2008/04/30

久々にハバネラ

真面目に聴いたのは、久しぶりかもしれない。久しぶりとは言っても、所有しているサックス関連のCDの量がそこそこ多いので、一日一枚まんべんなく聴くとすると、あるCDを一年に聴く回数は、1 or 2回程度ということになってしまうのだが。ハバネラ・サクソフォン四重奏団のライヴ盤「The 5th International Chamber Music Competition & Festa 2005 First Prizewinner of Section II(Yomiuri Telecasting Corporation YC-0515)」。2005年5月に開催された第5回大阪国際室内楽コンクールで、ハバネラ四重奏団が見事グランプリを受賞した時の模様を記録したCDである。

A.Desenclos - Quatuor
F.Donatoni - Rasch
I.Nodaira - Quartet
A.Glazounov - Quatuor op.109
I.Xenakis - XAS

デザンクロとドナトーニが一次予選、野平が二次予選(もう一曲フランス物を吹いたようなのだが、CDには収録されていない)、グラズノフとクセナキスが本選ということになる。

さてこのディスク、例えば「クラシックサックスのCDで、あなたが考える最高のものを5つ挙げなさい」と言われれば、私ならば間違いなくその中に入れるであろうCDだ。圧倒的な技術、国際コンクールという場での緊張感やテンション、録音のコンディションや選曲に至るまで、こういったCDが世に生まれたことが奇跡と言うべきかもしれない。何で限定盤にしちゃったのかなあ、もったいない。

最初のデザンクロから、手加減なしの本気勝負。たまにとんでもないミスをするが、この強烈演奏のうねりの中では全く気にならない。音色の変化やダイナミクスの幅は、そこら辺のCDをまとめて吹き飛ばすようなレベル。ここまで表現を突き詰めてくると、ともすればハメを外しかねないとは思うのだが、全体を通してきっちりまとめているのはさすがではないか。

ドナトーニ、野平、クセナキスのような、一度聴いただけではワケの分からないような曲も、美しい音色とテンションで魅せる!今回改めて聴いてみて、野平一郎氏の「四重奏曲」における演奏技術に、特に惚れ直した。こういった迷路のような曲を、迷いなく一直線に進んでいくスタイルは、個々の技術的なベースがあってのことだろう。そして、何と言ってもこのCD一番の聴き所は、グラズノフ→クセナキスの流れ!最終部に向けてどこまでも速度を速めていく流麗なグラズノフと、聴き手を硬直させるほどのテンションを持つクセナキス…こんな演奏が現実に起こりうるはずがない、と思えてしまうほど。生で聴いたら、さぞかし興奮したことだろうな。

しかしこれは超常的な現象から生まれたものでなく、フランスのサクソフォン界の現在進行形の一部に過ぎない、というのがまた驚きで。日本で考えられていたサクソフォンの限界という幻想が、彼らの来日によって、そしてこのCDによって易々と打ち砕かれてしまったのだ。

お昼休み

9:30くらいに研究室に来て、あまりに暑かったので窓を開けて、ぼんやりしながらコードやレポートを書くいつもの日常。…そこにふと、吹奏楽の音が風に乗って聴こえてきた。

そういえば今日は、ランチタイムコンサートだと後輩が言っていたっけ。すっかり忘れていたけれど、遠くから響く「宝島」を聴くのもこれはこれで良いですな。…気のせいか、ずいぶんせかせかしてるが(笑)。

写真は、11階の研究室からの眺め。築4年、東向き、日当たり良好。左の彼方に見えるのは筑波山。

2008/04/29

Duo Delangle

パリ国立高等音楽院サクソフォン科教授、クロード・ドゥラングル Claude Delangle氏のソロデビュー盤(?)と言われる「Duo Delangle(REM 10864)」。YWOサックスのmaeさんがトランスファーした音源を、先日CD-Rとして譲っていただいたのである。ピアノはオディール・ドゥラングル Odile Delangle女史。

Jacques Charpentier - Gavambodi2
Antoine Tisne - Music for Stonehenge
Marius Constant - Musique de concert
Olivier Messiaen - Noel
Denis Dufour - Cuellir a l'arbre

これが1980年代、新進気鋭のサクソフォニストとして名を馳せた当時のドゥラングル氏が選んだプログラム。なんとも鮮烈な選曲だ。メシアンはピアノ独奏、デュフォーは電子音楽とサックスための作品となる。録音はデッドで、妙な残響を捉えているが、スタジオかどこかでのレコーディングなのだろうか。

技術的に完成されているのは言うまでもないが、全体を見渡してみると不思議な体温を持つ演奏だと感じる。熱いのか、冷静なのかよくわからない。実際なにを考えて演奏しているのか、というのは興味あるところだ。

Vandoren盤でも聴けるような等速ヴィブラートを使って演奏されおり、特にシャルパンティエやコンスタンのようにいくつもの演奏を聴いたことのあるものに関しては、新鮮な印象を受けた。アントワーヌ・ティスネの「ストーンヘンジのための音楽」という曲は初めて聴いたが、微分音やクラスター、ピアノの内部奏法などのほか、繊細な弱音による表現は、いかにもティスネといった感じの作風で聴き応えがあり面白い。

デュフォーの「Cuellir a l'arbre」のタイトルって英語に直すと「Gather a tree」になるのか。最近の例えばMAX/MSPを使用したようなスタイリッシュなミュージック・コンクレートではなく、ギーとかウィーンとかピコピコとか、本当の電子音楽との共演。音の密度は低いけれど、不思議と耳を傾けたくなる。

この録音、復刻されればよいのになあ。ともあれ、貴重なものを聴かせていただいて、ありがとうございました。

2008/04/28

佐藤淳一 博士サクソフォン・リサイタル「ルチアーノ・ベリオの肖像」

というわけで、行って参りました。東京は上野公園の奥、東京藝術大学内第1ホール。年始に「藝大ブラスの醍醐味~蘇るサウンド」で伺って以来だった。「第1ホール」って何なんだと思いながら適当に構内をうろうろしながら会場を探していたのだが(もの凄い不審者に見えたかも)、その名も「ホール棟」なる建物の中にあるホールのうちのひとつ、であったようだ。

【佐藤淳一 博士サクソフォン・リサイタル】
出演:佐藤淳一(sax.)、安良岡章夫(cond.)他
日時:2008年4月28日(月曜日)18:30開演
場所:東京藝術大学第1ホール
プログラム:
L.Berio - Sequenza VIIb
Sequenza VIIbの楽曲構造解説1(全体構造、H音の変容)
L.Berio / C.Delangle - Around
Sequenza VIIbの楽曲構造解説2(拡大と縮小:リズム、重音、ダイナミクス、セリー)
L.Berio - Chemins IVb

昨年11月、アクタスのアンナホールで開かれた公開マスタークラスにおいても、佐藤さんは「Sequenza VIIb」を演奏されていたが、今日のはさらに細部まで磨きがかったように聴こえた。さすがに演奏・分析を繰り返してきたレパートリーなのだろう、技術的にはほぼ完成されたレベル、そして何より、楽曲に対する深い理解から生み出される圧倒的なまでの説得力。凄い。

ドゥラングル教授が「Sequenza VIIb」に対して注釈を行った「アラウンド Around」は、昨年秋に静岡で初演された作品。あの時はあまり冷静に聴くことができず、肝心の内容を忘れていたのだが、今日再び聴くことができて良かった。はじめはソプラノサックスの影として現れたサックス達が、徐々に自我を獲得して、独奏の周り(Around)を徘徊しはじめる…といった印象を受ける。解説によると、かなり即興の部分も含んでいる、とのことだったが、どこからどこまでが即興で…というのはイマイチわからなかった。

演奏は、田村哲、加藤里志(ssax)、伊藤あさぎ(tsax)、細川紘希(bsax)。ソプラノサックスが左右に、テナーサックスが後方に、バリトンサックスが前方に位置しての、音響的効果をも狙った状態での演奏だった(特にこの点に関してAOIでの演奏より明らかに面白い効果が出ていた)。

