2008/07/30

シャリエのマスタークラスレポートを読む

日本サクソフォーン協会々報の昔の号を引っ張り出して読んでいる。2005年に発行されたVol.27に掲載されていた、上田卓氏によるマリー=ベルナデット・シャリエ Marie-Bernadette Charrierのマスタークラスのレポートが面白かったので、ご紹介したい。

シャリエ氏は、フランスの女流サクソフォン奏者。ボルドー音楽院においてジャン=マリー・ロンデックス氏に師事し、一等賞を得て卒業。1993年からボルドー音楽院の現代音楽アンサンブルクラスの教授に就任し、さらに1994年からはロンデックス氏の後任としてサクソフォン科インターナショナルクラスの教授に就任した。

教育活動だけでなく、夫であるクリストフ・アヴェル Christophe Havel(作曲家)とともに現代音楽アンサンブルのプロクシマ・ケンタウリ(プロクシマ・ソントリ)Proxima Centauriを結成し、新作の初演を数多く手がけている。これはシャリエ女史の写真だが、ソプラノからバリトンまでを操る姿が、これほど当てはまるサクソフォン奏者はそうはいないだろう。

来日は2004年。同時期に開かれた"音楽・芸術表現のための新インタフェース"国際会議へ、クリストフ・アヴェル氏が招かれたことをきっかけに、プロクシマ・ケンタウリとしての来日が実現したそうだ。国際会議への参加の傍ら、アクタスにてマスタークラスを行った、ということである。マスタークラス招聘の発起人は上田卓氏。上田氏は、ボルドー音楽院にてシャリエ氏の下で学んだことがあるのだそうだ。

ちなみに私は当時大学の2年生。まだまだサクソフォンの現代作品には疎い身で、このマスタークラスの存在すら知らなかった。もし今、同様のイベントが開かれるならば、研究室サボってでも聴きに行ってしまうと思うのだが。

受講曲は、小山弦太郎さんの演奏でクリスチャン・ローバ「バラフォン」「ジャングル」、大栗司麻さんと貝沼拓実さんの演奏で、同じくローバの「アドリア」。普段演奏する機会は多い作品群だが、ボルドー発のこの作品を、現地のサクソフォン科教授に教えてもらう機会って、そうはないのではないか。

マスタークラスの後は、シャリエ女史のミニ・コンサート。これまた凄いプログラムで、
Hans-Joachim Hespos - Ikas (Alto Saxophone Solo)
Christophe Havel - Oxyton (Baritone Saxophone Solo)
Bruno Giner - Et interra... (Snaredrum Solo)
François Rosse - Huk'kuSpatuS (2 Voices)
Jérôme Jois - Overwritten (Soprano Saxophoe Solo)
Philippe Laval - Enfin (Tenor Saxophone & Percussion)

うーむ、きちんと聴いたことがあるのは、アヴェルの「Oxyton」くらいだ。フランスの現代作品とはいっても、パリ周辺の作品については日本への情報の輸入量がそこそこ多いが、ボルドー周辺の作品に関しては、日本ではほとんど知られていない、ということなのだろう。どんな音がする作品なのか、興味あるところだ。

レポートの最後に、上田卓氏からシャリエ女史へのインタビューが掲載されていた。ボルドー音楽院への留学の情報もわずかながら話されていた。日本からボルドーへ留学して、そこで取り込んだことを生かした活動を行ってくれる方がいると、面白いだろうなあ。

BGMは、「ær(Alba musica / MUSIDISC MU291672)」。以前、上田卓氏から送っていただいたものであり、ブログ上でレビューした。「S」が特にお気に入り。電子部品を散りばめた万華鏡のような響きが心地よい。

色を塗りたい

このブログの右下にそれとなく貼り付けてある「Geotargeting」というブログパーツがある。アクセスのあった都道府県を、アクセス数別に色分けして表示してくれるもので、アクセスが多いほど都道府県の色が赤くなる。アクセス解析のパブリック版のようなもの。

色が塗られていない都道府県は、最近一週間のうちにアクセスがない場所であり、つまり一週間のうちに全ての都道府県から一件でもアクセスがあれば、全ての県に色が塗られる、ということだ。どうも岩手県や島根県には、定期的に読んでくださっている方がいらっしゃらないようである(ということが判る)。ざんねん。

いつか、全ての県に色を塗りたいなー。もっともっと記事が蓄積していけば、検索で飛んでくる方が増え、いずれ可能となるとは思うが。あと、茨城<神奈川<東京というのには、微妙に納得がいかない。

MAI? on YouTube

なーんかブキミ(笑)。曲は、野田燎「MAI」だと思うんだがな。途中でインプロヴィゼイションも挟まれているような、そうではないような。

演奏者はマスクをつけているが、これはGAPERAと呼ばれる芸術表現のひとつであり、「GAPERAは、演奏にマスクを利用した特殊な芸術表現のテクニックのひとつで、演奏者の内的心理をマスクと演奏で表現する種類のロマンチックな手法として、目の前で瞬時に顔の形を変える魔法のような演技手法中の顔の表情と演奏家ジョフワロウムを成し遂げた演奏劇である」とのこと。うーん、良く分からん。



2008/07/28

長野県下諏訪町でのTSQ公演

二月ほど前からぼんやりと計画していた、Tsukuba Saxophone Quartet長野公演のご案内。9人のメンバーのうち、3人が長野県出身ということもあり、お盆の時期に合わせて信州公演を行います。

休憩なし、司会を挟みながらの一時間ほどのミニコンサート。前半は四重奏、後半はラージアンサンブルという感じになると思われます。ちなみに、9月のつくば公演のプログラムと、いくつかかぶせてありますので、お近くの方はぜひどうぞ。フェルドの四重奏曲に関しては、長野県内初演だったりして…(大いにありうる話だ)。

期日が近づいたら、また告知します。

【Tsukuba Saxophone Quartet - 信州コンサートツアー Saxophone "Mini" Concert】
出演:Tsukuba Saxophone Quartet
日時:2008年8月17日(日曜)15:30開演
場所:長野県下諏訪町ハーモ美術館ティーセントホール
料金:入場無料(美術館への入場料は必要ありません)
プログラム:
J.フェルド - サクソフォン四重奏曲より
オムニバス - 日本のメロディ
G.ホルスト/TSQ - セント・ポール組曲より 他
問い合わせ:
http://tsukubasaxophone.blog51.fc2.com/
kuri_saxo@yahoo.co.jp

ティーセントホール内部の様子。オサレー(*・ω・)

2008/07/27

芸術の復刻

最近クランポンのスーパーダイナクションっていうアルト(60年代のもの)も買っちゃったんだよね。ガロワ=モンブランとか吹くと「コレだよね!」って感じに、無駄な苦労をしなくてもその時代のスタイルに入れる。…

先日も紹介した、日本サクソフォーン協会の機関紙Vol.20で、雲井雅人氏が古楽器についての魅力を語っている記事の一節に見られる文である。私は古楽器を吹いたことがないので、「へえ、そうなのかー」という程度の感想しか持つことができないのだが、どこかで似たようなことを聞いたことがあるなあ、と思ったら木下直人さんと話していたときに出た話題との関連性があるのだった。

木下直人さんが、ご自身が所有するLPの復刻に関して、トーレンスのターンテーブルや、オルトフォンのカートリッジを使用する理由…現代のシステムではなく、50年代、60年代のシステムを、当時の形で完璧にオーバーホールして再生環境を整える理由。それは「当時の機器で再生されることを前提にした録音は、当時の最高の機器でこそ本来の音楽を奏でる」という木下さんの信念によるものだった。そのため、例えばフレンチ・レーベルのステレオLPを再生するために、ORTFご用達のピエール・クレマンのステレオ用カートリッジとアームを、今も捜し続けている、ということだった(アームは4月頃に入手したということだ)。

それにはきちんとした理由があって、木下直人さんの長年の研究による、イコライザの設定やプレスされた国などの様々な要素から導き出した結論なのだそうだ。録音環境(プレス環境)と、再生環境の一致。これこそが、当時の音楽家たちの姿を現代に蘇らせる唯一無二の方法…。

楽器と作品の関係も、よくよく考えてみれば、確かにそうだよなあ。イベールの時代にはセルマー・シリーズ3はなかったのだ。当たり前だけれど、実はすごく重要なことなのではないか。結局のところ、昔の芸術のスタイルを理想的に再現するためには、当時のハード(楽器)と現代のソフト(演奏技術・表現方法)を上手く組み合わせるのが良い、というのが、究極の結論なのか。

