなたか、即興のレッスンをつけていただけないでしょうか。お願いします(切実)。

2009/01/28

マドセンのサクソフォン作品集

トリグヴェ・マドセン Trygve Madsenは、1940年生まれのノルウェーを代表する作曲家の一人。あまり日本ではメジャーではないのだが、サクソフォンのために、独奏や室内楽、四重奏などいくつか作品を提供している。

以下のリンクは、マドセンのサクソフォン作品集を購入することができるページである。

http://www.mtg.musiconline.no/shop/displayAlbumExtended.asp?id=28155

注目すべきは、演奏団体がジャン・ルデュー四重奏団であること!バリトンにデファイエ四重奏団のメンバーでもあったジャン・ルデュー、そしてファブリス・モレティをはじめとする名手が集結しているカルテット。私も、何枚かCDを持っているが、このような形で吹きこみを行っているとは知らなかった。

また、バリトンサクソフォンのための「ソナタ」という曲では、ジャン・ルデュー氏が独奏を務めている!これは驚きだ。ルデュー氏の独奏なんて、今まで聴いたことないぞ。リンク先では、試聴が可能であるほか、CD販売とダウンロード販売の両方に対応しているようだ。通貨単位のNOKは、ノルウェー・クローナのこと。決済はクレジットカードが便利だと思う。

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そういえば、今日面白い録音を見つけた。ヴィラ=ロボスの「神秘的六重奏曲」って、ロンデックスのPathé盤と、昨年プライヴェート・リリースされたばかりのミーハ・ロギーナ氏のものくらいしか録音がないと思っていたのだが、思いがけぬ大物サックス吹きが参加した録音があるんですなあ。これはびっくりした。またそのうちレビューします。

2009/01/27

ラヴェル「クープランの墓」を聴く

サックスクワイヤーで取り組んでおり、本番が週末に迫っているため、ざっと手元にある録音を聴き比べてみた。普段であれば、本番が近付くほどに録音を聴かなくなるほうなので、我ながら珍しい傾向である。

・サクソフォンアンサンブル版(ミ=ベモルSE)

なんつうか、凄い。自分たちで演奏しているのもこの版であるため、より難しさを解っているのだが、何ですか、このそこら辺の4重奏よりもよっぽど高精度な演奏は。確か編成としては、20人くらいいるはずなのだが…。音色やダイナミクスの変化は、サクソフォンのラージアンサンブルらしく、比較的少ない。面白みに欠けると言えばそうだが、ここまでやられてしまうと、何も言えなくなってしまう。いやはや、降参です。

・ピアノ版(サンソン・フランソワ)

サンソン・フランソワと言ったら、クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団(ソシエテ)と演奏したラヴェル「ピアノ協奏曲」「左手のための協奏曲」が有名で、私もその演奏が印象深いのだが、独奏をきちんと聴くのは久しぶりだ。こういうのをフランス的な演奏と言うのだろうか。細かいところでは時々弾き飛ばしまくり、ここって楽譜と違うんじゃないのか…と思うこと数度。しかし何なんだろうな、この耳を惹きつけて離さないルバート、信じられないほどの音色の変化は。驚くほどの声部の分離は、まるで2人か3人の気まぐれなピアニストたちが絶妙なアンサンブルを繰り広げているような気にすらなる。

・オーケストラ版(ジャン・マルティノン指揮パリ管弦楽団)

パリ管弦楽団は、由来となったソシエテと比較し、かなりインターナショナライズされたオーケストラだ、とも言うけれど、この録音を聴いているうちはそんなことは微塵も思わない。管の音色だってフランスのそれだし(Thunderさんの記事によると、オーボエはモーリス・ブルグ氏だそうだ!)、眼前で水しぶきを上げる弦楽器の響き。うーん、素敵だ。これこそ、スナップショット的な魅力、というやつの典型だと思う。

そういえば、ソシエテのCDはどこにしまったっけな。もしかしたらクープランの墓が入ったCDは、まだ買ってなかったかも。マルティノン×パリ管と、クリュイタンス×ソシエテのラヴェル管弦楽全集は、そのうち買い揃えないとなー。買い揃える、なんて、言葉は大層なものだけれど、現在では両方CDで手に入れても1万円でお釣りがくるだろう。凄い時代だ。

2009/01/26

Japanese Love Songsを楽しむために

先日のドゥラングル教授のリサイタル会場で購入した「Japanese Love Songs(BIS CD-1630)」。声楽(メゾ=ソプラノ)とサクソフォン、そしてパーカッションのために書かれた、邦人作品を中心に収録したアルバムである。最近は、かなりこのCDを聴いている時間が多いのだが、とにかく素晴らしい内容のCDで、私なんぞがレビューを書いても良いのだろうか、と思えてしまうほど…。

クロード・ドゥラングル Claude Delangle, saxophone
小林真理, mezzo-soprano
ジャン・ジョフロイ Jean Geoffroy, percussion

夏田昌和 - 良寛による2つの詩
細川俊夫 - 3つの恋歌
伊福部昭 - アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌
棚田文則 - サクソフォンとメゾ=ソプラノのためのデュオ
野田燎 - 即興曲I
野平一郎 - 舵手の書~吉岡実の詩による
Hacène Larbi - 松風
Bertrand Dubedout - 始まりの、初めに Ça va commencer, ça commence
島崎藤村 - 君がこころは(朗読)

(それにしても、ベルトラン・デュブドゥの「それを起動させると、開始されます」という邦訳は、いくらなんでもあんまりだろう!!)

というわけなので、CDそれ自体のレビューはまた今度にして、それぞれの作品で題材とされている詩や短歌について著作権の切れているものについて解釈をしていこうと思う。いろんな文献を参考とした、私のオリジナルの解釈なので、間違っている可能性もあります(^^;どなたか文学に詳しい方、教えてください。

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・良寛による2つの詩

あわ雪の中に顕(た)ちたる 三千大千世界(みちあふち) またその中に あわ雪ぞ降る - 良寛
あわ雪が降る景色を、心を無にしてじっと見つめていると、もう一つの大宇宙がうっすら見えてきた。そしてその中でも、やはり雪が降っている。私の意識はいつしか、その無限の構造の中へと吸い込まれていった。

夢の世に かつまどろみて ゆめを又 かたるも夢も それがまにまに - 良寛
その感激も、この世も、まどろみのなかの夢のようなものなのである。

晩年の良寛は、俗世間との関係を絶ち、山奥の庵で過ごす日々を送っていた。そこに、良寛を慕う貞心尼という女性(当時30代)が訪ねてくる。貞心尼は、良寛に会えた感激を「君にかく あひ見ることの 嬉しさも また覚めやらぬ 夢かとぞ思ふ」と、喜びに満ち溢れた歌で表現した。その歌に対する、良寛の返歌である。
「夢の世に Dream World」は「夢の夜に Dream Night」「夢のように Like a Dream」をかけていると考えられる。


・3つの恋歌

暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ 山の端(は)の月 - 和泉式部
歩けば歩くほどに、暗い暗い中に迷い込んでしまいそうだ。山の端の月よ、どうか行く先を照らしてくれ。

ここでの「暗き道」とは、「煩悩の道」のことをも言っているそうだ。

あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな - 和泉式部
私は間もなく死ぬだろうが、せめてものこの世の最後の思い出に、あなたにもう一度だけ会っておきたい。

物おもへば 沢の蛍も 我が身より あくがれいづる 魂(たま)かとぞみる - 和泉式部
恋に悩めば、沢に飛び回るほたるも、私の身体から抜け出していくたましいではないかと思えてしまう。


・松風

あはれてふ 言の葉ごとに 置く露は 昔を恋ふる 涙なりけり - 詠み人知らず
「あはれ」と言うごとに、その言葉の傍らにに落ちていく涙は、昔の恋を懐かしく思う涙なのだ。

世の中は 夢かうつつか うつつとも 夢とも知らず ありてなければ - 詠み人知らず
この夜は、夢なのだろうか、現実なのだろうか。結局どちらでもなく、あってないようなものなのである。

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それにしても、CDの歌い(詠い)手が日本人であり、題材が日本の詩であり、私自身が日本人であるという、実に稀有な状況でCDを聴くことができる幸せ哉。日本的な間合い、美的感覚(それを言葉で説明するのは難しいけれど)が、アルバムの随所に散りばめられ、詩と音楽が融合した無限世界の中に、スッと引き込まれてしまった。

2009/01/25

練習日

来週末にちょっとした内輪向けの演奏会?があって、そのために何曲か練習している。サクソフォンのラージアンサンブルで、ミ・ベモルSE版の「クープランの墓」から数曲、吹奏楽で伊藤康英先生の「集え、祝え
歌え」、J.ヴァン=デル=ロースト「カンタベリーコラール」、ビッグバンドで「魅惑のリズム」「ラ・フィエスタ」等々。めずらしく室内楽はやってないな、そういえば。

今日は、朝の9時くらいから夜の20時まで、いろいろと練習に参加した。今回は、上は吹奏楽団の9期?から下は32期まで、様々な世代の方々と演奏する稀有な機会である。もうずっと一緒に演奏している人も、初めて一緒に合わせる人も、いろいろ。楽しい。

今回乗らせていただいている団体はどれも面白く、身体は疲れるけれど、頭はむしろリフレッシュするほうだ。修士論文の関係で、少し忙しかったので(今ももう少しやることがあるが)、良いメリハリになっているのだと思う。

…あと一週間か。まだできないところをさらっておかないとなあ。

2009/01/24

Japanese Saxophone

Japanese Saxophone(BIS CD-890)