本日が日本初演となる「Chemins IV」。指揮は急病の夏田昌和氏に代わって安良岡章夫氏が務め、3-3-3-2の弦楽パートは学生が担当した。こちらは、「Around」とはまた違ったコンセプトで書かれており、独奏パートの「狙い」を明確に提示することを念頭に置いたものであることが分かる。だから、弦楽パートは独奏サクソフォンを離れていくことは決してない。また、和声的な重なりを重視するところが多く見受けられるのは、独奏楽器が試みるポリフォニックな響きを弦楽合奏として表現することが目的なのであろうが、クラスターのみならず妙に美しい和音が多かったのが印象的だった。CDと違って、舞台上を見ることができると、各パートの扱い方なんかもわかって面白いですな。

楽曲分析は、佐藤淳一さんの修士論文「ルチアーノ・ベリオからサクソフォンへの注釈」の内容から要所をピックアップし、レクチャー風に分かりやすく構成しなおしたという趣。前方に置かれたスクリーンにPowerpoint、じゃなかったKeynoteの画面を映しながらの進行。この曲の特色である「拡大と縮小」に関してはリズム、重音、ダイナミクス、セリーの4つについて紹介されていた。レクチャー中にとった手元のメモと論文を対照すると、以下のようなことが解説されていたということになる。

・リズムに関する拡大縮小:ベリオの奥さんであったスーザン・オヤマの起源である日本の、拍子木のリズムを模したものだと言われているとか。

・重音に関する拡大縮小:楽曲では五度音程を持つ重音が13回使用されているが、14回目に出現するときそれは減五度(短六度)の重音へと縮小(拡大)され、そのまま倚音Cを抽出→Hへ回帰(最後の音)になる。

・ダイナミクスに関する拡大縮小:楽曲中に出現する開放Hは、次の6つの指遣いによって表現される。[I:], [II:1,2,3,4,5,6,C,C#], [III:1,2,3,C1,Ta,Tc], [IV:1,2,3,5,6,C2,Bb,Ta,C], [V:1,2,3,4,C1,C2], [VI:1,2,3,Cs]。このうち、それぞれのダイナミクスの最大値はI:sffz, II:ff, III:f, IV:mf, V:p, VI:pである。

・音列の拡大縮小:楽曲の進行に伴い、Hから始まって徐々に音列に新たな音が追加されていく構成をとるが(最終的には12音)、出現音を順番に並べて7番目の音を中心と捉えると、左右に対称となる音の音程間隔が長2度、長3度、完全4度、完全5度と拡大していく。

演奏会の内容自体はなかなかハードだったが、聴きにきていたみなさんは興味深く聴いていたようで、終わってみればなかなか充実した演奏会だったなあと思った。さすがに一般のお客さんは少なかったのではないかという印象だったが(プロや学生が集結。あまりにもアウェイすぎて、終演後はそそくさと退散^^;)、こういう演奏会が一般向けに行われるのもまた、面白い試みではないだろうか。佐藤さん曰く博士リサイタルはまた行うそうで、次回も期待したい。

2008/04/27

Erland von Koch「Concerto」

スウェーデンの作曲家、エルランド・フォン=コック Erland von Koch。1910年生まれとのことで、もうそろそろ100歳になるのですなあ。現在も作曲をされているかどうかは存じないが、ぜひ長生きしていただきたい。交響曲やオペラなども作曲し、まさにスウェーデンを代表する作曲家の一人というところだが、サクソフォン界との親交も深く、独奏曲や四重奏曲などをいくつか作曲している。

そもそも、フォン=コックがサクソフォン界を見知ったのは、シガード・ラッシャー Sigurd Rashcer氏との出会いがきっかけであったのだろう。1958年にラッシャーに捧げられたこの「Concerto」の後、四重奏のための重要なレパートリーの一つである「Miniatyrer」を始めとし、1987年に作曲された「Birthday Music for Sigurd M. Rascher」に至るまで10を超える作品を、ラッシャーに献呈している。フォン=コックの筆による作品は、おそらく世界的に見れば重要なレパートリーではあろうが、残念ながら日本ではあまり知られていない。

とうわかで、ラッシャーに捧げられた弦楽オーケストラとサクソフォンのための「Concerto」。3楽章形式で、「Allegro moderato」「Andante sostenuto」「Allegro vivace」。演奏時間はおよそ17分。曲中・カデンツァ問わず、ラッシャーお得意のフラジオ音域が各所に使用されている。曲全体の雰囲気や音形は、ラーションの協奏曲に似てなくもないなあ(同郷であるし、もしかしたら意識したのかもしれない)。

第1楽章は、あからさまなソナタ形式で、この第1主題がなかなか良い。あなたの近くにピアノがあったら、試しにハ長調で「ミドレー」と弾いていただきたい。妙に魅力的な音素材ではないか?第1楽章の第1主題は、この素材を主題へと拡張しているのだが、弦楽合奏の荒涼たる響きとあいまって、前半において不思議な世界観を作り出しているのだ。第2主題は、四分音符の動きを中心にしたカンタービレの主題。こちらは、ちょっと不思議な雰囲気だが、このためか再現部では第1主題がことさら印象的に響く。

第2楽章はチェロとコントラバスの怪しげなユニゾンから始まるが、サクソフォンはそんな中でも光を保ち続けているかのように聴こえる。やや東洋的な音階も交えながら、徐々に頂点へと向けて盛り上がっていく様子はなかなか感動的。第3楽章は3/4の舞曲。途中、フラッターやスラップも挟みながら進行し、第2楽章と第1楽章の主題が、別の調で再現されるのは素敵ですねえ。

ちなみに、ドイツのEdition Marbotから出版されているオケスコア持ってます。たしか6ドルで買ったと記憶している。ずいぶんと安いな。

演奏は、シガード・ラッシャーとミュンヘン・フィルの演奏がPhono Sueciaから出ていた。amazonでも取り扱っていたようだが、現在では在庫切れのようだ。なかなか良い演奏だと思うのだが、もったいないなあ。ラッシャー以外の演奏では、Lawrence Gwozdzの演奏が付属した楽譜付マイナスワンCDがSheet Music Plusなどで買える。グラズノフのマイナスワンも入っており、おトクかも(笑)。

2008/04/26

Kientzy plays Doplerkamerconcert on YouTube

Ensemble TX(仮)の練習でした。ブエノスアイレス難しい。「STUB」はあきらめました。練習後は飲みすぎました。ごちそうさまでした。酔っ払っているけどブログは更新しますよ。



ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏が、「ドップラー室内協奏曲 Doplerkamerconcert」を演奏している動画。バックはルーマニア国営放送管弦楽団だろうか。バスサックスが協奏曲として使われているって、なかなか珍しいと思うのだが、どうなのだろうか。最終部はなかなか変拍子な感じだが、盛り上がりが派手で、けっこう好み。

ケンジー氏、また来日しないかなあ。そういえば、ケンジー氏関連のCDを手に入れるために、韓国(KEAMS)とルーマニア(Isac Production)にコンタクトを取っているのだが、送ってくれる/調べてくれるという返信をもらったっきり、メールが途切れてしまったのだよな。もう一回送ってみないと…。

2008/04/25

Deffayet plays Old Castle on YouTube

指揮はクリュイタンス。ダニエル・デファイエがあのメタルマウスピースを吹いている様子を観ることができる。美音と、ものすごいフレージング能力…。以前紹介したものは途中で切れていたのだが、クオリティが改善されたものを別の場所で発見した。そもそも、このブログでYouTube上のサクソフォン関連動画を紹介するようになったのって、このデファイエの動画を発見したのがきっかけだったのだよな。

まだまだ紹介すべき動画が溜まっているので、あしたもサックス関連YouTube三連発です。

Ducros plays Hard on YouTube

サクソフォン奏者リチャード・デュクロス Richard Ducrosがクリスチャン・ローバ Christian Laubaの「Hard」を演奏している映像…ではなく、楽譜との対照映像。演奏自体は、ハイテンションでなかなかの名演奏ではないかなと思うのだが。楽譜自体はちょっと見づらいので、リンク先に飛んでURLに「&fmt=18」を付与していただければ。

「Hard」は、テナーサクソフォンのための独奏曲。ハードロックのテンションやリズムを織り込んだ、私見ではテナー最強の無伴奏作品ではないかなと思っている。BVHAASTから出版されているボーンカンプ氏の演奏が、個人的にはお気に入り。姉妹作で、「Hard too Hard」なる作品も存在するが、そちらはこのリンク先から観ることができる(演奏はWisuwat Pruksavanich)。

