2007/02/28

指は大切に

いつものように研究室から外に出て、電気ポットに水を汲みに行こうとしたら…どういうわけか、右手人差し指の爪の根元付近を、鉄製の重いドアの支点の近くに挟んでしまった。

挟んだ瞬間「ポキッ」という音が。えー!!

そこからは大慌て。猛烈な痛みで、よもや骨にヒビが入ったか、もしくは骨が折れたかと、慌ててつくばシティアビルの整形外科に駆け込む。

何が怖いって、右手人差し指といったらサックスの「ファ」ですよ。「ファ」が押さえられなくなったら、事実上「ファ」~「ド」が使えないではないか!一ヶ月以内に吹奏楽の本番やら、アンサンブルコンクールやらを控えている身としては、骨に異常がないことを祈るばかり。骨に異常があったら一ヶ月は人差し指に負担をかけられない=楽器を吹けないからなあ。

…で、整形外科で仰々しくレントゲンをとってもらい、ドキドキしながら検査結果を待つ。「ファの指って親指で押さえられるのかなあ」とか「親指で押さえられなかったら、演奏辞退かなあ」と気が気でない。そして検査結果。幸い骨に異常はないとのこと。ほーっ。そのときの安堵感といったらもう…。

ただ、内出血と爪の痛みがひどいので、しばらくは「ファ」の開閉が鈍いかも知れませぬ>関係者のみなさま。楽器やっている以上、指はきちんとケアしなけりゃいけないですね。怪我してから初めて気付くけど、指が10本気兼ねなく使えるのって、ありがたいことだ。

2007/02/26

サミュエル・バーバー「思い出」

サミュエル・バーバー Samuel Barber は、20世紀アメリカの作曲家。作風はおおむねネオ・ロマンティックと言え、前衛にはほとんど足を突っ込まずに、美しい旋律・魅力的な和声を持った曲を多く書いた。「弦楽四重奏曲第一番」の第2楽章を、弦楽合奏用に編曲した「弦楽のためのアダージョ」は有名で、映画音楽やサウンドトラックとしても広く使われている。

「思い出 Souvenirs」は、バーバー自身が友達との楽しみのために書いたピアノ連弾曲を、本人がオーケストラ用のバレエ組曲としてまとめたもの。オーケストラ版が最初のバージョンになり、以降、ピアノソロ用、ピアノ連弾用が相次いでまとめられた。全体は6つの楽章からなり、次のようなエピソードが付与されている。

・ワルツ(ホテルのロビーにて)
・スコットランド舞曲(3階の廊下)
・パ・ドゥ・ドゥ(ダンス・ホールの片隅)
・ツー・ステップ(パームコートでのティータイム)
・ためらい~タンゴ(ベッドルームで)
・ギャロップ(次の日の昼下がり、浜辺にて)

うーん、男女が出会ってからくっつくまでの過程を描いたようにも、なんとなく思えます(というか、あからさまにそうです)。「思い出」という題名にしろ、男女の恋愛をあからさまに音楽で描写しているのを聴く(演奏する)のは、想像が広がって面白い。加えて、本当に美しくて素敵な曲なのだ。

例えば第1楽章、これはニューヨークの人通りの多い通りに建つ、とあるホテルの様子を描写しているのだろう。時に1914年。力強く演奏されるピアノの序奏は、まさにこれから起こる様々なエピソードを暗示しているかのようだ。そして序奏がふっと途切れた後に続くワルツ。面識もなかった男女が、お互いの存在に気付く。見初めあう2人。心の中で相手に問いかけるが(フレーズが2人の間で交換される)、しかし声は出ない…。そのじらしさは、取り巻きのダンスのエネルギーとなり、背後では華やかなワルツが踊られている。

第2楽章は、偶然にも宿泊階が同じだった2人が、ホテル三階の廊下で出会う様子だろう。ちょっと滑稽なスケルツォ。男性が話を取り付けるのに苦労しているのだろうか。第3楽章は、男性が女性をダンス・パーティに誘う様子。第4楽章は次の日のティータイム。第5楽章は、何といっても女性のためらう気持ちが、徐々に情熱的となっていく過程の描写がドラマティック。「ためらい」の部分の、2人が交わす二言、三言からはセリフまでも聞こえてきそうだ。第6楽章は、喜びにあふれた疾走。人生における春ですなあ(←何)。

さて、この曲なんと、サクソフォーンのために編み直された版が存在する。作曲家として有名な生野裕久氏の筆によるもので、この曲をソプラノ+アルト+テナー+ピアノのために編曲した版なのだ(委嘱は服部吉之氏)。私は今年の頭に3つの楽章を抜粋して(ワルツ、ためらい~タンゴ、ギャロップ)仲間とともに演奏する機会があり、サクソフォンを演奏する身としては、この素敵な作品に演奏側として触れることができて大変に嬉しかったのであった。本番の演奏に気を良くしたので、再演の構想もある。

願わくば、多くの方がこのメロディを享受できるように、出版されてほしいところだけれど、さすがに難しいかなあ。

サクソフォン3本+ピアノ版が収録されたケネス・チェ Kenneth TSE氏のCD「In Memory(Enharmonic ENCD00-014)」。

演奏は、林田和之(ssax)、ケネス・チェ(asax)、服部吉之(tsax)、服部真理子(pf)で、1999年に行われたチェ氏の日本でのコンサートでのステージを抜粋して収録したものだそうな。珍しくも、服部先生のテナーの音色を聴くことができる。他の収録曲&演奏もとても良く、サックスのCDとして大変オススメできる一品。

2007/02/25

野中WEBリニューアル

野中貿易のウェブページ(→http://www.nonaka.com/)が、リニューアルされていてびっくり。明るい色調になりました。ついでに、コンテンツも増えている。

そういえば、3/25(日)アンナホールで行われる、インターナショナル・サクソフォン四重奏団のコンサートは聴きたかったなあ、残念(本番が…)。わたしゃ、バリトンを吹いているリチャード・ディーラム Richard Dirlam氏のファンなのです。

2007/02/22

ダリウス・ミヨー「スカラムーシュ」

ダリウス・ミヨーはフランス六人組の一人として広く知られている。作風は明るく多彩であり、「いかにも南フランス!」というサウンドが耳に心地よい。多作家としても有名で、生涯に400を超える作品を残しているとか。

この「スカラムーシュ」は、そんなミヨーが1937年に書いたピアノ連鍵曲「スカラムーシュ」を作曲者自身がサクソフォンとピアノのために編曲したもの(サクソフォン版が先にできたと言う話もあるが、真相は?)。当時のフランス楽壇がマルセル・ミュールに献呈した他の作品と比べると、格段に親しみやすいメロディーが聴かれ、今日でも演奏される機会が非常に多い。