Claude Delangle, saxophone
Odile Delagle, piano
Jean Geoffroy, percussion

夏田昌和 - West or Evening Song in Autumn
野平一郎 - Arabesque III
棚田文則 - Mysterious Morning III
細川俊夫 - Vertical Time Study II
武満徹 - Distance
平義久 - Pénombres VI
湯浅譲二 - Not I, but the Wind
田中カレン - Night Bird

このアルバムが発売されたのは1998年のことで、発売された当時の驚きはいかほどのものであっただろうか。邦人作曲家の大御所から、当時新進気鋭の若手までの、様々なサクソフォン作品に、真っ向から取り組んで見せたクロード・ドゥラングル教授。新アルバムである「Japanese Love Songs」の原点は、ここにあるといっても良いだろう。当時の驚きは、現在のスタンダードとなり、今では広く演奏される作品ばかりとなった。時代の流れは凄いなあ。

「Japanese Love Songs」を聴く前に、もう一度聴いておこうと思って、引っぱり出してきたのだが、やっぱり良いなあ。サックスのCDで10枚挙げろと言われたら、いや5枚挙げろと言われても、迷いなく入れるだろう。初めて聴いた時は高校2年生だったが、とにかく「Mysterious Morning III」が好きだった。部活のない日は、家でゴロゴロしながら、一日中こればっかり聴いていたこともあったっけ。

(当時と比較すれば)少しは音楽のバックグラウンドが拡がった現在の耳で聴いてみると、アルバムの良さがぐっと浮かび上がってくる。一つ一つの作品が珠玉と言えるものであり、演奏の集中力も相当なものだ。21世紀に入って亡くなってしまった平義久氏の、「Pénombres VI」が持つクリスタルのような透徹した響き…。湯浅作品での、サクソフォンという楽器が本来持つ個性を押しつぶしたような、そしてタイトルがそのまま音になったような不思議な感覚…まるで尺八でも聴いているかのような…等々、挙げていけばキリがない。

どんな理由であれ、とにかく一度聴いてみることをオススメする。というか、まさかコンクールで「Mysterious Morning III」や「Arabesque III」が課題曲となる日がくるとはね…(→アマゾンへのリンク)。

2009/01/22

あっ!4周年。

昨日、ウェブページkuri_saxoの開設4周年を迎えた。

昔はウェブページのほうをメインでいじっていたが、2006年の11月あたりに日記の更新をブログ(Google Blogger)へと移行し、現在ではメインでの更新をこちらで行っている。ブログはウェブページ「kuri_saxo」のサブセットということになるのだが、ブログしか知らない方もいらっしゃるし、ウェブサイトの扱いについては、今後の検討課題でもある。

とは言え、ウェブでの情報公開の原点は「kuri_saxo」にあると言っていい。これまでに何度も話題にしてきたが、私がウェブサイトを構築したのは、デファイエ四重奏団のリュエフ「四重奏のためのコンセール」にびっくりしたからである。その驚いた勢いでYahoo!ジオシティーズのアカウントを取得し、kuri_saxoのトップページを作成してしまったのだ。あのころは、そう言えば大学の寮にいたのだっけな。壁面がかびて真っ黒になった5畳の自室の片隅で、部屋で流すCDをとっかえひっかえしながらパソコンに向かっていた。

当時まだ10代だった私だが、ただ、自分の好きなサクソフォンのことを書き残す場所が欲しかっただけなのだと思うし、その更新の動機付けは今も同じである。そんな衝動が持続したまま、いつの間にか、4年も経ってしまったということか。月日が経つのは早いねえ。

当時と比較したときに、きっと自分は何も変わっていないと思うし、周りもそれほど変わったということではないのだ。周りと自分との関係が、少し変わっただけのことだ。そんなきっかけを与えてくれたインターネット&ブログという代物に感謝しながら、これからも更新を続けていければと思う。ま、社会人になったらどうなるかはわからないけれどー…。

今度、過去の記事を選択的に取り上げてみようかな。自分はあまり過去の記事を読み返したり、編集・削除したりはしないのだが(間違いに伴う訂正・追記は良くやるけど)、たまにはじっくり読んでみるのも良いかもしれない。あと、知人からストリーミング・ラジオやってみてよ、と1年ほど前に言われたので(面白そうだ)、そんなことをやってみるのも良いかもしれない。

2009/01/21

NSF Vol.27

というわけで、最新号が出ております。1/5には更新されていたようだが、気付かなかった。

http://www.nonaka-boeki.com/nsf/magazine.html

主な内容は、「渡辺貞夫インタビュー」「リエゾン・サクソフォンアンサンブル」「ヴァンサン・ダヴィッド速報」他。リエゾンは聴きに行く予定だが、主宰する野原武伸さんの話が興味深いなー。このくらいの編成で定常的に活動するアンサンブルって、今までにはなかったから、どんな演奏になるのか楽しみ。

2009/01/20

ドゥラングル教授リサイタル2009@昭和音大

というわけで、行ってきました。一昨年の静岡AOIとアンナホールに続いて、ドゥラングル教授の実演を聴くのは3度目である。

【クロード・ドゥラングル サクソフォーンリサイタル】
出演:クロード・ドゥラングル(sax.)、泉谷絵里(pf.)
日時:2009年1月20日(火曜)18:30開演
会場:昭和音楽大学南校舎「ユリホール」
プログラム:
André Caplet - Légende
Claude Debussy - Rhapsodie
Maurice Ravel - Sonatine
~休憩~
Luciano Berio - Sequenza IXb
Ronald Miranda - Fantasia
Pierre Sancan - Lamento et Ronde
Roger Boutry - Divertimento
~アンコール~
Paquito D'Rivera — Valse venezolano
二曲目失念
Maurice Ravel - Piece en forme de habanera

昭和音楽大学、最近移転して新百合ヶ丘の駅前に建てられたそうで、どこを見ても新しいこと!建物に着いた後は、昭和音大の友人と待ち合わせしてホールに連れて行ってもらった(食堂にも入ってみた笑)。会場となったユリホールは、南校舎の5階に位置し、建物の中を経由しないと入れないような構造になっていた。客席を見渡すと、あっ、あの人が!みたいなこと多し。プログラムはフランスの正統派を中心に固められ、例えば前半なんて「Saxophone for a Lady(BIS)」そのままだし、一昨年の静岡とはまた違った曲をしっかりと堪能できるのが嬉しい。それでも、ブートリーはアンナホールで聴いたことがあるけれど。

カプレから始まったのだが、AOIやアンナホールで聴いたアルトサクソフォンとはまた違った音色が響いてきて、少々びっくりした。だが、曲によって音色やヴィブラートをかなり細かく使い分け、フレーズの隅から隅までアナリーゼの妥協を許さないその音楽作りは健在!ピアノとのアンサンブルの点でも、大変興味深く聴いた。ブートリーの第3楽章のような速いフレーズになると、かなりの具合に吹き飛ばしていくあたりは、さすがフランスの音楽家だなあというか(笑)。

ソプラノも素晴らしかった。低音域のコントロールやフレーズの扱いという点で、ドゥラングル教授ほどの演奏を実演で聴いたことは、今まで殆どないが、今日も一昨年のシェルシを思い出す純度100%と言えるような音楽作りだった。ドゥラングル教授には、やっぱソプラノが似合うなあ。本人も、すごく細身だしね。

一番楽しみにしていた「セクエンツァIXb」だが、サブトーンからなにから、場面ごとにはっきりと音色を使い分ける曲作りに、曲に対する深い理解と、貫禄を感じた。CDで聴くのとはまた違った、"熱い"セクエンツァ!ここまで積極的な演奏は、聴いたことがない…。ベリオから先の3曲は、ポップなミランダ「ファンタジア」に、技巧的な2曲(圧巻!)が続き、客席が大いに沸いた。ちなみに、ミランダはこんな曲です。南米の作品なんだって。

アンコールに、ソプラノで3曲。「ソナチネ」とは全く違う個性的な音色に、また驚き。このくらい音色を使い分けることができたら楽しいだろうなあ。最後は、ラヴェルで再び繊細な余韻を残した。あー!聴けて良かった!やっぱり、自分が一番好きなサクソフォン奏者は、ドゥラングル教授なのだと思う。演奏ももちろんなのだが、それだけではない何かを感じさせるオーラがある。誰かつくばから連れて行けば良かったなー。次に聴くことができるのは、いつになるだろうか。またの機会を楽しみに待ちたい。

そういえば、会場で新譜「Japanese Love Songs(BIS CD-1630)」をゲット。野平一郎「舵手の書」やBertrand Dubedout「Ça va commencer, ça commence」ほか、サクソフォンと声楽のために書かれた室内楽作品を中心に収録した注目盤!今聴いているけど、これはかなり良いですぞ!またきちんとレビューします。

2009/01/19

ひと段落

修士論文、ひと段落。全部で32,000字くらいだったけど、まあ理系なのでこのくらいが普通だろうか。ちょっと少ないかも?これで先生に再度チェックを入れていただいて、大きな間違いがなければ明日の午前中に印刷。提出は水曜日。発表は2/5だったっけかな?

