2008/07/27

芸術の復刻

最近クランポンのスーパーダイナクションっていうアルト(60年代のもの)も買っちゃったんだよね。ガロワ=モンブランとか吹くと「コレだよね!」って感じに、無駄な苦労をしなくてもその時代のスタイルに入れる。…

先日も紹介した、日本サクソフォーン協会の機関紙Vol.20で、雲井雅人氏が古楽器についての魅力を語っている記事の一節に見られる文である。私は古楽器を吹いたことがないので、「へえ、そうなのかー」という程度の感想しか持つことができないのだが、どこかで似たようなことを聞いたことがあるなあ、と思ったら木下直人さんと話していたときに出た話題との関連性があるのだった。

木下直人さんが、ご自身が所有するLPの復刻に関して、トーレンスのターンテーブルや、オルトフォンのカートリッジを使用する理由…現代のシステムではなく、50年代、60年代のシステムを、当時の形で完璧にオーバーホールして再生環境を整える理由。それは「当時の機器で再生されることを前提にした録音は、当時の最高の機器でこそ本来の音楽を奏でる」という木下さんの信念によるものだった。そのため、例えばフレンチ・レーベルのステレオLPを再生するために、ORTFご用達のピエール・クレマンのステレオ用カートリッジとアームを、今も捜し続けている、ということだった(アームは4月頃に入手したということだ)。

それにはきちんとした理由があって、木下直人さんの長年の研究による、イコライザの設定やプレスされた国などの様々な要素から導き出した結論なのだそうだ。録音環境(プレス環境)と、再生環境の一致。これこそが、当時の音楽家たちの姿を現代に蘇らせる唯一無二の方法…。

楽器と作品の関係も、よくよく考えてみれば、確かにそうだよなあ。イベールの時代にはセルマー・シリーズ3はなかったのだ。当たり前だけれど、実はすごく重要なことなのではないか。結局のところ、昔の芸術のスタイルを理想的に再現するためには、当時のハード(楽器)と現代のソフト(演奏技術・表現方法)を上手く組み合わせるのが良い、というのが、究極の結論なのか。

現代の楽器で吹いているイベールやグラズノフは、もしかしたらこんな感じか(笑)。きっと、近いところはあるのだろうけれど、現代の人が見ても、当時の人が見ても、「なんか違うんだよなー」と首をひねってしまうものなのかもしれない。

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