2006/07/31

ジョン・ハールのLP

明日はインターンシップ中間報告会(?)。仙台から蒲田へ日帰りなんちゃって出張(笑)。

eBayを眺めていたら、なんとジョン・ハールのレコードを発見!「Habanera(Hannibal HNBL 1331)」という外見はポップスみたいだけれども、中身はクラシックのスタンダードなんかもたくさん入っているLP。しかもピアノはジョン・レネハン!Hyperionから「John Harle plays」が発売されたのが1986年(うろおぼえ)だから、その1年後の同じコンビによる録音か。某サイトで試聴できたので一通り導入部分だけ聴いてみたが、聴いていてニッコリしてしまうほどのハール節全開!独特の覇気ある音と圧倒的なテクニックにモノを言わせて、一気に聴き手を音楽の世界に引き込んでしまうこの才能は、この音源でもしっかり感じ取ることができる。よく細かく聴いてみると音程とか随分合ってないのだが、流れの中ではほとんど気にならなかったり…。

しかし、本当にデイヴ・ヒースの「Out of the Cool」はカッコイイ曲だなと改めて感じた。初めてこの曲を知ったのはEMI Redlineから出版されているマリナー管と演奏した協奏曲の盤で、今思えばそれは二度目の録音だったのですね。この一度目の演奏は、二度目の録音よりさらに生々しい音が印象的で、しかもこのジャズ風に決めてくれるピアノもなかなかに痛烈。曲も演奏もいいなあ、これ。しかしやっぱり曲自体のクールさもさることながら、ハール×レネハンやハール×マリナーが演奏してこその味が大きいのだろうな。

調べてみたら、eBay以外にもいろんなところで中古で出回っているようなので、またいい値段で見つけたときに買ってみようかな。

2006/07/30

オーケストラの森

仙台から程近い松島を訪ねてみた。ちょうど雲も晴れ上がって、とても綺麗な景色を楽しめた。詳細はmixi日記に。最近は、音楽ネタ:こっち、そのほかネタ:mixi日記、という感じに住み分け中。

NHKを観ていたら「オーケストラの森」という番組が始まった…いつのまにこんな番組が。N響アワーはどうしたんだろうか?今日は大阪シンフォニカー交響楽団の紹介、だそうで。関西の楽団というと何があるのかな、吹奏楽人としてはやっぱり大阪市音楽団がすぐに思い浮かぶ(笑)のだが、センチュリーとか、大阪フィルとか、なにわオーケストラルのクレジットでいくつか名前だけは知っている。実際の音を聴く機会というのは、考えてみればテレビやCDでもあまりないなあ。

平均年齢が30代半ばというごく若いオーケストラだそうで、弦を中心に顔年齢がとても若い!でも、弦がやや散漫ながら出てくる音は随分しっかりしていて、管のソロとか随分綺麗な音だ。へえー。とはいってもオーケストラを生であまり聴いたことがないので、まあそれ以上詳しいことは良くわからないのだが。

フォーレの「ペレアス」と、サン=サーンスの「交響曲第三番(オルガン付き)」。なんかどちらもいい曲ですなあ。フォーレは「シチリアーノ」が有名だけれど、個人的に「フィルユーズ」がかなり気に入った。サン=サーンスの、オーケストラにオルガンを入れるというアイデアはいつ考えても凄いと思う…というかある意味ズルイ(笑)。このアイデア、当時はどんな風に迎えられたのだろうか。第二楽章のオルガンのC音を弾かせてくれるといったら1万円払ってもいいかな、なんて。

そういえば、いつものN響とは奏者の顔もカメラワークなんかがずいぶん違って(あたりまえか)とっても新鮮。

2006/07/28

ラッシャー派の演奏

ノードグレンの「サクソフォーンと弦楽のための協奏曲作品92」という曲を聴いている。演奏はジョン=エドワルド・ケリー。

ケリー氏といったら、言わずと知れたジグルト・ラッシャーの高弟であり、ラッシャー氏の演奏スタイル(精神、と言っても良いかも)を今日に伝えるヴィルトゥオーゾの一人。古い楽器のせいなのかな、随分とくぐもった感じの渋い音色というのは、ラッシャーの娘であるカリーナ・ラッシャーやラッシャー四重奏団のあたりとも共通するものがある。ケリー氏の演奏はイベールやラーションが入ったCD(Arte Nova)でも耳にしたことがあるのだけれど、ラーションを初めて聴いたときには度肝を抜かれたなあ。

