2007/10/18

クラシック・サクソフォン・レパートリー100曲 version 0.2

8月に書いた記事「クラシック・サクソフォン・レパートリー100曲 version 0.1」の改訂版を作成した。

・サクソフォン独奏、アンサンブル、室内楽のための代表的なオリジナル作品、100曲を挙げる。
・オーケストラの編成としてサクソフォンが乗っている作品は、含めない(今後方向性が変わる可能性もある)。
・意見を取り入れつつ積極的に改訂を行い、できる限り"General"なリストを目指す。改訂ごとに、このブログ上で最新バージョンを公開。

タイトル通り、「クラシックサクソフォンの世界から代表的なレパートリーを100曲を挙げたら、どんなリストになるだろう」をコンセプトに据えている。今回は、資料を参照しながらじっくり考えてみよう。

まずは、黎明期のレパートリーから。

サンジュレ「四重奏曲第一番」
ドゥメルスマン「オリジナルの主題による幻想曲」
フロリオ「アレグロ・ドゥ・コンセール」

3曲。ムラエールト、アーバンなどいくつか入れたいものもあったのだが、録音が少ないのでとりやめ。この時代はとにかく、サンジュレの「四重奏曲」の知名度が飛びぬけている。改訂を施したバージョンがMolenaarから出版されており、世界中の奏者の定番レパートリーとなっているのは、ご存知の通り。

次は、フランス・アカデミズム発の独奏曲(無伴奏・ピアノデュオ・協奏曲)

イベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」
カプレ「伝説」
ガロワ=モンブラン「6つの音楽的練習曲」
ケックラン「練習曲」
ゴトコフスキー「ブリヤンス」
コンスタン「コンチェルタンテ」
チェレプニン「ソナティネ・スポルティヴ」
ダンディ「コラール・ヴァリエ」
デクリュック「ソナタ」
デザンクロ「プレリュードとカデンツ、フィナーレ」
デュボワ「協奏曲」
シュミット「伝説」
ジョリヴェ「幻想的即興曲」
ダマーズ「ヴァカンス」
ドビュッシー「ラプソディ」
トマジ「バラード」
トマジ「協奏曲」
パスカル「ソナティネ」
ブートリー「ディヴェルティメント」
プラネル「ロマンティック組曲」
フランセ「エキゾチックな5つの踊り」
ボザ「アリア」
ボノー「ワルツ形式によるカプリス」
ミヨー「スカラムーシュ」
モーリス「プロヴァンスの風景」
ランティエ「ユースカルデュナーク」
リュエフ「ソナタ」
ロバ「9つのエチュード」
ロベール「カデンツァ」

29曲。さすがに多いな。フランスの曲ではないものが紛れている可能性あり(事実、最初のフィルタリングでアブシルを外しそこなった)。コンスタンは「ムジク・ドゥ・コンセール」を外して「コンチェルタンテ」へ入れ替え。「ムジク~」でも良いのだが、ある意味現代のフランス・サクソフォン界の構図を決定したともいえる、1978年のギャップ・サクソフォーンコンクールの本選課題曲を入れないわけにはいくまい。こういった「歴史上重要なレパートリー」は、コンセプトからやや外れるかもしれないが、扱いは難しいところだ。そのほか、ジョドロフスキを泣く泣く外すなど、変更多数。

フランス・アカデミズム発の四重奏曲&室内楽曲。

エスケッシュ「タンゴ・ヴィルトゥオジテ」
カルメル「コンチェルト・グロッソ」
ケックラン「ジーン・ハーロウの墓標」
ジャンジャン「四重奏曲」
シュミット「四重奏曲」
ショルティーノ「異教徒の踊り」
ティスネ「アリアージュ」
デザンクロ「四重奏曲」
デュボワ「四重奏曲」
トマジ「春」
パスカル「四重奏曲」
ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」
プラネル「バーレスク」
フランセ「小四重奏曲」
ボザ「アンダンテとスケルツォ」
ベルノー「四重奏曲」
ランティエ「アンダンテとスケルツェット」
リヴィエ「グラーヴェとプレスト」
リュエフ「四重奏のためのコンセール」
ラクール「四重奏曲」