というわけで、明日はドゥラングル教授のリサイタル聴きに行けると思います。わーい(^∀^)ノ☆楽しみー

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今日から、しばらく滞っていた楽譜とCDの整理を進めていこう。実家に送り返せるものは送り返して、バックアップを取れるものはきちんと取って、頼まれていた楽譜や音源を送ったりとか…。演奏会に向けての準備も進めなければいけないし、やること山積み。

2009/01/18

Quartet Spiritus "Scene"

言わずと知れたカルテット・スピリタスのデビュー・アルバム「Scene(BMG BVCC-34168)」。特に昨年の後半から、サクソフォン関連のたくさんの国内盤が発売されていて、なかなか手が回らなかったのだが、ようやく聴くことができた。ああ、そういえば他にも、買ったまま積んであるCDがいくつかあるなあ…。微妙にCDを買い控えているのもあって、買えてすらいないものも何枚かあるし…。

W.A.モーツァルト - "フィガロの結婚"より序曲
G.ガーシュウィン - ラプソディ・イン・ブルー
P.マスカーニ - "カヴァレリア・ルスティカーナ"より間奏曲
N.ロータ - "ロメオとジュリエット"より愛のテーマ
E.モリコーネ - "海上のピアニスト"より3手のための練習曲
S.バーバー - 弦楽のためのアダージョ
A.ピアソラ - カランブレ
G.プッチーニ - 誰も寝てはならぬ
L.シフリン - ミンション・インポッシブル・テーマ
C.チャップリン - "ライム・ライト"よりエターナリー
L.シフリン - "燃えよドラゴン"のテーマ
E.モリコーネ - 愛を奏でて

誰もが聴いたことのあるようなメロディを中心に取り上げて、どの曲も茶目っ気たっぷりに、スマートに歌い上げる。磨き抜かれた音色のためだろうか、サクソフォンが持つ"粗野さ"を、殆どと言っていいほど感じなかった。音色そのものは全く違うけれど、作曲家:演奏家:聴衆という3層のうち、演奏家の層を極限まで薄く取るアプローチは、ハバネラサクソフォン四重奏団の音楽づくりを思い出した。

これってスタジオ録音であるということだが、ずいぶんと原音からエコーやバランスがいじられているような雰囲気。うーん、これはこれでありかもなー。ホール録音では、カルテット・スピリタスが持つ演奏の精密さを捉えきるのは厳しいだろうし、かといって響きをなくしてしまったら、あまりの音場の近さに、耳が飽和してしまったことだろう。

「フィガロの結婚」から、昨年暮れのフェスティバルでも聴いた超々速の演奏。明るい曲想も相まって、ごくごくさりげなく聴こえるけれど、技術レベルは相当なものだ。下手にアマチュアが取り組んだら、とんでもないことになりそう…。速い曲はもちろん、ゆっくりな曲でも音楽が停滞せず、コンパクトにまとまっているため、サクソフォンにありがちな胃もたれはほとんど感じなかった。

「ミッション・インポッシブル」や「燃えよドラゴン」などの激しい曲では、本領発揮!という感じ。ソロとか、凄くかっこいいぞ!笑いどころもきちんと入れてあるあたりは、スピリタスのカラーだよなあ。全体を通して、気軽に買えて気楽に楽しめる、大変良いアルバムだと感じた。今度は、ぜひオリジナル曲も聴いてみたいな。

2009/01/17

Duo Delangle-Ramírez on YouTube(その3)

イトゥラルデの「小さなチャルダッシュ」のデュエットバージョンだと。わお。音楽家の、本気の遊びは凄い!

2009/01/16

Collection Jeunes Solistes - Miha Rogina

ミーハ・ロギーナ Miha Rogina氏と李早恵さんのご厚意により、新譜「Collection Jeunes Solistes - Miha Rogina - Sphénogrammes(CREC-audio 08/064)」を頂戴した。ありがとうございます!「Collection Jeunes Solistes」は、メイヤー財団が出資するCDシリーズで、パリ国立高等音楽院の第三課程を修了したプレイヤーのために、1999年から毎年6枚ずつのペースで製作が進んでいるもの。1999~2007年のリストは、このページから参照することができる。

このCDシリーズ、どれも大変面白いコンセプトのもとに製作されており、ジェローム・ラランさんのものはマントヴァーニ、ジョドロフスキ、夏田昌和、ピアソラ、エスケシュというプログラムを、即興によってつないでいくというもの。また、アクソン四重奏団のCDは、ヴァルチャ氏の「インテルメッツォ」を挟みながら、シュミット、ショスタコーヴィチ、棚田文則というプログラムを取り上げていた。

今回、ロギーナ氏は、サクソフォンを含む室内楽作品を取り上げている。同じコンセプトのものというと、ロンデックスの「Musique de Chambre avec saxophone(EMI)」、カイル・ホーチ Kyle Horch氏の「Chambersax(Clarinet Classics)」、マリー=ベルナデット・シャリエ「havel - hurel - lauba - mefano - melle - rosse(Octandre)」くらいだろうか。メンバーやリハーサルの問題により、なかなかこういったアルバムが作られることは稀であり、そういった意味でも大変貴重な録音となった。

Paul Hindemith - Trio, op.47
Heitor Villa-Lobos - Sextuor mystique
Anton Webern - Quartett, op.22
Milko Lazar - Zakotne pesmi
Betzy Jolas - Plupart du temps II
Toshiro Mayuzumi - Sphénogrammes

Miha Rogina, sax / Sae Lee, pf&célesta / Barachir Boukhatern, alt / Amaya Dominguez, sop / Hélène Dusserre, fl / Arnaud Guittet, oboe / Srdjan Grujicic, gt / Anthony Lo Papa, ten / Kenji Nakagi, vc / Haruka Ogawa, pf / Vincent Penot, cla / Pierre-Olivier Schmitt, perc / Reine Takano, harp / Ryoko Yano, vn

サクソフォンを含む室内楽としてはお馴染みの、ヒンデミット、ヴィラ=ロボス、ヴェーベルンの他に、珍しい作品が3つ。特に、世界初録音となる黛敏郎作品が目を引く。

全体的な演奏の傾向は、かなりスピード感を伴ったスタイリッシュなもの。ヴィラ=ロボスなどではそれが少し物足りなく感じられることもあるが、それは贅沢な注文だろう。ヒンデミットでは、敷き詰められた音符の羅列の中に爽やかな風を感じ、テナーサックスとヴィオラという、中音域の楽器による聴後感とは無縁のものである。

ヴェーベルンの「四重奏曲」!これは、私も大好きな曲だ。ドゥラングル教授、クリステル・ヨンソン氏参加のもの、ヴァンサン・ダヴィッド氏の演奏ほか、いくつか録音を持っている。例えば昨年聴いたヴァンサン・ダヴィッドのCDでは、そのスポーツカーのような速い演奏に飛び上がったが、ここでの演奏はそれが緩く聴こえるほどのもの…まるで、大気圏に突入した宇宙船のような、炎を上げながら猛スピードで目の前を駆け抜けていく演奏で(特に2楽章)。冒頭の勢いに飲み込まれたまま、いつの間にか最後までいってしまった。茫然自失…。

聴いたことのなかった、ラザールの作品やヨラス(ジョラス)も楽しい。ラザールの作品は、かなりポップでキャッチーなリズムや旋律線が聴きもの。サクソフォン、フルート、ピアノの三重奏という小さい編成のため、ロギーナ氏のサクソフォンをしっかりと堪能できるのも良いなあ。ヨラス!ドゥラングル教授がパリ国立高等音楽院のサクソフォン科教授に就任した年の、卒業試験課題曲である。おお、まさかここでこの曲を聴くことができるとは!おそらくCD中で、最もハードな作品ではあるが、不思議と耳を傾けたくなるのは、演奏者の力なのだと思う。

しかし、やはり最大の聴きものは黛敏郎の「スフェノグラム」!一度聴いたら、もうリズムやらベースラインやら旋律やらが頭から離れません。聴いていると本当に楽しくて、その音に身を委ねているだけで幸せな気分になる。しかし、この特殊な編成(fl, asax, marimba, voix-alto, pf(4hands), vn, vc)…リハーサルなど、なかなか大変だったのではないだろうか。だが、ここに収められている演奏から聴こえてくるのは、勢いがあって、しかし青空のように澄み渡ったサウンド。まったく、素晴らしいというほかない。

2009/01/15

木下直人さんから(ミュールQ、ジュネーヴライヴ)

木下直人さんより、新年初の荷物が届いた(ありがとうございます!)。それにしても、歴史的録音の復刻や情報収集にかける木下さんの情熱は、並大抵のものではない。現在も、復刻環境の整備を行っているそうだ。今回頂戴したのは、ミュール四重奏団のLPと、ジュネーヴ国際コンクールのハイライト録音である。

Eratoから出版されていた、マルセル・ミュール四重奏団LPの復刻。原盤はEratoだが、日本国内ではコロンビアから、アメリカではMusical Heritage Societyから、それぞれ出版されている。私はモノラル盤とステレオ盤のMHS盤を持っているが、さすがにErato原盤はなかなか手に入らない。eBayなどのオークションに出品されては、高値で取引されることが多い。木下さんによると、プレス環境の違いから、それぞれの盤で特性…というかサウンドが違うようで、やはりフランスでプレスされたErato盤に関しては、フランス産機器の環境下で復刻を行うのが最適解である、とのことだ!

Marcel Mule, s.sax.
Georges Gourdet, a.sax.
Guy Lacour, t.sax.
Marcel Josse, b.sax.