現代の楽器で吹いているイベールやグラズノフは、もしかしたらこんな感じか(笑)。きっと、近いところはあるのだろうけれど、現代の人が見ても、当時の人が見ても、「なんか違うんだよなー」と首をひねってしまうものなのかもしれない。

2008/07/26

Aurelia SQ plays Barber, Piazzolla, van Norden on YouTube

アウレリア(オーレリア)サクソフォン四重奏団 Aurelia Saxophone Quartetの最新の演奏動画が、YouTube上にアップされていたのでご紹介。毎度の事ながら、アップロードを行っているのはソプラノのリンデン氏のようである。

・Samuel Barber「Adagio」…美しい。ライヴ盤「Blow!」よりも濃密で、テンションの高い演奏だ。


・Astor Piazzolla「Contrabajeando」…アルバム「Two to Tango」でも魅せた演奏が、さらにブラッシュアップ。動きはコミカルだけど、流れている音楽は見事としか言いようがない。


・Maarten van Norden「Battle of the Saxes」…盛大なオチ。大爆笑。

2008/07/25

練習、とか

6月の下旬ごろから、毎日のように合わせ練習や個人練習をやっている。今日は「セント・ポール組曲」のテナーサックス練習。残念ながら、体調不良により一人欠席(=二人で練習)。

やっぱあれだな、練習時間よりも練習内容だな。「どれだけ練習したか」で満足してはいけなくて、「どのくらい吹けるようになったか」というところに落としどころを持っていかないとだめかな。今日はまったりと3時間ほどかけたが、今日くらいの練習内容ならば2時間でこなせるくらいにしないと。

魅力的な中音域目指してがんばります(^∀^)ノ⌒☆わあい

小田桐さんの調整から帰ってきたテナーサックス、ずいぶん吹きやすくはなったのだが、音程のクセが変わっていて、まだまだ慣れないなあ。試行錯誤中~。

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本日の驚き:久々に訪れた雲井雅人サックス四重奏団のサイト、リニューアル準備中!だそうだ。

2008/07/24

Jérôme Laran 「Impressions d'Automne」

現代のフランス・サクソフォン界の姿を、最良の形で表現したディスクとなった。こういったアルバムが、日本のCDレーベルから発売されることを嬉しく思う…ジェローム・ララン Jérôme Laran氏の最新アルバム「Impressions d'Automne(Cafua CACG-0119)」。以前、CD発売記念のコンサート・レビューでも少し紹介したが、7/23より一般発売となった今、改めてご紹介したい。

C.ドビュッシー「ラプソディ(自筆譜から再構成した特別版)」
M.ラヴェル「ソナチネ」
D.ミヨー「スカラムーシュ」
A.デザンクロ「前奏曲、カデンツと終曲」
F.プーランク「オーボエ、バソンとピアノのためのトリオ」
P.ルルー「SPP」
A.カプレ「秋の印象」

共演のピアノは、作曲家としても高名な棚田文則氏。また、プーランクで原博巳氏がテナーサクソフォンを担当している。

メイエー財団の助成により作成されたディスク「Paysages lointains」に比べると、さすがにララン氏のオリジナリティというものは抑制されていて、代わりに幅広い聴き手を意識した選曲・構成となっているのが目を引く。このCDを通して、ララン氏の音楽がいろいろな人に聴かれると良いなあ。

聴きどころをいくつか。まずは何といっても、ドビュッシーの「ラプソディ」である。ご存知のように、この曲はエリザ・ホールというアマチュアの女流サクソフォン奏者によって「サクソフォンとオーケストラのための作品」という条件の下に委嘱されたが、結局未完成のピアノスコアのままエリザに届けられた、といういわくつきの代物だ。そのピアノスコア(自筆譜)は、ニューイングランド音楽院に保管されているが、そのコピーをララン氏が入手し、棚田文則氏とともに、サクソフォンとピアノのための編成に再構成しなおしたバージョン、ということになる。

私がもっとも聴きなれているのは、ロンデックス氏が独奏を務めたマルティノンによる盤だが、そのサクソフォン・パートとは一線を画した輪郭が描かれている場所が数多くあり、実に興味深い。妙にアクロバティック過ぎない趣味の良い響きは、これから先幅広く演奏されるべきだと感じた。そんなドビュッシーの直後にラヴェルを配置したのは、実に小憎いアイデアだ。同時代に生き、印象派の二大巨匠として辣腕を振るったこの作曲家たちの響きが、ララン氏のサクソフォンによって奏でられるのである。こうして並べてみると、一緒くたにされがちなドビュッシーとラヴェルも、手法や理想は違うものなのだなあと実感する。

続いて、ミヨーとデザンクロという、サクソフォンソロのためのオリジナル作品の最高峰の二曲を、ララン氏は実に見事に聴かせている。技術的に完成されているのはもちろんのこと、ミヨーのパリジャン的軽妙洒脱&ラテンの熱い血&南米のカーニヴァル的音楽性…の同居や、フレンチ・スクールの伝統を受け継ぐまっとうな解釈によるデザンクロなどの「プラス・アルファ」を表現できるのは、さすがと言うほかない。ミヨーの第3楽章なんて、楽しみながらの余裕綽々世界最速ペース。

プーランクの原さんとの共演ともいいなあ。原さんとのデュオ活動は、すでに日本においては有名であるが、それを録音媒体という形で手元に置けるのは嬉しい。オクターヴのユニゾンが各所に出現する部分での、国籍を超えた友情や慈しみを感じられるところは、聴いているこちらまでもがニコニコしてしまう。ああ、良いなあ。

最後の「SPP」で盛大なラランさんらしさ(初めて聴いたときにはびっくりする)を存分に表現している。これはあれだな。ロンデックス氏のCrest盤における、ロベールの「カデンツァ」を聴いたときのショックに似ているなあ(実際デザンクロとミヨーが重複しているし)。まるで即興音楽のようなハイ・テンションに満ちた演奏には、圧倒されること間違いなし。アンコールとして配置されたのは、カプレ「秋の印象」。もともとはチェロの曲なのだそうだ。

というわけで、オススメ。アレンジもオリジナルも超高水準で、技術的な制約をクリアしながらララン氏のオリジナリティを付加した、傑作アルバムの登場である。大手CDショップを始め、いろいろなところで売っているが、Cafuaから直接購入することも可能。

「Millennium」を聴く

「Tread on the Trail」が入ったCDって何があったっけ、と引っ張り出してきたのだが、聴くのは久々だ。平野公崇氏のデビューアルバム「Millennium(Triton DICC-28004)」である。共演に、ドゥラングル教授クラスで平野氏と同期であったサッシャー・アームブリュスター Sascha Armbruster氏と大石将紀氏、そのほか大城正司、大和田雅洋らを迎えている。大石さんの参加に関しては、先日到着した協会報に大石さんのインタビューがあるが、平野氏が帰国した直後、大石さんは平野氏に師事していたようだから、そのあたりで共演が実現したということになるだろうか。

この2008年という時代に聴いても、異様なアルバムだ。まともに見えるのは、せいぜいクリスチャン・ローバの「エチュード」くらいか?

磯田健一郎「Millennium」
Christian Lauba「Balafon」
Steve Reich「Reed Phase」
Christian Lauba「Tãji」
磯田健一郎「Another Millennium」
Duncan Youngerman「Ice Man」
Christian Lauba「Jungle」
Duncan Youngerman「Dragon Man」
Christian Lauba「Vir」
Terry Riley「Tread on the Trail」
磯田健一郎「Millennium(reprise)」

このアルバムが発売された当時の、聴衆の衝撃はいかほどのものであっただろうか。彗星のごとく帰国し、アルバム「Millennium」の発売、B→Cへの出演、そのほかリサイタルなど、立て続けにアグレッシヴな活動を展開していた平野氏。現在でこそ珍しくなくなったローバの無伴奏エチュードやフリーの即興だが、そういった活動を広く聴衆に披露することができたのは、ある種の自信が成せる技だったのだろうか。

一曲挙げるとしたら、タイトル曲「Millennium」のアナザー・ヴァージョン。一番目のトラックのテーマを元にしたサッシャーとのデュオによる即興で、もとのテーマを早期させるかどうかと云われれば全くそんなことは無いのだが、この「Tãji」と「Ice Man」を接続するのは、こういう音楽以外考えられない。

このアルバムに対する疑問。Duncan Youngermanとは、何者なのか?ギター弾きのようだが、それ以上の情報が出てこないのだ。「Stan the Man」とはどういう曲なのか?どこまでが即興なのか。「Another Millennium」は、どのように構成されたのか?そんな謎もまた、このアルバムを魅力的にするのに一役買っているかもしれない…というのは、考えすぎだろうか。