Salleras plays Salleras on YouTube

David SallerasというCNRDP(パリ市立音楽院?)の奏者の演奏動画があったので貼り付けておく。カタロニア地方の音楽を題材にした作品?内容としてはなかなか面白いぞ(もうちょっと音色の繊細さが感じられると、さらに面白いと思うのだが)。この分だと、即興部分もかなり含まれていそうですなあ。

カメラワークが派手で、なかなか見応えあり。

うわー

Pさんにもご案内いただいたのに、サクスケルツェットの演奏会に行けないー(研究室ゼミがいま終了)。今から急いで向かっても、到着が20:00過ぎくらいになってしまうので。

うーむ。どなたか感想を聞かせてください。

2008/04/24

就職活動おわり

順調に行けば来年度から社会人ですが、勤め先が決まりました。多摩川線沿いの勤務になるのかな。東京にお住まいの方々、よろしくお願いします。

木下直人さんから(ギャルド関連その3)

先日ご自宅に伺ったときに頂いたもの。1961年の来日時、11月3日に新宿厚生年金会館で開かれた「ギャルド・レピュブリケーヌ歓迎演奏会」の録音である。陸上自衛隊のとある場所に残っており、ごく最近(21世紀になって)、木下さんを始めとする関係者が手を尽くして発掘したものなのだそうだ。

フランソワ=ジュリアン・ブラン指揮
ギャルド・レピュブリケーヌ交響吹奏楽団
・H.ベルリオーズ - ローマの謝肉祭
・E.ファリャ - バレエ組曲「三角帽子」より
・F.リスト - ハンガリー狂詩曲第2番

リストは、東芝から出版されたもの、そして東京文化会館のライヴ録音にも含まれている。ベルリオーズは1984年と2007年来日時にも取り上げられていたが、1961年の演奏はこれと東京文化会館での録音がある。ファリャの「三角帽子」は「近隣の人々の踊り」「粉屋の踊り」「終幕の踊り」の3曲が抜粋されている。

意外なほどにクリアな音質の奥から聴こえてくる音楽は、絶品。特に「三角帽子」が聴きもの。よもや管楽器のみで構成されているとは思えないトゥッティのサウンドと、各楽器のソロの途方もないヴィルトゥオジティ。最終部に向けて絢爛さを増す、祝祭的な雰囲気。これは鳥肌立ちます。吹奏楽編成としてはコンクールでも度々取り上げられる曲ではあるが、比べてはいけませんな。

そういえば木下さん、最近になってPierre Clementのアームを手に入れたそうで、SP再生用のカートリッジと組み合わせたときのサウンドが素晴らしいとのこと!そのシステムを使用して、ミュールのSP(グラモフォンの2枚組)をトランスファーしたそうで、取り急ぎそのサウンドファイルをダウンロードできる箇所を教えていただいた。曲はイベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」とヴェローヌの「ラプソディ」。私も聴いてみたが、さらに中音域の再現性が上がったようなイメージ(耳が良くないので、気のせいだったりして)。素晴らしいです。

そのページだが、直接リンクを貼るのはちょっと憚られるので、気になる方はGoogleなどを使って、「モイーズ」で検索してみてくだされ。

2008/04/23

じっくり

2時間半ほどかけて、指が回らないところをじっくりとさらった。Ensemble TXでの練習が始まっているのだが、ピアソラの音楽って、どうも音運びの輪郭線の傾きが急で(つまり跳躍が多い)、苦手なフレーズが多い。繰り返して練習することはそのまま自分のスキルアップに繋がるものなのだろうと言い聞かせている。

個人でさらうときも。テナーサクソフォンの立ち回りを意識しながら。基本的には和声の構築を念頭に置き、ベース音を頭に鳴らしながら3度・5度・テンションを当てはめていく。所詮4声のうちの1声であるのだから、基本的には控えめに、しかし旋律はややVIVIDな音で。音色の変化はそのまま四重奏のカラーを決定する要因となるため、このパートの受け持ちの楽しさは計り知れない。

ぼちぼち、Tsukuba Saxophone Quartetも再始動。今回もまた、数々の刺激的な場面に出会えることを期待しよう。とりあえず、「レシテーション・ブック」のさらい直しかかな。

2008/04/22

佐藤淳一著「ルチアーノ・ベリオからサクソフォンへの注釈」

この論文「ルチアーノ・ベリオからサクソフォンへの注釈 -或いは二つのセクエンツァから見るベリオとサクソフォン-」は、佐藤淳一さんが洗足学園音楽大学の大学院修士課程を卒業される際に執筆したもの。昨年、佐藤さんのご好意で頂戴し、大変興味深く拝見していたものなのだが、すっかり紹介が遅くなってしまった。サクソフォンのための「セクエンツァVIIb」と「セクエンツァIXb」の成立・分析・演奏を軸に据え、作曲家⇔演奏家⇔聴衆という関係図における、「注釈」と呼ばれる作業について論じるものである。アウトラインは、以下。

序論
オニオンシリーズと注釈技法
- オニオンシリーズ
- セクエンツァからシュマンへ
「セクエンツァVIIb」と「セクエンツァIXb」の分析
- 「セクエンツァVIIb」の分析
-- 「セクエンツァVII」の作曲経緯
-- 「セクエンツァVII」分析
- 「セクエンツァIXb」の分析
-- 「セクエンツァIX」の作曲経緯
-- 「セクエンツァIXb」分析
セクエンツァを演奏するにあたって
- 「セクエンツァVIIb」
- 「セクエンツァIXb」
結び
注釈・参考文献

ここで言う「注釈」という言葉に関してはちょっと解説が難しいのだが:モダン・ミュージックと呼ばれる難解な作品において、演奏者は解釈者という役割をも併せ持つ。それはそのまま、作品の難解性を分析し演奏という形式で再構成する過程で、何らかの演奏者としての注釈を付けざるを得ない/付ける必要があることにある…といった意味合いの「注釈」とお考えいただければ(実はそのほかにもいろいろ意味はあるが、割愛)。

難しいことはともかく、サクソフォンのための2つの「セクエンツァ」に関する詳細な分析は、ある意味圧巻である。これまで読んだことのあるサクソフォンのモダン・ミュージックの分析書、シュトックハウゼン自身による「友情に」のレクチャー資料、大石将紀氏によるクリスチャン・ローバ「バラフォン」の分析、といったところだが、量や質ともにそれらを上回るものだ。何せ、合計でおおよそ1カラム50ページ。一日では読みきれないほどのものだからなあ。

例えば「セクエンツァIX」と「シュマンV」「シュマンVII」の関係。1980年に作曲されたクラリネットとコンピュータのための「シュマンV」からクラリネットパートのみを抜き出し、同年「セクエンツァIXa」が成立。さらにジョン・ハールとイワン・ロートの協力により、アルトサクソフォンのための「セクエンツァIXb」が完成。1996年に、「セクエンツァIXb」にオーケストラパートが付与されて「レシ/シュマンVII」が作曲された。1998年には、「セクエンツァIXb」を基にしてバスクラリネットのための「セクエンツァIXc」が成立…、とこんなところか。

成立の解説だけでなく、分析のパートも物凄い量であり、一つ一つの内容を紹介していけないのが残念であるが、某誌への掲載も予定されているとのことで期待して待ちましょう。あ、こちらの演奏会も、忘れてはいけませんね。

この論文と同時に、佐藤さんが卒業演奏会で演奏したアルトサクソフォンとオーケストラのための「レシ/シュマンVII」の日本初演ライヴ録音も頂戴したのだが、これも良いですなあ。独奏パートはもちろん、オケを統率する指揮もなかなかとお見受けするが、誰が振っているんだろ。

(追記)

「レシ/シュマンVII」の指揮者は、菊池祐介さんという、フランス帰りのピアニストだそうだ。メシアンのスペシャリストだそうで…おおぉ、一度拝聴してみたい。

2008/04/21

演奏会へ行こう

先日からBloggerの投稿画面のインタフェースが崩れてしまい、ちょっと使いづらい。

大学に進学してから、主に東京方面へ演奏会に出かけることが多くなってきた。長野に住んでいた頃には考えれないほどの、サックスの演奏会の多さ!本当はクラシックサックスだけでなく、ほかのクラシックやジャズなんかも聴きに行ってみたいのではあるが、時間とお金の都合から、二の足を踏んでいる状態。