Gabriel Pierne - Introduction et Variations sur une ronde populaire
Alfred Desenclos - Quatuor
Jean Absil - Suite d'aprés le folklore roumain, op.90
Jean Rivier - Grave et Presto

マルセル・ミュールに献呈された作品を集めたもの。デザンクロ、ピエルネ、アブシル、リヴィエ…これらの曲は、このLPよりもむしろ、後にデファイエ四重奏団によってレコーディングされることになるEMIの四重奏曲集によって名を広めた。逆にこのLPは、出版時期が時期だけに(1960年代)、日本にも、それほどの数は出回らなかったのではないかな。ここに記録された演奏は、これらの曲の解釈のスタンダードである。ミュールたちがこの解釈を示し、デファイエたちがそれを拡張し、それ以降は何人たりとも、その2つの録音を超えることができない、というほどのもので。

これらの曲に関して、技術的に優れているとか、指が良く回るとか、そういう話がどれだけ無駄な議論であるか、ということを思い知らされる。演奏に必要なのは、作曲当時のアトモスフェール、ただ一つのみなのである。それだけあれば、他には何もいらないのだ。

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ジュネーヴ国際音楽コンクールのハイライト録音。これもまたすごい。実は1990年にCDとして出版されたようなのだが、まったく知らなかった。ジュネーヴのライヴなど存在しないと決め付けて、探そうともしなかった自分が恥ずかしい。1939年の初回のコンクールから、1989年までの「Selected First-Prize Winners」とのことだ。

Arturo Benedetti Michelangeli (Piano)
L.v.Beethoven - Piano Concerto No.5 mvt1 (Excerpt)

Riccardo Brengola (Violin)
F.Mendelsshon - Violin Concerto in E-min mvt3

Gilbert Coursier (Cor?)
C.Beck - Intermezzo

Aurèle Nicolet (Flute)
R.Oboussier - Pavan and Galliard

Maria Tipo (Piano)
D.Scarlatti - Sonata L23&L449

Maurice Allard (Basson)
A.F.Marescotti - Giboulées

Michel Nouaux (Saxophone)
J.Ibert - Concertino da camera

Maurice André (Trumpet)
H.Tomasi - Concerto for Trumpet mvt1

Martha Argerich (Piano)
F.Liszt - Hungarian Rhapsody No.6

Heinz Holliger (Oboe)
A.Marcello - Cocnerto in C-min

…す、すごい。ミケランジェリやアルゲリッチのピアノ、ジルベール・クルシェのホルン(コル?おまけにピアノがアニー・ダルコ!!)、オーレル・ニコレのフルート、アラールのバソン、アンドレのトランペット!これはまた、凄すぎますなあ。大御所とか伝説とか呼ばれているプレイヤーの、20代の演奏を切り取った録音である、ということで、どれも本当にキラキラと輝く演奏で、勢いがあって、あまりにも上手くて、聴き手は圧倒されるほかない。

この中で、サックス的な興味として、名手ミシェル・ヌオー Michel Nouauxの演奏が挙げられる。ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のメンバーをベースにした四重奏団からミュールが脱退した後、そのソプラノサクソフォンパートに就任したのが、他でもないミシェル・ヌオーなのである。ヌオーは、ミュールの、パリ音楽院教授時代の弟子にもあたる。

ヌオーが参加していると思われるギャルドの演奏を耳にしたり、四重奏団のLPを聴いた中では、正直ヌオーがここまで優れた演奏家、音楽家だとは思っていなかった。これは、大変な録音である。ヘンな例えだが、ミュール演奏の「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」の色気や余裕をそのままに、音程やアンサンブルの精度を高めた…というような演奏に聴こえる。ああ、ボキャブラリーが足りないのが悔やまれる!こんなにもすごい演奏なのに!デファイエ四重奏団のリュエフ、ミュールのクレストン、ラッシャーのブラントなどを、初めて聴いたときと同じくらいの衝撃を受けてしまった…。ちょっと調べてみたところ、オンライン上から参照可能であるようなので、ぜひ聴いてみていただきたい(→こちら)。

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木下さんは今後、Pierre Clementのアームとカートリッジを使用したSPの復刻を進めていくそうで、とても楽しみだ。カートリッジは、とある工夫により、ほぼ最適な状態にオーバーホールできたということだ(!)。

2009/01/13

ガーシュウィン「キューバ序曲」

どうも私は、ルンバを題材としたオーケストラ作品が好きなようだ。黛敏郎「ルンバ・ラプソディ」やグレイアム・クーネ「エレベーター・ミュージック」は、どれほど繰り返し聴いたことか。たぶん、その強烈な推進力を持つリズムやらなんやらに、心が惹かれたのだと思っている。

ジョージ・ガーシュウィンの「キューバ序曲」もまた、ルンバからヒントを得て作られたもので、私がガーシュウィンの作品中、最も好きな作品だ。一番最初にサックス四重奏のバージョンを耳にして、その奇怪なリズムと底知れぬ明るさに衝撃を受けた。そして、サクソフォンオーケストラのバージョンや、原曲を聴くうちに、この曲が持つ魅力にぐいぐいとはまっていった。

昨年暮れ、サイモン・ラトルが指揮するベルリンフィルのジルヴェスター・コンサートの一曲目で、この作品を取り上げていたのだが(前半後半)、もう奏者が楽しそうで楽しそうで。序盤から快速で飛ばすラトルに、ノリノリでついていく弦楽器、打楽器、管楽器が次々に映し出され、聴いているこちらも思わずニヤニヤしてしまったのを覚えている。それにしても、そのあとのアダムズとは、まさに対照的であった(苦笑)。

ベルリンフィルが、こんなにも羽目をはずしてガンガンに弾くところを見たのは、本当に久々かもしれない。奏者と聴衆を同時に心から楽しませることができる音楽があるんだなあ、という実感。クラシックの曲でそういうものって、なかなかないと思うのだが(そんなことないかな?)。

2009/01/11

ご紹介:image/air_

大学の吹奏楽団の、4つか5つくらい上のサックス先輩方は、私の楽器人生に大きな影響を与えた方々が多い。Tsukuba Saxophone Ensembleという名前は高校のころから知っていたし、たった一度ではあるが、演奏を拝聴する機会もあった。一緒に吹いたことはほとんどなかったのだが、現在とある本番に向けてサクソフォンのクワイアを練習しており、なんと練習をご一緒している。

そのTsukuba Saxophone Ensembleのメンバーだった、chikapさんが、このほどブログを立ち上げたそうだ(相互リンクありがとうございます!)。

http://chikaplogic.blog63.fc2.com/

音楽のことを言葉で表現しているブログって、なかなかないだろう。chikapさんの言語表現、音楽に対する考え方を、高校の頃の自分は何も知らないなりに尊敬していた(だから筑波大学に来た、というのも、あながち間違ってはいない)し、もちろん今もそうである。その音楽に、言葉に、またリアルタイムで触れることができるのが、嬉しい。

あれから6年も経ってしまったのか。

楽器吹いたよ

久々に、一日中?楽器を吹いた。うーん、楽しかった!

とある編成の、pのロングトーンになる場所で、サブトーンを使ってみようかと思った。使いどころをわきまえれば、かなり面白い効果が出るのかなあと考えている。低音でサブトーンを使用して、いちばんしっくりくるのはやはりテナーサックスだ。まずは正確に音を並べ(ようとす)ること…そして、次はそれぞれの音について表現を考えること…。

あと、指が回らないのはどうしようもないので、論文を提出したら反復練習をする。論文提出したら、やりたいことがたくさんあるぞ!練習して、スキー行って、練習して、練習して、練習して、演奏会やって、卒業旅行して…。これがあるから、研究が頑張れるのです。たぶん。あー、もし余裕があったら、またサクソフォーン協会の会誌に記事を投げたいなあ。

とは言っても、修士論文が忙しいのは相変わらず。今日中に4.3節、明日5章を書いて、そして火曜日の日中に全体を見直せば、なんとか火曜のうちに先生に第一稿を渡せるはず…。

2009/01/10

Duo Delangle-Ramírez on YouTube(その2)

昨日に引き続き、どうやら、続けてアップロードされているようだ(クリスチャン・ローバの「アルス」も演奏したそうだが、アップされないかなあ)。ドゥラングル教授とJuan Antonio Ramírezのデュエット。こんどは、サンジュレの「デュオ・コンチェルタント作品53」。ソプラノサクソフォン、アルトサクソフォン、ピアノという編成の作品。…おお、これは嬉しいな。数少ないデュオのレパートリーのなかで、かなり演奏頻度が高いものであるが、今までは参考演奏すら手元になかったのだから…。

実演としては、デュオ"阿吽"のリサイタルで聴いたことがあったほか、今年の3月に塙美里さんがリサイタルでも演奏されるそうだ(共演は原博巳さん)。

さて、ドゥラングル教授とラミレス氏の演奏は、丁々発止というか、即興的というか、まるでその場から音楽が氏前途紡ぎだされているような、幸福な時間の流れを感じる。第3楽章最後の煽りは、聴いていて息をするのも忘れるほど凄い…。そして、相変わらず最後の音程が…わはは。

・第1楽章


・第2楽章、第3楽章

2009/01/09

Duo Delangle-Ramírez on YouTube(その1)

あのクロード・ドゥラングル Claude Delangle教授が、Juan Antonio Ramírezという奏者と、デュエットを演奏している動画をYouTubeで発見した。さすがに楽器のコントロールやフレージングの格の如実に表れており、聴き終わった後に印象に残るのはドゥラングル教授の節回しだ(^^;

しかしこれは面白いデュオだ。Juan Antonio Ramírezという人は、ジャズ風の少し特徴的な音色をしているようだが、違う音色ならではの、両者間の激しい化学反応を目の当たりにしている気分になる。メンデルスゾーンは最後の音程がすげーいなあ(笑)。まあ、それも含めて味ということで。

