2006/09/30

ケネス・チェ氏~アジアのサックス吹き

日本以外の東アジア…たとえば中国や韓国は、世界のクラシック・サクソフォーン界から見ると、普及は比較的後発だったよう。しかし最近はサックス関連の教育制度も整い、世界レベルの奏者を輩出することもあるようだ。クロード・ドゥラングル教授率いるパリ国立高等音楽院のクラスも、中国へのツアーを行ったというし、世界的にも期待されているんだろうな。

そんなアジアのプレイヤーのなかに、ケネス・チェ(ツェ?)Kenneth Tse氏という中国出身のサックス吹きがいる。香港に生まれ、母国の音楽大学を卒業の後、インディアナ大学でユージン・ルソーに師事。アメリカで幅広く活躍して、現在はアイオワ大学のサクソフォーン科教授を務めているという。

RIAXというレーベルから出ている「Sonate(RIAX RICA-2002)」というCDをたまたま聴いて、ものすごい実力者だということを知ったのがきっかけ。まず音色が良い!…マズランカの「ソナタ」を録音しているのだけれど、一聴してどんな難所でもニュートラルな音色がとても印象だった。

アルトサックスはもちろん、ソプラノサックスによるサン=サーンス「ソナタ」もとにかく綺麗な音色で、ルソー門下だということに納得。生の音を聴いてみたいなー。

こんなすごいサックス吹きが出てくるとは…20年後、30年後のアジアのサックス界は、もしかしたら世界一になっている…かもしれませぬ。今後は、外国に留学した奏者がどれだけ母国に戻るか…つまり教育基盤の強化具合にかかっていると思う。

さて、そんなアジアを代表するチェ氏の音はアルバム「Sonate」で聴くのがまずオススメ。これは手に入りやすいうえに、安価、内容も充実と大変よろしいです。また、チェ氏のWebページ(→http://www.kenneth-tse.com/)ではその他のアルバムも扱っている…これまた楽しそうなCD!ということで、数枚買ってしまいました(^^;届くのが楽しみ。

また、Webページの左のメニューから選べるMedia LIVE!では、香港ウィンドフィルハーモニーとクロード=トーマス・スミスの「ファンタジア」を共演したときのライヴビデオが観られる。けっこうオススメ。うむむ…少なからず難しい曲のはずなのに、恐ろしく余裕な演奏だ。

ラーシュ=エリク・ラーションの「協奏曲作品19」をアイオワ大学の学生オケと入れたCD(ライヴ盤)もあるそうで、こちらも興味深い。

野田燎氏

ノナカ・サクソフォン・フレンズの会誌Vol.17の特集がすごい。サックス吹き、いやそうでなくても興味深い内容。ネットでも見られます(→http://www.nonaka.com/j/new/nsf_report/pdf/nsf17.pdf)。

紹介されている野田燎氏は、サクソフォーンのための有名な独奏曲「インプロヴィゼイション(即興曲)」シリーズの作曲者として、また現代音楽のスペシャリストとして名を広く知られているけど…必見。

2006/09/28

海外とのやりとり

メール送ってみるもんだ。送料が半額以下になった(それでもまだ高いけど、まあ良しとしよう)。海外への英文メールは、初めての時こそ緊張して何度も推敲したものだけれど、今ではわりと気楽に送れるようになった。

ちなみに生まれて初めて海外に送った英文メールは、デイヴィッド・マズランカ David Maslanka氏宛てのメールだった。「マウンテン・ロード」の楽譜をがCarl Fisherで絶版だと知り、何としても手に入れたい!と思っていたときのこと。マズランカ氏の公式ページで「For information about out-of-print or hard to find works, musical interpretation, to pass along information about upcoming performances, or commission inquiries, contact David Maslanka by any of the following means:」のくだりを見つけて、メールしてみようと決意したのだった。いやあ、なつかしい。

すぐにマズランカ氏から返信があり(すごく嬉しかった)、国際郵便為替を使ってなんとか直接買うことができたのだった。

そうして入手した楽譜は、本番を迎えないまま楽譜入れの中に眠っている。実は去年のアンサンブルコンテストで「マウンテン・ロード」の最終楽章をやろうと言い、練習も二週間ほど始めていた…のだが。結局デザンクロの第一楽章をやったのは周知のとおり。