たしか廃盤となって久しいが、いちおうamazonで買えるようだ。

2008/07/22

Tread on the Trailの楽譜

注文していたテリー・ライリー Terry Rileyの「トレッド・オン・ザ・トレイル Tread on the Trail」の楽譜が到着。買おうと思って探したところすぐ見つかって(ここのサイト)、Ann Rileyとの数度のメールのやり取りで買い付けることができた。送料込みで、1500円もしなかったのが幸い。まあ、楽譜のスタイルとしては「In C」に近いものがあるのだから、当たり前といえば当たり前か(むしろ高い?笑)。

Tsukuba Saxophone Quartetでやったら、確実にアマチュアのサックスグループとしては初演ですな。むしろ、平野公崇さんのグループ以外にこの曲をサックスで取り上げた団体って、日本に存在するのかいな(その考え方自体が、ニッチですなあ)。

どこかでやる機会はあるか。近いうちに、試奏してみるつもりだ。何人くらいでやるのが良いのかな。

ちなみに、録音媒体としては、以前こちらの記事でも紹介したものだが、Arte Quartettのものが入手しやすいだろうか。実は2001年に改訂が行われ、フレーズ毎にドローンを鳴らすことが許されているのだが、その改訂バージョンによる演奏となる。ミニマル・ミュージック好きならば手に入れておいて損はないですぞ。amazonで買える

昨日は本番

昨日は、サクソフォーノ・ロッソのアンサンブル発表会に参加してきた。場所は新大久保のスタジオ・ヴィルトゥオージ。いかにも下町、といった感じの細い路地の奥にある、小洒落たスタジオ。

ロッソのメンバーによるアンサンブル、ニジマスさん他。
三浦真理「ティータイムの画集」

ロッソのとりさんとマダムさん、なめら~かのけこぅさん、エスポワールのGGさん。
A.C.ジョビン/中尾敦「イパネマの娘」
中尾敦「ストロベリー・ノート」

Ensemble TX(MJさん、N(ちさ)、kuri、ゆうぽんさん)の初本番。
M.トーク「July」
R.クレリス「かくれんぼ」

それぞれ個性があって、楽しい発表会だった。「ティータイムの画集」を最初から最後まで聴いたのって、初めてかもしれない。そういえば、ニジマスさんの演奏を聴いたのも初めてだったなあ。GGさんのアレンジとオリジナルは、相変わらず冴えまくっていた!どうやったらこんなに凄い&かっこいいアレンジ/編曲ができるんだ!演奏も、隅から隅までさらいこんであって、とてもクール。

Ensemble TXは、「July」の難しさを再確認。通ることには通るが、いくらなんでもボロボロと落ちすぎっす(自分も)。最初からさらいなおし。現状の3倍くらいさらわないと…。

終わった後は、遠藤朱美先生も参加されて、和民にて打ち上げ!ニジマスさんやけこぅさん、GGさんなどとおしゃべり。残念ながら22時過ぎには失礼させていただいたが、楽しい時間だった。もっとゆっくりできる機会があると良いなあ。

そうだ、ひとつ収穫。「音域ジャーナル」が何なのか、ようやく分かった(笑)。まさか××の××だったなんて!!

2008/07/21

お祭りで演奏

昨日は、つくば市の吾妻地区の夏祭りにて、吹奏楽で演奏。たくさんの方が聴いてくださって、大盛り上がりの中、終了。打ち上げもいろんな人と話せて楽しかったなー。写真は、フォルクローレ愛好会演奏中のもの。

今日は頭を切り替えて、クラシック本番モード。詳細が分からないので細かい情報は割愛するが、新大久保のスタジオ・ヴィルトゥオージにてサクソフォーノ・ロッソのアンサンブルコンサートに出演する。Ensemble TX サクソフォン・コンサートのプログラムから、いくつか抜粋して演奏する。

と、その前に、小田桐さんのところに、調整が終わったテナーサックスを受け取りに行かなければ。

2008/07/19

サクソフォーン協会々報Vol.20が到着

日本サクソフォーン協会の会員に向けて、一年に一度発行される会報(機関紙?)「サクソフォニスト」が、昨日到着した。私が会員になったのは昨年からであるが、「サクソフォニスト」に関してはVo.17から読んでいる。年末のフェスで余剰分が無料配布されており、それを持って帰ってきて手元に置いてあるのだ。

ところで、Vol.17は全34ページであったのが、VOl.18では50ページ、Vol.19では76ページと続き、今回のVol.20は、なんと104ページ!手にとってみても、厚みがぜんぜん違っていて、びっくりだ。さて、内容である。毎年"まにあくー"な感じの記事が多いが、今年はこんな感じ(著者の敬称略)。

石渡悠史「巻頭文」
:ぼちぼちサクソフォーン・コングレスを日本に再び招聘したいのではないかな、という気持ちが感じ取れる。

安井寛絵「仏蘭西留学日記2(最新CD・書籍の紹介、ジェローム・ララン氏との対談含む)」
:現在ブール=ラ=レンヌ国立音楽院に在学中の安井寛絵さんの、現地での生活の様子。フランスでの音楽学生、演奏家の日常って興味のあるところだが、なかなか情報としては入ってきづらいため、こういった形で読めるのは楽しい。ジェローム・ララン氏へのインタビューも、実に面白い!ドビュッシーの編曲秘話が、まとまった形で読める。

宗貞啓二「2nd International Jean-Marie Londeix Saxophone Competition」
:ロンデックスコンクールの審査員をしていた宗貞氏の回想録。コンクールの最中は見えてこなかった裏話がふんだんに語られており、とても面白いっす。

伊藤あさぎ「第2回ジャン=マリ・ロンデックス国際サクソフォンコンクール日記」
:こちらはコンクールへの参加者、セミファイナリストとなった、伊藤あさぎさんの参加報告。宗貞氏の回想録と対応させながら読むと、面白さが倍増。ドワジー氏の一次予選の描写で、不覚にも(?)笑った。

佐藤淳一「研究論文:ルチアーノ・ベリオからサクソフォンへの注釈 - 或いは二つのセクエンツァから見るベリオとサクソフォーン」
:以前本ブログでも紹介したもの。佐藤淳一さんが洗足の大学院を卒業されるときに著した修士論文。レイアウトを始めとして一部変更が加えられているものの、内容的にはほぼ原本そのままであり、ベリオのに作品に突っ込んだ内容は、全てのサクソフォン奏者必見!である。

拙著「サクソフォン奏者:シガード・ラッシャーとその周辺の作品」
:今回の会報に、恐れ多くも記事を投稿させていただいた。編集会議で採択してくださった委員の皆様に、感謝申し上げる次第。内容は、「ラッシャーのバイオグラフィ」「ダール、ベンソン、笹森建英氏らとラッシャーの関わり」「年代順献呈作品リスト」「ラッシャーの録音」といったところになる。多くがブログ上に書いた記事を校閲して焼き直したものだが、バイオグラフィそのほかを書き下ろすなど、新しい部分も30%~40%ほどある。特に、日本人の作曲家である笹森建英氏が、ラッシャーに「"荒城の月"変奏曲」を献呈した経緯(お手紙でその様子を伺った)は、1961年の作曲以来、初出となる情報である。

有村純親「サクソフォーン特殊奏法講座(後編)」
:昨年の続き。循環呼吸、ダブルタンギング、微分音、重音と、それらのテクニックを使用する際に参照すべき資料のリスト。新しく知ったも資料もあった。

大栗司麻「『B→C』を終えて、そしてこれから… ~大石将紀インタヴュー~」
:「B→C」の直後にインタビューされたのだな。大石氏の、これまでの留学の様子、そしてこれからのビジョンについて、フランス留学仲間でもある大栗さんがインタビュー。「B→C」の作品の裏話や、パリ国立高等音楽院の様子などは、大変興味あるところであった。

宮崎真一「サクソフォンファミリーの隠された兄弟と新しい仲間 ~Cメロディサックスとソプリロ~」
:楽器研究家の宮崎氏による、Cメロディサックス、ソプリロサックスについてのエッセイ。今まで、これらのサクソフォンファミリーに関する資料は英語圏には氾濫していたが、日本人の感覚でかかれた記事を日本語で読めるのは貴重である。

ゆかり・ベルトッキ・浜田「これまでの音楽人生を振り返って」
:ご存知、サクソフォン奏者のセルジュ・ベルトッキ Serge Bertocchi氏の奥様による、エッセイ。ベルトッキ氏が日本人と結婚していたとは知らなかった。

有村純親「第27回サクソフォーンフェスティバル報告」
:おおー、Tsukuba Saxophone Quartetの写真が(小さいけど)載ってる!嬉しいなー。

上田卓「即興講座 坂田明 vs 平野公崇」
:昨年暮れのフェスで行われたあの衝撃的な対談を、ディクテーションしたもの。会場にいた人の誰もが、またあの対談を聞きたいとおもっただろうが、こういった形で再びあの内容を知ることができるのが嬉しい!