ノードグレンのこの曲は随分と高音域が駆使される曲なのだが、フラジオ音域での安定感のあること!古い楽器の抵抗はこういった奏法に合っているのかもしれないなあ。弦は結構面白い響きで、生で聴いたら結構迫力あるかも。

日本やフランスのサックスの艶っぽい音に慣れた耳で聴くと、かなりびっくりする類の演奏なのだけれど、ラッシャー周辺が築き上げてたスタイルはそれはそれで確立されているようにも感じさせる演奏。「オリジナリティがある」といったらなんだか語弊があるだろうか、別に奇をてらった演奏というわけではない、主幹がしっかりした世界中のサックス界の流派のうちのひとつ。

日本には、ラッシャーに学んだ奏者はいないのだろうか。しかしここまで耳あたりが違うと、音色を聴いただけで日本のサックス界から仲間はずれにされそうな気もするなあ。とまあ、ラッシャー派の演奏を聴くと様々に考えさせられる事が多い。

2006/07/26

ネタがないので、いろいろ

何を書こうかなあ、と考えてもネタがないので書けるわけはない。

フェルドハウス「Grab It!」にはギター版があるのだが、これがまたサックス版に負けず劣らずカッコイイ。ピッチ・ベンドなどを効果的に使っているため、再現部の自己主張の強いこと!ただ、バックのゲットブラスター(テープ?)と音質が結構似ているので、音は大きくてもなんだか全体的に埋もれたようにも聴こえるなあ。

話題は変わって、eBayにロンデックス著の「サクソフォーン音楽の125年」が出品されていた(もちろん中古)。言わずと知れたサックス界の代表的名著で、サクソフォーン誕生から出版時までのほぼ全作品を網羅したサックス作品リストが圧巻な本。立ち読みはしたことあるんだよなー。まだ入札がないし欲しいなー…と思っていたら、買い手がついていた(^^;あらら。

全く知らなかったのだけど、1971年の初版以来、1985年、1994年、2003年と改訂を繰り返しているようだ(eBayに出品されているのは1971年版)。最新の2003年版は、「A Comprehensive Guide to the Saxophone Repertoire 1844-2003」というタイトルで、656ページ、18000タイトルものサクソフォーン作品が載っているんだとか。凄っ、ちょっとほしいかも。というか、クラシック・サックス関連の作品が18000タイトルもあることにも驚き。

2006/07/25

仙台に来ています

インターンシップのため仙台に滞在中。昨日今日とようやく晴れ間が見えたけれど、さすがにつくばと違って快適。…そんなわけであまりネタがないのだが、インターネットの環境はいちおうあるので、更新は可能というわけ。

テレビのチャンネルを回したらBSに金聖響指揮シエナ・ウィンドオーケストラが出演中。途中から観たので最後のリード「アルメニアン・ダンス パート1」だけ観ることができた。シエナのサウンドを久々に聴いたが、一作目の「ブラスの祭典」などに比べれば随分こなれたサウンドになってきたなあ。結成16年ということだけれど、歳月を経ながら徐々に浮かび上がる年の功、というのは考えすぎかな?

テレビのスピーカーを通して聴いていたのでいまいち判らなかったけれど、中音域の響きがやわらかくて艶っぽい。曲がすばらしいので、シエナの美点が存分に引き出されているように感じた。指揮者の違いってのも、なかなか面白かった。

吹奏楽は、聴くのも良いけれど、やっぱり中に入って演奏して色彩豊かな音に溺れながら吹くっていうのが楽しいと思う。あー、なんか吹奏楽でもアンサンブルでもなんでもいいから楽器吹きたくなってきた(ここは仙台)。無いものねだりをしてもしょうがないので、まあ、迫っている本番をとりあえず楽しみにしておこう。

2006/07/20

サクソフォーン旋風

というわけで行ってきた、ジェローム・ララン氏のサクソフォーン・リサイタル「サクソフォーン旋風」。かなり珍しい部類の、サクソフォーンとテープやライヴ・エレクトロニクスという編成を中心としたコンサート。

・大村久美子「イマージュの錯綜(t.sax + live electronics)」
・堰合聡「サクソフォーン(a.sax solo)」
・鈴木純明「アンチエンヌ(2 s.sax)」
・小櫻秀樹「俺は作曲家だ!(a.sax, t.sax + tape)」
・夏田昌和「西、あるいは秋の夕べの歌(s.sax + perc. + tape)」
・ジョドロフスキ「混合(t.sax + live electronics)」
・湯浅譲二「私でなく、風が…(a.sax + amp./reverb.)」
・フェルドハウス「Grab It!(t.sax + ghettoblaster)」

大泉学園駅から歩いてすぐのビルの6階にあるゆめりあホールは、200席ほどの小さなホールで、パルテノン多摩の小ホールみたいな形。会場に入るとまず目を引いたのはステージに設けられた2本のスピーカ、モニター、マイク、それにパソコンとアンプリファイとミキサー!