20曲。ランティエは迷ったが一応残した。「アリアージュ」だが、ティスネ入れようと思ったらこの曲しかないもんな、しょうがない。しかし、このリスト!現代にあっても、マルセル・ミュール四重奏団が遺してくれたレパートリーにしがみついている、という現状が浮かび上がってくるようだ。

次は、フランス以外の、ヨーロッパの独奏曲。

アブシル「ソナタ」
イトゥラルデ「小さなチャルダッシュ」
グラズノフ「協奏曲」
コーツ「サクソ・ラプソディ」
シュトックハウゼン「友情に」
ダール「協奏曲」
デニゾフ「ソナタ」
ドナトーニ「ホット」
ナイマン「蜜蜂が踊る場所」
ヒンデミット「ソナタ」
フェルド「ソナタ」
フェルドハウス「Grab It!」
フサ「エレジーとロンド」
ベネット「スタン・ゲッツのための協奏曲」
ベリオ「セクエンツァIXb」
マルタン「バラード」
ラーション「協奏曲」

17曲。フランスを離れると、とたんにラッシャーに献呈された曲が増えるのがお分かりだろうか。グラズノフ、コーツ、ダール、フサ、マルタン、ラーション…。20世紀前半におけるフランスの外でのサクソフォーンの発展を担ってきた、ラッシャーの功績が浮かび上がってくる。

ヨーロッパ産の、四重奏曲&それに準じた室内楽。

ヴェーベルン「四重奏曲」
クセナキス「XAS」
グラズノフ「四重奏曲」
デニゾフ「五重奏曲」
ナイマン「トニーへの歌」
ヒンデミット「コンチェルトシュトゥック」
フェルド「四重奏曲」
ベネット「四重奏曲」

8曲。ロシアの作品が少ない。グバイドゥーリナとか、スミルノフ、ラスカトフなど思いつくのだが、デニゾフが有名すぎて入れるのは微妙かな…。ヴェーベルン「四重奏曲」は入れるべきでしょう!唯一ウィーン新楽派の筆による、珠玉の作。

アメリカ大陸の作品。ソロと四重奏と室内楽を一気に挙げます。

ヴィラ=ロボス「ファンタジア」
ウィリアムズ「エスカペイズ」
ウッズ「ソナタ」
ウッズ「3つの即興曲」
オルブライト「ソナタ」
カーター「カノン風組曲」
グラス「四重奏のための協奏曲」
クレストン「協奏曲」
クレストン「ソナタ」
ケージ「Four5」
スミス「ファンタジア」
トーク「July」
ハイデン「協奏的幻想曲」
ハイデン「ソナタ」
ペック「上昇気流」
マスランカ「ソナタ」
マスランカ「マウンテン・ロード」
ムチンスキー「ソナタ」

17曲。カーター、ケージやジョン・ウィリアムズの作品を追加した。オルブライトの作品は、アメリカではベリオ、クレストン、デニゾフ(=「ABCD(Albright, Berio, Creston, Denisov)」ともいうらしい)と並んで定番。ジョン・サンペン周辺の新しい作品を入れられなかったのが、少し残念。

最後に、世界で通用する日本産の楽曲を挙げましょう。

伊藤康英「協奏曲」
棚田文則「ミステリアス・モーニングIII」
野田燎「即興曲」
湯山昭「ディヴェルティメント」
吉松隆「ファジイバード・ソナタ」

5曲。伊藤康英先生の「協奏曲」は、そのあまりの難易度の高さから演奏されることは少ないが、この曲の演奏によって、現在の日本のサクソフォーン界が(良くも悪くも)産声を上げたと、言えるのだ。野平一郎の「アラベスクIII」は、入れたかったなあ。

さて、作成してみて、前回よりはいくらかマシなリストになったと思うのだが、いかがだろうか。

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