聴きながら脳裏に浮かんでくるのは、からっと照りつける太陽、穏やかな海風、そしてサンバのリズム。…聴いた上での親しみやすさに比べ、実際の譜面は奏者を苦しめる跳躍やリズムが多いのは、ミヨーらしいと言えば、ミヨーらしい。表面上には苦労を出さずに、水面下で頑張る姿は、カモにも通じますな。

ピアノとのデュオ版のほか、サックス+オーケストラの版、サックス+木管五重奏の版、サックス+吹奏楽の版、サックスラージアンサンブルの版などがあり、特に木管五重奏バージョンは、とってもユニークなサウンド。このバージョンは、ジャン=マリー・ロンデックスによる録音(ambitus amb 97 874)が存在する。ご存じない方はぜひ一聴をオススメ。

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「スカラムーシュ」は、やはり快速な演奏で聴きたいところだ。私見では、須川さんの「ファジイ・バード」というアルバムに入っている演奏が、「スカラムーシュ」の究極的な録音だと考える。その他、ロンデックスのLPで聴ける演奏(上に挙げた木管五重奏バージョンではなく、ピアノとのデュオ)やボーンカンプの演奏も好き。

ちなみに須川さんのCD「ファジイ・バード」だが、…悲劇の名盤なのである。当初Apollonレーベルから販売されていたがご存知のとおりApollonは倒産してしまい、さらにApollon亡き後Bandaiレーベルに引き継がれたのだが、その直後、BandaiまでもがCD事業から撤退してしまった…という経緯が。こうして長らく廃盤になっていたわけだが、2003年7月10日、ついにArt Unionより待望の復刻版が発売された。

悪ノリ寸前ドライヴの須川さんがとても楽しそうでなんだかこっちまで気分が高揚してくる。伴奏の小柳さんも須川さんに負けず劣らずノリノリ。 2人とも若く、まだ活動開始時期ごろの録音にも関わらずこのノリのよさはいったい…?須川さんが、多くの人に愛される理由の一端を垣間見ることができる、かも。

2007/02/20

CDのバックアップ

数年前からかなり話題に上っていることで、いまさらな感じはあるけれど、CDのバックアップって、どうしたらいいだろうかと考えてみた。CDは樹脂層の劣化やコーティングミスによって、いずれアルミ製の記録面が酸化してダメになってしまう、という。早ければ10~20年程度で聴けなくなるCDもあるんだとか。貴重な音盤、聴くことができなくなったらショック!だろうからなあ。

「CD-Rに一枚一枚コピーしていく」「isoファイルにしてまとめてDVD-Rに焼く」などは却下。色素の変質を利用して記録しているこれらのメディアは、CDよりも寿命が短いらしい。「オリジナルが聴けなくなった~(>_<)」と言って引っ張り出してきたときには、バックアップのほうがダメになっているかもしれない。

「パソコンや、外付けハードディスクにisoファイルとして記録しておく」も、論外。わたしゃ今までの人生の中で、ハードディスクを3回クラッシュさせております。いつ壊れるか分かったもんじゃない。それに、isoで記録すれば一枚600Mbytesくらいになるのだろうから、100枚で60Gbytesか?容量がぜんぜん足りません。

で、「1000Gbytes程度のRAIDボックスを買って、isoファイルとして記録しておく」のが良いのではないかという結論に達した。250Gbytesのハードディスクを4台搭載したストレージで、RAID5として構築すれば、万が一、あるハードディスクが壊れても、故障したことがすぐ分かる。さらに故障ディスクを交換することで、データの復活が可能なのだ(RAID5のメカニズムについては、富士通の解説サイトがわかりやすい)。

容量に関しては使用可能領域である750Gbytesもあれば、CD換算で1200枚程度まで大丈夫だし、ネットワークに接続しておけば、オンラインストレージとして世界中のどこからでもアクセス可能だし、良いことずくめ。まあしかし、1000Gbytesのモデルとなると、かなりお高い(10万円くらい)のが難点で、しばらくは縁がないだろうな(^^;

Googleあたりが、無限の帯域と容量を持つオンライン・ストレージ領域を、月額10ドルくらいで提供してくれれば、大変ありがたいのですが。さすがにそれは無茶というものかしらん。

2007/02/19

雲井雅人「Simple Songs」

昨年12月に発売された、雲井雅人氏のアルバム「Simple Songs(Cafua CACG-0093)」。レコード芸術今月号の「特選」に選ばれたという…図書館に入っているレコ芸をパラパラめくってみると、おお、載ってる。すごい!このCD、もちろん発売直後に購入済で、とても気に入って何十回も聴いたのだが、そういえばまだブログに書いていなかった。

・バーンスタイン - シンプル・ソング
・バッハ - 3つのコラール前奏曲
・デザンクロ - 前奏曲、カデンツと終曲
・バッハ - イタリア協奏曲より「アンダンテ」
・マズランカ - ソナタ
雲井雅人(asax, tsax)、藤井亜紀(pf.)

これは、スピーカーの真正面で正座しながら聴くと、言葉を失う。今までのサックスからはちょっと聴いたことのない、何かが感じられるはずだ。雲井氏の音楽に対する精神性が、そのまま音になって立ち上がってきているのか。それは、曲に対する愛情だったり、サックスという楽器に対する思い入れだったり…そしてなにより、音楽に対する真摯な姿勢。

テナーで歌のごとく奏でられるバッハ、「美しい」デザンクロ、そして物語を感じさせるマズランカと、未知のサックスが凝縮された一枚。この演奏の素晴らしさを言葉にするのは難しいので、ぜひ手にとって聴いてみていただきたい。

そういえば、何気にSACD対応なのですな。SACD対応プレーヤで再生すると、DSDの超高音質とマルチチャンネルが楽しめるらしいが…この録音を堪能するには聴く側もきちんとした機材をそろえなけりゃいけないのか。ちゃんとした環境で聴いてみたいものだ。

2007/02/18

グラズノフ第1楽章初合わせ

協会のコンクールに向けて、早速グラズノフ「四重奏曲」第1楽章の初合わせ。3週間ぶりの集まりで、4人でヘロヘロになりながらさらう。なんだかメチャクチャ難しいんですけど。指回しではなく…なんというかこの雰囲気を再現するのが難しい(いや、指も回ってないんだけどね(--;スミマセン)。

3拍子の気品あふれるユラユラ感←なんだそりゃ、はサックスならではの譜面じゃないかな?他の楽器で同じ楽譜を弾いたり、吹いたりしてもこの感じは出せないんじゃないかしら。…まー、果たしてこの上品さを再現できるかどうかは、これからの練習にかかってくるのですが。大変だ。

