2008/05/31

Espoir Saxophone Orchestra 6th Ensemble Concert

サックス仲間のMJさん、ゆうぽんさん、とりさんが出演なさるとのことで、聴いてきた。エスポワール・サクソフォン・オーケストラのアンサンブルコンサート。定期演奏会とは別の、比較的内輪の?発表会とのことだ。

そういえば伺う前に新宿のタワレコ→ドルチェ楽器といういつもの巡礼コースへ。タワレコではThunderさんがブログで紹介されていた「ファイナル・アリス」と、mckenさんがブログで紹介されていたファブリス・モレティ氏の「スカラムーシュ」が入った盤をゲット。2枚買って3000円しないのだから…と言いながら買い続けていると、きっと知らぬ間にお金が底を尽きるぞ。ドルチェでは、先日演奏会を聴いてきたばかりの長澤範和さんにご挨拶することができた。ドルチェのサックスブース担当のTさんの先輩なのだ。ドルチェからは、バスで会場の角筈区民センターまで移動。

【Espoir Saxophone Orchestra 6th Ensemble Concer】
出演:エスポワール・サクソフォン・オーケストラのメンバー
日時:2008年5月31日(土)18:30開演
場所:角筈区民センター・ホール
プログラム:
G.ホルスト/R.ジェンセン - 組曲「惑星」より"木星"
織田英子 - 「東回りの風」より第1, 3楽章
G.ピエルネ - 民謡風ロンドの主題による序奏と変奏
Naoto/啼鵬 - White Candle
野村秀樹 - 「日本の四季」メドレー
~休憩~
S.バーバー/生野裕久 - 「思い出」より第1楽章
E.ボザ - アンダンテとスケルツォ
E.モリコーネ/中尾敦 - 「ニュー・シネマ・パラダイス」より
J.S.バッハ/栃尾克樹 - 「イタリア協奏曲」より第1, 3楽章
A.ピアソラ/中尾敦 - 五重奏のためのコンチェルト
~休憩~
P.ドゥリヴェラ - 「ニューヨーク組曲」より
J.B.サンジュレ - 「四重奏曲第一番」より第1楽章
D.マスランカ - 「マウンテン・ロード」より第6楽章
横内章次 - バラード・フォー・トルヴェール
中尾敦 - あした会えるあなたに

曲数も多かったが、まったく飽きずに聴くことができた。しっかし、本当に皆さんの上手いこと!MJさんやゆうぽんさんやとりさんは今さらだが、他の方も驚くほどに上手い方ばかりだ。普段つくばなどという田舎で演奏していると、周りにクラシック・サックスをやっている人なんていないから、そこそこ吹けるのかなあと思うこともあるのだが、頑張っているほかの団体を聴くと、まだまだだ!と大きな刺激になる。積極的に、いろいろを吸収していかなければいけないと思った。

そういえば、ウワサのGGさん作曲のバリトン多重奏…「おやつはチョコケーキ」「片足の騎士」に次ぐ新曲、「あした会えるあなたに」も、実に素敵な響きのする曲だった。いーなー、やってみたいけれど、バリトンはついぞ吹いていないので無理です。きっとダッパーさんが再演してくださるはず…(笑)。GGさんは、他にも数曲の編曲を手がけており、そちらも見事だった。

さーて、次は自分たちだ。がんばって練習しないと…。

マスコットキャラクター(?)のえすぽくん。かっ、かわいい(*´ω`*)

2008/05/30

Kenneth Tse plays Villa-Lobos on YouTube

2006年にスロヴェニアのリュブリャナで開かれた、世界サクソフォーン・コングレスの一幕。ザグレブ・サクソフォン四重奏団と、ケネス・チェ Kenneth Tse氏との共演で、ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ第5番」より"アリア"。

なんていうか、最初の一音の伸ばしで、これだけ空気を変えてしまうとは。この音色とフレージングとヴィブラートの理想形は真似できないです。ただひたすらに、美しい…。

世界サクソフォーン・コングレスの歴史

いやー、やっぱTarkusはカッコいいねー(唐突)。いつも聴いているのはライヴ盤なのだが、半年振りくらいにセッション盤を聴いて、プログレ熱が再燃中。さすがにAquatarkusはライヴ盤のほうがカッコよいと思うけど(笑)。

先日書いた記事の資料の参照先だが、Joe Murphy氏の公式ページから辿ることができる。左のメニューから、[Murphy]→[Research]と辿り、[Congress (WSC, NASA)]をクリックすると、Excelブック形式のファイルがダウンロードできる。WSCとNASAと書いてある通り、世界サクソフォーン・コングレス World Saxophone Congressだけでなく、北米サクソフォーン同盟 North American Saxophone Allianceのカンファレンスの歴史上のプログラムをすべて網羅した資料。

いちおう直接のリンクを貼っておく。
http://faculty.mansfield.edu/jmurphy/WSCSax.xls

ご覧の通りおよそ4500のプログラムについて、演奏者、作曲者、作品名、編成が記載されている。すごすぎ。1988年の川崎で開かれたコングレスについても、ばっちり。

2008/05/29

姜泰煥×高橋悠治×田中泯×斉藤徹(ブレス・パッセージ2008)

忘れないうちに、このインスピレーションを書き留めておかねばならない。

【ブレス・パッセージ2008~呼吸の流れ~】
出演:姜泰煥(sax)、高橋悠治(pf)、田中泯(dance)、斉藤徹(bass)
日時:2008年5月29日(木)19:00開演
場所:つくば市カピオホール
プログラム:即興

開演からおよそ45分間に渡る即興、そして15分の休憩を挟んでその後も45分ほどにわたる即興、という舞台。

各奏者の技巧レベルは、想像を絶する。サックスという楽器、ピアノという楽器、コントラバスという楽器の、例えばクラシックだったりジャズだったりで使用される用途の臨界点は、本日の舞台上では意味をなさない。例えば斉藤徹のベースは、アコースティック的な奏法から、かなりにパーカッシヴな奏法までをも駆使し、見事にコントラバスという楽器の地平線を描き出す。高橋悠治のピアノは、奏法こそ通常のものだけれど、クリスタルのような美しいタッチで、全体のカラーを支配していた。姜泰煥のサックスは、循環呼吸を多用し、おおよそ10分~15分にわたるセクションを息継ぎなしで吹ききるというもの。弦を発音媒体とする楽器に比べて、自己主張が強いと感じたのは私だけではないだろう。

即興は、近年見られるようなスタイリッシュなものとはまるで違う。各人がお互いを伺いつつも、方向性を取り込もうとしながら、時に周りを気にかけずに前進するという趣。田中泯のダンスは、ダンスというよりもむしろアクトといったほうが近いかもしれない。音に合わせようとするわけではなく、田中は田中で自らの世界を作り出しながら(擬態的な動きが多い)、音とぶつかる場所に生まれるものを探っているように見えた。

第1部は、姜泰煥の循環呼吸を利用した長大なフレーズに引き続いて斉藤徹が入場。何気なしに弓で弾き始めたコントラバスに、高橋悠治の"イス"が絡む。田中泯は意外なほどに前面に出てくることが少ない。ロングコートに身を包んで、じっと舞台後方を闊歩していた。ピーンと張り詰めたテンションの中、時に盛り上がりを見せ、時に静寂ともつかぬような瞬間が現れる。

休憩後、第2部は4人がいっせいに動き始めるが、およそ30分間の即興を総べるかと思える、炎のような怒涛のクライマックスを経て、姜泰煥が退場。そのまま、急速調のコーダに突入し、斉藤のベースと高橋のピアノが我が物顔でビートを打つ。そのどこまでも引き伸ばされ続けるコーダに、誇張ではなく鳥肌がたち、涙してしまった。コーダ2とも言うべき最後のセクションでは、ピアノとダンスがぼやけた応酬をし、末尾では高橋悠治のごく短いソロが奏でられた。

大きな拍手。そうだ、今日は姜泰煥のツアーの千秋楽だったのだった。この公演がつくば市で実現したというのは、驚き。しかも意外と客入りが良く(どういった客層だったのだろうか)、舞台も実に強烈なものであったのだから…。

これだけもの凄いものを聴いて(観て)しまったときに、果たしてクラシックやジャズの存在意義はどこにあるのだろう、と余計なことまで考えてしまう。完全即興という、内向きと外向きの極限の集中力を使用するジャンルにあっては、奏者・聴衆ともに、必然的にひとつ上の次元へいざなわれていくのだ。こういったものを聴いた後に、弛緩した音楽など聴けるはずもなく。今日は何も聴かずに静かに眠るとしよう。

(追記)

そういえば、サブタイトルに「変わらないもの、それは変わろうとする意思」とあった。即興にも明確なセクションがあることは容易に判るのだが、その次のセクションへと移り変わる意思の源泉は、どこに存在しているのだろうか。どのように発芽して、どのように伝播していくのだろうか。

基本的にはもちろん耳を使うことはもちろんなのだろうが、このレベルまで来ると、ある種のテレパシーのようなものが、流れを支配しているとさえ思えてしまうほどだ。

阿吽-壱-(長澤範和×蓼沼雅紀)

以前こちらのブログでもご案内したデュオ「阿吽」の演奏会。つくば市からはかなり遠い(電車をいくつも乗り継いで、1時間30分くらいかかる)のだが、大泉学園ゆめりあホールだなんて、およそ2年前にジェローム・ララン氏のあの伝説的なリサイタルを聴いた、まさにその現場ではないか!久々にホールの扉をくぐったのだが、(何故かはわからないが)なんだか感慨深かった。やや急傾斜の暖かく良い響きのするホール。この空間で、「Mixtion」が日本初演されたのだよなあ。あの曲を初めて聴いたときのインパクトを、久々に思い出してしまった。

【阿吽 -壱-】
出演:蓼沼雅紀、長澤範和(以上sax)、渡辺麻理(pf)
日時:2008年5月28日(水)開演19:00
場所:大泉学園ゆめりあホール
料金:一般2000円 高校生以下1500円(当日各500円増)
プログラム:
ルクレール「ソナタト長調」
ラクール「デュオのための組曲」
サンジュレ「デュオ・コンチェルタンテ」
~休憩~
松岡美弥子「brisa marina」
永嶋咲紀子「AEOLA」
江原大介「Coloring time」
~アンコール~
「熊蜂の飛行(!?)」

そもそもどういった経緯でこのデュオが結成されたのか、ということは、大変興味があることだが、蓼沼さんと長澤さんは出身校こそ違えど同年代ということもあるし、まあ元々のつながりが無いというほうがおかしいのだろうな。

