2007/06/20

クセナキス「XAS」

数あるサクソフォン四重奏曲のなかで、最も美しい形をもつ作品といえば、ヤニス・クセナキス Iannis Xenakisの「XAS(ザス)」に他ならないだろう。そして、完璧な美しさと同時に、最も演奏困難な作品であり、さらに最も不安定な響きをも併せ持つ。

楽譜上の各所に現れる対称性、厳密に計算されつくされた音の配置、サクソフォンの限界を突破する幅広い音域、などなど、半端ではない遠慮無さ。まるでサクソフォンのために書かれたとは思えず、機能的制約がない4声の電子音によってしか演奏できないのではないか、とも思わせる強烈なスコアは、他の作曲家のどの作品でも見ることができないものだ。

そもそもクセナキスは、数学を音楽に取り入れることに傾倒した作曲家の一人なのであった。確率論やら集合論的やらを作曲に取り入れては、計算され尽くされた演奏困難な作品を生み出し、計算機の進化とともにコンピュータ・ミュージックにも傾倒し、ソフトウェアを使った自動作曲のようなこともやっていたのだ。そんなクセナキスなのだから、サクソフォーン四重奏のために作品を書いたところで、それが「クラシカル・サクソフォーンならでは」のものになる、というはずは無かったのだが、それにしてもお洒落なフランス曲を聴きなれた耳には、かなりインパクトを持つ作品であることは、疑いようがない。

楽譜上の美しさと響きの不安定さは、比例する。(実はスコアを眺めたことはないのだが)聴き進めていくだけで、楽譜の構造が手に取るように分かるほどの、見事なまでの対称性。そして耳あたりの強烈さ。微分音の多用は、不安定さを押し出しながらも、曲の構造の完璧さを深めているようにも思える。

私にとっては、なんと言ってもハバネラ・サクソフォン四重奏団のライヴ盤の印象が強い。聴くその時までは見過ごしていた、この曲の美しさと面白さ、カッコよさを私に気付かせてくれた録音だ。、世界最高レベルのテクニックとアンサンブルの有機性、熱くなろうとも常にストレスフリーな音色、そして何より、ライヴならではの圧倒的なパワー&テンション…クライマックスのフラジオは、圧巻。「XAS」の演奏に関しては、この録音が他のものに比べて頭3つ分ほど飛び抜けている、と思う。

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