そういえば、一番最初に生で(プロの)サックスの演奏を聴いたのはいつだったかなあと思いだしてみた。たしか、地元からちょっと離れたところにあったM高校の吹奏楽部演奏会に、須川展也さんが客演するということで、先輩に誘われて聴きに行ったのが最初だったはずだ。高校2年の6月だったと記憶している。第1部、吹奏楽のスタンダードをやった直後に、アンリ・トマジの「協奏曲」をやったんだよな。あの曲のカッコよさ、そして演奏は当時の自分にとっては衝撃的だった。生で聴くとこんなに凄いのか!というのは、当時の自分から発せられた偽らざる感想である。須川展也さん十八番の「グラナダ」までを聴いて、興奮して帰って行った自分。若かった。

大学進学後は、栃尾克樹さんのバリトンサクソフォンリサイタルを皮切りに、いくつもの演奏会を耳にした。どの演奏会もが新鮮な発見の連続だったが、最近ではちょっと耳が肥えてきたというか場慣れしてきたというか、以前だったらば最初から最後まで集中して聴いて、演奏会終了と同時に虚脱状態になる…というパターンが多かったのだが、最近ではプログラムを見てペース配分を考え、知っている曲はリラックスして聴く、ということを覚えた。とはいえ、たまに聴衆として全身全霊を傾けねばならない演奏会というものも、あるのだが。

いままで聴いた中で印象に残っている演奏会は、いくつもある。逆に、ワクワクして伺った割に、拍子ぬけしてしまったものもある。

これだけいろいろな演奏会に出かける理由は何かと聴かれれば、ひとつは演奏を聴いている最中のゾクゾク感を味わいたい、ということがある。脳に突き刺さる演奏を聴いたときって、鳥肌が立つのですよ。和音の伸ばし一つを聴いただけで、pの音を聴いただけで、体中に電流が走るような感覚。CDを聴いているだけでは、なかなか味わえないのだよな。後は、個人的嗜好として、プログラミングが面白いことも、演奏会に出かける大きな理由だ。日本初演、世界初演、学術的に重要視すべき曲目たち。

うーん、オチがつかない。そもそも聴いた絶対量が少ないくせに、何を言ってるんだお前は、という感じでもあるが(汗)ご容赦ください。

2008/04/20

Graham Fitkin Scores

イギリスから航空便で楽譜が到着。先日、CDを紹介したグラハム・フィトキン Graham Fitkin氏から、2冊ほど楽譜を買ってみたのだ。サクソフォンとピアノのための「GATE」と、サクソフォン四重奏のための「STUB」。思ったより高く、円換算での請求書を見て青ざめたので、これから先しばらくはCDと楽譜の購入は自粛するつもり(涙)。楽譜って高いなあ(購入は、フィトキン氏の公式サイトからどうぞ)。

どちらも、好きな曲で、かなり良い曲の割に日本では知られていない。じゃあ機会があれば初演しちゃえ、ということで楽譜を買ってみたのだが、実際にスコアを開くと「なんだこれはー!」という難しさ。まあ、たいていそういうもんですよね。「STUB」のほうは、Ensemble TXの練習に持っていってみよう。それでだめだったらフェスティバルでTsukuba Saxophone Quartetとして日本初演でもするか。

時々日本初演好きと言われるが、そりゃあ知られていない良い曲を日本紹介することは、マニア的冥利に尽きるというものだ。フェスティバルのときの「Heartbreakers Part1」は、あれでバランスさえ上手く作れていたらなあ…という失敗もあるにはあるが。

あー、楽譜といえば、早くラ○○○○のトランスクリプションしなきゃ。来週中に開始して、せめて4月中に第1楽章だけでも終わりにしたい。

2008/04/19

B会員

サクソフォーン協会から、何か書類が到着したと思ったら、ニュースと管打の要項とアンサンブル楽譜と新人演奏会のお知らせが入っていた。ええっ、なんで管打の要項なんかが入っているんだと一瞬思ったが、そういえばB会員はアマチュア&音大生という枠なのだった。

ところで、管打の二次予選がカーテン審査ではないのは、シュトックハウゼンがあるため、なのだそうだ。ミハ・ロギーナ氏の演奏へのリンクは、こちら(Internet Explorerのみ)。ご覧の通り、音響までをも考慮に入れた作曲がなされており、カーテン審査であると聴こえ方がかわってくるから、ということ。

「本居長世メドレー」の楽譜は、明日持っていって、音を出してみようっと。

2008/04/17

Marius Constant: 4 Concertos

以前から探していたCD「Marius Constant: 4 Concertos(Erato 4509-94815-2)」。フランスの作曲家、指揮者、ピアニストであるマリウス・コンスタン Marius Constant。彼が作曲した協奏曲を集めたディスク。ジェローム・カルテンバッハ Jerome Kaltenbach指揮 ナンシー交響楽団と、独奏者の共演である。サクソフォンにクロード・ドゥラングル Claude Delangle教授が参加している。

ここで取り上げられているサクソフォンと管弦楽のための「コンチェルタンテ」は、現代サクソフォン界の構図を決定した作品、と言っても過言ではない。1979年5月、南仏ギャップで行われたサクソフォンの国際コンクール。そのコンクールの本選課題曲こそが、この「コンチェルタンテ」なのである。モンテ=カルロ交響楽団との共演の結果、若き日のクロード・ドゥラングルが最高位に輝き、以下、ジャン=イヴ・フルモー、ジャン=ポール・フーシェクールが続いた。現在、フランスのサクソフォン界の勢力図を見てみれば…言うまでもなし。

内容は以下。一曲目のコルのための協奏曲、というものは、フレンチホルンの協奏曲だと思っていただければ良い。二曲目のOrgue de Barbarieというのは、バレル・オルガン(自動演奏オルガン)のこと。どうやって合奏しているのだろうか。

Choruses and Interludes (Cor et Orchestre)
Concerto (Orgue de Barbarie et Orchestre)
Concertante (Saxophone et Orchestre)
Concerto "Gli Elementi" (Trombone et Orchestre)

一曲目の「Choruses and Interludes」から、驚きのジャズ風コンチェルト。編成は、ホルンを含むコンボバンド(エレキベース、ドラムス、ピアノ、サックス)とオーケストラのための協奏曲といった形式で、第1楽章の冒頭からバス・オスティナートに支えられて、ホルンが暴れまくるのだ。曲中では各パートの即興によるソロのような箇所もたくさん出現し、なかなかに強烈な印象を残す。バレル・オルガンとオーケストラの協奏曲は、さすが自動演奏器械といったような音数の多さ。多彩な音色と高速なフレーズの応酬は、じっと聴いていると吸い込まれそうになるな。かと思えば、第2楽章は全く違う曲想。これはぜひ聴いていただきたい。

お目当てだったサクソフォンの「コンチェルタンテ」は、大好きな第2楽章「ケイクウォーク」が、なんだか面白くない。その代わり、これまできちんと聴くことができなかった第3楽章「パッサカリア」が、妙に良い曲に聴こえる!何なんだ、この逆転現象。オーケストラの音に厚みがないからなのかな。例えばロンデックスの復刻盤は、録音が悪い代わりにテンションや音の厚みが物凄いことになっており、聴き比べてみると面白いかもしれない。トロンボーンの協奏曲「グリ・エレメンティ」は、超絶。トロンボーン吹きなら、聴いておいて損はなし。

入手先であるが、永らく廃盤になっていたのだが、ArkivMusicがWarner Musicから権利を譲り受け、CD-Rとして販売し始めたようである(→こちらのページから辿れる)。何はともあれ、再販を喜びたい。プレスCDの中古に関しては、amazonで取り扱っているが、お値段高めなのが難。

2008/04/16

ボレロ on YouTube 再び

最近のYouTubeは面白いですなー。まさか、シュトックハウゼンの「Boy's Duet (Knabenduett)」を観ることができるとは、とか。

さて、以前ラヴェルの「ボレロ」のムービーをいくつか貼った覚えがあるのだが、久々に漁ってみたところ、ほかにも面白そうな演奏が増えていたため、再び取り上げようと思う。ムービーによっては、URLの後ろに「&fmt=18」を付けると、画質と音質が向上します。お試しあれ。

