2007/12/31

シャリエのCD

上田卓様よりサクソフォン奏者、マリー=ベナデット・シャリエ Marie-Bernadette Charrier氏、またシャリエが参加するアンサンブル・プロクシマ・ケンタウリ Ensemble Poxima CentauriのCDをいくつか頂戴したので、ご紹介しておきたい。上田様には深く感謝申し上げます。シャリエ氏は、フランスの女流サクソフォン奏者。ナント音楽院とボルドー音楽院に学び、ロンデックスの後を継いで、現在はボルドー音楽院のサクソフォン科教授職の地位にある方。日本ではあまり知られていないが、フランスのほうでは大変に活躍されている。

ところで、上田さんは実際にボルドー音楽院に在籍されたらしい。その上田さんよりご指摘いただいて初めて知ったのだが(ここから受け売り)、ボルドー音楽院にはサクソフォンクラスがふたつ存在するそうだ。ひとつは、ロンデックス~シャリエという流れのインターナショナルクラス。もうひとつは、ジャック・ネット Jacques Net~ファビエン・シュラキ Fabie Chourakiという流れを持つ、パリ国立高等音楽院受験の準備をするためのクラス。へえぇー、知らなかった!例えば第3回のアドルフ・サックス国際コンクールで第2位を獲ったジュリアン・プティ Julien Petit氏は、後者クラスの出身だそうで。

というわけで、その前者クラスの現教授兼サクソフォンアンサンブルクラスの教授、シャリエ氏のCDである。一枚目は、ソプラノサクソフォンとバスサクソフォンのための無伴奏作品を収録した「interprete(Temperaments PC0102)」。無伴奏作品というとちょっと構えてしまうが、収録作品は、すでにサクソフォーン作品の古典として定着した有名なものばかりであり、大変聴きやすい。

・G.グリゼイ「アニュビスとヌト」
・T.アラ「デジタル」
・E.ベインケ「Item 6zehn」
・G.シェルシ「3つの小品」
・G.シェルシ「マクノガン」

グリゼイ、ベインケ、シェルシ「マクノガン」がバスサックスのための作品。グリゼイの作品は、今年(あ、もう終わるじゃん…)7月のジェローム・ラランさんのリサイタルでも演奏されましたね。微妙な音色の変化を聴き取りながら楽しむ作品であるため、ちょっとCDというメディアに収録すること自体、限界があるかなあ。アニュビスの声の部分は…あれ?楽器で演奏されている?まあ、それはグリゼイの作品集(演奏はドゥラングル教授)でも感じたことであり、まあ実演で聴いてこそなんでしょうな。ベインケの作品は初めて聴いたが、かなりの超絶技巧を要される作品のようだ。シャリエ氏の演奏は、技術的に完成されているのはもちろん、単純に楽譜を音にするだけにとどまらない、なかなかに熱い演奏であり、本CD中の白眉だと感じた。

アラの作品は、2008年のロンデックス・コンクールの課題曲でもあったはず。重音を含むパターンの繰り返しにタイトルとの関連性を感じることができる。単純なループではなく、その中でニュアンスが刻一刻と変わっていくところに、おもしろさを感じる。シェルシの2曲は、ドゥラングル教授の「Solitary Saxophone(BIS)」を意識してのことだったりして(笑)。虚空に向かって矢を放つような「3つの小品」の後の「マクノガン」におけるテンションは、聴きながら、何かに吠え立てられているような恐怖を感じるほど。今度はヘッドフォンで聴いてみよう。

次のCDは、テナー、バリトン、バスを使用したサクソフォンの作品集「havel - hurel - lauba - mefano - melle - rosse(Octandre OC931)」。まあ、タイトルどおりの作曲家たちの作品が入った作品集でございます。フランスの中堅どころの作曲家による作品を一同に集めました、という感じですな。

・P.ヒューレル「Opcit」
・F.ロセ「Ekti en Droutzy」
・C.ハーヴェル「Oxyton」
・P.メル「Verbiages d'un metal osseux」
・P.メファノ「Periple」
・C.ロバ「Dream in a bar」

何気なしに解説書を開いてみると、曲目解説の寄稿はなんとジャン=マリー・ロンデックス Jean-Marie Londeix御大ではありませんか!さらに、フランス語→英語翻訳は、クリスチャン・ロバ Christian Laubaが担当している…驚き。

さて、内容。「Dream in a bar」を聴けるのは嬉しいなあ!バリトンサクソフォンとパーカッションのための作品で、バリトンサクソフォンとテープのための「Stan」とほぼ同時期に存在を知って、気になってはいたのだが、とにかく収録CDが見つからなくて(Duo Switchのアルバムくらいか?)、やきもきしていたところだった。そんなわけで早速ロバの作品から聴き始めてしまったのだが、最初の幻想的なパーカッションの前奏から一気に作品の世界へと引きずり込まれた。突然に「Hard」や「Stan」や「Bar」のリフレインと思われるフレーズが聴こえてくると、嬉しくなってしまう。中間部では、パーカッションがビートを刻む上層で、バリトンが悠々としたフレーズを奏でたり、その役割を交換してみたり、一緒に盛り上がってみたりと、変幻自在。捉えかたによっては、コントのような滑稽さも感じられるし、ジャズのようなクールさも感じられるし、といった面白い作品だなと思った。演奏も、技術とテンションが同居し、すばらしいの一言。

パトリック・メル Patrick Melleの筆によるバリトンサクソフォン、ソプラノ(女声)、エレクトロニクスのための「Verbiages d’un metal osseux」は、何か植物の導管内を旅するような(ミクロ的な視点を覗くような)、不思議な感覚を覚えた。収録時間が長いこともあり、アルバム中の重心がこの作品に置かれているようにも感じる。ヒューレル、ハーヴェル、メファノの作品は無伴奏の作品(メファノのテナーは有名ですね)。高速フレーズにおいても特殊奏法を軽々とこなし、要所要所のキメでは録音媒体らしからぬ熱さも感じられる佳演ばかり。

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実は、これらCDのほかにも紹介したいものがたくさんある。木下直人さんより頂戴したロンデックス、ギャルド四重奏団、パリ五重奏団の復刻盤、上田卓さんより頂戴したプロクシマ・ケンタウリのCD、サックスとチェロの作品集、佐藤淳一さんより頂戴したべリオ関連の論文と佐藤さんご自身の「レシ/シュマン」「セクエンツァ」のライヴ録音、mckenさんに頂戴したドイツの四重奏団のCD、Bryan Kendall氏よりお分けいただいた復刻音源ほか、いろいろ(音源関連が多いなー)。追い追いブログ上に書いていく予定なので、今しばらくお待ちくださいませ。

ではでは、今年一年、ありがとうございました。皆様、来年もよろしくお願いいたします。

2007/12/30

周遊日記

田村哲さん、ソプラノのN(ちさ)、アルトのT(どさ)、れっどりばー氏とともに、渋谷のアクタスへ。田村さんに廿楽さんを紹介していただく(ありがとうございました)。修理スペースには、ななななんと!マ、マルセル・ミュールと廿楽さんが一緒に写っている写真が!

ソプラノのNがマウスピースを選んでいる間、楽譜をいろいろあさってみる。ルソー氏の「高音演奏技法」、ダニエル・ケンジー氏の「重音演奏」、ロンデックス氏の「Hello! Mr. SAX」あたりは、ぜひ手元に置いておきたけれど、一冊およそ7000円…手が出ない。フィリップ・ルルーの「SPP」、クリスチャン・ローバの「Hard」あたりも、資料としては置いておきたいのだがなあ(吹けないけど)。あ、「Ars」はいつかやってみたい。

CDコーナーで、ジャン=ピエール・バラグリオリ Jean-Pierre Baraglioli氏のデクリュック作品集を捕獲。購入時にバラグリオリ氏に興味があると店員さんに言ったら、オンラインショップ限定のCDを紹介された…これ。パリ・ギャルドの団員のCDなどという紹介の仕方をされているけれど、ななななんと!Quatuor Axoneの超名盤、「Through」が売られているではないですか!以前バリトンサックスのマルティヌーさんに個人的に送っていただいて、ブログ上でもレビューしたけれど、まさかアクタスのオンラインショップでも扱っているとは知らなかった。あと在庫が一つだけ残っているようなので、興味ある方はぜひ買うと良いと思います。

田村さんに、エリザベトでサックスを勉強していらっしゃる椿義治さんという方を紹介された。田村さんと椿さんとは、遠いお知り合い?だそうだ。ブログを見てくださっているということで、驚き。フェスティバルでお世話になった有村さんにも、ぐうぜんお会いすることができた。

で、ソプラノマウスピースの選定も終わり、帰ろうとすると、ななななんと!廿楽さんのブースに坂田明氏がいらっしゃるではないですか!思わず一緒に写真をとっていただいてしまいました。写真を撮ってもらっていると、今度は伊東たけし氏が来店…恐るべしアクタス。坂田氏に「前のフェスティバルの対談聞いて、感動しました!私たちはクラシック奏者ですが…」云々という話をしたら、「ジャズもクラシックも関係ないんだよ、おんなじ人間だから」と、さらりと返されてしまったのでした。いやはや。

新宿へと移動し、なぜか歌舞伎町のバッティングセンターで遊ぶ。バッティング、球が当たったら楽しいのだろうが、当たりませぬー。太鼓の達人は、やっぱ楽しいですな(なぜかクラシック曲対決)。新橋経由で、上野のアメ横へと移動し、「大統領」なる居酒屋で乾杯。

「大統領」という居酒屋、こんなところ。ガード下、もちろん屋外。時々通る電車の音、夜の街の喧騒、裸電球の光…。お高くまとまった飲み屋も好きだが、こんな下町風情溢れるところも、また良い!熱燗とモツ煮込みのペアがたまらんーっ(o>▽<)oいろんな話に花が咲きながら、夜は更けてゆくのでありました。

2007/12/29

いろいろ練習

というわけで、2008年3月1日に演奏会やります。ので、ぜひお越しください。2月中旬になったら、また再度告知することにして、しばらくはいつもの更新スタイルに戻します。

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3月の演奏会のために、マスランカの「レシテーション・ブック」やシューマンの「幻想小曲集作品73」、それにバーバー「思い出」をさらいながら、今年は吹きおさめ。新年は、1月5日から練習可能となる。

「レシテーション・ブック」は、とにかく曲に振り回されないようにしなければ。楽譜上の音は少ないけれど、合わせ練習で吹き進めていくと、うっかり制御不能に陥ってしまう。しかし、意外となんとかなる…か?鳥肌立ちますね、これは。冷静に吹けるようになるまでは、もう少し時間がかかるかも。

シューマンは、ソロだけでさらっているとなんだかピンと来なかったが、ピアノと合わせた瞬間にビビッときた。大変な名曲だ。なんとピアノパートだけでもすばらしい一曲になりそうなほど…。ソロパートも、音数は少ないけれど、アンサンブルすればするほどに、シューマン自身が内に込めた情熱がひしひしと伝わってくる。いやー、この曲を吹けて幸せです。

【演奏会のお知らせ】

※2008/3/1までこの記事をトップに置きます。一つ下の記事が、最新の更新です。…と思ったけれど、一週間ほどこのままにして、その後は普通の更新スタイルに戻そうと思います。2月中旬になったら、またこの記事をトップに掲げます。

東京藝術大学大学院修士課程の田村哲さんと、東京藝術大学大学院博士課程の佐藤淳一さんを迎え、Tsukuba Saxophone Quartetのメンバーを中心にしてコンサートを開きます。みなさまどうぞお越しください!!

【Tsukuba Saxophone Quartet - SAXOPHONE CONCERT】
2008年3月1日 19:30開演 21:00終演予定
つくば市アルスホール(つくばエクスプレスつくば駅下車徒歩5分)
入場無料

出演:Tsukuba Saxophone Quartet(6名)ほか
客演(*):田村哲氏(東京藝術大学大学院修士課程)、佐藤淳一氏(東京藝術大学大学院博士課程)

イトゥラルデ - 小さなチャルダッシュ(asax, pf)
シューマン - 幻想小曲集より(tsax, pf)
バーバー - "思い出"より(ssax, asax, tsax, pf)
マスランカ - レシテーション・ブックより(4sax)
*日本の四季メドレー(4sax)
*グリーグ - 組曲"ホルベアの時代"より1, 2, 5(8sax)


問い合わせ:
kuri_saxo@yahoo.co.jp
http://tsukubasaxophone.blog51.fc2.com/

2007/12/27

サクソフォーンフェスティバル2007二日目レポート(2/2)

17:00からは、メインのフェスティバルコンサート。「サクソフォーンとライブエレクトロニクスの共演」「サクソフォーン・ルネッサンス」という豪華二本立てである。

ライブエレクトロニクスとの共演は、コンピュータオペレータは仲井朋子氏、音響エンジニアはサウンドクラフトという、専門家を交えての環境で演奏された(オペレータとエンジニアは、通路直後の席のコンソールに着席)。ステージ上手と下手それぞれに、4本のスピーカータワー、演奏者へのモニター(返し)は、そのタワーの上にセッティングされていた(あれで良く聴こえるよなあ)。さらに、演奏者の近くに集音マイクがセッティングされており、アコースティックの音とテープがミキシングされて出力される風。

…あ、どうでも良いのだが、パンフレットには「ガーデン・オブ・ラブ」と「ピッチブラック」の作曲者が「Y.T.フェルトハウス」などと書いてあったが、おそらく「J.t.フェルドハウス Jacob ter Veldhuis」のほうが、呼称としては広まっているため、こちらのブログでは「J.t.フェルドハウス」で統一します。

♪林田和之
J.t.フェルドハウス「ガーデン・オブ・ラブ The Garden of Love(日本初演)」

林田氏は、数年前に石井眞木の「オルタネーション」を聴いて以来、トンでもないサックス吹きだ!という先入観がある。CafuaからCD「Lessons of the Sky」発売も予定されているが、まだかな。
さて、この曲は最初がウィリアム・ブレイクの「The Garden of Love」という詩の朗読から始まるのだが…あれ?テープのバランスが大きくないか?しかも、かすかにノイズ・リダクション処理、もしくは符号化処理に伴って発生する「キャラキャラ」というノイズがかすかに聞こえるぞ?続いてサックスが入るが、相変わらずテープのバランスが大きいまま。ふーむ。林田さんも、イマイチのりきれていない感じだった。聴いていると徐々に気にならなくなってきたが、最後のコーダで完全に半拍ずれてしまった…。あ、どんな曲か聴きたい方は、YouTube上のTies Mellema氏の演奏ムービーでも観てみてください。

♪栃尾克樹
C.ロバ「スタン Stan」

バリトンサクソフォンとテープのための作品。比較的穏やかな音との絡みであり、まるでヒーリング・ミュージックでも聴いているかのようだ。後で気づいたので未確認だが、もしかして循環呼吸を使っていたのだろうか。
(追記:Duo Green Greenのねぇ。さんによると、本当に2/3くらいは使用していたようです。CD「アルペッジョーネ・ソナタ」なんかを聴いてみると、ブレスをきちんと使いながらも、その流れの中でフレージングを推敲してゆく、というイメージだったので、ちょっと意外)
作品自体の音運びは、同じくクリスチャン・ローバの「バラフォン」辺りを想像していただけると良い。重音は出ないが、最終部に向けて怒涛の16分音符が並ぶ様は、まさに圧巻。といっても栃尾氏のバリトンサクソフォンは常に穏やかな音を保ったままであり、音色に対するコダワリを伺うことができる。最後は、波が引くように静まって幕。

♪井上麻子
P.ジョドロフスキ「Mixtion(混合)」

大変な名演だった。井上麻子さんご自身が、パリ音楽院に在籍したときに実際に吹かれたこともあるはず。鬼気迫る、と言った感じのテナーサクソフォンの演奏は、バランス大きめのMAX/MSPから出力されるサウンドと対等に渡り合っており、まさに異質なものが激しくぶつかり合って新たな響きが生まれるその瞬間を、じっくりと堪能することができた。
…何気に、日本で演奏された「Mixtion」、全部聴いているんだよなあ。2006年7月のジェローム・ラランさんによる初演、2007年11月のドゥラングル教授による伝説的ライヴ、そして2007年12月の今回のフェスティバルと。
最初のppppからのクレッシェンドに自分の緊張による心音が重なり、ピンスポットを効果的に使用した照明と相まって異世界へとトリップ。感動的な、幸福な15分間だった。

♪大石将紀
酒井建治「波と記憶の間に-山本亮一の記憶に-サイドA(Beetween the wave and memories - side A)」

ソプラノサクソフォンとアルトサクソフォンの持ち替え。これも演奏&作品どちらも凄かった。ジョドロフスキの作品と比較すると、日本人的なone by oneの感性を垣間見ることができるのが面白く、また音響素材にも梵鐘などの日本的感覚で自然に聴くことができる音がまぎれていたのが、この作品に強いオリジナリティを与えていた。おそらく音響合成にはMAX/MSPを使用したのだろうか?手法は西洋発でも、出てくる音楽はやっぱり日本人なのね、と妙に関心。
大石氏の独奏を聴くのは2回目。前回はA.カプレの「レジェンド」であったが、今回はまさに本領発揮と言ったところか。エレクトロニクスとの絡みで言えば、本日の白眉であったし、どんな超絶フレーズにおいても、大変に安定した技巧が印象的だった。B→Cも楽しみです。

♪アルディ・サクソフォーン・クヮルテット
J.t.フェルドハウス「ピッチ・ブラック Pitch Black」

数年前にアムステル・サクソフォーン四重奏団が日本初演を行った曲。ぼやけた声がサンプリングされ、しかし強いジャズの影響を受ける箇所もアリの大変楽しい曲である。うーん、こちらも、ちょっとテープのバランスが大きいか。演奏は良かったと思うし、作品も場面がめまぐるしく変わって興味深かったのだが、ちょっと頭が痛くなってしまった。リアルタイムで音量調節していけば良いのに、音響エンジニア的感覚からしたらこのくらいのものなのだろうか。

ここで休憩。なんとロビーで、倉田さんに名古屋サクソフォンアンサンブルの櫻井牧男氏を紹介される(ありがとうございました)。ThunderさんとともにLP「パピヨン」の話をいろいろ。へえー、レコーディングはβを使用したんですかあ、みたいな(マスタはアナログだったらしいが)。

さて、続いて雲井雅人氏によるアドルフ・サックスの息子(エドワルド)の作によるヴィンテージ楽器を使用した演奏。

♪雲井雅人(sax)&中地朋子(pf)~サクソフォーン・ルネッサンス~
F.コンベル「マールボロによる変奏曲」
G.ピエルネ「カンツォネッタ」
F.デュクルック「叙情的歌曲第5番」
トークの合間に演奏された作品…「"アルルの女"間奏曲」「フェルリング第1番」「金婚式」など

冒頭、ビゼー「"アルルの女"より間奏曲」の一音目の瞬間、ホール全体がふわっと暖められたような気がした。美しいヴィブラートと、良く響く音色、抜群のフレージング…涙が出ました。本当に。21世紀の作品を聴いた後だったので、ことさら耳にやさしく響くのだ。「間奏曲」が終わった瞬間、大きな拍手が巻き起こった。
トークを交えながらの和やかな進行。たとえば入手先であるとか(なんとヤフオク!)、音程の問題、マウスピースの問題、雲井氏の古楽器に対する思い、などなど。そんな中演奏されたコンベルの「マールボロ変奏曲」、ミュールの名演が名高いが、それに引けをとらない素晴らしい演奏。トリルをかけた音が、現代楽器とは根本的に違うのだそうだ。最後を走り気味にしたのは、ミュールのSPを意識してのことだったのかしらん(笑)。
ピエルネの「カンツォネッタ」も、素敵だった。「カンツォネッタ」がこの古い楽器、そして雲井氏の手にかかると、ちょっとしたアルペジオなんかが、実に魅力的に響くのである。デュクルックの「叙情的歌曲第5番」は初めて聴いたが、ロマンティックで、密やかで、時折現れる翳りのある和声や煌きの和声などが、心にふとしみこむ。忘れられているのがもったいないほどだ。いやあ、本当に素晴らしかった!!

♪貝沼拓実
J.イベール/J.M.ロンデックス編「室内小協奏曲」

ロンデックスがボルドー音楽院のアンサンブルのために編曲したSnSSAAATTBBBsという版で、とにかくこれらの版はまとめるのが難しいとも聴くが、指揮の池上政人氏を始めとする緻密な連係プレーは、見事!の一言。というか、ソロの貝沼氏だけでなくバックのメンバーも豪華すぎです(おお、バスサックスは佐藤さんではないですか!)。
貝沼氏のソロは、そんな歯車のようなバックの上を滑るように自在に乗りこなしていく風で、数年前に聴いた氏の演奏から受けた印象を、良い意味で覆された。すでに大活躍中の貝沼氏であるが、これからにもさらなる期待!

♪フェスティバルオーケストラ
A.ドヴォルザーク「スラブ舞曲より第1,3楽章」

オルガンのような凄いサウンド。しかも、明らかに毎年毎年レベルが上がっているのが分かる。池上氏の指揮下、豪華絢爛な響きがホールを満たすのだ。

♪フェスティバルオーケストラ+全員での大合奏~サックス大合奏2007
F.グルーバー/金井宏光編「きよしこの夜」
L.v.ベートーヴェン/金井宏光編「歓喜の歌」
J.P.スーザ/金井宏光編「威風堂々第一番」

いろいろあって、客席ほぼ中央で体感。あー、もうステキすぎる。この、巨大なパイプオルガンの内部にいるようなサウンドは、他では絶対に体感できないものだ。アレンジャーの金井氏にも、拍手。

そして、全プログラムが終了。終演後、11月以来となる大石将紀氏にお会いする(頂戴した名刺がクール!)。3月のB→Cや、11月のドゥラングル・リサイタルのことなどを少々。"Φ"責任者のみゆきさんと共に、舞台裏で有村さんに御礼。そして、上田卓氏にもご挨拶することができた!