2006/09/25

クローバー・サクソフォン・カルテット

海外からの荷物はやはり送料が高い…(商品2つで30ドル、その送料が25ドルって…)。特にCDやLPのような体積のある荷物だと、送料がぐっと増す感じがする。どうにかならないのかなあ(これが船便 Surfaceだと激遅のかわりにずいぶん安くなるのだが)。Surfaceで送れないかと、いちおう打診はするつもり。

いまさらというか、気が早いというか…クローバー・サクソフォン四重奏団 Clover Saxophone Quartetが、けっこう気になっている。ソプラノ:林田祐和、アルト:田村真寛、テナー:貝沼拓実、バリトン:坂口大介という若手メンバーで構成された四重奏団。構成メンバーの名前を見るだけでも、いかに次世代の日本のサックス界のホープが結集したか、が判るというもの。

それぞれのメンバーのソロは、サクソフォン・フェスティバルで聴いたことがある。しかし、あの個性溢れる音楽性の持ち主たちが四重奏を組むとどんな響きがするんだろう?

すでにデビューを前にして各所での演奏を展開・好評を得ているようで、新世代のカルテットの一つとして期待大!早く音を聴いてみたいなあ。

デビューリサイタルは2007/5/11、東京文化会館小ホールにて開催とのこと。次代を担うカルテットのひとつとなるのだろうか。ぜひこの目で確かめてみたい。…んー?たしか5/7には同じ場所で雲カルの定期演奏会がある!豪華々々、二つとも行ってみよう。

2006/09/23

ボルドー音楽院の新教授

今週は怒涛の引越しや研究室(ほぼ徹夜状態も数回…)で楽器が吹けなかった。水・木曜日あたりは練習しに行く予定だったのに。上手くいかないものだなあ。

学園祭が迫っている。今年は昨年までに比べてぐっと出番が少なくなったので、一個々々の曲やソロをきちんと練習してこなすそうかと。そういえば、学園祭の2日目にあるつくばの都市吹のコンサートを聴きに良く予定。楽しみにしてます>fさん、pomさん、K島さん。

ロンデックスのことを書こうと思っていたのだけれど、ちょっと関連ネタを仕入れたのでひとつ。

今年度からボルドー音楽院のサクソフォン科教授はファビエン・ショウラキ氏 Fabien CHOURAKIらしい!へえぇ。聞きたいことがあってメールを送ったところ(この忙しい年度末にゴメンナサイ)、ボルドーへのお引越し中で返事が遅くなったとの旨とともに返信が届いたのだ。そこにはprofesseur de saxophone au conservatoire National de region de Bordeauxの署名が!あー、びっくりした。

ボルドー音楽院というと、やはりロンデックス氏の名前のイメージが強すぎて、1995年に退官されたことは知っていたが、その後任が誰かは知らなかったなあ。

2006/09/21

ウッズ「ソナタ」

サクソフォンが発明されてから160年。しかしいくら若い楽器だからって「クラシックっぽい」曲が少ないわけではなく、黎明期のサンジュレを始めとする古典的な作品、グラズノフの「協奏曲」や「四重奏曲」に代表されるロマン派、さらに続くネオ・ロマンティック、コンテンポラリーと、意外なほどに「クラシック作品」が多いことに気付かされる。

そしてさらに、サックスの特徴である音色の柔軟性や運動性能を生かした、クラシック×ジャズや、クラシック×ロックのような「ハイブリッド作品」が数多く生み出されている。

もちろんサックスの「クラシック作品」にも良い曲がいっぱいあるのだが、この「コラボレーション作品」の中に、目を剥くほどカッコいい作品を見つけることがあるのだ。今回はその中からフィル・ウッズ作曲の「ソナタ」の話。

フィル・ウッズと言ったらアメリカのジャズ界では大御所のジャズ・アルトサクソフォン奏者&作曲家。ヴィクター・モロスコに献呈されたこの四楽章からなる「ソナタ」は、ジャズのイディオムをそのまま譜面に落としてきました、という感じの曲で(クラシックな「ソナタ」を想像しながら聴き始めるとかなり面食らう)、「ハイブリッド作品」の中でもずば抜けたカッコよさと完成度を誇る名品である。