・ヒンデミット「コンチェルトシュトゥック」


・メンデルスゾーン「コンチェルトシュトゥック第2番作品114」

2009/01/08

カリーナ・ラッシャーとケネス・コーンの楽器

カリーナ・ラッシャー Carina Raschèrは、シガード・ラッシャー Sigurd Raschèrの娘であり、ラッシャー派を代表する演奏家の一人。また、ケネス・コーンは、リンダ・バングス Linda Bangsの後を継いで、ラッシャーサクソフォン四重奏団のバリトンサクソフォン奏者に就任した演奏家。

MusicMedic.comというウェブサイトに、彼らのサクソフォンというか、彼らのサクソフォンのリペアにまつわるエッセイが載っていた。記事を執筆したCurtという人は、Buescherサクソフォンのリペアに定評があるようだ。ケネス・コーンの楽器の詳細や、ケネスを通じてカリーナがソプラノのオーバーホールを依頼した、という話も掲載されている。

http://news.musicmedic.com/index.php?entry=entry090106-064304

私は楽器のことはよくわからないが、それにしてもカリーナのソプラノも、ケネスのバリトンも、実に美しい楽器だ。彫刻といい、ベルのカーヴといい、表面の仕上げといい…。ヴィンテージ・サクソフォンの最良の形のひとつである、と言えるだろう。

2009/01/07

Ties plays JacobTV "Tallahatchie Concert" on YouTube

JacobTV(ヤコブ=テル・フェルドハウス Jacob ter Veldhuis)の作曲したサクソフォン協奏曲である、「タラハッチー・コンチェルト」の映像を発見した。独奏は、ティエス・メレマ Ties Mellema。おそらく、右手を負傷する前の映像と思われる。

第1楽章は、比較的おとなしめな印象だなー、と思っていると、第2楽章での曲想の爆発にびっくりさせられる。全体を通して、オーケストレーションがちょっと荒いかな…という印象(オケ曲の作曲は慣れていないのかな、なんて笑)だが、このかっこいい曲想の前では、聴いているうちに気にならなくなってくる。第2楽章途中では奏者の裁量に任されている部分もあるようだが(フーガを挟んだ両端)、これは、ティエス・メレマほどのプレイヤーが吹かないと、つまらなくなってしまうのだろうなあ。

・第1楽章


・第2楽章

2009/01/06

パリ五重奏団ライヴのディクテーション(その3)

前回の記事の続き。これで最後。

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アナウンサー:さあ、今度はですね、オリジナルの作品を三つほど聴いていただこうと思うんですが、ロジェー・ブートリー作曲「即興曲」、ルーシー・ロベール作曲の「炎と煙」、それからジャン=ミシェル・デュファイ作曲の「対話」、この3曲ですが、船山さん、これ3つともオリジナル、このアンサンブルのために書かれたというわけですけれども…。まず一番始めの、「即興曲」というのはどんな感じの曲なんでしょうか。

船山:はい、ブートリーという方は、今でもギャルド・レピュブリケーヌの指揮者なんですね。1973年以来、第9代めの指揮者・音楽監督を務めておられる方で、1932年生まれということなんですが、コンセルヴァトワールの大変な秀才で、6つのプリミエ・プリ=一等賞を獲りまして、おまけにローマ大賞も獲ったという秀才ですね。この曲は、最初サクソフォン四重奏のために書かれていたわけなんですけれども、今年この五重奏の為に書き直されたもので、編成は、ソプラノサクソフォン、アルト、2つのテノール、そしてバリトンということになっております。5分ほどの短い曲なんですが、全部で5楽章もありますね。

アナウンサー:そして、2つ目の「炎と煙」。

船山:そうですね、これはとても興味深い題なんですけれども、作曲者のルーシー・ロベールというのは女流なんですね。ブルターニュ出身の作曲家ですけれども、この人もまたすごくて、コンセルヴァトワールで7つの一等賞を獲っているわけです。今は母校の教授でいるわけですけれども、この「炎と煙」は、1982年に、このグループのために、ニュルンベルクのサクソフォン会議(世界サクソフォーン・コングレス)という舞台のために作られたものなんです。ソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テノール、バリトンの、それぞれのサクソフォンの多様な響きを通して、コントラストを目指しているんではないかと思うんですね。ですから、5つの楽器が全部揃っていますね。炎のテーマは力いっぱい輝かしく、煙はピアニッシモで、煙が霧のようにぼかされているんですね。その炎と煙が鏡で映し出されたような、投影された"こだま"というような、そういう設計になっているわけです。

アナウンサー:そして3つ目が、「対話」という曲です。

船山:このジャン=ミシェル・デュファイの「対話」という曲、このデュファイは、第2次世界大戦の間に、コンセルヴァトワールで学んだ作曲家ですけれども、1981年にこのグループのために作られました曲です。11分ほどで、全曲が切れ目なく続いてまいります。まず、2つのテノール、2つのアルト、そしてバリトンのアンサンブルで始まりますが、バリトンのカデンツを挟みまして、楽器が持ち替えられまして、先ほどと同じような5つのファミリーですね、ソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テノール、バリトンと、こういった揃いぞろいするわけです。これは非常に高い名人芸、広い音域、ダイナミズム、美しいカンタービレなど、サクソフォンの様々な技法が、本当に極限にまで開拓されているといった曲でありまして、本当に、サクソフォン同士の対話が、十分お楽しみいただけるのではないでしょうか。

アナウンサー:それでは、パリ・サクソフォン五重奏団の演奏、今度はオリジナル曲です。「即興曲」「炎と煙」「対話」です。

♪R.ブートリー - 即興曲
♪R.ロベール - 炎と煙
♪J.M.デュファイ - 対話

アナウンサー:パリ・サクソフォン五重奏団の演奏、オリジナル曲を、3曲続けて聴いていただきました。「即興曲」「炎と煙」「対話」の3曲でした。今日演奏しております、パリ・サクソフォン五重奏団の皆さんですが、ソプラノ&第1アルトサクソフォン:アンドレ・ブーンさん、ソプラノ&ソプラニーノ&第2アルト:ジョルジュ・ポルトさん、テナーのベルナール・ボーフルトンさん、テナー&アルトのミシェル・トゥルーセルさん、バリトンのモーリス・ドゥラブルさんです。
さあ、今オリジナル曲を3曲続けて聴いていただいたわけなんですが、細野さん、どうでしたか。

細野:ええ、大変面白く、興味深く聴かせていただきました。まずやはり、ソプラニーノの入った音色ですね、これが非常に面白い音の組合せになるということに、驚きのようなものを感じて、今まで聴いたことがなかったもんですから、どんな風な音になるかと思っていたわけなんですが、大変面白く聴かせていただきましたし、ブートリーさんの曲も、現代の焦燥感のようなものの中に、適度なバランスの取れた、フランス風な漢字を受けましたし、ロベールさんのものはスタッカートやレガートを自由に駆使した見事な曲だと思いますね。それからデュファイさんのものは、適度なおしゃべりがあって、面白いと。やはり、楽器をよく心得た人が書いているという印象を受けました。

アナウンサー:船山さん、特にこの五重奏団はオリジナル曲に力をいれてらっしゃるという話ですけれども…。

船山:そうですね、私も、現代曲といいますと難解な取っつきにくい面もある曲もある、と思っていますけれども、本当にどの曲も非常に解りやすくて、そして今おっしゃいますけれども楽器の性能を本当に引き出してらっしゃって、親しみやすいものになっていたと思います。そしてフランス風ともおっしゃってくださって、私は言うことがなくなってしまったんですけれども(笑)、フランスならではの非常にキメの細かいエクリチュールが、答案のようではなくて、楽器の中に溶け込んで、テクスチュアとして出来てたと思うんですね。

アナウンサー:あの3曲目の「対話」でございましたか、この曲のなかでは、ずいぶんバリトンサックスが活躍する場面が多いんですけれども、音色を聴いておりますと、バリトンを越えて、テナーサックスの域まで入ってきてしまっているんではないかという(笑)、そういう高い音まで吹きこなしていくという、ちょっと驚きがあったんですが…。

船山:この抒情的なですね…私も改めてなんて抒情的な楽器なんだろうと思ったんですね。私正直なところサクソフォンと言いますと、ジャズの楽器だと思っておりまして、そう思ってはいけなかったのかもしれませんが、つまりオーケストラの中ではソロというのはほとんどありませんでしょ、サクソフォンソロというのは。ですから脇役に徹していると思ったんですけどね、こうして主役に躍り出てきますと、ヴィブラーとのかけかたといい、柔らかくて甘い音が、いわゆるジャズの痺れるような低音といった、そういうのとは違う、本当に豊かな輝きを帯びた音、色彩性のある音、といったものを、堪能致しました。

アナウンサー:まあ、コンサートですと、サクソフォンというのは後段、後ろの列に入りますけれど(笑)、今日聴かせていただくと前面に、前に出てきても本当におかしくないなという気がしました。
それから細野さん、フランスの方というのは管楽器がお好きでしょう、これは何か理由があるんですか?