阿吽、という言葉の通りの息の良くあったデュオで、一曲目のルクレールからすっと引き込まれた。もともと、かなりポリフォニックな書き方をしてあるアレンジだが、ホールの響きと相俟って、1+1が3にも4にもなるような音の拡がりと重なり。よくハモった和声が、あちらこちらを飛び交っていた。

お二人の音色の捉え方は、最近の傾向…基音を細めに作り、倍音レベルでハモらせる…とは違い、基音からしっかりと豊かな響きを構築していこうという意思を汲み取ることができる。こういう時代にあっては珍しいが、例えばそれはヴィブラートなどにも現れており、何気ない旋律の吹き方一つを聴いても素敵で、なんだか嬉しくなってしまった。

続くラクールも、集中力の高い佳演。4つの楽章から成っている作品なのだが、楽章ごとのカラーがヴィヴィッドに出現して、なかなか面白かった。第3楽章のフーガなんて、まるきりバッハの「トッカータとフーガ」のフーガ部分の主題そのままですね。第4楽章も、レント→コン・ブリオといった感じの、お約束。全体の音運びの難しさは、いかにもラクール。高難易度であるため、取り上げられることは少なそうだが、良い曲だなあ。ラクールで高まった集中力が、サンジュレの響きで一気に開放される。誰が聴いてもサンジュレと分かるようなお馴染みのサウンドに、ピアノと2本のサックスが奏でる喜びに満ちた旋律線。音楽を演奏する喜び&聴く喜び。

休憩を挟んで、3つの新作が披露された。すべて2本のサクソフォンとピアノのための作品で、どんなものが出てくるのか内心ドキドキだったが、意外にも(?)誰の耳にも優しい、美しい和声法や対位法、リズム遊びを駆使したものだった。特に、最後に演奏された江原大介さんの作品は、中間部にジャズ風のパンチの効いたセクションが配置されており、2ndの長澤さんパートがアルトからテナーに持ち替え、ブイブイ言わせていたのが印象的。江原さんの作品のみならず、どの作品も、再演されて然るべきかもしれない。

そうだ、ピアノの渡辺麻理さんもなかなか素敵だったことを付記しておこう。サンジュレでの、ピアノの発音構造は弦だ、というような、面白い音色に耳を惹かれた。委嘱作品も、これだけの新作があればこなすのは大変だとも思うのだが、果敢にこなしていたことには、もっと拍手を送るべきだろう。

終演後、思わぬ方に再会。というか、まあ良く考えてみれば納得なのだが、まさかこんなところで会うとは思っていなかった…というのは、お互いさま(笑)。

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今日の演奏会、蓼沼さんからの依頼でルクレール、ラクール、サンジュレの曲目解説を執筆させていただいた。修正しては送ることを何度か繰り返したのだが、最終校訂の反映が間に合わなかったのだ。こちらに最終校訂版を公開しておく。

Jean-Marie Leclair「Sonate en ut」
 バロック音楽の時代に活躍したフランスのヴァイオリニスト・作曲家のジャン=マリー・ルクレール Jean-Marie Leclair(1697 - 1764)は、そのヴァイオリンの腕前もさることながら、作曲家としてこの楽器のために80近い作品を書き、フランスにおけるヴァイオリン楽派の基礎を築いたと言われています。特に49作品に及ぶ通奏低音とソロのためのソナタは、その洒落た雰囲気から、現代でも取り上げる奏者が多いと聞きます。
 本日演奏される「ソナタト長調(Sonate en ut)」は、ルクレールが2挺のヴァイオリンのために作曲した、12曲のソナタのうちの1曲。この作品の明快で軽やかな響きに着目したフランスのサクソフォン奏者、ジャン=マリー・ロンデックス Jean-Marie Londeix(1932 - )によって編曲され、現在ではサクソフォン・デュオのための大切なレパートリーの一つとなっています。

Guy Lacour「Suite en duo」
 プロフェッショナルを目指すサクソフォン奏者の多くが、そのキャリアの初期に取り組むべき課題である「50のエチュード」と呼ばれる教本の存在を知る方も多いことでしょう。同エチュードの作曲者であるギィ・ラクール Guy Lacour(1932 - )は、プロのサクソフォン奏者としてキャリアをスタートさせ、独学で作曲を学んだという異色の経歴の持主。1952年、当時のクラシック・サクソフォンの世界最高学府、パリ国立高等音楽院のマルセル・ミュール Marcel Mule(1901 - 2001)のサクソフォン・クラスを、一等賞を得て卒業。その後師のミュール率いるサクソフォン四重奏団にテナーサクソフォン奏者として参加、そのほかベルリンフィル、パリ管弦楽団などの著名なオーケストラにサクソフォン奏者として招かれています。この経歴を辿るだけでも、ラクールは演奏家としての十分なキャリアを積み重ねていったと言えるでしょう。
 ところが、サクソフォニストとしての名声にもかかわらず、ラクール自身は作曲の専門家を目指していたようにも感じられます。1960年代から70年代にかけてサクソフォン協奏曲「ジャック・イベールを讃えて」や「サクソフォン四重奏曲」を手がけ、1992年には作曲に専念するため、演奏活動から引退したほどです。
 1971年に生まれた「二重奏のための組曲(Suite en duo)」は、サクソフォン奏者ジャック・メルツァー Jacques Melzer(1934 - 2006)とローランド・オードフロイ Roland Audefroy(1930 - )のために書かれました。当時ラクールは、メルツァー、オードフロイ、そしてジャン=マリー・ロンデックスとともにフランス・サクソフォンアンサンブルEnsemble saxophones de françaisというグループを結成しており、彼らの交友関係からこの作品が生まれたのであろうことは、容易に想像がつきます。曲は4つの楽章からなり、サクソフォン・デュオのほかオーボエやクラリネットでの演奏も想定されているそうです。

Jean-Baptiste Singelée「Duo concertant, op.55」
ジャン=バプティスト・サンジュレ Jean-Baptiste Singelée(1812 - 1875)は、19世紀ベルギーはブリュッセル生まれのヴァイオリニスト・作曲家。同じくベルギーの楽器職人、アドルフ・サックス Adolphe Sax(1814 - 1894)によって、このサクソフォンという楽器が誕生したのが1840年代と言われているくらいですから、サンジュレはサクソフォンのオリジナル作品を手がけた最初期の作曲家の一人ということになるでしょう。
1850年代、フランスのパリ音楽院にはサクソフォンを学ぶための世界で初めてのクラスが開設され、アドルフ・サックス自身がそのクラスの教授として招かれました。このサクソフォン・クラスの卒業試験課題曲の作曲を手がけていたのが、ほかならぬサンジュレだったのです。新参者の楽器のためのオリジナル作品がないことに頭を悩ませたアドルフ・サックスが、同郷の作曲家であるサンジュレに、試験のためのオリジナル作品を委嘱したであろうことは、想像に難くありません。サンジュレはその後もサクソフォンのために30近い作品を提供し、サクソフォン黎明期における発展の一翼を担ったと言われています。
「デュオ・コンチェルタント作品55(Duo concertant, op.55)」は1858年の所産。ソプラノ&アルトサクソフォンとピアノのために書かれた、3楽章形式の簡素な作品です。サンジュレと同じく、当時サクソフォンのためにオリジナル楽曲を提供した作曲家の一人、ジャン=ジョルジュ・カストネ Jean-Georges Kastner(1810 - 1867)に捧げられました。

2008/05/27

第1回世界サクソフォーンコングレスのプログラム

開催は1969年の12月、会場はシカゴ。実はこの1年後にも同じシカゴで第2回サクソフォーンコングレスがひらかれている。今でこそ規模が大きくなった世界サクソフォーンコングレスだが、第1回はこの程度の規模だったのだ。40年でのサクソフォン界の拡がりを実感できることだろう。元のデータは、J.Murphy氏の調査資料から引用させていただいた。

Jean-Marie Londeix:
Bauzin, Pierre-Philippe - Esquisse II
Charpentier, Jacques - Govambodi II
Dubois, Pierre-Max - Le Lievre et la Tortue
Koechlin, Charles - Etudes 2 & 3

そもそもコングレス開催の発案者はたしか、ロンデックス氏だった、という話を聞いたことがある。シャルパンティエの「ガバンボディ2」、デュボワの「ウサギとカメ」、ケックランの「練習曲」か。いったいどんな音がしていたんだろう。

Daniel Deffayet:
Boutry, Roger - Divertimento

デファイエ氏が選択したのが、ブートリーの「ディヴェルティメント」!このころから、お得意のレパートリーであったのだろう。

Chicago Saxophone Quartet (Horency, Dawson, Reilly, Kasprzyk):
Bottje, Will Gay - Quartet #1 for Saxophones
Pierne, Gabriel - Introduction et variations sur une ronde populaire
Rivier, Jean - Grave et Presto

開催地の地元で活躍していた四重奏団か。Bottjeの「四重奏曲第1番」が気になる。

Milwaukee Fine Arts Saxophone Quintet (Derosha, Ulichny, Aaron, Hibler):
Pierne, Paul - Trios Conversations
Foret, Selecien - Berceuse Celebre de Henri Reber
Clerisse, Robert - Introduction et Scherzo

うーん、聞いたことのない団体だ。アメリカのほうでは有名なのだろうか?