気づけばあっという間だったなあ。大変充実した2日間だった…。今回のフェスティバル運営面・演奏面に尽力されたサクソフォニストの皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。来年は、12/20と12/21の2日間開催。実行委員長も決定済みとのこと(笑)。

2007/12/26

サクソフォーンフェスティバル2007二日目レポート(1/2)

フェスティバル2日目。案の定寝坊し、10:00からの演奏に間に合うのが絶望的となる(爆)。それでも眠い体に鞭打って、あたふたと準備&出発。冷たい雨が降る曇り空から、次第に太陽が顔を出す様子を眺めつつ、バスや電車を乗り継いで、12時過ぎに多摩センターに到着。昨日とは打って変わって、心地よい青空が広がっていた。

とりあえず、何となく楽器の試奏ブースを訪ねてみることにする。昨日見ることができなかったコントラバス・サックスが目的。目の前にして唖然。でーっかーいー!自分の身長よりも大きい楽器なんて、初めて見たぞ。出展はユニオン楽器さん。オルジー製のコントラバスサックスで、ニューヨークで購入されたものだそうな。吹いてみると、…おお、意外と音が出る。ものすごい爆音だけど。マウスピース、リガチュアは専用のもの、スタンドも専用のもの(2環支柱構造)、ちなみに価格はしめて500万円だそうだ(うへぇ)。お隣には、Cメロディサクソフォン。テナーサクソフォンのマウスピースを持っていってつけて吹いてみたが、まともな音が出なかった。残念。やはり内径の広いマウスピースがミソか?

こちらは、Low Aつきアルトサクソフォン。確かアメリカンセルマーの金メッキだったような。奥に見えるのは、逆にLow Aなしバリトンサクソフォン。ベルが短いですね。さらに、お隣には大変に状態が良いMark VIの金メッキソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンが陳列されており、壮観。中学生くらいの女の子が、何も分からずMark VIテナーを吹いていて、面白かった。サム・テイラーか誰かが使用し、レコードのジャケットにも乗っているピンク色のサックスと全く同型のもの(!)まで陳列されていた。内部は銀メッキだそうな。

カイルヴェルトのブースでは、ブラックニッケルモデルのテナーを吹かせてもらう。うん、良い楽器だ。私が現在メインで使用しているのはSelmer Reference 54なのだが、きちんとプレートになっているってだけでぜんぜん鳴りが違うよなあ。鳴りの限界がない感じ、いいなあ。キー配置は、やや慣れない感じだった。筒井さんにお会いする。

続いてセルマーのブースで、100万円以上はするスターリング・シルバーのテナーを吹かせてもらう。おお、これもなかなか良い楽器だ。ちょっと重いが、音色もステキだし、良く響くし…しかし最近のユーロ高もあり、手が出ない。Vandoren AL3とAL4の違いや、LB Lyonや、もう扱っていないBGのことや、佐藤尚美さんのことをなんやかんや話す。偶然セルマーブースにやってきたラランさんと、おはようの握手。

ヤマハとヤナギサワのブースを尻目に、お昼を食べるため外へ。今日に限って単独行動だったため、一人寂しくチャーハンを食す(涙)。パルテノン多摩へ戻る道すがら、アルトのTを見つけ、ついでにソプラノのNも見つけ、合流。ドルチェブース辺りをブラブラしながら、2/2のSAXOPETサロンコンサートのチケットを購入&フルモー氏のルネガイ版を購入。また、近くにいた服部吉之先生とお会いし、近況を話す。鎌倉、遊びにおいでよと言われたので、ほんとに遊びに行くかもしれません。16:00からの即興対談準備をしていらっしゃった、佐藤さんや田村さん、大石さんにもお会いする。

Subwayへと繰り出し、お茶。14:00からのA会員のコンサートに間に合わせるために戻ろうとすると、Quitet CIRQが屋外演奏中。途中まで聴いて、ダッシュで中へ。

♪ジェローム・ララン&原博巳
A.ベルノー「デュオ・ソナタより第2,3,4楽章」

実はこの曲、以前演奏しようとして、あまりの難しさに一瞬であきらめた曲だったのだ。そんなわけで難しさは分かっているのだが、おおお、ここまでスラスラと聴かせてしまいますか、ラランさん、原さん。さすが、世界でも屈指の実力を誇るお二方だけに、ものすごいアンサンブルが展開されていた。ラランさんのソプラノの音色は相変わらずの美しさだが、原さんのバリトンの音をしっかり聴けたことが収穫だった。…ものすごく良い音だ!これは、「スラップスティック」も楽しみですなあ。第3楽章は、意外と堅実な音楽運び、第4楽章の狂気ともいえるほどのしつこいテーマ回帰には、鳥肌が立った。

♪筒井裕朗&堺洋子
H.ゲンツマー「ソナタ」

筒井氏は、石川県金沢市で活躍されるサクソフォニスト。知られざる作品を掘り出し、再び光を当てるような活動は、大変歓迎すべきものである。曲そのものが持ついぶし銀のような渋さを、堅実に再現することに徹した佳演だった。筒井氏、楽器のダイナミクスはかなりのもので、ホールが良く鳴っていたのも印象的であった。後で伺った話であるが、ゲンツマーの「ソナタ」は、作曲家晩年の作であり、さまざまな楽器のために書かれた「ソナタ」シリーズのうちの一つだそうだ。ヒンデミットのような自動作曲法に則って作曲され、なかなか面白い音運びをする場所もあるとのこと。楽譜をぜひ見てみたいものだ。

♪ミーハ・ロギーナ&李早恵
A.I.ハチャトゥリアン「ヴァイオリン協奏曲より第1楽章」

スロヴェニア出身の若手サクソフォニスト。ミーハ・ロギーナ氏がL.A.Sax(だっけ?)に依頼して改造してもらったと言うLow Aつきソプラノサックスを携えて、舞台に登場。Low Aがつくことで、ヴァイオリンの最低音へと到達し、ヴァイオリンの作品を全て演奏できるようになるそうだ。
そして演奏開始。もうね、驚きました。どんな超絶パッセージにおいても、スラスラとまるで鼻歌でも歌うようにフレーズを繰り出していくのだ!アタックのニュアンスのコントロールは、羽毛をなでるような軽さからスラップまでと、想像する限り幅広く、それを数秒のオーダーでめまぐるしくコントロールしてしまうもんだから、並みのバイオリンよりもよっぽど表現の幅が大きく聴こえる。李早恵さんが弾くピアノも、時にダイナミックであり時に繊細である演奏を繰り広げていた。しなやか、有機的、という表現がピタリと当てはまるな。
…というわけで、想像以上に凄かったのです。まだ関西のほうでは演奏が残っているそうで、関西にお住まいの方はぜひ行かれると良いと思います。

♪野原デュオ
A.カプレ「レジェンド」

不思議なベクトルを持つ音色だった。野原武伸氏は、ドゥラングル教授がサクソフォンクラスを受け持ち始めた初期のパリ・コンセルヴァトーワルへの留学経験があるが、それから15年を経る中で獲得したサウンドだったのだろうか。この音色野原みどり氏のピアノのすばらしさは、言うまでもなし。オーケストラを従えたような、重厚な音色に圧倒された。

♪クローバー・サクソフォン・クヮルテット
L.ロベール「テトラフォーン」

まだ若いカルテットだが、アンサンブルとしての完成度は大変高い。クローバーは、昨年フェスティバルでのデザンクロ、今年5月のデビューリサイタル、そして今回のロベールと、計3回聴いているわけだが、新世代ならではの有機的なアンサンブルと、ビロードのような艶のある音色は、サックスという楽器を超越した音楽としてのすばらしさを感じる(似たような評は、随所で聞かれますね)。音色軽めの「テトラフォーン」を想像していたのだが、意外にも重厚なサウンドで迫ってくる部分もあって、良い意味で裏切られた。表現の幅が、増していると言うことか。

♪ヴィーヴ!サクソフォン・クヮルテット
A.ヒナステラ「アルゼンチン舞曲集」
清水大輔「Ives Mind 2」

ソプラノサックスを吹いているのは、茨城県ではおなじみ、関城吹奏楽団指揮者の豊田晃生氏。最初に演奏されたヒナステラの作品は、バリトンの浅利氏によるアレンジだそうだ。タイトルから連想される響きとは異なった、コンテンポラリーな響きのする面白い曲だったなあ。なぜかラクール「四重奏曲」の第2楽章と共通性を感じた。清水氏の作品は、まあアイヴスっぽかったと言えばぽかったかな。熱演だったが、作品としてもうちょっと洗練され、まとまった響きが聴きたかったとも思った。ここで、板橋区演奏家協会の演奏を聴きたい気持ちを抑えて、小ホールへ移動。波多江さんの演奏を聴くためだ。

♪波多江史朗&羽石道代~小品でshow!~
P.M.デュボワ「りす」「忍び足」「ウサギとカメ」
J.M.ダマーズ「音から音へ」「ヴァカンス」

トークを交えながらの、リラックスした雰囲気。デュボワの「ウサギとカメ」の表紙に惹かれた…あの楽譜、欲しい。波多江氏の演奏を聴くのは、録音&実演問わず初めてだったが、実にステキな音色、そして豊かな響きを持っているのですね!小ホールだと言うこともあるだろうが、ホールの隅々までキラキラした音色が満ち溢れていた。今度CD買ってみようかな。

♪平野公崇×坂田明
即興対談
平野氏と坂田氏の即興(ドローン上で)
坂田明「やくたたず」
平野氏と坂田氏の即興

ほぼ満員の聴衆の中、ステージに現れた平野氏と坂田氏。平野氏と言えども、坂田氏の独自の世界観に圧倒されているように進行。そのまま消えてしまうのが惜しいような言葉の数々…録音でもしておけば良かったか。
「平野くん、音楽はクオリティだよ(平野氏が初めて坂田氏に会って、5秒後に言われた言葉)」
「音楽は、1に人格、2に年輪、34がなくて、5に勝ち負け(専門家への道は、5から始まるらしい)」
「音楽を究める道とは、それぞれが北極星を目指すようなものだ。道筋は違うけれど、それが良い」
「即興演奏とは、日常会話のようなものだ…だって、原稿持ち歩いて過ごしている人なんていないでしょ。だから即興はだれでもできるものなんだよ。ただ、楽器の場合は"楽譜がある"という思い込みがあるから訓練は必要だけれど」
などなど。

藝大サックスチームを従えて演奏されたドローン上での即興演奏聴き比べ、そして坂田明氏の「やくたたず(もともとは新日フィルのために書いた曲だそうだ)」、最後に2人だけで演奏された即興対決は、どれもが圧巻であった。ジャンルを越えたスーパーサックス吹きたちの饗宴…いつまでも体感していたいような、まさに至福の1時間であった。

-つづく-

2007/12/25

サクソフォーンフェスティバル2007一日目レポート(2/2)

彦坂眞一郎氏率いる裏サックスのコンサート。サックスラージ+ギター+ベース+ドラムスと、ふと思えばSax Assaultの編成に似てなくもないが、彦坂氏、斉藤尚久氏、福本信太郎氏をフロントに据え、ソリスティックな響きを前面に押し出したイメージ。福本氏のノリノリのMC、そして直後の爆音へのなだれ込みに、一気に会場のテンションが上がる。かぁっくいー(*´ω`人)

♪裏サックス
斉藤尚久「僕のカブリオレ」
斉藤尚久「Funk Up」
斉藤尚久「message」
斉藤尚久「ドキッ!胸キュン Mermaid(アンコール)」

彦坂さんの音色に驚き。普段トルヴェールで聴く音は、どこまでも甘く柔らかい音だが、ノンラッカーにメタルのマウスピースと、完全にジャズのセッティングから生み出されるサウンドは、まさにマリエンサルかサンボーンかと聴き違うようなファンク奏者のそれである。フロントを務めた3人も、クラシック奏者の余技とは思えないほどのスペシャルなアドリブを決めまくり、進行はてんでバラバラ、空気はどこまでもヒートアップしてゆく。最後の「ドキッ!胸キュン~」では、それまでバックでおとなしくしていた榮村正吾氏がフロントに繰り出し、こちらもおっそろしいほどの即興を繰り出していた。ふええ。

休憩を挟む。mckenさんが聴きにいらっしゃっていたようで、んで、サクスケルツェット。洗足音楽大学の教授・講師によって結成される超豪華ラージアンサンブルだ。

♪サクスケルツェット
星出尚志「チェイサー」(池上政人、二宮和弘、山田武彦)
ラヴェル/金井宏光編「クープランの墓」(大城正司、林田祐和、田村真寛、二宮和弘、貝沼拓実、原博巳、山田武彦)
ガーシュウィン/山田武彦編「ラプソディ・イン・ブルー」(独奏:山田武彦)

「チェイサー」は、ピアノ+アルト+テナー。池上先生のソロは、熱いっす。数年前に聴いた、サクスケルツェットの第1回演奏会のことを思い出した。ラヴェル「クープランの墓」は、フェスティバルでも聴いたことのある、そもそもは板橋区演奏家協会のために書かれた版。さすが実力者ぞろいのアンサンブルで、プレリュードのような高速フレーズを、どこまでもしなやかに聴かせる手腕に脱帽。

白眉は「ラプソディ・イン・ブルー」。山田武彦氏の編曲は、ほぼオーケストラ版に忠実に沿いながらの音楽運び…所々に出現するソロは、さまざまな奏者を経由しながらと、とても楽しい。思いきや、なんかピアノのカデンツァの途中にものすごいことに(@_@)うおっ、そこで平野さんも即興で絡んじゃうの?ええぇー!…という感じ。凄かったなあ。後で原博巳さんに聞いた話だが、この山田武彦氏、原博巳さんと共演した際に、デニゾフのソナタのピアノパートを、ほぼ初見状態で弾ききってしまったそうだ(!!)。何回か演奏に触れる機会はあったけれど、やはりこの方、只者ではない。

サクスケルツェットを聴いた後は、レセプション会場へ移動。ここぞとばかりに、いろいろな方と話す&名刺交換&Tsukuba Saxophone Quartetのメンバーを紹介。Φで共演したMさんは、-とり-さんと共にエスポワールからの参加。DUO Green Greenのお二方とは、コンクール以来のお知り合い。東京藝大大学院1年の田村哲さんは、ブログを読んでくださっているそうで、しかもタメで、なんだか随分仲良くなった。冨岡先生とツーショットの写真を撮ってもらったソプラノのNはずるいっす。サクスケルツェットの話を少々&「Heartbreakers」を聴かれていたようで、赤面。IBCサックスさんたちとは、コンクール以来だったなあ。並みのアマチュアとはオーラが違う。筒井裕明さんは、酔っていた(笑…2日目には、きちんと真面目なディスカッションもしました)。

高校の吹奏楽部でずっと上の先輩だったK.S.さんに、思いがけず再会(私が高校のとき、もっとも影響を受けたテナーサックス吹き。再会が嬉しかった)。原博巳さんは、何かといろいろお世話になっているなあ。気さくに接していただいて、とても光栄(ソプラニーノ・バリトン吹き分けのときの轍、という表現がツボった)。来年6月のリサイタルが楽しみ。Thunderさんとは、マルセル・ミュールとBryan Kendallに関する話を少々。ジェローム・ラランJerome Laranさんとは、新しいレコーディングの詳細や、来年夏の来日計画、ジョドロフスキの新作などの話題を話す(森あゆみさんに通訳してもらった、ありがとうございました)。李早恵さんのおかげで、ミーハ・ロギーナ Miha Rogina氏とも話すことができた。ブーレーズのマスタークラス、ハチャトゥリアン、フェルドハウス関連のお話など。なんと英語OKだったので、自分でもなんとか話してみた。山本直人さんにもドルチェ以来で再会。国立音大卒業後も、まだこちらにいたようだ。松沢増保氏にも、対面できて感激。

そんな行われた豪華商品が振舞われるじゃんけん大会は、結局何の商品もゲットすることができず、ちょっと悔しかった(笑)。友達はリードケースやら楽譜やら手に入れていたのになあ。自分じゃんけん弱い。

実行委員長の有村氏の言葉で、レセプションが大盛り上がりの中、終了。fさんとともに帰路についたのであった。帰りはずいぶんスムーズだったなあ(多摩からつくばまで2時間弱)。

2007/12/24

サクソフォーンフェスティバル2007一日目レポート(1/2)

フェスティバル一日目のレポートは、自分も参加していたので、日記形式で書いていこうと思う。

12/22朝、fさんの車でつくばを朝7時に出発。テナーサクソフォンとバリトンサクソフォン、アンプ付スピーカー(Roland CUBE-30)2台を積んで、常磐道をひた走る。10:20からリハーサルとのことだったので、10時くらいに着くつもりで出発するも、案の定首都高速が大渋滞。何とか1時間30分ほどかけて中央道へと抜け、国立府中ICで一般道へ。ICからパルテノン多摩まではおおよそ6kmの行程で、スムーズに走ることができた。

10:10、パルテノン多摩に到着し、楽器置き場&リハーサル室を求めてさまよう。リハーサル室前でソプラノのN、アルトのTと合流。中に入ると、エスポワール・サクソフォンアンサンブルさんがリハーサル中。-とり-さんと再会、また、EnsembleΦでご一緒させていただくエスポワール責任者のMさんに初対面。さて、いざ「Heartbreakers」を音だし。20分しかリハーサルが取れなかったので、アンプ1台を鳴らしながら、簡単に通す。特に際立った問題もないまま、リハーサル終了。

楽器置き場へ移動すると、なめら~かさんほか、すでに多くのアンサンブルが到着し、皆さん音だし中。Φのみなさんと合流し、Tsukuba Saxophone Quartetは個別に場所を確保し、軽く音出しを続けていると、バリトンのHが到着。今度はEnsembleΦのリハーサル。とにかく合わせの時間が取れなかった「White Candle」の不安箇所をつぶし、続いてサクソフォン・ソロの有村さんとサンバホイッスルの國末さんを迎えて、「Samba of the Sun」をざっくりと通す。有村さんは実行委員長で忙しいはずだが、演奏のほうもたくさん乗っていらっしゃってすごいなあ。相変わらずの美音とスーパーテクニックで、バックのアンサンブルも乗せられるようにテンションが上がる。

リハーサルを終え、愛好家ステージの立ち位置確認のために舞台袖へ移動。ドルチェのブースに倉田さんがいて、ちょっと4人で立ち話。舞台袖で待機しステージに出ると、どうやらそれまでフェスオケがリハーサル中だったようで、プロの方が大量にステージ上に。立ち位置に移動しながら、ジェローム・ラランさんと握手を交わす。場渡りはすぐ終了し、楽器を置いて、オープニングのコンサートを聴くために急いで客席へ。そして、ついに開演。

♪池上政人指揮フェスティバルオーケストラ
R.シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」
E.グリーグ「組曲"ホルベアの時代"より前奏曲」

フェスティバルオーケストラ、乗っているのは国内外で活躍されているサクソフォニストがいっぱい。知った顔が何人もいらっしゃった。シュトラウス、オープニングにぴったりだ!ティンパニーを交え、巨大なオルガンのごときサウンドがホールをいっぱいに満たす。つづく「ホルベア」も、100人規模のアンサンブルに似合わない統制の取れたリズム・響きが流れてきて、驚く。それぞれの技術力の高さと、池上氏のタクトのどちらにもよるものなのだろう。

さて、オープニングを聴いた後に、ホールを抜け出して楽器置き場でテープのバランス調整。イコライザとマスタ、アンプをごちゃごちゃやりながら、予備音源も含めて準備を行い、再びホールへ。こっそりドアをすり抜けると、ゴトコフスキー演奏中。

♪IBCサクソフォンアンサンブル
I.ゴトコフスキー「四重奏曲より第1,3,5楽章」

一年ぶりに聴くが、あの協会のコンクールで聴いた強靭な響きが、ホール最後尾まで到達。もう、IBCさんの皆さん、個々の上手さだけでなくアンサンブルが本当にしっかり練られていて、アマチュアどころの話ではない。今年の協会コンクールも楽しみですなあ。続いて、ジュニアの第1位入賞者披露演奏会。第一位は、国立音楽大学付属高の中島諒さん。

♪中島諒
E.ボザ「コンチェルティーノより第2,3楽章」

本当に高校一年生ですかあ、という呆気にとられる上手さ。音量は控えめだが、音色がとにかく瑞々しい。ボザ作品ならではの超技巧的フレーズも、ここまでスラスラと吹きこなしてしまうとはねえ。大学に入る頃には、いったいどれだけ上手くなっているというのだろうか。3年後、7年後にも期待。

そして、本番のため再び楽器置き場へ。エスポワールさんを見送りながら、楽器を暖めつつ、出番を待つ。とりあえずアンプだけ舞台袖に運んでおかなければ…と、モタモタ持っていく。その舞台袖で、東京藝大修士1年の田村哲さんに声をかけられる。で、なぜか写真を求められる(大混乱)。まあ、田村さんとは後のレセプションでたくさん話したのだが、それは後半に譲るとして(笑)。で、いよいよ舞台袖に移動。なんだか司会の山浦雅也さんと國末貞人さんからメンバーにインタビューが入るようで、いろいろ質問された。That'sさんが終わり、セッティング。このときまで、アンプが鳴るかどうか不安を抱えたまま。そして、山浦さんと國末さんのまったりとしたインタビューをうけ、いざ本番。

♪Tsukuba Saxophone Quartet
J.t.フェルドハウス「Heartbreakers Part1(日本初演)」

えーと、結論から言うとややテープが小さかったようです。小さい空間でバランスを調整しておいても、パルテノン多摩のようなでっかいホールでは、楽器の音のほうが響いてしまうのですね。まあ、リハーサルなし本番一発だったらこんなもんかなあ。…あと、本番って緊張するから人間は先に走りたいと思うけれど、テープは冷静にいつもの速度であるので、ずいぶんとゆっくりに感じ、終わった直後はなんだか「やりきった!」という感じがしないなあ(笑)。ま、とにかく無事?に終わって良かった。舞台袖で早速録音MDを渡されたのは驚いたけど。

ホールから出て、楽器置き場に戻るところで、石川県のほうで活躍されている筒井裕朗氏と初対面。「面白い曲だね」と(本番を終えた私たちへの気遣いだとは思うが)言ってもらえて良かった(汗)。バランスも、そこまでひどくなかったようだ。

さて、アマチュアの他の団体を聴きたいと言う気持ちを抑えて、今度はEnsembleΦの本番のためにもう一度「White Candle」「Samba of the Sun」の要所を合わせる。「White Candle」は曲が長く、通して吹くとキツイっす。舞台袖からなめら~かさんのウォルトンを聴き(なめら~かさんて、アンサンブルとしてかなり完成度高いよなあ)、あれよあれよという間に本番。

♪EnsembleΦ featuring 有村純親(sax)&國末貞仁(samba whistle)
NAOTO/啼鵬編「White Candle」
NAOTO/啼鵬編「Samba of the Sun」

「White Candle」は四重奏。長い曲で大変だったが、なんとか最後まで持った。しかしこれ、良い曲だ。内に留めておくのがもったいないくらいだ。「Samba of the Sun」、楽しかったなあ。有村さん上手すぎて、聴き惚れて2回も落ちたし。國末さんのノリも面白すぎ!演奏後に、客席にいたTsukuba Saxophone Quartetのメンバーに話を聞いたが、Φの演奏、なかなか楽しんでもらえたようだ。

♪愛好家+フェスティバルオーケストラ
伊藤康英「ファンファーレ」
E.エルガー/金井宏光編「威風堂々第一番」
伊藤康英「ファンファーレ21」

難しいフレーズはプロの方に任せて、愛好家の面々は、おいしいところを吹きました。「ファンファーレ」は、入りの場所がわからず、最初落ちた(爆)。「ファンファーレ21」は、とても難しかった。吹きながら、まるで巨大なオルガンの中でサックスを吹いているような感覚に陥る。舞台上が暑かったこともあり、だんだんとぼーっとしてきて、音の渦の中に自分が溶けてしまいそうだった。

-つづく-

フェスティバル二日目終わり

ようやく帰筑。あやうく大学中央行きの最終バスを乗り過ごすところだった。

今日もたくさんの演奏を聴けて、いろいろな人に会えて、とても楽しかった(みなさま、ありがとうございました)。詳細レポートは後日書きます。

2007/12/22

フェスティバル一日目終わり

聴いたレポートは追々。自分たちの演奏のことを軽くメモ。

Tsukuba Saxophone Quartetの「Heartbreakers」は、バランスでややコケた(想定よりもテープが小さかった)が、まあリハーサルなし一発ならあのくらいが限界かなあ。「面白い曲だった」と、何人かの方から言ってもらえただけ良かった。Ensemble "Φ"は、合わせの時間も少なかったが、楽しい演奏ができた。合同演奏は、なんだか凄かった。パイプオルガンのメカのなかで吹いているような感覚。

一緒に演奏した皆様、ありがとうございました。

レセプションでは、国内外のサクソフォニスト、アマチュアでやっている方、久しぶりの方、いろいろな方にご挨拶できました。いろいろな方と交流を持てて楽しかったなあ。

2007/12/21

マルセル・ミュール@エルカート演奏記録

マルセル・ミュールが、1958年のアメリカツアーの際に、インディアナ州エルカートのセルマー工場でピアノデュオでのリサイタルを行ったときの演奏記録を載せておく。当時、ミュール自身が"The Saxophone"シリーズでレコーディングを行った"オハコ"ばかりであることがわかるだろう。

冒頭のスピーチと、バッハの演奏は、CD「La Legende(A.SAX 98)」にも収録されている。ミュールの英語の発音がイマイチで、何を言っているのか聞き取れないのが残念(Collection Adolphe Saxには、英語で書き下してあるらしいが)。

バッハ - フルートソナタ第6番より
グラズノフ - 協奏曲
グラナドス - "ゴイエスカス"より間奏曲
ピエルネ - カンツォネッタ
ボザ - コンチェルティーノより
チェレプニン - ソナティネ・スポルティヴ
パスカル - ソナティネ
イベール - コンチェルティーノ・ダ・カメラ
~アンコール~
ボノー - ワルツ形式によるカプリス
トマジ - バラード

マルセル・ミュール(sax)
マリオン・ホール(pf)

2007/12/20

Heartbreakers play Heartbreakers (3 of 4?)