細野:ええ、これといった決定的なものは申し上げられないかと思いますけれども、やはり一つにはいろいろな音色を好むという…多彩な音色ですね、そういったものがあるかと思います。それからやはりフランス人の特性であります、明晰さというものに関係すると思うんですが、同じような音色が混ざり合いますと、声部というのは聞こえづらいわけですね。ところが、音色が違いますと、よりはっきりしてくるというような。それから、軽やかさ、そうしたようなものと、またフランス人に言わせますと、フランス語の"r"の発音、喉の奥で発音するわけですが、それが管楽器のタンギングにプラスになっていると、こういう風にいうこともあります。

アナウンサー:タンギングが悪いと、ベーベー、ベーベー音がなってしまいますが(笑)、やはりフランスの言葉と共通性があるんでしょうかねえ。

細野:そうですね、フランス語というのは口の筋肉を非常に良く動かしますし、母音の数が大変多いですから、そういうことが日常使っているということは、楽器を吹く場合にも影響すると思いますね。

アナウンサー:さあ、そろそろお別れの時間が近づいてきたわけなんですが、もうちょっと時間がありますね。それでは、もう一曲お聴きいただこうと思います。これは10月に総合テレビのテレビ小説、「チョッちゃん」が終わったわけなんですけれども、チョッちゃんのご主人の岩崎要さんが、しばしばヴァイオリンをですね、演奏されていると。これは大変有名な「ユモレスク」という曲なんですが、ドヴォルザークの「ユモレスク」、ヴァイオリンを演奏するのとはちょっと違った味で、お聴きいただくことができるかと思います。

♪A.ドヴォルザーク「ユモレスク」

アナウンサー:パリ・サクソフォン五重奏団の演奏、ドヴォルザークの「ユモレスク」をお聴きいただきました。今日は7時から、2時間にわたってたっぷりと、パリ・サクソフォン五重奏団のサクソフォンの演奏を聴いていただいたわけなんですけれども。いかがでございましたか、細野さん。このサクソフォンの音色で、今日は全体を通して3つの部分に分けてお聴きいただきました。ジャズがあり、クラシックがあり、そしてオリジナルがあったということになりますが…。

細野:それぞれの特徴がありまして、大変楽しく聴かせていただきましたけれども、この五重奏の編成というのは大変難しいわけで、四重奏というものはたくさんありますけれども、(五重奏は)レパートリーがどうしても制限されるところがありますね。しかし、私はサクソフォン奏者ではありませんけれども、来年日本でサクソフォン会議(サクソフォーン・コングレス)が開かれるそうで、新しい楽器に今後も大きな拍手を送って、ますますレパートリーが増えて、そして聴く人を楽しませてくれるような、演奏が増えてくれることを望んでおります。

アナウンサー:船山さんいかがでございましたか?

船山:そうですね、このサクソフォンという楽器は人間の声のように、音楽が波打っている、脈打っているというような、音楽的喜びを味わわせていただきました。タペストリーというフランス独自の美術品がございますが、鮮やかな、精密な音のタペストリーを聴く思いがいたしました。

アナウンサー:いまお話にありましたように、楽器が鳴る、という言葉ではなくて、楽器が歌う、というのでしょうか、そういうことを、今日の演奏を通して私は強く感じ取ったんですけれども…。ますます、こういった楽器…(?)…こうこじんまりした中で十分堪能できるような音楽が増えていくことを、希望していきたいなと思うんですね。

船山:本当にそう思いますね。

アナウンサー:どうも、ありがとうございました。

船山・細野:ありがとうございました。

アナウンサー:今日は、パリ・サクソフォン五重奏団を、NHKの505スタジオに迎えての、生放送でお楽しみいただきました。お話のゲストには、音楽学者の船山信子さんと、東京芸術大学助教授の細野孝興さん、そして、ご案内役は、アナウンサーの佐藤敏彦でございました。明日は、NHK交響楽団の演奏会です。NHKホールから、ハイドンのオラトリオ「四季」をお聴きいただくことになっております。
それでは、NHK505スタジオから、今日のクラシックコンサートスペシャル、お別れでございます。ごきげんよう。さようなら。

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以上。私自身はけっこう知っていることが多いが、1960年代から1980年代にかけてのギャルドに触れた方々の生の声は、何にも増して説得力があり、さらにこうして文字に起こすことで、よりしっかりと内容を把握できたのは幸いであった。

実際の音源はCD-Rにて頂戴し、手元に保管している。私のお知り合いで興味がある方は、kuri_saxo@yahoo.co.jpまで連絡を下さい。木下さんからもお許しを得ています。

2009/01/05

パリ五重奏団ライヴのディクテーション(その2)

前回の記事の続き。

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アナウンサー:再び505スタジオです。7時からのクラシックコンサートスペシャルは、パリ・サクソフォン五重奏団の皆さんに来ていただいて、演奏とお話を、この505スタジオから、生放送で皆さんにお聴きいただいています。
このパリ・サクソフォン五重奏団の皆さんは、今来日中のギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のメンバーということになるんですけれども、船山さん、このギャルドという名称は、どんなところから由来しているんでしょうか。

船山:ギャルドというのは、英語で言います「Guard」のことでして、衛兵とか警備隊とか近衛隊とか憲兵隊といった意味なんですね。

アナウンサー:つまり(何かを)護るということなんですね。

船山:そうですね、兵隊さんなわけです。私たちはGarde Republicaine de Parisと言いますと、すぐにこの吹奏楽団を思い浮かべてしまいますけれども、実は共和国パリ衛兵隊ということなんです。ですから、皆さん厳めしい国家公務員であられるわけでして、舞台の上でも、指揮者をはじめ皆さん美しい制服を纏って、舞台に立ってらっしゃるわけなんですね。そしてまた、非常に、他のオーケストラなどに比べて、厳しい制約と規律の中で、音楽活動をしていらっしゃるときいております。

アナウンサー:いまギャルドの名前は衛兵隊である、つまり兵隊さんであると伺いましたけれども、そうしますと歴史的にみても、かなり長い歴史を持った楽団なのではないでしょうか。

船山:そうですね。兵隊という意味では紀元前からあったと言われていますけれども、私たちが一番お馴染なのは、アレクサンドル・デュマの「三銃士」に出てきます、三銃士の三人とダルタニアンが属しているのも、このギャルド親衛隊だったわけです。それからルイ13世、ルイ14世の時代、あるいは大革命を越えましてナポレオンの時代、その他19世紀の様々な変遷があった時代を通じまして、この衛兵隊はずっと続いてまいりました。
しかし音楽の方でこれがいつからできたかと言いますと、これもまただいぶ古いわけで、フランス大革命の、1789年に革命が始まった直後に、サレットという国民衛兵の大尉が、この軍楽隊を作ったといわれています。これが45人ほどで始めたといわれていますけれども、今から140年ほど前、1848年、二月革命のころですけれども、12人の金管楽器のファンファーレ隊というものをもって、ギャルドの発足とするのが一般的なようです。

アナウンサー:それにしても、大変古い時代からギャルドというのは続いてくるというわけなんですが、今のような形になってくるまでには、何回か編成を変えるといいますか、遍歴を経ていると見てよろしいんでしょうね。

船山:そうですね、その二月革命の直後に、1851年と言われていますけれども、すでに金管に木管を加えて、すでに50人くらいのパリ・ギャルド・バンドというものが興ったわけなんですね。現在は、75名ほどの編成ですから、あんまり大きな変遷を経たというわけではなく、脈々と続いてきたと言えるのではないかと思います。

アナウンサー:さあ、この後はクラシックの作品を演奏していただくことになっているんですが、バッハの作品で「バディネリ」「アリア」「ラルゴ」、ヴィヴァルディの「協奏曲ハ長調」、この4曲ですね。細野さん、こういった、今日聴いていただくのはほとんどが編曲されたものになるわけなんですけれども、「バディネリ」というのは元の曲がありますね。

細野:そうですね、バッハの「組曲第二番ロ短調」でしょうか、元はフルートとストリングスの曲なんですけれども、その他にも「アリア」はG線上のアリアと呼ばれるものでして、「管弦楽組曲第三番」からですね。ヴィヴァルディのものも、元はちょっとはっきりしないんですが、二本のヴァイオリンとオーケストラのためのものかと思いますが、そのような編曲物です。

アナウンサー:このように、編曲していかないと五重奏の作品はなかなか集まってこない、ずいぶん苦労されているように思えるんですけれども…。

細野:そうですね。先ほども彼らに伺ってみたんですけれども、この形が普通の形なんだそうで。つまり、ジャズを一部、それから一部分クラシック、そしてオリジナル曲となるようなんですが、先ほども申しあげましたとおり、(サクソフォンという楽器は)1845年にできたわけですから、こうした古い曲が作られた時代にはサクソフォンは存在しないわけですね。ですから、こうした豊かなバロック時代のものに関しては、編曲をして、サクソフォンのためにレパートリーを拡げなければいけないという苦労がありますね。

アナウンサー:さあ、それではパリ・サクソフォン五重奏団の演奏をお聴きいただきましょう。「バディネリ」「アリア」「ラルゴ」「協奏曲ハ長調」です。

♪J.S.バッハ「バディネリ」「アリア」「ラルゴ」
♪A.ヴィヴァルディ「協奏曲ハ長調」

アナウンサー:「バディネリ」「アリア」「ラルゴ」そして、ヴィヴァルディでした。さて細野さん、先ほどもお話を伺いましたけれども、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の皆さんと、しばらくご一緒に生活をなさったことがあると伺いましたけれども…。ギャルドという吹奏楽団というのは、どういった日常的な活動をしてらっしゃるんですか?

細野:先ほども船山さんからお話がありましたとおり、オーケストラは、フランスには国立のものが、パリ管と、国立ラジオ放送管、オペラ座管などのうちの、、一つなわけです。その中でも、軍隊ですから、いろいろな制約があると。国家公務員ということですから、他の楽団に属している方々よりも、活動は、たとえば、学校の先生になるにしても常勤の席は与えられないとか、オーケストラの中で二つを兼任することもできない、というようなことはあります。

アナウンサー:兵隊さんである、軍隊であるということから、生活そのものについてもやはり厳しさがあると思うんですが、そういったところはどうなんですか?