Paul Brodie:
Lantier, Pierre - Euskaldunak
Mather, Bruce - Elegy

ロンデックス氏とともに、コングレスの立ち上げに携わったのが、このブロディ氏。

Frederick Hemke:
Dahl, Ingolf - Concerto

Eugene Rousseau:
Heiden, Bernhard - Solo

Cecil Leeson:
Weinberger, Jaromir - Concerto

ヘムケ氏、ルソー氏、そしてリースン氏。確かに、当時のアメリカを代表するサクソフォン奏者が集結した、という感じだ。それぞれが、まさに十八番を携えて臨んだことが伺える。

2008/05/26

ピエルネ「序奏と変奏」の謎部分

ガブリエル・ピエルネ Gabriel Piernéの「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏 Introduction et variations sur une ronde populaire」をさらっている。いまさら言うまでもないほどの有名曲だし、CDなどで聴いた回数も多いのだが、合わせていても聴いていても、いつも違和感を感じる場所がある。

練習番号[13]と練習番号[17]は、短いインターミッションを挟んで同一形の変奏になっているのだが、その部分でなぜかバリトンパートの最初の二小節が、片方だけ歯抜けになっているのだ。練習番号[13]のほうはGのオクターヴ跳躍含めた3つの八分音符が見られるが、練習番号[17]のほうはその音符が3つ抜けているのだ。実際に聴いた印象だと、こんな感じ。同じ音形が出てきたときは、ちょっと物足りないと思いませんか。歯抜けの部分には実は音があり、出版準備のときにミスが起こったのではないか?と考えたわけ。

ということで、ディスク大賞を受賞したといわれるギャルド四重奏団の演奏(Gramophone L1033)を引っ張り出してきて聴いてみた。1936~7年くらいの録音で、ミュール、ロンビー、ローム、ショーヴェというメンバー。作曲が1936年(1930年説と1936年説と1937年説がある)、吹込みが1936~7年くらい、ピエルネが没したのが1937年の7月17日、Leducからの出版が1938年だから、作曲家と演奏家の間にかろうじてリンクがあっただろうという推測のもとに…である。

結果、やっぱり楽譜どおりでした(^^;ちょっと拍子抜け(笑)

ということで、この楽譜は出版のミスでもなんでもなく、ピエルネの意図がきちんと反映されたものである可能性が高い。そういうわけで、演奏に際しては特に他3パートの[13]と[17]のアーティキュレーションの違いをはっきり出す必要があるかな、と感じた。

しかし、作曲を1936年と仮定するならば、作曲からレコーディングの間には1年程度しかないな。作曲家と演奏家との間にお互いの意見を聞きあう機会がなかったとしたら…?つまり、晩年のピエルネがギャルド四重奏団の演奏を聴いておらず、初演時のミスに気づかなかったとしたら?うーん、まあその可能性もないわけではなく、考え始めたら結論が出なくなってしまいそうだ。なんとかして真実を確かめる術はないのだろうか。自筆譜を発掘すれば、少し手がかりになるのかなあ。自筆譜って、やはりLeduc社に保管されているのだろうか。

一度は結論を出したものの、考え始めてしまうと、やっぱり謎なままなのでした。むー。

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ところで、この記事を書くに際して、いろいろなピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」の音源をいくつか聴くこととなった。ギャルドQ、ミュールQ、デファイエQ、ドゥラングルQ(アドルフQ)、ルデューQ、アウレリアQ、フルモーQ、ディアステマQ、トルヴェールQである。

意外と持っていたんだーと思いながら、まるでお酒の飲み比べのように演奏を聴き比べていましたとさ。ハメを外していたり、天才的だったり、茶目っ気の塊だったり、キラキラしていたり、四重奏団によって本当に個性が出る曲なんだなー、と思う。私自身の刷り込みは、もちろんデファイエQの演奏なのだが、ギャルドQの余裕綽々な音楽にも改めて惹かれた。70年前の録音ということになるのか…すごいな。

2008/05/25

リバーダンス2008

リバーダンス2008年の来日公演、赤坂ACTでの昼の部を観てきた。1階中央からやや下手寄りの5列目か6列目くらいを連番で4席。下手のキメが目前で、コアなファン(=友人)すらも気に入ったほどである。

あーもう、相も変わらず楽しくて楽しくて、感動を表す言葉なんて必要ない。細かいことはいろいろあるけれど、構成、音楽、パフォーマンス、衣装、エフェクト、どれをとっても最高です。しかも(友人曰く)今日は客のノリが良かったらしく、エンディングでは一階席のほとんどがスタンディング・オヴェイションをダンサーに向けて浴びせるという熱狂。

うーん、また観たい!!

ただ、すでに噂になっているが、今回で来日が最後…となる可能性は高いのだろうか?もし本当なら残念なことだが、いつか外国へでも観に行く機会はあるだろう。

2008/05/24

テレビでフルモー

YWOのmaeさんから情報をいただいた。ありがとうございます!

本日24日(土)23:18~NHK BS-hiでベルリンフィルのジルヴェスターコンサート2007が放送されるそうだ。こちらの記事でも触れているが、展覧会の絵で、フルモー氏がサックスをふいているやつだ。

26日(月)20:00からは、NHK地上デジタル教育3chで水戸室内管のアルルの女の放送もあるとのこと。こちらもフルモー氏が映るはず。

2008/05/23

演奏会案内いくつか

久々の朝練習。6時起き→7時集合→8時10分まで。冬にアンサンブル関連で追い込まれたときは、毎日のようにやっていることもあるのだが、初夏の時期にやるのは初めてかも。当たり前だけれど、冬に比べて寝起きが良い。…明日も朝練習だΣ(`□`/)/

日頃よりお世話になっているサックス吹きの方々から、関連の演奏会の案内をいくつかいただいたので、ご紹介しておこう。

【サクソフォーン修士リサイタル】
出演:田村哲、石橋梓、伊藤あさぎ(以上sax)他
日時:2008年5月29日(木)開演18:00
場所:東京藝術大学第6ホール
料金:無料
プログラム:
・田村哲、辻田祐希(pf)
井元透馬「Fantaisie」、A.デザンクロ「プレリュード、カデンツとフィナーレ」
・石橋梓、長篠央子(pf)
J.ブラームス「クラリネットソナタ第2番」、J.リュエフ「ソナタ」
・伊藤あさぎ、外山啓介(pf)
T.エスケッシュ「リュット」、P.ヒンデミット「ヴィオラ・ソナタ」

【気ままに音楽会'08~日韓サクソフォーン作品の饗宴】
出演:田村真寛、田村哲、長澤範和、伊藤あさぎ(以上sax)他
日時:2008年6月6日(金)開場17:00 開演18:15
場所:東京音楽学校旧奏楽堂
料金:1500円(当日500円増)
プログラム:
岡本優一「晩鐘」、金眞慶「Space」、森田佳代子「In a Dream...?」、石海林「Redundant」、西田直嗣「輝く朝焼けの彼方に」、洪承希「十二夜」、趙アラ「Breath」、大久保友子「Distance」、井元透馬「Fantaisie」、李昭然「Spring Breeze」
問い合わせ:
tk_kimama08@yahoo.co.jp

一つ目は、修士課程の学生によるリサイタル。私は残念ながら行くことができない(同日のこちらの公演を聴きにいく)のだが、よく考えたら田村くんやあさぎさんの独奏って、マトモに聴いたことないぞ…ああ、そういえばあさぎさんはドゥラングル教授の公開レクチャーの時に「PCF」を聴いたのだった。

もう一つのほうは、作曲家の松下功氏門下の学生の新作発表会ということで、どちらかと言うと作曲界の催し物。が、なんとこの発表会の作品は、全てがサクソフォンのための作品(!)なのだそうだ。面白そうな作品があれば、しっかりと拾い出してこようと思っている。17:15分からは、レクチャー付。作曲者の文化的な背景がどのように作品に影響を及ぼすのか?といったような内容…だったような、そうではないような。チラシを見てみないとわからない。この日は研究室のゼミがあるので、レクチャーは聴けないし、演奏も途中で駆け込めれば御の字か。

【阿吽 -壱-】
出演:蓼沼雅紀、長澤範和(以上sax)、渡辺麻理(pf)
日時:2008年5月28日(水)開演19:00
場所:大泉学園ゆめりあホール
料金:一般2000円 高校生以下1500円(当日各500円増)
プログラム:
ルクレール「ソナタト長調」
サンジュレ「デュオ・コンチェルタンテ」
ラクール「デュオのための組曲」
江原大介「委嘱作品」
永嶋咲紀子「委嘱作品」
松岡美弥子「委嘱作品」

以前は宗貞氏くらいだったと思うのだが、最近デュオの演奏を聴く機会って増えているよなあ。はらさんとラランさんとか、塩安さんと平賀さんとか、山田忠臣さんと國末貞仁さんとか。レパートリーの拡充や、編成の認知といった点では、歓迎すべき傾向。今回の蓼沼さんと長澤さんのデュオでは、デュオの超スタンダードレパートリーと、新作を3つ披露するという試みがなされている。ラクールは聴いたことがないので興味津々、そのほか、委嘱作品はどんなものが出来上がってくるのだろうか。曲によっては、拾い上げてこよう。

2008/05/22

練習進行中

水曜日と木曜日は18~19時に研究室を退出し、21時まで練習場所にこもって曲をさらいまくる。クレリスとピエルネとフェランとトークとピアソラとフェルドハウス。あと何かあったっけ?

最近は、ピエルネとフェランとトークを中心に。特にトーク…これが非常にキツイ。このアルペジォの嵐は、ほとんど修行と言っても過言ではない。ピエルネは、どうしても頭の中にあるイメージに近付いていかない。フェランは第1楽章ばかりもう何時間もさらったが、未だ指定テンポに到達せず。

これに加えて、フェルドやらグラズノフやらが入ってくるわけか。ひえー(汗)。練習できるときにしておかないと、後で泣きをみるぞ…。

…ぼちぼち楽器を調整に出さないと、テナーの下の音が出なくなってきているようだ。

むー

kuri@大学の研究室。

Bフレッツの不具合のため、しばらく自分の部屋から更新できなくなりそうだ。困った。とりあえずNTTに連絡しないと…(そもそもVDSLモデムのLINK/ACTが消灯してるって…屋外の配線が切れているのかな?)。

追記:
なぜか復活。なんだったんだろう…。

2008/05/21

Vincent David「Berio - Boulez」

サックスのCDをポツポツ買っていると、たまに手放しで推薦したくなるアルバムが出てくる。久々にそんなアルバムに出会ったぞ、という感じだ。それが今回紹介するヴァンサン・ダヴィッド氏のアルバム「Berio - Boulez(aeon)」。

ダヴィッド氏は、現在のサクソフォン界で最高のヴィルトゥオーゾの一人と言われるほどの実力を持った奏者なのだが、日本での認知度はいまひとつ。まずは彼の経歴をおさらいすべく、ライナーノートのプロフィールを翻訳してみた。