・カラヤン指揮ベルリンフィル。サックスは、ジャック・テリー氏とダニエル・デファイエ氏。
前半:http://jp.youtube.com/watch?v=b3J2_EOHBI4
後半:http://jp.youtube.com/watch?v=ggsCw4i0S-U

・ダニエル・バレンボイム指揮ベルリンフィル。サックスは、マンフレッド・プライス氏。
前半:http://jp.youtube.com/watch?v=S2q-gWMAGjw
後半:http://jp.youtube.com/watch?v=MP3qwZxm7p4

・チェリビダッケ指揮ミュンヘンフィル。テナーは、前半の終わり付近、ソプラノは、中間部の最初に出てくる。
その1:http://jp.youtube.com/watch?v=qze4T33mQ0s
その2:http://jp.youtube.com/watch?v=H3U0sumK_Zk
その3:http://jp.youtube.com/watch?v=hUoPFR-yZJQ

・クリストフ・エッシェンバッハ指揮パリ管弦楽団。サックスは、フィリップ・ブラキャール氏とクリストフ・ボワ氏で、ともにディアステマ四重奏団のメンバー。
前半:http://jp.youtube.com/watch?v=8po7FZonP-I
後半:http://jp.youtube.com/watch?v=MnyiofG9k9M

・シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団。新井靖志氏と彦坂眞一郎氏。高校の時、N響アワーで観たことがあるような気がする。
前半:http://jp.youtube.com/watch?v=ar3bJVtLhOI
後半:http://jp.youtube.com/watch?v=Jioikkc9W3s

・レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック。ヤング・ピープルズ・コンサートの映像かな?サクソフォン奏者はだれだろうか?
前半:http://jp.youtube.com/watch?v=n9AHx9dNG-s
後半:http://jp.youtube.com/watch?v=pgSRdfEv6iI

・映像ではなく、音声のみではあるが…ラヴェル指揮コンセール・ラムルー(1932年録音)。サックスは、誰だろうなあ。ヴィブラートや音色からは、ミュールのような気もするが、ちょっと違うような。
その1:http://jp.youtube.com/watch?v=C2n_SvR4GNM
その2:http://jp.youtube.com/watch?v=j257Ljo-nWo
その3:http://jp.youtube.com/watch?v=C7kMcBhTQ_4
その4:http://jp.youtube.com/watch?v=nwRy8-VOTHs

2008/04/15

【演奏会情報】ルチアーノ・ベリオの肖像

日ごろよりお世話になっている東京藝術大学大学院の佐藤淳一さんから、演奏会のお知らせを頂いたので、ご紹介したい。佐藤さんは、ルチアーノ・ベリオ作品の研究・演奏のスペシャリストであるのだが、今回は「Sequenza VII」に焦点を当て、レクチャーリサイタル(博士課程独特の、研究に主眼を置いたリサイタル?)を行うそうだ。

【佐藤淳一 博士サクソフォン・リサイタル】
出演:佐藤淳一(sax.)、夏田昌和(cond.)他
日時:2008年4月28日(月曜日)18:30開演
場所:東京藝術大学第1ホール
プログラム:
L.Berio - Sequenza VIIb
L.Berio / C.Delangle - Around
L.Berio - Chemins IVb(日本初演)
Sequenza VIIbの楽曲構造解説

佐藤さんは、洗足学園音楽大学の修士課程を卒業する際にも、ベリオのサクソフォン作品について論文をまとめられ、さらにChemins VIIを日本初演されるなどした。いずれも、大変な好評を得たそうだが、今回学籍を移して開かれる演奏会もまた、クラシック・サクソフォンの学究の点において、素晴らしいものとなることを期待したい。

2008/04/14

Kalevi Aho's Saxophone Concerto on YouTube

フィンランドの作曲家、カレヴィ・アホ Kalevi Aho氏の名前は、たしかシャロン・ベザリーのフルート大百科で初めて聞いた。しかし、まさかサクソフォン協奏曲を書いているとは知らなかった。室内オーケストラとアルトサクソフォンのための協奏曲は、全部で3つの楽章からなる作品。演奏は、同郷のサクソフォニスト、オリ=ペッカ・トゥオミサロ Olli-Pekka Tuomisalo氏である。

なんだか、ものすごく難しそうな曲だな。最初はステージ上にトゥオミサロ氏の姿が見えないが、途中からきちんと入場してきますので、ご心配なく(笑)。

・第1楽章


・第2楽章


・第3楽章

2008/04/13

田中靖人サロンコンサート@ドルチェ

今日は寒かった。田中靖人氏のサロンコンサートに合わせて、13時からの大石将紀氏の特殊奏法クリニックにも伺いたかったのだが、そちらは残念ながら行くことができず、ドルチェ楽器のほうにのみ伺った。サックスブースに立ち寄ると、段ボール箱いっぱいの管打楽器コンクールの課題曲の楽譜が!そういう季節だよなあ。たしか本選はトマジだっけ?サックスブースの向い、リハーサル室の中では、なぎさブラスゾリステンが練習中、うおぉ。

会場は、アマチュアの方、音大生っぽい方、プロの方で大盛況。しかしなんだか、いつもお見かけする方が少ないような。なんだか不思議な感じ。けっこう、プレイヤーによってついている客層って違うものなのだろうか。私自身、そういえばトルヴェールのメンバーの方の独奏をコンサートという形で聴くのは、初めてのような気もする。

【田中靖人サクソフォン・サロンコンサート】
田中靖人(sax)、沼田良子(pf)
ドルチェ楽器管楽器アヴェニュー東京アーティストサロン
14:30開場15:00開演
J.S.バッハ「ソナタBWV1031」
M.ブルッフ「コル・ニドライ」
D.ベダール「幻想曲」
A.デザンクロ「PCF」
~休憩~
G.ガーシュウィン/長生淳「ガーニッシュ・ウィンド」
~アンコール~
G.ビゼー「"アルルの女"より間奏曲」
C.ドビュッシー「ボヘミアの踊り」
C.サン=サーンス「白鳥」
V.モンティ「チャルダッシュ」

ソプラノサクソフォンによるバッハから始まったのだが、まず意外なほどに細かいヴィブラートが印象に残る。最近のフレンチ・スクールの傾向に慣れていると、「うおっ!?」と驚くほど。そういう時代になったのですねえ。独特の芯と、輝きをもった音色は、田中靖人さんのアイデンティティの一つであろう(ところでバッハのピアノがちょっといただけなかった)。

ブルッフの「コル・ニドライ」はすごかったなあ。バリトンてこんなに多彩な音色を持っている楽器なのか。やわらかいと形容されるほどの、触れたら消えてしまいそうな繊細なピアニシモから、情熱的なフォルテ、そして心を引き裂くようなフォルティシモまで。本日の白眉だったかも。テナーで演奏されたドゥニ・ベダール「幻想曲」は、どちらかというとソプラノの演奏が好みな私には、ちょっとおさまりが悪く聴こえてしまったな。その昔、アンナホールで聴いた松雪先生の演奏が忘れられない。

デザンクロなんかは、たとえばカデンツの高速フレーズをものすごい勢いで吹き飛ばしてみるだとか、さすが技巧的に魅せるなあ。田中靖人さんの音色…芯の部分に、やや金属的な要素が含まれているのだが、その部分をベースにしながら、サウンドをめくるめく変化させていくのだ。「ガーニッシュ・ウインド」は、ガーシュウイン作品のメロディをもとにしたコンサート・ピース。いつもの長生節だが、超絶技巧をバッチリとキメまくり、最後はグリッサンドでフィニッシュ。おおー、すごい。

アンコールは、豪華4曲。最近発売されたという教則DVDに収録されているソプラノからバリトンまでの模範演奏を、生で披露。アルト、ソプラノと続き、新井靖志さん(聴きに来ていた)を意識しての「白鳥」から、マシンガンタンギングの「チャルダッシュ」という流れで〆。最後のテンション、ものすごかった(^^)こちらもかなり興奮した。

終演後は、そそくさと会場を後にし、中央線→バスに飛び乗って帰筑→研究室。で、今は研究科発表の資料を作り終えて、ブログを書いているところ…。

2008/04/12

最小の要素へ

ここ最近、就職活動で憂鬱なのだが(わざわざ推薦とってみた企業の志望度がここに来てガタ落ちたり、この一番忙しい時期に研究科の発表をしなければならなかったり、いろいろ)、明日は田中靖人氏のサロン演奏会ということで、久々にリフレッシュしてこようと思う。もしかしたら気が乗らなくて…体が動いてくれるかどうかは、明日になってみないとわからないが。

さて、私はサクソフォンを演奏する中で、次のようなことを夢想している。それは、「結果のみを捉えるのではなく、その事象が形成されるに至った原因を突き止めることができるのではないか」ということ。

演奏でいえば、たとえばある音色が楽器から発せられた時に、そのサウンドはどういったプロセスを経て生成されているのか。こういったことに、とても興味がある。楽器のメーカー、機種、マウスピース、リード、リガチュア…さらに、それぞれの部品には"個体差"が存在し、時間的な変化も存在するため、一つとして同じ組み合わせは存在しない。奏者起因の、生理学的要因にもよるだろう。奏者の口腔内骨格、息の圧力(presser)と温度(temperature)、アンブシュア、etc.