宮崎真一「サクソフォーンの源流を訪ねて 雲井雅人氏インタビュー」
:こちらも昨年暮れのフェスの関連。雲井氏が、所有するヴィンテージ楽器について、存分に語っている。単なるコレクションではなく、演奏できる楽器として整備を行い、その魅力を引き出しているところに雲井氏の凄さがある。現代のサクソフォンに対するメッセージも含めて、必見。

服部吉之「音大生によるサクソフォーン四重奏の夕べ2008報告」
:そういえば、聴きに行ったっけなあ。再度プログラムを見ながら、その時のことを思い出した。うん、がんばろ。

服部吉之「第5回サクソフォーン新人演奏会報告」
:そういえば、こっちも聴きに行きたいんだよなー。いつも何かしら予定が入って聴きにいけないのだが。

井上有記「岡山から音楽文化の発信を」
:岡山県にある、くらしき作陽大学のサクソフォン科の成り立ちや、チボリ・サクソフォーンフェスティバルについて。冨岡和男氏を軸として発展した岡山のサクソフォンの現在。

2008/07/18

Saxophone à la Française

ニコラ・プロスト Nicolas Prost氏は、フランスのサクソフォン奏者。演奏家としての顔のほかに、サクソフォンの研究家としての顔を持つのだが、この度、そのプロスト氏の研究成果が、書籍として発売された。

「Saxophone à la Française」というタイトルの、A5変形版の本。フランス語、全126ページ、20ユーロ。フランスにおけるサクソフォンを、主にクラシックの方面で、歴史・プレイヤー(インタビュー)・録音・作品などといった切り口から幅広く俯瞰したものである。

サクソフォンに関する事柄を体系的に、というよりも「資料によるエッセイ」といった趣で、ページをめくれば種々のデータが目に飛び込んでくる。日本においては、フランスのサクソフォン界の情報はかなりの量が輸入されているものだと感じていたのだが(楽譜、CD、帰国生)、この本を眺めてその考えが変わった。私たちは、フランスのサクソフォン界について、まだ未知の部分が多すぎなのだ。

・序論
・概要
・サクソフォンの黎明期
・サクソフォン・ルネッサンス期
・クラシカルな楽器としての確立
・フランスにおけるサクソフォンのブーム
・新しい表現を追い求める人たち
・現代のサクソフォン
・サクソフォン教育
・レパートリー
・フランスのサクソフォン奏者
・フランス風、とは?
・サクソフォンの他の側面
・コーダ
・付録

このような話の流れの中で、書籍中に付属している資料が、まさに圧巻である。参照すべき録音の列挙(タイトル+型番)、コンクールの入賞者リスト、国立音楽院サクソフォン科教授一覧、パリ国立高等音楽院卒業生リスト、オーケストラの中にサクソフォンが含まれている作品リスト、サクソフォンが含まれた管楽合奏曲リスト、そのほか。

ヴィブラートや音色フランスの管楽器文化から、プロスト氏自身が、「フランス風のサクソフォン」とは何ぞや?といったことを論じている部分も、注目だろう。また、プロスト氏の投げかけに対して、クロード・ドゥラングル、ジャン=マリー・ロンデックス、ダニエル・ケンジー、オーティス・マーフィーらがそれぞれの考えを述べている部分も、見ものである。「フランスのサクソフォン、と言われて、あなたが思い起こすものは何ですか?」という質問に、この大御所サクソフォニストたちが答えているのだ!

購入に関しては、ちょっと探せばいろんなところで売っているが、私はVandorenから買った。しかしこの本、日本語で書かれていたらなあ…いや、せめて英語だったら!そんなわけで、ほとんど詳しく読めていないのが残念。

2008/07/17

フェルドの作品を聴く

イィンドジフ・フェルド Jindřich Feldは、チェコの作曲家。プラハ音楽院で作曲を学び、母国に根ざした作曲活動を精力的に行った。1925年生まれで、2007年の7月死去、つまり昨年亡くなっていたということか。どこかでそんな情報を見た気もするが、すっかり忘れてしまっていた。

サクソフォンの世界とフェルドのつながりは、かなりに強いもので、特にユージン・ルソー Eugene Rousseau氏とのコラボレーションは有名である。1975年、ルソー氏の妻であるノルマ・ルソー Norma Rousseauが、チェコ語の研究生としてプラハの大学に入学した。ノルマは、当時よりサクソフォンのレパートリー開拓に余念の無かったルソーから、「面白い音楽…特に管楽器に関するものを見つけたら、録音を送ってくれないか」との依頼を受けていたのだという。その中で、チェコの作曲家の作品集をいくつか送ることになるのだが、そこに含まれていたのがフェルドの室内楽作品集だったのだ。ルソー氏はフェルドの音楽に大変興味を持ち、作品を委嘱したのである。

それまで、フェルドはサクソフォンのための作品を手がけたことがなかったそうだ。そんなわけで、あまり乗り気でなかったようなのだが(笑)、ルソー氏が自分の録音…もちろん、あのグラモフォンの協奏曲集も…をフェルドに送ったところ、インスピレーションを受け、最終的に委嘱を引き受けることになったのだということだ。

フェルドの作品で最も有名なのは、アルト・サクソフォンとピアノのための「ソナタ」ではないだろうか。ルソーに献呈され、ピアニストの服部真理子さんとともに、1991年日本において世界初演。それをきっかけとしたのだろう、デュオ服部の服部吉之先生が各所で取り上げ始めてからというもの、日本でのフェルド認知度が上がっている。服部先生は、Momonga Recordsから出ているCDにも「ソナタ」を吹き込んでいるし。

しかし実は、フェルドのサクソフォンのための処女作は「サクソフォン協奏曲」なのである。前述の委嘱により1980年に完成し、1982年、ニュルンベルグにおける第7回世界サクソフォン・コングレスにおいて初演されたもの。ルソーとの最初のコラボレーションが、この作品のなって結実したのだ。

1981年には、ソプラノサクソフォンとピアノのための「エレジー」を作曲。これはルソーの依頼ではなく、メイヤー・クップファーマン(どこかで名前を聞いたことがあると思ったら、コレジオQの録音で聴ける「ジャズ・エッセイ」の作曲家じゃないか!)の委嘱により作曲された。さらにフェルドは、四重奏のための作品も手がけている。「サクソフォン四重奏曲」がそれで、1982年に完成してデファイエ四重奏団に献呈されている。これら献呈がどういうった経緯で行われたのかは、大変興味あるところだ。

CDをご紹介しよう。まずおすすめは、ルソー氏によるフェルドのサクソフォン作品集「Eugene Rousseau performs music of Jindřich Feld(RIAX RICA-1004)」。代表曲アルトサクソフォンとピアノのための「ソナタ」のほか、オーボエ作品からの改作となるソプラノサクソフォンとピアノのための「ソナタ」、ソプラノサクソフォンとピアノのための「エレジー」、そして大曲「サクソフォン協奏曲」が収められている。RIAXのオンラインストアから購入可能なほか、たしかタワレコでも扱っている。

録音にややクセがあるものの、ルソーの演奏は見事としか言いようがない。特に「サクソフォン協奏曲」の演奏の充実さは特筆に価するもので、ヤナーチェク・フィルの熱演と相まって、資料的価値を超えた名演奏となっていると思う。金管がちょっとアレだが…。ルソーはソプラノ、アルト、テナーを持ち替えているが、最終楽章、フラジオ音域を大量に含むヴィルトゥオーゾ的なフレーズを、高いテンションで切り抜けている様子は、圧巻。

ところで、「ソナタ」に関しては個人的にこちらを強烈にオススメする。服部吉之先生と服部真理子さんのデュオ・アルバム「Embraceable You(Momonga Records MRCP-1004)」。技術的な完成度と、この曲の背景を感じさせる悲劇的バックグラウンドの同居、そしてサクソフォンのCDの中でも屈指の録音の良さが華を添える。そのほかのパスカルやガロワ=モンブランなどの収録曲目も、サクソフォン奏者としての模範たりえる演奏であり、フェルド作品以外の点でも素晴らしい。モモンガレコードから直接購入可能。