週末のフェスティバルで私たちTsukuba Saxophone Quartetが演奏するのは、ヤコブ=テル・フェルドハウス Jacob ter Veldhuisの「Heartbreakers」という曲だ。もともとは、ジャズ・ゼクステット+ゲットブラスター(テープ)のために書かれた2部からなる作品だが、2006年にアメリカのNew Century Saxophone Quartetがフェルドハウス氏に委嘱して生まれた、サックス四重奏+テープのバージョンである。時間の関係でPart1のみだが、いちおう日本初演ということになる。

12/23のフェスティバルコンサート前半が、「サクソフォンとライブエレクトロニクスのコラボレーション」という企画であることを秋ごろに知り、だったら、せっかくのフェスティバルだしコンクールで出来ないことをやりたいなー、と思って、こんな選曲になった次第。曲調がほとんどジャズであるため、畑違いなりのさらう苦労はあったが、いちおう何とかなった…かも。なってないかもしれないが。

…フェスティバルコンサートでは、「The Garden of Love(日本初演)」と「Pitch Black」が演奏されるそうだが、選曲段階では「Pitch Black」は候補にも入っており、危うくバッティングするところだったな。

あとは当日に、持ち込みアンプ付スピーカー(Roland CUBE-30×2本!)が、良いバランスで鳴ってくれれば問題ないだろう。…そこが一番問題か。リハーサルを取れないのはきついなあ。

何はともあれ、参加&運営の皆様、よろしくお願いします。あ、"Ensemble Φ"もテナーで出ます。そちらについては、本番をお楽しみに。

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フェルドハウス氏に22日の演奏予定、そして23日を聴くのも楽しみだ、というようなことをメールしたところ、
I am truly honoured that my saxophone repertoire is now presented to the Japanese musicians and audience.
Good luck with the concerts and please keep me informed.
とのこと。

フェルドハウス氏が書く作品は、どれもが楽しいものばかり。演奏側として、聴き手側として、ますますフェルドハウス氏の作品がサクソフォーン界に広まることを望んでいるのだ。

2007/12/18

蓼沼雅紀 Saxophone Concert@三郷市

12/16のことだが、きちんと書いておかなければ。蓼沼雅紀氏のサクソフォーンコンサートを三郷市で聴いてきた。

・蓼沼雅紀サクソフォンコンサート
出演:蓼沼雅紀(sax)、加藤由紀子(pf)、佐藤親悟、河合一富、渡辺秀文(以上指揮)、栗ヶ沢中学校吹奏楽部、六実中学校吹奏楽部
日時:2007/12/16(日)13:30開演
場所:三郷市文化会館大ホール
入場料:全席自由1500円(当日2000円)
プログラム:
・ドビュッシー「ラプソディ」
・C.P.E.バッハ「無伴奏ソナタ」
・ボルヌ「カルメン幻想曲」
・スウェアリンジェン「セレブレーションとグローリー」
・鈴木英史編「ラテン・フィエスタ」
・カーペンター「青春の輝き」
・マッサー&ゴフィン「すべてをあなたに」
・モンティ「チャルダッシュ」
~アンコール~
・きよしこの夜
・ヴィードーフ「サクソフォビア」
・葉加瀬太郎「情熱大陸」

ココスで頼んだ大盛りハンバーグがなかなかサーブされず、なんとドビュッシーに遅刻!時間ぴったりに始まったようで、一曲目をロビーで聴いた。二曲目からホールに入ると、大ホールを埋め尽くすほどのお客さん!そう、今回は蓼沼氏が教えに行っている中学校との共演ということで、家族連れの方が多かったようだ。真っ暗闇の中を、転びそうになりながら進み、10列目ほどの場所を確保。

C.P.E.バッハの「ソナタ」は、最近特にサクソフォン界で流行しているような気がするが、フルートにはない芯のある安定さが、寧ろこの曲をさらに魅力あるものにしているように感じる。ソプラノサクソフォンで吹くと、どうしてもフラジオ音域を使用せざるを得ないが、そんなことを感じさせない見事な演奏だった。真っ暗中でたった一人スポットに浮かび上がって吹いている様子を見るうちに、少しトリップ。

アルトサクソフォンに持ち替えて、ボルヌ「カルメンファンタジー」。もともとはフルートの超絶技巧の見本市のような曲だが、サックスで吹くと、さらに難易度が上がるのはお察しの通り。一音目から、響きがホールを満たした!そう、蓼沼氏の武器は、やはりこの美しい音色だ。言葉では表現しづらいのだが、サックスでこういう倍音の比を持っている人はあんまり聴いたことがない(基音と同じくらいに、何かの音がものすごく響く)。音量は大きくないのだが、とにかく響きがものすごい。アクロバティックな曲奏が続くにつれ、どんどんと引き込まれた。クライマックスでは循環呼吸すらも使いながら、見事なフィニッシュ。大きな拍手。

後半は、栗ヶ沢中学校吹奏楽部、六実中学校吹奏楽部の合同バンドとの共演。まずは、吹奏楽だけでスウェアリンジェンの作品から。ここで上手さに驚いた!特に全国に行ったりするような中学校ではないはずなのだが、出てくる音一つ一つがとにかく確信に満ちていて、聴き手が純粋に音楽と向き合うことができる。うーん、こりゃウチの大学の吹奏楽団より上手いな(笑)クラリネットが比較的正面に見えたのだが、誰一人としてあいまいな指使いをしているような感じは受けなかった。続く、蓼沼氏との共演に向けて期待が高まる。

鈴木氏の「ラテン・フィエスタ」から(蓼沼氏は、ここからマイクを使用…マイクを通したことによる音色は、アルトに関しては意外と普通だった)。ソロのみならず指揮もバンドも熱い演奏で、客席が大いに沸いた。その流れのまま「青春の輝き」に「すべてをあなたに」だなんて、もうプログラム・ビルディングがニクイ!「すべてをあなたに」での、サクソフォンセクションとのスタンドプレイによるユニゾンという演出も、最高でした。

最後は「チャルダッシュ」でにぎやかにしめ、アンコールへ。アンコールもまた、面白かった!「きよしこの夜」などクリスマス色に染まると思えば、「サクソフォビア」で場内が大爆笑の連続するようなプレイをしてみたり、最後は、おお、まさか「情熱大陸」とは!最後も、大きな拍手が送られた。

いやあ、演奏も、演奏会としてもすばらしかったと思う(^^)総じてとにかく楽しいコンサートだったなあ。クラシックでがちがちに固めるのも良いが、こういったコンサートもまた楽しいな。次回のコンサートは、何を持ってくるのだろうか…楽しみだ。

終演後、ロビーで蓼沼氏にご挨拶しようとするも、ホールから出てみると、すでに携帯のカメラ攻めにあっていたのでした(笑)一瞬だけご挨拶して、早々に引き上げた(^^;なかなかのイケメンでもいらっしゃるため、ファンがつきそうですなあ(ここのブログも、このコンサート後、蓼沼氏関連のキーワードでの訪問者がぐっと増えた)。これからの活動にも期待しております。

2007/12/17

昨日は"Φ"練習

ふう、忘年会から帰ってきました。酔っていると、HDLのテストベンチなんかはサックサク書けますが、英語の仕様書が読めなくなるのですね。OUTPUTに関しては脳が活性化するということです。逆に、INPUTは受け付けなくなるのか。

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昨日は、蓼沼氏のコンサートを聴いた後にかつしかシンフォニーヒルズの練習室でフェスティバルの参加団体、アンサンブルΦの練習。NAOTO氏作曲/tejo氏編曲の「Samba of the Sun」と「White Candle」を合わせた。合わせ練習はほとんど取れなくて、やや勢い任せの部分もあるが、まあそれはそれで楽しめるかな。今度のフェスティバル、アマチュアステージはクラシックがほとんどらしいので、その中でアクセントに、というところ。ちなみに、豪華ゲストが二人もいらっしゃいます。どうぞお楽しみに。

「White Candle」は初めて聴いた&吹いたが、名曲ですなあ。コーダから始まるフーガとかたまんないですね。あとは、参考演奏を聴きつつ、さらいつつ、イメージを膨らませて当日を心待ちとしよう(火がついたら、あぶない(汗))。

ちなみに今日は、つくばの四重奏の朝練習だったのだが…(自粛)。あと総計5時間程度の合わせで、どこまで持っていけるかなあ、というところ。まだ交通手段もないっ!テープ用のギターアンプを2台運ぶのに必要なのだが。誰か連れて行ってくれませんかね>吹奏楽団の方。

The Vintage Saxophone Gallery

昨日は、蓼沼氏のコンサートを聴きに行ってきたり葛飾で練習があったりと、忙しかったのだが、その辺りのことはまた後日改めて書く予定。これから研究室の忘年会なので、なかなかじっくり書いている時間が取れないのだ。

The Vintage Saxophone Galleryというサイトをご紹介。過去に生産されたサクソフォンの写真が、いっぱい載っているサイト。
http://www.saxpics.com/

やっぱビュッフェ=クランポンの楽器の形って綺麗だよなー、とか、アントワーヌ=ジョセフ・サックス製作のサックスって、アルトクラみたいだよなー、とかいろいろ興味深いのだが、何といっても左下の変り種撰集が最高に面白いでしょう。

・ダブルリード?
http://www.saxpics.com/the_gallery/slideandodd/rothophone/baritone/ebayISAPI.dll.html

・トランペットのマウスピース代わり。
http://www.saxpics.com/the_gallery/slideandodd/sax-trumpet/2.jpg

・サクソーボエ
http://www.saxpics.com/the_gallery/slideandodd/moenning_Saxoboe/SAXOBOE-1.jpg

そのほかにもいろいろ。まあ、じっくり鑑賞してみてください。こういった写真を眺めていると、過去の職人たちのチャレンジ精神や並々ならぬ苦労が思い起こされて、厳粛な気持ちになるな。

2007/12/15

ラッシャーへの献呈作品リスト(年代順)

シガード・ラッシャー Sigurd Rascherへ献呈された作品をピックアップして、年代順に並べてみた。アルトサクソフォン+ピアノ、とか、アルトサクソフォン+オーケストラという曲は編成を記載していない。また、所々に解説を加えてある。

…もし、ラッシャーがいなかったら、イベールもグラズノフもラーションもマルタンもダールも生まれ得なかったわけで。そう考えてみれば彼の功績の大きさが分かるというものだ。

参考資料:[Gee 1986], [Londeix/Ronkin 2003]他

1932
・Borck, Edmond van - Concerto
・Brehme, Hans - Sonata
・Dressel, Erwin - Concerto, op27
・Dressel, Erwin - Sonate
・Jacobi, Wolfgang - Sonata
・Knorr, Ernst Lothar von - Introduction fur drei Saxophone (AAT)
・Knorr, Ernst Lothar von - Sonate
献呈は1932年から始まっているが、ラッシャーは1930年までクラリネットを吹いていたから、わずか2年の間にサクソフォンを習得したということになる。しかも、このときすでに3オクターヴ半の音域を操ることができた、とのこと。クノールの「ソナタ」は、数年までのフェスティバルで筒井氏が演奏していたっけ。
1933
・Hindemith, Paul - Konzertstuck (AA)
ヒンデミットの「2つのアルトサクソフォンのためのコンチェルトシュトゥック」は、比較的早い時期に書かれたものの、初演は娘のカリーナとのデュオを待たなければならない。
1934
・Glaser, Werner Wolf - 4 Kleine Stucke, op8a (SAAT)
・Glaser, Werner Wolf - 3 Sonaten im alten Stil (ASax Solo)
・Glazounov, Alexander - Concerto
・Larsson, Lars Erik - Konsert, op14
グラズノフ「協奏曲」の知名度が突出している。ラーションは、コンクールの課題曲となるなど、最近ようやく見直されてきた感があるが、この当時演奏できたのはラッシャー本人くらいだったのではないかな。いずれもラッシャー自身による録音が存在する。
1935
・Bentzon, Jorgen - Racconto (Chamber)
・Borck, Edmond van - Capriccio in A (Chamber)
・Glaser, Werner Wolf - Concertino
・Glaser, Werner Wolf - Suit No.3, op16
・Ibert, Jacques - Concertino da camera
イベールの「室内小協奏曲」が献呈された年。初演はマルセル・ミュールによって行われ、ミュールはこの曲の演奏によって名声を得た。ラッシャー自身の録音も残されている。
1936
・Coates, Eric - Saxo-rhapsody
エリック・コーツのこの作品は、録音がHMVに残されており、近年CD化された(Clarinet Classics CC0040)。
1937
・Eisenmann, Will - Concerto, op38
1938
・Bentzon, Jorgen - Introduction, Variations et Rondo
・Dressel, Erwin - Bagatellen
・Koch, Erland von - Danse No.2 (SATB? or S/A + orch?)
・Martin, Frank - Ballade
・Palester, Roman - Concertino
マルタンの「バラード」。現在でも登攀しがたいレパートリーの一つだということは、ご存知の通り。ラッシャー自身による録音も存在する。1939年には、ラッシャーはアメリカへと移住する。
1940
・Ullman, Viktor - Slovanik Rhapsody, op23
雲井雅人氏の「小言ばっかり」から。楽譜に献呈辞が添えてあると言うことだろうか。
1945
・Brant, Henry - Concerto
ブラントの「協奏曲」は、シンシナティ交響楽団との見事な録音が残されている。第1楽章の曲芸的エンターテイメントっぽさといい、第2楽章のメロディアスさといい、第3楽章のおどけたスケルツォといい、かなりステキな曲だが、高音域連発のため、演奏は困難であると思われる。…だからほとんど演奏されないのか。
1947
・Walender, Waldemar - Arietta
1948
・Badings, Henk - La Malinconia
1949
・Dahl, Ingolf - Concerto
・Whitney, Maurice - Rumba
ダール「協奏曲」オリジナルバージョンは、30分近くに及ぶ大曲。作曲者は「ラッシャー以外の人間が演奏できるはずがない」と考え、1953年に改訂を施した。ラッシャーによるダールの録音は、このオリジナルバージョンのものが(保存状態はかなり悪いが)残っている。
1950
・Glaser, Werner Wolf - Allegro, Cadenza e Adagio
・Glaser, Werner Wolf - Kvartett (Chamber)
・Whitney, Maurice - Introduction and Samba
1951
・Eisenmann, Will - Duo Concertante, op33
1953
・Dahl, Ingolf - Concerto (Revised)
ダールの「協奏曲」改訂版が完成した年。個人的にはオリジナルよりもこちらのほうがコンパクトで好きだなー(聴きなれているし)。
1954
・Benson, Warren - Cantilena
・Wirth, Carl Anton - Idlewood Concerto
1955
・Benson, Warren - Concertino
ベンソン「コンチェルティーノ」の第2楽章は、「エオリアン・ソング」としても知られている。ラッシャー自身による録音も存在する。
1956
・Korn, Peter Jona - Concerto, op31
・Lamb, John David - Night Music (Sax Solo)
1957
・Gates, Everett - Foursome Quartet (SATB)
1958
・Koch, Erland von - Concerto
・Moeschinger, Albert - Concerto lyrique
・Turkin, Marshall - Sonata
・Wirth, Carl Anton - Jephtah
ファン=コックの録音は、ミュンヘンフィルとの共演によるものが有名であり、CD化されている(Phono Suecia PSCD 55)。
1959
・Erickson, Frank - Concerto
吹奏楽との協奏曲。テキサスキリスト大学の吹奏楽団とのライヴ録音が存在する。
1960
・Benson, Warren - Invocation et Dance
・Hartley, Walter - Chamber Music (Chamber)
・Husa, Karel - Elegie et rondeau
・Latham, William Peters - Concerto grossp (SA + orch)
ウォーレン・ベンソンの紹介により、カレル・フサとラッシャーが出会い、そこから「エレジーとロンド」が生まれた。
1961
・Cowell, Henry - Air and Scherzo
・Eisenmann, Will - Movements, op68
・Jacobi, Wolfgang - erenade and Allegro
・Lamb, John David - Three antique dances (Asax Solo)
・Lamb, John David - Three Flouriches (AA) (Really dedicated to Rashcer but Christian Peters?)
・Schmutz, Albert Daniel - Sonata
「3つのフローリッシュ」は、ラッシャーに献呈されたという情報と、クリスチャン・ペータースに献呈されたという情報が混在しているのだが、本当はどちら?
1962
・Eisenmann, Will - Concertino, op69
・Koch, Erland von - Concerto piccolo (Really dedicated to Rashcer but Christian Peters?)
・Lamb, John David - Six Barefoot Dances (AA or TT)
・Leonard, Clair - Recitativo and Abracadabra
・Worley, John Carl - Claremonte-Concerto
「レチタティーヴォとアブラカダブラ」という題名が面白い(笑)。
1963
・Gates, Everett - Incantation and Ritual (Really dedicated to Rashcer but Christian Peters?)
・Lamb, John David - Three Pieces (Bsax + pf)
・笹森建英 - Variations sur "Taki's kojo no tsuki"
・Welander, Waldemar - Concertino
笹森氏の「"荒城の月"変奏曲」ってどんな曲?まさか日本人の作曲家がラッシャーに作品を献呈しているとは思いもよらなかった。いったいどんな経緯があったのだろうか。笹森氏の名前は、「建英」と書いて「たけふさ」と読む。
1964
・Cowell, Henry - Hymn and Fuguing Tune (Ssax + CBsax)
・Glaser, Werner Wolf - Quitet (SAATB)
・Jacobi, Wolfgang - Barcarolle (AA + pf)
・Lamb, John David - Romp (Bsax + pf)
1965
・Dressel, Erwin - Concerto (2Sax + orch)
・Russell, Armand King - Particles
・Wirth, Carl Anton - Beyond These Hills
1967
・Husa, Karel - Conerto
カレル・フーサの「協奏曲」は、作曲者自身の指揮、コーネル大学ウィンド・アンサンブルとの共演による録音が残されている。
1968
・Haba, Alois - Partita, op99 (Asax Solo)
・Macha, Otmar - The Weeping of the Saxophone
1969
・Macha, Otmar - Plac saxofonu
1970
・Gerhard, Fritz Chr - Fantaisie "Ben vanga amre" (SATB)
・Gerhard, Roberto - Quartet-Fantaisie (SATB)
・Glaser, Werner Wolf - Canto (SSax + orch)
・Glaser, Werner Wolf - Little Quartet (Chamber)
・Hartley, Walter - The Saxophone Album (S/A/T/B + pf)
・Koch, Erland von - Miniatyrer (SATB)
・Lamb, John David - Concerto "Cloud Cuckoo Land"
・Lukas, Zdenek - Rondo, op70
・Wirth, Carl Anton - Dark Flows the River
・Worley, John Carl - Oneonta Quartet (AATB)
ラッシャーサクソフォン四重奏団結成が1969年であり、四重奏関係の献呈作品が多いのはそのため。ラッシャー自身はアルトを吹き、ソプラノは娘のカリーナが務めた。
1972
・Hartley, Walter - Suite
1974
・Hlobil, Emil - Quartetto, op93 (SATB)
・Worley, John Carl - Ski Trail Through the Birches (Ssax + pf)
・Worley, John Carl - Sonata
1975
・Hartley, Walter - Octet for Saxophones (SAAATTBBs)
・Koch, Erland von - Dialogue (SA)
・Koch, Erland von - Monolog (Asax Solo)
1976
・Borel, Rene - Fugato in F (SATB)
・Koch, Erland von - Saxophonia: Concerto (SATB + w.orch)
1977
・Starer, Robert - Light and Shadow (AATB)
1978
・Adler, Samuel - Line Drawing after Mark Tobey (SATB)
・Koch, Erland von - Bagatella virtuosa
・Koch, Erland von - Cantilena (Ssax Solo)
・Koch, Erland von - Cantilena e vivo (SATB)
・Wirth, Carl Anton - Triptych
1981
・Glaser, Werner Wolf - 3 Pieces (SSAAAATTBBBBs)
・Koch, Erland von - Moderato e Allegro (SSAAAATTBBBs)
ラッシャーサクソフォン四重奏団より、ラッシャーが脱退。ラージアンサンブルの献呈作品は、ラッシャーサクソフォンアンサンブルのためのものだと思われる。
1985
・Hartley, Walter - Aubade (SAATBBs)
1987
・Koch, Erland von - Birthday Music for Sigurd Rashcer (AA)