でも4本で合わせていると、心地よい。久々に合わせてみると、音程はバラバラだし音色は不揃いだしでイマイチなのだが、この感覚が楽しいんだよなあ。やっぱりサクソフォン四重奏って媚薬だなあと思う。4人(そう、たった4人!)集まって、楽器に息を吹き込めば良いだけ。また本番まで、しばらく離れられなさそうです。

ピアノのコンサート

吹奏楽団の中の、ピアノ好きが集まってコンサートをやると言うので、聴いてきた。今日は東京藝大のサックスコンサートも聴きに行きたかったのだが、諸事情により断念。

自分が楽器を演奏できて、それを発表する機会があって、そして聴いてくれる人がいる…というのは、本当に幸せなことなんだろうな。大学のサークル活動の中にいると、その当たり前のことを忘れてしまうんだけど。ピアニストは、思い思いに弾いていると言う感じで、楽しめた。選曲のバラつき具合も、逆手に取れば個性の違いが顕著に出て面白い。

個人的には、湯山とストラヴィンスキーが聴けたのが嬉しかった。ストラヴィンスキーのヴァイオリン小品「イタリア組曲」とか、湯山昭の「お菓子の組曲」とか、なかなか聴けませぬ。ピアノとのデュオで出ていた、管打楽器の人もみんな上手だったなー。

2007/02/17

Letters from Glazounov(グラズノフ「四重奏曲」)

アレクサンドル・グラズノフネタでもう一つ。Dorn Publishingから出版されている「Saxophone Journal」という雑誌の一部記事を、オンラインでPDFにて読むことができるのだが、そのなかに「Letters from Glazunov」という面白い記事がある。

なんと、「協奏曲」「サクソフォン四重奏曲」の成立経緯を、グラズノフが友人に宛てた手紙によって紐解くという、注目すべきもの。著者はAndre Sobchenkoというサクソフォン奏者。グラズノフによるこの2つの作品は、サクソフォン界における、唯一のロマン派作品ということで、興味がある方も多いのではなかろうか。

せっかくなので、今回「サクソフォン四重奏曲」に関する部分を特に引用して、訳してみましたのでご覧ください。ちなみに翻訳・転載許可等は取っていないので、もし不都合があったら消します。また、訳の間違いなどありましたら指摘していただけると有難いです。

書簡は、グラズノフが1928年にパリへ移住し、数年経ったころから始まる。1932年3月、時にグラズノフ66歳。

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…グラズノフはピアノに加えて、多くの管楽器に精通していた。幼少の頃よりクラリネットを習い、その後立て続けにトロンボーン、トランペット、チェロ、ヴィオラ、フレンチホルンを吹いた。トランペット、ホルン、トロンボーンのための「Leaf from Album」を作曲した32年後、グラズノフは再び、管楽器作品のための筆を取ったのだった。彼はサクソフォン四重奏曲を書き始めたのだ。

マクシミリアン・シテインベルクへの書簡
1932/3/21
私はいま、サクソフォン四重奏に取り掛かっている。知っていると思うが、サクソフォンという楽器は、とても特徴的な音を持っているんだ。その音は、オーケストラの中にいれば、ほとんど全ての木管楽器を凌駕するほどだ。国家親衛隊音楽団(band of National Guard)には、サクソフォンの素晴らしいソリスト[注]がいる。第1楽章はそろそろ書き終えられるだろう。第2楽章「カンツォーナ」のアイデアも既に固まってきた。

イアン・ウルフマンへの書簡
1932/5/11
親愛なるイアン!
休暇見舞いをありがとう。まずは返事が遅れたことを謝りたい。ちょうどサクソフォン四重奏の作曲が忙しかったのだが、そろそろ書き終えられそうだ。この作品の真新しさに、私はドキドキしている…なんせ私は今までに、弦楽四重奏でしか、形式的に四声を扱ったことはないからね。いったいどんな響きがするんだろう。

シテインベルクへの書簡
1932/6/2
親愛なるマクシミリアン!
あなたの妹が、私の健康を気遣って手紙を送ってくれた。作曲の仕事が忙しく、君への手紙を書くのが後回しになってしまったこと、大変申し訳なく思っている。私の健康状態は、日増しに悪くなっているようだ。右足にできた腫れ物は、まったく治る気配がない。皮膚は裂け、時々痛むんだ。ブーツを履くことすらできず、軽い靴を履いて歩いているよ。じめじめした天気の日には、痛風の痛みがひどい。
そうだ、例のサクソフォン四重奏が完成したんだ(今のところ、2つの楽章のスコア書きを終えて、第3楽章はスケッチが出来上がっている)。第1楽章は、アレグロ変ロ長調、リズムは3/4拍子。少しアメリカ風だ!
第2楽章は、カンツォーナ・ヴァリエ。テーマは和声だけで作られていて、最初の2つの変奏は、厳格な、古典的な手法で変奏を展開してみた。次の変奏は、トリルを伴ったシューマン風(彼の交響的練習曲と似ている)。続いて、ショパン風の変奏と、スケルツォ。第3楽章フィナーレは、かなりおどけたスタイル。ずいぶんと長い作品になってしまったが、長さのせいで、奏者たちをかなり疲れさせるのではないかと心配している。奏者の一人と話してみたが、その点は大丈夫だと言ってくれた。

ウルフマンへの書簡
1932/6/21
苦痛に耐えられなくなってきた。体力が落ちているのが、自分でも分かる。どこへも行けず、服を着ることすらままならないほどだ。こんな状態では、ヴァカンスの時期にパリを離れられるとは到底思えない。そういえば、ずいぶん長いことピアノにも触っていないんだ。体がだめになる前に、私がサクソフォン四重奏のスコアを仕上げられたことは神のおかげかもしれない。しかしこの曲を自分の耳で聴くことは、果たしてできるのだろうか…。

シテインベルクへの書簡
1932/12/9
ついに来週、私のサクソフォン四重奏を聴けることになった。私はいまだに「ブレス」が、どのような問題となるのかがわからない。曲中には休みがとても少ないし、そして私の頭の中では完全に調和した音が響いているんだ。しかし、とある変奏は持続音の上に3声、という作り方をしている。

リムスキー=コルサコフへの書簡
1933/1/9
もし例えば、クラリネット、バセット、バスクラリネットのような「穏やかな」楽器が、サクソフォンの代替として使われてしまうと、スタゾフが言うように「正しい響きがしなくなる」ことと思います。