細野:ああ、そういったものは全くありません。ということは、他の吹奏楽団と違うところはですね、たとえば最近ではパリ警視庁のように、入団試験を受けて入ってくるわけなんですけれども、元はお巡りさんが楽器を取り上げて演奏するというわけなんですけれども、ギャルドの場合には、昔から、パリのコンセルヴァトワールを一位で出た人たちが、非常に難しい入団試験を受けて入ってくるわけですから、まずはミュジシャンであると。芸術家であるということが前面に出てくるわけです。そういう面からは、軍人としての制約はほとんど受けておりません。

アナウンサー:そうなんですか。(親衛隊の他の人たちと)同じように軍事演習に出かけられるのかなと思ったわけなんですけれども(笑)。

細野:そういったことはないと思いますね(笑)。おそらくですね、ピストルを使うとか、弾を撃つといった経験は、それ以前に兵役がありますから、その時にやるくらいで、入団した後はそうした経験はまずないと思います。

アナウンサー:ほおー。今お話の中に、ギャルドになるための採用という話がありましたが、皆さんプロであるというお話もありましたね。どういう形で採用されていくんですか?

細野:そうですね。もちろん公募されるわけなんですけれども、パリのコンセルヴァトワールでは一つのクラスに大体12人の生徒がいるわけです。例えばサクソフォンにしましても、クラリネットにしましても、ヴァイオリンにしましても…。まあ、そのいくつかあるところもあるわけなんですが、たとえばピアノのクラスは3つあるとか4つあるとかですね。それぞれに12人の生徒がいるわけなんですが、そういった人たちの中から卒業生が出て、何人かたまっているわけですね。で、ギャルドのメンバーも、そう年中変わるわけではありませんから、空席ができた時に、一時にその人たちが押し寄せると。そういう感じなんですね。

アナウンサー:じゃあやっぱり、狭き門であると…。

細野:ええ。それはもう国立のオーケストラの一つとして、非常に安定した収入があるわけですし、その他に私立、市立のオーケストラ、あちらではソシエテと言っていますけれども、ラムルーとかコロンヌとかパドゥルーとか、そういったオーケストラには同時に所属できますし、それからまたエキストラで仕事もできると。ですから、一つのベースとして重要な位置があるわけですね。

アナウンサー:そうしますと、先ほどの話で、いま全部で75人であるということですが、その75人の皆さん全員が、いわゆる粒より、というか粒ぞろいの集団であると…。

細野:そうです。やはりフランス文化に非常に関係があると思うんですけれども、本来ギャルドというのは軍楽隊であるわけですね。その軍楽隊に、オーケストラの響きを持ち込んだと、これがフランス的な、文化に関する感覚だと思いますね。
この今回来たのはLa musiqueという吹奏楽関係のミュジシャンであるわけなんですが、その他に40人くらいだと思いますが、弦楽の部分があるわけですね。それから、ギャルドと言いますと、音楽家集団というものがあって、その時々に応じて、ある時はブラスに変身するし、またある時はシンフォニックオーケストラになるし、そしてもっと小さな弦楽四重奏とか、今回来ておりますサクソフォン五重奏といったようなフォーメーションにもなりうるといった、そういうことになります。

アナウンサー:それぞれがソリストとしても十分演奏活動ができるようなプレイヤーであるということですね。

細野:ええ、このギャルドから出た人の中では、サクソフォンに関係する人ですと、マルセル・ミュールですとか、15年間在籍したということですけれども、非常に有名なデュポンという指揮者がいたわけです。そして現在のブートリーさんの前に、ブランさんという方がいたわけです。この方は非常にフルートの上手な方だったんですが、その前がデュポンさんだと。この人がギャルドの名声を非常に高めたわけなんですね。アメリカなどに演奏に行きましてね。その時代にミュールさんがおられましたし、その他、コンセルヴァトワールの教授になった方、あるいはパリ管のソリストになった方、オペラ座管に行った方、挙げたらキリがありません。

アナウンサー:なるほどー…。まあ、軍に属している、軍隊ということで、ある種の制約があるとちらっとおっしゃいましたけれども、その規約とか制約と言いましょうか、たとえばそのアンサンブルを組んで演奏するということに関しては、規律がうるさいということはないんですか?

細野:特にないのではないでしょうか。いろいろな形で演奏活動をやっていると思いますけれども、私が一緒にやっていました頃は、木管五重奏団はレコードをたくさん出しておりましたし、弦楽四重奏も先ほどお話したとおりで、この五重奏団についても、同じことが言えるのではないかと思います。要するに演奏の面では、これといった制約はないと思います。

アナウンサー:その他、どういったことがあるんですか?たとえば演奏活動以外では…。

細野:そうですね、たとえば交通違反をしたときにギャルドの身分証を見せると免れると、そういったことはありますけれども(笑)、他には特に規律といったものはありません。軍人としての観点からの規律といったものは、全く考えられませんね。

アナウンサー:そういった中で演奏活動、こうした小さなアンサンブルに分かれてやってくるというわけなんですが、これは技術を磨くということにも繋がってくるんでしょうし…。

細野:ええ、やはりオーケストラというのは小さなアンサンブルの集まりですから、部分がしっかりしていないといけないです。日本にもたびたび来てますバレンボイムさんなどですね、パリ管の中でもそういったものを率先して作って、より良いオーケストラを作っていこうと。思想的には相通じるものがあるのではないでしょうか。

続く…

2009/01/04

Fabrice Moretti plays Tomasi "Ballade" on YouTube

あのファブリス・モレティ氏がアンリ・トマジ「バラード」を吹いている動画がアップロードされていた。吹奏楽編成をバックにして吹いているものだが、いやあ、新年早々良いものを見つけてしまった。

何度か聴きに伺ったリサイタルそのままの、はっきりしたイントネーションが印象に残る。何よりも、その大音量とフレージング能力によって、聴き手を音楽のうねりにガバっと巻き込んでしまうあたりは、健在。速度はかなり抑えめだが、大きな編成との共演ならばこのくらいが適しているのかもな。服部真理子さんとの共演では、あまりのスピードに飛び上がった記憶もあるくらいだが。

それにしても、いやー、すばらしい!こういう動画が、どんどんアップロードされてほしいなあ。

・前半


・後半

【情報】ドゥラングル教授リサイタル

【クロード・ドゥラングル サクソフォーンリサイタル】
出演:クロード・ドゥラングル(sax.)、泉谷絵里(pf.)
日時:2009年1月20日(火曜)18:30開演
会場:昭和音楽大学南校舎「ユリホール」(小田急線「新百合ヶ丘」駅南口より徒歩4分)
料金:会員券2800円(全席自由・2009年1月5日よりチケット発売開始)
プログラム:
André Caplet - Légende
Claude Debussy - Rhapsodie
Maurice Ravel - Sonatine
Luciano Berio - Sequenza IXb
Ronald Miranda - Fantasia
Roger Boutry - Divertimento
Pierre Sancan - Lamento et Ronde
お問い合わせ・チケット取り扱い:
044-953-9865(昭和音楽大学演奏室・平日10:00~17:00)他
http://www.tosei-showa-music.ac.jp/topics/concert/20081226_1.html

と、いうわけで。2009年1月、ドゥラングル教授来日。昭和音楽大学(の、たぶん武藤賢一郎氏)が招聘し、日本でレッスンとリサイタルを行うそうだ。リサイタルは一般人でも聴けるようである(チラシの、チケット料金のところに書いてある「会員券」の三文字が気になるが…)。

チケット発売は明日から。来日もリサイタルも、ずいぶんと急に決まったんだなー。

2009/01/03

パリ五重奏団ライヴのディクテーション(その1)

以前木下直人さんより頂戴した音源の中に、1987年のNHK-FMクラシックコンサートを録音した、というものがあった。実家に戻って改めて聴き返していたのだが、アナウンサーとゲストのおしゃべりが長く、その内容が面白かったので、ちょっとディクテーションしてみた。始めてしまったらやめる訳にいかなくて、しかし微妙に時間もかかってしまい、大変だった。

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(時報)

アナウンサー:クラシックコンサートスペシャル、パリ・サクソフォン五重奏団演奏会。今日は、東京渋谷の505スタジオからの生放送です。演奏は、パリ・サクソフォン五重奏団のみなさんです。

♪N.リムスキー=コルサコフ - くまんばちの飛行

アナウンサー:パリ・サクソフォン五重奏団のオープニングミュージックは、リムスキー=コルサコフの「熊蜂は飛ぶ」でした。これは皆さんご存じの、歌劇「サルタン皇帝の物語」から、プースキンが作ったものですが、海を越えて飛んできた熊蜂の群れが、白鳥の周りを飛び回る場面を演奏した曲です。もとは、弦楽器と木管楽器主体の曲ですが、熊蜂が飛び回るブンブンという音を、巧みにサクソフォンの音で表現しておりました。さて、拍手でもお分かりのとおり、スタジオには50人を超えるお客様にお越しいただきました。そして、お話のゲストには、音楽学者の船山信子さんと、東京芸術大学教授の細野孝興さんにおいでいただいております。ありがとうございます。

船山・細野:こんばんは。

アナウンサー:さて、今日のサクソフォン五重奏団、実は来日中のギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のメンバーであると伺いましたけれども…。