これらの要素を分解し、楽器から生成される音のスペクトルを多変数関数の出力として捉えることができるようになったら、なかなか面白いのではないだろうか。例えば、スペクトルのpowerはpresserを入力とした時の増加関数であるよね、というのも、この例に漏れない。続いて考えれば、temperatureは、倍音系列にどういった作用を引き起こすのだろうか?具体的には、まったく同じ条件下で、息の温度を変えた際に、サウンドにはどのような変化が起きるのか?もちろん、高温の息のほうが低温の息よりも音程が上昇することは考えられるが、円錐管という特徴から、powerの比を保ったまま、単純に対数的にスペクトルが平行移動するのか?

入力と出力の関係を突き止めることで、理想のサウンドを人工的に作り出すことが可能となるのだ。※何を"理想のサウンド"とするのかは、これまた難しいことで、生理学と脳科学の分野になってくるのだろうが、一般的に美しい音を持つと思われている奏者の、楽器起因要素と生理学的要素を解析することは、不可能ではない。

私の専門はコンピュータサイエンスなので、実際の検証をぜひ音響工学の研究者にやっていただきたいところですな(他人任せ)。まずは要素を分解するところから…といっても、生理的要因のほうは実験が難しいだろうから、まずは楽器起因の要素条件を変えながら、サウンドを解析する、という試みがそろそろスタートしても良いのではないかな。私の生きている間に、どなたかが(少なくとも楽器要因に関しては)研究を完了してくれればなと思っている。

2008/04/11

木下直人さんから(デファイエのfidelio盤)

ダニエル・デファイエ Daniel Deffayet氏は、例えばベルリンフィルとの共演による「アルルの女」や、国内盤「魅惑のサクソフォーン」などを筆頭に、いくつかの録音を吹き込んでいる。例えば、Adolphesax.comのこのページなどから、ディスコグラフィを参照することができるが、今回紹介するのはあまり知られていないfidelio盤。初めて存在を知ったときは、「へえー、こんなのがあるんだ!」という感じだったな。木下さんは、これも例のオークションで手に入れたのだろうか…。

「Le saxophone」という盤で、デファイエ氏のソロ録音、デファイエ四重奏団の録音がカップリングされている。ピアノは、ジャクリーヌ・デュッソル Jacqueline Dussol(ってダレ?)。収録曲目は、以下の通り。

(Daniel Deffayet & Jacqueline Dussol)
・P.ボノー「組曲」
・A.チェレプニン「ソナティネ・スポルティヴ」
・P.モーリス「プロヴァンスの風景」
(Quatuor de saxophones Daniel Deffayet)
・P.ヴェローヌ「野獣園より"イルカ"」
・P.ヴェローヌ「半音階ワルツ」
・P.ヴェローヌ「アンダルシアの騎士」
・J.セムレア=コレリ「アルレキナード」
・R.クレリス「かくれんぼう」
・F.デクリュック「パヴァーヌ」
・E.ゴージャック「子供の夢」

デファイエが演奏するボノー、チェレプニン、モーリスなんて、夢想はすることもあるけれど、まさか実際に存在するなんて!という驚き。録音がデッドであり、やや記録音の解像度が低いためか、Crest盤などに比べると音色そのものの魅力という点では劣るかもしれないが、天才的なフレージングの織り成し方は、相変わらずの素晴らしさ。このくらい吹かれてしまうと、ところどころ呂律が回らなくなっているあたりは、ちょっと微笑ましいと思えてしまうほどですね。

四重奏団のほうは、EMIの録音と重複するものもありつつ(録音時期が近いということか?)、ユレ・セムレア=コレリ Jules Semler Collery「アルレキナード Arlequinades」などというマニアックな曲が入っているあたりが目をひく。しかも、これがまた楽しい曲なのだ。ヴェローヌの作品群の演奏なんか、EMI盤よりもこちらのほうが好きかもしれない。不思議と耳を傾けたくなる演奏だ。

2008/04/10

ボーンカンプ×野田燎 on YouTube

オランダのサクソフォン奏者、アルノ・ボーンカンプ氏と野田燎氏の対談&演奏映像が、YouTubeにあったので貼り付けておく。収録場所はオランダ、1991年に撮影されたものだそうだ。…き、貴重だ!いったいどなたがアップロードしたのだろう。野田氏のしゃべりは、なかなかテンションが高くて面白い。音楽的キャリアのスタート、演奏ポリシーなど…。

最後に演奏されているのは、野田氏が作曲したアルトサクソフォンのための二重奏曲である、「紫の淵 Murasaki no Fuchi」…この作品の名前は知っていたが、紫光と紫外線の境目=可視と不可視の境目のことを意味するとは知らなかった。冒頭がデザンクロのアレに聴こえてしまってしょうがないのだが。あっ、そういえば、管打のトランペット部門の本選課題曲、デザンクロの「Incantation, Threne et Danse」なのですね。

・対談(前半)


・対談(後半)


・デュオ演奏

2008/04/09

ティエス・メレマ氏、腕を負傷

公式サイトからの情報。

オランダを代表する若手サクソフォン奏者、ティエス・メレマ Ties Mellema氏が、料理中の事故により腕を負傷してしまったそうだ。発表によると、サクソフォンの演奏に不可欠な右手尺骨神経(薬指・小指・親指以外の外向きの開き等を司る)を切断するなどしたとのこと。アメリカとオランダで予定されていたAmstel Saxophone Quartetの演奏会は中止され、メレマ氏は治療に専念するそうだ。

一日も早い回復を願おう。誰もが、同じ気持ちであると思う。ただ回復を願うだけでなく、私にも何かできることがあれば良いのだが…。

ダリウス・ミヨー「スカラムーシュ」

2008/04/08

【復刻記事】No Man's Land

アレッサンドロ・カルボナーレ氏と言えば、言わずと知れたクラリネットの名手だが…。インターネットを徘徊していたところ、氏のCDの中に、トンでもないものがあるらしいことが判明。

な、なんと、



吉松隆「ファジイバード・ソナタ」&フィル・ウッズ「アルトサクソフォン・ソナタ」をBbクラリネットでやっちゃったアルバムですよ、奥さん!!

し、信じられない。アルトサックスのために書かれた作品としては、両方ともかなりカッコいい名曲だが、それをまさかクラリネットでやったアルバムが存在するとは…。え、常識だって?

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F.ザッパ - FZ for Alex (originally for Saxophone?)
P.ウッズ - ソナタ (originally for Alto Saxophone)
G.フィトキン - GATE (originally for Soprano Saxophone)
E.ピエラヌンツィ - Elisions du Jour
P.ドリヴェラ - 小組曲 (originally for Saxophone?)
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ (originally for Alto Saxophone)
C.ボッカドーロ - エレジー マイルス・ディヴィスの思い出に (originally for Trombone?)
F.ダンロレア - トレント

アレッサンドロ・カルボナーレ Alessandro Carbonare 氏(クラリネット)と、アンドレア・ディンゴ Andrea Dingo 氏(ピアノ)のデュオアルバム「No Man's Land」。カルボナーレ氏と言えば、リヨン歌劇場管弦楽団やフランス国立管弦楽団、スーパー・ワールド・オーケストラの主席を務め、ソリストや教育者としての名声も高い有名な奏者。何年か前に知人が来日時のコンサートを聴きに行ったらしいが、それは良いコンサートだったとのこと。ブラームスのようなロマン派には、イタリア人ならではの「歌」で、そして現代モノには圧倒的なテクニックと美音でと、とにかく器の広い奏者なのだ。

そしてこのCD。セルマーのサポートを受けて、2003年に録音・発売されたアルバムだそうだ。もう何度か聴いたけれど、こいつは凄い!何が凄いって、まずサクソフォンのために書かれた曲をBbクラリネットで演奏してしまっていること。あの吉松隆「ファジイバード・ソナタ」がBbクラリネットで演奏されているのだ!ちょっとサックスをかじったことのある人であれば、衝撃的ではないか?