作曲時期不明
・Eisenmann, Will - Nevermore-Ballade, op28
・Grisoni, Renato - Suite italienne, op26
・Grisoni, Renato - Albumblat, op60
・Grisoni, Renato - Sonatina, op64
・Knorr, Ernst Lothar von - Chamber Concerto (Sax + pf + orch)
・Lamb, John David - Finney's Folly
・Lamb, John David - Frolic

2007/12/14

もうすぐフェスティバル

もう一週間後だ。私は自身は、12/22のアマチュアの祭典というイベントに、アンサンブルΦという団体と、Tsukuba Saxophone Quartetという2団体で出演予定。いずれもテナーサックス。…Tsukuba SQでやる予定のフェルドハウスがーさらいきれないー(←何度目)。…まあ、それはそれとして、各地のサクソフォン吹きの皆様、当日お会いしましょう。

ジェローム・ラランさんも来るようです(朝方、メールが来た)。原博巳さんとのデュオは…ソプラノサクソフォンとバリトンサクソフォンのためのアラン・ベルノー「デュオ・ソナタ」。冒頭がちゃーーらーーらららーらっ、ってやつですね。いつだか自分でもやろうとして、楽譜を買った覚えがある。

12/23も、もちろん聴きに行きます。「サクソフォーン・ルネッサンス」「サクソフォンとライヴエレクトロニクス」という20世紀をまたがる対極的なプログラムを聴くことができるのは、なかなか楽しそう。あと、個人的には坂田明氏と平野公崇氏の即興対談なるイベントが大変興味深い。

しっかし、なんで多摩なんだ。茨城県からはアクセスしづらいことこの上ない。Door-to-Doorで、ゆうに3時間はかかってしまうのだ。いつぞやのように、東京文化会館でやってくれれば…そうでなくとも奏楽堂とか…。うむむ。

2007/12/13

すごーい

世界を見渡せば、凄い人がいるもんだなあ。(おそらく)ジャン=マリー・ロンデックス氏に次ぐ、もしくは並ぶサクソフォン研究家は、実は中南米におったのだとさ。

最近わけあって(残念ながらあまりポジティブな理由ではない)その方とメールを頻繁にやり取りしているのだが、ちょっと興味があって聞いてみたところそのB.K.氏、なんと30年間近くサクソフォンの歴史に関する研究をされており、世界中を飛び回って集めたレコーディング、楽譜、写真、楽器は、3000点に上るそうな。その所蔵資料、ぜひ一度見てみたいものだ。

フルモー氏の新譜情報

ドゥラングル教授と並んでフランスを代表するサックス吹き、セルジー音楽院サクソフォン科教授でもある、ジャン=イヴ・フルモー Jean Yves Fourmeau氏が、新しいCDをリリースしたそうだ。ずいぶん久々だなあ。もしかして、ギャルド・レピュブリケーヌ管弦楽団との協奏曲集以来だろうか。

・Rendez-Vous(Airophonic 8008)
クロード・ドビュッシー「ラプソディ」
フェルンナンド・デクリュック「ソナタ」
セザール・フランク「ヴァイオリン・ソナタ」
ジャン=イヴ・フルモー(sax)
ミクロス・ショーン(pf)


とうわけで、タイトルどおり…サクソフォンと珠玉の作品たちの幸福な出会い、といったような名曲目白押しのプログラムだ。ドビュッシーは、リヨン管との共演(DENON)以来の再録ということになるのだろう。デクリュック、フランクは、個人的に大好きな作品であるので、これはぜひ買って聴いてみたい。

日本では流通しているのかな。とりあえず、ネット上ではeuraventから買える。件のCDへの、直リンクは以下。

http://www.euravent.co.uk/acatalog/Jean_Yves_Fourmeau.html

そういえば、今気づいたのだが、フルモー氏のソロCD一枚も持っていないぞ…!!

2007/12/12

蓼沼雅紀氏のリサイタル情報(2007)

以前リサイタルの案内を頂いたので、貼り付けておこう。もう次の日曜に迫っているのだ。蓼沼氏とは、昨年あるきっかけから知り合い、それ以来よくお世話になったりしているのだ。現代にあっては珍しい、大変に豊かな音色を持つ若手のサクソフォニスト。オリジナルももちろん上手いが、以前聴いたときはトランス物の演奏にとっても感心したっけ。

・蓼沼雅紀サクソフォンコンサート
出演:蓼沼雅紀(sax)、加藤由紀子(pf)
日時:2007/12/16(日)13:30開演
場所:三郷市文化会館
入場料:全席自由1500円(当日2000円)
プログラム:
ドビュッシー「ラプソディ」、エマニュエル・バッハ「無伴奏ソナタ」、ボルヌ「カルメンファンタジー」、モンティ「チャルダッシュ」他
プレイガイド:
03-5458-1521(セルマージャパン)

三郷市民会館って…おいおい。場所がなんだか良く分からないところにあるのだが、チラシの裏に交通案内があったので、あわせて記載しておく。

・JR使用
東京駅から:京葉線→武蔵野線三郷駅(60分)
新宿駅から:埼京線→武蔵浦和駅乗換え→武蔵野線三郷駅(60分)
・つくばエクスプレス利用
TX三郷中央駅→東武バス早稲田東循環行き「文化会館東」下車(15分)
TX南流山駅→武蔵野線三郷駅(4分)

三郷駅からのバス(乗り場は北口・早稲田循環行き)
12:18, 12:43, 13:03
三郷中央駅からのバス(早稲田循環行き)
12:05, 12:30, 12:50, 13:15

昼間の演奏会であるため、東京からでも十分アクセス可能である。東京圏内にお住まいの方もぜひどうぞ。

2007/12/11

グラズノフのマイナスワン

友人が某四重奏曲「○○○○○○○・○○○」の楽譜を手に入れたようで、見せてもらった。…ふむ、意外なほどに音数が少ないんだな。どうやったら、この楽譜からあんなに強烈な音楽が生み出されるのだろうか。さすがに"アダム"は半端なく難しそうな印象だが。また、演奏する予定はないけれど、そういえば「Chamber Symphony」だって「Two Fixed Forms Unfixed」だって、手に入れておいても良いのではないかなー、と思っている。

楽譜はたまる一方で、なかなか消化していけないというのがもどかしい。マイケル・トークの「July」なんて4年前に手に入れたっきり(8000円くらいしたっけ)、いつの間にかやる気がなくなってしまった。譜読みの早い四重奏の方々が、うらやましい。今思ったけれど、大学入って5年目、これまでにきちんと演奏を完成させた四重奏の曲って、片手で数えられてしまうほどなんだな。…デザンクロとグラズノフと彗星くらい?うーむ。

それは良いとして、今日Sheet Music Plusをさまよっていたら、こんな楽譜を見つけた。

グラズノフのマイナスワン音源つき楽譜

マイナスワンってことは、マイナスワンなんだよなあ。…もしかしてオーケストラ?それともピアノ?気になるところではある。併録は、ファン=コッホの「協奏曲」だそうで。デモンストレーション用として収録されている音源サンプルをリンク先で聴くことができるが、残念ながらマイナスワンの音源は試聴することができなかった。本当に収録されているのかなあ。ちなみに、サクソフォンのデモンストレーションを吹き込んでいるのはラッシャー派の著名な奏者の一人、Lawrence Gwozdz氏とのこと。グラズノフ、ファン=コッホということで、なんとなく想像はついたが…(苦笑)。

うーん、しかし気になる。2曲で30ドル以下と安めだし、ぜひどなたか買ってみてください(←無責任)。

2007/12/10

Josetxo Silguero on YouTube

サクソフォンとライヴエレクトロニクスの作品のリハーサル風景って、こんな感じなのかしらん。スペインのサクソフォン奏者、ホセチョ・シルゲーロ Josetxo Silgueroが、etbテレビで取り上げられたときの様子。スペイン語がぜんぜんわかりませぬ。





最後に一瞬だけ、MAX/MSPのプログラミング画面が映って、テンションが上がった(笑)。公式サイトのほうには、いくつかの音源やCDの紹介があるようだ。何か買ってみようかな…。

2007/12/09

シュトックハウゼン逝去

作曲家カールハインツ・シュトックハウゼン Karlheinz Stockhausen 氏が、12/5に逝去していたそうだ。まさかそんな…ニュースを見たときは、目を疑った。

代表作「光」を始めとする数々の作品を発表し、1960年代から以降にかけて、「前衛音楽」を牽引。晩年も、創作活動は衰えることなく、「音」と呼ばれる作品を作曲していたとの事。…間違いなく、20世紀を代表する作曲家の一人である。

サクソフォン的観点から見ても、「友情に」を始めとする数々の作品提供がすぐに思い浮かぶ。今日はシュトックハウゼンとジュリアン・プティ氏のコラボレーションから生まれたサクソフォン作品集「Saxophon(Stockhausen 78)」を聴きながら、故人を偲ぶこととしよう。以前書いたアルバムの紹介記事は、こちら

…ご冥福をお祈りいたします。

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(追記)

亡くなるまで作曲していた「音」シリーズの20作目、「Edentia」は、ソプラノサクソフォンと電子音楽のための作品だそうだ。シュトックハウゼン氏としては、珍しいサクソフォンのオリジナル作品であり、一刻も早い商業用録音のリリースを望むところだ(監修下での収録が叶わなかったのは大変残念ではあるが…)。

2007/12/08

ラッシャーの音色の秘密

インターネットを使って、シガード・ラッシャー Sigurd Rascher (1907 - 2001)に関する事柄をさまざまに調べている。ミュールに匹敵するとも言える多くの功績を残したにもかかわらず、はっきり言って日本では全くと言って良いほど見過ごされている感がある。日本語でラッシャーの功績について体系的に書かれた資料は皆無であり「私が作らなければいけないんじゃないか」との思いが日増しに強くなっているほど。

まずは、ラッシャーのあの特徴的な音色がどうやって生み出されるのか、ということを調べてみた。あのいぶし銀のような音色は、フレンチ・スタイルの流麗でやわらかく、明るいサウンドとは一線を画すものである。ちなみに、調べてみた、と言っても、英語版Wikipediaのラッシャーの項の一節を日本語へと訳しただけだが。以下が、日本語訳(間違いがあったら指摘してください)。

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ラッシャー周辺で特筆すべき事柄の一つに、彼が考えるサクソフォンの音色のコンセプト、というものがある。ラッシャーは、クラシック音楽においてサクソフォンは「アドルフ・サックスが意図した音色を出すべきだ」と考えてたのだ。サクソフォンが発明された当初は、マウスピース内の空間(チェンバー)を円形に広く作るのが普通であった。1930年代まではその形が主流であったが、ビッグバンド・ジャズ等にサクソフォンが導入されるにしたがって、大きな音&シャープな音を獲得するために、徐々にチェンバーの形を変えていこうとする動きが現れたのだ。

1940年代から1960年代にかけて、クラシック・サクソフォン奏者の間でも、輝かしくエッジの利いたサウンドを出すために、チェンバーが狭いマウスピースを使用するのが主流となっていった。ラッシャーは、後進の指導を行うたびに、こんなことを強調したという:今のマウスピースは、アドルフ・サックスが意図したサウンドを出すことはできない!大きい音が必要とされるジャズではそれでも良かろうが、クラシックを演奏するとき際には、今のマウスピースは適していない!。…ラッシャーの教えを受けた者は皆、クラシック・サクソフォンの音色は丸く、ソフトでなければいけない、と感じるようになった。そしてこの音は、チェンバーが大きいマウスピースによってのみ、生み出されるものであったのだ。しかし、世界中のほとんどのサクソフォン奏者は狭いチェンバーのマウスピースへと移行してしまった(同時に、円錐管から直管へのシフトも進んだ)。ラッシャーの、音色に対するこだわり…いや、不動の信念とか、あるいは怒りとも取れるほどのもの…は、論争・対立をも生むこととなり、結果として多くのクラシック・サクソフォンからは疎外される存在となってしまったのだ(演奏において、スラップ・タンギングを使用してみたり、フラッター・タンギングを使用してみたりと、ラッシャー派の演奏には、音色以外にも特徴的な事柄がいくつか存在する)。

1970年までに、世界のマウスピース製造の主流はチェンバーの狭いものになり、各マウスピースメーカーはチェンバーの広いマウスピースの製造を続々と止めていった。チェンバーの広いマウスピースの不足は重要な問題となり、ラッシャー派のサクソフォニストたちは質屋や中古屋を巡っては、1920年代から1930年代にかけて製造されたマウスピースを確保せざるをえなくなったのである…(以下略)

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というわけで、どうやらマウスピースの内部形状に秘密があったようだ。また、それと同時に楽器の内径の拡大率(って言うのか?)が急激なカーブを描いているのも、あのソフトな音色の一因となっていたのか。

ところで、かつてのマウスピース形状をコピーしたものがラッシャーモデルとして製造されており、容易に入手することができるのだとか(下記リンク)。インターネット経由でも、簡単に買うことができる。この太い外観形状は、きっとチェンバーを広く取るために必然的な大きさなのだろう。…ふーん、ちょっと興味あるな。いつか、一本くらい試しに吹いてみたいかも。

http://shop.classicsax.com/tek9.asp?pg=products&specific=jplpdoioo

NSF Vol.22

というわけで、ノナカ・サクソフォン・フレンズの最新号がPDFで出ております。こういったクオリティの雑誌を、(たとえ一ヶ月遅れとは言え)無料でダウンロード可能にしてくれている、野中貿易に感謝。

http://www.nonaka.com/nsf/magazine.html

今回の主な内容は、「福本信太郎氏インタビュー」「原博巳&ジェローム・ララン&大石将紀ジョイントコンサートレポート」「ギャップのセミナーレポート(伊藤あさぎ氏寄稿)」「フランスツアーレポート(原博巳氏寄稿)」「グラント・スチュワート氏インタビュー」といったところ。原博巳氏や伊藤あさぎ氏による、フランスの現在のサクソフォン界周辺のレポートは、私にとって大変興味あるところであり、読むのがとても楽しかった。

そんななか、目が釘付けになったのが、原博巳氏のツアーのうち、国際大学都市日本館でのジョイントコンサートプログラムの一節(17ページ右下)。「……シュトックハウゼン:誘拐……」。な、なんだってー!こ、これは聴きたかった。演奏を行ったのは、白井奈緒美さんだったようだ…パリのほうでは、意外とメジャーなレパートリーであるのだろうか。

2007/12/07

久々に吹奏楽

いつだかの課題曲「レイディアントマーチ」と、グレインジャー「ガムサッカーズ・マーチ(早分かりの一曲!)」の練習に参加(誘っていただいて、ありがとうございました)。久々の吹奏楽なので吹き方を忘れていて焦った。おまけに出すべき音色が分からず、迷った挙句ヴァンドレンのT-20を持ち出して吹いてみた!

「レイディアントマーチ」のほうは、正直さらっていても合奏していても良く分からん曲なのだが(とりあえず、なんちゃって多調っぽい)、「ガムサッカーズ・マーチ」を吹けるのがこの上のない幸せである。民謡を題材にしたライトな外見を持ちつつも、内部構造はかなり複雑。幾本にも織り重なるポリフォニーは、瞬間々々に色合いを変えながら進行。時々に出現する半音進行のキメは、いかにも見知ったグレインジャー節そのもので、思わずニコリ。

そんな曲でテナーサックスに与えられた役割と言えば、内声部やや低音寄り、といった趣。だが、それだけに終始せずリズム刻みとオブリガートとベース音とメロディとが次々に出現する楽譜は、吹いていて実に楽しいのだ。普通の吹奏楽曲だったら、テナーサックスのパートはこうはいかないだろうな。

というわけで、「レイディアントマーチ」「ガムサッカー」に始まった、久々の吹奏楽の季節。サクソフォンのみのアンサンブルでは味わえない楽しさを、存分に満喫しようと思う。他には何があったかな…「第一組曲」「絵のない絵本」とか。

サクソフォンフェスティバルのほうは、練習場所が使えなかったりで合わせの時間を確保できずなかなか大変だが、来週の朝練習で一気に突き詰めよう。

2007/12/05

映画音楽に…

イタリア産のモノクロ映画、「CRONACA DI UN AMORE(1950)」。オープニングは、あまりに堂々たるヴィルトゥオーゾスタイルのサクソフォン独奏から始まるのだが、映像をぽけーっと観続けていると、演奏者のクレジットが表示されて…。

………。

……。

…。

(中段に注目)うおおぉ!…演奏の見事さに比べて見過ごされているところを見ると、あまり日本では知られていないのではないかな?まるで1930年録音のイベールが蘇ったかと思われるような、圧倒的な演奏を堪能することができる。しかし、こんなところに録音が残されていたとは!

2007/12/04

ライヴエレクトロニクス作品の意義(サックスの視点から)

今年、2007年のサクソフォーンフェスティバルのプログラムに、「サクソフォンとライヴエレクトロニクスのコラボレーション」なるシリーズが用意されているのは周知の通り。プログラムはこんな感じ。おなじみの曲ばかりだ(唯一、酒井氏の作品だけはまったく聴いたことがないのだが)。

・Jacob ter Veldhuis「The Garden of Love(林田和之)」
・酒井健治「Beetween the wave and memories - side A(大石将紀)」
・Christian Lauba「Stan(栃尾克樹)」
・Pierre Jodlowski「Mixtion(井上麻子)」
・Jacob ter Veldhuis「Pitch Black(アルディSQ)」

私にとっては嗜好が強く働く分野であるから、今から聴くのが楽しみである(予定が入らないことを祈る)。ちなみに私たちも、一日目に、このコンセプトに沿った四重奏作品を一曲演奏させていただく予定。どうなることやら(さらうのが間に合わないーーーっ)。

さて、本日はこれらサクソフォンとライヴエレクトロニクスを組み合わせた作品の意義について、私の考えを述べたい。テーマは「(伝統という文脈に沿った上での)拡張」。ちなみに、ここで論じる"ライヴエレクトロニクス"という言葉はテープと合奏するもの、マイク→エフェクタを伴うもの、シンセサイザー音を使用するもの、発音のタイミングをコントロールしていくものなど、広義のものを指すこととする。

"楽器"はなぜ発明されたのか?それは、ヒト単体では出すことのできない音を獲得するためである。ヒト単体で出すことのできる音は、声、あとは手を打ち合わせることで発生される音程度のものか。脳の進化はそれだけには飽き足らず、さらに多彩な音を求めた。我々の祖先は、たとえば動物の骨を打ち合わせることによって打撃音を繰り出し(打楽器)、植物性や動物性の管に息を通すことによって空気の共鳴音を響かせ(管楽器)はじめたのである。

さらに、楽器同士を組み合わせて演奏することにより、さまざまな演奏形態が生まれた。伴奏を伴う独奏曲、室内楽、協奏曲、弦楽合奏、オーケストラ、吹奏楽といったものである。これら演奏形態は、新しい響きを求める過程で生まれたもの。必然性から、各要素(小編成)がシナジーを生み出していったとも言える。編成の拡張である。

このいわゆる"クラシック音楽"の本流とはやや外れた場所で、20世紀半ばに電子音楽が産声を上げることとなる(ここで言う"電子音楽"はフランスのミュージック・コンクレートと、ドイツの電子音楽奏法を意味する広義の語)。電子音楽は、生の楽器では出しえない、新たな響きを求めて出現したとされる。響きの拡張である、と言えよう。

当初は内にこもりながら醸成されていったが、いつしかアコースティック楽器との共演を行うようになった…手元に資料がないのだが、アコースティックの楽器とライヴエレクトロニクスが初めて共演を行ったのはどの作品であるということになるのだろうか。この中には、単純にテープと合奏していくだけのもの、楽器の音をマイクで拾いながらエフェクトをかけていくもの、それらを組み合わせたもの、などがある。IRCAMで開発されたMAX/MSPシステムは、作曲家個人レベルでのアコースティック楽器と電子音楽の共演を可能にし、広く受け入れられた。

ではここで、電子音楽がアコースティック楽器と共演することを、クラシック音楽の本流へと組み込んで捉えてみたい。つまり、古くから編成を肥大化させながら、新しい響きを求めるという方向へ進んできたクラシック音楽を奏でる編成の、現在における最終地点を、オーケストラではなく、ライヴエレクトロニクスと定義するのだ。

すると、なんとライヴエレクトロニクスは、以下のような点をはじめ、オーケストラを完全に凌駕するのである。
・響きの多彩さ(モーグを使えば、世の中に存在するあらゆる音を出すことができる)
・発音タイミングの正確さ(人間とは比べ物にならない)
・音程の正確さ(そりゃそうだ)
・リーズナブルさ(ライヴエレクトロニクスのほうが、多くの面で経済的)

以上、サクソフォンとライヴエレクトロニクスが共演する、ということはすなわち、サクソフォンが宇宙最強のオーケストラと共演することに他ならない、という結論へと至るのであった。これまでオーケストラと奏でられていた数々のサクソフォーン協奏曲は、全てがライヴ・エレクトロニクスへと取って代わられるべきだ、ということになる。

…と、そこまではさすがに言いすぎだが、とにかくサクソフォンとライヴエレクトロニクスの共演は、協奏曲という形式を拡張したものに他ならない、というのが私の中での今のところの結論。しかも、決して突拍子もないところから出現したのではなく、オーケストラでは足りない部分を改善するために、必然的に生まれたきたものである、というのも大事なポイント。