船山:そうですね。ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団は現在3回目の来日中で、世界最高水準の、軍楽隊に属する、国立の吹奏楽団なんですね。いわば、世界の吹奏楽団のピラミッドのてっぺんにいるといった、そういった優れた吹奏楽団です。これは金管楽器・木管楽器によるオーケストラと言えるんですが、この中でサクソフォンは7人おりまして、ちょうどヴィオラとチェロの部分を受け持つ大事な楽器になっています。このサクソフォンのメンバー5人で、アンドレ・ブーンさんを中心に7年前に結成されましたのが、このパリ・サクソフォン五重奏団なんですね。サクソフォン四重奏団というのはたくさんございますが、このサクソフォン五重奏団というのは、五人のクインテットですけれども、大変珍しい編成だと思います。私は他に例を知らないんですけれども…。

アナウンサー:細野さん、いま船山さんの話にもありましたとおり、珍しいサクソフォン四重奏団ではなく、五重奏団である、ということですけれども、細野さんご自身も大変ギャルドとのお付き合いがあったとのことですが…。

細野:はい、大分昔の話になりますが、1962年から2年間ほど、ギャルドの人たちと一緒に演奏する機会がありまして、そういうことで今日もお呼ばれしたのではないかと思いますけれども…。

アナウンサー:今日はサクソフォンの五重奏団ということですけれども、このほかにギャルドの中にはいくつかアンサンブルがあるとお伺いしています。

細野:はい、これも時代によりまして多少の変更があるわけですが、まずその前にギャルドにはオーケストラ、シンフォニックなフォーメーションもありますわけで、その中に、このサクソフォン五重奏団のほかには、弦楽四重奏団もあるわけですね。多くこの楽団は、エリゼ宮の大統領のもとで、国賓・貴賓をお迎えする場合に演奏することもあるわけでして、現在その二つの楽団が、大変活躍しているようです。昔はその他に木管五重奏団がありましたけれども、現在は少し活動を抑えているようです。

アナウンサー:今日は、大きく三つのブロックに分けて皆さんに聴いていただこうと思うのですが、最初はジャズ、そして次にバッハやヴィヴァルディの作品を扱ったクラシック、そしてお終いにパリ・サクソフォン五重奏団のために書かれたオリジナル作品を聴いていただこうと思います。ジャズ作品のあとでは、皆さんにニュースを五分間ほどお聞きいただこうと思います。
では、パリサクソフォン五重奏団の演奏をお届けしましょう。まず、ジャズの作品ですが、ジャン=クロード・ノード作曲「太陽、砂、海、サックス」、ジョージ・ガーシュウィン作曲「サマータイム」、ジェローム・ノレ作曲「サックスの切り札」、マルティア・ストラル作曲「サクソフォン五重奏団のためのバラード」、この四曲を続けてお聴きいただきましょう。

♪J.C.ノード作曲「太陽、砂、海、サックス」
♪G.ガーシュウィン作曲「サマータイム」
♪J.ノレ作曲「サックスの切り札」
♪M.ストラル作曲「サクソフォン五重奏団のためのバラード」

アナウンサー:パリ・サクソフォン五重奏団の演奏で、まずジャズのサクソフォンからお聴きいただきました。ジャン=クロード・ノード作曲「太陽、砂、海、サックス」、ジョージ・ガーシュウィン作曲「サマータイム」、ジェローム・ノレ作曲「サックスの切り札」、マルティア・ストラル作曲「サクソフォン五重奏団のためのバラード」この四曲を続けてお聴きいただきました。
ここで、パリ・サクソフォン五重奏団のメンバーをご紹介しますと、ソプラノ&第1アルトサクソフォンのアンドレ・ブーンさん、ソプラノ&ソプラニーノ&第2アルトのジョルジュ・ポルトさん、テナーのベルナール・ボーフルトンさん、テナー&アルトのミシェル・トゥルーセルさん、バリトンのモーリス・ドゥラブルさん。パリ・サクソフォン五重奏団のメンバーの皆さんです。
さて、細野さん、サックス五重奏といいますと、いろいろなサクソフォンが大・中・小と出てきたわけですが、どういう編成になるわけですか?

細野:一般的に知られていますのはサクソフォンですと四重奏ということになりますけれども、五重奏という形では、決まった形はない、ということになりますね。使用している楽器は、ソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テノール、バリトンと、この五種類なわけですが、サクソフォンには七種類あるわけですが、そのうち五種類ということになります。そして、あるときはアルト2つになったり、あるいはテナー2つになったり、ソプラニーノを加えたり、なくなったりと、曲の要求に応じて、その編成を変えているそうです。

アナウンサー:この大きい楽器はバリトンサクソフォンということで良くわかるんですが、あの持ち替えてらっしゃるクラリネットのような小さなサクソフォンが出てきたわけですが…。

細野:そうですね。みなさん良くご存じなのは、テレビなどでご覧になっているアルトとかテナーとか、歌口から出ている管がカーブを描いて下に落ちているという形のものなんですが、ソプラノとソプラニーノは、形としてはチャルメラとかオーボエとかクラリネットとか、まっすぐの伸びた楽器で、もちろん金管でできているわけですけれども、特にサクソフォンの場合は、ラッパ=朝顔と言いまして、先端に向かってかなり急に開いているということですが、ソプラニーノ!これはなかなか聴く機会もないですし、見る機会もない、大変珍しい楽器だと思います。

アナウンサー:いまお聴きいただいた曲の中ですと、ジョージ・ガーシュウィンの曲を聴くと、私なんか大変メランコリックな気分になってしまうんですが(笑)、ジャズとサクソフォンという楽器は、とっても相性が良いと言いますか…。

細野:そうですね、サクソフォンという楽器が大変新しい楽器で、1845年にアドルフ・サックスという人によって作られたわけなんですけれども、元は木管楽器と金管楽器との間を取り持つという意図でもって作られた楽器なんです。専門的なことを言うとアレなんですが、とにかく音量が非常に豊かであると。それから表情が自由に付けられる、ピアニッシモからフォルティッシモまで自由に出せる、そして敏捷性=指の動きに十分応えられる楽器である、ということなどから、特にジャズの方では、第二次世界大戦ごろから、アメリカのほうで流行ったということを聞いております。

アナウンサー:五重奏ともなりますと、ジャズブラスの中で聴いていて、ほかの楽器がいらないんじゃないかという気もしたんですが(笑)。

細野:同属楽器でしたから、非常に面白い響きがしていましたねえ。

アナウンサー:船山さん、先ほどアメリカのジャズということでしたが、フランスのジャズはどうなっているんでしょうか。

船山:今演奏したうちの三つはフランスのジャズということなんですが、大変興味深く聴きました。特に最後のマルシア・ストラル、この「サクソフォン五重奏のためのバラード」というものはですね、フランス音楽独特のエレガントなジャズとも言うべき様な感じがしますね。デューク・エリントン、かの有名なジャズマンですが、マルシアル・ストラルを評しまして、この人は感受性・創造性・技術といったような、音楽に必要な技術を持っている、それもとても豊かに持っていると激賞したんですけれども、さすがに、という風に思いました。

アナウンサー:さあ、ここでニュースを五分間お聞きいただきましょう。

(ニュース)

続く…

2009/01/02

シガード・ラッシャーの演奏映像

The Legendary Saxophonists Collectionから

国内ではあまり知られてはいないが、シガード・ラッシャー Sigurd Rascherの、ピアノとのデュオ演奏を映した映像が現存する。モノクロフィルムからのトランスクリプション、10分程度のものであるが、サクソフォンの歴史上、大変貴重なビデオのひとつだ。

H.Purcell - Two Bourées
F.Schubert - L'Abeille
W.Welander - Arietta
M.C.Whitney - Rhumba

スナップショットをいくつか撮ってみた。映像から得られる情報は、音盤のそれと比べてずいぶんと性格の違うことだ。たとえば、フラジオだろうが高速フィンガリングだろうが、余裕綽々という表情のラッシャー、そして、なんと無理のないキータッチ…といったところが印象に残る。

現代にあっても、なかなか室内楽の演奏って撮影されることがないが、このビデオは一体どういう経緯で制作されたものなのだろうか。いちおう複数のカメラから撮影されているということは、ライヴを収録したもの、ということでもなさそうだ。うーん、こんどAndy Jacksonさんに訊いてみるか。

併録映像は以下の二つ:
オクラホマ大学とBuescherの共同プロデュースによるサクソフォンのデモンストレーションビデオ(めちゃくちゃ面白い!)。ラッシャーと、娘のカリーナが出演している。編集が入ったカラーフィルムで、およそ25分。
ラッシャーが後年取り組んだワークショップの映像。サクソフォンオーケストラのトップと指揮を務めるのは、おそらくポール・コーエン Paul Cohen!無編集のホームビデオ映像、およそ40分。

2009/01/01

明けました2009

まさかまさか、2008年一番最後に聴いたのがライヒの「ディファレント・トレインズ」だったなんて…。ベルリンフィルのジルヴェスターコンサートも、きちんと最後まで観ましたよ。まさかアダムズの「Short Ride in a Fast Machine」が聴けるとは…。なんなんだ、このミニマルづくしの年越しは。

ベルリンフィルの中継は、インターネット中継だったのかな。それとも、衛星中継?3度ほど画面の乱れがあったが、回線の混雑によるものなのだろうか。

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新年となりました。ブログをご覧の皆様も、そうでない皆様も(?)、よろしくお願いいたします。

で、自分自身の事は…。昨年も色々あったが、今年は人生における大きな転換期となる。(1/21提出の修士論文が無事に終わりさえすれば)4月から某社に就職。思い返せば、大学に進学したときも私自身の楽器との付き合い方は高校までに比べて大きく変わったが、そのときとは比べ物にならないくらいの環境の変化があるのだろう。ブログも、どのくらい書けるのかなー。