前半は一曲目から立体的な音響にやられて、最後まで集中して一気に聴きとおしてしまった。「イマージュの錯綜」なんて個人的に大変好きな曲だが、やっぱCDで聴くのとは訳が違う…意外と広がりのあるサウンドを求めているんだなあとか、あのメランコリーな旋律は素材の一つとして使っているだけなんだなあとか、やはりライヴで、さらに作曲者臨席のもの聴くのは貴重な機会だ。

堰合氏の「サクソフォーン」でちょっと中休みの後、「アンチエンヌ」は原博巳氏が登場、ソプラノサックスのデュオで大変息の合った演奏を聴かせてくれた。なかなかかわいらしい作品で、これ、また聴いてみたいなあ。「俺は作曲家だ!」では、かなり重量級の大作でほとんど極限的なサクソフォーンの技巧が求められていたが、ララン氏の気迫のものすごいこと。ジャンヴィエ・アルヴァレのOn Going Onみたいな感じだったような?

うーん、奏者&作曲家ともどもタダ者ではない。若さなりの勢い、そして個性が感じられて、興味深かった。

がらっと変わって後半は、すでにかなり著名な夏田氏、湯浅氏、そしてフランスとオランダの作曲家の作品。

夏田氏の作品をけっこう楽しみにしていたのだが、one by oneの尺八のような飄々とした世界を艶やかな音色のソプラノサックスで聴くのも素敵。「混合」はパリ音楽院の卒業試験曲(!)でもあったとか、一聴するとシュトックハウゼンみたいな電子音+偶発的みたいな感じにも聴こえたが、良く良く思い出してみたら全体に構成感があったような気がする。

「私でなく、風が…」演奏前には、客席から湯浅譲二氏ご本人が登場!驚き。作曲経緯についてなかなか興味深いコメントを話され、続く演奏も集中力の高い演奏。この演奏を生で聴けたのは良かったなあ。最後の「Grab It!」はやっぱりかっこよかった、これいい曲だなあ…。

総じてかなり玄人向けのコンサートだったという感じはあるものの、様々なサクソフォーンの音響世界を高いレベルのソロで体感できる機会に臨席できたことは大変嬉しく、充実した気分で聴き通すことができた。これが全て未来のサクソフォーンのスタンダードとなるとは考えられないが、こういった所から将来の芽が出るということなのだろうな。うん、満足!

また、ライヴ・エレクトロニクスがどのようなものなのかというのをこの目で見られたのも収穫だったかな。「イマージュの錯綜」はマック上でソフトウェア(jMAX?)が動作して、ソロに対応させるように大村さんが操作を行っていたし、「混合」は専用のソフトウェアがクリップマイクで拾ったサクソフォンの音に反応して順次発音するという具合。

終演後は、Thunderさんとmckenさんにお会いした。アマチュアサクソフォーン界の二大サイト(Thunder's WebとFantastic Classical Saxophone)管理人さんが並んだって感じですごい(笑)。終演も遅かったので、ちょっとお話して(またゆっくりご一緒できる機会があると良いですね)つくばに戻った。

2006/07/19

ドルチェ楽器にて

大泉学園ホールでのコンサートを聴くついでに、テナーサックスを担いでマウスピースを選びに行ってきた。今回行ったのはドルチェ楽器・管楽器アヴェニュー東京(→http://www.dolce.co.jp/tokyo/index.html)という楽器屋さん。実家に帰るたびにお世話になっている高速バスターミナルのすぐ近く=新宿駅の西口を出てほんの少し歩くと着いた。

結構大きいビルの8階全フロアがそのまま楽器店になっていてとても内装がきれい。聞けばこの5月にオープンしたばかりとか、どおりで。マウスピースは、サックスのブースでいくつか出してもらって選んだ。在庫数が少なかったのがちょっと残念だが、吹いて選ぶとあっさりとVandorenのT-20の一本に決定。