「サクソフォン四重奏曲」は、残念ながら現在入手可能な録音がない。かつてルデュー四重奏団のCalliope盤が存在したが、現在は廃盤となっている。デファイエ四重奏団がグラズノフ、シュミットとともにCrestレーベルに吹き込んだというウワサもある(このデファイエ四重奏団のCrest盤に関しては、世界中のコレクターから、果たして本当に発売されたのかどうか、という疑問が投げかけられているという)。大変パワーのある作品なので、ぜひ日本の四重奏団にも積極的に、できれば録音媒体となるような形で取り上げられてほしいところだ。

ここまでいろいろ聴いてみて面白いのは、ある特定のフレーズが、様々な作品に渡って引用されていること。例えばこの音形、鏡像形も含めて、「サクソフォン四重奏曲」第5楽章、「ソプラノサクソフォン・ソナタ」第3楽章、「サクソフォン協奏曲」第3楽章の、3つの作品に出現するのだ。作曲時期が近いこととも関係あるのだろうが、どの曲を聴いても有機的な発見があり、楽しい。

2008/07/16

たまにはテレビ

なーつーやすみはー、とってもーみじかいー。我が大学の夏休みは、7~8月。もう1/4終わってしまった。しかも、練習研究研究研究練習という感じで、まったく夏休めてない!

本ブログの熱心な読者(そんな方いらっしゃるのか) or 私の身の回りの方々ならご存知のことと思うが、私はテレビを観ない。正確に言えば、アパートの私の部屋にテレビがないのであって、観ようと思っても観ることができないのだ。大学に入学したときに、なんとなくテレビを買うのを後回しにしていたら、いつの間にかずるずると6年間もテレビ無し生活となってしまったのだ。4年の終わりに、友人からテレビを譲ってもらったのだが、それすらも押入れにしまいこんで、使っていない。

テレビが無い生活は、必然的に私を音楽鑑賞とインターネットへ向かわせた。その結果が、このブログの頻繁な更新なのである。だって、家にいても他にやることないのだもの。時間があるのは良いことで、いろんな音楽を聴く機会が増えるのも良いことで、結果的にテレビ無しは正解だったかなと思っている。

でも、たまにはテレビを観たくなることがあるもので。そういった放送予定に関しては、指を咥えてみているしかなかったのだ。芸術劇場とか、たまにとんでもなく面白い番組をやっていたりするのだがなあ。

最近、静岡のあかいけさんから、クラシック音楽系の番組を録画したDVDを何枚も送ってもらっている。地上波だけでなく、ハイビジョン系の録画も入れていただき、様々な番組を楽しんだ(ありがとうございます!)。サックス的興味からは外れるものが多いが、「クラシック倶楽部」とか、「ハイビジョン特集」「ハイビジョンスペシャル」…音楽番組のような、音質が命のソースであったら、ハイビジョンは格好のプラットフォームだ。

ヴァイオリンの神尾真由子さんの留学ドキュメンタリーは面白かったなあ。ドキュメンタリータッチだったりすると、ついつい時間を忘れて見入ってしまう。平野さんのバッハ・プロジェクトも送っていただいた。演奏の様子が目で見えると、面白いなあ。新鮮な感動がある。

2008/07/15

Ensemble Squillante

Ensemble Squillanteは、フランスで活動するサクソフォンのラージアンサンブル。いずれもパリ国立高等音楽院の卒業生であるFederico COCA GARCIA, Pascal BONNET, Julien CHATELLIER, Simon DIRICQ, Cédric CARCELES, Adrien LAJOUMARD, Géraud ETRILLARD, Hugo SCHMITT, Thomas BARTHELEMYというメンバーで構成され、おもに編曲物を中心に取り組んでいるようだ。

現在の詳しい活動実態はちょっとわからないが、彼らのMySpaceページからいくつかの音源を参照することができる。グリーグの「ホルベルク組曲」や、ブリテンの「シンプル・シンフォニー」の抜粋。どれもが非常に洗練された響きで、きっと中途半端なオリジナル作品よりもずっと難しいであろう楽曲が、見事に演奏されている。良く揃った音程や見事なタンギング、幅広いダイナミクスなど、さすがパリ・コンセルヴァトワールの学生、ってところだろうか。

サクソフォンのラージアンサンブルって、アマチュアの団体は数多いが、プロの団体ってずいぶん少ない。それぞれのスケジュールを合わせるのが大変そうだからなあ。そういった中にあって、今後も継続して活動していくことに期待。とりあえず、CDをレコーディングしていただけませんかね(笑)。

YouTube上やDaily Motion上にもムービーがいくつかアップされている。これはYouTubeのもので、コレルリの「コンチェルト・グロッソ第8番」からの抜粋。おおー、かっこいいですな。


(2008/7/25追記)

いつのまにやら公式ページ公式ブログができていた。びっくりー。

2008/07/13

YaS-375のコンサート@ドルチェ

蛹化の女→ラランさん→と続いた、コンサート巡礼最終日。ドルチェ楽器でのトリオの演奏会である。

【Trio YaS-375 1st Concert】
出演:山田忠臣、國末貞仁(以上sax)、小柳美奈子(pf)
日時:2008年7月13日(日曜)15:00~
場所:ドルチェ楽器管楽器アヴェニュー東京アーティストサロン
プログラム:
~第一部~
E.エルガー「愛のあいさつ」
A.ヴィヴァルディ「"忠実な羊飼い"よりソナタ第6番」
長生淳「天頂の恋」
F.フェラン「ソナティナ~パールサックス」
~第二部~
「見上げてごらん夜の星を」
「ハナミヅキ」
「蕾」
G.ビゼー「カルメン・セレクション」
P.サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」
~アンコール~
「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」
「川の流れのように」

客席には、プロのサクソフォン奏者からアマチュアまで、(知り合い or 一方的問わず)良く知った方がたくさん。意外とサックス吹きではない、一般のお客さんもいたような?大入りの会場は、相も変わらずのアーティストサロンの風景だった。

この団体名、YaS-375の由来は…まだだひとみなこ、なのだそうだ(笑)。ちょっとヤマハのサックスのモデル名にかけてみました、ということだそうだ。もう一つの案の、柳田貞男もいいと思ったんだけどなあ。

このデュオが他と決定的に違うのは、「誰もが聴いて楽しめるコンサート」を目指しているということ。それはプログラムを見ても明らかで、オリジナルがたったの2曲しかないのだ。そのほかの曲は、既存の曲をこのトリオのためにアレンジしたというもの。しかし、プログラムからは想像がつかない、かなり聴きごたえのあるコンサートだった。

エルガー、ヴィヴァルディはてっきり各人のソロかと思いきや、これらもサックス2本とピアノのためにアレンジされたもの。ヴィヴァルディは、ソプラノとバリトン、そしてピアノと、なかなか手の込んだ音運びが面白かった。曲の間には、おしゃべりを挟みながら。小柳さんの手なれたトーク(と、フォローと、時々ボケ)は、さすが。

オリジナルのうち、やはり圧巻は第一部最後のPARSAX!今度、私たちもEnsemble TXの演奏会で取り上げる予定だが、ここまでさらりと吹かれてしまうと、自己嫌悪に陥るばかりだ(笑)。第3楽章のジャズ風なファンキーなフレーズが、かっこ良かった。いやー、我々も練習しないと。

山田さんと國末さん、デュオを組むくらいだから、てっきり音楽性や音色が似ているのかな、と思っていたが、面白いくらいに似ていないのですね。楽器は同じヤマハだけれど、山田さんにいたってはヤナギサワのお家芸であるピンクゴールドかけちゃってるし。それぞれ良いところがあって、それぞれに個性があって、しかし同じ時間を共有していて。メンバーそれぞれが、本当にこのトリオを大切にしているのだろうなあ。

第二部は、良く知ったメロディ。「見上げてごらん夜の星を」を、小柳さんのピアノ独奏で聴いた後は、再びサックス2本とピアノで一青窈の「ハナミズキ」、コブクロの「蕾」。こういうのも、たまには良いですね。ビゼーとサラサーテは、かなり気合の入った重量級で、披露される見事なテクニックに会場が沸いていた。