まず主題が良い!とてもメロディックな上にクールだし、その主題が全楽章に渡って聴かれ、さりげなく統一感を出している。そしてソロサックス、ピアノにアドリブ部分が用意されているあたりはジャズそのまま…コード進行が用意されたアドリブならまだしも、"freely, fast as possible"の副題を持つ最終楽章ではフリー・ジャズ的な要素までをも求められるという幅の広さ(けっこう凄い)。

1986年に発売されたジョン・ハールとジョン・レネハンのデュオによるアルバム「John Harle plays(Hyperion)」のトップを飾るのがこの曲。2004年にClarinet Classicsから再発売されて初めて耳にしたが、いやあ、衝撃的だった!。たしか献呈者であるヴィクター・モロスコ氏の演奏によるCDもあるはずで、こちらもぜひ聴いてみたい。

良い曲のわりに、日本ではコンサートのプログラムに入ることが稀。なんでだろう?確かに収録されたCDも少ないし、ガチガチのフランス産ソロ曲が好まれているので、広まる余地は無いのかもしれないなあ。…と思っていたら11月に筒井裕朗氏がリサイタルで取り上げるらしい!(→http://www.c-music.jp/index.php/top/friend/i/6809759610/)しかも一楽章の録音も聴ける(ファイルへの直接リンクは遠慮しました→http://www.geocities.jp/saxsonata/sound/etc/woods1.mp3)カッコいい!リサイタルは石川県とのことで、さすがにここからは無理だが…お近くの方はぜひ。

サクソフォンの世界には、まだまだ素敵な「ハイブリッド作品」がたくさんあるので、機会があれば紹介したいと思っている。

2006/09/20

引越し

ちょっと離れたところに引越し。直線距離で700メートルくらい移動したかな(^^;。今までに比べてゆとりあるスペースがとれる(というか、今までの住まいは狭すぎ)ので、ちょっとうれしい。うーん、これを機に、きちんとしたスピーカーやアンプを買うか…。

今までに資料として収集したサックス絡みの楽譜・CDを、引越しのために整頓していたら結構な量になってしまった。特に楽譜はダンボールに詰めたままにしておくのもあれなので、きちんとファイリングしないとなあ。ところでジャン=マリー・ロンデックス氏とボルドー音楽院が所蔵するクラシカル・サクソフォンの楽譜・CDの量は世界屈指の量、らしい。さすが「125年」の著者だ。

2006/09/16

ザッパ

フランク・ザッパのベスト盤聴いています。うーん、良い(笑)。

サックスや吹奏楽で、かなり濃いところまで知識を広げてしまった人にとってはどこかで聴いたことのある名前ではないだろうか。本当にこのヒト、すごい。ロック界の史上最強の奇才~という呼び方が当てはまるような、スーパー音楽家なのだ。

何者かと一言で表すならばロックギタリスト・作曲家なのだが、ここでは個人的なザッパ音楽との出会いと雑感をば。

そもそもはChannel Recordsから出ていた金管アンサンブルのCDで初めて聴いたときの衝撃だった。ちょっと斜めに構えたような異色のアルバムで、不思議なノリの曲がたくさん入っていたのだが、ザッパの作品はその中でも強烈だった!ものすごい独特のグルーヴ感と一回聴いただけで忘れられないようなヌルいメロディ…こんな曲を書く人がいるのか!と。すぐに「ザッパ」の名前は覚えたがクラシック畑に情報が異様に少ないのが不思議だった(ロック界の人なのだから、今考えると当たり前なのだが)。

そして吹奏楽や現代音楽、サックスの音楽を収集していくにつれ、ザッパの音楽を意識するようになった。Saxoforteがトランペットをゲストに迎えたトラックやアンサンブル・モデルンのザッパ集は良く聴いたなあ。そしてついには原曲にも少しだけ手を伸ばすようになった。普通のロックってどうも苦手なのだが、ザッパをすんなに受け入れられたのはなぜだったのだろうか。

必要以上に声を荒げずに、多彩で魅力的なメロディとリズムを生み出している、ということが自分の感性とマッチしたのかも。普通のロックって、単調でつねにフルレンジで…というイメージがあったのだが、ザッパの音楽はとにかく要素が多い。使われている楽器の種類は多いし、メロディが多いし、ダイナミクスは広いし、何度も転調するし…。色彩感ゆたかなタッチは、吹奏楽に通じるところもある(かもしれない)。