それでは、ジョドロフスキの「Mixtion」を例に挙げてオーケストラとの優位性を具体的に考察しながら、本記事を終えることとしよう。

・響きの多彩さに関して:聴いて解るとおりである。オーケストラとの協奏曲ではなしえない音の洪水。「Mixtion」のPatcherがMSPを通じて発する音を、可能な限り高音質で鳴らすことにより、聴覚可能範囲めいっぱいに拡張された音波とサクソフォンのミックスされたサウンドを聴衆は体感することができる。1ページのみを見てみても、最初のpppppからの重低音のクレシェンドしかり、ヘリコプターの音しかりである。

・発音タイミングに関して:従来であれば独奏者→指揮者→オーケストラという流れの中で、タイムラグが発生することは避けられなかったが、「Mixtion」では、独奏者が足元のペダルを操作することにより、次のステージ(練習番号)へ移行するという仕組みを採用した。これによって、生身の人間を数段挟むことによる一連のオーバヘッドを削減することとが可能となった。

・音程の正確さに関して:通常の協奏曲であれば、オーケストラという大きな編成上、完璧な音程追求は不可能であった。共演する音を、あらかじめコンピュータ上で作成しておくことは、バックのサウンドに関しては、微小なレベルでの音程調節を可能にする。純粋に、アコースティックな独奏楽器のみの音程が問われることは、理想的な状況であると言える。演奏前のチューニングも、バックに関しては必要なし。

・経済面:「Mixtion」に関して言えば、用意する機材はMAX/MSPソフトウェア、Mac or WindowsPC、ミキサー、スピーカーである。オーケストラとの共演に比べて、再利用性が高く、再演を繰り返すほどにコストの削減へと繋がることがわかる。

Richard Ducros plays Lauba's Etudes on YouTube

リチャード・ドゥクロス Richard Ducrosの演奏動画…ではなく、写真に演奏音源を載せただけのもの。そもそもは、クリスチャン・ローバ Christian Laubaの練習曲第11番、バリトンサクソフォンとテープのための「Stan」を探していたのだが、他にもローバの作品の演奏がいくつか見つかったので、一緒に載せておく。どれも上手いなあ。

・当初の目的だった「Stan」~バリトンサクソフォンとテープのための作品。前半のフワフワした夢幻的な響きも良いが、後半はアコースティックパートがなんだかものすごいことになる。本年のフェスティバルで、栃尾克樹氏が演奏する予定とのこと。


・「Tadj」~ソプラノサクソフォンソロのための(「9つのエチュード」所収作品)。この作品からは、一本の楽器でどこまで和声的表現に迫ることができるのか、というややパラドックス的な思想を感じる。ソプラノサクソフォンでの、あるベクトルに関しての到達点を聴くことができます。凄すぎ。


・「Jungle」~アルトサクソフォンソロのための(「9つのエチュード」所収作品)。ほら、あれです。レガート、循環呼吸、スラップタンギングと重音のための練習曲(!)。


・「Hard」~テナーサクソフォンソロのための。アルノ・ボーンカンプ氏に献呈されたもので、個人的にはテナーサックス最強の無伴奏作品だと思っている。…おお、これはなかなかの名演だ、と喜ぶのもつかの間、なんと途中で切れてしまっている。


・「Balafon」~アルトサクソフォンソロのための循環呼吸のためのエチュード。それでもこの中では一番おとなしい曲&演奏かも…。

2007/12/02

ヘムケ氏の録音紹介(ペッテションの交響曲)

まず、フレデリック・ヘムケ Frederick Hemke氏ソロの3枚のLP「Contest Music for Saxophone(Lapider Records)」「The American Saxophone(Brewster Records)」「Music for Tenor Saxophone(Brewster Records)」に関しては、kuri_saxoのトップページ→[クラシック・サクソフォンのレコード]に記述を追加したので、よろしければご覧ください。なぜか解らないけれど、HTMLを書くのって、ブログに記事を作るのよりずっと疲れる。たいしたタグは書いていないのだが。

CDに関してはこちらで書いておこう。アラン・ペッテション Allan Petterssonの交響曲第7番と交響曲第16番が入ったCD「ALLAN PETTERSSON - SYMPHONY No.7 & No.16(Swedish Society SCD 1002)」。ヘムケ氏とオーケストラの共演と言えば、シカゴ響との共演によるアルルや展覧会の絵といったところが有名だろうが(→レコーディングのリスト)、個人的にはオーケストラとの共演モノで最強ではないかと思っているのが、本CDである。

ヘムケ氏が参加しているのは「交響曲第16番」のほうなのだが、まずは作品の成立経緯についておさらいしておこう。みておこう。1979年、ヘムケ氏はペッテションに向けてサクソフォン作品委嘱の手紙を書くが、ペッテションは数ヶ月の後になんと20分に及ぶ単一楽章の交響曲を一曲、ヘムケ氏に送り返してしまったのだ。そうして完成した作品は、なんとオーケストラを従えてサクソフォンが延々と高難易度のソロを取り続けるというものなのであった。

作曲者は作品完成の1年後に死去。初演は1984年にユーリ・アロノヴィッチ指揮ストックホルム・フィルとサクソフォン独奏フレデリック・ヘムケ氏というコンビにて行われたが、さらにその初演クレジットのまま、同年のうちにレコーディングが行われた。オリジナル版のほか、ジョン=エドワルド・ケリー John Edward Kelly氏の手によって補筆がなされた版の録音も存在する。

さてその「交響曲第16番」ある時にはオーケストラと共に、またある時にはオーケストラに対抗しながら、孤高に吼え続けるサクソフォンは、実に強烈な印象を残すものである。20分にわたって超絶技巧を繰り返しながら、オーケストラの音の波に決して屈せず、(中間部ではいったん落ち着くけれど)勢いが戻った後半の最後までテンションを保持するのだ。真剣に聴くと、ちょっと恐ろしいくらい。ペッテションは、作曲当時かなり重い病を患っていたというが、じっと耳を傾けていると彼の悲痛な叫びが湧き上がってくるようである。

かなりハードな内容であるが(無調というわけではない)、ヘムケ氏のあまりにも見事な演奏…いや、"演奏"というよりまるで"戦闘"だが…を聴いてみたい方は、ぜひどうぞ。

2007/12/01

筑波大学吹奏楽団第58定期演奏会

でした。演奏会の余韻に浸りながらホールの外に出たとき、遠く一面に広がる木々のイルミネーションが、えもいわれぬ風景として目に飛び込んできたのでした。

2007/11/30

J.S.バッハ「無伴奏フルートパルティータ」移調

ブログ一周年記念企画として、バッハの「無伴奏フルートのためのパルティータBWV1013」をBbサクソフォンへと移調&浄書&公開した。ネットでフルート譜を探し、昨晩モタモタと数時間かけて入力を行っていたのだ。楽譜は[kuri_saxoのトップページ]→[サクソフォン楽譜のページ]と辿ってダウンロードしてください。自由に演奏などに使っていただいても良いです(むしろ嬉しいです)。音ミスなどありましたら指摘をお願いします。

入力しながら、別世界に飲み込まれていくようだった。たった一本の楽器から立ち上がる、無限に広がるバッハの宇宙。うーん、やはりバッハは一筋縄ではいかない。演奏してみたいけれど、ちょっと自分には技術的にも音楽的にも難しすぎるかなあ。

サクソフォンでの演奏は、リヨン音楽院教授ジャン=ドニ・ミシャ Jean-Denis Michat氏によるものが最高。おそらく音楽学者としての徹底したアナリーゼに裏付けられたのではないかとも思える、隅々に渡ったみずみずしい解釈と、ありえないほどのスーパーテクニックが聴きもの。

Nicolai Kapustin「Toccata」 on YouTube

今日の記事は、サックスっぽさは希薄。クラシックのピアノ曲作曲家の中でも、私が特に好きなのが、ニコライ・カプースチン Nicolai Kapustinだ。大学の同期でピアノ愛好会のO氏に、はじめてその演奏を聴かせてもらったときは、大変な衝撃を受けたものだ(余りにショックで、その日だけはCDを聴き通すためにサークルを欠席したのを覚えている)。

当時閉鎖的だったソ連に生まれ、音楽家としての活動を続ける中で西側のラジオを受信しコピーするということにより、主にヨーロッパのジャズから影響を受けながら、作品のなかに独自の様式感を確立した。冷戦時代はその活動は国内に限定されており、カプースチンの活動を知るものは少なくなったが、今となっては、旧ソ連を代表する作曲家の一人と挙げても良いのではないだろうか。日本では21世紀に入ってから急速に認知されるようになった感がある。それは主に、このサイトの影響によるところが大きかったりする。自身が卓越したピアニストでもあり、いくつかのレーベルから発売されているCDでは、自作自演の演奏を聴くこともできる。オススメは、「8つの音楽的エチュード」など。

今回紹介する動画は、そのカプースチンが1964年に何かの映画に作曲家兼ピアニストとして出演した際の動画。曲はピアノとジャズオーケストラのための「Toccata op.8」。演奏はオレグ・ルンドストレーム・オーケストラ(当時カプースチンは同オーケストラのピアニストだった)。編成としてはジャズオーケストラのための作品ではあるが、れっきとしたクラシック作品。すべて記譜にそって演奏されている。



ご覧の通り、よもやソ連発とは思えないほど(?)の"すーぱーすぺしゃる"な動画である。かっくいーっ(o>▽<)oこのころはまだ社会主義も元気だったのだなあ。映像は全編に渡り何だかずいぶんシュールだが、カプースチンの超絶技巧は冴え渡り、バックのオーケストラのアンサンブルも凄い。サックスは…なんだかずいぶん旧タイプの楽器だが(アルトはベル部分のホールが、逆側についているぞ)、どこのメーカー製なのだろうか。

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ソ連のサクソフォン界の発展って、気になる。有名な奏者と言えば、ソビエト文化省交響楽団のクラリネット奏者としても有名なレヴ・ミハイロフ、ジャズ奏者としての活躍が目覚しいアレクサンダー・オセイチュク、グネーシン音楽大学のマルガリータ・シャポシュニコワといった名前が挙がるが、基本的に不遇の時代を送ったのであろうことが伺える。こんなキラキラして甘い音色の楽器だもの、ブルジョワーのための楽器だ、とか言われそうじゃないか。だが、たとえばサンジュレの「四重奏曲第一番」などはソ連のとある軍楽隊の倉庫から発掘された、という逸話があるなど、興味深い事柄もある。

いつだったっけなあ、パイパーズを立ち読みしたときに、旧ソ連圏~ロシアでのクラシック・サックス事情についてとーっても詳しく書いてあった記事があったんだよなあ。買っておけばよかった、といまさら後悔。ソ連、というかロシアには四重奏団が一つしかないよ、とか面白いことがたくさん書いてあった気がするのだが。何だか話が逸れてきたので、この辺で。

…ああ、これか。
http://www.pipers.co.jp/pipers/300-309/301.htm

2007/11/28

ブログ化一周年

ウェブページkuri_saxoのコンテンツ「ダイアリー」をブログに移行してから、11/21をもって一年が経過いたしました。駄文を書き散らしているだけのブログですが、読んでくださっている方、感謝申し上げます。裏でカウンタ(Google Analytics)を設置しているのですが、皆様の訪問によるカウントアップこそが更新のパワーとなっています。

初期のころはせいぜい一日あたり20~30セッション程度の訪問数だった本ブログですが、最近では国内&海外より一日あたり150~190セッションの訪問を頂いています。一年間の累計セッション数は33,000、ページビュー数はおよそ53,000であったとの事です(どちらかというと少ない部類に入る…のでしょうが、素直にうれしいです)。

今後とも、主に"マイナー、しかし広く知られて欲しいサックスネタを掘り起こすこと"に重点を置きながら、更新を続けてまいりたいと思います。また、何か取り上げて欲しいネタ&タレこみなどありましたら、メールやコメントなどでお知らせいただければ幸いです。それでは、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

…需要の小ささはわかっているつもりです(笑)

2007/11/28
kuri

メール:kuri_saxo@yahoo.co.jp
ウェブ:http://www.geocities.jp/kuri_saxo/

2007/11/27

Saxopet!(雲井雅人&神代修&藤井一興)

日曜に渋谷のタワレコで捕獲してきたCD。かねてより楽しみにしていた雲井雅人氏の新譜で、なんと「サクソフォンとトランペットとピアノのための作品集」という、ありそうでない編成のアルバム。参加ミュージシャンは、雲井雅人氏に加え、トランペット神代修氏、ピアノ藤井一興氏&徳永洋明氏という、超豪華布陣。収録曲は、この編成での最重要レパートリーとも言えるリヴィエ、徳永洋明氏の新作、伊藤康英先生の作品を編曲したもの他…面白くないはずがない。

ところでこのアルバム、私にとっては驚くべき特徴を持つのだ。私…というより、大学時代の吹奏楽団の関係者にとって、かな。

・収録場所はなんとノバホール
・「木星のファンタジー」入曲。

内輪ネタで申し訳ないが、アルバムが持つこの2つの特徴によって、すでに私としては冷静にレビューすることができない。いや、今まで書いた記事だって冷静であるはずがないが。だってノバホールで「木星のファンタジー」ですよ!吹奏楽団に在籍していたころ、まさに「ノバホールで『木星のファンタジー』」を演奏したのだ!私は指揮を振っていた…。それだけではなく、私にとってはこの曲、いろんな場面で演奏した大切な作品なのだ。四重奏でも演奏したことがあるし、新潟でも演奏したことがあるし(そのときは指揮ではなくサックス)…ああ、もう思い出がとめどなく溢れてきてしまう。…なんか文章が支離滅裂になってきた。

Saxopet!(Cryston OVCC-00048)
・リヴィエ「二重協奏曲」
・タネーエフ「コン・フォーコ」
・徳永洋明「海からの手紙」
・伊藤康英「木星のファンタジー」「チョコレート・ダモーレ」「オード」
・ケンツビッチ「黄昏」

笑い話を一つ書いておくならば、ケンツビッチさんをドイツの作曲家と思い込んで、さらに「黄昏」をオリジナルの作品であると思い込んで「Comprehensive Guide to the Saxophone Repertoire 1844-2003」をひいたということ…内緒にしておいて下され。知らなかったんだってば。

さて、そんなわけで、早速「木星のファンタジー」から聴き始めてしまったのだが、もう涙ちょちょ切れ。藤井氏のまるで幻想世界から紡ぎだされるかのようなピアノと、雲井氏の変幻自在なサックス…今に始まったことではないが、相変わらず音色が素敵すぎる。神代修氏の柔らかくよく響くフリューゲルの音。これはぜひつくばの吹奏楽団の人たちに聴いてもらいたいっ。ノバホールということで録音状態を心配もしていたが(吹奏楽団の本番で何度も苦しめられた)、杞憂に終わった。

ところで伊藤康英先生がこのメロディに目を付けたのは、平原綾香よりも早い1999年のことだったと言うが、まことに素晴らしい着眼点であったと感じる。しかも単純な再構成ではなく、主メロディがいったん落ち着いた後に、少しの間をおいて転調する、という仕掛けがとってもにくい。転調後のメロディは雲井氏が吹いているが、アウフタクトで入ってきた瞬間に鳥肌が立った。続く中間部でのノリもかっこよく、最初のスタイルが回帰した後の、最後のコーダもやや陰りが見える音色に変化していて、しっとりと美しい…。そんな気分のままほんのり温かい「チョコレート・ダモーレ」が始まるもんだから、涙腺も緩くなりますって。

良いなぁ、これ。そのうちmixi日記にもそのうち書くか。特につくばの関係者に聴いて欲しいからな。

…以上、なんだかマトモに記事を書ける状態じゃないので、後日もしかしたら追記するかもしれません。このままかもしれませんが。というわけで、Thunderさんとmckenさんによる、こちらのレビューをぜひお読みください(と、誘導してみる)。

Thunderさんのブログ記事
SAXOPET

mckenさんのブログ記事
サクソフォンとトランペット、そしてピアノのトリオ

mckenさんの「Fantastic Classical Saxophone」上のページ
雲井雅人氏のCDレビューページ

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(追記)

東京西新宿のドルチェ楽器で、リリース記念コンサートがあるそうだ。京青さん、情報ありがとうございます。

・神代+雲井CD「SAXOPET!」リリース記念コンサート
日時&場所:2008/2/2(土)15:00 ドルチェ楽器東京内アーティストサロンDolce
入場料:一般3000円 DMC会員2500円(当日成算は各500円増し)
問い合わせ:
03-5909-1771(ドルチェ楽器東京金管ブース)

…ということで、メインの取り扱いはおなじみのサックスブースではなく、金管ブースでの取り扱いになるとの事。年末、実家に帰るときに買っていこうっと。

2007/11/26

ドゥラングル教授の印象

まだまだ日本を横断してのレクチャーコンサートなどは続くが、ドゥラングル教授に対する印象の変化のことを、ちょこっと書き留めておきたい。「変化」というのは、今までCDでしか触れたことのなかったドゥラングル教授というサクソフォニストに、今回生で触れることにより変わった、自分の中での氏の捉え方…というようなニュアンス。

・演奏に関して

今まで:とにかく正確無比に、どこまでも管理しつくされた演奏をする印象ばかりが先行していた。「Solitary Saxophone(BIS)」を聴いてみても解るとおり、すでに人間を超越したようなテクニックと、どこまでも純粋な音色、そしてフレーズの歌い方は美しいがやや希薄…といったイメージ。前衛の闘士!といった感じ(若き日のブーレーズみたいな)。

今回聴いて:昨日、間近でドゥラングル教授の音を浴びたが、意外なまでに濃厚な歌い上げをすることに驚いた。細かなアゴーギクやアーティキュレーションの変化に重点を置いた演奏、といったところは、自分にとっては意外だった(CDというメディアに記録される音の限界なのかもしれないが)。7月にジェローム・ララン氏の「PCF」の演奏を聴いて、「ドゥラングル教授門下らしからぬ濃厚でロマンティックな歌い方」と書いたのだが、実は教授自身の演奏こそがその歌い方の極値であり、手本であったのだった。「セクエンツァVIIb」の捉え方…まさか正確さと同じくらい歌の要素が重要だ、なんて言葉がドゥラングル教授の口から聞けるとは思わなかった。←どこまで固定観念に染まっているんだよ、って話もあるが。

また、静岡のあの演奏会で「Mixtion」を聴いているときに、まるで機械的に演奏をすると思われていたドゥラングル教授がみせた、一瞬のスキが忘れられない(具体的に「Mixtion」演奏中の何々によって、というのは、曲を知っている方の中にはわかった方もいらっしゃるかもしれないが、一応伏せておこう)。そんなこともあり、今までよりもドゥラングル教授の人間らしさを演奏の中に見出すことができるようになった。

・人間性

今まで:気高く、気難しいイメージ。333でのレッスンは、とにかくおっそろしいと聞くけれど…ほら、ルマリエ千春さんのレッスン描写とか。

今回聞いて:「Grab It!」で見せたひょうきんさ、そして演奏会終演後に楽屋を訪ねたときに、疲れた顔一つ見せず対応してくださったことが、忘れられない。マスタークラスでの、冗談を交えながらのレッスンも、今まで抱いていたイメージとは違うものだった。もちろん演奏に対する容赦ない姿勢はまさに求道者と言うべき気高い精神を感じるが、それと同時に人間としての暖かさも印象に残ることとなった。

その他挙げていったらきりがないが、今回の来日により、さまざまに印象が変わったのは確か。しかも、ますますドゥラングル教授のことを尊敬するようになってしまったのである。自分の中では、これから先ずっと世界最高のサクソフォニストでありつづけるのだろう。

2007/11/25

クロード・ドゥラングル教授の公開レクチャー

私がこのブログでドゥラングル氏のことを取り上げるときはほとんど、名前の後に「教授」の敬称をつけるのが習慣化している。それはもちろん、クラシック・サクソフォンの演奏者としてだけでなく、教育者や研究者としてのドゥラングル氏の顔にも敬意を払っている(つもりの)ものからなのである。今日は、その一端を垣間見ることができるのだろうな、と期待しながら渋谷のアンナホールに伺った。

今回のイベントは、次のような形式で進んだ。まずはマスタークラス。東京藝大の大学院に籍を置いていらっしゃるお二方がそれぞれ、ドゥラングル教授から公開レッスンを受けるもの。続いて(やや製品プロモーションの意味合いも含むのかな、と思うが)4種のサクソフォンと4種のマウスピースを吹き分けながら、ドゥラングル教授が実際に曲を吹くというもの。以下に、それぞれの様子を書き連ねてみよう。

ちなみに公開レッスンの受講者は、伊藤あさぎさん(東京藝大大学院)と佐藤淳一さん(東京藝大大学院博士課程)。おととい静岡でお会いしたばかり、そして今日もまた、とのことで、驚いてしまった(知らなかったのだ)。ピアノは沼田良子氏。ドゥラングル教授の通訳は、フランスから一時帰国中の大石将紀さんが務めた(大石さんの通訳が、大変解りやすくすばらしかったことを付記しておく)。

会場はどえらい混み様で、うろうろしているうちにどんどん席が埋まってしまい、仕方なく2列目へ。かなり間近で音を受けることになった(結果的にこのポジショニングは良かったと、後で思ったのだが)。

伊藤あさぎさんの受講曲は、デザンクロ「PCF」。最初にピアノつきで全曲通しで演奏されていたが、さすがというか何というか、やっぱり上手いなー。小柄な外見に似合わない(?)「プレリュード」におけるロマンティックな歌い上げと、「カダンス」での貫禄と安定性、といったところが印象に残る。音色やヴィブラートのコントロールは最近の傾向に合わせて変化が少ないが、むしろそれに伴う清潔感を獲得している感じだ。ドゥラングル教授のレッスンは、主に「フィナーレ」を中心に。…マスタークラス、と言うものを今回初めて聴いたのだが、聴き方が良くわからなかったので、なんとなく周りに合わせてメモをとってみた。

・会場の小ささによる、響きの捉え方。音のコンセントレイションを、会場に合わせて的確に拡げるべき。マウスピースを咥える深さ、ピラティス(姿勢)などを変化させることによって。
・「finale」の意味。単に終曲、というだけでなく、"heroique"とか"romantique"というような意味も含む。
・「フィナーレ」冒頭部分、弱いアーティキュレーションを基準とすることで、表現の幅を拡げることができる。
・ピアノとの(強弱の面を始めとする)繊細な対話。ピアノの色の中へ潜り込んでいくようなイメージ。