ほぼ3連続の演奏会のハシゴだったが、それぞれ方向性は全く違うもののどれも素晴らしく、楽しく聴くことができた。かなりいい具合にお金がふっとんだけど(爆)。

2008/07/12

ラランさんのCD発売記念コンサート

【ジェローム・ララン サクソフォンサロンコンサート】
出演:ジェローム・ララン、原博巳(以上sax)、森あゆみ(cl)、棚田文則(pf)
日時:2008年7月12日(土曜)15:00~
場所:アクタス6Fアンナホール
プログラム:
~第一部~
C.ドビュッシー「ラプソディ Rapsodie」
M.ラヴェル「ソナチネ Sonatine」
鈴木純明「スフルスティック Souffle-Stick」
~第二部~
A.カプレ「秋の印象 Impressions d'automne」
村上暁子「Trace」
P.ルルー「SPP」
F.プーランク「トリオ」
~アンコール~
M.ブルッフ「夜の歌 Nachtgesang」
J.S.バッハ「2本のフルートと通奏低音のためのソナタ」

ジェローム・ララン Jérôme LaranさんがCafuaレーベルにて吹き込んだアルバム、「Impressions d'automne(CACG-0119)」がこの7月に発売されることを記念しての演奏会。棚田文則氏がフランスから一時帰国してピアノを弾き、さらに原博巳さんや奥様でクラリネット奏者の森あゆみさんも参加して、大変豪華な演奏会となった。

開場時間ぴったりにアクタスに到着し、入り口のドアを開けると、ラランさんが一階に!久々の再会を喜び、今日演奏されるドビュッシーのことや、アンサンブル・ケルンのことなどについて一言二言を交わす。日本語がめちゃくちゃ上手くなっていてびっくり!開演時間までの間に、IBCサックスのKさんや、YWOのmae-saxさんなどにお会いする。アクタスにコントラバスサックス入荷したんかい!とツッコミを入れながら、会場へ。

ドビュッシー「ラプソディ(スペシャル・ヴァージョン)」。エリザ・ホールに献呈された曲の自筆譜の多くは、ニュー・イングランド音楽院に保管されている、ということが知られている。ラランさんはその自筆譜のコピーから着想を得、新たにサクソフォンとピアノのための版を書きおこしたのだという。普段聴きなれているヴァンサン・ダヴィッドの版と違って、ピアノの音運びやサクソフォンの旋律線がかなりの具合で変更されており、興味深く聴いた。

ラランさんのサクソフォンは、相変わらずのストレスフリーな良くコントロールされた音色。どんな曲想にもピタリと当てはまるのは、いまさら言うまでもなし。テクニック的な面も含めて、ある種現代におけるサクソフォンの理想形を体現している。テナーの音を久々に聴いたなあ。もしかして、「Mixtion」以来?

そういえば、棚田氏のピアノは実演で聴くのは初めてだ。アンナホールに据えられているピアノって、必ずしもベストな状態であるとは言えないものだと思うのだが、冒頭の持続音(なぜピアノであんな持続音を出せるんだ?)から始まり、多彩な音色を駆使してオーケストラのような音世界を構築する手腕。細かいところが少々弾き飛ばされていたところも含めて、フレンチ・ピアニズムって、こういうものを言うのかな。

ドビュッシーの「ラプソディ」に重ねて、ラヴェルの「ソナチネ」をピアノでやる、というアイデアは、師匠であるドゥラングル教授のアルバム「A Saxophone for Lady」にも見られる。原博巳さんの解説にもあったが、自由奔放なドビュッシーと、職人的なラヴェル、その対比を色濃く感じることができた。

第一部最後は、原さんの独奏。先日のリサイタルで聴いたばかりの、「スフルスティック」の再演である。初めて聴いたときは演奏者である原さんの印象が強く残ったが、さすがに二度目に聴くと作品自体の面白さが浮かび上がってくる。終演後に楽譜を少し見せていただいたのだが、なんだかもの凄い量の要素が詰め込まれている濃い楽譜にびっくり。

休憩後は、ラランさんの「秋の印象」から。実はこの曲けっこう好きで、てっきりオリジナルなのかなあ、と思っていたのだが、ボルドー音楽院のサクソフォン・クラス教授であるファビエン・シュラキ Fabien Chouraki氏がトランスクライブしたものなのだということ。ちょっと薄めのヴィブラートを隅々までコントロールした、「秋の印象」と呼ぶにふさわしい演奏だった。ラランさんと、奥様の森あゆみさんのデュエットで、「Trace」。タイトルの意味するところは、「何かここにあったはずのものを捜し求めて追跡している」、というようなことなのだと。ラランさんはテナーサックスに持ち替え、サブトーンをも多用しながらクラリネットとおもに不安定な世界を繰り広げていた。

ルルーのSPPは、たしか先日開かれたジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールでも二次の選択曲となっていたな。まさにスペクトル楽派の方法論的作曲の極地!冒頭のパルスが徐々に展開され、頂点へ向けて幾度も加速する。ラランさんも本領発揮というところかな(笑)。この曲の演奏が、一番面白かったかもしれない。

最後は、ラランさんがソプラノ、原さんがテナーでプーランク。サクソフォンでプーランクのトリオをやる、というアイデアは、珍しくはないが、国内で演奏される場合はソプラノ+バリトン、フランスで演奏される場合はソプラノ+テナーが多いかな、という気がする。もう何度も聴いた曲だけれど、やっぱり素晴らしい作品だ。演奏も、アンサンブルの妙が感じられて楽しい。一緒に行った友人も、「SPP」とプーランクが良かったと言っていたっけ。

アンコールに、マックス・ブルッフの「Nachtgesang」とバッハ。「Nachtgesang」は、トリオ・サクシアーナのCDを意識したのだろうか?

楽しかったなあ。終演後は、即売会にならんでCDとポスターをゲット。サインも頂く。CDのメッセージが、「Pour Kuri_saxo, First Saxophone Blog in the World, Jerome」だって!笑

2008/07/11

蛹化の女(保坂一平×大石将紀×Others)

会場の門仲天井ホールは、清澄通りの一角にある雑居ビルの8階。古い建物で、足を踏み入れたとたんに、セミの声が聞こえてきて、しかも会場の座席が座布団やらなんやらで…タイムトリップしたかのような感覚を味わった。50席の会場が、満席。しかし、いったいどういう客層だったのだろう。おそらくサックス関連は10人もいないくらいだろうか。久々のアウェイ、って感じだ。

舞台は、大石さんが奏でるバリトン・サクソフォンの「無伴奏チェロ組曲」の一節から始まった。

ある時にむしであり、ある時におんなであった。
ある時に静物であり、ある時に動物であった。
ある時に影であり、ある時に実体であった。
ある時に老人の顔を見せ、ある時に子供の顔を見せる。
ある時に赤く染まり、ある時に白く佇む。
ある時に古典的に、そしてある時に即興的に。
ある時にやわらかく、またある時には鋭く。
ある時に暗く、ある時に眩しく、輝いて。

鮮烈な体験であった。人間の体は、こうもコントロール可能な…こんな領域に到達するのか!という驚きはほんの始まりに過ぎず、言語化不可能な空間が次から次へと繰り出される。

音響面では、国立音楽大学の音響デザイン科の卒業生の協力を得ていたそうだ。サクソフォンのインプロヴィゼイションのセクションでは、MAX/MSPのディレイやループバックを効果的に使用しながら、ある時は舞踏に寄り添うように、ある時はまったく異質な音を奏でていた。

最後、戸川純の歌に乗せて、舞台がだんだんと暗くなっていくときに、ふと涙している自分に気づく。どういう感情が沸き起こっていたのだろうか、それすらも良く分からなかったのだが。

言葉でまともに書き下すことができないが、素敵な舞台だった。うん、それだけは確実に言える。舞台をたくさん観れば(サックスの演奏会と同じように)言語化のノウハウが会得できるのかなあ。

ちなみに、つくばから連れて行った後輩のうち一人は、サックス関連の演奏会はトルヴェールに次いでこれが二度目なんだと!二度目にしては、かなり刺激が強すぎたんじゃなかろーか(笑)

それから、ちょっとした驚き。この舞台と同じ日に、代官山でThe 30th Anniversary of NYLON100%というイベントが開かれていた。1980年代前後のパンクやニューウェーブのアーティストが一堂に会したイベントであっただが、そのイベントに戸川純が出演し、アンコールで「蛹化の女」「パンク蛹化の女」を歌っていたのだそうだ!