ヴァンサン・ダヴィッド Vincent Davidは、1974年、フランス・パリ生まれのサクソフォン奏者。1996年にパリ国立高等音楽院のサクソフォン科を卒業し、続いて第三課程を修了した。1994年、第1回アドルフ・サックス国際コンクール(ディナン)で第1位に輝き、さらに、1995年のジュネーヴ国際音楽コンクールで第3位、1996年には第1回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールで第2位を受賞する。この頃から、アンサンブル・アンテルコンタンポラン Ensemble InterContemporain にサクソフォン奏者として呼ばれ、ピエール・ブーレーズ、ディヴィッド・ロバートソン、ジョナサン・ノット、ピーター・エオヴォスといった著名な指揮者と共演を重ねた。2001年にはブーレーズ「二重の影の対話」サクソフォン版の初演を果たした。また、ブルーノ・マントヴァーニがダヴィッドのために書いた「第3ラウンド」をTM+アンサンブルとともにaeonレーベルに録音するなど、作曲家とのコラボレーションも多い。
ヨーロッパやアジアで積極的にマスタークラスを行うなど、教育活動にも余念がない。レパートリーは現代音楽からトランス物まで広範。Quatuor Arcanes, Court-circuit, TM+ Ensembleといったアンサンブル団体での演奏、またピエリック・ペドロン、クリストフ・モニオ、ジャン=シャルル・リシャールとの共演など、活動は多岐に渡る。
現在はヴェルサイユ音楽院のサクソフォン科教授を務める。また、ビヨード出版の監修を行っている。


…というわけで、パリ国立高等音楽院のドゥラングルクラスを卒業したサクソフォン奏者である。これまでにリサイタルやコンクールなどで来日を果たしているのだが、まだ実演を聴く機会は訪れない。CDもほとんどなく、実際にどんな演奏をする奏者なのか、というのは、ずっとわからなかった。初めてダヴィッド氏の演奏をマトモに聴いたのは、このYouTubeのムービーによって、だ。

・ブーレーズ「二重の影の対話」サクソフォン版 2006年にスロヴェニアで行われたサクソフォン・コングレスにおけるライヴ演奏


これを聴いて、ぶっ飛んでしまったのだ。もともとはクラリネットに書かれた曲で、クラリネットで演奏するのも相当至難であるはずなのに、それをアルトサックスでやってしまっているのですよ!耳がついていけないほどの超々高速フレーズ、そのフレーズに当たり前のように組み込まれているフラジオ、技術に留まらない豊かな音楽性…。

その「二重の影の対話」が収録されたCDが発売されると知ったときは嬉しかったなあ。しかも、世界初録音となるルチアーノ・ベリオの「Chemins IV」と「Récit/Chemins VII」まで収録され、私が愛してやまないアントン・ヴェーベールンの室内楽曲「Quartett Op.22」で締めくくられているという…。個人的にはもちろん買いだったが、実際に聴いてみると予想以上に素晴らしく、まわりにオススメしたくなったという次第。全体のプログラムは、以下(タイトルはフランス語表記とした)。

Luciano BEIRIO - Chemins IV
Luciano BEIRIO - Cinq Duos
Pierre BOULEZ - Dialogue de l'ombre double
Luciano BERIO - Cinq Duos
Luciano BERIO - Récit/Chemins VII
Luciano BERIO - Quatre Duos
Anton WEBERN - Quatuor Op.22

サクソフォンの演奏はヴァンサン・ダヴィッド氏だが、弦楽オーケストラはRenaud Déjardin指揮Ensemble Quaerendo Invenietis。アーティスクック・ディレクターとして、ブール=ラ=レンヌ音楽院教授のエルワン・ファガン Erwan Fagant氏の名前もクレジットされている。

ベリオの「Chemins IV(シュマン)」「Récit(レシ)/Chemins VII」はそれぞれ、「Sequenza VIIa」「Sequenza IXb」の注釈として作曲された作品だ。聴きなれたセクエンツァが、いったいどういう意図で書かれているのか(和声構造、リズム、旋律線 etc...)ということをベリオ自身が弦楽オーケストラという形で再提示した作品ということになる。

ヴァンサン・ダヴィッド氏のソロは、もちろん技術的な制約を飛び越して、曲の音程的拡大と縮小を見事に再現した演奏だと感じた。タンギングの絶妙なニュアンスがかなり聴きものであるほか、音量の変化がかなりダイナミックで、かなりの熱演。実演での素晴らしさが想像できる演奏だ。生で聴いてみたいなあ。「Récit/Chemins VII」のほうは、かなりじっくり・ゆっくりと曲が開始されるが、徐々に興奮を帯びてくる様子が◎。ゲンダイオンガクが苦手な方でも、まるで協奏曲のように聴くことができるのではないかな。

かねてから楽しみにしていた「Dialogue de l'ombre double(二重の影の対話)」も、素晴らしい演奏だ。上のムービーで聴けるものよりも、ほんのわずかに遅い気がするが、聴き進めていけばそんなモヤモヤも吹っ飛んでしまう。クラリネットの地味な音色に比べて、サクソフォンは輝かしい音を振りまきながら疾走するが、ブーレーズ自身はどういった音楽を想定していたのだろうか。気になるところだ。ヴェーベルン「四重奏曲」は、MA EnsembleやEnsemble InterContemporainの演奏がセダンだとしたら、こちらはスポーツカーのような演奏。初めて聴き終えたときの爽快感といったらなかった。

大曲の間に挟まれているデュオは、ベリオの2艇のヴァイオリンのための「34のデュオ」を抜粋したものだそうだ。ヴァイオリンとサックス、サックス2本(アルトだったり、ソプラノだったり…)による演奏。分かりやすくてお洒落で様々なスタイルがあって、目の前に散りばめられた宝石の煌きを眺めるようだった。

iTunes Storeでも買えるようだが、もちろんCDとしてamazonなどでも取り扱っている。タワレコとかにはあるのかなあ。クラシック・サクソフォンのCDとしては久々のヒットなので、広く流通して欲しい。

カピオでの注目公演

いやー、いい天気だ。午前中は研究室にも行かず、洗濯・部屋の掃除と、さわやかに過ごしている。昼からはきちんと行かなければ…。

来週の木曜日、カピオホールで面白そうなライヴがある。つくば市在住の方は、ぜひどうぞ。内容は何が出てくるか良く分からないが、ジャズ、というか舞踏を交えた即興ということになるのかな?…っていうか、あの高橋悠治が出演するのですよ!まさかつくばで高橋悠治の演奏を聴く機会が訪れるとは。これは楽しみだ。

【ブレス・パッセージ2008~呼吸の流れ~】
出演:姜泰煥(sax)、高橋悠治(pf)、田中泯(dance)、斉藤徹(bass)、前田穣(artistic director)
日時:2008年5月29日(木)19:00開演
場所:つくば市カピオホール
料金:前売り3500円 当日4000円 学生2500円
問い合わせ:029-876-4252(芸術文化振興NPO準備委員会)

2008/05/20

Netherlands Saxophone Quartet on YouTube

オランダ語で書くと、Nederlands saxofoon kwartetかな。Dutch Saxophone Quartetでもよいのかな。1980年代ころに活躍していた、オランダのサクソフォン四重奏団であるが、まだ活動していたとは知らなかった。

クランポンのプレスティージュアルトを吹いているのは、エド・ボガード Ed Bogaard氏。そう言われてもピンと来ないかもしれないが、あのアルノ・ボーンカンプ Arno Bornkamp氏の師匠(!)なのである。ゴトコフスキー作品が収録されたBVHAASTのLPを持っているが、なかなかの熱演。

ロベール・クレリス「序奏とスケルツォ」と「セレナード・メランコリック」の演奏。


演奏後に、続けてインタビュー。オランダ語なので、何を言っているのかよくわからない。


インタビューの後半。


インタビュー後の演奏。ピエール・ヴェローヌ「"野獣園"よりマントヒヒ」。


ヴェローヌの「野獣園」って、もともとはピアノソロのための組曲。良い曲が揃っている割に、日本では"いるか"以外の演奏機会がないと思う(楽譜出版の関係か?)。いつか、演奏されない作品を抜粋して取り上げてみたいな。ちなみに、4uatreのアルバムに全部入ってます。

http://4uatre.free.fr/discographie/frdisque%20vellones.htm

(と、最後は話が逸れた)

2008/05/19

よく考えると

自分が曲をさらっている時間の60%~70%は、左手の薬指と小指が絡むフレーズに費やしていることがわかった。そこが上手く動けば、今より3倍速く譜読みが進むということになる。

以前から感じていたが、薬指と小指は、全く自分の思い通りに動かない。これはスケール練習の分量とか以前の、むしろ運動神経や脳のコントロール部分の発達の問題ではないのか(爆)。

2008/05/18

木下直人さんから(Jacques DeslogesのLP)

ジャック・デスロジェ Jacuques DESLOGESの名前は、木下直人さんからLPの復刻CD-Rを送っていただくまで恥ずかしながら知らなかった。改めて調べてみると、1970~1980年代のフランスを舞台にかなり活躍していた奏者であったようだ。

1954年に、パリ国立高等音楽院のマルセル・ミュールのクラスを一等賞を得て卒業(この年の課題曲がMarius Constant「Musique de concert」)。そのほか、室内楽、音楽史、和声、対位法のクラスでも一等賞を得ている。その後スコラ・カントルムで指揮法のディプロマ・コースに進んだ。1975年、ヴェルサイユ音楽院のサクソフォン科教授に就任、1982年からはフランス国家警察音楽隊のアシスタントコンダクターも務めていたそうだ。As.Sa.Fra.=フランスサクソフォン協会が出版した最初の会報の執筆者でもあったとか。へえぇ。

独奏者としてオーケストラとの共演、ソロリサイタルで活躍したほか、デスロジェ四重奏団 Quatuor de saxophones Jacques Deslogesを結成していたそうだ。たとえばあの秘曲中の秘曲、ジェラール・ガスティネル Gérard Gastinel作曲の「Gamma 415」は、この四重奏団に献呈されているのだそうだ!それは知らなかったなあ。デスロジェ四重奏団のメンバーは、以下の通り。ギャルドに所属していた奏者も散見されますな。

Jacques Desloges ジャック・デスロジェ, soprano sax
Michel Trousselet ミシェル・トゥルーセル, alto sax
Bernaud Beaufreton ベルナール・ボーフルトン, tenor sax
Michel Lepeve ミシェル・ルペーヴ, baritone sax

そのデスロジェの演奏が収められたLPである。editions français de musiqueというレーベルは、これはO.R.T.F.のお抱えレーベルということなのだろうか?表にデスロジェ四重奏団の演奏、そして裏にデスロジェのソロ録音(ケックランの練習曲)が収められている。ピアノを弾いているのは、アンヌ=マリー・デスロジェ Anne-Marie Desloges女史…ジャックの奥さんだろう。エコール・ノルマルを卒業したピアニスト、だそうだ。