ドゥラングル教授が見本を吹いてみせていたのだが、アーティキュレーションの激的な変化や、歌い方の濃厚さを聴くことができた(実はこの点、かなり意外だった)。ヴィブラート、アゴーギクの繊細な変化は、意識下でのコントロールを行っているというのか。

続いて、佐藤淳一さんの「セクエンツァVIIb」の受講(持続H音は、伊藤さんとドゥラングル教授が担当!)。佐藤さんは、サクソフォンによるベリオ演奏のスペシャリストの一人であり、最初の通し演奏のときも、曲に対する確固たるイメージを発散させている様をうかがうことができた。また、佐藤さんのスケールに対して、会場は小さかったかなとも感じたのであった(アンナホール自体もともとかなり小さいのだよなー)。ぜひ一度大きなホールで聴いてみたいな。手元のメモは、こんな感じ。

・基準となるH音の指使いの違いによる音の変化を繊細に捉えるべき。
・イタリア→オペラ→歌。そう、この作品の本質は「歌」なのです!エレガントなフレーズの捉え方を意識する。
・自由な表現、テアトル(演劇)的な表現を盛り込む。音を一つのオブジェとみなし、再発見を行う。ベリオの、まるで料理をするかのような自由な指揮から着想を得た曲の捉え方。
・高音と重音に関するフォルテは、軽く。

私自身はこの作品に対して、かなり厳格かつ機械的なイメージばかりを抱いていたのだが、ドゥラングル教授の解説によればむしろ「歌」のイメージも同じくらいに大切であるとの事。これには目からウロコ。確かにドゥラングル教授の演奏するフレーズは、まるでオペラ歌手のような跳躍としなやかな音色、といったところが強調されていた。今後、この曲に対する聴き方が変わるだろうな。

最後に話された、作品成立の経緯も、興味深いことこの上なし…オーボエとオーケストラのCheminを聴いて編曲を開始するも、あまりの難易度の高さに一度あきらめ、「Solitary Saxophone(BIS)」のレコーディングに際して再チャレンジを行い、ベリオとの共同作業を経てついに完遂したとのこと。へえー。

マスタークラス後は、ドゥラングル教授による楽器とマウスピースを変えつつのコンサート。プログラムと楽器の対応は、以下。思い出しながら書いたので、間違っているかも。

・グラズノフ「協奏曲」:シリーズ2 GL+Vandoren A17
・ブートリー「ディヴェルティメント第1楽章」:シリーズ3 GL+Vandoren AL3
・ブートリー「ディヴェルティメント第2,3楽章」:シリーズ3 GP+Vandoren A28
・ピアソラ「エスクヮロ」:Reference+A5
・ウィリアムズ「エスカペイズ」:Reference F#なし+A5
~アンコール~
・ピアソラ「オブリヴィオン」:S.Sax

演奏に関して言えば、大きなスケールとテクニックで、曲をばったばったと切り裂いていくかのよう。ドゥラングル教授、かなり細身ではあるが、生み出されるサウンドはおそろしいまでの太さ。圧倒されっぱなしだった。このすばらしい演奏で、古典とも言うべきグラズノフとブートリーを聴けたのは、幸いだった。ウィリアムズは、吹奏楽団と共にレコーディングを行ったばかりのはず。最後は、「オブリヴィオン」にてしっとりと。

楽器による音の違いだが、私はあまり耳が良くないため、ReferenceのF#ありとF#なしの違いなどはまったく解らなかったのだが、たとえばReferenceとシリーズ3 or 2の使い分けによるサウンドの違いは、かなり興味深かった。そもそも、音が聴こえてくる場所が違うのだ。シリーズ3やシリーズ2はマットのように会場へと広がる音だが、Referenceは奏者の体の中心から聴こえてくる…といった具合。面白かったなあ。

さて、今回特に感じたのが、ドゥラングル教授の耳の良さである。はっきり言って、我々素人には理解できない別次元レベルの耳を持っているようで、こまかなニュアンスの違いや音程、楽器による音色の違い…そういった繊細なものを聞き分けて、具体的な言葉として表現していたのだ。いったいどうしたらそんな耳を持つことができるんだろうな。

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終演後は、いろんな方にご挨拶。そういえば、大石将紀さんの「B→C」チケット、買わなければ。そして佐藤さんより、大変貴重なものをいくつか頂戴したのだが、またブログ上にてご紹介します。アクタスを出て、タワレコでようやく「SAXOPET」を捕獲。こちらに関しても、またレビューします。

2007/11/24

クロード・ドゥラングル(ドラングル)教授ライヴ"Quest"@静岡音楽館AOI

ある意味では今年最も楽しみにしていたコンサート。言わずと知れたパリ国立高等音楽院サクソフォン科教授クロード・ドゥラングル(ドラングル) Claude Delangle氏の、今回の来日では唯一のコンサート。会場は静岡音楽館AOI。鈍行を乗り継ぎさらに帰りは夜行で、という強行日程にて、がんばって行ってきた。せっかくなのでコンサートの様子を詳細に書き連ねてみよう。

静岡へは16:00ごろに到着。ホテル・アソシアで京青さん、そして初対面となる浜松サクソフォンクラブのあかいけさんと待ち合わせをし、引き連れていったト○さんも一緒に4人で駅近くの喫茶店で1時間ちょっとおしゃべり。面白い話がいっぱい…楽しかったな~(ありがとうございました)。17:30ころにAOIへと移動。会場ロビーには、新幹線でいらっしゃったThunderさんが。ジョイントコンサート以来となる、原博巳さんにも、ご挨拶。

・ドゥラングル サクソフォンライヴ"Quest"
出演:クロード・ドゥラングル、平野公崇、波多江史朗、井上麻子、有村純親(以上sax)
2007/11/23(金・祝)17:30開場18:00開演
静岡音楽館AOI
プログラム:
- G.シェルシ「3つの小品」
- P.ジョドロフスキ「Mixition」
- L.ナオン「センドロス」
- G.スピロプロス「SAKSTI(日本初演)」
- C.ドゥラングル「アラウンド(日本初演)」(L.ベリオ「セクエンツァVIIb」)
- A.マルケアス「Perilepsis(世界初演)」
- 鈴木純明「凧」
- M.ストロッパ「...of Silence(AOI委嘱作品・世界初演)」
- J.t.フェルドハウス「Grab It!」
- M.タディニ「ブレリア(日本初演)」

プログラム最初は、グリゼーのバスサックス作品「アヌビスとヌト」が予定されていたが、ソプラノサックスの無伴奏作品G.シェルシ「3つの小品」へと変更。暗いステージ上へと現れたドゥラングル教授、スポットライトに照らされながら、楽章間ではぼんやりと光量が調節されるという演出。さらに、上手にセットされたディスプレイ上の楽譜を参照するという、なんとも奇妙な演奏姿。ちなみに演奏は「完璧」。楽譜が手元にあることもあって良く知っている曲なのだが、ソプラノの低音から高音までの完璧なコントロール、そして純度99.9999%とも表せることができるような、澄んだ音色。のっけから、今回のコンサートの雰囲気に呑み込まれてしまった。

シェルシが終了すると、そのままアタッカでジョドロフスキ「Mixtion」へと移行。今度は下手にセットされた台の上で、やはりディスプレイを参照しながら曲を進めていく。良く見てみると、足元にはペダルが2つ。右ペダルがライヴ・エレクトロニクスパートの制御用、左が譜めくり用であったと思われる。「Mixtion」は、これらライヴ・エレクトロニクスとサクソフォンという編成の作品の中でも個人的に大好きなもののひとつ。ジェローム・ララン氏のCD「Paysages lointains」にも収録されており、空で歌えるほど聴きこんでいるわけだが、ララン氏の演奏とは違った羽のような軽さが印象的だった。それは、サブトーンの多用から来るものなのかな、とも思うのだが、個人的にはもうちょっと密度の濃い感じで聴きたかったかも、なんて。エレクトロニクスのパートは、さすが豪華なPAを使っているだけあって、CDでは聴こえない音までもが聴こえてきたりと、興味深い発見がいくつかあった。

続いて、舞台中央のディスプレイを使用し、ナオン「分岐する小路」。2004年のパリ音楽院卒業試験曲で、その年の卒業生である井上麻子さんらによって初演されたソプラノサクソフォンとテープのための作品。テープのパートは、ソプラノからコントラバスまでのサクソフォンの音をサンプリングし、再構成した、とのこと。初めて聴いた曲であったが、再演されるべき曲だと感じた。だが、ソロパートは激しく難しそうだ。フラジオ音域までをも自在にコントロールするあたりは、さすが。

再び下手で、テナーサクソフォンのスピロプロス「Saksti」。人間が持つ呼気の音を作品に混ぜ込んだもので、会場内を飛び回る「声」とサクソフォンのブレスノイズが不思議なモアレ効果を生み出していた。先ほどの「Mixtion」とは違った照明で、ホラー映画のような効果。最後は突然の叫びにて幕(叫んだ瞬間の舞台上の様子が、イメージとなって脳裏に焼きついている)。

「アラウンド」は、ルチアーノ・ベリオの「セクエンツァVIIb」に、ドゥラングル教授自らが伴奏?パートを追加したもの。最初のHが演奏された瞬間に、ステージが通常の照明へと変化。気づけば、バルコニー下手側に平野公崇さん、上手側に井上麻子さんが(ともにソプラノ)。舞台上には、なんと暗譜で突き進むドゥラングル教授と有村さん(テナー)、波多江さん(バリトン)。特殊奏法を交えようとも、決してHから線がぶれることはないような演奏が印象的だった。…「Solitary Saxophone(BIS)」と同等か、いや、それ以上か?伴奏パートとの絡みは難しそう。基本的に細い5本の糸を手繰っていくような、ポリフォニックな編曲だった。楽譜見てみたいなあ。

アレクサンドル・マルケアスは、パリ周辺の作曲家のなかでも、比較的若い世代の作曲家であり、さらにはピアノの即興演奏でも有名。ハバネラ・カルテットへ作品をいくつか提供しており、名前は良く知っていたが(ララン氏のCDで即興演奏を担当していたりもする)、もちろんこの「ペリルプシス」を聴くのは初めて。アルトサクソフォンと(今日初めてののアルト)テープのための作品で、ややビートが前面に打ち出されたような曲。テープとサックスの絡みがかっちりしており、なかなか面白い。これは録音媒体で聴いても面白そうだなあ。

鈴木純明氏の「凧」。ソプラノソロ+ソプラノ2本、アルト、テナーのための作品で、雅楽をイメージして作られた作品なのだそうだ。確かにそれまでに演奏された作品とは根本的に時間や音程の扱い方が違う。時間感覚に関してはone by oneという表現が適切だろうか、そして、全曲中もっともFragileな響き。ソロだけでなく、そのほかのアンサンブル部隊もかなり難しそうだったが、ソロ、バックともに熱演だった。ちなみに、2005年のパリ国立高等音楽院の卒業試験曲である。楽譜は、相変わらず横に長そうな感じだった(笑)

ストロッパの新作(静岡音楽館委嘱作品)は、塔のように積み上げられた5つのスピーカーの周りで演奏された。…えー、この曲だけはちょっと理解しきれなかったので、コメントは控えておきます。演奏に関しては、相当レベルが高いような印象を受けたのだが。

フェルドハウス「Grab It!」。赤いキャップを後ろ向きに被り、ラジカセを担ぎながら客席を走って現れたドゥラングル氏。ノリノリの演奏!やはりこの曲が持つパワーは凄い。客席も、かなり沸いていた(モニタースピーカーがなかったせいで、アンサンブルは難しそうだったが)。最後にはキャップを客席に投げるというオマケつき。

そして最後にアンコールとして5分ほどで演奏されたタディニの「ブレリア」!この曲、ずばりカッコイイ!中間部には即興部分も含みながら、ソプラノサックスのサイドキー~フラジオ付近で繰り出されるファンキーなフレーズと、テープに含まれるピアノのサウンドが印象に残った。「Grab It!」の後に演奏されるなんて、いったいどんな曲なんだと思っていたが、こんなにクールな曲だったとは。楽譜探してみよう!

最後は、舞台上にドゥラングル教授を含む出演者と、サウンド・デザイナ、サウンド・エンジニア、ストロッパが集結。演奏の素晴らしさ、作品の面白さだけでなく、音響デザインは、さすが本場IRCAMのスタッフを2人も抜擢&引き連れてきただけの良さがあったなあ。

終演後は楽屋へと押しかけ(ここで思いがけず佐藤淳一さんと初対面。芸大仲間として一緒にいらっしゃっていた伊藤あさぎさん、寺田麗美さんにもご挨拶)、ドゥラングル教授にサインを頂戴した!これです。「Mixtion」と「Grab It!」の楽譜にサインを頂きました。写真も撮ってもらいました。わ~い。←かなりミーハー。

帰還

静岡からようやく帰還(夜行電車を使った強行日程)。"Quest"のレポート?感想?は後で書きます。とりあえず一眠りします。

明日はTOEICだー!泣。その後はダッシュでアンナホール。

2007/11/22

上野耕路「Chamber Music」(アルモSQ参加)

マイナーではあるが、個人的にはかなりの名盤じゃないかと思っているCD。上野耕路氏の作品集「Chamber Music(Synergy Inc. SYDA-007)」。日本の80年代~90年代音楽シーンの中、「ゲルニカ」結成を始め、特徴的な活動を続けた上野耕路氏だが…あ、そんな紹介よりも、「た~らこ~ た~らこ~」の作曲家だと言ったほうがおなじみか(^^;このCDは上野氏がサクソフォンのために書いた作品を含む3曲を集めたディスクである。

・コノテーションズ
・N.R.の肖像
・サクソフォーン四重奏曲

「コノテーションズ」は、アルトサックス、ヴァイオリン、ギター、エレクトロニクスのための音楽。のっけからポップで毒々しい響きにやられるが、日本の音楽界が自分の立ち位置を模索し続けているなかから生まれた、実に面白い音楽。ちなみに清水靖晃氏がサックスで参加している。調性を感じられる響きで、ずっと聴いているとトリップしそうだ。

続く、アルモ・サクソフォン・クヮルテットが参加した2曲も、ものすごく面白い!「N.R.の肖像」と言えば、アルモの5thアルバム「革命児(Meister Music)」にも収録されていたが、こちらのほうが楽しく聴けるかも。ある種の悪ノリとも取れるような、アルモにしてはハイテンションな録音で、「革命児」でなんとなく印象に残らなかった仕掛けが、生々しく迫ってくる。

「サクソフォン四重奏曲」も名曲&名演奏!始まった瞬間は「N.R.~」よりもシリアスな曲想かな、とも思うのだが、第1楽章、アリアを経たフーガへと突入した瞬間、何ですかこのノリノリ感。解説によればジャズ風のフーガ、とのこと。第2楽章も、初っ端から行進曲風の人を喰った遊びが楽しい。めくるめくスタイルを変えながら駆け抜ける、マジメだけれどエンターテインメントな10分間。楽しい!思わず体を揺らしてしまいそうな、躍動感に満ち溢れている。

演奏が良い上に、「N.R.の肖像」も「サクソフォン四重奏曲」も、かなりの名曲だ。日本産、いや世界を見渡してみても、こういったシリアスかつ楽しい作品て、なかなか存在しないのではないか。いいなあ、演奏してみたい(楽譜は出版されていないようなのだが)。

CDは残念ながら廃盤であり入手至難なのだが、ちょーっと探してみると、今のところここに出ているようだ。

明日はドゥラングル教授リサイタル@静岡

つくばから東京までTXで1時間、東京から静岡までローカル線で3時間。ちょっと大変だが、そこは気合いでカバーしよう。

まずは、大好きな2つの作品…ピエール・ジョドロフスキ Pierre Jodlowski「Mixtion」と、ヤコブ=テル・フェルドハウス Jacob ter Veldhuis「Grab It!」を世界最高のサクソフォニスト、ドゥラングル教授の演奏で聴くことができるのがとっても楽しみ。この2作品に関してはそれぞれ楽譜も持っているし、全サクソフォン作品のうち好きなものを挙げなさいといわれても、筆頭に上がってくるほどなのだ。

また、サクソフォンの現代音楽分野において最もアクティヴな動きを見せる、パリ音楽院周辺から放たれた最新作品には、とーっても強く惹かれる。未だ聴いたことのない響き…ストロッパ、タディニ、鈴木純明、ナオン、スピロプロス、マルケアスらの作品をIRCAMレベルの環境で聴くことができるなんて、なんという贅沢!(^▽^)!

2007/11/21

ClassicalSax Radioが面白い

Classic Saxophone On-Lineというサイト(→http://www.classicsax.com/)が流しているClassicSax Radioというストリーミングラジオが面白い。リンク先のページからPlayをクリック→次のページでPlayをクリックしたら、プレイリストファイルをiTunesなどで開けば聴くことができる。

音質はあまり良くないのだが、それさえ我慢すれば面白い曲、興味深いサクソフォニストによる演奏が次々と流れてくる。聴き始めて1時間以上経ってしまったが、今まで流れてきたのはこんな感じ。

ブラント「サクソフォーン協奏曲より第1楽章」(S.ラッシャー)
クノール「ソナタ」(J.E.ケリー)
クエイト「シリウスの光」(D.リヒトマイヤー)
クレストン「ソナタより第3楽章」(S.ラッシャー、D.シンタ)
ヴェローヌ「ラプソディ」(M.ミュール)
トマジ「ジラシォン」(C.ドゥラングル)
エウェゼン「テナーサクソフォン協奏曲より第1楽章」(J.フーリック)
ヘンデル「ソナタ第13番」(L.Gwozdz)
ミヨー「スカラムーシュ」(C.ドゥラングル)
クレストン「ソナタ」(A.ボーンカンプ)

アメリカ(時々フランス)産のサクソフォンをごった煮しました…という感じだが、時々ものすごく面白い録音が出現する。ブラントの「協奏曲」、しかもシガート・ラッシャー自身による演奏、だなんて…こんな録音が残っているのだな。フーリック演奏のテナーサクソフォン協奏曲、というのもなかなかカッコよい。

アメリカのサクソフォンに興味のある方はぜひどうぞ。…うお、ロンデックス演奏の木五版スカラムーシュが流れてきた!

2007/11/20

リバーダンスのチケット確保

イープラスのプレオーダーを利用して、「リバーダンス」の2008年来日公演チケットを確保。なかなか良い席(6列目)。やっほう。

「リバーダンス」ご存知ない方は、来年の来日公演の際にぜひ一度観ておくと良いと思われます。観客それぞれの嗜好ジャンル関係なしに楽しめるエンターテイメントって良くあるけれど、「リバーダンス」はその中でも世界最高レベルのもののひとつ。

「…おまえにそんなこと言われても、信用ならん、とりあえず知るところから始めたい」という方は、ジュネーヴのライヴDVDがオススメ(amazonへのリンクはこちら)。

2007/11/19

アルモSQの定期演奏会記録

栃尾克樹氏のウェブページ内に、栃尾氏が今までに参加した演奏会の履歴がポスターのイメージと共に掲載されている。「栃尾氏が参加した演奏会」ということは、必然的にアルモ・サクソフォン・クヮルテットの演奏会記録も挙がっているわけで。なかなか面白い。

http://ktochio.com/category05/

第1回演奏会のテナー、針生氏という名前は初めて聞いた。その昔、岩本氏だった、という話は良く聞くが、もう一度交代しているのですな。第1回演奏会の次は、民音コンクールの室内楽コンクール。このときすでに岩本氏へと交代していたのだろうか(この件に関して、Thunderさんよりご教示いただきました。民音コンクールのときは、まだ針生氏だった、とのこと)。

また、この前後に仙台フィルとマルティノンの「四重奏とオーケストラのための協奏曲」を日本初演しているはずである。第2回演奏会…あ、これがあの伝説的なラクールの回か。ライヴで聴いてみたかったな。その後、松雪先生の参加は、第5回から。そして、第9回を最後に演奏会を止め、解散。大学生になって、ようやくアルモが生で聴ける!と思った矢先に松雪先生から解散の話を聞かされて、大変ショックだったのを覚えている。

アルモって、私たちより4、5年上の世代(仮にア世代と呼ぶこととする)にとっては、まさに四重奏と言うものを知るきっかけとなった存在だろう。私たち(ト世代)にとってのトルヴェールであるように、地方で手に入る四重奏のCDといったら、ア世代の方々が高校生・大学生の時分には、おそらくアルモのアルバムがほとんどだったのではないだろうか。ア世代とト世代の間に、四重奏というものの捉え方にやや断絶のようなものを感じるのは、私だけか?主に理想とするサウンドやレパートリーの点において…。

2007/11/18

Ingolf Dahl「Concerto」 on YouTube

YouTube上にインゴルフ・ダール Ingolf Darlの「サクソフォーン協奏曲」演奏動画があった。大体こういうった協奏曲の動画って、ソロがイマイチだったり、バックのオーケストラや吹奏楽団がイマイチだったりで、なかなか紹介する気にならないのが普通。しかも、ダールの協奏曲だなんて、ソロもバックもものすごく難しく、アンサンブルも難しい曲ではないか。

だが、今回の動画に関しては、聴き始めた瞬間レベルの高さに驚いた。詳細を調べてみたら、バックはアメリカ屈指の上手さを誇るノースウエスタン大学のウィンドアンサンブルだと(!)。さらにソロはフレデリック・ヘムケ Frederick Hemke氏の下で研鑽を積んでおり、現在マスタークラスに在籍中のSean Hurlburtさんという方、とのこと。上手いわけだ。

金属的な音色とヴィブラートの質が、なんともヘムケ氏の演奏を思い起こさせる。また、私は第3楽章の最終部~コーダに向けての緊張感ある超高速アンサンブルの部分が大変好きなのだが、その辺りもかなり再現されており、満足。…ん、よく見てみたら暗譜か!

・第1楽章 Recitative


・第2楽章 Passacaglia


・第3楽章 Rondo alla marcia


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(追記)

第1楽章って、実はバロック音楽に影響を受けたものだ…ということ、ご存知だろうか。付点つきのリズム、サクソフォンの上昇音形、そのあたりにかつて流行したフランス風序曲の影がちらつく。バッハ「パルティータ」の第4番辺りで良いので、聴き比べてごらんなさいな。ほら、そっくり!

