2008/09/08

サックスの扱いがひどい(Pan the Piper)

先日、知り合いからレコードのトランスファーの依頼を受けていたのだが、その中に面白い作品が含まれていた。ジョージ・クラインシンガー George Kleinsingerという作曲家が、楽器紹介のために作曲した「笛吹きパンの音楽物語」と呼ばれる、ナレーションと吹奏楽のための作品だ。

羊飼いの"パン"が、仕事の合間に葦に息を吹き込むと、美しい音が出て、それが木管楽器の原型になって…といったところから始まり、ジャングルの仲間の太鼓叩き(打楽器)や、角笛吹き(金管楽器)が加わって、そして最終的には現在のバンドの形になりました…という感じに、ナレーションと短い楽器のフレーズが交互に演奏されていく、という趣。

実はもともとはオーケストラの成り立ちを示すためのもので、擦弦楽器(ヴァイオリンなど)、弾弦楽器(ギターやハープ)なども含まれているそうなのだが、カットされて吹奏楽の成り立ちを追うコンサート・ピースとしても演奏されるようである。オーケストラ版のフルバージョン音源は、このリンク先から無料でダウンロードできる。

で、当たり前のようにサックスは最後に出てくるのだが、そこのナレーションというかサックスの扱いがひどい…。まあ、まさに歴史そのままなのだが。

…こうして私たちは、完全なバンドを持つことができました。そしてこのバンドは、パンの簡単な葦の笛から出発したことを、もう一度思い出してください。
(フルートの調べ)
さあ、私たちはもう、このバンドに何も付け加えるものはありません。どの楽器も完全に思えます!まず、木管楽器!
(木管楽器のフレーズ)
金管楽器!
(金管楽器のフレーズ)
そして打楽器のグループ!
(打楽器のフレーズ)

…そうです。その後アドルフ・サックスという人が、サクソフォンという新しい楽器を発明するまで、バンドは完全のように思えました。
(サックスのフレーズ)
それは真鍮で造られていて、そして象の鼻のように曲がった管を持っていました。しかしそれは、ラッパのようなえぐれた吹き口は、持っていませんでした。その代わり、クラリネットに似た吹き口に、一枚のリードを付けて音を出しました。

しかし、木管楽器たちは言いました。「ふうん、お前は私たちと一緒に座っちゃ困るね。お前は真鍮で出来ているじゃないか!」
(木管楽器の荒々しいフレーズ)
そして金管楽器たちも言いました。「お前は俺たちと一緒になんか座れないぞ。お前はリードを持っているじゃないか!」
(金管楽器の荒々しいフレーズ)
打楽器たちも「そうだ、そうだ!」と返しました。
(打楽器の荒々しいフレーズ)

しかし、作曲家がサクソフォンのための音楽を書いてから、他の楽器たちは、サクソフォンのための席を作ってやりました。そして彼らは、力を合わせて音楽の発展に貢献したのです。
(サクソフォン四重奏AATBのフレーズ)

こうして今では私たちは、完全なバンドを持ちました。そして彼らは、それ以来いつまでも、互いに幸福に暮らしています!
(バンドのフレーズ)


なんというか、まあ最初に木管楽器と金管楽器と打楽器に突っぱねられるところもなんか寂しいのだが、その後に演奏されるAATBのフレーズはさらに物悲しい。中途半端に席を得ながら、完全にオーケストラ(吹奏楽)の楽器に成りきれないサクソフォンの憂鬱を表現しているかのようだ。

サックスセクションは、石渡悠史、須田寔、冨岡和男、池上政人、仲田守、服部吉之(以上敬称略)というメンバー。だからおそらく、最後のAATBのフレーズを吹いているのは、若き日のキャトル・ロゾーではないか、と思う。もし演奏しているのが本当にそのメンバーだとしたら、数ある録音の中でも最高の演奏の一つではないか。

4 件のコメント:

mcken さんのコメント...

懐かしい曲です。何回か演奏しましたし、台詞の日本語訳・脚色もしたりしました。
サックス扱いは確かにひどいともいえますが、事実からもそう遠からず、とも思います。
レコーディング(芸大吹奏楽団でしたっけ?)のサックスメンバー、そんな豪華な顔ぶれだったんですね。響きは私の耳にも残っています。

kuri さんのコメント...

> mckenさん

おお、演奏されたことがあるんですか!なかなか楽しそうですよね。セリフを変えるのも楽しそう…(^^)

私はそのLPによってこの曲を知ったのですが、こんな面白い楽器紹介風味の曲があるんだなあと驚きました。オーケストラ版とか、生で聴いてみたいものです。

芸大吹奏楽団の「吹奏楽入門シリーズ」LPはもう一枚あるのですが、そちらのサックスのメンバーは、さらに大室勇一氏、石渡悠史氏、佐々木雄二氏などが参加されているという…呆れるほどの超豪華メンバーです。

wind-f さんのコメント...

オケ版が原曲だとは知りませんでした。

なんだか印象が随分違うなと思って、昔のCDを引っ張り出してきました。
東芝EMIから出ていた「吹奏楽オリジナル名曲選 Vol.3」というやつです。
ジェイガーのノビリッシマや第3組曲、マクベスのマスクなんかも入っていたので持っている人は結構いると思う。

改めて聴き直して、びっくり。随分台詞違いますね。
訳が誰かとかは書かれていませんが、語りは「姫ゆり子」さんです。男性と女性の違いっていうのもあるかもしれませんね。

以下一部抜粋

これで吹奏楽の楽器がすべて揃ったのかな?
いいえ、一つ忘れていたわ。
この他にサキソフォーンという楽器があったのよ。
ほうら、これがサキソフォーンの音。

言い合いになるところも、
‥‥金管楽器の方へおいきよ。
‥‥木管楽器の方へおいき。
‥‥とうとう打楽器までも騒ぎに入りました。

最後も
でも、こんな言い合いはいつまでも続きませんでしたよ。
音楽のためにはサキソフォーンも木管楽器も金管楽器も打楽器もみんな大切なんですもの。
みんなが助け合ったギリシャの羊飼いパンのアシ笛からこんなに素晴らしい吹奏楽が出来上がったのです。

どうでしょう?随分印象違いませんか?

ちなみに指揮:福田一雄、演奏:東京佼成吹奏楽団。
ってことはこのサックスは誰?

kuri さんのコメント...

> wind-fさん

訳が変わると、これまた随分印象が違うものなのですね。驚きました。

もとの英語版はどんなもんかな、と思って、ちょっと聞き取ってみました。少し間違っているところもあるかもしれませんが。

Hun, you can't sit with us. You are made of brass!

(木管楽器の荒々しいフレーズ)

You can't sit with us. You have reeds!

(金管楽器の荒々しいフレーズ)

And Strings said "Get out, get out, get out! There is no place for you all!"

(弦楽器の荒々しいフレーズ)

The percussion section just said that "(打楽器の破裂音)"

という感じです。

どちらかというと、刺々しいニュアンスを聞き取ることが出来ます。吹奏楽オリジナル名曲選に収録されているものは、ずいぶん柔らかく訳されているのですね。

サックスは誰なのでしょうか。録音時期によりますが、下地さんか須川さんかな、というところでしょうか。