偶然だったのか?それとも、そのイベントを見越してこの舞台を7/10に設定したのか?いずれにせよ、なかなか面白い一致ではある。

2008/07/10

高音サンジュレ

たくとんさんのブログのネタ。朝から声出して笑ってしまった。

http://takutonblog.livedoor.biz/archives/134046.html

そうか、ソプリロがあると、こんなことができるのか!って。なかなかアツいなー。低音サンジュレも、誰か録音してくれないかなー。

2008/07/09

IMSLPの復活

以前このブログでも紹介した、IMSLP(International Music Score Library Project)。青空文庫の楽譜版、しかも蔵書数が半端な数ではないということで、活気的なサービスに驚いたものだった。私も良く利用していたのだが、Universal Editionからの勧告を受け、数ヶ月にわたって事実上の閉鎖状態となっていたのだ。

しかし、このたびプロジェクトチームの必死の働きにより、再開となったようだ。嬉しい限りである。内容を改めて紹介するならば、作曲者の死後50年以上経った作品の楽譜で、版権が切れているものをスキャンし、PDFで公開しているというもの。バロック~古典派~ロマン派のほぼ全てと、近代までをも網羅している、おそらく世界最大規模の楽譜配布サイトだろう。内容も、オーケストラスコアから室内楽、独奏曲までと幅広く、面白い。

以前の記事にThunderさんがコメントしてくださったのだが、我々のような愛好家にとって有用であるだけでなく、作曲を学ぶ学生にとっても素晴らしいお手本のアーカイヴとなることだろう。いくつかの楽譜は、まだアクセス制限が掛かっているようだが、改善に向かっているものもあるとのこと。これからのIMSLPの発展に、ますます期待しよう。

2008/07/08

Michael Nyman Band on YouTube

か、かっこいい…。こんな動画があるとは知らなかった。

サクソフォンのトップを吹いているのは、ジョン・ハール John Harle氏、セカンドはサイモン・ハラーム Simon Haram氏かな(訂正:ディヴィッド・ローチ氏のようです)。一列後ろで、バリトンと時々ピッコロやフルートを吹いているのは、アンディ・フィンドン Andy Findon氏。いずれも、イギリスのサクソフォン界を代表する奏者である。

いくつか見つけたのだが、特にサクソフォンが大活躍する以下の四作品について貼っておこう。自分が目指すサクソフォンの音とはかけ離れているはずなのに、なんなんだ、このカッコよさは。あまりに凄くて、感動で泣けてきた…(T_T)

・Time Lapse
後半の、ハールの吼えっぷりが凄すぎ。フィンドンのアップも、メチャクチャカッコイイ。


・Water Dances: Stroking


・Wedding Tango


・AET (After Extra Time)

2008/07/07

サクソフォン音楽の165年

ロンデックスの著書の話ではなく、ニコラ・プロスト Nicolas Prost氏のウェブサイトの話。卓越した演奏家としての顔だけでなく、フランスにおけるサクソフォン史研究の筆頭というプロフィールをも持つプロスト氏。そんな彼が、サクソフォン音楽の歴史について、簡単にまとめたサイトというものが存在する。

サクソフォン史上の、作品リストやエピソードについてまとめたものというと、ウェブ上にもいくつか資料が存在するとは思うのだが、何といっても特筆すべきは、音源が試聴できること(!)。いくらテキストで書いたところで相手に伝えるには限界があるところで、たとえ曲の一部とは言えども、試聴できるだけで説得力は段違いだ。

http://saxiana.free.fr/165ans.htm

1ère période(黎明期)、2ème période(中興期)、3ème période(近現代)の3つのパートに分かれており、まず各リンクをクリックすると、「ダウンロードに時間がかかりますよ」の警告が出る。続けてcliquer ICI pour continuerをクリックすると、それぞれのページに飛ぶことができる。

例えば1ère périodeは、なんとベルリオーズの「神聖な歌」から始まっている!サクソフォンが編成に組み込まれた作品の中では、最初に作られたものと伝えられているが、はたしてどんな音がするか、というのは知らなかった。おお、バスサクソフォンがこんなに朗々とした旋律を奏でているんだ~、とか。1ère périodeだけ見ても、サン=サーンスの吹奏楽曲「東洋と西洋」とか、アイヴスの「交響曲第4番」とか、ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ第2番」とか、秘曲が多いですなー( ̄ー ̄)

2ème période、3ème périodeでも、ぜひご自分で聴いて面白い曲を見つけていただきたい!そう、こちらから紹介しなくても聴いて見つけていただくことができる、というのは、ちょっと今までにない形かも。なんて。

サクソフォンのソロ曲だけではなく、かなりの割合で室内楽やオーケストラ、吹奏楽も含まれており、サクソフォンがどんな音楽の中で使われてきたか、ということを、バランス良く知ることができる。このページを使用して、そのまま「サクソフォンの歴史」という講義ができそうだ。

2008/07/06

暑かった

四重奏の朝練習(ピエルネ)をした後に、あまスタでの、外本番。暑かったなあー。

もしかしたら、楽器人生の中で一番暑い中での本番だったかもしれない。

2008/07/05

「蛹化の女」って?

ちょっと何が出てくるのか良くわからない公演だが、楽しみだ。私は木曜日のほうに伺う予定。今となってはフランス帰りの奏者も増えてきたけれど、現地で学んだことを生かしながら、ここまでオリジナリティのある活動を展開しているプレイヤーは、大石将紀さんの他には見当たらない。

ふと思い出すのは、平野公崇さんのことだ。平野さんは帰国した直後から、フリーの即興演奏やパリの最新の作品へ積極的に取り組み、日本の聴衆へ大きな衝撃を与えた。平野さんと大石さん、取り組んでいる内容は違うけれど、未だ見たことのない音楽への畏怖の念は、その時の感覚に重なる。いまローバの「ジャングル」をやったところで、誰も驚かないでしょう。時代が変わったということだ。

【蛹化の女 femme insecte <東京の夏>音楽祭2008参加公演】
出演:保坂一平(dance)、大石将紀(sax)
美術監督:田中未央子
映像:KoS
日時:2008年7月10&11日(木曜&金曜)19:30開演(二回公演)
場所:門仲天井ホール
料金:前売り2500円、当日3000円
内容:戸川純の歌謡曲「蛹化の女」をもとにした舞踊、J.S.Bach、即興音楽、映像の融合作品
ピナ・バウシュ "Tanzfest 2008(ドイツ)"招待作品
問い合わせ:
http://www.m-oishi.com/
masanoriois@gmail.com

※両日とも、チケット完売だそうです。

戸川純というアーティストは良く知っているが、「蛹化の女」という曲は知らなかった。YouTube上で探したらすぐ見つかった(→こちら)。パッヘルベルのカノンをベースに構成した楽曲か。しかし、歌詞がすごい。「貴方を想いすぎて変わり果てた私の姿」を冬虫夏草に形容するとは、さすがというかなんというか、戸川純の発想のオリジナリティだ。パンクバージョンも良いですね。むしろ、単純にメロディに乗せるよりもシャウトしたほうが、歌詞の力が解放されるような気がする。

この楽曲を中心に、果たしてどういった音楽と舞踊が展開されるのか。

2008/07/04

ダール「協奏曲」の研究論文

数ヶ月前に買ってレビューし忘れていたもの。書籍のレビューが苦手なので、ついつい先送りにしてしまっていたのだった。ポール・コーエン Paul M. Cohen著「The Original 1949 Saxophone Concerto of Ingolf Dahl - A Historical and Comparative Analysis」。言わずと知れた名曲、インゴルフ・ダールの「サクソフォン協奏曲」について、1.歴史上のエピソードから 2.オリジナル版の楽譜と改訂版の楽譜を比較しながら、改訂遍歴を分析するものである。以前、ダールの「協奏曲」の改訂部分遍歴について翻訳し、こんな記事を書いたが、本論文が以前参照したドキュメントのフルバージョンということになる。

To the Fore Publishersから直接購入できる。内容は、以下の通り。

アブストラクト、序論
1. インゴルフ・ダールのバイオグラフィ
2. 「協奏曲」改訂遍歴
3. オリジナル版楽譜と改訂版楽譜の比較
4. 改訂に関する疑問
5. まとめ
付録:オリジナル版演奏リスト、プログラム冊子、出版譜に関するレビュー、バンドのための「シンフォニエッタ」に関するレクチャー

で、実際どんなことが書いてあるかというのは、ぜひ買ってみていただきたい。特に、30ページ以上が割かれた歴史上のバックグラウンド(2)と、オリジナル版の楽譜と出版譜の譜例をふんだんに使いながら、50ページに渡る比較(3)が、実に壮観である。オリジナル版楽譜は、どうやらコーエン自身が浄書したようで、手書きの楽譜に苦労の跡が見られる(初版は1985年なのだ!)。