[Face 1]
J.P.Beugniot - Piéces pour quatuor
C.Pichaureau - Rafflesia
R.Calmel - Rondo
[Face 2]
C.Koechlin - Études 1, 2, 3, 6, 8, 9, 10, 11, 13, 15

四重奏の作品は、和声やリズムこそ現代的であるものの、明らかに管楽器の扱いに長けたフレンチ・スクールの流れの中にあるもの。聴き始めると驚くが、フランス産の曲が好きな向きには、素直に受け入れられる響きだと思う。カルメルの「Rondo」は、「サクソフォン四重奏曲」の最終楽章なのだそうだ。全曲を聴いてみたいが、どこか録音している団体はあるのかな。デスロジェ四重奏団の演奏は、例えばギャルド四重奏団やデファイエ四重奏団などに比べると、全体のアンサンブルは比較的クールでスタイリッシュな印象を受ける。だが音色やヴィブラートは伝統的なフランス派のそれだ。

そして、デスロジェ演奏のケックランの「練習曲」。実はいままでこの曲をあまり好きになれなかった…「練習曲」という題名と、(ドゥラングル教授のVandoren盤の演奏の刷り込みによるのだが)「何を狙って書かれているか」が分かってしまう作品、というイメージから。だが、本盤のデスロジェの演奏はその先入観を払拭するものだった。

まるでデュクリュックかランティエあたりが書いたような、純粋にお洒落なフランス産の小品として聴くことができたのだ。速い曲、ゆったりな曲の構成は、なにかの組曲を聴いているようで、この曲がいかに音楽的に充実したものであるかが、良く分かる演奏なのだ。これは素敵だ。しばらくハマってしまいそうです。

2008/05/17

フルモー氏関連のいろいろ

ジャン=イヴ・フルモー Jean Yves Fourmeau氏と言えば、フランスを代表するサクソフォニストの一人だが、久々に公式ウェブサイトを訪れてみたところ、綺麗に整備されていた。アドレスも変わっているようだ。

http://jeanyves.fourmeau.free.fr/

トップページの左側のメニューから「site français」「english site」を選択すると各言語のページに飛ぶが、それぞれのページのトップにはフルモー氏の最新の参加アルバムが表示される。「Rendez-Vous(airophonic 80082)」とタイトルのドビュッシー、デュクリュック、フランクが入ったCDと、サイモン・ラトル指揮ベルリンフィルの演奏で、2007年ジルベスターコンサートのライヴCDにおいて、ムソルグスキー「展覧会の絵」の独奏者として参加したCD。「Rendez-Vous」は知っていたけれど、ベルリンフィルのライヴCDは知らなかったな(ここで買える)。実はフルモー氏、2006年から継続的にベルリンフィル専属のサックス奏者として招かれているようなのだ。

そういえば、10月にコンサートツアーがあるんだっけ、と思い出して、チラシを引っ張り出してきた。フルモー氏の生の音を聴いたことがないので、行こうと思っている。まだチケット買っていないなあ(早く買わなきゃ)。

【ジャン=イヴ・フルモー サクソフォンリサイタル ジャパンツアー2008 東京公演】
出演:ジャン=イヴ・フルモー(sax)、羽石道代(pf)、大森義基、波多江史朗、小森伸二、井上麻子、有村純親、塩安真衣子、栄村正吾、松井宏幸、國末貞仁、福井健太、平賀美樹(以上sax)
日時:2008年10月31日(金曜)19:00開演
場所:第一生命ホール
入場料:S席4000円、A席3000円(当日は各500円増)
プログラム:
Claude PASCAL - Sonatine
Maurice RAVEL - Sonatine
Fernande DECRUCK - Sonate en ut#
Alfred DESENCLOS - Prelude, cadence et finale
Georg Friedrich HÄNDEL - Arrivée de la reine de sabbat
Alessandro MARCELLO - Concerto
Jérôme NAULAIS - Atout Sax
Jacques IBERT - Concertino da camera
問い合わせ:
有限会社デュオジャパン(03-5428-0571)
ヤマハ株式会社(03-5488-1684)
チケット:
電子チケットぴあ(0570-02-9999)

上の内容とはあまり関係ないけれど、フルモー氏が年の初めに水戸室内管弦楽団のニューイヤーコンサートへと招かれたときの映像(のキャプチャ)。記事を書きながら観なおしていたが、キラキラした音が満ちて、実に良いですねえ。BSハイビジョンで放映された映像で、ウチにはテレビがないのでリアルタイムでは観られなかったのだが、ありがたい事にアマチュアサック吹きのあかいけさんから頂戴することができた。

2008/05/16

興味の対象

ブログの右上のプロフィール欄にも、ウェブページkuri_saxoプロフィールページにも書いてあるとおり、現在の「サクソフォンの歴史的録音」「現代音楽におけるサクソフォンの位置づけ」「シガード・ラッシャー」の3点である。以前はイギリスのクラシック・サクソフォンの調査にいそしんでいた時期もあったのだが、最近はややパワーダウン気味、というか他の3点に注力している中で、時間の割り振り方が変わってきたとでも言おうか。

特に、最初の2つ「サクソフォンの歴史的録音」「現代音楽におけるサクソフォンの位置づけ」は、私がこの先に渡って調査を行っていくべき2大柱だ。この2つは見方によっては相反するものであるが、同時に俯瞰していくことにより、やや突っ込んだ捉え方をすることができているのかな、と考えている。

・サクソフォンの歴史的録音

これに関しては、木下直人さんやAndy Jackson氏、そして知り合ったアマチュアのサクソフォン奏者の方々などからの音源提供により所蔵資料が揃ってきた。ありがたいことだ。特に木下直人さんから頂戴したものに関しては、(木下さんからの強い希望もあり)積極的に価値がわかる方への配布を行っていかなければいけない。

中高生~大学生でサクソフォンに取り組んでいる方の中で、デファイエを聴いたことのある方は何人いるだろう…もっと言えば、今年の管打を受ける人のうち、デファイエ演奏のリュエフ「ソナタ」を聴いたことのある人は、何人いるのだろう!聴いたからって、別に良い成績が残せるわけじゃないけれど、それとは別に大切なものがあるのではないかなあと思う今日この頃。いちアマチュアの戯言ですが。

・現代音楽におけるサクソフォンの位置づけ

高校3年のときに棚田文則「Mysterious Morning III」にハマって以来だから、かれこれ6年になるのか。我ながら長いな~。最近でこそ国内の演奏会でライヴエレクトロニクスやパリ周辺の最新作が取り上げられるなど、状況は変わりつつあるが、もっと大きくレパートリーが転換しても良いと思うのだ。フェスティバルや、一部の奏者の演奏会で取り上げられるだけでなく、さらに広範囲で積極的に取り上げられることが必要かと。もちろん、最新作ばかりではダメで、伝統的なものを含めてバランスよく取り組んでいくことが必要。

話は逸れるが、伝統的なフレンチ・スクールのレパートリーに縛られているサクソフォンの中途半端な教育システムが問題かもしれない。フランスのコンセルヴァトワールで学んでいる生徒の中には、13歳でサクソフォンとミュージック・コンクレートのための作品をCDへ吹き込んでしまう、という例もあるくらいだ。…これに関しては、きちんと考察しなおしてみようかな。

・シガード・ラッシャー

おかげさまで、この4月でいったん区切りをつけることができた。外部に向けて具体的な成果を表すことができるのは、6月か7月頃かな。というわけで、4月以降シガード・ラッシャーに関する調査はいったん停止しているが、最近もPaul Cohenのダール「協奏曲」に関する論文(これがけっこう面白い)を入手するなど、資料の収集は継続中。ラッシャーは、後を継ぐ奏者がいるにも関わらず、そちらにはどうもラッシャー本人ほどの調査の魅力を感じないのだよな。不思議。

次はどこを探索してみようかなー。イギリスのサックスに戻るのも面白そうだし、ミュール以前のサクソフォンというのも面白そうだ。

2008/05/15

原博巳氏のリサイタル情報

私がここでお知らせするまでもないが、いよいよひと月ちょっと先まで近づいてきたので書いておこう。来月20日、原博巳さんのリサイタル@浜離宮朝日ホール。個人的には、2008年日本サックス界の最も注目すべき公演の一つ。演奏曲目は、同時代の邦人作曲家の作品と、ミュールが活躍していた頃のフランス作品を組み合わせるというもの。このプログラムから、原さんがこのリサイタルで目指しているものがうっすらと見えてくる気がする。

何はともあれ、とても楽しみだ。なんて言ったって、原さんのデュクリュックですよ!このCD「PCF(Cafua)」に入っているデュクリュックがあまりに素晴らしかったので…。リサイタルで聴く機会が訪れるとは、嬉しいことこの上ない。

【原博巳サクソフォンリサイタル】
出演:原博巳(sax)、野原みどり(pf)
日時:2008年6月20日 19:00開演
場所:浜離宮朝日ホール
入場料:一般3500円 学生3000円(当日は各500円増し)
プログラム:
鈴木純明「スラップスティック」
金子仁美「気泡」
西田直嗣「秋のアノフェレス」
C.ケックラン「練習曲より」
P.モーリス「プロヴァンスの風景」
F.デュクリュック「ソナタ嬰ハ調」
問い合わせ:
インターミューズ・トーキョウ(03-3475-6870)
チケット取り扱い:
朝日ホールチケットセンター(03-3267-9990)
インターミューズ・トーキョウ(03-3475-6870)
チケットぴあ(0570-02-9999(Pコード 278-073))

2008/05/14

クロード・ドゥラングルの生徒たち(その7)

[2007]
新作課題曲:
Frédéric Durieux - Gradiva
Tres bien:
Hugo Schmitt, Naomi Shirai

課題曲は、ソプラノサクソフォンのための無伴奏作品。さて、この年の卒業生である白井奈緒美さんに関しては、詳しい経歴を知らないのだが、くらしき作陽の出身だそうだ(あかいけさん、情報ありがとうございます!)。シュトックハウゼンの「誘拐」あたりの、生の演奏を聴いてみたいなー。Hugo Schmittは、Ensemble Squillanteのメンバー。

[2008]
新作課題曲:
Martin Matalon - Trame Ia
Frédéric Durieux - Übersicht
Tres bien:
Pascal Bonnet, Julien Chatelier
Bien:
Clément Himbert

マルタン・マタロンの「Trame Ia」は、ソプラノサクソフォンと指揮者付の小アンサンブル(バソン、ホルン、トランペット、コントラバス、パーカッション)のための作品。昨年に引き続いてFrédéric Durieuxが作曲した作品は、「Übersicht」というバリトンサクソフォン独奏のための現代作品。