ニコライエフへの書簡
1933/3/8
ついに、自分の耳で私のサクソフォン四重奏を聴くことができたんだ。分離された各声部は、とても上手く鳴っていた。…音楽的なカラーが、モノトーンになりがちな事(音域に関しては、私は何もできない)、そして同時に最大でも4声しか発音できない事は、私の悩みの種ではあるが。

ウルフマンへの書簡
1933/4/11
サル・パヴォーでのリハーサルの最中、彼らは私のためにサクソフォン四重奏を演奏してくれた。彼らの演奏はとても素晴らしかった。音色は豊かで、独創的だ…。この作品を聴くことができて本当に嬉しい。

シテインベルクへの書簡
1933/12/10
演奏者たちは本当に素晴らしい名手ばかりで、このサクソフォンという楽器がジャズで使われているものと同じだとは、到底思えない。彼らのブレス、体力、そして、軽やかな音、はっきりしたイントネーション…これら全てに、私はとても衝撃を受けたんだ。

[注]この「ソリスト」とは、当時ギャルド・レピュブリケーヌの主席サクソフォン奏者であったマルセル・ミュールのことである。

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この後、ドイツのサクソフォン奏者シーグルト・ラッシャーがグラズノフに「協奏曲」を委嘱、グラズノフは1934年に作品を完成させるが、衰えた健康状態は回復せず、1936年にパリで亡くなった。

「協奏曲」「サクソフォーン四重奏曲」というレパートリーが存在することは、サックスに取り組んでいる者としては、大変幸せなことだと思う。これらに取り組むとき、グラズノフに対して、もっと感謝の念を表すべきではなかろうか。今回訳した部分以外も、興味ある方はぜひお読みいただきたい。

2007/02/16

講評、グラズノフLP

アンサンブル・コンクールの事務局に提出した録音に対する、講評が到着。…ふむふむ。和声の変化から吹き方を変えなさい、か。瞬間瞬間の吹き方は、朝の練習時間さえ取れれば何とかなるので、もっと微分したところを考えないとだめだよなあ。「時間の芸術」なんだし。

脳内対談。「もう一回微分すると、音楽のベクトルが見えてくるのかなあ。しかし楽譜って離散的な記号の羅列だし…そう考えると、作曲家の指示って意外と情報量の少ないデジタルなもんだなあ。二回も微分したらほとんど何も残らなくなりそう。」←理系。

第3楽章に関してはこんなところとして、差し迫った問題は、第1楽章全体の把握を(個人的に)しきれていないこと。ソナタ形式らしいが、いまだ提示部~展開部~再現部や第一主題、第二主題の区切りがどこにあるのか、いまだにわからん(爆)。

そういえば、グラズノフの「四重奏曲」のLP持っていたっけ、と思い出して、引っ張り出してきた。



旧ソ連の音楽家たちによるグラズノフのサクソフォーン作品のLP。そんなに珍しいものではなく、オークションなどを漁れば意外とすぐに見つかる。「協奏曲」「サクソフォーン四重奏曲」入曲。実はまだ入手したっきり聴いていない。「協奏曲」はCDになっているようなのだが。

このLPは、いくつか盤の種類があるようだが、このジャケットはなんだろう。英語圏に向けて作られたMelodiya原盤?もしご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示ください。

「LPなんてどこで聴くの」と良く尋ねられるけれど、嬉しいことに大学の図書館にプレイヤーがあるのだ。図書館にLP持ち込み→ケーブルつないでポータブルMDに録音→MDからパソコンに録音→CDに録音、とやると、以降の取り回しが楽になる。

2007/02/14

ヘムケ氏の新譜情報

アメリカの高名なサクソフォニストで、フレデリック・ヘムケ Frederick Hemkeという奏者がいる。パリでマルセル・ミュールに学び、アメリカ人として初の一等賞を獲得して卒業。その後アメリカへ戻り、シカゴ響のソリストとして、また教育者(ノースウエスタン大学教授)としても名を知られた人物。日本人では、大室勇一氏、雲井雅人氏、佐藤渉氏などがヘムケ氏の下で学んでいる。

ヘムケ氏はオルガンとサックスの共演盤「Simple Gifts」に続いて、昨年末に「The American Saxophonist」というCDをEnF Recordsからリリースしたらしいのだが、詳細が全くわからなかった。しびれを切らしてヘムケ氏に直接メールで聞いてみたところ、返信があったのだが…収録内容が凄い!

なんと、ヘムケ氏が1970年代に吹き込んだLP「The American Saxophone」と、「The Music for Tenor Saxophone」の抜粋復刻だそうだ!詳細な曲目のリストは、以下のとおり。

・Ingolf Dahl - Concerto for Alto Saxophone 18:19
・Warren Benson - Aeolian Song 4:50
・M. William Karlins - Music for Tenor Saxophone and Piano 10:59
・Walter Hartley - Poem for Tenor Saxophone and Piano 3:44
・Karel Husa - Concerto for Alto Saxophone 16:30
・William Duckworth - A Ballad in Time and Space 3:30
・James DiPasquale - Sonata for Tenor Saxophone and Piano 8:43
・Warren Benson - Farewell 1:46

インゴルフ・ダール、それにカレル・フサ!存在は知っていたが、まさか復刻されるとは思っていなかった!まさに幻の録音。これは聴いてみたい。

肝心の入手方法だが、EnF Records(ENF Records, 128 Lawndale Ave., Wilmette, IL 60091, USA)に、CheckもしくはInternational Money Orderを直接送るくらいしかないとのこと。手数料とか手間とか考えると、日本からはかなりキビシイ…。International Money Orderは一回の送金につき2500円も手数料取られるからなあ。

そこで、EnF Recordsの「Simple Gifts」を扱っているオンラインストア、CD Babyに問い合わせたところ、

We'd love to handle, but the artist hasn't signed it up with CD Baby yet. We hope the artist will and we'll sell it soon.