その日はオーティス・マーフィ氏のマスタークラスとコンサートがあるいう話だったが、サックス販売ブースの近くの防音室内では、なんと氏がプライヴェート・レッスン中!何気なーく見ていたら服部先生までいるじゃないか!しかも後から井上麻子さんとか波多江史郎さんまでいらっしゃり、なんだかブースがすごいことになっていた。服部先生や井上さんとはちょっとお話しすることもできました。服部先生とは半年ぶりくらいになるのかな。相変わらず忙しそうな方だがお元気そうでなにより。

マーフィ氏とも少しお話しすることができた(緊張した!)。私のたどたどしい英語にやさしく答えていただいて、CD「Memories of Dinant」の話をしたら大変喜んでくれた。CDにサインも頂いちゃいました。これからJerome Laranのコンサートに行かなければならないのでコンサート聴けなくて残念だ云々みたいなことを話したら、そこは狭いサクソフォーンの世界のこと、やはりマーフィさんとジェロームさんはオトモダチだということもおっしゃっていた。

その後はお店の人とEXT処理の話やらAURECから出たマーフィ氏の新譜(マズランカ「ソナタ」入り!)やらいろんな話を聞いた。5時半ころになってようやく大泉学園にむけて出発。

2006/07/18

PayPal

アメリカに国際郵便為替(International Money Ordership)を送ろうとしたら…郵便局のお姉さん曰く「手数料が上がったんですよ、2,500円になります」。ええぇ、聞いてない!昨年度までは1,000円で送られてたのに。LP+送料=計14ドルの送金に、さらに手数料2,500円も取られてはやってられない。というわけでキャンセル。

こうなったら、やはりPayPalか?PayPalへ送金するために、やはりクレジットカード作ったほうが良いかなあ、でもどうせあまり使わないだろうし使う目的は限られているし。むむ。

…と、日記を書きながら調べてみたら、PayPal口座への送金って、peimoっていう電子マネーを使えばクレジットカード使わなくてもできるのか。おおっ、便利。

最強の「ローマの祭」

レスピーギの「ローマ三部作」に関するエントリの続き。

やっぱり、「ローマ」の演奏を聴くときはトスカニーニ指揮のNBC交響楽団の演奏(BMG)かなぁと思う。実家のCD棚には父が何枚か集めたクラシックのCDがあるのだが、その中にトスカニーニ指揮の「ローマ三部作」や、メンデルスゾーン「イタリア」などが昔からあったのだ。

で、実は大学に入るまでほとんど聴かなくて、印象にも残っていなかったのだが、たまたま何かの拍子で「ローマ」の演奏を聴きたくなって、そういえば実家にあったなぁなんて思い出して、休みで帰ったときにこちらに持ってきてしまった次第(笑)。あ、思い出した、M先生と飲んで話していたときに次回の自由曲の話題が出て、それで話が盛り上がったんだ。

いやー改めて聴くと、これはすごい。祭の最終楽章「主顕祭」なんて、弦は洪水のようだし管は鳴らしまくるし(なんだあのトランペット)打楽器は派手だし…そんなオーケストラをものともせずぐいぐいテンポを引っ張るトスカニーニって感じで、テンション最高潮の演奏。最終部で倍テンポにしたのはトスカニーニの意図なのか見落としなのか、しかしまたそれがカッコイイ。

1940年代のモノラル録音が気になる人もいるけれど、復刻モノでも気にせず聴いてしまう自分にとっては全く気にならないしなぁ。デュトワ×モントリオール響の「噴水」に聴かれるような「華麗」といった演奏とは程遠いものだけれど、ローマ三部作の、特に「祭」にはやっぱりこんな豪快演奏が似合うと思う。

2006/07/17

稀有な機会

とある事情で土日にいろんな音楽の話を聞く機会に恵まれた。いやー、楽しいものだ。

サクソフォンの世界って狭いのだから、そのひとつひとつの機会を大切にしていきたい。それから、もっと自分で機会を作っていかなきゃと思った。

ハバネラ四重奏団の新譜

ようやく届いた、ハバネラ四重奏団の新譜「L'engrenage(Alpha 518)」。最近は輸入販売元として株式会社マーキュリーが日本語解説をつけているので、今回のように少々難しいコンセプトによるCDでも、英語を読み解く必要がなくなったのが嬉しい。国内では「歯車のように ルイ・スクラヴィス&クヮチュオール・アバネラ シングルリードの饗宴!」というタイトルで発売中。