審査員全員一致のTres bienを獲得したPascal Bonnet、そしてJulien Chatelierは、第4回アドルフ・サックス国際コンクールでの入賞歴がある。本選では二人ともティエリー・エスケシュの「暗闇の歌」を演奏していたっけ。また、ともにEnsemble Squillanteのメンバーである。Clément HimbertについてはUFAM国際音楽コンクール等での入賞歴を発見した。

2008年(2007 - 2008シーズン)の卒業試験は2008/5/31に行われました。課題曲・結果等については、李早恵さんとミーハ・ロギーナ氏のご好意により教えていただきました。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

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…というわけで、7回に渡ってパリ国立高等音楽院、クロード・ドゥラングル教授率いるサクソフォン科の卒業生について、駆け足で見てきた。なんとか終わらせることができて良かった(実は他の記事に比べて、意外と手間がかかった)。Thunderさんがまとめた「マルセル・ミュールの生徒たち」の現代版ということでなんとなく始めてみたのだが、終わってみれば初めて知ることもあって、自らの糧にもなった。何か感想あったらコメントいただければ幸いです。

今度は「ダニエル・デファイエの生徒たち」をやってみたいが、たぶん今回とは比べ物にならない程のイバラの道だろう。リクエストがあればやるかも…。

元のデータの出典は、今年出版になったばかりのニコラ・プロスト著「Saxophone à la française」。フランスのサクソフォン界の歴史について125ページに渡ってまとめられた、なかなか読み応えのある本である。とは言っても、私はフランス語を全くと言って良いほど読めないので、データを参照するに留まっているのだが…。以前から詳細を知りたいと思っていた、パリ・コンセルヴァトワールのサクソフォン科の歴史がテーブルとして記されており、一連の記事執筆を開始する原動力となった。併せて、フランスの各音楽院(CNSMDP, CRR, CRD)のサクソフォン科教授の2007年現在のリストも載っており、卒業生が現在教職に就いている場合の調査の助けにもなった。

もう一つの参考資料は、Nonaka Saxophone Friends Vol.21の白井奈緒美さんのレポート。「ドゥラングル教授・パリ音楽院サクソフォン科と作曲家との交流を得て」と題された記事で、新作課題曲の各年度ごとの詳細が記されている。例えば「年度ごとの作品の委嘱者が誰か」「出版社はどこか」といった情報がありがたい。最後の一文「そして私たちは、直接作曲家にレッスンを受け、作品を演奏することができます」…当たり前のことだが、ちょっとうらやましいな。パリで活躍中の作曲家渾身の最新作に取り組み、ドゥラングル教授と作曲家にレッスンを受けて、卒業試験で演奏を披露することができるとは!

コンセルヴァトワールのサックス科の歴史は、それ自体がクラシック・サクソフォンの歴史と直接にリンクするものだ。このような資料を読み解いていくことが、サクソフォンの過去を理解し、未来を予期するきっかけとなれば良いと思っている。

2008/05/13

クロード・ドゥラングルの生徒たち(その6)

[2004]
新作課題曲:
Bertrand Dubedout - Ça commence, ça va commencer
Tres bien:
Cécile Petit, Antonin Serviére
Bien:
Samuel Maingaud

課題曲は、声とサクソフォンのための作品なのだそうだ。United Music Pub.から出版されているようで、Music Roomなどで普通に買えるのには驚いた。どんな作品であるかは良く分からないが、もしかしたら、ドゥラングル教授の次のアルバムにも収録されている…かもしれない。期待して待ちましょう。

Cécile Petitは、UFAM国際音楽コンクールでの入賞暦を見つけた。Samuel Maingaudは、ジャズの分野でも活躍しているようだ。YouTubeに演奏動画がある(→こちら)。特に、このムービーがなかなかカッコ良いなあ(*´ω`*)

[2005]
新作課題曲:
Ichiro Nadaira - Dashu no Sho
Tres bien:
Cédric Carceles, Thomas Gobert, Masanori Oishi
Bien:
Frantz Gandubert

野平一郎氏の「舵手の書」だ!吉岡実の詩をもとに、メゾ・ソプラノとサクソフォンのために書かれた稀代の傑作。2007年のジェローム・ララン氏による日本初演、そして今年2008年3月の大石将紀さんのB→Cリサイタルにて拝聴。ララン氏曰く、「Very very difficult」とのことだが、ぜひ広く演奏されるようになって欲しい。

というわけで、大石将紀さんが卒業したのはこの年。サクソフォン科の卒業は2005年であるが、さらに第3課程室内楽科での研鑽を続けたため、パリ音楽院を卒業したのは2007年ということになる。この4月より帰国、これからも、フランスと日本をまたにかけて益々の活躍が期待される!最近、公式ページの整備が完了したそうだ(B→Cのライヴ録音も一部参照できるなど、充実のコンテンツ)。「蛹化の女」も観に行こうっと。

Cédric Carcelesは、Quatuor de saxophones Axoneのテナーサクソフォン奏者。Thomas GobertとFrantz Gandubertは、ともにQuatuor de saxophones Ôsmoseの現メンバー。

[2006]
新作課題曲:
Michael Levinas - Incurver
Tres Bien:
Miha Rogina, Sumichika Arimura, Federico Coca Garcia

この年、有村純親さんがサクソフォン科を卒業している。2006年のサクシアーナ国際コンクール最高位入賞は、ビッグニュースだったなあ。現在はQuatuor Bのテナー奏者を務めるほか、昭和音楽大学の講師として後進の指導に当たっている。モアレサクソフォンアンサンブルの演奏会でお知り合いになり、個人的にいろいろお世話になっている。フェスでは、いろいろご迷惑をかけました(笑)。

スロヴェニア出身のサクソフォン奏者、ミーハ・ロギーナ Miha Rogina氏。2007年暮れのサクソフォーン・フェスティバルで、ピアノの李早恵さんとともにハチャトゥリアンの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏し、その圧倒的な音楽性とテクニックによって、会場にいた多くの観客の度肝を抜いた。いつの間にか日本のサクソフォンのレベルって、世界レベルから置いてけぼりを食らっているのではないかと、危惧するほどのインパクトであった。

アドルフ・サックス国際コンクール(パリ)、第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクール、UFAM国際コンクール、サクシアーナ国際コンクールなどに入賞。ごく最近でも、"Duo Kalypso"として、FNAPEC国際コンクール、カルロ・ソリヴァ国際コンクールに入賞するなど、ちょっと恐ろしいほどのレベルだ。次代のサクソフォンを担う一人になることは間違いないだろう。

Federico Coca Garciaは、クラス初めてのスペイン人。マドリッド音楽院を卒業後、リヨン音楽院でジャン=ドゥニ・ミシャ氏に師事。そして、19歳のときにパリ国立高等音楽院に入学したそうだ。ギャップ国際コンクール、キエフ国際コンクール等に入賞している。Adolphesax.com上に、彼についての記事があった(→こちら)。そういえば、高校のときに「Misterious Morning III」を聴くのにハマって、インターネット上で公開されている音源を探索したときに、唯一見つけたのがFederico Coca Garciaの演奏だったような。

次回、最終回です。

2008/05/12

NSF Vol.24

ノナカ・サクソフォン・フレンズ最新号(Vol.24)。忘れたころにアップさる、とはまさにこのことで。

http://www.nonaka.com/nsf/magazine.html

今回は、Vandorenの技術者インタビュー、サクソフォーン・フェスティバルレポート、ロンデックス/アドルフ・サックス(パリ)国際コンクールレポート、ブラススタイルメンバーへのインタビュー、などなど。…石川恵美さん、ずいぶん印象が変わったなあ(笑)。

2008/05/11

クロード・ドゥラングルの生徒たち(その5)

[2001]
新作課題曲:
Jummei Suzuki - Embellie
Tres bien:
Frédéric Gastard, Olivier Besson
Bien:
Julien Petit, Gurvan Peron
Assez bien:
Ronan Baudry, Martijne van Dijk

鈴木純明氏の「凧(Embellie)」は、ソプラノサクソフォンと四重奏のための作品。2007年、ドゥラングル教授と4人の日本人奏者(敬称略:平野公崇、波多江史朗、井上麻子、有村純親)によって日本初演されたが、テンポや音程の独特な捉え方からは、邦楽を思い起こさせるものがあった。

Gurvan PeronとMartijne van DijkはQuatuor de saxophones Axoneのメンバー。2003年卒業のGéraud Etrillard、2005年卒業のCédric Carcelesとともに、同四重奏団を結成し、室内楽科第3過程を修了。このCD「Through(CREC-audio 06/048)」を聴く限り、とにかくアンサンブルとして素晴らしい団体で、今後ハバネラQを脅かす存在になるのでは…と期待している。以前レビューを書いた

あとは、やはりJulien Petitか。ボルドー音楽院のJacques Netのクラスを卒業後、パリ国立高等音楽院に入学。シュトックハウゼン作品の演奏分野において、大変評価が高い。彼が録音したシュトックハウゼンの作品集「Saxophon(Stockhausen 78)」は、個人的にかなりの名盤だと思っている。また、Julien Petitは、Ronan BaudryらとともにQuatuor de Saxophones Carré Mêléを結成している。

[2002]
新作課題曲:
Pierre Jodlowski - Mixtion
Tres bien:
Jérôme Laran, Nicolas Chapeland

出ましたー!ジョドロフスキの「Mixtion」(興奮ぎみ)!こういう曲が、伝統あるパリ音楽院の卒業試験曲になるって、凄いことだと思う。「Mixtion」に関しては、今までもこことかここに書いてきた。…日本で演奏された機会は、全て逃さず聴いている。
2006年7月:ジェローム・ララン氏の来日リサイタル(→こちら
2007年11月:ドゥラングル教授のサクソフォン・ライヴ(→こちら
2007年12月:フェスティバルコンサートにて、井上麻子さん演奏(→こちら

「Mixtion」はこの年の卒業生の一人、Jérôme Laran氏のアルバム「Paysages lointains(CREC-audio)」に収録されている。このアルバムは、同校の第3課程を修了すると、メイヤー財団から援助があって製作されるディスクで、ララン氏のほかにも例えばヴァンサン・ダヴィッド氏、エルワン・ファガン氏、アクソン四重奏団などが、CDをリリースしている。ララン氏のこのCD、「Mixtion」以外にMantovani「Troisieme Round」、夏田昌和「West or Evening Song in Autumn」、エスケシュ「Chorus」などが収録されているが、その曲間をフリーの即興でつなぎ、アルバム全体を有機的に結合させるという試みがなされており、大変面白いコンセプトのディスクとなっている。