とのこと。むむむ、しょうがないか。期待して待つことにしよう…(CD Babyで扱い始めてくれれば、クレジットカードで簡単に買える)。もしくは、EnF Recordsに直接送金&入手したというツワモノがいらっしゃいましたら、ぜひ教えてくださいませ。

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参考:私が唯一持っている、ヘムケ氏のLP「Contest Music for Saxophone(Lapider Records XCTV-87627)」。録音年不明。リュエフ「シャンソンとパスピエ」や、ランティエ「シシリエンヌ」といったフランス産のオリジナル楽曲と、ベンソン、ハートレーなどのアメリカの小品、そして、ルクレールの「ジーク(ソナタより抜粋)」やゴセック「村祭り」などミュール編のクラシックが入っている。


ジャケット裏面、プロフィールに載っているヘムケ氏の写真。若い!携えている楽器は、Selmer Mark VIだそうな。

2007/02/12

RIT2練習、2回目

今日も常磐大学まで乗り合いで出かけて、RIT2の練習。かなり曲数が多い&曲が難しいが、本番までに間に合うのかしらん。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」を吹いていたら、ふとヘンデルやコレルリの薄い影が見えた。リズムとメロディが「っぽい」んだよなあ。作曲者自身は、バロック音楽を意識して書いたのだろうか。

そんなことを思いながら楽譜を眺めていると、この3拍子といい変奏っぷりといい、シャコンヌの拡張形式にも見えてくる…って、それはちょっとこじつけが過ぎるか(--;;;

2007/02/11

モルゴーア・クァルテット第26回定期演奏会

もう2週間も前のことになってしまったが、1/29はモルゴーア・クァルテットの第26回定期演奏会を聴きに行っていた。この頃はまだ卒論シーズンで忙しい時期だったが、無理して行った甲斐があったコンサートだった。写真は会場の東京文化会館小ホール(公式WEBより引用)。

私はサクソフォンを手にしてからというもの、サックス四重奏に(聴くのも、演るのも)ハマりまくっている身。だから、もちろんサックス四重奏に比較的近いフォーマットである、弦楽四重奏を常にチラチラと意識しているのは当然だった。マルセル・ミュールはサクソフォン四重奏という形態を弦楽四重奏の模倣(?)から確立させていったのだし、デザンクロやグラズノフを吹いていても、弦のような書き方をしているところはたくさんあるし。

そんな中、私が弦楽四重奏に対して抱いていた偏見は、「サックス四重奏に比べてパワーがないよね」「色彩感は、サックス四重奏のほうが上だよね」といったもの。それは、たとえばクロノス・カルテットのDVD「In Accord」を観ても拭いきれなかった偏見だ。しかし、今回聴いたモルゴーア・クァルテットの演奏は、私が持つその偏見を一気に消し飛ばしてしまった。こんな強烈な演奏を聴かされたら、浮気するって。

モルゴーア・クァルテット第26回定期演奏会
2007/1/29(月)19:00開演
東京文化会館小ホール
プログラム:
・エリオット・カーター - エレジー
・チャルズ・アイヴズ - 弦楽四重奏曲第2番
・間宮芳生 - 弦楽四重奏曲第2番「いのちみな調和の海より」
・ベートーヴェン - 弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」

ご覧のとおりの「ゲンダイオンガク」の薫り漂うハードなプログラムだが、平日にもかかわらずお客さんの入りは上々。席は7割方埋まっていたかな。会場には、サックスの演奏会で見かける方は一人もいなくて(あたりまえか)、聴こえてきた会話から推測するに、メンバーのお弟子さんとか、音楽仲間のような方が多かったかなあ…管楽器畑の人間が突然こんな場所に現れると、アウェーの私はちょっと居心地が悪い。それが新鮮でもあるのですが。

さて、開演。「エレジー」は、弦楽器の特性を生かした美しい小品だった。曲の最後で、pppまで減衰しながら音が会場の空気に溶け込んでゆく様は、管楽器では絶対できない(?)表現。もうこの一曲だけで、後に続く演奏への期待が高まりましたさ、ええ。

そういえば、手渡されたプログラムは面白かったなー。作曲家の林光さんによるエッセイという趣で、ほかの演奏会のプログラム・ノートでは決してお目にかかれない洒落た文体。まったく聴いたことがなかった、アイヴズや間宮の曲紹介も、(ずいぶんとマニアックな)聴き所が文章に織り込まれており、聴きながら次のポイントが楽しみになる。

アイヴズ。「弦楽四重奏はパワーがないよね」偏見を、完全に打ち砕かれた。4人から発せられる、怖いほどの覇気。会場の隅から隅までを集中力という鎖で縛り付けて、物凄い音の洪水を浴びせかける。4人の口論のような混沌としたフレーズから、ヴァイオリンとヴィオラがポピュラーなメロディを最強奏で引用し、そして最後には今までの荒れっぷりが嘘だったかのように波が引く。興奮した聴衆の大きな拍手。すごい。

ここで休憩。聴き疲れはするけれど、不思議とさわやかだった。ロビーで幻のアルバム「Destruction」が売っていたので購入。まだ意外と(20~30枚くらいか?)残っているものですなあ。

間宮。第1楽章の始まりは不安定ながら落ち着いた響きだが、すぐ鋭角的な響きに変化し、第2楽章はかなり強烈な刻み。最終楽章、チェロが弾く下降形のフレーズがだんだんと収束してゆく様子がユニーク。副題の「みな調和」というフレーズがとっさに思い浮かんだ。演奏が終わると、なんと客席から間宮氏が登場。大きな拍手を浴びていた。

ベートーヴェン。「ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲のCDと楽譜があれば、一生飽きずに過ごせる」と言われるが、なるほど。音の間に隠された仕掛け、4声の動き、和音…どの瞬間を切り取っても、とても革新的な響きで、アイヴズ氏や間宮氏の作品の後に置かれても、まったく違和感がない。モーツァルト後期の弦楽四重奏曲と聴き比べてみると、余計にベートーヴェンのすごさがわかる。演奏もすばらしかった。最終楽章、コーダの爽やかなフレーズが、妙に印象に残った。

アンコールに応えて演奏されたのは、アメリカの作曲家ジョン・コリリャーノの「スナップショット:1909年頃」。これ、ズルい、というか憎いなあ!題材となった「スナップショット」は、コリリャーノの身内がヴァイオリンとギターを携えた写真だそうで…ヴァイオリンがアメリカの民謡のような旋律を弾くき、ギターを模した他の3人がピィカートで答える、という。もう小憎い、という感想しか出ません(笑)!曲と演奏に対して、面白さと、嫉妬と、感動と、興味と…なんだかいろいろな気持ちがあふれ出た。

初めての弦楽四重奏(モルゴーア)体験は、こんな感じでした。新鮮で感動的。いやー、良かった。次回も聴きに行こうっと。

2007/02/10

一次審査通った!