アルバム一作目はサクソフォーンのための現代作品、二作目はアレンジ+古典、次は何が来るかと思っていたらなんとルイ・スクラヴィス氏との共演モノか。一般向けではないけれど、私みたいなサクソフォーンのコアなファンにはかなり嬉しい路線なのかも。

スクラヴィス氏はヨーロッパジャズ界屈指の演奏家&作曲家。特に即興演奏のスペシャリストとして、かなり定評があるらしい。バスクラリネットやサクソフォーンを操りながらそのスーパー・テクニックでコード上のアドリブから完全即興までをこなすが、今回のアルバムもその能力が遺憾なく発揮された録音だ。

記譜を受け持つハバネラ四重奏団/即興を受け持つスクラヴィス氏という、相反するサウンドが不思議なグルーヴ感を作り出している、という印象を受ける。ショックの大きさで言えばスクラヴィス氏の独特な即興演奏が上だろうが、そういった場所にあってもスクラヴィス氏を立てながら自己主張を怠らないハバネラ四重奏団。強烈な奏者同士のぶつかりが大きな実を結んだということかな。

聴きづらい曲もあるけれど、ジャズのイディオムをベースとした曲もあったりしてなかなか楽しい。リゲティの「6つのバガテル」第三楽章の伴奏を下敷きに、スクラヴィス氏が延々と即興演奏を続けていく「東風」というトラックは、アルバムのコンセプトを示唆しているようで興味深く聴いた。これ、サクソフォーン奏者だけじゃなくてクラリネットの人にも聴いてもらいたいなあ。スクラヴィス「ダンス」なんて、バスクラ奏者垂涎の的ですよ、これは。

ただ、やはり即興演奏を楽曲の核とする音楽は、ライヴでその気迫やテンションを味わってこそのものだと思うのも事実。生で聴いたら、さらに圧倒的な演奏であることだろう。

…そういえば、帯に書いてあった紹介文がものすごかったので(笑)一部抜粋して掲載:

>二十世紀末に彗星のごとく世に現れ、離れ技的センスと柔軟きわまる音楽性でバッハからロマン派から現代の新作から何から何まで流々吹きこなしてみせる天変地異的サックス四重奏団「アバネラ」-この猛者ども、とある音楽祭でうっかりルイ・スクラヴィスと出会ってしまったのが運のツキ?~(中略)~五本の管はのたうちまわるわ、ビートを刻むわ、自由を謳歌するわ、這いずり回るわ、それもよどみなく、絶え間なく、抜け目なく、あられもなく…ジャンルの境など気にする気も起こらぬアドレナリン誘発系18トラック、はたして歯車は噛みあうのか、噛みあわないのか、麻薬的悪循環は止まるのか止まらないのか!?

なんかすごい。こんなテンポのいい日本語書いてみたいねえ。

2006/07/15

ローマ三部作

レスピーギの書く曲って、実際にスコアを音にしてみるとびっくりするほど豪華絢爛たる音がする。リムスキー=コルサコフに師事し、管弦楽法の後継者とまで謳われたその作曲技術は、ほんとハンパじゃないと思う。

実際に間近で聴いたことがあるのはレスピーギの書いた吹奏楽オリジナル曲である「ハンティング・タワー」だけれど、ほかの作品に比べるとものすごい音の厚み、バランスの取れたサウンドにびっくりしたものだ。いやあ、ノバホールでウチの大学の吹奏楽団からこんな音がするのか!って。やっぱりあの徹底した練習とリハーサルのおかげで、なかなか聴けないサウンドが生まれていたんだろうなあ。

話は変わりぐっと一般的になって、レスピーギの管弦楽法が結集されたオーケストラ作品といったらやっぱ「ローマ三部作」や「シバの女王ベルキス」あたりだろうか。様々な機会で取り上げられるし、ほかの管弦楽曲と比較してもずいぶんとポピュラーな地位を得ることに成功した類稀な例だと思う。

改めて聴くと、その場面描写の精密さ!交響詩的な作品て楽器法がものすごく活きるんだなあ。解説に一通り目を通してから聴くと、本当に風景が脳裏に浮かぶ。高校生の時分にはこんな聴き方なんてできなかったのに、僅かながら大学で様々な音楽体験を経た年の功?で音楽の聴き方も変わってきたという事か。

…と、トスカニーニ指揮NBC響「ローマ三部作」の演奏を聴きながら、昨日はそんなことを考えていました。後輩たちは夏のコンクールに「ローマの祭」で出るようだ。がんばってください。

