2008/04/08

【復刻記事】No Man's Land

アレッサンドロ・カルボナーレ氏と言えば、言わずと知れたクラリネットの名手だが…。インターネットを徘徊していたところ、氏のCDの中に、トンでもないものがあるらしいことが判明。

な、なんと、



吉松隆「ファジイバード・ソナタ」&フィル・ウッズ「アルトサクソフォン・ソナタ」をBbクラリネットでやっちゃったアルバムですよ、奥さん!!

し、信じられない。アルトサックスのために書かれた作品としては、両方ともかなりカッコいい名曲だが、それをまさかクラリネットでやったアルバムが存在するとは…。え、常識だって?

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F.ザッパ - FZ for Alex (originally for Saxophone?)
P.ウッズ - ソナタ (originally for Alto Saxophone)
G.フィトキン - GATE (originally for Soprano Saxophone)
E.ピエラヌンツィ - Elisions du Jour
P.ドリヴェラ - 小組曲 (originally for Saxophone?)
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ (originally for Alto Saxophone)
C.ボッカドーロ - エレジー マイルス・ディヴィスの思い出に (originally for Trombone?)
F.ダンロレア - トレント

アレッサンドロ・カルボナーレ Alessandro Carbonare 氏(クラリネット)と、アンドレア・ディンゴ Andrea Dingo 氏(ピアノ)のデュオアルバム「No Man's Land」。カルボナーレ氏と言えば、リヨン歌劇場管弦楽団やフランス国立管弦楽団、スーパー・ワールド・オーケストラの主席を務め、ソリストや教育者としての名声も高い有名な奏者。何年か前に知人が来日時のコンサートを聴きに行ったらしいが、それは良いコンサートだったとのこと。ブラームスのようなロマン派には、イタリア人ならではの「歌」で、そして現代モノには圧倒的なテクニックと美音でと、とにかく器の広い奏者なのだ。

そしてこのCD。セルマーのサポートを受けて、2003年に録音・発売されたアルバムだそうだ。もう何度か聴いたけれど、こいつは凄い!何が凄いって、まずサクソフォンのために書かれた曲をBbクラリネットで演奏してしまっていること。あの吉松隆「ファジイバード・ソナタ」がBbクラリネットで演奏されているのだ!ちょっとサックスをかじったことのある人であれば、衝撃的ではないか?

ファジイバードだけではない。フィル・ウッズ「ソナタ」に、グラハム・フィトキン「GATE」、ジャズサックス奏者のドリヴェラ d'Riveraの作曲した「小組曲」と、フランク・ザッパのメドレー「FZ for Alex」…クラシックの範疇を超えながらも、一貫してコンセプチュアルなプログラム。この選曲のセンスは、他のクラシック・クラリネット吹きには到底、真似できないだろう。

クールでカッコよくて、クラシックなのかロックなのかジャズなのか…こういう世界はサックスの独壇場であるとばかり思っていたが、クラリネットでもできるんだな(しみじみ…)。失礼ながら、こんなに幅広い表現を持っている楽器だとは思いもしなかった。

吉松、ウッズ、フィトキンの作品はサックスで聴いたほうがさすがにしっくり来ると思ったが、これはこれでクラリネットがクラシックを飛び出した形態の極限形と断言できる。演奏テクニック、ノリ、即興演奏、音色、どれをとっても文句のつけようがないすばらしいCDだ。

フィトキン「Gate」はオリジナルのソプラノ・サックス版の演奏を聴いたことがないが、ここでのカルボナーレ氏の暴れっぷりはすさまじいの何の。アルバム収録曲中で白眉の演奏だと思う。ウッズやファジイバードの即興部分も聴きモノ(サックスではこうは吹けないだろうな)。ザッパのメドレーは特殊奏法も生かしながら、ネジが一本外れた感じを表現しているし、小組曲での愉悦感も楽しい。

あらゆるクラリネット吹きにオススメ。クラリネットを見る目が変わるとはこのことだ。サックスを吹いている方も、ちょっとキワモノを聴いてみたい方はどうぞ(笑)。

日本語でこのCDについて書かれたページが見つからなかった。日本ではまだほとんど知られていないCDなのだろうか?もったいないなあ。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

そんな面白いCDがあるんですね!!!
いやぁー… 知らなかったです。

逆はたまに?ありますよね。
クラリネットソナタをサックスがやるとか。
けどサックスの曲を別の楽器が・・・ いつかやる人がいるんじゃないかと思ってましたけど、
いつか、じゃなくてもういたのか!なんて。。

ファジイバード、すっごい好きなのでこれはすっごい興味があります。
他にも、須川先生以外で吹いてる人のCD(いやいや、生でも!)、聴いてみたいものです。

kuri さんのコメント...

> K.Kさん

そうですね、ブラームスのクラリネットソナタなどをサックスで演奏するCD、というのは、特に多く見受けられますね。

クラリネットで「ファジイバード」だなんて、私たちから見たらかなりキワモノにも思えるのですが、逆に考えると、サクソフォンでブラームスをやる、というのもクラリネット吹きからすればキワモノに思われているのでしょうか。

ところで、ファジイバードに興味があるのでしたら、ぜひRob Buckland氏のCDもお聴きになってみてください。ピアノのアグレッシヴさがなかなか面白いです。