というわけで、ラランさんは度々の来日でお馴染みですね。私も、大変お世話になっている。最近、Ensemble Cairn絡みかな、新たにFranck Bedrossianの作品集CDをリリースしたとか。Cafuaに吹き込まれたアルバムの発売も待ち遠しい。夏にはまた来日するそうだ。楽しみ。Nicolas Chapelandは、Quatuor de Saxophones Carré Mêléのメンバー、そしてギャルドの団員なのだそうだ。

[2003]
新作課題曲:
Luis Naon - Senderos que bifurcan
Tres bien:
Asako Inoue, Grégory Demarsy, Géraud Etrillard

ルイ・ナオンの「Senderos」!昨年11月のドゥラングル教授のリサイタルで聴いた、テープとソプラノサクソフォンのための作品。なかなか面白い曲なのだが、だれか録音媒体をリリースしてくれないかしらん。

この年の卒業生のなかに、井上麻子さんがいる。大阪音楽大学卒業後に渡仏し、ニーデルメイヤール地方音楽院、セルジー音楽院などを修了したのちに、パリ国立高等音楽院に入学。帰国後は関西を中心に活動を展開している。現在は、母校の大阪音楽大学器楽科講師。公式ブログはこちら。関東圏でもリサイタル開いてほしいなあ。

Grégory Demarsyは、Quatuor Arcanesのアルト奏者であるほか、パリ市警察音楽隊でも演奏を行っているそうだ(あさこさん、情報ありがとうございました)。Géraud Etrillardは、Quatuor de saxophones Axoneの奏者であるほか、ギャルドのバリトン奏者としても活躍中。

Henk van Twillert on YouTube

YouTubeに、バリトンサックス専門奏者のHenk van Twillertの演奏動画があった。貼り付けはできないようなので、リンクを貼っておく。ラフマニノフの小品が二つ演奏されているが…この濃厚な歌いっぷり、さすがトゥイラールト氏!素敵ですねえ。ゆったりとした曲調なのに、ぐいぐいと惹き込まれてしまう。

http://jp.youtube.com/watch?v=E0s74M6NO6U&fmt=18

2008/05/09

クロード・ドゥラングルの生徒たち(その4)

[1998]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Christophe Boidin, Alexandre Doisy, Ganaël Dusquenoy, Grégory Letombe, Olivier Piot

日本でも知名度が高いのは、アレクサンドル・ドワジー Alexandre Doisy。ミュンヘン国際音楽コンクール最高位、アドルフ・サックス国際コンクール(ディナン)第1位、ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクール第1位など、コンクールでの華々しい入賞暦を誇る。パリ市立6区ラモー音楽院サクソフォン科教授。いろいろな話を聞くにつれ、どうやら天才らしいです。独奏で来日してくれないかなー。

Christophe Boidinは現在パリ市立11区音楽院教授。Christophe BoidinとAlexandre Doisyに関しては、波多江史朗氏のエッセイが面白い。両者とも、Quatuor de saxophones vivaceの奏者であるそうだが、現在はこの四重奏団は活動しているのだろうか?

Grégory Letombeは、Saint Quentin音楽院教授。セルマーアーティスト。Olivier Piotは、Avignon音楽院教授。ジャズのほうでも活躍しているそうだ。Ganaël Dusquenoyは、情報を見つけられなかった。

[1999]
新作課題曲:
Jean-Claude Henry - Anche, archet, marteau...conte
Tres bien:
Catherine Courtemanche, Erwan Fagant, Shiro Hatae

新作課題曲の「Anche, archet, marteau...conte」は、ヴァイオリン、サクソフォンとピアノのための作品。ちょっと興味あるな…どんな響きのする作品なのだろう。

この年から、評価が「Tres bien」「Bien」「Assez bien」に分かれた。"のだめ"でもお馴染みですね。ターニャが最初の試験でAssez bienをとってしまい、挽回しようと頑張っている、というような描写が出てきた気がする。

さて、卒業生のなかで注目すべきは、やはり波多江史朗さん!パリ音楽院卒業後は、セルジー音楽院に入学し、併せて同音楽院の研究課程をも修了している。Quartet Spiritusとしての活動やソロCDのリリースなど、帰国後の活躍のほどは周知の通り。公式ページはこちら。個人的には、なぜかあまり演奏を聴いたことはないんだよな。なんとなーく、ドルチェ楽器で見かけることは多いのだが(笑)。

Catherine Courtemancheに関しては、あまり詳しい情報は見つけられなかったのだが、現在はどこかの市立音楽院の教授だとか(11区?)。Erwan Fagantは、Vincent David率いる四重奏団、Quatuor Arcanesのメンバー。Bourg-la-Reine県立音楽院、Chartres県立音楽院、教授。Bourg-la-Reine県立音楽院は、年齢制限がないこともあり、日本からの留学生が数多く在籍しているとか。

[2000]
新作課題曲:
なし
Tres bien:
Anne Lecapelain
Bien:
Chiharu Inoue

この年の卒業生は、お二人とも女性。ともにドゥラングル・クラス初の女性ということになるのだろうか。Anne Lecapelainは、Nicolas Prostと共にTrio Saxianaを結成し、活動を行っていることで名前を知っていた。

そして井上千春(ルマリエ千春)さん!現在はYann Lemariéと結婚され、フランスを中心に活動を行っている。ドゥラングル教授によるレッスンの描写がここから参照できる。

お二人はデュオ・ルマリエという二重奏団を結成し、演奏活動を行っている。これ聴いてしまうと、デュオが成功するかどうかは、2人の音楽性がどれだけ合うか、にかかっていると思えてしまう。初めて聴いたとき、1曲目のルクレールが響き始めた瞬間に、そのあまりの美しさに飛び上がったことを覚えている。

2008/05/08

クロード・ドゥラングルの生徒たち(その3)

[1995]
新作課題曲:
Alain Savouret - À flanc de bozat
1er prix:
Nicolas Woillard, Sylvain Malézieux
2eme prix:
Fabrizio Mancuso

アラン・サヴレーの「ボザ山中腹」。先日のアリオン・アフタヌーンコンサートで、平野公崇さんによって演奏されたばかりだ。ピアノの内部奏法、サクソフォンもBiphonieほか様々な特殊奏法を駆使する曲とのこと。平野さん自身による解説を、ウェブから参照することもできる(→こちら)。この記事によると、作曲者のサヴレーは当時の即興科教授だそうだ。

その平野公崇さんが入学したのが、この頃か。多事奏音のこちらの記事にその頃の平野さんのまわりの様子が描写されている。「私が入学した時、二人(マレズュー&マンクーゾ)はまだ3年生として在籍していた。卒業した他の二人(ヴィルトゥ&トレソス)もちょくちょく学校に来ては、ラージアンサンブルなどを手伝ってくれていた」という描写があることからも、間違いない。

というわけで、Malézieuxはハバネラ・サクソフォン四重奏団のアルトサクソフォン奏者。現在はエヴルー音楽院のサクソフォン科講師。Nicolas Woillardは、Quatuor Emphasisのバリトンサックス奏者。Fabrizio Mancusoについては、次年度で。

[1996]
新作課題曲:
Michael Jarrel - Résurgences
1er prix:
Vincent David, Fabrizio Mancuso, Damien Royannais, José Vizhino

課題曲を作曲したMichael Jarrel (Mickaël Jarrell)は、スイス生まれの作曲家。IRCAMで学ぶなど、流派はフランスではないかと思われる。「Résurgences」は、ソプラノ/アルト(持ち替え)サクソフォンとフルート、クラ、トロンボーン、ホルン、打楽器、ピアノ、チェロ、コントラバスのための作品。

この年の卒業生は4人。まずは前年度に2eme prixだったFabrizio Mancusoが、この年に1er prixを獲得しているのが目を引く。ちなみに、彼はクラス初の外国人だったそうだ(イタリア出身でセルジュ・ビションとクロード・ドゥラングルのマスタークラスを受講し、留学を勧められ、リヨン音楽院→パリ音楽院と進んだ)。現在はハバネラ・サクソフォン四重奏団のテナー奏者。

Vincent Davidもこの年の卒業生。Fabrizio Mancusoと並んでアドルフサックス国際コンクール(ディナン)のトップ入賞者だが、1er prixを得ての卒業は、同年度だったのですね。ヴァンサン・ダヴィッド氏、現在のフランス・サクソフォン界のなかでは最強のヴィルトゥオーゾであるようだ。その実力のほどを知るには、このベリオやブーレーズの作品が入ったCDを参照していただければ良いだろう。今度の来日時には、ぜひ聴きに行きたいな。Quatuor Arcanesソプラノ奏者。Versailles音楽院サクソフォン科講師。

Damien Royannaisは、「The Russian Saxophone(BIS-765)」でドゥラングル教授と共演していたことを思い出す。ソフィア・グヴァイドゥーリナの、「バリトン・サクソフォンのためのデュオ・ソナタ」という作品だ。ドゥラングルほどの名手が共演の相手に選ぶ人物とは、いったいどんな方なのだろうと思っていたが、まさか教え子だったとはね。現在は、Limoges音楽院サクソフォン科講師。José Vizhinoに関しては、どなたか情報お持ちでしたら教えてください。

[1997]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Sascha Armbruster, Masataka Hirano, Guillaume Pernes

平野公崇さんだ!ドゥラングル教授のクラス初の日本人にして、国際コンクールで初めて優勝した日本人サクソフォニスト。バッハから即興までも駆け巡る活躍は、周知の通り。東京藝術大学、洗足学園音楽大学、エリザベト音楽院講師。卒業試験の様子はこちらから。

サッシャー・アームブリュスター Sascha ArmbrusterはArte Quartettのアルト奏者として、ギヨーム・ペルヌ Guillaume Pernesは、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のバリトン奏者として、それぞれ活躍中。詳しくは、やはり平野さんのエッセイにお任せしてしまいましょう。こちら(サッシャー)こちら(ギヨーム)です。

2008/05/07

ひとりで

研究室にも行かずに、まる一日寝込んでしまった。まだ本調子ではない。

横になりながら、楽譜がある音楽作品に関して、思考を進める「ひとりブレインストーミング」。作曲者がこの世からいなくなってしまった作品の本質は、どこに存在しているのか?別の言い方をすれば、作曲者は自らの音楽が楽譜の上に踏みとどまることを思って、作曲をしているのだろうか?