演奏もものすごく上手い。ザッパ自身のヴォーカルはもちろん、スティーヴ・ヴァイ(!)を始めとする超級アーティストとの共演…。油断して聴いていると良く分からないのだが、実は相当ハイテクニックな演奏だ。そこら辺のプロのクラシック演奏家とは比べ物にならないほどキッチリ演奏しているのには唖然。

そのあまりの活動の広さからここで全ての魅力を伝えきれないのが残念。こちらのページがとてもおもしろいので、ぜひ参照していただきたい(→http://homepage.mac.com/club_k2/zappa/

ザッパは1993年に惜しまれつつも亡くなっているが、生で聴いたら凄かったかもなあ。生演奏か、ロックのライヴってどんな感じなんだろうか(笑)。

2006/09/15

ミュール四重奏団のLP

ちょいと更新をサボり気味ではあるが、忙しさゆえで…。昨日はfreescale semiconductorのフォーラムを観るため、上京。目黒の雅叙園(一生に一度は行くべき)に行って参りました。終わったあとついでにN響の定期Bプロ(黛、ストラヴィンスキー、武満)を聴いてこようかとも思ったけれど、世の中そんなに甘くなく売り切れとのことでした。あらら。黛敏郎の「涅槃交響曲」とか、ストラヴィンスキー「春の祭典」とか、一度くらい生で聴いておきたい。

件のミュール四重奏団のLP(MHS)を聴いてみた。なにが凄いって、ほとんどそれまでに録音のなかった40年前に、完成された解釈を紡ぎだしていること。最近の録音だよー、と言われて聴かされても、ほとんど違和感は感じないかもなあ。…逆に考えれば、いかに後々のプレイヤーたちの演奏がミュールの模倣の上に成り立っているのか、ということを示唆するものだと思う。

演奏者は、ソプラノ:マルセル・ミュール、アルト:ジョルジュ・グールデ、テナー:ギィ・ラクール、バリトン:マルセル・ジョセ。この録音の数年後にはミュールが演奏活動から引退し、それにともなって四重奏団も解散している(「Marcel Mule, sa vie et le saxophone」より)。グールデは、ミュールの四重奏団にとってけっこうなキーマンであったとか。各種のサックス作品に深い知識、そしてユーモアを持っており、コンサートなどでの曲目の解説などは、ミュールから一任されていたという。ラクールはあの「50のエチュード」のラクール。写真を一目見るとなかなか強烈な印象を残すな…(なんで、こうカルテットのテナー奏者の姿って印象的なんでしょうか)。

デザンクロの世界初録音はけっこう貴重な音源だが、第一楽章を聴いていたところ…あれれ?テナーのラクール氏が入りを間違えて一部ゴチャゴチャになっている(笑)。

機器がそろった折には、きちんとデジタルデータとして保存したいな。将来的にLPの著作隣接権が消滅すれば、サックス吹きにとってはなかなかすばらしい共有の財産になるのではないだろうか。

原博巳氏のアルバム

ようやく聴いた、原博巳氏のセカンドアルバム「PCF(Cafua CACG-0067)」。原さんの演奏はフェスティバルやコンサート等、生では何度も聴く機会があったけれど、実はCDを買うのはこれが初めて。ブートリー、デニゾフ、棚田あたりに惹かれて買ってみた。

セルマーのサックスにヴァンドレンのマウスピース(たぶん)から出てくる音色は現在のトレンド。温かみをきちんと残しつつも、要所々々でキレのある音色の変化をこなすあたりはさすがだと思う。そして限界を知らないテクニックと、それだけでない「音楽」の圧倒的なうねり。これが国際コンクール優勝の実力…!

