2007/04/05

Ties Mellema「Grab It!」

mckenさんのところの記事で知り、けっこう前に買ったまま、紹介せずにいたCD。オランダのサクソフォーン奏者ティエス・メレマ Ties MELLEMA氏のセカンドアルバム「Grab It!(Amstel Records AR 005)」。PayPalアカウントさえ持っていれば、メレマ氏の公式ページから簡単に買える(送料込みで18ユーロ)。

・フィリップ・グラス GLASS - Melodies(抜粋)
・ヤコブ=テル・フェルドハウス VELDHUIS - Billie
・クリスチャン・ローバ LAUBA - Balafon
・ヤコブ=テル・フェルドハウス VELDHUIS - The Garden of Love
・フィリップ・グラス GLASS - Gradus
・マーク=アンソニー・ターネジ TURNAGE - Two Memorials
・ヤコブ=テル・フェルドハウス VELDHUIS - Grab It!

なんという異質な選曲!フェルドハウス作曲の、サクソフォンとゲットブラスターのための3曲、そのほかは全て無伴奏。アルバム全体の明確なコンセプトは掴みきれないが、どこか一貫性を保つプログラムだ、という雰囲気は感じ取れる(苦しい…)。

まず私が嬉しかったのは、フィリップ・グラスの「Melodies」の録音。Chester Musicから出版されている、「Melodies for Saxophone」という曲集をアルトサックスで抜粋して吹いたものなのだ。この曲集、例えば「サクソフォーン四重奏協奏曲」の第4楽章の旋律を始め、とても耳当たりの良い素敵なメロディが収録されている隠れた名作。勝手に気に入っていた曲集だったので、こうやって音になっているのを聴くと、嬉々としてしまう。

クリスチャン・ロバの「Balafon」も、無伴奏の作品としては最近ようやく有名になってきた曲だが、録音が増えたのは嬉しい限り。どこか民族的・宗教的な薫りを漂わせながら、徐々に高揚するサクソフォンがクール。

これら無伴奏作品が、聴き応えあるレベルで演奏されているのは驚き。技術も安定しているし、なにより音色が美しいのだ。あのボーンカンプ BORNKAMP氏の弟子として、師匠のレコーディングにも参加しているほどなのだから、オランダでも期待の若手なのだろう。

さて、無伴奏も前述のように素晴らしい出来栄えだが、なんといってもこのアルバムの重心はフェルドハウスの3作品「The Garden of Love」「Billie」「Grab It!」だ!それぞれソプラノ、アルト、テナーサックスとテープ(ゲットブラスター)のための作品で、声をサンプリングしてリミックスしたテープに、サクソフォンを重ねて演奏されるというもの。このなんとも言えない、ロックのようなジャズのようなポップスのようなグルーヴに飲み込まれていく快感。

このアルバムでは、特に「The Garden of Love」と「Billie」の演奏が素晴らしい!リズムを正確に捉えながら、音色の変化など、個性ある解釈も聴き取れて、とても楽しめる。「Grab It!」の演奏も良いのだが、この曲に関してはすでにいくつかレコーディングがあるため、どちらかと言えばボーンカンプ氏やショウラキ氏の演奏のほうに軍配があがるかな。

無伴奏サックス、そしてテープ+サックスという、異質なクラシック・サックスの世界を垣間見ることができるアルバムだが、聴いてみれば思いのほかキャッチーな音楽に驚くことだろう。

参考:
「The Garden of Love」ビデオ映像(演奏:ティエス・メレマ)
「Grab It!」冒頭抜粋(演奏:アルノ・ボーンカンプ)
「Grab It!」中間部抜粋(演奏:ファビエン・ショウラキ)

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