2006/07/13

7月はラッシュ

19日は大泉学園ゆめりあホールのジェローム・ララン氏のリサイタル「サクソフォーン旋風」を聴きに。すでに関西のほうに来日しているようで、マスタークラスやミニコンサートを各地で行っている。サクソフォーンとライヴ・エレクトロニクスでのコンサートなんて、これを外したら次はいつ聴けるか分からないからなあ。17日にはセルマージャパンで原博巳氏とデュオリサイタルを開催するようだが、私的な興味としたらやっぱり19日のリサイタルかなあ(予約済み)。

…ネットを探索して、オティス・マーフィー氏も来日するぞ!RIAXから発売しているCDでもルソー氏譲りの素晴らしいテクニックと柔和な音色を聴けるが、生で聴けるのは嬉しい…と思ったら、ララン氏のリサイタルの同日(ほぼ)同時間なんですね。無理じゃないか。

22日は雲井さんと小松勉氏のデュオリサイタル(セシオン杉並ホール)。これ、聴きに行きたいなあと思っているのだけれど、インターンシップ直前のゴタゴタの時期ゆえ行けるかどうかちょいと怪しい。でも、雲井さんのアルトでの演奏をほとんど聴いたことがないので、なんとか時間をやりくりして出かけたいところ。シューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」とかノーレ「フリッソン」とか大好きな曲だしなぁ…。行きたいなあ。

28日はチェ・ジョン・ソブ氏という韓国のサクソフォーン奏者のリサイタル渋谷のセルマージャパン内アンナホールであるようだ。聞いたことない名前だなあと思ったけれど、受賞歴などなかなか圧巻で、しかも入場無料との事で聴きに行くしかない!と思っていたが、インターンシップ@仙台の最中じゃないか。むむむ、無念。クレストンや野田「Mai」などがプログラムされている。
 7/5&7/6には雲カルリサイタルもあったし、今月はサックスコンサートラッシュ月間ですな。
 補足:吹奏楽的興味としては、(来月になってしまうが)8/6にNHKホールで行われるN響ほっとコンサートが大変気になるところ。

2006/07/10

芸術劇場オープニング・テーマ

昨日ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲をテレビで観た後に、そのままつけっぱなしにしていたら芸術劇場が始まった。

オープニングはサックス四重奏の魅力的な響きで始まる。ギタリストであり作曲家でもある小倉昌浩氏の手による委嘱作品で「芸術劇場オープニング・テーマ」という。演奏はソプラノ:田中靖人、アルト:彦坂眞一郎、テナー:新井靖史、バリトン:大津立史。

一年ほど前この11秒の響きに魅せられて、小倉氏にコンタクトを取って楽譜を頂戴し、いつかステージ初演をしてやろうと目論んでいたのだがいまだ果たせないでいる。うーん、今年あたりに必ず!

世界サクソフォン・コングレス

ちょうど今、世界サクソフォーン・コングレスの真っ最中だったのか。ん?もう終わったのか?会場はスロヴェニア!また随分遠いところだ。

ここ(→http://www.worldsax.net/)が公式ページ。プログラムを見ると…ものすごい。そうそうたる演奏家の名前が名を連ねているなー。ドゥラングル、ハール、ボーンカンプ、ハバネラQ、ルソー、フルモー、フェリペ、チェ、ゴーティエ…(敬称略)。3年に一度のまさにサックスのお祭り!3つの会場に分かれて、5日間に渡り文字通り朝から晩までサックスのコンサートが開かれるという。日本からもトラクシォン・アヴァンや原博巳氏が参加しているみたいだ。

1988年には日本で開催されたみたいだが、また日本でやらないかな。3年後、2009年はタイのバンコクで開催だという…時間的経済的余裕があったら聴きに行くか(笑)。

2006/07/07

ヴェーベルン作品集

お茶の水ディスクユニオンにヴェーベルンの作品集があったので買ってきた。中古で735円。ラッキー。

「Boulez conducts Webern(DG 437 786-2)」という10年ほど前の録音で、演奏はブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン。ごく初期のピアノ四重奏曲から、中後期の協奏曲(作品番号は24)まで歌曲、室内楽を取り上げたCD。作品番号順に収録されていて、ヴェーベルンの作風の変化がたどれるのが面白い。

お目当ては「四重奏曲作品22」。これは珍しくもサクソフォーンを含む室内楽作品で、ヴァイオリン+クラリネット+テナーサックス+ピアノという異色の組み合わせによる2楽章構成の小品。ほんの6分間の中に散りばめられた点描的なフレーズが楽器間で交換されながら、濃密な音空間が形成されていく。これねー、やってみたいんだけど演奏者にも観客にも受け悪そうだし強烈に難しそうだしで、なかなか手が出せないでいるのだが。