もちろん棚田やデニゾフは名演に違いないけれど、一曲あげるとしたらデュクリュック「ソナタ」。第2、3楽章の抜粋である「アンダンテとフィルューズ」の名でも良く知られた、四楽章からなる嬰ハ長調のソナタ。弱音で奏でられるノン・ヴィブラートの音色がピアノの上にすっと伸びていく様が、ひたすらに美しい。原さんの持っている弱音の美意識と曲想が完全にマッチし、かなり説得力ある演奏に仕上がっている。ドゥラングル氏の演奏も持っているが、個人的にはこっちのほうが好きかもなー。

今度はコンチェルトとか、さらに規模の大きな大曲を収録してほしいところだが…日本ではさすがに厳しいか…。いやいや、ぜひぜひ。アドルフ・サックス国際コンクール本選で演奏したラーションとか、聴いてみたいなあ。

スケールの大きな演奏をするあたり、オーケストラを従えたときにかなりいい演奏をしてくれるのではないかと思い込んでいるのだけれど。

2006/09/12

久々の吹奏楽本番

土日は吹奏楽の本番があって忙しかったため更新できなかった。来週末も引越しや演奏の本番でけっこう大変だなあ。

吹奏楽の中でのテナーサックスのポジション、つくづく難しいと感じた。「吹奏楽の中に一本」がデフォルト。ブレス、ダイナミクスを相当考えながらフレーズを作っていかないと中音域を支えきれなくなってしまう。

細かいテクニカルな部分…リズムをそろえる、アーティキュレーションをそろえる、そしてフレーズをギリギリまで精確に取るということを曲の隅から隅まで全員が集中してこなすことは、けっこう重要なんだなあと。吹奏楽の響きの中では見落としがちな部分だけれど、実践することでかなり変わった聴こえ方になる、ということも強く感じた。それを実践すればするほど、テナー一本はキツイ。

考え方(アナリーゼと言うのか?)次第、というのはもちろん分かっているのだけれど…頭使わないと楽器ってマトモに吹けないのねー。

それでも今回はラッキーなことにテナーが二本、しかももう一人のテナーサックスの子が相当上手くて、細かな打ち合わせの上で安心して吹くことができた。ブレスが切れてしまうところではブレス位置をずらすことで対応。アゴーギクの変化はその場のアンサンブルで(基本ですね)、さらに音程も要所要所できちんと合った(と思う)。おお、すごい(笑)。

ブレスかあ、循環呼吸なんかできるとフレーズを持続しやすくなるのかなあ。きちんと練習してみようかなあ←無理。

いやしかし、上手い人がたくさんいる中で吹くのは勉強になりました。

2006/09/08

サクソフォン・コングレスのビデオ

先日スロヴェニアで開かれていた第14回サクソフォーン・コングレスの模様を一部収録したストリーミング・ビデオをAdolphesax.comで発見。まあ実際観てみると、画質は悪いし音は悪いしであまりヨロシクないのだが、それでも演奏の雰囲気は存分に伝わってきてけっこう楽しい(14th WSC写真・ビデオ集→http://www.adolphesax.com/Html/Streaming/WSC2006.htm?t=2842)。

…ん?なんだこの、ホームビデオっぽい雰囲気は…。怪しさ満点(笑)。

トマジの協奏曲を演奏しているドゥラングルの恐ろしいほどの上手さ:本当にめちゃくちゃ上手い。須川さんとTKWOの演奏よりも上手く聴こえるっていったいどんな次元の話なのか。ボーンカンプの演奏するフェルドハウス Veldhuisの「Tallahatchie Concerto」は気合の入った名演奏! そのほか、フェリペやダヴィッドの演奏も少し観ることができる。

フェルドハウスの協奏曲は「タラハッチー」とでも読むのだろうか(笑)。演奏だけでなく作品もかなり良い!サックスの対応できるクラシカルからちょっとポップな雰囲気までをカバーした、この楽器にぴったりの曲だと感じた。うーん、今後「Grab It!」ともどもブームを巻き起こしそうな予感がする。きちんとした録音で聴いてみたいなあ。

遠くスロヴェニアまで出かけられない身にとっては、こういった試み?は大変ありがたいことだ。しかしこのビデオ観たら、2009年タイでのコングレスにますます行きたくなったぞー。

2006/09/07

デザンクロ「四重奏曲」の譜面ミス?