ファジイバードだけではない。フィル・ウッズ「ソナタ」に、グラハム・フィトキン「GATE」、ジャズサックス奏者のドリヴェラ d'Riveraの作曲した「小組曲」と、フランク・ザッパのメドレー「FZ for Alex」…クラシックの範疇を超えながらも、一貫してコンセプチュアルなプログラム。この選曲のセンスは、他のクラシック・クラリネット吹きには到底、真似できないだろう。

クールでカッコよくて、クラシックなのかロックなのかジャズなのか…こういう世界はサックスの独壇場であるとばかり思っていたが、クラリネットでもできるんだな(しみじみ…)。失礼ながら、こんなに幅広い表現を持っている楽器だとは思いもしなかった。

吉松、ウッズ、フィトキンの作品はサックスで聴いたほうがさすがにしっくり来ると思ったが、これはこれでクラリネットがクラシックを飛び出した形態の極限形と断言できる。演奏テクニック、ノリ、即興演奏、音色、どれをとっても文句のつけようがないすばらしいCDだ。

フィトキン「Gate」はオリジナルのソプラノ・サックス版の演奏を聴いたことがないが、ここでのカルボナーレ氏の暴れっぷりはすさまじいの何の。アルバム収録曲中で白眉の演奏だと思う。ウッズやファジイバードの即興部分も聴きモノ(サックスではこうは吹けないだろうな)。ザッパのメドレーは特殊奏法も生かしながら、ネジが一本外れた感じを表現しているし、小組曲での愉悦感も楽しい。

あらゆるクラリネット吹きにオススメ。クラリネットを見る目が変わるとはこのことだ。サックスを吹いている方も、ちょっとキワモノを聴いてみたい方はどうぞ(笑)。

日本語でこのCDについて書かれたページが見つからなかった。日本ではまだほとんど知られていないCDなのだろうか?もったいないなあ。

【復刻記事】New Art SQのウェブページ

new art saxophone quartetのWebページ(http://www.new-art-sax.com/)で今まで発売されたCDの音源が全曲128kbpsの音質でダウンロードできる!ドイツ語のページで左のメニューから「DIE HORBAR」を選ぶと、リストが出ます。

今までサクソフォーンの発展が目覚しくなかったドイツで注目すべき団体であり、その上手さには舌を巻くばかり。アルバム「Tempesta」においてはなんと弦楽四重奏曲を集めて披露していすが、サクソフォーンの楽器の制約を微塵も感じさせずに聴き手を音楽に委ねさせてくれる。「Primavera」や「Songs and Dances(いちおし!)」もすばらしい!

リスニング目的だけでなく。たとえば参考音源として、サンジュレの「四重奏曲第一番」や、デザンクロの「四重奏曲」なんて、ネット上に無料ダウンロード可能なものとしてアップされているもののなかでは、おそらく最も良い演奏ではないかな、と思う。

同じような試みは他のサクソフォーン四重奏団のページでも行われているが、ここまで太っ腹なのは他に見たことがない…。

2008/04/06

木下直人さんから(若き日のロンデックス)

ジャン=マリー・ロンデックス Jean Marie Londeix氏の実質的なデビュー盤ということになるのだろうか。「Jean-Marie LONDEIX saxophoniste(VENDÔME STV 214)」というLP。ロンデックス氏の公式サイトの記述によると、1960年の出版であることがわかるが、こんなものをもお持ちとは。レーベルはVENDÔMEで、ジャケットからは、あの伝説的な録音技師であるAndre Charlinの名前を読み取ることができる。収録曲目は以下の通り。

D.Milhaud - Scaramouche
P.M.Dubois - Le lievre et la tortue
S.Prokofiev - Visions fugitives
A.Ameller - Jeux de table

前半2曲がオーケストラ(Ville de Dijon音楽院管弦楽団)との共演、後半2曲がピアノとの共演。このうち、デュボワの「ウサギとカメ」は「Portrait(MDG)」でも復刻されていたが、その他は未復刻のはずである。ミヨーの「スカラムーシュ」も、「Portrait」に入っているのはCrest盤からのトランスファー(ピアノとのデュオ)だったからな。こちらは、オーケストラとの共演ヴァージョン。

1932年生まれのロンデックス氏にとって、まだ20代の録音だということになる。サクソフォン界の歴史上のプレイヤーの中でも、かなりの早熟の天才であったと言われるロンデックス氏だが、このVENDÔME盤は、まさにその若々しい勢いとテクニックを感じ取ることができる録音。そういえば、復刻された「Portrait」の中でも最も(演奏が)面白かったレコーディングは、1957年3月2日に録音されたボノーの「ワルツ形式によるカプリス」だったっけ。大御所と呼ばれる方々の若いときの録音を聴くのって、楽しいですな。

「スカラムーシュ」こそ、ややオーケストラに足を引っ張られているかなという感じもするが、「ウサギとカメ」のウサギ部分なんか、まるでミュールを思わせるような鮮やかな演奏で決めるし、プロコフィエフ作品やアメラー作品でのピアノとの共演も素敵だ。ピアニストのGille Mauriceという方は、どういった経歴の持主なのだろうか。若くしてこれだけの演奏をしてしまうロンデックス氏のこと、世界中にその名が知れ渡るのは、まさに時間の問題であったのだろう、という気さえしてくる。

ところで、ロンデックス氏自身のプライヴェート録音の中には、姉のスージー・ロンデックスとの共演でトマジの「バラード」の一部録音(1947年…15歳だ!)というのもあるようで、叶わないだろうとは思いつつも、そんなに若い頃の演奏ならばぜひ聴いてみたい。…と、最後はやや話が逸れてしまったが(笑)。

2008/04/05

The Ogushi's Ballad(小串俊寿)

面接のために東京に出たときに買ってきた。「The Ogushi's Ballad(Wave Master WM-0529)」。サックス:小串俊寿、ピアノ:白石光隆、パーカッション:横山達治というメンバーだが、今まで意識して小串さんの演奏を聴いたことがなかった私。ちょっと印象に残っているといえば、数年前のフェスティバルで演奏されたミヨーの「世界の創造」かなあ。ホールの響きでパーカッションがグシャンと響いてしまい、さらにオーボエがイマイチだったような記憶が。というわけで、きちんと聴くのはこれが初めて。

ザ・コース・オブ・ライフ
翼をください
大きな古時計
クワイエット・サンセット
瞳がほほえむから(ボッサノヴァ ver.)
ラ・シャンソネット
夢の丘にて
私を泣かせてください
女心は秋の空
瞳がほほえむから

…これは良い!!ちょっと深めのヴィブラートに、ソプラノとアルトの甘くキラキラした音色。シンプルで美しいメロディを、ごくごく普通に歌い。ピアノとパーカッションは、時にサポートとして、時に主役として。こんな当たり前のことばかりが録音されたディスクなのに、どうしてこんなに心惹かれるのだろう!

「瞳がほほえむから」のボサ・ノヴァを口ずさみ、「夢の丘にて」のタイトルどおりのまるで夢のような響きに溺れ、ヘンデル「私を泣かせてください」の物悲しく始まるも、次第に高潮するフレーズに涙する。「女心は秋の空」に夕暮れ時の情景を思い浮かべて…。最後に、「瞳がほほえむから」の残照を感じさせ、余韻を残す演出が、ニクい。まるで「これの他に何もいらない」と思わせるような良さがあるな。

こういうの、やはり手元に必要だ。私は日本の歌謡曲(JPOPというやつ)を聴かないので、なおさらなのかもしれないが。

毎年12月に銀座で行われているHappy Sax Concert、良い評判は聞きつつも、忙しい時期であったので今まで一度も行ったことがなかった。だが、これを聴いてとても行きたくなってきた!今年はぜひチケットを買ってみよう!