このディスクではピアノがピエル=ロラン・エマール、サクソフォンがクロード・ドゥラングルという現代にあってはこれ以上の贅沢はないという最強の演奏陣。作品に対する冷徹なまなざしと超高度なテクニックが、譜面をより忠実に再現しているようだ。まるで譜面が眼前に迫ってくるようなカミソリの刃のように極端にメカニカルな印象。この曲、他にはカイル・ホーチが参加している「Chambersax」にも同じ曲が収録されていたり、クリステル・ヨンソンが参加しているMaアンサンブルの演奏がある。Maアンサンブルの演奏は未聴なので、そのうち聴いてみたいなあ。

そういえばヴェーベルンの作品て、一曲一曲が短いんだなあと改めて感じた。「5つのカノン作品16」なんて、全5楽章構成で3分30秒程度だもの。

雲カル第5回定期演奏会

2003年の「メメント・モリ」からほぼ毎回聴いているが、雲井雅人サックス四重奏団の魅力の一つに、その「美しい音色」があることは確かだろう。ミュール編の小品にピタリと当てはまる上品な軽やかさを演出したかと思えば、ピエルネやアブシルでは眩しいほどのキラキラした音が会場の隅々までを満たす。さらにそれが彼方から聴こえるような弱音であろうと、パワフルなユニゾンであろうと響きは常に豊かである。

テクニックとか解釈とかそういうものは二の次で、楽器の良さをストレートに伝えるにはまず音色なんだ!と、妙に納得させられてしまうほどの魅力がそこにはある。もちろん音色だけに終始せず、緻密なアンサンブルを練り上げてくるところが、さらに雲カルを半端でない存在にしている要因だとは思うが。

一部、二部の終わりにそれぞれ配置された、アブシル「ルーマニア民謡による組曲」、ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」が斬新でおもしろかった。普段CDなどで接するフランス人の演奏はエスプリたっぷりのおしゃれなものが多いのだが、今回聴いたのは思い切りの良い全力勝負。例えばルデュー四重奏団の演奏は早口のお喋りみたいな日常的な感じだが、なるほど聴き方を変えてみればアブシルってたしかにこういう生命感溢れるエネルギッシュな曲かもしれない。バルトークだって同じようなタイトルの曲を書いているけど、けっこう土俗的なイメージだしね。

プログラムに沿って書いていくとちょっと書ききれない位だが(全部で7曲!)、織田英子さんの新作は楽しかったな。おなじみの民謡を素材に取ったかわいらしいコンサート・ピースで、見通しの良いすっきりした音楽。続く秋透氏の編曲による作品も民謡を素材にとったものだったが、こちらは一転技巧的にかなり工夫の凝らされた編曲。

自分の反省:実は最初から気合を入れて聴きすぎて、さらにここ最近疲労を溜めていたこともあって、アルベニスあたりでかなりグロッキーになってしまった(笑)。ジャンジャンや万葉はもうちょっと気楽に聴けば良かったかな…^^;ジャンジャンなんてまさに音との戯れという感じで、吹いている様子があまりに楽しそうだったので、聴く自分もリラックスしていればよかった。

2006/07/04

ジャズを聴いた

今日のアルスホールのピアノコンサート、行きたかったんだけどな。残念(平日昼は、研究室のゼミが…)。

明日7/5は雲井雅人サックス四重奏団の演奏会だー!楽しみだ。

6/30にマウスピース選びをしてきた帰りに、たまたま寄った石丸電気でのインストア・ライヴの話。ジャズ・ヴォーカリストのチャリートさんという方と、石川秀男トリオ(pf.市川秀男、bs.古野光昭、ds.小山太郎)の共演で、チャリートがマンハッタン・ジャズオーケストラとレコーディングした「Nica's Dream」の発売記念ライヴ。

プロフェッショナルのジャズをライヴで聴いたのは、随分久しぶりだった気がする。クラシックでは表現できないよなあ、あの独特のグルーヴ感。聴いていくうちに体中にリズムが染み渡って、どんどん気分が高揚してくる体験。やっぱりジャズはライヴで聴かなくては!