デザンクロ「四重奏曲」の解釈で常々問題になる「あの」二箇所だが、今まで受けた何回かのレッスン、また本曲の初演者であるマルセル・ミュール四重奏団のLPを聞いてほぼ確信した事柄を載せておこうと思う。

・第一楽章[H]2小節前 シンコペーションリズムについて
 問題→第一楽章でのひとつの山場であるこの箇所だが、ソプラノのシンコペーションが楽譜上では16分音符に直すと[3-3-3-3-4]であるのに対し、アルト、テナー、バリトンは[3-4-3-3-3]である。楽譜どおりに吹くポリリズムも面白いのだが、なーんか合わせづらいしイマイチパワーも足りない。

 結論→[3-4-3-3-3]は記譜、もしくは浄書のミス!である。ここはアルト、テナー、バリトンも[3-3-3-3-4]と吹くのが正しい。
 その昔この曲に取り組んでいた際、四重奏のレッスンを頂いたお二人のサックスの先生曰く、「友人の作曲家にもアドバイスをもらったが、ここのリズムがずれるのは音楽的におかしい」「このほうが合わせ安いし、初演者も[3-3-3-3-4]で吹いているのだから演奏を聴いたデザンクロが訂正のアドバイスをしたのだろう」とのこと。
 このたび世界初録音のLP(MHS)を入手し、実際の音で確認をすることができたが、やはりミュール四重奏団は[3-3-3-3-4]だった!デザンクロと親交があったミュールのこと、ほぼ間違いないと考えて良いだろう。

・第三楽章[M]2小節目 テーマの変奏、楽譜上はスラーだけれど…? 問題→第3楽章の最終部のテーマの変奏にはスラーがついているのに、なぜかいろんなCDを聴くとスタッカート、外国の奏者もスタッカート、アンコンでもみんなスタッカート…なぜ?

 結論→デザンクロは最初スラーつきで書いたが、実演を聴いた後アドバイスをしてスタッカートで吹かせるようにした。つまり、スラーを取ったほうがデザンクロの意図に沿っている、ということになる。
 これもやはりサックスの先生に聞いた話だが、デザンクロが実演を聴いた後にアドバイスをしたらしいのだ。なぜ初稿のままLeducから出版されてしまったのかは謎だが、曲の完成後出版の準備が早々に進んでいたことが推測できる。
 ミュール自身、またはミュール直系の比較的初期の録音(ミュール四重奏団、ギャルド四重奏団、デファイエ四重奏団)がスタッカートで吹いているため、間違いないだろう。
 中高生のアンコンとかでは知らずにスラーを取っちゃうけれど、実はそんなウラがあったのですね。

とまあ、こんな感じでまとめなおしてみました。人気のある曲だし、これからの季節はまさにアンサンブルシーズン。演奏する機会があって、万が一このエントリを見つけた方に、ちょっとした参考になれば幸い。

2006/09/05

ああ、廃盤レコード

(土曜のことですが、)オークションで、クロード・ドゥラングルの室内楽デビューであるREM盤の落札に失敗(T_T)…たぶんこの先10年は出会えないかも。いや、もしかしたら一生…ショーック!

ドゥラングルのデビュー盤というと、ギャップ国際コンクールでの優勝後にモンテ・カルロ響と吹き込んだドビュッシーの「ラプソディ」が比較的知られているが、オディール・ドゥラングル女史とデュオを組んで1980年代に録音した「Duo Delangle(REM)」というLPは、ちょっとした穴場なのだ。シャルパンティエ、ティスネ、コンスタンと、選曲も一癖あって、見つけたときは嬉しかったのだがなあ。むむむ。

冷静に考えてみると、21世紀にもなってLPを買おうとしている自分っていったい…。レコード会社の方、盤起こし&CD-Rでもいいのでぜひぜひサックスの名盤のCD復刻をお願いいたしますm(__)mってここに書いても意味ないのかなあ。

数ある名盤(ミュールのソロや四重奏、デファイエのソロ(Crest)や四重奏(CBS Sony)、ヘムケのコンチェルト集、等々挙げればきりがない)はサックス界にとって大きな資産だと思うのだけれど、廃盤のままだったり、運良く再発してもすぐ絶版になったりしてしまうのは、この大量生産大量消費の時代にあっては仕方がないことなのだろうか。