サクソフォーン協会主催の第4回アンサンブル・コンクール一般の部、予選通過しましたー(^▽^)わー

審査結果の通知はてっきり2月下旬かと思っていたのだが、こんなに早いのか。何はともあれ良かった…あ。第一楽章さらい始めなきゃ。

2007/02/09

ブランク

卒業論文の発表練習(全4回)がひと段落。

先週のRIT2練習以来楽器に触れていないので、練習しないとなあ。さらう楽譜もいくつか溜め込んでしまっていることだし。

(追記:おおっと、今週土曜は練習場所が使えないんですかー泣、やばいやばい)

アルスホールを使った、現役のサックスパートを中心としたコンサート(発表会)を妄想…うーん、やはり夏がいいかな。とりあえず、アイデア・妄想から、構想の段階に持っていかないと。

2007/02/07

ブロディ×ロンデックス

なんだか最近CDの紹介が多いなあ(卒論シーズンにたまった、紹介したいCDがたくさんあるので、しょうがないのです)。今回ご紹介するのは、eBayをウロウロしているときに見つけた、サクソフォンデュオのCD。カナダのサクソフォン奏者ポール・ブロディ Paul Brodie氏と、フランスの重鎮ジャン=マリー・ロンデックス Jean-Marie Londeix氏のデュエットという珍版。

まず、ちょっとサクソフォンをかじったことのある方だったら、ロンデックスの名前には「ぴーん」と反応するんじゃなかろうか。マルティノン×フランス国立放送フィルのドビュッシー「ラプソディ」独奏として、またEMIへ大量のサクソフォーンソロの録音を残し、デニゾフ「ソナタ」を始めとする数々のサクソフォーンのための委嘱を行い、名著「ハロー!ミスター・サックス」「サクソフォーン音楽の125年」を編纂し、ボルドー音楽院教授として後進の育成にも力を注ぎ(書ききれない)…ある意味、クラシカルサクソフォーンの世界における最たる功労者の一人とも言える有名な音楽家だ。

もう一人のポール・ブロディは、日本では余り知られていないかもしれないが、1960年代から精力的にコンサートを行い、世界を股に駆けて合計2500回を越す演奏会、50枚を越すアルバムへの録音を行ったという、こちらもすごいサクソフォーン奏者。イギリスのクレシェンド誌は、ブロディ氏を"Ambassador of the Saxophone"と評したそうだが、まさにそんなイメージの音楽家か。

どちらもかなり強烈なプロフィールの持ち主であることは間違いないとして、いったいどんな経緯で共演が実現したのかは、興味あるところだ。

さて、本CDは、もともとCrestに吹き込まれていたLP(1975年録音)を、CD-Rにて復刻したもの。復刻CDを作成したのはブロディ氏自身のようで、しかもeBayから届いた商品を見てみると、差出人にははっきりと"Paul Brodie"の文字が。あ、出品しているのもブロディ氏ご本人なのですね。ジャケットに、私宛のサインもしてあった(ちょっと嬉しい)。

収録曲は以下のとおり。もともとLPなので、収録時間は短め。ルクレールの「デュオ・ヴァイオリンのためのソナタ」は、ロンデックスによる編曲譜だろう。テレマンもロンデックスの編曲なのだろうか?

・Telemann - Canonic Sonata No.1
・Telemann - Canonic Sonata No.2
・Telemann - Canonic Sonata No.3
・Telemann - Canonic Sonata No.6
・Leclair - Sonata in C
・Leclair - Sonata in F
・Leclair - Sonata in A flat

編曲者であるロンデックス自身の演奏で聴ける…というのは、資料価値が高いと思うが、このCDの魅力はそこで終わらない。ここには、音楽を奏でる喜びが凝縮されている!現代の録音に比べるとずっと音は悪いし、Crest特有の残響も耳につくけれど、演奏が本当に楽しげで、聴きながら思わず微笑んでしまうのだ。

普通に演奏すればつまらないだけのサクソフォーン・デュオの曲が、偉大な2人の音楽家に生命を吹き込まれて生き生きと動き出す様は、一聴の価値あり。もちろん、ロンデックスファンにもオススメです。

NSF最新号

ノナカ・サクソフォン・フレンズの最新号(Vol.19)がアップされていた。

http://www.nonaka.com/j/new/nsf_report/index.html

「これは!」というような傑出した記事はさすがにないけれど、読んでみると面白い。ハバネラ・サクソフォーン四重奏団の名前の由来は、初めて演奏したのがビゼーの「ハバネラ」だったから、なんだとか。へえ。

2007/02/06

写真もらいました

先週の発表会?コンサート?での演奏写真を何枚かKさんにいただいたので、関係者はどうぞ持って行ってくださいませ。クリックすると、高解像度の画像が出てきます。

サクソフォーン四重奏演奏中。グラズノフ「サクソフォーン四重奏曲作品109」より第3楽章。私はテナーサックス吹いています。



ピアノ四重奏(ssax, asax, tsax, pf.)演奏中。サミュエル・バーバー/生野裕久編「思い出」よりワルツ、ためらい~タンゴ、ギャロップ。私は同じくテナーサックス。

2007/02/05

Sax 4th Avenue「Delusions de Grandeur」

アメリカの四重奏団Sax 4th Avenueのアルバム「Delusions de Grandeur」。ご覧のとおりの、かなり気の抜けた落書きのようなジャケットだけれど、収録曲が面白い上に演奏もかなりかっこいい!mckenさんのページにも紹介がある(→こちら)。

ELP(エマーソン、レイク&パーマー)の「Tarkus」なんて私も大好きなプログレッシヴ・ロックの曲だが、世界にはサックス四重奏で「Tarkus」にトライしちゃう人たちがいるんですなあ…正直ヤラレマシタという感じ。生物兵器タルカスが火山から現れる様子を表した冒頭の「Eruption」からパワー全開で、(チャプターのカットはあるものの)最後まで12分近い楽曲をハイテンションで切り抜ける様は、見事。なんと出版されている楽譜のようで、これは手に入れてやるしかない!かな。

リヴィエの「グラーヴェとプレスト」やボザ「ヌアージュ」のような曲も、かなりレベルの高い演奏となっていて、驚き。ヴィブラート控えめで大味な音色は、まさにアメリカのサックス。だが、イントネーションがしっかり統一されていたり、音程が正確だったりと、基本的な技術レベルが高いため、クラシックの演奏も違和感がないのだ。

先週、eBayで叩き売りされていたところを保護。ライナーはカビのにおいが…いつ発売されたアルバムなのかは判らない。廃盤になっているようだが、調べてみるとどうやらamazon.comでは中古品が売りに出されているみたいですなあ。気になる方はどうぞ。

…卒論の発表資料作りが切羽詰っているため、このくらいで。またきちんと聴いたら補足するかもしれません。

2007/02/04

Trio Saxiana「Nachtgesang」

先週末、小森伸二さんから届いた、トリオ・サクシアーナ Trio Saxianaのアレンジ作品集。小森さんはトリオ・サクシアーナを主宰する、ニコラ・プロスト Nicolas Prost氏と親交があり(フランスで師事されていたそうだ)、新しいCDを販売用に何枚か送ってもらったんだとか。余りがあればまだ買えるようだ→こちらの記事参照。

演奏は、アンネ・ルカプラン(ssax)、ニコラ・プロスト(asax,tsax)、ローラン・ヴァグシャル(pf)。曲目は以下のとおり。

・Arnold Bax - Elegic Trio
・Dmitri Shostakovich - Trio no1, op.8
・Andre Caplet - Legende
・Max Bruch - Nachtgesang
・Francis Poulenc - Trio
・Jacques Ibert - Deux interludes
・Nino Rota - Trio

そういえば、プーランクの「オーボエとバソン、ピアノのためのトリオ」って、ソプラノサックス+テナーサックス+ピアノや、ソプラノサックス+バリトンサックス+ピアノで演奏される機会は多いけれど、こうやってきちんとCDになっているものって、今まで無かったんじゃないだろうか?