初合わせ

昨日の夜、就職活動のイベントから帰ってきた後、フェスティバルで演奏する予定の四重奏曲の初合わせ…というか正確には初合わせと言えないのか?とにかく、「初合わせ」をした(ゲットブラスター付の曲って練習を表現しづらいですな)。結構苦労するかなー、と思っていたのだが、合わせること自体は意外とすんなり行ってしまい、正直拍子抜け。うーん。良いことなのか悪いことなのか。

しかしゲットブラスターパート、「Grab It!」と違って明らかに適当に作りこんである場所がある。クレームしちゃおうかなあ。英語で詳細なクレームって書いたことないなあ。誰か書いてくれないかなあ。

それはそれで、その他アコースティックパートの音程がズレズレになるのもなんとか修正しなけりゃいけない。こちらは自分たちの責任であるのだから、何とかしないと。だが#5つとか♭5つの調って、音程感覚が身についていなくてキツイ。

2007/11/17

ファブリス・モレティ氏@奏楽堂

昨日はファブリス・モレティ Fabrice Moretti氏のコンサートを聴きに、上野まで。徹夜明けだったため、お昼ごはんを食べた後にうっかり眠ってしまい、行きのバスに乗るのが遅れた。しかも、まさかの常磐道大渋滞(泣)!間に合うかどうか、しかし気持ちばかりが焦ってどうしようもない。幸いなことに、18:42に上野の東側へと到着。奏楽堂へと向かって暗闇の上野公園をダッシュする姿は、さぞかし滑稽だったことだろう。

受付には服部先生の姿が。ご挨拶。けこぅさんとばったり。ご挨拶。階段を上がって会場に入ると、えぇっ、昨年の2倍ほどのお客さんが!すごい。いったい一年の間に何が起こったんだろう?見たところ、音大生と思しき方が多かったかな。

・マルチェッロ「オーボエ協奏曲」
・ヴィラ=ロボス「ファンタジア」
・港大尋「遠みから遠ざかってみても」
~休憩~
・リュエフ「シャンソンとパスピエ」
・ボザ「アリア」
・ビッチ「村娘」
・アブシル「5つの易しい小品」
・ワイル「ユーカリ(ピアノソロ)」
・トマジ「バラード」

前半は全てソプラノサクソフォンを使用してのプログラム。マルチェッロの「オーボエ協奏曲」から。やや金属的、しかし決して耳障りでない音色と、全音域に渡る完璧なコントロール。モレティ氏はジャン・ルデュー・カルテットのソプラノ奏者としてもおなじみだが、2003年にレコーディングされたCDで楽しんだ演奏そのままの音楽を振りまいていた。続く「ファンタジア」は、予想はしていたけれど超速。第1楽章の2オクターブ近くの跳躍から切り出されるアルペジオを、滑らかに吹ききってしまうのだ。

プログラムリストを見れば港氏の作品がやや浮くが、聴いてみればぜんぜんそんなことはない。うーん、言葉では伝えられないけれど、近藤譲氏の作品とグラハム・フィトキンの作品を足して2で割った感じ(謎)。リズム的にはかなりにスリリングな印象を受けた。かなり難儀と思われるピアノパートを、ばったばったと切り裂いていくような服部真理子氏の弾きっぷりにも圧倒された。

後半はアルトへと持ち替えて、リュエフの「シャンソンとパスピエ」。シャンソンの2音目が、すぅっと会場全体に拡がりをみせたあの瞬間を、いまでもはっきりと思い出すことができる。右手レ~ファにかけての、どこまでも豊かな音色と、趣味の良いヴィブラート。ステキだ。「アリア」「村娘」まではほぼアタッカで演奏されたが、まるで組曲のように聴けたのが面白かった。続いて、予定ではピアノソロの「オブリヴィオン」だったが、モレティ氏と服部真理子さんのデュオでアブシルの「5つの易しい小品」。プログラムに曲目解説がないとの事で、モレティ氏が解説をし、服部真理子さんが通訳。サックスを吹いているときはそんな風に見えないのに、モレティ氏、実にお茶目な方だなと思った。

ピアノソロで演奏されたワイル作品は、ハバネラのリズムを基底としたリズムに、物悲しいメロディが付随する珠玉のコンサート・ピース。指先から生み出されるキラキラした音色は、時に陰り、時に明るく前向きに。音色と共に減衰速度をもコントロールしているかのように聴こえたのは、錯覚ではないだろう。

トマジ。速っ!!マーフィ氏の演奏よりも速かった…実演でも録音でも、ここまで速くて美しく、完璧に近い演奏は聴いたことがない。どうもトマジの「バラード」というとあの12/8のダンスメロディが苦手だったのだが、その場所をこれだけ高速に切り抜けていってしまうとは、まさに爽快。そうか、きっと、これだけ速くないといけないんだ!かといってモレティ氏、間奏では体をゆらゆらと揺らしながらピアノを楽しんでいるように見える。デファイエのように、取り付く島のないほどの天才を聴く気分とは、また違った感情が湧き出た。親しみやすく、しかしいったんサックスを吹き始めれば最上級の演奏を披露してくれるサクソフォニスト。ますますモレティ氏のファンになってしまったのであった。

最後に、パンフレットに載っていたモレティ氏自身の言葉をご紹介しよう。「全ての音楽家が他者を傾聴すれば、世の中で反目したり争ったりすることもなくなるのではないか。」…すごい。「全ての音楽家が他者を傾聴」なんて、思いつきもしないし、思いついたとしてもめったに言える言葉ではないだろう。この言葉から推察されるのは、モレティ氏の音楽への愛情、人に対しての愛情だ。その愛情が、演奏となって、音となって表れているのだろうな、と思った。

思いがけない収穫…ヴェローヌ作品集

今日(もう昨日か)は、上野の奏楽堂までファブリス・モレティ Fabrice Moretti氏のコンサートを聴きに行って来た。夜も遅いのでそのすばらしかったコンサートの模様は、明日駄文で連ねることとしよう。コンサート中は、聴いていて何度も身震いしてしまった。アンコールで演奏されたピエルネの「カンツォネッタ」が、家に帰ってきても未だに頭の中をぐるぐる回っている。

今日はとりあえず、会場での思いがけない収穫についての話題。…REMというフランス(オーストリア?)のCDメーカーをご存知だろうか。かつてサクソフォンのCDを何枚かリリースしていた中小メーカーなのだが、倒産してしまったようで、そこに吹き込まれたCDは多くが入手不可能な状態に陥っている。例えばリヨン音楽院のラージサクソフォンアンサンブル作品集や、アントワーヌ・ティスネのサックス作品集など、興味深い盤がいくつか存在していただけに、惜しいといえばかなり惜しい。

そのREM発CDに名を連ねるものの中に、フランスの作曲家ピエール・ヴェローヌ Pierre Vellonesの作品集なんてものがある(REM 311303)。サクソフォン吹きにはかなり有名なヴェローヌだが、まとまった作品集というのは中々見当たらない中で、そもそもリリースしたことに拍手を送りたいものだが、そんなわけで入手困難であった。ところが、そのCDがなんと会場で売っていたのである!Momonga RecordsのCDの山に紛れて危うく見過ごすところだった。

このCDでは、サクソフォン、ハープ、チェレスタ、打楽器のための「ラプソディ(狂詩曲)」が収録され、そのサクソフォンパートをモレティ氏が吹いている(おそらく、モレティ氏がフランスから持ってきたのだろうな)。また、四重奏曲である「アンダルシアの騎士」「野獣園より"いるか"」「半音階的ワルツ」が収録されており、サン=フロンティア(サン=フロンティエール) Sans Frontiere 四重奏団が演奏を担当。そのほかは歌曲だが、バリトンはなんとあのフランソワ・ル=ルー(ルルーじゃなくて)。ほおぉ。

ちなみに、サン=フロンティア四重奏団は知る人ぞ知る、といったフランスの四重奏団(もう解散してしまっているはず)だが、ソプラノをあのアレクサンドル・ドワジー Alexandre Doisy氏が担当していることでも有名だろう。テナーは、大川信一郎氏(有名人!)。サン=フロンティアは他にCDを出していないのかな。同じくドワジー氏がソプラノを務めるヴィヴァーチェ Quatuor Vivace四重奏団は?フランスの音楽院付近のローカル情報って、なかなか入ってこないから困る。

さて、このヴェローヌ作品集、今聴いているが、どれも高水準の演奏で大変楽しめる。モレティ氏のコンサートの余韻を楽しみつつ、BGMとしてかけておくのにぴったり。隅々まで聴きこむのはまた今度にして、今日はこのヴェローヌの美しいメロディと、名手たちのしなやかな演奏に酔いながら、眠ることとしよう。

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そういえば、今日のコンサートのパンフレットからの情報だが、モレティ氏、オーケストラとの共演盤で、タイトル「スカラムーシュ」なるディスクをリリースする予定があるそうだ。楽しみ。ポール・メイエ指揮リエージュ・フィルハーモニー(ベルギーのオーケストラ)との共演。

2007/11/16

【求む】不具合情報

(最新の記事は、ひとつ下の記事となります)

このブログdiary.kuri_saxoをご覧になる際に、ブラウザがクラッシュするという方は、コメント欄、もしくはメール(→kuri_saxo@yahoo.co.jp)にて使用ブラウザの種のバージョン番号やOS等をお教えいただけないでしょうか。CPUやメモリの環境など併せてお教えいただくと、なお助かります。ご協力よろしくお願いいたします。

情報集めたところで、何か修正できる…というわけではないのですが(Google Bloggerのサポートチームへと連絡することはできるかも)、一応知っておくべきかなあと思いまして。2007/11/16の23:59まで、この記事をトップに掲げておきます。

2007/11/15

明日はモレティ氏のコンサート

以前にもブログで話題にしたが、明日はフランスのサクソフォン奏者、ファブリス・モレティ Fabrice Moretti氏のリサイタルだ。先週まですっかり忘れていたのだが、けこぅさんから連絡をもらって思い出し、あわててチケットを買ったのだった。危ない危ない。

世界トップクラスのテクニックと、誰の耳をも納得させるような音色…現代にあっては淘汰されつつある往年のフレンチスタイルを体現する、数少ない奏者の一人だと思う(というくだりは、半分Thunderさんの受け売りだったりする笑)。また、ピアニストの服部真理子さんの素晴らしさは、いまさら言葉を並べる必要もないだろう。昨年は私も聴くことができたが、もうね、リュエフとかパスカルのような難曲からはもちろん、ごくごく簡単な…あの、アンコールで演奏されたランティエの「シシリエンヌ」の感動的な演奏は、今も思い出すことができる…そういった曲まで、諸手を挙げて賞賛したくなるような演奏をするのだ。

というわけで、ここをご覧の?みなさん、ぜひ明日は上野へと参りましょう。

最近は、研究の専攻内発表の準備の関係で忙しかったのだが、その発表も本日無事終えることができ、明日は晴れやかな気分でコンサートに行けそうだ。そのまえに、明日提出の重ーーいレポートをやらなければいけないけれど…(今日も徹夜か!?)。気がついたら、今週平日の総睡眠時間は8時間…。ねむい…(pω-)ooO

2007/11/14

大室勇一監修の、CBS SONY管楽器入門シリーズLP

珍品。かつてCBSソニーが管楽器入門シリーズとして販売していたLPのサクソフォン版で、レコードの音を聴きながら練習できるというもの(CBS SONY 36AG 336, 337)。それだけであったら、現在でも"サックス入門用ビデオ"的なタイトルで売り出されてるが、このレコードはそんなものと比べてはいけない。お手本演奏を吹くのは鈴木英之氏(元東吹団員、現洗足音大講師)であり、さらに監修はあの大室勇一氏(!!)(言わずと知れた、阪口新氏と共に日本のサクソフォン界の基礎を築いたパイオニア的存在)なのである。

レコード自体は二枚組で、中にスケールや簡単な曲目の楽譜が綴じられている。あのソニーが、こんな内容のレコードを出していた時期があっただなんで…時代を感じますなあ。ちなみに内容は、こんな感じ。

・はじめに
・はじめての練習
・中音域での基礎練習
・音域の拡大
・高音域の練習
・付点音符、三連音符、音階のまとめ
・スタッカートの練習
・レガートの練習
・アーティキュレーションの練習
・ヴィブラートの基礎練習
・ヴィブラートの応用
・コレルリ「グラーヴェ」
・モンドンヴィル「タンブーラン」
・バッハ「メヌエット」
・ゴーセック「ガヴォット」
・シューベルト「セレナーデ」
・サン=サーンス「白鳥」
・トマジ「コルシカ島の祈り」
・リュエフ「シャンソンとパスピエ」
・クレストン「ソナタより第2楽章」
・パスカル「四重奏曲より第4楽章」

まだ聴いていないのだが、これってたしか大室勇一氏の「しゃべり」が入っている、というウワサを聞いたこともある。基本的に演奏はサックス鈴木氏、ピアノは曽我部玲氏だが、一番最後のパスカルは、デファイエ四重奏団がシャルランに吹き込んでCBSソニーから発売されていたものと同一のテイク(なのだろう)。最近忙しくで、なかなかゆっくり音楽を聴く時間も取れないのだが、図書館に持ち込んで聴いたら、またレビューします。あ、ヘムケ氏のLPも早く聴きたいなあ。

2007/11/11

Rodney Rogers「Lessons of the Sky」

ロドニー・ロジャース Rodney Rogers氏は1953年生まれのアメリカの作曲家。オーケストラ、室内楽、合唱、メディア等の分野に楽曲を提供し、BMI賞、ASCAP賞、タングルウッド・フェローなどの栄誉に輝く。ロジャース氏の作品は、欧米のみならずアジアやオーストラリアでも演奏されており、さらにAlbany Recordsから「Optimism」というタイトルで作品集が発売されている。いる。現在は、作曲活動の傍ら、アリゾナ州立大学の音楽学科で作曲、音楽理論、アナリーゼ、対位法を教えているそうだ。

そんなロジャース氏が手がけた「Lessons of the Sky」は、ソプラノサクソフォンとピアノのためのおよそ8分間の作品で、1985年の所産。楽譜の出版元はEble Music。タイトルの意味するところは、どこまでも広がる「空」という空間を探索することは、開放・生命・無限について考えるきっかけを与えてくれる…といったようなことである(ちょっと分かりづらいですね)。耳あたりは完全なる調性音楽であり、タイトルから連想されるどこまでもさわやかな響きが印象深い。

楽曲前半は、短いモチーフの集合を急速に飛び越えながら、随所に繰り返しのフレーズを織り込み、ピアノと随所でリズミックに絡んでゆく、といった趣。楽譜面はかなりに変拍子であるようだが、拍子を感じさせない心地良さが面白い。最初聴いたときは、イギリスのグラハム・フィトキン Graham Fitkinあたりの音楽を思い出したのだが、フィトキンよりも使用している和声はところどころに出現するサックスのクレシェンド付きロングトーンが、実に印象的に響く。

中間部では、少し落ち着きをみせるロングトーン主体の進行。徐々に盛り上がった後は、ピアノによるカデンツァを経て後半へ。ミニマル風な短いモチーフの繰り返しを見せながら、頂点へと達し、クライマックスではどこまで続くのだと思わせるようなソプラノの長いロングトーンの下で、ピアノが16分音符からなるフレーズを打鍵する。そしてサックスが再び…の繰り返し。冒頭部よりもシンプルな音運びで、集中して聴いているとトリップさせられてしまいそうだ。そして、最後の最後まで、曲の冒頭から続く爽やかな印象はそのままである。

録音は、イギリスのサクソフォン奏者カイル・ホーチ Kyle Horch氏のアルバム「Anglosax(Clarinet Classics CC0046)」を参照していただきたい。イギリスの奏者が典型的に持つ長いフレーズを一息で吹ききる能力と、フレージング・テクニックを求めるこのアメリカの楽曲とが、幸福な出会いを果たした結果から生まれた、すばらしい演奏。イギリスとアメリカを折衷したようなホーチ氏のエモーショナルな音色も、この曲にぴったりだ。

ホーチ氏はアメリカのノースウェスタン大学に留学してフレデリック・ヘムケ Frederick Hemke氏に師事した経験があるそうだが、そのアメリカへの留学経験がアルバムの選曲に影響を及ぼしたことは間違いないだろう。ロジャースの「Lessons of the Sky」ほか、ヴォーン=ウィリアムズ作品やマイケル・バークレー、エリオット・カーターの作品が入っている。アルバムタイトルからして"Anglosax"だしな。ちなみに、ノースウエスタンでは雲井雅人氏と同時期に学んでいたとのこと。…というか、ホーチ氏というイギリスのサックス吹きの存在を知ったのも、雲井氏に伺ったことがきっかけなのであった。

ところで、なんで突然「Lessons of the Sky」を取り上げたかと言うと:雲井雅人サックス四重奏団のテナー奏者としても有名な林田和之氏がCafuaにソロアルバムを吹き込んだと言うのだが、そのリリース予定アルバムのタイトルが「Lessons of the Sky」だったのだ!ロジャース氏の「Lessons of the Sky」が取り上げられているかどうかは知る由もないが、そういえばホーチ氏の「Anglosax」のなかで一番好きだった曲が「Lessons of the Sky」だったなあと、思い出して取り上げてみたくなった…というような流れ。林田氏のアルバムに「Lessons of the Sky」が入っていたら嬉しいなあ、なんてね(笑)。

そういや雲井雅人サックス四重奏団の新CD、「レシテーション・ブック(Cafua)」の発売ももうすぐですな。当初9月予定だったのが11月に延期になったそうで、しかもなーんだか11月中に発売される気配がないのだが、あわてず楽しみに待ちたいと思う。

2007/11/10

ウォーレン・ベンソン Warren Bensonへのインタビュー

ウォーレン・ベンソンは、サクソフォン界へ「エオリアン・ソング(コンチェルティーノ)」や「ドリーム・ネット」を提供していることでも知られる、アメリカの作曲家。ベンソンのことを調べていたら、面白いページを見つけた:作曲家・音楽理論家のチャールズ・ロチェスター・ヤングが、ベンソンにサクソフォーンに関連した事柄をインタビューした模様を全文公開しているというサイトだ。

http://www.uwsp.edu/music/cyoung/an.htm

出典は、1998年にウィスコンシン大学で開かれたサクソフォンシンポジウムへ提供された資料から。インタビュー自体は、1992年に行われたようだ。

大変興味深く、示唆に富む内容であったので、全文を和訳して載せてみます。特に転載許可は取っていないので、まずかったら消します。また、翻訳作業に疲れて現在のところまったく校閲を行っていないので、間違いなどあったらご指摘ください(特に詩やら絵画やらの話題のところはワケが解らなかったため、ボロボロかも…)。

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ウォーレン・ベンソンは、1924年デトロイトに生まれ、幼少より打楽器とホルンを学んだ。デトロイトのCass工業高校を卒業後、ミシガン大学の音楽科へ入学する。大学では、音楽理論の分野で修士課程を修めると共に、ホルンを演奏したり打楽器を教えたりしながら過ごしたという。卒業後は、デトロイト交響楽団のティンパニストとなり、バーンスタイン、オーマンディ、ライナー他著名な指揮者と共演した。

1950年、ベンソンはフルブライト奨学金を得、ギリシャのアナトリア大学へと留学する。そこで彼は、アナトリア大学合唱団を組織した。アナトリア大学合唱団は、ギリシャにおいては当時初めてのco-educationalな合唱団であり、現在も存続している。

1952年にアメリカに戻ると、ノースカロライナ州のマーズ・ヒル大学で管弦楽団と吹奏楽団の指揮を担当した。その翌年、ニューヨークのイサカ大学へと転勤し、コンポーザー・イン・レジデンスと打楽器講師の職を務めた。イサカ大学では音楽史専攻を新たに開設し、東海岸では初となるパーカッションアンサンブルを結成した(アメリカでは二番目)。また、Ford Foundarion Contemporary Music Projectの顧問を務めたり、Comprehensive Musicianshipプロジェクトの立ち上げに参加するなどした。

1967年の9月、ベンソンはイーストマン音楽学校の作曲科教授に着任。1971年にLillian Fairchild賞を受賞、1976年にはCitation of ExcellenceをNational Band Associationより贈られ、さらに1980年から81年にかけては、イーストマン音楽学校よりKilbourn Prof.の称号を贈られ、Guggenheimフェローとなった。

現在でも、ベンソンはアメリカ、カナダ、南アメリカ、ヨーロッパの音楽祭に招かれ、講演を行っている。35以上の国で彼の作品が演奏され、30作品がレコーディングされ、100以上の作品が出版されている。また、United States Information Agencyのアドバイザー、United States Information Services Libraryの講師、Voice of Americaのコンサルタントを務め、1970年にArgentinian Ministry of Cultureより名誉ディプロマを授与された。また、National Endowment for the Artsより多くの助成金を得、1960年よりASCAP主催のSerious Music Awardsを度々受賞している。

インタビューは、1992年に行われた。

Charles Rochester Young(以下Y): あなたは、特に歌曲、そして打楽器や管楽器のための作品の方面で非常な多作家として知られていますが、それらのジャンルへとあなたを向かわせるきっかけとなったのは何なのでしょうか?

Warren Benson(以下B): 私の音楽仲間に管楽器奏者が多かったのです。彼らは、自分のレパートリーの中に存在しないような音楽を私に求めましたが、そのことが私を管楽器に対する興味へと向かわせるきっかけとなったのです。当時のオーケストラが演奏する曲目といえば、古典ばっかりで、アメリカ産の新作を演奏しようとはしませんでした。そこで、私は吹奏楽のために特に作曲を多く提供し始めました。吹奏楽…このジャンルは本当に素晴らしい!多くの人は私を吹奏楽作曲家と考えているようですが、実際は吹奏楽よりもほかのジャンルへ提供した曲目のほうが多いのです。今までやったことのないことにチャレンジするのは、楽しいものです。

Y: 初めてサクソフォンというジャンルに触れたときの事を覚えていますか?