この観点から思考をめぐらせると、即興演奏というもののシンプルさが浮き彫りになる。作曲者=演奏者というダイレクトな結びつき、その場で生まれてその場で消える即時性。

…というかまあ、どのレイヤ(抽象度)で考えるのか、というのは難しいところではあるのだけど。頭がすっきりして論理的な思考ができるときには、逆にこういった無駄なことは考えないのだよなあ。

2008/05/05

明日のいろいろ

うー、季節の変わり目はやっぱり体調が優れない。もう2日前からなのだが、喉をやられました。明日は屋外でのポップスの本番なのだが。大丈夫かなあ。

大栗司麻門下演奏会(Thunderさんブログ記事へのリンク)は、伺う予定だったのだが、自身の本番と重なってしまい、大変残念ながら行くことができない。とりあえず、情報だけでも載せておきます。

【大栗司麻門下生によるサクソフォン演奏会】
日時:2008年5月6日(火・祝)16:00開演
場所:大田区民ホール・アプリコ小ホール
入場料:無料
プログラム:
クレストン「ソナタ」、シューマン「3つのロマンス」、ボザ「アリア」「プルチネラ」ミヨー「スカラムーシュ」、ブートリー「ディヴェルティメント」、モーリス「プロヴァンスの風景」、シューマン「アダージョとアレグロ」、イベール「物語」より、他アンサンブルなど

ご盛会をお祈りします!

2008/05/04

クロード・ドゥラングルの生徒たち(その2)

[1992]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Stéphane Cros, Jean-Marc Pongy, Guy Rebreyend

Stéphane Crosは、mckenさんのページにてプロフィールを発見。ヴィラ=ロボス作品集に参加。ギャルドと並んでフランス国内では最も著名な吹奏楽団の一つである、パリ警視庁音楽隊に所属しているそうだ。

Jean-Marc PongyとGuy Rebreyendに関しては…おお、もしかして結成期のLes DéSAXés(デザクセ)のメンバーではないですか!?こちらのリンク先では、メンバーのひょうきんな写真を見ることができる。

[1993]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Jean-Denis Michat, Jean-Charles Richard, Ludovic Molin

Jean-Charles Richardは、結成期のLes DéSAXés(デザクセ)のバリトンサックス奏者のようである。Jean-Charles Richardは、ジャズのほうで活躍中。YouTubeに演奏映像があった(→こちら)。

この年の卒業生の中で、日本での知名度一番と言ったら、やはりJean-Denis Michat ジャン=ドゥニ・ミシャ氏でしょう。公式ページはこちら。サクソフォン科の卒業後も、作曲・アナリーゼ・音楽史を学ぶためにパリ音楽院に残り、なんと1999年まで在籍したそうだ。現在では、リヨン音楽院のサクソフォン科教授。マスタークラスでの活躍も目覚しい。作曲家としても辣腕をふるい、師のドゥラングルもミシャの筆による作品を、自身のCDで取り上げている。

現在聴くことのできるミシャ氏のCDは2枚。以前ブログ上に載せたレビューの一部を、改めて掲載しておく。最近3枚目のアルバムを出したそうで、早く聴いてみたいなと思いつつも、まだ流通には程遠い状況のようだ。

タイトルは「Mendelssohn-Grieg(JDM001)」。ピアノのシルヴェヌ・ネリー=マリオン女史との共演盤で、メンデルスゾーンの「無言歌集」と、グリーグ「叙情小曲集」を、アルト/ソプラノサクソフォンで吹いてしまったというアルバム。

ヴィブラートも控えめで、派手さはまったく感じられないが、聴けば聴くほどにじわじわと歌心が伝わってきて感動的。私も買った当初は余り聴いていなかったのだが、ある日突然に魅了されてしまうディスク。ふとした瞬間のクレシェンドごときが、いちいち心に響くのだ。

Bach, Mozart, Schubert(JDM002)」。上記アルバムと同じく、ネリー=マリオン女史のピアノとの共演。こちらのCDには、なんとあのシューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」が入曲。録音が2002年4月とのことだから、雲井氏の「Saxophone meets Schubert(Alquimista Records)」よりも早いことになる(アルペジョーネをサックスで吹く、というアイデアそのもの的にはどちらが早かったのだろうか…それとも、もしかしてもっと昔から一般的だったのか?)。

全体のプログラムは、バッハ「無伴奏フルートのためのパルティータBMV1013」、C.P.E.バッハ「ソナタト短調BMV1020」、モーツァルト「弦楽四重奏曲ヘ長調K.421」、シューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」。弦楽四重奏の作品をサックス+ピアノでやってしまうというアイデアには、まことに恐れ入るばかり。また、冒頭に置かれた無伴奏作品の、なんと説得力のあることか!これはやはり、アナリーゼの深さによるところが大きいのだろう。

[1994]
新作課題曲:
Alexandre Raskatov - Pas de deux
1er prix:
Laurent Blanchard, Nicolas Prost, Christian Wirth, Gilles Martin, Gilles Tressos, Jean-Yves Chevalier

新作の委嘱課題曲がラスカトフの「パ・ドゥ・ドゥ」!ヴィブラフォンとメゾソプラノ(女声)、ソプラノ&テナーサックス持ち替え。私が今まで聴いた中で、最も難解なサクソフォンのための作品、かなあ。この曲で優劣を付けるのは、演奏者にとっても審査員にとっても指導者にとっても酷だと思う。聴きたい方はドゥラングルの「The Russian Saxophone(BIS CD-765)」を参照していただきたい。

この年の卒業生は、現在でも演奏家として活躍が目覚しい。Laurent Blanchardは、リヨン音楽院出身ということだから、ミシャらの後輩であり、その後卒業するマレズューやマンクーゾの先輩なのだろう。セルジュ・ビション率いるリヨン音楽院から、大量の学生がパリ音楽院へと送り込まれていたのがわかる。それだけ、当時のリヨン音楽院の教育水準が高かったということか。

Nicolas Prost ニコラ・プロスト、Gilles Martin ジル・マルタン、Jean-Yves Chevalier ジャン=イヴ・シェヴァリエは、Quatuor Emphasisの奏者。Christian Wirth クリスチャン・ヴィルトゥとGilles Tressos ジル・トレソスは、ご存知Quatuor Habaneraの奏者(「いっしょに四重奏組もうぜー」なんていう会話が聞こえてきそう)。それぞれの奏者は、音楽院でサクソフォン科の講師として、後進の指導にもあたっている。

*

あまりに突然の知らせで、目が冴えて眠れなくなってしまった。こんな時でもいつもと変わらず過ぎていく世の中に、違和感すら覚える。

部屋でひとり、黙祷。

2008/05/02

クロード・ドゥラングルの生徒たち(その1)

ご存じThunderさんのブログ上での連載「マルセル・ミュールの生徒たち」に触発され、じゃあ最近のパリ国立高等音楽院 CNSMDPはどうなのか、という疑問から、課題曲や卒業生をリストアップしつつ、状況を考察してみたい。とは言っても、Thunderさんの文章力にはどうしても劣ってしまうことはわかりきっているため(苦笑)、簡潔なものになることをお許しいただきたい。

クロード・ドゥラングル氏がダニエル・デファイエ氏からCNSMDPサクソフォン科教授の職を受け継いだのは、1988年のことである。デファイエクラスの最後の卒業生は、Philippe Braquart、Daniel Gremelle、Antoine Bellec、Eric Devallonというメンバーであった。新作委嘱の課題曲は無し。

[1989]
新作課題曲:
Betzy Jolas - la plupart du temps 2
1er prix:
Alain Pereira, Jérôme Bartalucci, Eric Martin
2eme prix:
Paul Wehage, Cyril Nadjar

課題曲となったヨラスの作品は、テナーサクソフォンとチェロ、テノール(男声)という編成のためのもの。Alain PereiraとJérôme Bartalucciは、それぞれBoulogne -sur-Mer音楽院、Thiers音楽院のサクソフォン科講師。Eric Martinは、同姓同名のジャズヴォーカリストのほうが検索に引っかかってしまい、調べがつかなかった。

[1990]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Cécile Dubois, Paul Wehage
2eme prix:
Christian Bataille, Jean-Luc Miteau

Cécile Duboisは、ブザンソン音楽院サクソフォン科講師。ゲランド・ロワール夏期国際音楽アカデミーの講師なども務めている。Paul Wehageに関しては、公式ページをご覧いただきたい。現在は作曲や指揮など、オリジナリティあふれる活動を展開しているようだ。CDでは、無伴奏チェロ組曲を収めたもののほか、REMレーベルにアントワーヌ・ティスネ作品集などというものも吹き込んでいたようだ。

[1991]
新作課題曲:
なし
1er prix:
François Leclaircie, Didier Vadrot, Michel Supéra, Jean-Michel Pirollet, Christophe Bois

全員プリミエ・プリで卒業。François Leclaircieはニース音楽院講師、ディディエ・ヴァドロ Didier VadrotはOssia Saxophone Quintet オッシア五重奏団のソプラノ奏者としても有名で、アンリ・ソーゲ国際音楽コンクールに入賞。ソーゲ作品集のレコーディングに参加している。確か安田良美さんと結婚したという噂を聞いたことがあるのだが、本当のところはどうなんだ。

Michel SupéraはValenciennes音楽院講師。Jean-Michel Pirolletは、ヴァドロと同じくオッシア五重奏団の奏者。Christophe Bois クリストフ・ボワは卒業後にドゥラングル教授のアシスタントを務め、その後Bourges音楽院の講師。ディアステマサクソフォン四重奏団 Diastema Saxophone Quartetのソプラノ奏者。パリ管弦楽団とともに、何度か来日しており、日本でもおなじみ。

2008/05/01

高いよー

楽譜って高い。つい今しがた必要に迫られて7000円の楽譜を買ったのだが、学生ならば7000円あればらくらく一週間生活できるぞ。とにかく怖いのは、クリックしていくだけでぽーんと買えてしまうこと。あんまりに簡単に買えてしまうものだから、お金を使っているという実感がない。クレジットカード、解約してしまおうかなあ。

まあ、四重奏ならば四重奏で、4人で割ってもらえることを期待するのだが、いつも上手くいくとは限らないもので。ソロなんかだと、やると決めてしまえばムダにはならないが、四重奏だと打率3割いけば良いほう。音を出したっきり、眠っている楽譜ばかりです。