2007/04/23

ELP「Tarkus」

Emerson, Lake & Palmerが1971年に発表したアルバム「Tarkus」のA面に収録された組曲「Tarkus」は、1970年代のロック史上に燦然と輝く、大傑作のひとつである。いわゆるプログレッシブ・ロックというジャンルの楽曲の中でも、私が最も頻繁に聴く曲だ。

架空の生物兵器"タルカス(写真参照)"が、噴火する火山から現れ、地上において破壊の限りを尽くし、"マンティコア"に目を突かれてすごすごと海に向かって退散するまでを描写した、20分を超える壮大な組曲。楽曲の3/4を占めるインストゥルメンタル・パート、モーグ・シンセサイザーの音色を駆使した極彩色の音色世界、次から次へと変わる拍子、グレッグ・レイクの歌など、実に多くの要素が詰め込まれており、これ一曲でプログレッシブ・ロックの全ての要素を堪能できると言っても過言ではない。

曲は、以下の7つのパートからなり、続けて演奏される。

1. 噴火 Eruption
2. ストーンズ・オブ・イヤーズ Stones of Years
3. アイコノクラスト Iconoclast
4. ミサ聖祭 Mass
5. マンティコア Manticore
6. 戦場 Battlefield
7. アクアタルカス Aquatarkus

遠鳴りするシンセサイザーの和音が徐々に重なり、次の瞬間、5/4拍子の「Eruption」に突入。まるで火砕流のように疾走するビート、シンセサイザーの音色。この導入部で一気に引き込むような曲の作りがニクい。火山繋がりで「チェンバー・シンフォニー」の第4楽章プレストを思い出させる。続く「Stones of Years」では、打って変わってレイクの歌声によりクールダウン。…こんな感じで曲は進み、冒頭を越える激しさが見られるところから、ちょっとイッてしまっているようなファミコンサウンドのような部分まで、目まぐるしく展開していく。

そういえば、某友達が、この曲を聴いて「(RPGゲームでの)ボス戦のBGMみたい」と言っていたが、…確かに冒頭の「Eruption」はそう聴こえなくもない(^^; 実際、今聴いても古臭さは全く感じられず、むしろ音作りの発想の素晴らしさに驚いてしまうほど。このころ、シンセサイザーを使用した音楽は既に究極の域に到達していたのだなあ。

この起伏、そして多様な音世界は、いくぶんクラシックに通じるところもあり、何度聴いても飽きないのだよなあ。クラシック好きで、「ロックなんて…」と思っている方には、ぜひ初めに触れていただきたい作品だ。実際、私のプログレ入門も、この曲からだったし…。

スタジオ録音されたオリジナルバージョンが、リマスタリング盤としてCD発売され、現在ではamazonなどで比較的安く買えるようだ。また、「Welcome Back My Friends To The Show That Never Ends」と長ったらしく題されたライヴ・アルバムの演奏も、スタジオ録音よりさらに引き延ばされたインプロヴィゼーションと演奏の完成度の両立が魅力的。映像作品も多く、特に1997年モントリオール・ジャズフェスティバルでのライヴ映像は、「Tarkus~展覧会の絵」がメドレーとなっている、ファンには涙モノの構成。

変わったところでは、Sax 4th Avenueという団体によるサクソフォーン四重奏版や、黒田亜樹さんによるピアノ・トリオ版(未聴)なんてのも存在する。ちなみにサクソフォーン四重奏版は、楽譜を入手すべく、某所にコンタクトを取っている最中だったりする。

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