B: 私の隣人の一人が、サクソフォンを吹いていたのです。それは、私がまだとても若い頃のことです。彼はソプラノからバスまで、5種類のサクソフォンを所有していました。ですが、私はその楽器に特に感銘を受けず、次第に文学へと興味を持つようになりました。ところが1940年のことです。Leonard Smithが私に、ギャルド・レピュブリケーヌサクソフォン四重奏団のレコードを聴かせてくれたのです…それは素晴らしいものでした。また、(リード楽器の楽団として有名な)シェップ・フィールズ楽団がミシガンのアナーバーに来たのです。それは私がミシガン大学の学生だった、1944年のことでした。シェップ・フィールズ楽団には、多くのサックスが含まれていました。数本のソプラノとアルト、2本のテナー、バリトン、バスと、計12か13本のサックスです。金管楽器は一本も含まれていませんでした。私は、20世紀初頭から今日までの、ジャズサックス・アンサンブルの歴史に魅了され続けています。こんにち、パーシー・グレインジャーが編成として取り上げたような、サクソフォンのラージアンサンブルを立ち上げるような動きが高まっているのは、興味深いことです。ですが、正直に言うと私はバスサクソフォンの見過ごされ方には失望しています。現代のウィンド・アンサンブルには、機敏なバス音域楽器が欠けていると思います。バスサクソフォンこそが、最も俊敏なバス楽器であり、さらに楽器としての際立った強靭さを持っています。ですが、現代ではその重要さが見過ごされているといっても過言ではないでしょう。バスサクソフォンがないこと、それは吹奏楽の中で大きな"穴"となっていると思います。

Y: ジャズへの興味が、あなたをサクソフォンへと向かわせるきっかけになったということですか?

B: いいえ、違います。しかし、サクソフォンという楽器に対する概念形成の一因となっています。
ジャズサクソフォン奏者は、とても自分がもつ音色のアイデンティティを気にかけているようです。あなたが、何の曲でも構わないのですが…ジャズプレイヤーの吹く2、3の音符を聴いたとしましょう。すると、有名な奏者ならば、たちどころに誰が吹いたのか、ということを認識することができます。音色とフレージングの点において、誰かの真似をするということは、彼らは許されれないのです!
私は長年の間、管楽器というジャンルを見てきましたが、サクソフォンに関して言えば、誰もがそれに向かって努力すべき「理想的な」サウンド、「黄金の」音色、といった観念があります。それは、人の声に似ています…愛や憎しみといった自己の感情を表現するために、あなたは声の質を変えることがあるでしょう?もしそうでなければ、それは自己を失っているということに他ならないのです。「ジャズサックス吹きは、彼らが言いたいことをどう表現すればいいかを、本当に良くわかっている」これはヴィンセント・パーシケッティが私に向かって言った言葉です。この言葉こそが、全てを表していると思います。しかし、私をサクソフォン音楽へと向かわせるきっかけの最大のファクターが、ジャズサクソフォンとの出会い、というわけではありません。そうではなく、ジグルート(シガート)・ラッシャー Sigurd Rascherとの出会いこそが、私をサクソフォンに目覚めさせた最大の出来事でした。

Y: ラッシャーとは、どのようにして知り合ったのですか?

B: 私は、ノースカロライナ州のBrevard音楽センターで講師の職にありました。ラッシャーは、そこのアーティスト・イン・レジデンスだったのです。彼は私のために何曲か演奏してくれたのですが、そのフラジオ(アルティッシモ)音域に私は大変興味を抱きました。当時、ラッシャーほど高い音を演奏できる者はいなかったと思います。そして最初の出会いから6、7年に渡り、音楽的な付き合いをしました。私たちは、家族のようにとても良好な関係を持っていたと思います。インゴルフ・ダール「協奏曲」の初演は、我々が行ったのですよ。そこで演奏したのは、今日演奏されるバージョンよりも力強い、オリジナルのバージョンでした。
私がラッシャーと出会うまでに、彼はすでに50以上のサクソフォン作品を委嘱し演奏していました。しかも、そのどれもが「本物の」作曲家の手による作品…イベール、ヒンデミット、ブラントらによるものだったのです。ですから、彼が私に「コンチェルティーノ」を委嘱したとき、私はたいそう喜んだものです。私はまず中間楽章として「エオリアン・ソング」を1953年までに作曲し、残りの楽章を1954年までに仕上げました。ラッシャーは1955年の1月に私の「コンチェルティーノ」を初演し、その後数え切れないほどの再演を行ってくれました。特に「エオリアン・ソング」はラッシャー以外の奏者の手によって何千回と演奏されています。最近ではプリズム・サクソフォン四重奏団 Prism Saxophone Quartetが伴奏がウィンド・シンセサイザーであるバージョンをツアーで演奏しました。

Y: それは興味深いですね!「エオリアン・ソング」には、吹奏楽、ピアノ、ウィンドシンセ以外の伴奏バージョンも存在するのですか?

B: ええ、ありますよ。私はラッシャーとその娘のカリーナ・ラッシャーのために、オーケストラもしくは吹奏楽伴奏とアルトサクソフォンソロ、そしてソプラノサクソフォンのオブリガートを付与したバージョンを作曲しました。それ以外のバージョンが存在するかどうかは、ちょっとわかりかねますが…。ちなみにその楽譜は、もともとMCAが所有していましたが、Theodore Presserに版権が渡されました。ですが、現在のところ出版はされていません。

Y: オリジナルバージョンの「エオリアン・ソング」が絶版となっていると聞きましたが、本当ですか?

B: そうです。現在は絶版になっていて、誰にも楽譜を提供できません…ですが、そのうち何とかするつもりです。

Y: 「エオリアン・ソング」に限らず、あなたのサクソフォンのための作品は、高い楽器のコントロール能力を要求するように思います。そのことを意識して作品を書いているのですか?

B: はい。楽器のコントロール能力は、見過ごされているように思います。多くのサックス吹きは、2/3程度のテクニックまでは到達しているのですが、それ以上の鍛錬をしている奏者はあまりいません。ドナルド・シンタ Donald Sintaがそうであったように、全ての音域にわたって、幅の広いダイナミクスで楽器をコントロールして演奏できることが重要だと考えています。あなたも、空気に溶けていくような繊細なディミニュエンドを生徒に要求するでしょう?私は、そのような繊細な音量のコントロールこそ、多くの奏者がそれに向かって努力すべきゴールだと考えています。サクソフォン奏者は、自分の人生において、いかなる速さのパッセージをも演奏する能力、どこまでも大きい音とどこまでも小さい音のコントロール、そしてあらゆる種類のヴィブラート、これらのことを身につけるべきなのです。「音楽は美しくある必要はない、そうではなく作曲家・演奏者が経験した全てのことをメッセージとして伝えるべきだ」という言葉に、私は大変影響されています。もし音楽が、人間の状態を全て照射するようなものだとしたならば、ヴィブラート、ダイナミクス、アーティキュレーション、テンポ…これらの自由なコントロールを十分に身につけておくことは、必要でしょう。
楽器のテクニックと様々な奏法を身につける勉強のために、Thom David Mason, Ron Caravan, Larry Livingston, フレデリック・ヘムケ Frederic Hemkeらに奨学金を与えました。ドナルド・シンタは、楽器のコントロールの点において驚くべき到達をみせました。フレデリック・ヘムケは、私の「ドリーム・ネット」において、私が要求した様々な響きを見事に奏でてくれています。これらの成果が実を結んだとき、私は大変興奮しました!やはり、演奏家が作曲家にこう言わせるほどでないといけませんね「あなたが私に要求したことは何だろうと、学んでみせましょう」。

Y: あなたは過去40年間、何人もの著名なサクソフォン奏者と共同作業をおこない、サクソフォンのレパートリーを形作ってきました。彼らとの出会いの中で、あなたがあなた自身の考えを変えるほどに至ったような経験をいくつか話していただけませんか?

B: フレデリック・ヘムケとは、私がラッシャーとともにミッドウェストバンドとしてシカゴのオーケストラコンヴェンションに参加していたときに初めて会いました。そのとき、ミッドウェストバンドは私の古いバンドのための作品をいくつか演奏してくれたのです。彼と話したこと、さらに、ドナルド・シンタとも良く覚えています。また1966年には、International Society for Music Educationの最初のミーティングがInterlochenで開かれたときに、ジャン=マリー・ロンデックス Jean-Marie Londeixに会いました。そのオープニングコンサートでは私のバレエ音楽が演奏されたのですが、その晩、私はロンデックス夫妻をディナーへと誘い、トラバースシティへと繰り出したのです。その席上で、ロンデックスに私の友人であるシンタとジャック・クリプルを紹介することを約束しました。そしてシンタのコテージへと赴き、朝の3時までオープンリールのテープを聴いたり、音楽のことやサクソフォンのことについてしゃべったりしながら楽しい時間を過ごしました。
サクソフォニストではないですが、カレル・フサ Karel Husaも私の大切な友人の一人です。1954年、彼はニューヨークのイサカ大学で教鞭を執るべく、初めてアメリカへと渡ってきました。ちょうどそのころ、私はニューヨークに住んでいたのです。すぐに我々は親しくなり、家族ぐるみでの付き合いをするようになりました。今でもその関係は続いています。ある晩、ラッシャーが私達の家に泊まっていました。そこで私はカレル・フサと彼の家族をディナーへと招待し、ラッシャーを彼らに紹介しました。ラッシャーがぜひカレル・フサの家族のために演奏したいといったので、私はオフィスの鍵を貸しました。数時間、フサの家族はラッシャーの演奏を楽しんでいたようです。フサの「エレジーとロンド」は、その出会いがきっかけとなって生まれました。フサと私は、ロチェスターでの初演を聴くためにロチェスターまで赴いたのですよ。
その後のことですが、サクソフォン・コングレスがシカゴで開かれたとき、私はロンデックスによるデニゾフ「ソナタ」のアメリカ初演に際して、スピーチを行うべく招かれました。彼は重音など、様々なテクニックによってその曲を演奏し、聴衆は大変なショックを受けたのです!シカゴのコングレスでは、私の友人達…ラッシャー、シンタ、ヘムケ、ロンデックス、ルソー、フレデリック・フェネル、セシル・リースンと楽しい時間を過ごしました。また、ラリー・ティールにも会いました。彼は、私がデトロイト交響楽団にいた頃からの知り合いでした。このコングレスは、サクソフォンという楽器が初めて産声をあげたというべき大変興味深いイベントでした。ラッシャーの高音域も、基本的な奏法だと思えるようになりました。シカゴのコングレス以来、アメリカではアルトに限らず様々なレパートリーが作曲されています。私がそれらのレパートリーの一部を手がけられたこと、本当に嬉しく思います。

Y: あなたは詩と絵画を趣味としていると聞きましたが、それらはあなたの書く音楽へ影響を及ぼしていますか?

B: 私は4歳か5歳のころから詩を書き始めました。私は詩人ではありませんから、私の書く詩がそれほど重要になるとは思っていませんでした。私はただ単に楽しみのために、そして複雑な感情を持つ自己を表現するために詩を書いていました。思うに、詩は自己表現の簡潔な手段の一つだと思います。良い詩とは、最小限の言葉で大きなインパクトを与えるようなものです。言葉のひとつひとつが、くっきりと力強く「しゃべって」いるのです。そしてそれらの言葉を並べてゆくこと、これが凄い。言葉を並べると、それらが互いに影響しあって劇的に意味を変えてゆくのです。詩を書くことは、「表現」と「意味」に対して、私を敏感にさせるきっかけとなったと思っています。
私の興味のひとつに、このような事実があります:曲を書いている最中というのは、完成された作品を扱っていることになりますが…これから完成されるべき作品の全体構造が、私がいま書いている音楽にどのように働きかけているのか、興味があります。私は、自分の書く音楽において旋律線の抑揚に気を使っていますが、また「歌う」ことにも気を使っています。歌は、音楽的表現の最も基本的な手段ですから。
絵画も同じです。私は妻(プロの絵描き)からものの見方、そしてどのように見るかということを、42年間に渡りレッスンで教えられてきました。彼は視覚世界というものに深く関わり、その洞察力を磨いてきました。その結果、(たとえ今見ているものが初めて見るものであっても)普段よりも注意深く見ること、注意深く感じること、そういったことを学んだのです。音楽の質を感じ取るとき、この注意深い洞察力は重要だと感じています。注意深く観察することは、しばしば軽視しがちになっている対象の中に、新たなものを見つけるきっかけとなることと思います。

Y: 1970年のシカゴの世界サクソフォンコングレスへの参加以来、あなたがサクソフォン界に対して何か考えを変えたことはありますか?

B: サクソフォンコングレスは、サクソフォンのレパートリーに、種々の新しい、素晴らしい作品が存在するということを知るきっかけになりました。アメリカのサクソフォン奏者に、コングレスでもなければ知ることのないであろう、世界に拡がるサクソフォンの様々な作品を知らしめた、という点から見ても重要であったと思います。コングレスに参加した人たちはみな、今まで知りえなかった世界中の作品に衝撃を受けたのです。演奏家も、疑う余地なく誰もが素晴らしい。世界中で生まれた作品が、奏者のテクニックに影響を及ぼしていったとも言えるのではないでしょうか。

Y: サクソフォン奏者は皆、クラシック音楽界へサクソフォンを受け入れてもらおうという努力を積み重ねてきました。このことに関して、あなたはどう思いますか?

B: そのことに関しては、サクソフォン奏者だけでなく作曲家にも関係しているでしょう。ある作品が出版されるように努力する必要があるような時代は、過去のことです。また、ある作品が演奏されることを保障される時代も、過去のことです。私は、サクソフォニストは皆、重要な作曲家、興味ある作曲家、そしてまだサックス作品を書いていないが、良いと思う作曲家、を意識すべきだと思います。作品を書いてくれそうな作曲家には、コンタクトすべきです。もしかしたら、ニューヨークのタウンホールやアリス・テュリーホールのように魅力的な演奏環境で演奏するよりも、委嘱にお金がかかるかもしれません。ですが、単に嘆願するだけでは良い作品を書いてもらえないかもしれません。
ところで、どれだけの音楽学者や音楽理論家がサクソフォン音楽をまじめに捉えているのでしょう。サクソフォンコングレスのような場所に彼らを呼び、一緒に議論しましょう。コングレスには、サックス吹きはたくさんいますから、もっと積極的に作曲家、音楽学者、音楽理論家を読んでディスカッションを行うべきです。そうでもしなければ、音楽教育の一環として取り入れられるほど、サクソフォンが認知されることはないでしょう。フルート、バスーン、クラリネット、ホルン、トランペットは音楽学者や音楽理論家にまじめに取り上げられています。サクソフォン界を発展させたくば、彼らに、サクソフォニスト達がこの35年~40年の間に取り組んできたことを知ってもらい、評価してもらうべきです。そして彼らとサクソフォンのことについて真剣に議論すべきです。…サクソフォンコングレスへの会場までの、彼らの旅費を負担してでも。いや、それだけの価値が、間違いなくあると思います。

Y: サクソフォン奏者に代わって、あなたの、40年にわたるサクソフォンに対する作品の提供と音楽的洞察に、感謝申し上げます。ありがとうございました。

B: こちらこそ、ありがとう。

面白かったので

Sax on the Webでの2003年のMichigansaxさんの書き込み。面白いなーと、思ったのでちょっと訳して載せてみます。こういう書き方は、アメリカならではですな。

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[Important Announcement]
After years of frustration and countless broken reeds, at 7:55 pm CST, at my home in the Dallas suburb of Rowlett, TX, I, Joey Resendez, was able to perform a slap tongue (was that a run-on?). I would like to thank Erik Ronmark, Z Marshall Ignas, and many others whose advice helped me achieve this monumental step in my quest as a saxophonist. I do realize that I still have a long road ahead of me in mastering all the aspects of slap tongue (i.e. speed, alternating between slap and regular) but I feel that this will fall into place in due time.
I bid you all good evening and best wishes.
If anybody wants me, I'll be practicing Jungle.

スレッドタイトル【重要なお知らせ】

幾年間にもわたる挫折、そして何枚ものリード破壊を経て、本日午後7時55分、テキサス州ローレット郊外ダラスに位置する私の自宅にて、ワタクシJoey Resendezはスラップタンギングを習得したことをここにお知らせする。私がスラップタンギングの習得という記念的事象にたどり着くためにご尽力いただいたErik Ronmark、Z Marshall Ignas、その他多くの方々にこの場を借りて感謝を申し上げたい。スラップタンギングのさまざまな側面(スピード、普通の発音との切り替え等々)をマスターためには、まだ険しい道のりが待ち受けているだろう。しかし、最初の一歩を踏み出せたこと、今は素直に喜びたいと思う。

ここを見ている皆さんが、本日も素敵な夕べを過ごされますよう。

…あー、もし誰かが望むのなら、「ジャングル(※)」練習しますよ。

※クリスチャン・ロバ Christian Laubaの「ジャングル Jungle」は、アルトサクソフォンのための独奏曲。全曲に渡り、超高速なスラップタンギングが要求される。

2007/11/08

les désaxés(デサクセ) on YouTube

見つけたっきり、すっかり紹介を忘れていた。フランスのサックス四重奏パフォーマンス集団「Les désaxés(デサクセ)」のプロモーション用ムービーがYouTubeにあったので貼り付けておく。デサクセ…例えるならサックス四重奏ヴァージョンのBlast!みたいな感じだろうか?いや、ちょっと違うな(楽器を放り投げたりはしない)。まあ観てみてください。



井上麻子さんによる記事を拝見して以来、「どんな感じなのかなー、観てみたいなー」と思っていたのだが、まさかYouTube上で観ることになるとは思わなかった。個人的にサンジュレがウケた。こりゃすごい。ハバネラ・サックス四重奏団も、この辺りから影響を受けているのかな。なんだか通じるものを感じる。

2007/11/07

朝練習のこと

今日から、主にフェスティバルへ向けての朝練習開始…と思ったら全員寝坊 or 体調不良。あらら。しょうがないので、自分のパートの一番の懸案であるフラット5つの難所をぱらぱらさらう(図参照)。パターンが決まっているわけでもなく、跳躍も厄介で、しかも音程的に苦手なフラット系の指使いが頻出。ずっと練習していると逃げ出したくなってくる。跳躍はまだましになったけれど、特に音程のコントロールはつらいところ。

ウチの大学ってかなり特殊で、学生の住まいと大学が互いに密接な場所に位置しているため、切羽詰っているときほど朝練習はよくやる。これは、コンクールに出た去年、アンコンに出た一昨年と前一昨年、毎年感じていることだが、朝練習を繰り返していくと、昼間~夕方に吹いたときにものすごく調子が良いのだ。高山トレーニングみたいなものか。いや、自分にとっては低血圧トレーニング、かも。

中学や高校のときは朝早く家を出て練習に向かっていたけれど、なかなか大学になると体が言うことを聞かない(笑)一人暮らしだし。夜も遅くまで研究のほうが忙しいが、足りない分は気合でカバーしてとりあえずフェスティバルまでは頑張っていこうと思う。あー、アンサンブルコンクールどうしようかなあ。今のままだと、メンバーの日程が合わず出られない…。

2007/11/06

ミュールが考えていたこと

私の両親はとても音楽に理解がある人たちだ。私が学生という身分でありながら、音楽を続けていられるのは、父と母のおかげだと思っている。父は、このブログを定常的に読んでおり、時々ブログの内容についてメールや手紙をくれるのだが、今日受け取った手紙の中に、ミュールに関する、とある父の考えが書いてあったので、少し膨らめつつ記しておきたい。

「1901年に生まれ、1930年代より頭角を現し、第一線の音楽家として活躍する。1958年にソロ活動引退、1967年に四重奏を解散、1968年に教授職を引退、以降サクソフォンを吹くことはなかった。2001年に逝去」というのは、言わずと知れたサクソフォンの神様、マルセル・ミュール Marcel Mule氏が辿ったタイムラインである。ミュールはこの70年弱の間に、演奏、録音、教育の分野でさまざまな功績を残した。たとえば、サクソフォンに豊かなヴィブラートを取り入れ、クラシック楽器としての定義を確立し、SATBの四重奏という形態を室内楽の編成として位置づけたことは、サックスを吹いているものならば知らぬものはいないだろう。さらに、さまざまなオーケストラへの独奏者としての客演、何十枚ものレコーディング、パリ国立高等音楽院教授としての後進の育成…宮島基栄がエッセイの中で述べているが、はたから見れば「やりたいことはすべてやってしまった」というふうである。そう、私たちの目から見れば、1968年の完全な引退までに、自分がサクソフォンを通してやりたい音楽は、すべてこなしてしまったのだろうと思える。

ミュール本人は、引退直前にどう考えていたのだろう?当時世界最先端のサクソフォン教育を行っているパリ音楽院教授のこと、サクソフォンという楽器に宿る無限の可能性を知っていないはずがない。それを知りながら、敢えて1968年で引退したのは、やや不可解にも映る。音楽界を見渡せば、ポスト・モダンにすら突入していない時代であり、かつサクソフォンの世界に至っては、モダニズムにすら飛び込んでいない(サクソフォンがモダニズムの世界へと足を踏み入れるのは、1970年のデニゾフ「ソナタ」まで待たなければいけない)。ミュールはモダン・ミュージックを見ていなかったというのか?いや、そんなはずがない。それならば、なぜサクソフォンにモダン・ミュージックを取り入れるのを待たずに、引退してしまったのだろう?

単純な趣味の問題、という話もあるが、どうだろう。「難しいことを追い求めるな、易しいことを追い求めよ」というミュール自身の言葉からは、彼が持っている往年の「趣味の良さ」的雰囲気を感じ取ることができる。確かにゲンダイオンガクには手を出さなさそうなイメージ…。モダン・ミュージックを知ったころには、テクニック的な問題から取り組むことができなかったのか?うーん、それでも、ダルムシュタットは1947年からだし、それを考えるとミュールが特殊奏法に取り組まなかったのは、ちょっと不思議だ。

もちろん、モダン・ミュージックに限った話ではなくて、引退せずに音楽活動を続ければ「当時サクソフォンの『可能性』と呼ばれていたものを、ミュールが自身の手によって現実化することができただろうに…」というのは、誰しもが思うことだ。

…思うに(ここからが父の考えの受け売りだが)ミュールは、続く世代のためにサクソフォンの可能性を可能性のまま「手をつけずに残しておいてくれた」のではないか。自分がやるべきことはやり、これから発展する可能性のあるものはあとは若い世代へと託したのではないだろうか。父の手紙の中からそのまま引用すると、きっとミュールはこう考えていたに違いないと:「さあ、わたしはここまでやってきた。次は君たちの番だよ、私のやってきたことを存分に吸収して、次に君たちがサックスの世界をもっと広げていってほしい」

うん、きっとそうなのだろう。きっとミュールは、当時のサックス界だけでなく、次の世代、次の次の世代までをも、一気に見通した上で自分の音楽活動をリタイアしたのだ。それはすなわち、続く世代は誰もが、ミュールの期待を背負いながらサックスを吹いている、ということになるだろうか。

天国のミュール先生、今のサックス界をどう感じていますか?あなたが残しておいてくれたことに、我々は到達することができたのでしょうか?それとも…