それだけではあんまりなので、例を一つ。第1楽章、フランス風序曲のグラーヴェが重厚に始まったあと、サクソフォンが大見得を切る部分の最終部。オリジナル版と改訂版では、楽譜上ではこのような違いがあるのだ(クリックして拡大)。

音源を使用した聴き比べ用ページも作成したので、そちらでもご確認いただきたい。ラッシャーのほうは、なんと世界初演の録音。The Legendary Saxophonists Collectionからの抜粋。一つ一つ音を追ってみると、ややオリジナル版の楽譜と違う気もするが。

…そういえば、今年のフェスティバルは確か、吹奏楽とサクソフォンの共演、というようなメインプロであったはずだが、ダールのオリジナル版、やってくれないかなあ。

2008/07/03

面白い曲目解説

Ensemble TXの演奏会用パンフレットを製作中。プログラムリスト、曲目解説、出演者・スタッフリストなどの内容以外に、パンフレットのデザイン、レイアウトあたりまでは私の担当である。Tsukuba Saxophone Quartet - Saxophone Concertのときに作成したパンフレットのレイアウトを基にざくざくと構成してゆく。ちなみに、Microsoft Publisherなどを使用せずとも、Microsoft Wordで十分だ。

おおよその方針としては、表紙を含めて8ページ、ページあたりA5=見開きA4。A4用紙2枚を使用してホチキスで真ん中を留める感じだろうか。見開きページの集合写真撮らないとなー。

さて、パンフレットを製作する中で、やはり一番時間がかかるのは曲目解説。ある意味では、曲目解説なんてものは、実際にその曲を聴いたことがなくても、作曲者とタイトルと編成だけわかれば、なんとなく書けるものかなと思う。あ、もちろんサクソフォンの作品に限っての話だが。

なぜかと言うと、サクソフォンの世界には「A Comprehensive Guide to the Saxophone Repertoire」というロンデックス氏の著作があり、この目録を手繰るだけでたいていの情報が引っ張り出せるからである。楽曲や楽章ごとの名前を基に曲想を推測し、さらに作曲年代や献呈先の情報を基に作曲者周辺のエピソードなどを掻き集めれば、あら不思議、いちおう筋の通った曲目紹介を書くことができるのだ。

まあ、こうして書いた紹介は、たいていの場合あんまり面白くないものになってしまう。以前、阿吽の演奏会に提供したラクールの「Suite en duo」の楽曲解説…他所での仕事に忙殺されていたためか、今見返してもひどい…。そういえば、他の2曲はまだしも、ラクールに関してはずいぶんとやっつけ仕事をしてしまったのだなあ。

読んで面白い曲目解説とは、どういうものだろう。「面白い曲目解説」と言われて、私が真っ先に思い出す、雲井雅人氏の文。そして、サックス界の大御所を挙げるとするならば、上田卓氏、木幡一誠氏といったところ。さらに、トルヴェール周辺ならば、緒方英子氏、磯田健一郎氏。

ここで挙げた人は、それぞれタイプは違うけれど、きっと一貫していることは作品に対する思い入れの強さだろう。作曲者や作品に関する情報は、二の次。面白い曲目解説というものは、面白さを他人に伝える作業であるのだから、まずは自分がその作品に没入する必要があるのだ。そこまで出来たら、次は面白いところを見つける作業…作業というか、没入すれば自然と面白さは発見できるものではないかな。

例えば、先の阿吽の演奏会の曲目解説だったら、サンジュレはちょっと上手く書けたかなと思っているのだ。ここでは、サンジュレがベルギー人だったことに注目した。アドルフ・サックスとサンジュレが、同じ出身地を持つことが、私にとっては驚きだったのだ。その情報を皮切りとして、サクソフォンの黎明期のエピソードから、サンジュレとサクソフォン界との関わりを中心に話を展開した、ということになる。

そして、人を惹きつけるる文体。面白いところを発見するだけではもちろんだめで、自分のなかでいったん咀嚼して、自分の文章力を使ってアウトプットするのだ。これに関しては、まだまだ修行が足りない。

私も日々精進しようと思う。よーし、曲目解説書いてほしい方がいらっしゃいましたら、メール下さい(笑)。頑張って「面白い曲目解説」を目指して書こうと思います。

2008/07/02

Kenneth Tse plays Smith's Fantasia on YouTube

最近導入したのだが、Subversion + TortoiseSVNのコンビは最強ですな。チームでプロジェクトを進める場合は、tracも楽しい。まあ、それは置いておいて。

香港出身のサクソフォン奏者で、現在はアイオワ大学のサクソフォン科教授を務める、ケネス・チェ Kenneth Tse氏の演奏動画がYouTubeに上がっていた。ジェリー・ジュンキン氏指揮香港ウィンドフィルハーモニアとの共演で、クロード・T・スミス Claude Thomas Smithの「ファンタジア Fantasia」だ。以前こちらで紹介したものと同じだが、YouTubeで観られるのは有り難い。しかも、リンク先に飛んで「高画質で表示する」をクリックすれば、かなり美しい映像が観られる。

サクソフォンと吹奏楽のための作品でちょっと聴きやすい曲と言ったら、この「ファンタジア」はかなり筆頭に挙がってくるものだ。フラジオ音域の連発や跳躍など、かなり難しい曲のはずであるが、ここまで涼しい顔をして吹いてしまうのですなあ。最終部も、あまりにあっさり過ぎて、逆に笑えてしまうというか。しかも暗譜ですよ、暗譜!

チェ氏と須川さんとのデュエットCD、早く発売されないかなあ。

2008/07/01

アドルフ・サックスの生徒たち

今日の飲み会が21:00からだと思って出かけたら、実は21:30からだった。むー。ちょっと時間ができたので、ブログを更新。

アドルフ・サックスの生徒たち…生徒たち、というよりは課題曲かな。SaxAmEを見ていたら、アドルフ・サックスが教鞭をとっていた時代の資料があったのだ。課題曲と、プリミエ・プリを獲った卒業生の一覧。リンク先を見れば判るので、転載はしません。

http://www.saxame.org/topics/history/conservatoryparis.html

1857年、パリ・コンセルヴァトワールにはサクソフォン・クラスが開設され、サクソフォンのアドルフ・サックス Antoine Joseph (Adolphe) Saxが教授に就任した。アドルフは、優れた楽器職人であっただけでなく、プロフェッショナルなクラリネット奏者としての経歴を有しており、演奏指導においても高いスキルを持っていたことが伺える。

サクソフォン・クラスが開設されたは良いものの、いざ卒業試験の季節が巡ってきたときに問題が生じる。当時、サクソフォンのためのオリジナル作品が皆無だったのだ。頭を悩ませたアドルフは、同郷の作曲家に作品を委嘱することとなった。1858年に最初の卒業生であるRaymond DAINを送り出したのち、コンセルヴァトワールの財政難によりサクソフォン・クラスが閉鎖される1870年までの間、数々の作品が生まれたのである。

ここで作曲されたのが、ほかならぬサンジュレ、ドゥメルスマン、サヴァリ、ジュナンらの作品。特に、アドルフと同郷のヴァイオリニストであったサンジュレは、実に多くの試験用作品のために筆を執っている。例えば、「Solo de concert(試験用独奏曲)」という名前の作品だけでも、なんと9つもあるのだ!(笑)

面白いのは、アルトだけでない、ソプラノ、テナー、バリトンといった楽器が同列に扱われていること。この辺り、マルセル・ミュールとアドルフの、楽器に対する考えがの違い浮き彫りになるようで面白い。アドルフは、まさに木管楽器と金管楽器の中間色としてサクソフォンを発明した。そして、各音程の楽器に対して生徒を育て、オーケストラや吹奏楽のなかで専属奏者となるようにしたのではないだろうか。「アルトを吹けば、どの楽器にも対応できる」として、音楽学校での指導をアルト・サクソフォンに絞ったのは、ほかならぬミュールなのである。ミュールは、サクソフォンを独奏楽器として捉えていたのだ。

Interference…あれ?

アポロ・サクソフォン四重奏団のウィル・グレゴリー Will Gregoryが作曲した、ソプラノサクソフォンとシンセサイザーのための「Interference」。全体は10分間ほどの曲であるのだが、ここで演奏されているのは後半部。演奏は、アウレリア四重奏団のソプラノ・サクソフォン奏者としても有名なヨハン・ヴァン・デル・リンデン Johan van der Linden。

なのだが、あれ?なんでアコースティックなんだろう。しかし、これはこれで面白いですな。…それ以前に、なんなんだこの演出(笑)。



演奏の様子を、遠くから捉えた動画もあった。ただし、別の機会での演奏のようだ。