カプレをこの編成のために編曲するのも面白い試みだし、バックスの「悲歌の三重奏曲」、ロータの「トリオ」などの秘曲も面白い。特に前者は、オリジナルがフルート+ヴィオラ+ハープという編成だが、この編成でトライすることにより、曲の新しい魅力が引き出されていると感じた。

演奏も素晴らしい。ぜひこれからも長く活動して、このサックス2本+ピアノという編成での、様々な試みにチャレンジして欲しいものだと願う次第。

RIT2練習へ

今日はRIT2(茨城県四大学吹奏楽合同演奏会)練習@常磐大学。つくばから水戸って、意外と近いもんだ。高速を使うとほんの45分程度で着いた。

3年ぶりの常磐大学の練習場所だったが、あの高天井スペースの音響は個人的にお気に入り。全曲をざっと通して、今日はおしまい。

吹奏楽のなかで演奏するのは、大学の吹奏楽団を引退してからはほとんど機会に恵まれないが、こうして久々に吹いてみると、疲れはするけれどなかなか楽しいもの。せっかくの機会なので、しっかりやりたい。自分の初見能力の落ちっぷりには、ちょいと凹んだ。

本番は3/27@つくば市ノバホール。近づいたら、また告知します。

2007/02/03

先週の土日

もう一週間経ってしまったが、きちんと書いておかないと。

1/27(土)
筑波大学管弦楽団プロムナードコンサートの、吹奏楽ステージにサックスで出演。ホルスト「第一組曲」は、本番も上手くいって楽しかった。ヴォーン=ウィリアムズの「『テューバ協奏曲』よりロマンス」での、指揮のmihaさんによるソロにはただただ脱帽。

他のプログラムの時は客席にいたが、トマジの「木管五重奏曲」全曲を聴けたり、管弦楽ステージのハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」を聴けたり、「だったん人の踊り」はグラズノフの編曲だったりと、いろいろ興味深く聴けた。

1/28(日)
内輪向けのアンサンブルマラソンコンサート。発表の機会がほぼ公平にあるのはありがたいが、演奏レベルとしてはもうちょっとなんとかならんもんでしょうか(笑)。自分が言えた立場じゃないけれど。

グラズノフの最終楽章は、現在のメンバーでの初ステージだったが、うーん、普段の練習の70%くらいだったかも…(--;反省点を挙げるとすればキリがないが、なんというか、まだメンバー同士の演奏中のコミュニケーションができていないのかしらん。まだまだこれからかな。活動スタンスも、模索中。

ピアノ四重奏(ssax, asax, tsax, pf)でやった、サミュエル・バーバー「思い出(Souvenirs)」の演奏が楽しかった。半ば勢いで録音入手、楽譜入手、演奏まで進めてしまったが、快くアンサンブルを引き受けてくれたメンバーの皆さんには感謝。なかなか合わせの機会が取れず、おまけにピアノパートがかなりの難物でmkさんには苦労をかけてしまった。本番は、かなりキズが合ったものの、かなりテンションの高い演奏で、客席にいた友達からもなかなかの好評を得たほか、渡瀬英彦先生にもポジティブな評価をいただけて、嬉しかった。機会があれば、再演したい。

…バーバーの演奏に際しては、洗足音楽大学作曲科教授の生野裕久氏、それからサックスの服部吉之先生にお世話になった。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。

吹奏楽のステージは、楽器側としても指揮側としても楽しめた。指揮を振っていた「風紋」は、たくさんの人に乗っていただけて、有難かった。聴いていた中で印象に残ったのは…やっぱ「シンフォニア・フェスティーヴァ」でしょう。ブラヴォー2回出たうち、1回は私です>Tくん。良かったよー。

2007/02/02

ファビエン・ショウラキ「Paysaginaire」

さて、卒論シーズン中にたまりにたまったCDを、ちょこちょこと紹介していこう。どれから書いていこうと思ったのだが、まあ、まずはこちら。ファビエン・ショウラキ Fabien Chouraki氏の演奏による、サクソフォンとテープのための作品集「Paysaginaire(Visages du Saxophone VDS-005)」。

・Jacob ter Veldhuis - Grab It!
・Jacques Lejeune - Paysaginaire
・Jean-Louis Dhermy - Shalom
・Etienne Rolin - No Tenor Tech Out
・Bernard Cavanna - Goutte d'or blues
・Jean-Claude Risset - Voilements
・Jacques Becker - Western Ghats

うーん、聴いたことのない作曲家のオンパレード(^^;というか、そもそもの目的がフェルドハウスの「Grab It!」だったので、こんなもんか?

ショウラキ氏はソリストとしても有名だが、最近はロンデックス~ベルデナッド=シャリエと続いた、あのボルドー音楽院のサクソフォーン科教授に就任したことでも有名(なのかな)。

伝統的なフレンチスタイルとは一線を画す音色がなんとも耳につくが、奏法としてはリラックスしているのだろうか、決して「耳障り」にはならない。このちょっと特殊なサックスの音色は、肉声をサンプリングした効果音やシンセサイザーの音色になかなかマッチする気もする。過多なヴィブラートや、余計な倍音がサックスパートに含まれない分、素材の一つとしてサクソフォンが効果的に溶け込むのだ。

さて、お目当ての「Grab It!」だが、この演奏は良いですね!テープと細かい部分のアンサンブルが合わなくとも、ロック風のノリを前面に押し出した熱い演奏。テーマが回帰する部分のサックスなんて、サイコーです。これ聴くと、ボーンカンプ氏の演奏が大人しく聴こえるほど。技術的には(おそらく)ボーンカンプのほうが上なのだろうが…まあ、個性の違い、ですかね。