2006/09/04

コンクール練習を見学

昨日は豊里のホールまで、後輩たちのコンクールの練習を聴きに行ってきた。夏はずっと練習をやっていたみたいだけれど、実は聴いたのは初めて…。

自転車を走らせること30分、なんとか着きましたさ、ええ。「通し練習の後の通し」だけ聴いてきました。行き帰りに50分以上かかった割には、ホールには5分しかいられなかった(^^;

聴きに行って良かった。とても上手くて、カッコよかった!!「つくばDNA」みたいなものを感じたなあ…良くも悪くも筑波大らしい演奏というか(笑)。もう来週は東関東大会本番、だそうだけれど、体調など崩さず良い演奏をしてきてほしいものだ。がんばってください>関係者の方々。

帰り道、自転車を走らせていると野菜の直売所が…ふらふらと誘われるように中へ。店内にいたおばちゃんたちに混ざって井戸端会議に参加(笑)。売り手の方ははきはきした、威勢の良い小柄なおばあちゃん。自家焙煎した麦茶、泥つきネギ、ジャガイモを買って帰りました。これまた美味!、そんな日曜日でした。

2006/09/03

サクソフォン協奏曲コンサート

聴いてきた、「須川展也 サクソフォン協奏曲コンサート」。本多俊之「風のコンチェルト」、エドワード・グレッグソン「サクソフォーン協奏曲」、吉松隆「アルビレオ・モード」「サイバー・バード」。すべてが須川さんの委嘱によるサックスの協奏曲、オーケストラとの共演、待ったなしの全力勝負!いやー、豪華なコンサートだった!

最近、ようやくいろんな演奏をを聴きなれてきたせいか、理屈抜きの高揚感を味わうことはなかなか少なくなってきたが、久々にいろいろ考えずドキドキさせられるコンサートだった。

グレッグソンはBBCラジオで聴いてすでに良く知っている曲だったが、やはりこれは名曲!聴かせかたがいかにも現代の売れっ子作曲家という感じで、何度ものめくるめく転調を経て爆音のフィナーレへ盛り上がり…オーケストラもここぞとばかりにノリノリで、楽しそうだったなあ。しかしまあオーケストラの全力(強奏・弱奏)聴いちゃうと他のコンサート形態のサウンドのいかに貧弱なことか。

メインの「サイバー・バード」は生では初めて聴いたけれど想像を絶するカッコよさ。フリー・インプロの部分はもちろんのこと、須川さん始めソリスト陣のヴィルトゥオジテを最大限に引き出したスコアは鮮烈!また生で聴く機会があるといいなあ。

齋藤一郎指揮の東フィル、聴いていた6列目では特に弦の上手さが映えた。コンマスはモルゴーアの方だったのですね(須川さんのブログ参照)…どこかで見た事あると思ったら。指揮の齋藤氏は要所々々でオケをリードする姿がなんともカッコよかった。長身の燕尾服は振り映えしますなあ。TKWOの演奏会聴きにいってみようかなあ。

客席の反応、そして今までの演奏活動を噛み締めるようにニコニコと挨拶する幸せそうな須川さんの顔がとっても印象的。日本を代表するクラシック・サックス吹きの一人として、これからの更なる活躍を期待せずにはいられない…。

終演後に、持ってきたCDにサインをもらいにいった&写真を一緒に撮ってもらった私は、なんだかんだけっこうミーハーかもしれません(笑)。

2006/09/02

明日はオペラシティへ

ここ一週間、研究室の多忙とあいまって楽器吹くのが一日おき…まずいまずい。忙しくてもきちんと音を出せる時間を作らないとな。来週末にけっこうクリティカルな本番を控えていることだし。

明日は須川展也さんと齋藤一郎指揮東京フィルの協奏曲コンサート。本多俊之「風のコンチェルト」、エドワード・グレッグソン「サクソフォーン協奏曲」、吉松隆「アルビレオ・モード」「サイバー・バード」。すごっ。すべてが須川さんのために書かれた委嘱作品とはねえ…なんだかクラシックサックスでは未だかつてありえない豪華なコンサートだ。須川さんご自身も、「こんなコンサートはもうできないよ」みたいなことを言っていたというし。

いくらかチケットが余っているとの話も聞くので、万が一ここを読まれてさらに間に合いそうな方は、当日券狙いで東京オペラシティまで足を伸ばしてみてはいかが?