チャリートさんのヴォーカルはものすごくパワフルで通る美声。まるでピアノがビッグバンドであるかのように色彩感豊かな音選びを行う市川秀男氏に、ほかドラムスの小山氏、ベースの古野氏ともども、強烈なサウンドを生み出していた。最後に演奏されたエリントン「キャラバン」はアレンジの派手さもさることながら、ほとんど皆悪ノリ寸前のパフォーマンスのオンパレード!ブラボー。

…このライヴの後、同日中にBody & Soulでもライヴをやったらしい。すごいな。

クラシックと違ってジャズは…こうやって難しくてかっこいい即興フレーズをさらりと弾きこなしていたり、演奏の進行さえその場で変えてしまうような丁々発止のコミュニケーションをしているのを見ると、「ああ、ジャズって楽しそうだなあ」といつも思う。まあ、どちらが良いかどうかなんて一概には言えないけれど、多かれ少なかれ惹かれるものがあるのは確か。

2006/07/03

ハバネラQコンサート情報(追記)

ビゼー「カルメン組曲」が抜けていたのか。そうか。

訂正:バッハ「イタリア協奏曲」、ラヴェル「弦楽四重奏曲」、リゲティ「6つのバガテル」、ドビュッシー「ベルガマスク組曲」より、ビゼー「カルメン組曲」、ピアソラ「3つのタンゴ」。

今回のハバネラ四重奏団のプログラム、オリジナル作品がないのは少々残念ではあるが、アレンジ作品ばかりというのもすごい。すでに何曲ものアレンジ作品をこなした自信のなせるわざかな。前作のアルバム「Grieg, Glazounov, Dvorak(Alpha 041)」でも質の高い編曲&演奏が楽しめたので、期待特大。

バッハはBillaudotから出版されている栃尾氏の編曲ではないのか…珍しいといえば珍しいな。ラヴェルはソプラノのヴィルトゥによる編曲だが、弦楽器独特の奏法が管楽器でどのように表現されてくるのか興味深いところだ。

2006/07/02

ハバネラQコンサート情報

ハバネラ・サクソフォーン四重奏団の「グランプリコンサート2006」11/4東京公演、プログラムは以下のとおり。

バッハ「イタリア協奏曲」、ラヴェル「弦楽四重奏曲」、リゲティ「6つのバガテル」、ドビュッシー「ベルガマスク組曲」より、ピアソラ「3つのタンゴ」。

…なんだか一曲抜けている気がする(汗)。あれ?

チケットは、マネジメント元のIVS音楽出版(03-5261-3361)ほか、東京文化会館、チケットぴあ、e+で6/23より発売中。

2006/07/01

トゥール「哀歌」

セルマージャパンに行ってマウスピース選びをしてきた。いくつか種類を用意してもらったのだけれど、結局前使っていたものと同じVandorenのV5。3時間弱もとっかえひっかえして決定。なかなか良いものが選べたと思う。

CDの棚を眺めていたら、アムステル四重奏団の「Straight Lines(Erasmus WVH 269)」があったので購入。驚いたことにアルトは日本人(佐藤尚美さん)だ。去年の定期演奏会で雲井雅人サックス四重奏団が取り上げていたけれど、やっぱりトゥールの「哀歌」はいい曲だなあ。

エルッキ=スヴェン・トゥール「哀歌(Lamentatio)」は、1994年にバルト海で起こった海難事故からインスピレーションを受けて作曲された作品だという。(事故についての詳しい解説はこちらのサイトにて発見→http://www.sydrose.com/case100/shippai-data/109/)。巨大なカーフェリーが高波の影響を受けて沈没、犠牲者は900人近くにも及ぶ史上最大規模の海難事故であった。

何かを暗示させるようなややフラジャイルな重音が4本のサックスによって重ねられる導入部、さらに続いて息の長い美しいメロディが歌われるが、これは嵐が起こる前の静かに広がる海。ソプラノ&アルトによる突然の即興風フレーズは、SOSの救難信号か。荒れ狂う海を表現した下声部はテナー&バリトンが荒々しいシンコペーションを吹き伸ばす。いったん曲が落ち着くと曲は慰めの部分へ。死者を弔う短くも穏やかなメロディ。最後には導入部のエコーを交えながら犠牲者の魂が海へと還ってゆく響きが聴かれる。

…という想像をしながら聴くと、事故の一連の様子が脳裏に浮かぶようでシリアス。作曲者はこの曲を聴くときに、必ずしも事故の情報は必要ないと述べているようだ。しかし多くの尊い命を奪った事故の描写音楽として捉えると、数あるサクソフォーン四重奏の中でも特にメッセージ性の強い作品の一つなのだと感じる。