そのほかの曲で気に入ったのは、子供の声がサンプリングされたブキミな雰囲気の「Paysaginaire」、冒頭の無伴奏カデンツァが聴きもの「No Tenor Tech Out」、インド的音世界と西洋の音楽がミックスされた不思議な曲「Western Ghats」。サックスとテープ(コンピュータ)にしかできない表現を駆使した曲ばかりで、楽しい。

今まで、アコースティック楽器以外:コンピュータやテープとサクソフォンのデュオを何曲か耳にしてきた。シンセサイザーから飛び出すような音色が、サックスと自然にアンサンブルしているのを聴くと、サクソフォンの様々な音楽ジャンルへの適応力の強さを、再認識する思いだ。今度「サックス+コンピュータ、テープ、ライヴエレクトロニクス」のプレイリストでも作ってみようかな。

parisjazzcorner
というサイトで購入した。送料込みで20ユーロ(高いよ…)。オンラインショップでは、なぜかジャズに分類されていることが多く、探すのにひと苦労。

提出しました

卒業論文を、本日無事提出。今度は一週間後の発表練習に向けて、怒涛の資料作りと発表練習を開始。

2007/02/01

モルゴーア・クァルテット「Destruction」

日本を代表する弦楽器奏者たちによって結成されたモルゴーア・クァルテットのCD「Destruction(東芝EMI TOCE-9650, PCDZ-1981)」。~Rock meets Strings~という副題からも判るとおり、なんと1970年代のプログレッシヴ・ロックをそのまま弦楽四重奏の演奏に置き換えてしまったと言う、なんとも挑戦的なアルバムだ。「Destruction ディストラクション」というタイトルは、なんだかまさにドンピシャというか。

・吉松隆「アトム・ハーツ・クラブ・クァルテット」
・レッド・ツェッペリン/長生淳「レッド・ツェッペリンに導かれて」
・イエス/佐橋俊彦「イエス・ストーリー」
 ラウンド・アバウト、ロング・ディスタンス・ラン・アラウンド、シベリアン・カトゥルー
・キング・クリムゾン/荒井英治「キング・クリムゾンの肖像」
 レディース・オブ・ザ・ロード、太陽と戦慄パートI、21世紀の精神異常者

ロック大好き作曲家、吉松隆氏が世紀末音楽へのオマージュとして書き下ろした秘曲「アトム・ハーツ・クラブ」を冒頭に配置し、さらにレッド・ツェッペリン、イエス、キング・クリムゾン…ブリティッシュ・ロック好きにはたまらない名前が並ぶ。ここまで読むと、「あれでしょ、クラシック奏者がアソビでロックの旋律を弾いているだけのやつ」のように、多少ニヤニヤする方も、あるいはいるかもしれないが、アルバムを聴き始めると、その嘲笑が驚愕に変わること間違いなし。

音自体の強烈さは、確かにオリジナルに比べれば僅かに劣るかもしれない(エフェクタ&アンプを通したギターの音に、アコースティックのヴァイオリンが打ち勝て、というのはさすがに無茶な注文だろうし)。しかし、なんだこの演奏は!圧倒的なテンション、ビート、上手さ…。弦楽四重奏で、ここまでオリジナルに近づく演奏を再現できるのか(いや…もしかしたらオリジナルの強烈さを超えている部分すらあるかもしれない)という驚き。

吉松氏の「アトム・ハーツ・クラブ」冒らテンション全開。ド頭からガシガシ弾かれていく変拍子の導入部は、これはELPの「タルカス」そのまんまだな(笑)。第2楽章の叙情性なんかは弦楽器の独壇場だと思うし、第3楽章の軽めのピツィカートによるスケルツォを経た第4楽章が圧巻の弾きっぷり!トルヴェール・クヮルテットのあのサックス四重奏版の演奏が、優しく聴こえてしまうほど。

レッド・ツェッペリンは、オリジナルの曲をよく知らないのだが、これまた激しい演奏で…オリジナルを知っている人が聴いても、これならば首を縦に振るんじゃないだろうか。最終部で現れる「天国への階段」は、全楽章を回顧するような弾きこみ。冷静に弾いてちゃ、こんな演奏はできないだろう…凄すぎ。

イエスの「ラウンド・アバウト」や「シベリアン・カトゥルー」を弦楽四重奏で聴けるとはねえ。「ラウンド・アバウト」の冒頭、ヴァイオリンで演奏されるリフの美しいこと。直後に刻み始められるビートとの対比が、なんとも良い。編曲者の佐橋俊彦氏も、ブリティッシュ・プログレッシヴ・ロックが大好きなんだそうだ。

そして最後に置かれたキング・クリムゾンの3曲!編曲が第1ヴァイオリンの荒井英治氏だというのも驚きだ。いやー、やばいですよ、かっこよすぎですよ。「Yeah」もハマりまくっているし、「太陽と戦慄」の刻み、「21世紀の精神異常者」のあの長大なソロに、超絶ユニゾン、やりたい放題のコーダと、挙げていけばきりがない。ここまで聴いてくると、モルゴーア・クァルテットのメンバーの、プログレッシヴ・ロックに対する果てしない愛情が、アルバムの隅から隅まで溢れ返っていることに、気付かない者はいないだろう。

ああ、ちょっと情熱的に紹介しすぎたかしらん。いやしかし、これはクラシックファンとロックファンの全員が聴くべき超々名盤!多少の思い入れ先行型紹介文はお許し願いたい。

本CDは、廃盤となってしばらく経ち、CDショップはおろか、中古ショップやオークションで見かけることすらほとんど無いと言える。しかしなんとモルゴーアの演奏会の会場では売っている…先日の演奏会で帰りがけに見たときは、まだニ、三十枚ほど残っていた。欲しくなっちゃったあなたは、ぜひ次回のモルゴーアの演奏会を聴きに行きましょう(ちなみに、CDで聴ける弾きっぷりの凄さは、生でモルゴーアの演奏を体験すると「こういうことだったのね」と、納得できる)。

アトム・ハーツ新録音

吉松隆氏のブログ(→http://yoshim.cocolog-nifty.com/tapio/)を眺めていたら、氏の「アトム・ハーツ・クラブ」トリオ版(vn, vc, pf)が、今度録音されるとの情報が。この編成の存在は知っていたのだが、ようやくCDになるということで、ちょっと嬉しい。

けっこう好きな曲で、以下の編成で録音されたCDは、全部持っている。そういえば、自分たちでサックス四重奏版を演奏したこともあるなあ。

弦楽四重奏版:モルゴーア・クァルテット
サクソフォーン四重奏版:トルヴェール・クヮルテット
ギターデュオ版:福田進一&エドゥアルド・フェルナンデス
弦楽合奏版:BBCフィルハーモニック