2008/04/04

NewYork Counterpoint on YouTube

スティーヴ・ライヒ Steve Reichの「ニューヨーク・カウンターポイント」サクソフォン四重奏バージョンの動画が、YouTubeにアップされていたので貼り付けておく。演奏は、プリズム・サクソフォン四重奏団 Prism Saxophone Quartet。

そういえば、今年の武満徹作曲賞の審査員は、スティーヴ・ライヒだったな。どんな曲が選ばれているのだろうか。本選聴きに行こうかなあ。



ところで、YouTubeを観るときに、fmtパラメータに18を与えてあげると(特に最近アップされた動画に関しては)画質・音質が向上するのだ。具体的には、YouTube動画のURLの後ろに「&fmt=18」と付けてみてくださいな。

参考に、John van der Lindenの演奏する「Buku」の動画へのリンクを貼っておきます。
J.t.フェルドハウス「Buku」(&fmt=18なし)
J.t.フェルドハウス「Buku」(&fmt=18あり)

2008/04/03

John Harle plays...

適当にCDを選んでレビューしてみようかと、目を瞑ってCDラックから一枚取り出しましたるは、イギリスのクラシック・サックス界の重鎮、ジョン・ハール John Harle氏のアルバム「John Harle plays(Clarinet Classics CC0048)」。1987年にHyperionレーベルへと録音され、長きに渡って廃盤となっていたものの、2004年にClarinet Classicsレーベルから待望の再発売がなされたというCD。

Phil Woods - Sonata
Richard Rodney Bennett - Sonata
Dave Heath - Rumania
Edison Denisov - Sonata
Michael Barkeley - Keening

1987年という時代…デファイエがまだパリ音楽院の教授であった時代だ!…にレコーディングされたクラシックサックスのアルバムが、フランスの作品を一枚も含んでいないあたりに、ハール氏のコダワリというか、イギリスのサックスを世界に向けて発信しようという執念を感じる。

その意気込みはプログラムだけでなく演奏にも現れており、まず一曲目のフィル・ウッズ「ソナタ」第1楽章から物凄いのですよ。優しい曲調から始まったかと思えば、突然に急速部分へなだれ込み、アドリブを交えながらの暴れっぷり。ジョン・レネハン John Lenehan氏のピアノも、譜面無視しまくりのハイ・テンションなタッチ。「クラシックサックスにこんな世界があったんだ!」とは、初めてこのCDを聴いたときの、偽らざる感想である。

ベネット「ソナタ」は、ソプラノサクソフォンのための作品。全体的に浮遊感のある和声から構築されており優しく響くが、続くヒース「ルーマニア」はモーダルな旋律が耳にガツンと叩き込まれてくる。「クラシックのソプラノサクソフォンをこんな音で吹きますかあ」という感じで、今でこそ慣れてしまったけれど、当時はセンセーショナルだったのだろうなあ。デニゾフは、なんという自由な解釈だ!第1楽章を、こんなに生き生きと聴かせられるのか。そして、第3楽章のジャズのフィーリングを理解し、かつ演奏に表現できていたのは、この頃は世界を見渡してもきっとハール氏だけであったのだろうな。

渋谷のタワレコやamazonのここなんかでも、このジャケットが並んでいるところを見かけた方もいるかもしれないが、そうだなあ、例えばフランスのサックスCDを聴きまくって、そろそろ飽き始めた頃に聴くと、物凄いショックを受けますぞ。聴いたことのない方は、ぜひ。

2008/04/02

Henri Pousseur「Vue sur les jardins interdits」

アンリ・プッスール Henri Pousseur(1929 - )は、ベルギーの作曲家。1950年代にダルムシュタットの講習会で頭角を現し、以降ドイツ、イタリア、アメリカ等を回りながら国際的に活躍した。作風としては、セリーや偶然性といったところを起点とし、多岐に渡る。サクソフォンを含む作品は、ディナンのアドルフ・サックス国際コンクールに際して委嘱された「カプリス・ド・サクシカレ Caprice de saxicare」のほか、室内楽編成のパートとしてサクソフォンが含まれるものがいくつか見られる。

サクソフォン四重奏曲である「Vue sur les jardins interdits(禁じられた庭の眺め/禁断の園へのまなざし)」は、1973年の所産。Ministere belge de la culture francaiseの委嘱で書かれ、11月25日に完成(もともとはオルガンのために書かれたとも言われているが…?)。作品はフランソワ・ダニール率いるベルギーサクソフォン四重奏団へと献呈された。また、この作品は、イタリアの指揮者・作曲家であったブルーノ・マデルナの追悼の意味を込めて作曲されている。

おおよそ10分に及ぶ本作品は、まず不安定な半音のハモりから開始され、フラッターやトリル、そしてしつこいほどのインタラプトを挟みながら、ぼんやりと熱を帯び始める。中間部では、突如として響き渡るバロックのハーモニーと、攻撃的なフレーズの対比が印象的。最後は、波が引くようなpppの伸ばしにて終わってしまう。クリスチャン・ローバの「アルス」にも似ていたり、またコンセプトは全く違うが、中間部の響きから、なぜかエルッキ=スヴェン・トゥールの「ラメント」を思い出した。

録音は、XASAXのものがもっとも手に入れやすい。「Ars Subtilior」と名づけられたアルバムで、同時代の作曲家の作品と、14世紀の"新しい"音楽様式を担った作曲家のひとり、Jacob de Senlechesの作品を交互に配置し、最後に「Vue sur les jardins interdits」を置くという演出が憎い。ちなみにこのへんから買える。実演機会も時々あり、近年では、日本においてはトラクシオン・アヴァンや雲井雅人サックス四重奏団によって演奏されている。数年前のフェスティバルでトラクシオン・アヴァンが演奏したときの、客席をも巻き込んだ不思議な雰囲気は、今でも思い出すことができる。

楽譜も持っている(出版はEdizioni Suvini Zerboni)。なぜか大学の吹奏楽団の練習場所の机の上(本やら楽譜やらが積み重なっている)に放り出されており、あやうく処分されそうになっていたところを確保。なんでこんなマニアックな曲が吹奏楽団の練習場所にあったのかは、大変な謎。せっかく楽譜があるので演奏もしてみたいけれど、メンバーからは印象が悪そうだなあ(^^;

2008/04/01

4月1日

※エイプリルフールですね。ほかに面白いネタを思いついたら、教えてください。あ、下の記事は、きちんと「やまはち」とか「せのれまいち」になっていますので。

サックスの音程改善に向け国内メーカー躍進、海外メーカーも追随

4/1、国内大手楽器メーカーであるヤマ八は、かねてより開発を進めていたサックス新モデルの管体構造の設計図と、デモ楽器第一号を公開した。最新の流体力学に基づいたコンピュータ・シミュレーションを基に、これまでサックス奏者が苦手としていた開放音ド#~左手サイドキィの音色、オクターヴキイを押したときのレ・ミの音程を、同時に改善する画期的な管体構造を発見したとのこと。ヤマ八社長の井藤俊二氏は、「サックスの歴史の中できわめて重要な発見。管体構造を変更するだけなので、価格を据え置くこともできる」とコメントし、今回の発表に対する自信の強さを伺わせた。

記者会見では、プロモーションのために来日したサックス奏者のフノレモ一氏によるデモ楽器演奏も披露されたが「もともと上手い奏者が吹いても、違いがわからない」との声も記者の間から聞かれた。

このヤマ八の発表に対し、セノレマ一社もサックスの音程を改善する新システムを発表した。管体の最下部に電動式のメカとチューニングメーターを組み込み、キーのポジションによって瞬時に管体の長さを調整し、音程を改善するシステムであるとのこと。社長であるアドルフ・セノレマ一氏は、「すでにお持ちの楽器に、数万円の追加投資でこの機能を追加することができる」と、ヤマ八との違いを強調した。

デモ楽器のプロモーションは同社のテスターであるドゥラソグノレ氏が行ったが、デ二ゾフ作曲「ソナタ」第2楽章の微分音が全て平均律の半音階に補正され、臨席した作曲者や委嘱者の口ソデシクス氏からはブーイングもおきた。演奏後、聴衆からは「現代曲の演奏には適さないのではないか」「プロモーションにこの曲を使用したのは、ミスではないのか」との声もささやかれた。